(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】縦型半導体装置及び縦型半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220809BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220809BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20220809BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220809BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20220809BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20220809BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220809BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20220809BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20220809BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20220809BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20220809BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20220809BHJP
H01L 27/07 20060101ALI20220809BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 652S
H01L29/78 652P
H01L29/91 D
H01L29/78 652C
H01L29/91 F
H01L29/78 658E
H01L29/78 652H
H01L29/06 301D
H01L27/04 H
H01L27/04 A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/07
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2018034250
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165777(JP,A)
【文献】特開2013-048230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0048847(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103890955(CN,A)
【文献】特開2009-278067(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0283776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/872
H01L 29/06
H01L 29/861
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/07
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の窒化ガリウム基板と、前記窒化ガリウム基板上に設けられた窒化ガリウム層とを有する縦型半導体装置であって、
トランジスタ領域と、
前記トランジスタ領域に隣接するショットキーダイオード領域と
、
を備え、
前記縦型半導体装置は、前記ショットキーダイオード領域における前記窒化ガリウム層において、
第2導電型の第1のウェル領域と、
前記トランジスタ領域と前記ショットキーダイオード領域とが配列される配列方向において前記第1のウェル領域に隣接し、前記窒化ガリウム層の上面から前記第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、ダイオードトレンチ部と、
前記ダイオードトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第1の上方ドリフト領域と、
前記第1のウェル領域および前記第1の上方ドリフト領域の各底部に接続する、第1導電型の下方ドリフト領域と、
前記ダイオードトレンチ部内に設けられ、前記第1の上方ドリフト領域の上部に接続する導電部と
、
前記第1のウェル領域と前記下方ドリフト領域との間に設けられた第2導電型の埋め込み領域と、
を有する、縦型半導体装置。
【請求項2】
上面視において前記トランジスタ領域および前記ショットキーダイオード領域を囲む様に設けられたエッジ終端領域をさらに備え、
前記エッジ終端領域における前記窒化ガリウム層は、
第2導電型の第2のウェル領域と、
前記配列方向において前記第2のウェル領域に隣接し、前記窒化ガリウム層の上面から前記第2のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、エッジトレンチ部と、
前記エッジトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第3の上方ドリフト領域と、
前記エッジトレンチ部内に設けられ、前記第3の上方ドリフト領域に接続する絶縁膜と
を有し、
前記下方ドリフト領域は、前記第3の上方ドリフト領域の底部にも接続する、
請求項1に記載の縦型半導体装置。
【請求項3】
第1導電型の窒化ガリウム基板と、前記窒化ガリウム基板上に設けられた窒化ガリウム層とを有する縦型半導体装置であって、
トランジスタ領域と、
前記トランジスタ領域に隣接するショットキーダイオード領域と、
上面視において前記トランジスタ領域および前記ショットキーダイオード領域を囲む様に設けられたエッジ終端領域と、
を備え、
前記縦型半導体装置は、前記ショットキーダイオード領域における前記窒化ガリウム層において、
第2導電型の第1のウェル領域と、
前記トランジスタ領域と前記ショットキーダイオード領域とが配列される配列方向において前記第1のウェル領域に隣接し、前記窒化ガリウム層の上面から前記第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、ダイオードトレンチ部と、
前記ダイオードトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第1の上方ドリフト領域と、
前記第1のウェル領域および前記第1の上方ドリフト領域の各底部に接続する、第1導電型の下方ドリフト領域と、
前記ダイオードトレンチ部内に設けられ、前記第1の上方ドリフト領域の上部に接続する導電部と、
を有し、
前記エッジ終端領域における前記窒化ガリウム層は、
第2導電型の第2のウェル領域と、
前記配列方向において前記第2のウェル領域に隣接し、前記窒化ガリウム層の上面から前記第2のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、エッジトレンチ部と、
前記エッジトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第3の上方ドリフト領域と、
前記エッジトレンチ部内に設けられ、前記第3の上方ドリフト領域に接続する絶縁膜と
を有し、
前記下方ドリフト領域は、前記第3の上方ドリフト領域の底部にも接続する
縦型半導体装置。
【請求項4】
前記縦型半導体装置は、前記トランジスタ領域における前記窒化ガリウム層において、
前記配列方向において前記ダイオードトレンチ部から離間し、前記第1のウェル領域に隣接し、且つ、前記窒化ガリウム層の上面から前記第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、ゲートトレンチ部と、
前記ゲートトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第2の上方ドリフト領域と
を有し、
前記下方ドリフト領域は、前記第2の上方ドリフト領域の底部にも接続する
、
請求項1
から3のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
【請求項5】
前記窒化ガリウム層の深さ方向において、前記ダイオードトレンチ部の底部は、前記ゲートトレンチ部の底部よりも前記窒化ガリウム層の前記上面に近い位置に設けられる
、請求項
4に記載の縦型半導体装置。
【請求項6】
前記窒化ガリウム層の深さ方向において、前記ダイオードトレンチ部の底部は、前記ゲートトレンチ部の底部と同じ位置に設けられる
、請求項
4に記載の縦型半導体装置。
【請求項7】
前記配列方向において、前記ダイオードトレンチ部の幅は、前記ゲートトレンチ部の幅よりも大きい
、請求項
4から
6のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
【請求項8】
前記配列方向において、前記ゲートトレンチ部の底部に接続する前記第2の上方ドリフト領域の幅は、前記ダイオードトレンチ部の底部に接続する前記第1の上方ドリフト領域の幅よりも小さい
、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
【請求項9】
前記配列方向において、前記ダイオードトレンチ部の幅は、前記ゲートトレンチ部の幅よりも小さい
、請求項
4から
6のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
【請求項10】
前記縦型半導体装置は、少なくとも前記ダイオードトレンチ部および前記窒化ガリウム層の前記上面に接するオーミック電極層をさらに備え、
前記ダイオードトレンチ部内に設けられた前記導電部は、前記オーミック電極層よりも大きな仕事関数を有する金属導電部である
、 請求項1から
9のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
【請求項11】
トランジスタ領域と、前記トランジスタ領域に隣接するショットキーダイオード領域と
を有する縦型半導体装置の製造方法であって、
第1導電型の窒化ガリウム基板上に、第1導電型の第1の窒化ガリウム層
の上面から第2導電型のドーパントを注入することにより、前記第1の窒化ガリウム層の前記上面にドーパント注入領域を形成する段階と、
前記第1の窒化ガリウム層の前記上面および前記ドーパント注入領域上に、第2導電型の第2の窒化ガリウム層をエピタキシャル形成し、前記第1の窒化ガリウム層と
前記第2の窒化ガリウム層とを少なくとも有する窒化ガリウム層
を形成する段階と、
前記窒化ガリウム層の上面から前記第2の窒化ガリウム層の底部よりも浅い位置までトレンチを形成するエッチング段階と、
前記トレンチの底部と前記第1の窒化ガリウム層の上部とに接続する第1導電型の上方ドリフト領域を形成するべく、少なくとも前記トレンチと前記第1の窒化ガリウム層との間に第1導電型のドーパントを注入する段階と、
前記トレンチの前記底部において前記上方ドリフト領域に接続する前記ショットキーダイオード領域のダイオード導電部を前記トレンチ内に形成する段階と
、
を備える縦型半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ドーパント注入領域を形成する段階は、前記第1の窒化ガリウム層の前記上面内の方向において離隔して隣り合う複数のドーパント注入領域を形成する段階であり、
前記エッチング段階は、前記窒化ガリウム基板の上面視において、一の前記ドーパント注入領域と、一の前記ドーパント注入領域に隣り合う他の前記ドーパント注入領域との間に、前記トレンチを形成する段階である、
請求項11に記載の縦型半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型半導体装置及び縦型半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
半導体材料として窒化ガリウム(以下、GaN)を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をインバータモジュールのスイッチング素子として用いる場合、GaN‐MOSFETの内蔵PN接合に順電流が流れる動作モードがある。GaN‐MOSFETの内蔵PN接合に順電流が流れると、正孔及び電子の再結合により短波長(例えば、3.4eV相当)の光が発生する。この内蔵PN接合の発光により、GaN‐MOSFETのゲート絶縁膜の特性が変動する。また、ゲート絶縁膜へのキャリア(例えば、正孔)注入により、ゲート絶縁膜の信頼性が低下する。なお、炭化ケイ素(SiC)半導体装置については、MOSFET部と、ショットキーダイオード(ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode)とも言う。以下、SBD)部とを有するSiC半導体装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2009-278067号公報
[特許文献2] 特開平8-204179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
正孔及び電子の再結合に関してSiCは間接遷移型であるがGaNは直接遷移型であるので、内蔵PN接合における発光効率はSiCに比べてGaNの方が高い。GaN‐MOSFETにおいては、内部の発光の影響を低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、第1導電型の窒化ガリウム基板と、窒化ガリウム基板上に設けられた窒化ガリウム層とを有する縦型半導体装置を提供する。縦型半導体装置は、トランジスタ領域と、ショットキーダイオード領域とを備えてよい。ショットキーダイオード領域は、トランジスタ領域に隣接してよい。縦型半導体装置は、ショットキーダイオード領域における窒化ガリウム層において、第2導電型の第1のウェル領域と、ダイオードトレンチ部と、第1導電型の第1の上方ドリフト領域と、第1導電型の下方ドリフト領域と、導電部とを有してよい。ダイオードトレンチ部は、配列方向において第1のウェル領域に隣接してよい。配列方向は、トランジスタ領域とショットキーダイオード領域とが配列される方向であってよい。ダイオードトレンチ部は、窒化ガリウム層の上面から第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられてよい。第1の上方ドリフト領域は、ダイオードトレンチ部の底部に接続してよい。下方ドリフト領域は、第1のウェル領域および第1の上方ドリフト領域の各底部に接続してよい。導電部は、ダイオードトレンチ部内に設けられてよい。導電部は、第1の上方ドリフト領域の上部に接続してよい。
【0005】
縦型半導体装置は、トランジスタ領域における窒化ガリウム層において、ゲートトレンチ部と、第1導電型の第2の上方ドリフト領域とを有してよい。ゲートトレンチ部は、配列方向においてダイオードトレンチ部から離間してよい。ゲートトレンチ部は、第1のウェル領域に隣接してよい。ゲートトレンチ部は、窒化ガリウム層の上面から第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられてよい。第2の上方ドリフト領域は、ゲートトレンチ部の底部に接続してよい。下方ドリフト領域は、第2の上方ドリフト領域の底部にも接続してよい。
【0006】
窒化ガリウム層の深さ方向において、ダイオードトレンチ部の底部は、ゲートトレンチ部の底部よりも窒化ガリウム層の上面に近い位置に設けられてよい。
【0007】
これに代えて、窒化ガリウム層の深さ方向において、ダイオードトレンチ部の底部は、ゲートトレンチ部の底部と同じ位置に設けられてもよい。
【0008】
配列方向において、ダイオードトレンチ部の幅は、ゲートトレンチ部の幅よりも大きくてよい。
【0009】
配列方向において、ゲートトレンチ部の底部に接続する第2の上方ドリフト領域の幅は、ダイオードトレンチ部の底部に接続する第1の上方ドリフト領域の幅よりも小さくてよい。
【0010】
配列方向において、ダイオードトレンチ部の幅は、ゲートトレンチ部の幅よりも小さくてもよい。
【0011】
縦型半導体装置は、オーミック電極層をさらに備えてよい。オーミック電極層は、少なくともダイオードトレンチ部および窒化ガリウム層の上面に接してよい。ダイオードトレンチ部内に設けられた導電部は、金属導電部であってよい。金属導電部は、オーミック電極層よりも大きな仕事関数を有してよい。
【0012】
縦型半導体装置は、第2導電型の埋め込み領域をさらに有してよい。埋め込み領域は、第1のウェル領域と下方ドリフト領域との間に設けられてよい。
【0013】
縦型半導体装置は、エッジ終端領域をさらに備えてよい。エッジ終端領域は、上面視においてトランジスタ領域およびショットキーダイオード領域を囲む様に設けられてよい。エッジ終端領域における窒化ガリウム層は、第2導電型の第2のウェル領域と、エッジトレンチ部と、第1導電型の第3の上方ドリフト領域と、絶縁膜とを有してよい。エッジトレンチ部は、配列方向において第2のウェル領域に隣接してよい。エッジトレンチ部は、窒化ガリウム層の上面から第2のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられてよい。第3の上方ドリフト領域は、エッジトレンチ部の底部に接続してよい。絶縁膜は、エッジトレンチ部内に設けられてよい。絶縁膜は、第3の上方ドリフト領域に接続してよい。下方ドリフト領域は、第3の上方ドリフト領域の底部にも接続してよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、トランジスタ領域と、トランジスタ領域に隣接するショットキーダイオード領域とを有する縦型半導体装置の製造方法を提供する。縦型半導体装置の製造方法は、窒化ガリウム層をエピタキシャル形成する段階と、トレンチを形成するエッチング段階と、第1導電型のドーパントを注入する段階と、ダイオード導電部をトレンチ内に形成する段階とを備えてよい。窒化ガリウム層は、第1導電型の窒化ガリウム基板上に、第1導電型の第1の窒化ガリウム層と第2導電型の第2の窒化ガリウム層とを少なくとも有してよい。トレンチは、窒化ガリウム層の上面から第2の窒化ガリウム層の底部よりも浅い位置まで形成されてよい。第1導電型のドーパントを注入する段階は、第1導電型の上方ドリフト領域を形成するべく、少なくともトレンチと第1の窒化ガリウム層との間に第1導電型のドーパントを注入してよい。上方ドリフト領域は、トレンチの底部と第1の窒化ガリウム層の上部とに接続してよい。ダイオード導電部は、トレンチの底部において上方ドリフト領域に接続してよい。ダイオード導電部は、ショットキーダイオード領域の導電部であってよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】縦型GaN‐MOSFET100の上面を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。
【
図3A】縦型GaN‐MOSFET100の等価回路図である。
【
図3B】PN接合部に逆バイアスが印加され、活性領域110全体に空乏層30が広がった様子を示す図である。
【
図4】第1実施形態における
図1のB‐B断面を示す図である。
【
図5】縦型GaN‐MOSFET100の製造方法を示すフロー図である。
【
図6】(a)~(f)は、製造方法の各段階を示す図である。
【
図7】第2実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。
【
図8】(a)~(d)は、第2実施形態における段階S10の詳細を示す図である。
【
図9】第3実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。
【
図10】第4実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。
【
図11】第5実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。
【
図12】第6実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
本明細書において、NまたはPは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NまたはPの右に記載した+または-について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、-はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。本明細書に記載した例においては、第1導電型をN型とし、第2導電型をP型とする。ただし、他の例においては、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型としてもよい。
【0019】
本明細書に記載した例において、X軸とY軸とは互いに直交する軸であり、Z軸はX‐Y平面に直交する軸である。X、Y及びZ軸は、いわゆる右手系を成す。例えば、縦型GaN‐MOSFET100において、GaN基板の下面及びエピタキシャルGaN層の上面は、それぞれX‐Y平面に平行である。なお、本明細書においては、Z軸正方向(+Z方向)を「上」と称し、Z軸負方向(-Z方向)を「下」と称する場合がある。ただし、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎない。
【0020】
本明細書に記載した半導体装置は、半導体材料としてGaNを有するが、半導体材料としてアルミニウム(Al)及びインジウム(In)の一以上の元素を含んだGaNを有してもよい。つまり、半導体装置は、半導体材料としてAl及びInを微量に含んだ混晶半導体であるAlxInyGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1)(即ち、GaN系半導体)を有してもよい。なお、本明細書の半導体材料は、AlxInyGa1-x-yNにおいてx=y=0としたGaNである。
【0021】
GaNに対するP型ドーパントは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)及び亜鉛(Zn)の一種類以上の元素であってよい。本明細書においては、P型ドーパントとしてマグネシウムを用いる。また、GaNに対するN型ドーパントは、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)及びO(酸素)の一種類以上の元素であってよい。本明細書においては、N型ドーパントとしてシリコンを用いる。
【0022】
図1は、縦型GaN‐MOSFET100の上面を示す概略図である。縦型GaN‐MOSFET100は、高耐圧の電力用半導体装置に用いられる半導体装置であってよい。つまり、縦型GaN‐MOSFET100は、インバータモジュールに組み込まれて、PN接合部に100V以上の逆バイアスが印加された場合であっても破壊されない高耐圧の半導体装置であってよい。
【0023】
本例の縦型GaN‐MOSFET100は、活性領域110、パッド領域120及びエッジ終端領域160を有する。活性領域110は、後述のMOSFET領域及びSBD領域を有してよい。活性領域110にはソースパッド112が設けられ、パッド領域120にはゲートパッド122が設けられてよい。ソースパッド112は後述のソース電極に対応してよく、ゲートパッド122は後述のゲート導電部に電気的に接続された金属層であってよい。
【0024】
エッジ終端領域160は、上面視において活性領域110及びパッド領域120の外周を囲む様に設けられてよい。エッジ終端領域160は、縦型GaN‐MOSFET100を構成するエピタキシャル成長されたGaN層の上面側の電界集中を緩和する機能を有してよい。例えば、エッジ終端領域160は、活性領域110で発生した空乏層をGaN層の周辺端部まで広げることにより、活性領域110での電界集中を防ぐ機能を有する。エッジ終端領域160は、ガードリング、フィールドプレート及びリサーフのいずれかの構造、又は、これらの二以上を組み合わせた構造を有してよい。
【0025】
図2は、第1実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。A‐A断面は活性領域110を通り、X‐Z平面に平行な断面である。本例の縦型GaN‐MOSFET100は、1つのGaN半導体チップにSBD領域130及びMOSFET領域150を有する、SBD内蔵型のMOSFETである。縦型GaN‐MOSFET100は、N+型のGaN基板10と、GaN層20と、層間絶縁膜36と、ソース電極60と、ドレイン電極62とを有する。
【0026】
GaN層20は、GaN基板10上に設けられたエピタキシャル層である。GaN層20は、ソース電極60と接する上面21と、GaN基板10と接する下面29とを有する。また、GaN層20は、N-型の下方ドリフト領域22と、N型の上方ドリフト領域24‐1及び24‐2と、P型のウェル領域26‐1と、P+型のコンタクト領域28と、N+型のソース領域32と、ゲートトレンチ部50と、ダイオードトレンチ部40とを含む。なお、上方ドリフト領域24‐1は、第1の上方ドリフト領域の一例であり、上方ドリフト領域24‐2は、第2の上方ドリフト領域の一例である。また、ウェル領域26‐1は、第1のウェル領域26の一例である。
【0027】
本例の縦型GaN‐MOSFET100は、X軸方向において交互にSBD領域130及びMOSFET領域150を有する。なお、SBD領域130はMOSFET領域150に隣接するショットキーダイオード領域の一例であり、MOSFET領域150はトランジスタ領域の一例である。A‐A断面において、SBD領域130とMOSFET領域150とが配列される配列方向は、X軸方向に平行である。
【0028】
本例のSBD領域130は、ダイオードトレンチ部40と、N-型の下方ドリフト領域22と、N型の上方ドリフト領域24‐1とを少なくとも含む。ダイオードトレンチ部40は、X軸方向においてウェル領域26‐1に隣接し、二つのウェル領域26‐1の間に設けられてよい。本例のダイオードトレンチ部40は、GaN層20の上面21からウェル領域26‐1の底部27‐1よりも浅い位置まで設けられる。ダイオードトレンチ部40の底部43をウェル領域26‐1の底部27‐1よりも上面21近くに設けることにより、PN接合部に逆バイアスが印加された場合に、隣接するウェル領域26‐1間の領域であって、ダイオードトレンチ部40の下方の領域において空乏層が広がりやすくなる。それゆえ、ダイオードトレンチ部40の底部43がウェル領域26‐1の底部27‐1と同じ深さである場合又はより深い場合に比べて、耐圧を向上させることができる。なお、PN接合部とは、例えば、P型のウェル領域26と、上方ドリフト領域24および下方ドリフト領域22とにより形成されるPN接合部である。
【0029】
本例のダイオードトレンチ部40は、GaN層20を上面21から所定深さまでエッチングすることにより形成されたダイオードトレンチ42と、ダイオードトレンチ42の内部に充填され且つGaN層20の上面21上にも設けられたダイオード導電部44とを有する。ダイオードトレンチ部40の底部43は、上方ドリフト領域24‐1の上部23‐1に接続してよい。本例のSBD領域130においては、ダイオード導電部44が上方ドリフト領域24‐1の上部23‐1に接続することにより、金属半導体接合が形成される。ダイオード導電部44は、SBD領域130のアノードとして機能してよい。また、ソース電極60は、SBD領域130のアノード電極として機能してよい。
【0030】
本例のウェル領域26‐1は、下方ドリフト領域22上にエピタキシャル形成されたP型GaN層の一部である。これに対して、本例の上方ドリフト領域24‐1及び24‐2は、ウェル領域26‐1を構成するP型GaN層の一部を、N型ドーパントでカウンタードープすることにより形成したN型領域である。
【0031】
下方ドリフト領域22は、GaN基板10上に形成されたN型エピタキシャル層の一部である。下方ドリフト領域22は、ウェル領域26‐1の底部27‐1と、上方ドリフト領域24‐1の底部25‐1とに接続する。下方ドリフト領域22、上方ドリフト領域24‐1及びGaN基板10は、SBD領域130のカソードとして機能してよい。また、ドレイン電極62はカソード電極として機能してよい。
【0032】
本例のMOSFET領域150は、ゲートトレンチ部50と、N+型のソース領域32と、P+型のコンタクト領域28と、N-型の下方ドリフト領域22と、N型の上方ドリフト領域24‐2とを少なくとも含む。ゲートトレンチ部50は、X軸方向においてダイオードトレンチ部40から離間し、ダイオードトレンチ部40に隣接するウェル領域26‐1に隣接する。ゲートトレンチ部50もダイオードトレンチ部40と同様に、二つのウェル領域26‐1の間に設けられる。
【0033】
本例のゲートトレンチ部50は、部分的にダイオードトレンチ部40と同様に形成される。本例において、ゲートトレンチ部50の底部53は、Z軸方向において、ダイオードトレンチ部40の底部43と同じ位置に設けられる。なお、Z軸方向は、GaN層20の深さ方向の一例である。本例においては、ゲートトレンチ部50とダイオードトレンチ部40とを部分的に同じ工程で形成するので、個別に異なる深さで形成する場合に比べて、製造時間及び製造コストの点で有利である。
【0034】
本例のゲートトレンチ部50は、ゲートトレンチ52と、ゲートトレンチ52の底部53及び側壁に接して設けられたゲート絶縁膜56と、ゲート絶縁膜56に接してゲートトレンチ52の内部に充填されたゲート導電部54とを有する。なお、ゲートトレンチ部50の上部には層間絶縁膜36が設けられる。層間絶縁膜36により、ゲート導電部54とソース電極60とは互いに電気的に分離される。
【0035】
ゲートトレンチ部50の底部53は、上方ドリフト領域24‐2の上部23‐2に接続してよい。また、下方ドリフト領域22は、上方ドリフト領域24‐2の底部25‐2に接続してよい。上方ドリフト領域24‐2及び下方ドリフト領域22は、ゲートオン時に電流が流れる経路として機能してよい。
【0036】
本例において、ゲートトレンチ部50の底部53のX軸方向の幅は、上方ドリフト領域24‐2の底部25‐2のX軸方向の幅よりも小さい。それゆえ、上方ドリフト領域24‐2の側部33‐2L及び33‐2Rは、Z軸に対して、ゲートトレンチ部50の底部53のX軸方向の端部から、上方ドリフト領域24‐2の底部25‐2のX軸方向の端部に向かって傾く。これにより、本例のMOSFET領域150においては、ゲートオン時にZ軸負方向に進むにつれてX軸方向に広がるように電流が流れ得る。本例では、底部53及び底部25‐2のX軸方向の幅が同じである場合に比べて電流のパスを広げることができるので、MOSFET領域150の内部抵抗を低減することができる。
【0037】
本例において、上方ドリフト領域24‐1と上方ドリフト領域24‐2とは同じ形状を有する。つまり、ゲートトレンチ部50の底部53とダイオードトレンチ部40の底部43とのX軸方向の幅は同じであり、上方ドリフト領域24‐1の底部25‐1と上方ドリフト領域24‐2の底部25‐2とのX軸方向の幅も同じである。それゆえ、ダイオードトレンチ部40の底部43のX軸方向の幅もまた、上方ドリフト領域24‐1の底部25‐1のX軸方向の幅よりも小さい。但し、他の例においては、ダイオードトレンチ部40の底部43と上方ドリフト領域24‐1の底部25‐1とのX軸方向の幅は同じであってもよい。この場合、底部43が底部25‐1よりも小さい場合に比べて、PN接合部に逆バイアスが印加されたときに空乏層が広がりやすくなる点が有利である。
【0038】
また、ダイオードトレンチ部40と同様に、本例のゲートトレンチ部50も、GaN層20の上面21からウェル領域26‐1の底部27‐1よりも浅い位置まで設けられる。これにより、PN接合部に逆バイアスが印加された場合に、ゲートトレンチ部50の底部53の角部58近傍に比べて、ウェル領域26‐1の底部27‐1の角部31近傍に電界が集中しやすくなる。それゆえ、仮に破壊(ブレークダウン)が生じるとしても角部58ではなく角部31が破壊されるので、ゲート絶縁膜56が破壊されることを防ぐことができる。なお、一旦、ゲート絶縁膜56が破壊されるとMOSFETの機能が失われる。これに対して、仮にウェル領域26‐1の角部31近傍が電界集中により破壊されたとしても、ゲート閾値電圧等には影響がないので、MOSFETの機能を維持することができる。
【0039】
また、仮に電界集中による破壊が生じる場合には、ウェル領域26‐1の角部31が破壊される。それゆえ、ゲートトレンチ部50の角部58が破壊される場合に比べて、破壊発生場所をソース領域32から遠ざけることができる。これにより、ゲートトレンチ部50の角部58が破壊される場合と比べて、ブレークダウン電流がソース領域32に流れることにより寄生PNPトランジスタがオンすることをより確実に防ぐことができる。
【0040】
ゲートオン状態のとき(本例では、ゲート導電部54に所定の正電圧が印加されているとき)、ゲートトレンチ部50の側壁近傍のウェル領域26‐1(即ち、チャネル形成領域)には電荷反転層が形成される。このとき、ソース電極60とドレイン電極62との間に所定の電位差が設けられていると、ドレイン電極62から、GaN基板10、下方ドリフト領域22、上方ドリフト領域24‐2、電荷反転層及びソース領域32を経て、ソース電極60に電流が流れる。これに対して、ゲートオフ状態のとき(本例では、ゲート導電部54に所定の負電圧又はゼロ電圧が印加されているとき)、電荷反転層は消滅し、ソース電極60及びドレイン電極62間に電流は流れない。
【0041】
P型のウェル領域26‐1と、N型の上方ドリフト領域24‐1及び24‐2並びにN-型の下方ドリフト領域22とは、PN接合を形成する。本明細書においては、当該PN接合をボディダイオード140と称する。インバータモジュールの動作においては、ドレイン電極62の電位VDがソース電極60の電位VSよりも低くなる場合がある。例えば、ドレイン電極62に負バイアスが印加され、ソース電極60に正バイアスが印加される動作モードがある。一般に、SBD領域130の順方向電圧VFは、ボディダイオード140の順方向電圧VFよりも低い。それゆえ、本例においては、VDがVSよりも低い場合に、ボディダイオード140ではなく、SBD領域130に電流が流れる。
【0042】
仮に、ボディダイオード140に電流が流れる場合には、正孔及び電子の両方が流れるので、正孔及び電子の再結合に起因する内部発光が生じる。これに対して、SBD領域130に流れる電流は主として電子電流であるので、ボディダイオード140に電流が流れる場合にくべて、内部発光の問題を低減することができる。また、相対的に順方向電圧VFが低いSBD領域130に電流が流れるので、ボディダイオード140に電流が流れる場合に比べて、ダイオード通電における損失を低減することができる。
【0043】
さらに、本例の縦型GaN‐MOSFET100は、SBD内蔵型のMOSFETであるので、インバータモジュールにおいてMOSFET用の半導体チップとダイオード用の半導体チップとを別個に設ける必要が無い。それゆえ、半導体チップを別個に用いる場合に比べて、インバータモジュールを小型化できる点が有利である。
【0044】
A‐A断面に示した活性領域110におけるMOSFET領域150及びSBD領域130の割合は1:1であるが、MOSFET領域150の割合はSBD領域130の割合よりも高くてもよい。MOSFET領域150及びSBD領域130の割合は、2:1から3:1であってよい。MOSFET領域150の割合を高くすることにより、MOSFET領域150とSBD領域130との割合が同じである場合に比べて、縦型GaN‐MOSFET100のゲートオン時における定格電流を増加させることができる。
【0045】
A‐A断面においては、MOSFET領域150及びSBD領域130の各単位セルの範囲を破線で示す。単位セルのX軸方向の長さは、例えば10μmである。本例の各単位セルは、Y軸方向に延伸するストライプ形状である。但し、他の例において、MOSFET領域150のゲートトレンチ部50は、X‐Y平面においてハニカム状に設けられてよく、SBD領域130のダイオードトレンチ部40は、六角形のゲートトレンチ部50の内側及び外側の少なくともいずれかに設けられてよい。
【0046】
図3Aは、縦型GaN‐MOSFET100の等価回路図である。SBD領域130、ボディダイオード140及びMOSFET領域150は、ソース‐ドレイン間において互いに並列に接続される。本例の縦型GaN‐MOSFET100においては、ソース‐ドレイン間に順バイアスが印加されているとき(V
S<V
D)にMOSFET領域150に(i)主電流が流れる。また、ソース‐ドレイン間に逆バイアスが印加されているとき(V
D<V
S)に、SBD領域130およびボディダイオード140に(ii)順電流が流れる。ただし、上述の様に、V
D<V
Sであって(即ち、PN接合部に順バイアスが印加され)、且つ、ゲートオフ状態であり、ソース‐ドレイン間に電流が流れる場合には、ボディダイオード140ではなく、SBD領域130に(iii)順電流が流れる。これにより、GaNの内部発光の問題を低減することができる。また、ボディダイオード140に電流が流れず、SBD領域130のみに順電流が流れている場合には、下方ドリフト領域22中に少数キャリアである正孔および電子がほとんど蓄積されない。それゆえ、PN接合部に逆バイアスが印加された場合に、ボディダイオード140にテール電流が流れることがないので、ボディダイオード140も、SBD領域130と同程度の速度で、電流遮断状態(即ち、空乏層が形成された状態)にスイッチングされ得る。
【0047】
図3Bは、PN接合部に逆バイアスが印加され、活性領域110全体に空乏層30が広がった様子を示す図である。
図3Bは、V
S<V
D、且つ、ゲートオフ時の状態を示す。なお、
図3Bにおいては、空乏層30の広がりを破線にて示す。上述のように、トレンチ部(ダイオードトレンチ部40及びゲートトレンチ部50)の底部を、ウェル領域26‐1の底部27‐1よりも浅い位置に設ける。これにより、PN接合部に逆バイアスが印加された場合に、SBD領域130及びMOSFET領域150において空乏層30が広がりやすくなるので耐圧を向上させることができる。
【0048】
図4は、第1実施形態における
図1のB‐B断面を示す図である。B‐B断面は活性領域110及びエッジ終端領域160を通り、X‐Z平面に平行な断面である。エッジ終端領域160は、N型の上方ドリフト領域24‐3と、P型のウェル領域26‐2と、P+型のコンタクト領域28と、絶縁膜38と、エッジトレンチ部70とを少なくとも含む。ウェル領域26‐2は第2のウェル領域の一例であり、上方ドリフト領域24‐3は第3の上方ドリフト領域の一例である。ウェル領域26‐2はウェル領域26‐1と同じ工程により形成されてよく、上方ドリフト領域24‐3は上方ドリフト領域24‐1及び24‐2と同じ工程により形成されてよい。
【0049】
B‐B断面において、エッジトレンチ部70は、X軸方向においてダイオードトレンチ部40及びゲートトレンチ部50から離間して設けられる。エッジトレンチ部70は、ウェル領域26‐2に隣接し、二つのウェル領域26‐2の間に設けられる。また、本例のエッジトレンチ部70は、GaN層20の上面21からウェル領域26‐2の底部27‐2よりも浅い位置まで設けられる。
【0050】
本例のエッジトレンチ部70は、エッジトレンチ72と、エッジトレンチ72の底部73及び側壁に接してエッジトレンチ72の内部に充填された絶縁膜38とを有する。本例の絶縁膜38は、層間絶縁膜36と異なる工程で形成された膜である。絶縁膜38は、層間絶縁膜36と同じ材料及び組成の絶縁膜であってよく、異なる材料及び組成の絶縁膜であってもよい。
【0051】
エッジトレンチ部70の底部73は、上方ドリフト領域24‐3の上部23‐3に接続してよい。それゆえ、絶縁膜38も上方ドリフト領域24‐3の上部23‐3に接続してよい。また、下方ドリフト領域22は、上方ドリフト領域24‐3の底部25‐3に接続してよい。
【0052】
エッジ終端領域160において、ウェル領域26‐2及びコンタクト領域28は、活性領域110の周囲を囲む様に環状に設けられてよい。本例のエッジ終端領域160は、環状のガードリング構造を有する。本例のエッジ終端領域160において、ウェル領域26‐2及びコンタクト領域28は、ソース電極60から電気的に分離された浮遊電位を有する。PN接合部に逆バイアスが印加されたときに、活性領域110で発生した空乏層30がエッジ終端領域160中を外側(
図4の例ではX軸正方向)に広がることにより、活性領域110における電界集中を低減することができる。
【0053】
図5は、縦型GaN‐MOSFET100の製造方法を示すフロー図である。本例では、段階S10からS60までをこの順に実行する。なお、各段階における処理に適宜変更を加えてもよい。本例においては、段階S20及びS40の各々において注入したドーパントを活性化するべくGaN層20をアニールするが、他の例においては、段階S20及びS40において注入したドーパント含有GaN層20を、段階S40においてアニールしてもよい。
【0054】
図6の(a)~(f)は、製造方法の各段階を示す図である。なお、
図6の(a)~(f)においては、理解を容易にするべく、SBD領域130、MOSFET領域150及びエッジ終端領域160の各単位セルの断面を示す。
【0055】
図6の(a)は、GaN層20をエピタキシャル形成する段階S10である。段階S10においては、まずGaN基板10上に、下方ドリフト領域22に対応するN-型GaN層222をエピタキシャル形成する。次いで、N-型GaN層222上において、ウェル領域26に対応するP型GaN層226をエピタキシャル形成する。その後、P型GaN層226上において、コンタクト領域28に対応するP+型GaN層228をエピタキシャル形成する。N-型GaN層222は第1のGaN層の一例であり、P型GaN層226は第2のGaN層の一例である。
【0056】
GaN基板10は、いわゆるc面GaN基板であってよい。GaN基板10のc軸方向は、Z軸方向と平行であってよい。また、GaN基板10は、貫通転位密度が1E+7cm-2未満の低転位自立基板であってよい。本例のGaN基板10は、Z軸方向の厚さが350μmである。
【0057】
エピタキシャル層は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により形成してよい。MOCVD法に代えて、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法により各エピタキシャル層を形成してもよい。
【0058】
本例においては、MOCVD法を採用する。本例においては、N-型GaN層222を形成するべく、トリメチルガリウム((CH3)3Ga、以降においてTMGと略記する)、アンモニア(NH3)及びモノシラン(SiH4)の各ガスを含む原料ガスと、窒素(N2)ガス及び水素(H2)ガスを含む押圧ガスとをGaN基板10上に流す。このとき、GaN基板10の温度は1100℃としてよい。なお、モノシランのSi元素が、N型ドーパントとして機能し得る。縦型GaN‐MOSFET100の耐圧にも依存するが、N-型GaN層222は、厚さ4μm以上100μm以下であってよく、1E+15cm-3以上5E+16cm-3以下のN型ドーパント濃度を有してよい。なお、Eは10の冪を意味し、1E+15は1×1015を意味する。なお、N-型GaN層222は下方ドリフト領域22に対応してよく、本例においてN-型GaN層222と下方ドリフト領域22とは一対一に対応する。
【0059】
また、本例においては、P型GaN層226を形成するべく、TMG、アンモニア及びビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)の各ガスを含む原料ガスと、窒素ガス及び水素ガスを含む押圧ガスとをN-型GaN層222上に流す。このとき、GaN基板10の温度は1050℃としてよい。なお、Cp2MgのMgは、P型GaN層226におけるP型ドーパントとして機能し得る。P型GaN層226は、厚さ0.5μm以上2μm以下であってよく、5E+16cm-3以上1E+18cm-3以下のP型ドーパント濃度を有してよい。
【0060】
さらに、本例においては、P+型GaN層228を形成するべく、TMG、アンモニア及びCp2Mgの各ガスを含む原料ガスと、窒素ガス及び水素ガスを含む押圧ガスとをP型GaN層226上に流す。このとき、GaN基板10の温度は1050℃としてよい。なお、P型GaN層226を形成する場合に比べてCp2Mg濃度を高くすることにより、P型GaN層226よりも高いP型ドーパント濃度を有するP+型GaN層228を形成することができる。P+型GaN層228は、厚さ0.02μm以上0.2μm以下であってよく、1E+19cm-3以上1E+20cm-3以下のP型ドーパント濃度を有してよい。
【0061】
MOCVD工程の後に、GaN基板10及びGaN層20から成る積層体をMOCVD装置から取り出し、熱処理装置へ移動させてよい。GaN層20におけるN型及びP型ドーパントを活性化させるべく、熱処理装置において積層体をアニールしてよい。なお、GaN層20の上面21上にAlN(窒化アルミニウム)層のキャップ層を設けてアニールしてよい。これにより、P+型GaN層228における窒素の分解を低減することができる。本例においては、酸素ガス含有の窒素ガス雰囲気において、当該積層体を650℃で30分間熱処理する。積層体を熱処理装置から取り出して、キャップ層をKOHaq(水酸化カリウム水溶液)等により除去してよい。これにより、段階S10を終了する。
【0062】
図6の(b)は、ソース領域32を形成するべく、上面21から所定深さまでN型ドーパントをイオン注入する段階S20である。本例においては、まず、ソース領域32に対応する開口を有するレジストマスクを形成する。その後、イオン注入装置を用いて、レジストマスクの開口に対応するGaN層20の領域にSiをイオン注入する。
【0063】
次いで、レジストマスクを除去後に、GaN基板10及びGaN層20の積層体を熱処理装置へ移動させる。そして、注入したSiを活性化させるべく、窒素ガス雰囲気において積層体を1000℃で10分間アニールする。アニール後に、上面21から酸化層を除去するために上面21を希フッ酸でエッチング処理してもよい。その後、上面21を純水でリンスしてよい。これにより、上面21からの深さが0.05μm以上0.2μm以下であり、5E+18cm-3以上1E+20cm-3以下のN型ドーパント濃度を有する、ソース領域32を形成してよい。
【0064】
図6の(c)は、エッチングによりトレンチを形成する段階S30である。本例においては、まず、ダイオードトレンチ42、ゲートトレンチ52及びエッジトレンチ72の各々に対応する開口を有するレジストマスクを形成する。その後、エッチング装置を用いて、当該レジストマスクを介してGaN層20を上面21から所定深さまでエッチングする。これにより、レジストマスクの開口に対応するGaN層20の領域に、上面21からの深さが0.5μm以上2.0μm以下のダイオードトレンチ42、ゲートトレンチ52及びエッジトレンチ72を形成する。
【0065】
本例において、各トレンチは、上面21からP型GaN層226の底部よりも浅い位置まで設けられる。つまり、各トレンチの底部は、N-型GaN層222(下方ドリフト領域22)には達しない。各トレンチの底部と、N-型GaN層222(下方ドリフト領域22)とは所定長さだけ離間してよく、例えば、0.02μm以上0.2μm以下離間する。
【0066】
なお、他の例においては、ダイオード導電部44と上方ドリフト領域24‐1とのショットキー性を向上させるべく(即ち、順方向電圧VFを低減するべく)、上方ドリフト領域24‐1の上部23‐1にN+型GaN領域を設けてもよい。ただし、この場合、順方向電圧VFを低減することができるが、SBDのリーク電流が増加する。そこで、N+型GaN領域に代えて、N-型GaN領域としてもよい。ただし、N-型GaN領域を採用する場合には、SBDのリーク電流を低減することができるが、順方向電圧VFが増加する。それゆえ、装置特性に応じて、N+型GaN領域及びN-型GaN領域のいずれかを採用してもよい。
【0067】
図6の(d)は、上方ドリフト領域24を形成するべく、各トレンチとN-型GaN層222との間にN型のドーパントを注入する段階S40である。段階S40においては、段階S30において用いた開口付きレジストマスクを再度利用してよい。本例においては、N型のドーパントをイオン注入することにより、P型のウェル領域26の一部をカウンタードープする。その後、熱処理装置において積層体をアニールする。これにより、5E+16cm
-3以上5E+17cm
-3以下のN型ドーパント濃度を有する上方ドリフト領域24を形成する。
【0068】
図6の(e)は、ゲート絶縁膜56及びゲート導電部54を形成する段階S50である。本例においては、まず、プラズマCVD法により酸化物を堆積させる。ゲート絶縁膜56は、酸化シリコン(SiO
2)または酸化アルミニウム(Al
2O
3)であってよい。ゲート絶縁膜56形成後に、スパッタリングによりゲート導電部54を形成する。ゲート導電部54は、アルミニウム(Al)で形成されてよい。これに代えて、CVDにより、ドーパントを含有するポリシリコンのゲート導電部54を形成してもよい。その後、エッチングによりゲート絶縁膜56及びゲート導電部54をそれぞれパターニングしてよい。
【0069】
図6の(f)は、絶縁膜38をエッジトレンチ72内に形成し、ダイオード導電部44をダイオードトレンチ42内に形成し、さらにその後、層間絶縁膜36、ソース電極60及びドレイン電極62を形成する段階S60である。本例においては、まず、スピンコーティング等によりエッジトレンチ72を充填するよう絶縁膜38を形成する。絶縁膜38は、BPSG(Boro‐Phospho Silicate Glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)およびBSG (Borosilicate Glass)のうち、一種類以上の材料で形成されてよい。
【0070】
次いで、ダイオードトレンチ42を充填するようダイオードトレンチ部40内にダイオード導電部44を設ける。ダイオード導電部44は、上方ドリフト領域24‐1と接合した場合に、ソース電極60よりも大きな仕事関数を有する金属導電部であってよい。ダイオード導電部44は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)又は白金(Pt)で形成されてよい。その後、絶縁膜38と同様に、層間絶縁膜36を形成する。層間絶縁膜36は、ゲートトレンチ部50の上部のみに残留するように、パターニング処理してよい。次いで、ソース電極60及びドレイン電極62を形成する。本例において、ソース電極60はオーミック電極層の一例である。
【0071】
ソース電極60は、ダイオードトレンチ部40及びゲートトレンチ部50上に設けられる。本例のソース電極60は、ダイオード導電部44と、上面21に露出するP+型のコンタクト領域28とに接する。ソース電極60は、下層としてのチタン(Ti)層と、上層としてのアルミニウム層とを含む積層構造を有してよい。この積層構造は、GaN層20のコンタクト領域28に対してオーミック接続すると見なしてよい。なお、ドレイン電極62も、GaN基板10に接するチタン層と、当該チタン層に接するアルミニウム層とを含む積層構造を有してよい。チタン層及びアルミニウム層にさらにニッケル層及び金層を積層した、Ti/Al/Ni/Au積層構造を有してもよい。各金属層はスパッタリング法により堆積形成した後に、エッチングによりパターン形成してよい。
【0072】
図7は、第2実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例のGaN層20は、ウェル領域26‐1と下方ドリフト領域22との間に、P+型の埋め込み領域34をさらに有する。本例は係る点において、第1実施形態と異なる。埋め込み領域34を設けることにより、PN接合部の逆バイアス印加時にダイオードトレンチ部40下の上方ドリフト領域24‐1において空乏層30が広がりやすくなる。これにより、第1実施形態に比べて活性領域110の耐圧を向上させることができる。即ち、アバランシェ耐量を向上させることができる。また、埋め込み領域34を設けることにより、ゲートオフ時のダイオード導電部44に流れるリーク電流を低減することができる。
【0073】
本例のMOSFET領域150においては、埋め込み領域34と上方ドリフト領域24‐1及び24‐2との接触点が、ウェル領域26‐1の底部27‐1の角部31となる。第1実施形態と同様に、本例の角部31も、Z軸方向においてゲートトレンチ部50の角部58より深い。それゆえ、第1実施形態と同様に、ゲート絶縁膜56の破壊及び望ましくない寄生PNPトランジスタのオンを確実に防ぐことができる。
【0074】
なお、エッジ終端領域160のGaN層20においても、ウェル領域26‐2と下方ドリフト領域22との間に埋め込み領域34が設けられてよい。これにより、第1実施形態に比べてエッジ終端領域160において空乏層30が広がりやすくなる点が有利である。
【0075】
図8の(a)~(d)は、第2実施形態における段階S10の詳細を示す図である。本例の段階S10は、段階S12、S14、S16及びS18をこの順に有する。
図8の(a)は、N-型GaN層222をエピタキシャル形成する段階S12である。段階S12は、
図6の(a)で述べた内容と同じであるので、詳細を省略する。
【0076】
図8の(b)は、N-型GaN層222の上面からP型ドーパントをイオン注入する段階S14である。本例においては、まず、埋め込み領域34に対応する開口を有するレジストマスクを形成する。その後、イオン注入装置を用いて、レジストマスクの開口に対応するN-型GaN層222の領域にMgをイオン注入する。次いで、レジストマスクを除去し、N-型GaN層222の上面全体にAlN等のキャップ層を形成する。その後、GaN基板10及びN-型GaN層222の積層体を熱処理装置へ移動させて、Mgを活性化するべく積層体をアニールする。アニール後にキャップ層は除去してよい。
【0077】
図8の(c)は、P型GaN層226をエピタキシャル形成する段階S16である。段階S16は、
図6の(a)で述べた内容と同じであるので、詳細を省略する。段階S16において、N-型GaN層222中のMgイオン注入領域に接するP型GaN層226の一部の領域は、P型GaN層226の他の領域よりも高濃度のP型ドーパントを有する埋め込み領域34と見なしてよい。即ち、埋め込み領域34は、Z軸方向においてN-型GaN層222とP型GaN層226との境界にまたがって設けられてよい。埋め込み領域34は、5E+17cm
-3以上2E+19cm
-3以下のP型ドーパント濃度を有してよい。
図8の(d)は、P+型GaN層228をエピタキシャル形成する段階S18である。段階S18は、
図6の(a)で述べた内容と同じであるので、詳細を省略する。
【0078】
図9は、第3実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例において、ダイオードトレンチ部40の底部43は、Z軸方向において、ゲートトレンチ部50の底部53よりも浅い位置に設けられる。即ち、本例の底部43は、底部53よりも上面21に近い位置に設けられる。Z軸方向における底部43と底部53との差D
1は、数nmから数十nmであってよい。係る点が、第1実施形態と異なる。
【0079】
本例において、ダイオードトレンチ部40の底部43のX軸方向の幅L1は、ゲートトレンチ部50の底部53のX軸方向の幅L2よりも小さい。それゆえ、第1実施形態に比べて、ダイオードトレンチ部40直下の領域であって2つのウェル領域26‐1間に空乏層30が広がりやすくなる。PN接合部に逆バイアスが印加されたときに、SBD領域130がピンチオフしやすくなるので、SBD領域130における順方向リーク電流を低減することができる。
【0080】
本例においては、上述の段階S30においてダイオードトレンチ42とゲートトレンチ52とが異なる深さとなるように、GaN層20をエッチングする。次いで、上述の段階S40において、上方ドリフト領域24‐1と上方ドリフト領域24‐2とを形成するべく、N型ドーパントをイオン注入する。このとき、上方ドリフト領域24‐1及び24‐2において注入深さが異なるので、異なる注入条件で順次N型ドーパントをイオン注入してよい。加速エネルギー及びドーズ濃度の少なくともいずれか一つの条件が、異なっていてよい。なお、本例と第2実施形態とを組み合わせてもよいのは勿論である。
【0081】
図10は、第4実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例において、ダイオードトレンチ部40の底部43は、Z軸方向において、ゲートトレンチ部50の底部53と同じ位置に設けられる(破線にて示す)。ただし、本例においては、ダイオードトレンチ部40のX軸方向の幅L
1は、ゲートトレンチ部50のX軸方向の幅L
2よりも大きい。本例においては、上述の段階S30においてダイオードトレンチ42とゲートトレンチ52とに対応する開口各々が異なるレジストマスクを用いて、GaN層20をエッチングする。このように、ダイオードトレンチ部40のX軸方向の幅を大きくすることにより、PN接合部においてアバランシェ降伏が発生したときに、ダイオード導電部44を通じて正孔をソース電極60へ逃がしやすくすることができる。なお、アバランシェ降伏が発生したときに、ドレイン電極62は電子の吸い込み口として機能してよい。
【0082】
また、X軸方向において、ゲートトレンチ部50の底部53に接続する上方ドリフト領域24‐2の幅L2は、ダイオードトレンチ部40の底部43に接続する上方ドリフト領域24‐1の幅L1よりも小さい。これにより、ゲートトレンチ部50のX軸方向の幅L2をダイオードトレンチ部40のX軸方向の幅L1と同じにする場合に比べて、PN接合部に逆バイアスが印加されたときに、ゲートトレンチ部50直下の上方ドリフト領域24‐2に空乏層30が広がりやすくなる。それゆえ、第1実施形態に比べてゲート絶縁膜56をより確実に保護することができる。なお、本例と第2及び第3実施形態の少なくともいずれかを組み合わせてもよいのは勿論である。
【0083】
図11は、第5実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例においては、ゲートトレンチ部50及びダイオードトレンチ部40のX軸方向の幅は、共に幅L
2で同じであるが、上方ドリフト領域24‐2の幅L
2が、上方ドリフト領域24‐1の幅L
1よりも小さい。係る点において、第4実施形態と異なる。上述の段階S40において、ダイオードトレンチ部40直下へのドーズ量を、ゲートトレンチ部50直下へのドーズ量よりも多くすることにより、上方ドリフト領域24‐2を形成してよい。本例においても、第1実施形態に比べてゲート絶縁膜56をより確実に保護することができる。また、第1実施形態と比べて、ウェル領域26‐1と上方ドリフト領域24‐2との接触面積を増加させることができる。それゆえ、第1実施形態と比べて空乏層30が広がりやすくなるので、アバランシェ耐量を向上させることができる。なお、本例と第2及び第3実施形態の少なくともいずれかを組み合わせてもよいのは勿論である。
【0084】
図12は、第6実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例においては、X軸方向において、ダイオードトレンチ部40の幅L
1は、ゲートトレンチ部50の幅L
2よりも小さい。係る点が第1実施形態と異なる。本例においては、PN接合部に逆バイアスが印加されたときに、ダイオードトレンチ部40直下の上方ドリフト領域24‐1に空乏層30が広がりやすくなる。それゆえ、SBD領域130がピンチオフしやすくなるので、SBD領域130におけるリーク電流を低減することができる。なお、本例と第2及び第3実施形態の少なくともいずれかを組み合わせてもよいのは勿論である。本例と第2及び第3実施形態の少なくともいずれかを組み合わせることにより、さらに高いリーク電流の低減効果を得ることができる。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0086】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
第1導電型の窒化ガリウム基板と、前記窒化ガリウム基板上に設けられた窒化ガリウム層とを有する縦型半導体装置であって、
トランジスタ領域と、
前記トランジスタ領域に隣接するショットキーダイオード領域と、
を備え、
前記縦型半導体装置は、前記ショットキーダイオード領域における前記窒化ガリウム層において、
第2導電型の第1のウェル領域と、
前記トランジスタ領域と前記ショットキーダイオード領域とが配列される配列方向において前記第1のウェル領域に隣接し、前記窒化ガリウム層の上面から前記第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、ダイオードトレンチ部と、
前記ダイオードトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第1の上方ドリフト領域と、
前記第1のウェル領域および前記第1の上方ドリフト領域の各底部に接続する、第1導電型の下方ドリフト領域と、
前記ダイオードトレンチ部内に設けられ、前記第1の上方ドリフト領域の上部に接続する導電部と、
を有する、縦型半導体装置。
[項目2]
前記縦型半導体装置は、前記トランジスタ領域における前記窒化ガリウム層において、
前記配列方向において前記ダイオードトレンチ部から離間し、前記第1のウェル領域に隣接し、且つ、前記窒化ガリウム層の上面から前記第1のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、ゲートトレンチ部と、
前記ゲートトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第2の上方ドリフト領域と、
を有し、
前記下方ドリフト領域は、前記第2の上方ドリフト領域の底部にも接続する、
請求項1に記載の縦型半導体装置。
[項目3]
前記窒化ガリウム層の深さ方向において、前記ダイオードトレンチ部の底部は、前記ゲートトレンチ部の底部よりも前記窒化ガリウム層の前記上面に近い位置に設けられる、請求項2に記載の縦型半導体装置。
[項目4]
前記窒化ガリウム層の深さ方向において、前記ダイオードトレンチ部の底部は、前記ゲートトレンチ部の底部と同じ位置に設けられる、請求項2に記載の縦型半導体装置。
[項目5]
前記配列方向において、前記ダイオードトレンチ部の幅は、前記ゲートトレンチ部の幅よりも大きい、請求項2から4のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
[項目6]
前記配列方向において、前記ゲートトレンチ部の底部に接続する前記第2の上方ドリフト領域の幅は、前記ダイオードトレンチ部の底部に接続する前記第1の上方ドリフト領域の幅よりも小さい、請求項2から5のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
[項目7]
前記配列方向において、前記ダイオードトレンチ部の幅は、前記ゲートトレンチ部の幅よりも小さい、請求項2から4のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
[項目8]
前記縦型半導体装置は、少なくとも前記ダイオードトレンチ部および前記窒化ガリウム層の前記上面に接するオーミック電極層をさらに備え、
前記ダイオードトレンチ部内に設けられた前記導電部は、前記オーミック電極層よりも大きな仕事関数を有する金属導電部である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
[項目9]
前記縦型半導体装置は、前記第1のウェル領域と前記下方ドリフト領域との間に第2導電型の埋め込み領域をさらに有する、請求項2から8のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
[項目10]
前記縦型半導体装置は、上面視において前記トランジスタ領域および前記ショットキーダイオード領域を囲む様に設けられたエッジ終端領域をさらに備え、
前記エッジ終端領域における前記窒化ガリウム層は、
第2導電型の第2のウェル領域と、
前記配列方向において前記第2のウェル領域に隣接し、前記窒化ガリウム層の上面から前記第2のウェル領域の底部よりも浅い位置まで設けられる、エッジトレンチ部と、
前記エッジトレンチ部の底部に接続する第1導電型の第3の上方ドリフト領域と、
前記エッジトレンチ部内に設けられ、前記第3の上方ドリフト領域に接続する絶縁膜と、
を有し、
前記下方ドリフト領域は、前記第3の上方ドリフト領域の底部にも接続する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の縦型半導体装置。
[項目11]
トランジスタ領域と、前記トランジスタ領域に隣接するショットキーダイオード領域とを有する縦型半導体装置の製造方法であって、
第1導電型の窒化ガリウム基板上に、第1導電型の第1の窒化ガリウム層と第2導電型の第2の窒化ガリウム層とを少なくとも有する窒化ガリウム層を、エピタキシャル形成する段階と、
前記窒化ガリウム層の上面から前記第2の窒化ガリウム層の底部よりも浅い位置までトレンチを形成するエッチング段階と、
前記トレンチの底部と前記第1の窒化ガリウム層の上部とに接続する第1導電型の上方ドリフト領域を形成するべく、少なくとも前記トレンチと前記第1の窒化ガリウム層との間に第1導電型のドーパントを注入する段階と、
前記トレンチの前記底部において前記上方ドリフト領域に接続する前記ショットキーダイオード領域のダイオード導電部を前記トレンチ内に形成する段階と、
を備える縦型半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0087】
10・・GaN基板、20・・GaN層、21・・上面、22・・下方ドリフト領域、23・・上部、24・・上方ドリフト領域、25・・底部、26・・ウェル領域、27・・底部、28・・コンタクト領域、29・・下面、30・・空乏層、31・・角部、32・・ソース領域、33・・側部、34・・埋め込み領域、36・・層間絶縁膜、38・・絶縁膜、40・・ダイオードトレンチ部、42・・ダイオードトレンチ、43・・底部、44・・ダイオード導電部、50・・ゲートトレンチ部、52・・ゲートトレンチ、53・・底部、54・・ゲート導電部、56・・ゲート絶縁膜、58・・角部、60・・ソース電極、62・・ドレイン電極、70・・エッジトレンチ部、72・・エッジトレンチ、73・・底部、100・・縦型GaN‐MOSFET、110・・活性領域、112・・ソースパッド、120・・パッド領域、122・・ゲートパッド、130・・SBD領域、140・・ボディダイオード、150・・MOSFET領域、160・・エッジ終端領域、222・・N-型GaN層、226・・P型GaN層、228・・P+型GaN層