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特許7119426電極研磨装置、電極研磨装置を備えた溶接装置、および、電極研磨方法
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  • 特許-電極研磨装置、電極研磨装置を備えた溶接装置、および、電極研磨方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電極研磨装置、電極研磨装置を備えた溶接装置、および、電極研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B23K11/30 350
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018036417
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019150838
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】市村 斎
(72)【発明者】
【氏名】大川 輝雄
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-048977(JP,U)
【文献】特開2008-221399(JP,A)
【文献】特開昭56-039182(JP,A)
【文献】特開2016-074027(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00679468(EP,A1)
【文献】実開昭62-165085(JP,U)
【文献】特開平04-017983(JP,A)
【文献】特開昭59-159280(JP,A)
【文献】特開平07-155969(JP,A)
【文献】登録実用新案第3016975(JP,U)
【文献】米国特許第02414834(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
B24D 3/00、9/00、9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が凸状の曲面形状を有する第1棒状電極の先端部を研磨する電極研磨装置であって、
凹部を有し、前記凹部に挿入される前記第1棒状電極の先端部を研磨する第1研磨機構と、
前記凹部の最深位置を通る回転軸を中心として前記第1研磨機構を回転させる回転機構と、
を備え、
前記回転軸の位置は、前記第1棒状電極の中心軸の位置とはずれた位置にあり、
前記第1研磨機構は、前記第1棒状電極の先端部が前記凹部の最深位置ではない位置に当接した状態で前記第1棒状電極の先端部を研磨するように構成されていることを特徴とする電極研磨装置。
【請求項2】
前記第1研磨機構は、前記第1棒状電極の先端部がシート状の研磨材を介して前記凹部と当接した状態で回転することによって、前記第1棒状電極の先端部を研磨するように構成されており、
前記第1棒状電極と前記研磨材との当接位置を変更する当接位置変更機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電極研磨装置。
【請求項3】
前記当接位置変更機構は、前記第1棒状電極と前記研磨材との当接位置を変更するために、前記研磨材を移動させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電極研磨装置。
【請求項4】
前記研磨材は長尺状の形状を有しており、
前記当接位置変更機構は、
ロール状に巻かれた状態の前記研磨材を巻き出す巻き出し部と、
前記巻き出し部から巻き出される前記研磨材を巻き取る巻き取り部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の電極研磨装置。
【請求項5】
前記当接位置変更機構は、前記第1研磨機構による前記第1棒状電極の研磨が終了すると、前記研磨材を移動させるように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の電極研磨装置。
【請求項6】
先端部が平面形状を有し、前記第1棒状電極と対になって溶接を行う第2棒状電極の先端部を研磨する第2研磨機構と、
前記第2研磨機構を駆動する駆動機構と、
を備え、
前記第2研磨機構は平面部を有し、前記第2棒状電極の先端部がシート状の研磨材を介して前記平面部に押し当てられた状態で、前記駆動機構によって駆動されることによって、前記第2棒状電極の先端部を研磨するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電極研磨装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、
前記第2研磨機構を回転させる第2回転機構と、
前記第2研磨機構を直線的に移動させる直線移動機構と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の電極研磨装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電極研磨装置と、
前記第1棒状電極と、
前記第2棒状電極と、
を備えることを特徴とする溶接装置。
【請求項9】
先端部が凸状の曲面形状を有する棒状電極の先端部を、凹部が設けられた研磨機構の前記凹部に挿入した状態で、前記研磨機構を回転させることによって、前記棒状電極の先端部を研磨する電極研磨方法であって、
前記凹部の最深位置を通る回転軸の位置が、前記棒状電極の中心軸の位置とずれた位置となるように、前記研磨機構と前記棒状電極の位置を調整する工程と、
前記研磨機構と前記棒状電極の位置の調整後に、前記棒状電極の先端部を前記研磨機構の前記凹部に挿入し、前記棒状電極の先端部を前記凹部の最深位置ではない位置に当接させた状態で、前記回転軸を中心として前記研磨機構を回転させる工程と、
を備えることを特徴とする電極研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状電極を研磨する電極研磨装置、電極研磨装置を備えた溶接装置、および、電極研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接などの電気抵抗溶接では、図9(a)に示すように、被溶接材91を一対の棒状電極92、93で挟んで押圧し、一対の棒状電極92、93間に電流を流して、被溶接材91を溶接する。
【0003】
溶接に用いられる棒状電極92、93は、図9(b)に示すように、溶接が行われることによって、酸化物などの付着物94が付着することがある。棒状電極92、93に付着物94が付着した状態で溶接を行うと、溶接不良が生じる可能性がある。この溶接不良は、付着物が堆積すると生じやすくなるので、棒状電極92、93の先端部を研磨して、付着物94を取り除くことが重要である。
【0004】
特許文献1の図5には、凹状の円弧形状を有する刃部に、先端部が凸状の曲面形状を有する棒状電極の先端部を挿入した状態で、刃部を回転させることにより、棒状電極の先端部を研磨する装置が記載されている。刃部は、凹状の最深位置を通る回転軸を中心として回転するように構成されており、回転軸と棒状電極の中心軸とを一致させた状態で刃部を回転させることによって、棒状電極の研磨を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-245779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した構成を有する従来の研磨装置では、刃部のうち、回転軸上に位置する部分は回転しないので、付着物が付着する棒状電極の先端部が研磨されにくいという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、棒状電極の先端部を効果的に研磨することができる電極研磨装置、そのような電極研磨装置を備えた溶接装置、および、棒状電極の先端部を効果的に研磨することができる電極研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電極研磨装置は、
先端部が凸状の曲面形状を有する第1棒状電極の先端部を研磨する電極研磨装置であって、
凹部を有し、前記凹部に挿入される前記第1棒状電極の先端部を研磨する第1研磨機構と、
前記凹部の最深位置を通る回転軸を中心として前記第1研磨機構を回転させる回転機構と、
を備え、
前記回転軸の位置は、前記第1棒状電極の中心軸の位置とはずれた位置にあり、
前記第1研磨機構は、前記第1棒状電極の先端部が前記凹部の最深位置ではない位置に当接した状態で前記第1棒状電極の先端部を研磨するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
前記第1研磨機構は、前記第1棒状電極の先端部がシート状の研磨材を介して前記凹部と当接した状態で回転することによって、前記第1棒状電極の先端部を研磨するように構成されており、
前記第1棒状電極と前記研磨材との当接位置を変更する当接位置変更機構をさらに備えていてもよい。
【0010】
前記当接位置変更機構は、前記第1棒状電極と前記研磨材との当接位置を変更するために、前記研磨材を移動させるように構成されていてもよい。
【0011】
前記研磨材は長尺状の形状を有しており、
前記当接位置変更機構は、
ロール状に巻かれた状態の前記研磨材を巻き出す巻き出し部と、
前記巻き出し部から巻き出される前記研磨材を巻き取る巻き取り部と、
を備えていてもよい。
【0012】
前記当接位置変更機構は、前記第1研磨機構による前記第1棒状電極の研磨が終了すると、前記研磨材を移動させるように構成されていてもよい。
【0013】
先端部が平面形状を有し、前記第1棒状電極と対になって溶接を行う第2棒状電極の先端部を研磨する第2研磨機構と、
前記第2研磨機構を駆動する駆動機構と、
を備え、
前記第2研磨機構は平面部を有し、前記第2棒状電極の先端部がシート状の研磨材を介して前記平面部に押し当てられた状態で、前記駆動機構によって駆動されることによって、前記第2棒状電極の先端部を研磨するように構成されていてもよい。
【0014】
前記駆動機構は、
前記第2研磨機構を回転させる第2回転機構と、
前記第2研磨機構を直線的に移動させる直線移動機構と、
を備えていてもよい。
【0015】
溶接装置は、
上述した電極研磨装置と、
前記第1棒状電極と、
前記第2棒状電極と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明による電極研磨方法は、
先端部が凸状の曲面形状を有する棒状電極の先端部を、凹部が設けられた研磨機構の前記凹部に挿入した状態で、前記研磨機構を回転させることによって、前記棒状電極の先端部を研磨する電極研磨方法であって、
前記凹部の最深位置を通る回転軸の位置が、前記棒状電極の中心軸の位置とずれた位置となるように、前記研磨機構と前記棒状電極の位置を調整する工程と、
前記研磨機構と前記棒状電極の位置の調整後に、前記棒状電極の先端部を前記研磨機構の前記凹部に挿入し、前記棒状電極の先端部を前記凹部の最深位置ではない位置に当接させた状態で、前記回転軸を中心として前記研磨機構を回転させる工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電極研磨装置によれば、第1研磨機構を回転させる際の回転軸の位置は、第1棒状電極の中心軸の位置とはずれた位置にあるので、回転する第1研磨機構の凹部で第1棒状電極の先端部を確実に研磨することができる。
また、そのような電極研磨装置を備えた溶接装置によれば、溶接に用いられる第1棒状電極の先端部を確実に研磨することができる。
【0018】
また、本発明の電極研磨方法によれば、研磨機構を回転させる際の回転軸の位置は、棒状電極の中心軸の位置とはずれた位置にあるので、回転する研磨機構の凹部で棒状電極の先端部を確実に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態における電極研磨装置の構成を示す斜視図である。
図2】電極研磨装置の要部の拡大図である。
図3】電極研磨装置の要部の側面図である。
図4】第1研磨機構の側面模式図である。
図5】第1研磨機構に設けられている第1金属部の斜視図である。
図6】第1棒状電極を研磨する方法を説明するための図である。
図7】第2棒状電極を研磨する第2研磨機構の側面模式図である。
図8】第2棒状電極を研磨する方法を説明するための図である。
図9】一対の棒状電極で被溶接材を溶接する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに具体的に説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における電極研磨装置100の構成を示す斜視図である。図2は、電極研磨装置100の要部の拡大図である。図3は、電極研磨装置100の要部の側面図である。
【0022】
第1の実施形態における電極研磨装置100は、第1研磨機構1と、第1研磨機構を回転させる第1回転機構2と、後述する第1棒状電極と後述する研磨材との当接位置を変更する当接位置変更機構3とを備える。
【0023】
第1研磨機構1、第1回転機構2および当接位置変更機構3は、X軸方向に延伸したX軸方向レール4に沿って、X軸方向に移動可能に構成されており、かつ、Y軸方向に延伸したY軸方向レール5に沿って、Y軸方向に移動可能に構成されている。第1研磨機構1がX軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されていることにより、後述する第1棒状電極との間の位置関係を調整することができる。
【0024】
図3に示すように、電極研磨装置100は、モータ31と、シリンダ32と、プッシャー33と、巻き取り部34と、巻き出し部35と、プーリー36と、ベルト37とを備える。上記構成のうち、モータ31と、プーリー36と、ベルト37が第1回転機構2を構成する。また、上記構成のうち、シリンダ32と、プッシャー33と、巻き取り部34と、巻き出し部35が当接位置変更機構3を構成する。
【0025】
第1研磨機構1は、後述する方法によって、電気抵抗溶接に用いられる一対の棒状電極のうちの第1棒状電極51の先端部を研磨する。第1棒状電極51の先端部は、凸状の曲面形状を有する。
【0026】
第1回転機構2は、第1棒状電極51の研磨時に、第1研磨機構1を回転させる。具体的には、モータ31が回転して、プーリー36およびベルト37を駆動することによって、第1研磨機構1を回転させる。
【0027】
図4は、第1研磨機構1の側面模式図である。また、図5は、第1研磨機構1に設けられている第1金属部11の斜視図である。
【0028】
図4および図5に示すように、第1金属部11は、凹部11aを有する。凹部11aは、第1棒状電極51が当接する面、ここでは、第1金属部11の上面に設けられている。例えば、第1棒状電極51の先端部の断面形状、および、凹部11aの断面形状はいずれも円弧形状であって、凹部11aの直径を第1棒状電極51の先端部の直径の2倍程度とすることができる。
【0029】
本実施形態では、図5に示すように、凹部11aは、一方向に延びた溝状の形状を有する。ただし、凹部11aの形状が溝状の形状に限定されることはなく、例えば、第1棒状電極51の先端部の形状に応じた形状としてもよい。
【0030】
第1棒状電極51が当接する面である第1金属部11の上面を覆うように、シート状の研磨材であるサンドペーパー12が配置される。長尺状のサンドペーパー12の一端は巻き出し部35に固定されており、他端は巻き取り部34に固定されている。
【0031】
第1棒状電極51の研磨時には、第1棒状電極51の先端部が第1金属部11の凹部11aに挿入される。すなわち、サンドペーパー12を介して、第1棒状電極51の先端部が凹部11aと当接した状態で、研磨が行われる。第1金属部11が凹部11aを有することにより、第1棒状電極51の先端部の形状、すなわち、凸状の曲面形状を維持した状態で、先端部の研磨を行うことができる。
【0032】
第1研磨機構1は、第1回転機構2により、第1金属部11の凹部11aの最深位置を通る回転軸を中心として回転可能に構成されている。第1回転機構2の詳細な構成については後述する。
【0033】
図6は、第1棒状電極51を研磨する方法を説明するための図である。上述したように、第1研磨機構1を回転させる際の回転軸L1は、第1金属部11の凹部11aの最深位置を通る位置にある。
【0034】
第1棒状電極51の研磨時に、回転軸L1の位置は、図6(a)に示すように、第1棒状電極51の中心軸L2の位置とは一致しない、ずれた位置にある。すなわち、第1棒状電極51の研磨時に、回転軸L1の位置と第1棒状電極51の中心軸L2の位置がずれた位置となるように、第1研磨機構1と第1棒状電極51との位置関係が調整される。
【0035】
上述したように、凹部11aは、一方向に延びた溝状の形状を有する。回転軸L1の位置は、第1棒状電極51の中心軸L2に対して、溝状の凹部11aが延伸している方向とは異なる方向にずれた位置、より具体的には、凹部11aが延伸している方向と直交する方向にずれた位置にある。
【0036】
第1棒状電極51の研磨時に、第1棒状電極51の先端部は第1金属部11の凹部11aに挿入される。すなわち、回転軸L1と第1棒状電極51の中心軸L2がずれた位置関係にある状態で、第1棒状電極51を下方に移動させて、サンドペーパー12を介して、第1棒状電極51の先端部を第1金属部11の凹部11aに挿入して当接させる。そして、その状態で、第1回転機構2によって、回転軸L1を中心として、第1研磨機構1を回転させる(図6(b)参照)。
【0037】
上述したように、第1研磨機構1が回転する際の回転軸L1の位置は、第1棒状電極51の中心軸L2の位置とはずれた位置にある。したがって、第1棒状電極51の先端部は、サンドペーパー12を介して、第1金属部11の凹部11aの最深位置ではない位置に当接する。第1棒状電極51の先端部が当接するこの位置は、第1研磨機構1の回転時に回転する位置であるため、溶接によって酸化物などの付着物が付着する第1棒状電極51の先端部を確実に研磨することができる。
【0038】
また、回転軸L1の位置と第1棒状電極51の中心軸L2の位置とがずれた状態で研磨を行うので、研磨後の第1棒状電極51の先端(頂点)は、中心軸L2からずれた位置となる。したがって、第1棒状電極51を含む一対の棒状電極を用いて溶接を行う場合に、第1棒状電極51の先端が他方の棒状電極である第2棒状電極と当接する位置が変わるので、第2棒状電極に酸化物などの付着物が付着する位置を変えることができる。
【0039】
上述したように、棒状電極の付着物に起因する溶接不良は、付着物が堆積すると生じやすくなる。第2棒状電極に付着物が付着する位置を変えることにより、付着物の堆積を抑制することができるので、溶接不良の発生を抑制することができる。また、付着物の堆積を抑制することができるので、第2棒状電極を清掃・研磨する回数を減らすことができる。
【0040】
本実施形態における電極研磨装置100は、当接位置変更機構3によって、サンドペーパー12を移動させて、第1棒状電極51と当接するサンドペーパー12の位置を変更可能に構成されている。以下では、当接位置変更機構3の詳細な構成について説明する。
【0041】
本実施形態における電極研磨装置100は、第1棒状電極51の研磨が終了すると、サンドペーパー12の位置を変更するように構成されている。これにより、次回、第1棒状電極51の研磨を行う場合に、サンドペーパー12の新しい面で研磨を行うことができる。ただし、サンドペーパー12の位置を変更するタイミングが第1棒状電極51の研磨終了後に限定されることはなく、例えば、第1棒状電極51の研磨開始前でもよい。
【0042】
長尺状のサンドペーパー12は、巻き出し部35にロール状に巻かれており、その一端は、巻き取り部34に固定されている。上述したように、サンドペーパー12は、第1研磨機構1の第1金属部11の上面を覆うような態様で配置されている。
【0043】
第1棒状電極51の研磨が終了すると、シリンダ32が動き、プッシャー33を巻き取りギヤ34aに近づく方向に押す。プッシャー33の先端は、巻き取り部34の巻き取りギヤ34aと噛み合う形状を有しており、シリンダ32に押されたプッシャー33は、巻き取りギヤ34aと噛み合って、巻き取りギヤ34aを回転させる。これにより、サンドペーパー12は、巻き出し部35から巻き出されて、巻き取り部34に巻き取られる方向に移動するので、第1棒状電極51と当接するサンドペーパー12の位置が変更される。
【0044】
上述した構成により、第1棒状電極51と当接するサンドペーパー12の位置を変更することができるので、常にサンドペーパー12の新しい面で第1棒状電極51の研磨を行うことができる。また、第1棒状電極51の研磨終了後に、自動的にサンドペーパー12の位置を変更することができるので、作業者がサンドペーパー12の位置を手動で変更する必要がない。
【0045】
<第2の実施形態>
第1の実施形態における電極研磨装置100は、電気抵抗溶接に用いられる一対の棒状電極のうちの第1棒状電極51を研磨するように構成されている。
【0046】
これに対して、第2の実施形態における電極研磨装置は、第1棒状電極51に加えて、第2棒状電極も研磨できるように構成されている。第2棒状電極は、第1棒状電極51とともに、電気抵抗溶接に用いられる一対の棒状電極を構成する電極である。第2棒状電極の先端部の形状は、平面形状である。
【0047】
図7は、第2棒状電極52を研磨する第2研磨機構71の側面模式図である。第2研磨機構71の下部には、平面部72aを有する第2金属部72が設けられている。平面部72aは、第2棒状電極52が当接する面、ここでは、第2金属部72の下面側に位置する。
【0048】
第2金属部72の平面部72aを覆うように、サンドペーパー73が配置されている。長尺状のサンドペーパー73の一端は巻き出し部75に固定されており、他端は巻き取り部74に固定されている。
【0049】
第2研磨機構71も第1研磨機構1と同様に、X軸方向およびY軸方向に直線的に移動可能であり、かつ、回転軸L3を中心として回転可能に構成されている。第2研磨機構71をX軸方向およびY軸方向に移動させる直線移動機構の構成は、第1研磨機構1をX軸方向およびY軸方向に移動させる機構の構成と同じである。また、第2研磨機構71を回転させる第2回転機構の構成は、第1研磨機構1を回転させる第1回転機構2の構成と同じである。上記直線移動機構および第2回転機構は、第2研磨機構71を駆動する駆動機構を構成する。
【0050】
図8は、第2棒状電極52を研磨する方法を説明するための図である。図8(a)に示すように、第2棒状電極52の上方に、第2研磨機構71の第2金属部72を配置した状態で、第2棒状電極52を上方に移動させる。そして、第2棒状電極52の先端部が、サンドペーパー73を介して、第2金属部72の平面部72aに押し当てられた状態で、上述した駆動機構によって、第2研磨機構71を駆動する(図8(b)参照)。
【0051】
直線移動機構および第2回転機構は、いずれか一方が動作する。直線移動機構を動作させる場合には、回転動作に比べて、より長い距離を使って効果的に研磨を行うことができる。
【0052】
上述した構成により、第2棒状電極52の先端部をサンドペーパー73によって研磨することができるので、先端部に付着した付着物を除去することができる。
【0053】
上述した第1の実施形態における電極研磨装置100は、当接位置変更機構3によって、サンドペーパー12を移動させて、第1棒状電極51とサンドペーパー12との当接位置を変更可能に構成されている。同様に、本実施形態における電極研磨装置でも、サンドペーパー73を移動させて、第2棒状電極52とサンドペーパー73との当接位置を変更可能に構成してもよい。サンドペーパー73の位置を変更する構成は、第1の実施形態で説明した当接位置変更機構3と同じ構成とすることができる。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0055】
例えば、上述した実施形態では、棒状電極と研磨機構が鉛直方向に並ぶように配置した状態で研磨を行うものとして説明したが、水平方向に並ぶように配置した状態で研磨を行うように構成されていてもよい。
【0056】
シート状の研磨材がサンドペーパーに限定されることはない。
【0057】
第1棒状電極51の先端部は、サンドペーパー12を介して、第1金属部11の凹部11aに挿入した状態で研磨を行うものとして説明したが、凹部11aを研磨面とすることにより、サンドペーパー12を配置しない構成とすることもできる。例えば、第1金属部11の凹部11aに砥粒コーティング等を施すことにより、サンドペーパー12を配置することなく、第1棒状電極51の先端部を研磨することができる。
【0058】
上述した実施形態において、当接位置変更機構3は、サンドペーパー12を移動させることによって、第1棒状電極51とサンドペーパー12との当接位置を変更するように構成されている。しかし、当接位置変更機構3は、サンドペーパー12を移動させる代わりに第1棒状電極51を移動させることによって、第1棒状電極51とサンドペーパー12との当接位置を変更するように構成されていてもよい。
【0059】
上述した第1棒状電極51および第2棒状電極52を備えた溶接装置が上述した電極研磨装置100を備えるように構成することもできる。この場合、溶接装置は、第1棒状電極51と、第2棒状電極52と、電極研磨装置100とを備える。このように構成された溶接装置によれば、溶接に用いられる第1棒状電極51の先端部を確実に研磨することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 第1研磨機構
2 第1回転機構
3 当接位置変更機構
4 X軸方向レール
5 Y軸方向レール
11 第1金属部
11a 凹部
12 サンドペーパー
31 モータ
32 シリンダ
33 プッシャー
34 巻き取り部
35 巻き出し部
36 プーリー
37 ベルト
51 第1棒状電極
52 第2棒状電極
71 第2研磨機構
72 第2金属部
72a 平面部
73 サンドペーパー
100 電極研磨装置
L1 回転軸
L2 第1棒状電極の中心軸
L3 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9