(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】樹脂加工機洗浄用組成物及び樹脂加工機の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20220809BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220809BHJP
C08F 240/00 20060101ALI20220809BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220809BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L23/00
B08B3/08 Z
C08F240/00
C08K3/00
C08L23/26
(21)【出願番号】P 2018046906
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】金野 元紀
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-095625(JP,A)
【文献】特開2015-143365(JP,A)
【文献】特開平07-009531(JP,A)
【文献】特開2001-150456(JP,A)
【文献】国際公開第2000/056514(WO,A1)
【文献】特開2003-127203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08,
C08L1/00-101/14,
C08F240/00,
B08B3/00-3/14,
B29C33/00-33/76,
B29C48/00-48/96,
C11D1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレイト(JIS-K7210 190℃、2.16kgf)が0.01~5.0g/10分であるポリオレフィン系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりグラフト変性された変性ポリオレフィン系樹脂(B)
と、熱可塑性エラストマー(C)と、石油樹脂(D)とを含有する樹脂加工機洗浄用組成物。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)との合計100質量部に対して、熱可塑性エラストマー(C)の含有量が5~200質量部であり、石油樹脂(D)の含有量が5~100質量部である、請求項1に記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【請求項3】
更に充填剤(E)を含有する、請求項1
又は2に記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【請求項4】
前記樹脂加工機が、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工する加工機である、請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【請求項5】
シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工機で加工した後、請求項1~
4のいずれかに記載の樹脂加工機洗浄用組成物を用いて、該加工機内を洗浄する、樹脂加工機の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂加工機洗浄用組成物及び樹脂加工機の洗浄方法に関し、より詳細には、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工した樹脂加工機の洗浄に有効な洗浄用組成物及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの成形加工において、一般的に使用される成形機や押出機(これらを「樹脂加工機」と称す。)には、樹脂の成形加工作業終了時に、その加工した微量の樹脂や該樹脂に含まれる添加剤等が、樹脂加工機内部、具体的には、成形機や押出機のスクリュー及びシリンダー内壁に残留する。この残留樹脂や残留添加剤が残ったままで、別の新たな樹脂を同じ樹脂加工機で加工すると、成形後に得られる樹脂自体の物性や特性に影響が出てしまうことがある。そのため、一般的には、樹脂の成形を行った後、若しくは新たに樹脂を成形する前には、予め使用する樹脂加工機内を洗浄する。この樹脂加工機の洗浄は、通常、洗浄用樹脂組成物を用い、その洗浄用樹脂組成物を樹脂加工機に導入して、通常の製品の成形加工時と同様に、押出や成形、混練などの操作を行い、洗浄用樹脂組成物に樹脂加工機内部の残留樹脂や添加剤を同伴させ、押出して除去したり、洗浄用樹脂組成物を使って残留物を分解して除去することが行われる。
【0003】
この樹脂加工機の洗浄に用いられる洗浄用樹脂組成物の樹脂成分には、ポリオレフィンなどをベースとして、粘度を調整したものや、ゼオライトやガラス繊維などの無機フィラーを添加したもの、発泡剤を用いるもの、洗浄成分を有する添加剤を添加したものが知られており、例えば、特許文献1には、オルガノポリシロキサン成分を含有するプラスチック成形機パージ用樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、高級脂肪酸モノグリセライドのホウ酸エステルカルシウム塩とゼオライトを成分として含む難燃性樹脂洗浄用樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、高粘度の高密度ポリエチレン97~99重量%と無機発泡剤を含有した低粘度の低密度ポリエチレン3~1重量%よりなる混合物よりなる洗浄剤が開示されている。特許文献4には、シラン架橋オレフィン重合体とオレフィン重合体とを主成分とし、熱可塑性樹脂の成型加工において色変え、樹脂変え等のため、加工機械を洗浄する際に使用する洗浄用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-14247号公報
【文献】特開平7-53774号公報
【文献】特開平10-81898号公報
【文献】特開平8-295763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の洗浄用樹脂組成物では、洗浄効果が十分ではなく、特に、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工した後の樹脂加工機内を十分に洗浄することができない。
【0006】
特許文献4のシラン架橋オレフィン重合体を洗浄剤成分とする洗浄用樹脂組成物であれば、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工した後の樹脂加工機の洗浄にも洗浄効果が得られるが、この洗浄用樹脂組成物では、洗浄用樹脂組成物に含まれるシラン架橋オレフィン重合体そのものが樹脂加工機内部の金属部品(スクリューや流路の内壁)に密着し、多くの場合、その後の清掃が非常に困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の従来技術で述べた点に鑑みてなされたものであって、特にシラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工した後の樹脂加工機内部を洗浄する際に、樹脂加工機内部の加工対象の樹脂が通る流路に、洗浄剤成分の樹脂の残存の問題がなく、且つ短時間で効果的に洗浄を行うことができる樹脂加工機洗浄用組成物及び樹脂加工機の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、メルトフローレイトが0.01~5.0g/10分(190℃、2.16kgf)であるポリオレフィン系樹脂と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりグラフト変性された変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物によって、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0009】
[1] メルトフローレイト(JIS-K7210 190℃、2.16kgf)が0.01~5.0g/10分であるポリオレフィン系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりグラフト変性された変性ポリオレフィン系樹脂(B)を含有する樹脂加工機洗浄用組成物。
【0010】
[2] 更に熱可塑性エラストマー(C)を含有する、[1]に記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【0011】
[3] 更に石油樹脂(D)を含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【0012】
[4] 更に充填剤(E)を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【0013】
[5] 前記樹脂加工機が、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工する加工機である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂加工機洗浄用組成物。
【0014】
[6] シラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工機で加工した後、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂加工機洗浄用組成物を用いて、該加工機内を洗浄する、樹脂加工機の洗浄方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物によれば、微量の残留樹脂も樹脂加工機の内壁の金属部品から効果的に除去することができ、しかも、それ自体の樹脂加工機内への残留の問題もなく、樹脂加工機内部の残留樹脂を著しく低減することができるため、プラスチック成形機および押出機内の分解清掃、および樹脂替えを少量かつ短時間にて行うことが可能となる。特に本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、従来洗浄が困難であったシラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工した後の樹脂加工機の洗浄にも高い洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0017】
[樹脂加工機洗浄用組成物]
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、メルトフローレイト(JIS-K7210 190℃、2.16kgf)が0.01~5.0g/10分であるポリオレフィン系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりグラフト変性された変性ポリオレフィン系樹脂(B)とを含有することを特徴とするものである。
【0018】
<オレフィン系樹脂(A)>
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂(A)は、メルトフローレイト(MFR)(JIS-K7210 190℃、2.16kgf)が0.01~5.0g/10分のものである。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体、結晶性プロピレン-エチレンランダム共重合体、結晶性エチレン-プロピレン-ブテン-1三元共重合体、結晶性プロピレン-ブテン-1共重合体、ポリブテン-1、高圧法で製造される低密度ポリエチレン、チーグラナッタ触媒やシングルサイト触媒、クロム系触媒等を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン、もしくはこれらの2種以上の混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でも、低温で押し出し可能なポリエチレン系樹脂が好ましく、さらに、溶融スウェルが高く、滞留樹脂の排出効果が高い高圧法低密度ポリエチレン(密度(JIS-K6760)0.930~0.970g/cm3)、および高密度ポリエチレン(密度(JIS-K6760)0.910~0.930g/cm3)が好ましい。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂(A)のMFR(190℃、2.16kgf)は0.01~5.0g/10分の範囲であるが、好ましくは0.1~2.0g/10分である。この理由は、低粘度であるほど滞留樹脂の掻き出し効果が高いためである。ただし、MFRが0.01g/10分より低いと、樹脂圧力が高くなり、結果として洗浄温度を上げざるを得ず、滞留樹脂の焼けが発生してしまい、十分な洗浄効果が得られない。また、MFRが5.0g/10分を超えると、樹脂の掻き出し効果が低減してしまい、洗浄効果が低下するため好ましくない。なお、ここで、MFRの測定法とは、JIS-K7210:熱可塑性プラスチックの流れ試験方法(MFR)による。
【0021】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物はポリオレフィン系樹脂(A)の1種のみを含むものであってもよく、樹脂組成や物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0022】
<変性ポリオレフィン系樹脂(B)>
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体によりグラフト変性された変性ポリオレフィン系樹脂(B)の変性に供されるポリオレフィン系樹脂(以下、「ポリオレフィン系樹脂(b)」と称す場合がある。)としては、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体、結晶性プロピレン-エチレンランダム共重合体、結晶性エチレン-プロピレン-ブテン-1三元共重合体、結晶性プロピレン-ブテン-1共重合体、ポリブテン-1、高圧法で製造される低密度ポリエチレン、チーグラナッタ触媒やシングルサイト触媒、クロム系触媒等を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン、エチレンとエチレン以外のオレフィンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体といったポリオレフィン系エラストマー、もしくはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂(b)としては、これらのうち直鎖状低密度ポリエチレン(密度(JIS-K6760)0.910~0.930g/cm3)が好ましい。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂(b)のMFR(190℃、2.16kgf)は特に制限はないが、0.5~30g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~20g/10分である。ポリオレフィン系樹脂(b)のMFRが上記下限以上であればモーター負荷が低い等の押出特性を維持できる観点から好ましく、上記上限以下であれば残存樹脂の押出特性を損なうことがないことから好ましい。
【0025】
なお、ポリオレフィン系樹脂(b)と前述のポリオレフィン系樹脂(A)とは同種の樹脂であってもよく異種の樹脂であってもよいが、相溶性の観点からは、同一の単量体成分を含む樹脂であることが好ましい。
【0026】
グラフト変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステル等が例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどの誘導体であってもよい。これらの誘導体としては、酸無水物が好ましい。これらの中では、特にマレイン酸及び/又はその無水物が好適である。また、これらの化合物を複数併用してもよい。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂(b)のグラフト変性法としては、溶融変性法が挙げられる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(b)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、必要により後述するラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練して反応させる方法や、混練機中で溶融したポリオレフィン系樹脂(b)に、ラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂(b)と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との配合割合は限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(b)100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を通常0.01~2質量部、好ましくは0.05~1.5質量部の割合で配合することが望ましい。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の配合割合が上記上限以下であると、未反応の不飽和カルボン酸の残留を抑え、焼け等の不具合を防止することができる。また、上記下限以上であれば、変性量を確保して得られる樹脂加工機洗浄用組成物の洗浄効果を高めることができる。
【0029】
ラジカル発生剤は限定されないが、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエ-ト)ヘキシン-3、ラウロイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエ-ト、tert-ブチルペルイソブチレ-ト、tert-ブチルペルピバレ-ト、及びクミルペルピバレ-ト等の有機ペルオキシドや有機ペルエステル、あるいは、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレ-ト等のアゾ化合物等を使用することができる。
【0030】
これらのラジカル発生剤は、原料のポリオレフィン系樹脂(b)の種類やMFR、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の種類および反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(b)100質量部に対し、通常0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部である。ラジカル発生量の配合割合が上記上限以下であれば、分子量に与える影響を抑えて、押出し特性、接着性への悪影響を防止することができ、また、上記下限以上であれば反応性を高め、グラフト量を確保して焼け等の不具合を防止することができる。
【0032】
変性ポリオレフィン系樹脂(B)における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性量(グラフト率)は限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、一方、1.5質量%以下、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性量が前記下限値以上であれば、本発明の洗浄用樹脂組成物の洗浄性能を高めることができ、上記上限以下であれば熱安定性のが低下を防止すると共に未反応の不飽和カルボン酸量を抑えて、焼けなどの不具合を防止することができる。
【0033】
ここで変性量(グラフト率)とは、赤外分光測定装置で測定した際の、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体成分の含有率を意味する。例えば、厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体特有の吸収、具体的には1,900~1,600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル基特有の吸収を測定することにより求めることができる(以下の記載においても同様である。)。なお、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性は、100%が反応に供されずに、ポリオレフィン系樹脂(b)と反応していない不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体も変性ポリオレフィン系樹脂(B)中に残留している場合があるが、本発明における変性量(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。
【0034】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は変性ポリオレフィン系樹脂(B)の1種のみを含むものであってもよく、ポリオレフィン系樹脂(b)の組成や物性、変性に用いた不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体や変性量等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0035】
<ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)の含有量>
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物において、ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)と必要に応じて配合される後述の熱可塑性エラストマー(C)、石油樹脂(D)及び充填剤(E)との合計100質量部中に、ポリオレフィン系樹脂(A)が好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部、変性ポリオレフィン系樹脂(B)が好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~8質量部で、ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)との合計100質量%中のポリオレフィン系樹脂(A)の割合が60~90質量%で、変性ポリオレフィン系樹脂(B)の割合が10~40質量%となるような量であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)とを上記範囲で含むことにより、良好な洗浄効果が発揮される。
【0036】
<熱可塑性エラストマー(C)>
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、熱可塑性エラストマー(C)を含むものであってもよく、熱可塑性エラストマー(C)を含むことで、洗浄効果をより一層高めることができる。
【0037】
熱可塑性エラストマー(C)としては、エチレンと炭素数3以上のオレフィンの1種又は2種以上を共重合させたエチレン系エラストマー、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のオレフィンの1種又は2種以上を共重合させたプロピレン系エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン-ポリエン共重合体、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、水素化スチレン-エチレン-ブチレンースチレンブロック共重合体、水素化スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、エチレン系アイオノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特にスチレン系のスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素化スチレン-エチレン-ブチレンースチレンブロック共重合体(SEBS)、水素化スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)や、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーが、ベース樹脂との親和性が高く、押し出しやすいために好ましい。
【0038】
これらの熱可塑性エラストマー(C)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
熱可塑性エラストマー(C)は、本発明の樹脂加工機洗浄用組成物のベース樹脂やシラン架橋性ポリオレフィンと一般的に相溶するものではないが、親和性は高く、溶融時に弾性的に挙動するため、洗浄時においても洗浄対象に絡みつき、流動している樹脂との摩擦を増加させて滞留樹脂を掻き出す効果があると考えられる。こういった理由により、粘度としてはできるだけ高い材料が好ましく、熱可塑性エラストマー(C)のメルトフローレイト(MFR)(JIS-K6760、190℃、2.16kgf)は0.5~10g/10分、特に0.5~5g/10分であることが好ましい。熱可塑性エラストマー(C)のMFRが上記下限以上であればモーター負荷が低い等の押出特性を維持できる観点から好ましく、上記上限以下であれば残存樹脂の押出特性を損なうことがないことから好ましい。
【0040】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物が熱可塑性エラストマー(C)を含む場合、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)、変性ポリオレフィン系樹脂(B)及び熱可塑性エラストマー(C)と、必要に応じて配合される後述の石油樹脂(D)及び充填剤(E)との合計100質量部中に、好ましくは5~40質量部、より好ましくは20~40質量部であり、ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)との合計100質量部に対して5~200質量部、特に50~150質量部であることが好ましい。
熱可塑性エラストマー(C)の含有量が上記下限以上であれば、これを配合したことによる洗浄効果の向上効果を確実に得ることができる。一方、熱可塑性エラストマー(C)の含有量が上記上限以下であれば、それ自体相分離している熱可塑性エラストマー(C)が残存することによる洗浄効果の低下を防止することができる。
【0041】
<石油樹脂(D)>
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、更に石油樹脂(D)を含むものであってもよく、石油樹脂(D)を含むことで洗浄効果をより一層高めることができる。
【0042】
本発明に用いる石油樹脂(D)としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、またはそれらの共重合体、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。石油樹脂の骨格としては、C5(炭素数5)樹脂、C9(炭素数9)樹脂、C5/C9共重合樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ビニル置換芳香族系化合物の重合体、オレフィン/ビニル置換芳香族化合物の共重合体、シクロペンタジエン系化合物/ビニル置換芳香族系化合物の共重合体、あるいはこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0043】
前記ロジン樹脂とはアビエチン酸を主成分とする天然樹脂であり、例えば、天然ロジン、天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジン、天然ロジンエステル、変性ロジンエステル、重合ロジンエステル等が挙げられる。
【0044】
前記テルペン樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の芳香族テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂およびそれらの水素添加物が挙げられる。
【0045】
これらの石油樹脂(D)は、高温での流動時に流動性がよく、滞留樹脂によく浸透し、さらにはベース樹脂のポリオレフィン系樹脂との親和性も高いため、相分離することなく押し出しが可能であるため、特に洗浄効果に寄与すると考えられる。
【0046】
これらの石油樹脂(D)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物が石油樹脂(D)を含む場合、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)、変性ポリオレフィン系樹脂(B)及び石油樹脂(D)と、必要に応じて配合される前述の熱可塑性エラストマー(C)及び後述の充填剤(E)との合計100質量部中に、好ましくは5~20質量部、より好ましくは10~20質量部であり、ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)との合計100質量部に対して5~100質量部、特に20~70質量部であることが好ましい。
石油樹脂(D)の含有量が上記下限以上であれば、これを配合したことによる洗浄効果の向上効果を確実に得ることができる。一方、石油樹脂(D)の含有量が上記上限以下であれば、樹脂加工機洗浄用組成物の粘度低下を抑制して掻き出し効果の低減を防止することができる。
【0048】
<充填剤(E)>
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、更に充填剤(E)を含むものであってもよく、充填剤(E)を含むことで掻き出し効果を付与して洗浄効果をより一層高めることができる。
【0049】
充填剤(E)は、有機充填材と無機充填材に大別される。有機充填材としては、アクリルビーズ、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、モンモリロナイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも洗浄後の残留が少ないことから、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、ガラス繊維などの無機充填剤が好ましい。
これらの充填剤(E)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物が充填剤(E)を含む場合、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)、変性ポリオレフィン系樹脂(B)及び充填剤(E)と、必要に応じて配合される前述の熱可塑性エラストマー(C)及び石油樹脂(D)との合計100質量部中に、好ましくは5~30質量部、より好ましくは10~25質量部であり、ポリオレフィン系樹脂(A)と変性ポリオレフィン系樹脂(B)との合計100質量部に対して5~140質量部、特に50~120質量部であることが好ましい。
充填剤(E)の含有量が上記下限以上であれば、これを配合したことによる掻き取り効果による洗浄効果の向上効果を確実に得ることができる。一方、充填剤(E)の含有量が上記上限以下であれば、流動性の低下を防止することができる。
【0051】
<その他の成分>
本発明の洗浄用樹脂組成物には、上記の各成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の添加剤や樹脂等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0052】
添加剤としては、一般的にポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる補助添加成分、具体的には、酸化防止剤、中和剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、充填材、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。
このうち、酸化防止剤、中和剤は一般的に使用されているものであり、洗浄用樹脂組成物に添加することは、樹脂の劣化を抑制する観点からも好ましい。
【0053】
また、洗浄効果を補助するという観点から、洗浄剤成分として公知の成分、例えば、滑材、帯電防止剤、界面活性剤、防曇材等も添加することが可能である、
【0054】
さらに、洗浄補助成分として、一般的に発泡剤として使用される添加剤、例えば炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素アルカリ金属塩などの無機発泡剤、クエン酸などの有機系発泡剤を配合することによって、残存樹脂の置換効率を高めることができる。この理由としては、熱で分解発生した炭酸ガスが、滞留樹脂を浮だたせることにより、洗浄効果が上がることが考えられる。この中でも分解温度が低い重曹などの無機系発泡剤が好ましい。上記発泡剤の配合割合は、洗浄用樹脂組成物100質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部である。発泡剤の配合割合が上記下限以上であれば、発泡剤を配合したことによる洗浄補助効果を十分に得ることができ、上記上限以下であれば発泡剤による押出安定性の阻害、パージ時の発煙や発臭といった弊害を抑制できる。
【0055】
<製造方法>
上記必須成分と、必要に応じて添加されるその他の成分を用いて、本発明の樹脂加工機洗浄用組成物を製造するための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
【0056】
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の成分、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
【0057】
各成分の溶融混練の温度は、通常100~300℃の範囲、好ましくは120~280℃の範囲、特に好ましくは150~250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン系樹脂(A)、変性ポリオレフィン系樹脂(B)、熱可塑性エラストマー(C)、石油樹脂(D)、充填剤(E)と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括して混練する方法、又はポリオレフィン系樹脂(A)、変性ポリオレフィン系樹脂(B)、熱可塑性エラストマー(C)、石油樹脂(D)、充填剤(E)と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混練しておき、その後残りの成分を混練する方法でもよい。また、上記組成のものを別々に作成し、ドライブレンドの形で洗浄に供することも可能である。
【0058】
[樹脂加工機の洗浄方法]
本発明の洗浄用樹脂組成物が適用される樹脂加工機としては、通常の混練押出機や、成形品を得るための成形機である射出成形機、押出成形機等が挙げられる。通常の混練機とは、単軸又は二軸の押出機であり、原料をブレンド、溶融混練するためのものである。射出成形機としては一般的な射出成形機、押出成形機としては、ブロー成形機、インフレーション成形機、Tダイやパイプダイなどのダイ付き押出機などが挙げられる。
【0059】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物による洗浄時の樹脂温度は160~250℃であり、好ましくは180~230℃である。この樹脂温度が上記下限以上であれば、樹脂を十分に可塑化して、装置破損を防止することができる。また、樹脂温度が上記上限以下であれば滞留樹脂の焼けを防止して良好な洗浄効果を得ることができる。
【0060】
成形機や押出機等の樹脂加工機の洗浄方法としては、洗浄に供する樹脂加工機のホッパーから残りの先行樹脂を取り除いた後、本発明の樹脂加工機洗浄用組成物をホッパーに入れて、先行樹脂の成形条件下でもよいし、上記に挙げた温度設定にて成形機、押出機等の樹脂加工機を運転し、滞留樹脂を十分掻き出した後、樹脂加工機洗浄用組成物を排出させる、ないしは通常のパージ材に置換し、後続の材料に再度変換していくことにより行うことができる。
上記の樹脂加工機の洗浄は、金型、ダイ等も含めて行うことができる。
分解清掃時の場合、特に本発明の樹脂加工機洗浄用組成物で洗浄した後、高密度ポリエチレン、ないしは一般的に販売されているパージ材(例えば、日東化工社製「スーパークリーン」など)で軽くパージしたのちに分解清掃すると、その後のスクリュー等の洗浄効率が格段に向上する。
【0061】
本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、洗浄効果が極めて高く、従来の樹脂加工機洗浄用組成物では洗浄が困難であったシラン架橋ポリオレフィン系樹脂を加工した後の樹脂加工機の洗浄においても優れた洗浄効果を得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0063】
[使用材料]
以下の実施例及び比較例で用いた材料は次の通りである。
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
日本ポリエチレン社製 高圧法低密度ポリエチレン「YF30」(MFR:1.1g/10分 密度:0.920g/cm3)
【0064】
<その他のポリオレフィン系樹脂(a)>
日本ポリエチレン社製 高圧法低密度ポリエチレン「LC600A」(MFR:7g/10分、密度:0.918g/cm3)
【0065】
<変性ポリオレフィン系樹脂(B)>
以下の方法で製造した変性ポリオレフィン系樹脂(B)を用いた。
日本ポリエチレン社製 直鎖状低密度ポリエチレン「UF240」(MFR:2.1g/10分)100質量部に対し、無水マレイン酸(日本触媒製)1質量部、日油社製有機ペルオキシド(パーブチルD)0.05質量部をドライブレンドした後、230℃に加熱した二軸押出機にて混練してグラフト変性し、グラフト率が1質量%の変性ポリエチレンを得、これを変性ポリオレフィン系樹脂(B)とした。
【0066】
<熱可塑性エラストマー(C)>
三井化学社製 エチレン-ブテン系エラストマー「タフマーA1085A」(MFR:1.2g/10分、密度:0.885g/cm3)
【0067】
<石油樹脂(D)>
荒川化学工業社製 脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコンP125」(軟化点:125℃)
【0068】
<充填剤(E)>
富士タルク社製 タルク「PKP53S」
【0069】
<発泡剤>
和光純薬製 重曹
【0070】
[実施例1]
表1に記載の実施例1の配合にて原料を調製し、160℃にて単軸押出機(IKG社製50mm)で溶融混練し、樹脂加工機洗浄用組成物を製造した。
【0071】
単軸50mmにパイプ形状(外径13mm、内径9.8mm)の単層用ダイスをつなげたパイプ成形機を用い、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂組成物(三菱ケミカル社製「リンクロンXLE830N」と三菱ケミカル社製触媒マスターバッチ「HZ089」を混合質量比率100:5で混合したもの)を200℃にて回転数80rpm(約15kg/時間)で1時間流した後、上記で製造した樹脂加工機洗浄用組成物を同条件で10分(約3kg)流して洗浄した。その後、樹脂を出し切り、装置を分解することで分解清掃を行った。なお、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂が残存している場合、容易に本発明の樹脂加工機洗浄用組成物よりなるパージ材とは色相の点で区別でき、また、本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は容易に流路壁から剥離できるものの、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂は銅ブラシ等でこすってもなかなか剥離しにくいため、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂の残存状況は容易に判別できる。
【0072】
スクリュー、ダイス内流路におけるシラン架橋ポリオレフィン系樹脂の残存状況は以下のように評価した。
○:シラン架橋ポリオレフィン系樹脂が殆ど残存しておらず、焼け等もない。付着樹脂は残存してもすぐに清掃除去が可能。
△:シラン架橋ポリオレフィン系樹脂は残存しているが、焼け等はない。付着樹脂はブラシで軽くこすればすぐに清掃除去が可能。
×:シラン架橋ポリオレフィン系樹脂や焼け等が残存しており、付着樹脂、焼け等は除去のためにブラシで十分にこする必要がある。
【0073】
[実施例2、比較例1~4]
表1の配合にて、実施例1と同様に樹脂加工機洗浄用組成物を製造し、同様に洗浄効果の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1より、本発明の樹脂加工機洗浄用組成物は、樹脂加工機の洗浄効果に優れることが分かる。
【0076】
これに対して、変性ポリオレフィン系樹脂(B)を含まない比較例1や、MFRの高いポリオレフィン系樹脂(a)を用いた比較例3、ポリオレフィン系樹脂(A)のみを用いた比較例4では、洗浄効果は非常に劣る。
比較例2は変性ポリオレフィン系樹脂(B)を用いていないものであり、他の比較例よりも若干洗浄効果は上がるが、十分ではない。
以上より、本発明の樹脂加工機洗浄用組成物を使用することにより、特にシラン架橋ポリオレフィン系樹脂の樹脂加工機に対して良好な洗浄効果を得ることができ、プラスチック成形機および押出機内の分解清掃、および樹脂替えを少量かつ短時間にて行うことが可能となることが分かる。