(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】異常診断装置および異常診断方法
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20220809BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220809BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20220809BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F02M55/02 360Z
G01M99/00 A
F02M59/44 Z
F02D45/00 345
F02D45/00 369
(21)【出願番号】P 2018054326
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 優介
(72)【発明者】
【氏名】蔀 克士
(72)【発明者】
【氏名】野田 久仁男
(72)【発明者】
【氏名】石井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 文彦
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086812(JP,A)
【文献】米国特許第5727516(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
G01M 99/00
F02M 59/44
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留する貯留部と、前記貯留部から前記燃料を汲み上げるフィードポンプと、前記フィードポンプにより汲み上げられた前記燃料に含まれる異物を捕集する燃料フィルタと、前記燃料フィルタを通過した前記燃料を加圧してコモンレールへ吐出する燃料ポンプと、を備えた燃料供給システムにおける異常を診断する異常診断装置であって、
前記コモンレールに蓄えられた前記燃料の圧力値であるコモンレール圧力値と、前記燃料ポンプの上流側
かつ前記燃料フィルタの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第1の上流側圧力値と
、前記燃料フィルタの上流側かつ前記フィードポンプの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第2の上流側圧力値と、を受け取る入力部と、
前記
コモンレール圧力値が予め設定された第1閾値未満である場合、前記
第1の上流側圧力値が予め設定された第2閾値未満であるか否かを判定
し、前記第1の上流側圧力値が前記第2閾値未満である場合、前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定し、前記第1の上流側圧力値が前記第2閾値以上である場合、前記燃料ポンプに異常が発生したと判定する判定部と、を有し、
前記判定部は、
さらに、
前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定した場合、前記第2の上流側圧力値が予め設定された第3閾値未満であるか否かを判定し、
前記
第2の上流側圧力値が前記第
3閾値未満である場合、前記
フィードポンプ、または、前記貯留部と前記燃料フィルタとの間の配管に異常が発生したと判定し、
前記
第2の上流側圧力値が前記
第3閾値以上である場合、前記燃料
フィルタに異常が発生したと判定する、
異常診断装置。
【請求項2】
前記燃料ポンプは、
前記燃料の流量を調整する流量調整弁と、
流量が調整された前記燃料を加圧する高圧ポンプと、を有する、
請求項
1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
燃料を貯留する貯留部と、前記貯留部から前記燃料を汲み上げるフィードポンプと、前記フィードポンプにより汲み上げられた前記燃料に含まれる異物を捕集する燃料フィルタと、前記燃料フィルタを通過した前記燃料を加圧してコモンレールへ吐出する燃料ポンプと、を備えた燃料供給システムにおける異常を診断する装置が行う異常診断方法であって、
前記コモンレールに蓄えられた前記燃料の圧力値であるコモンレール圧力値と、前記燃料ポンプの上流側
かつ前記燃料フィルタの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第1の上流側圧力値と
、前記燃料フィルタの上流側かつ前記フィードポンプの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第2の上流側圧力値と、を受け取るステップと、
前記
コモンレール圧力値が予め設定された第1閾値未満である場合、前記
第1の上流側圧力値が予め設定された第2閾値未満であるか否かを判定するステップと、
前記
第1の上流側圧力値が前記第2閾値未満である場合、前記燃料ポンプ
よりも上流側に異常が発生したと判定する一方、前記
第1の上流側圧力値が前記第2閾値以上である場合、前記燃料ポンプに異常が発生したと判定するステップと
、
前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定した場合、前記第2の上流側圧力値が予め設定された第3閾値未満であるか否かを判定するステップと、
前記第2の上流側圧力値が前記第3閾値未満である場合、前記フィードポンプ、または、前記貯留部と前記燃料フィルタとの間の配管に異常が発生したと判定する一方、前記第2の上流側圧力値が前記第3閾値以上である場合、前記燃料フィルタに異常が発生したと判定するステップと、を含む、
異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料供給システムの異常を診断する異常診断装置および異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクに貯留されている燃料を内燃機関側(例えば、コモンレール)へ供給する燃料供給システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、燃料供給システムでは、フィードポンプによって燃料タンクから汲み上げられた燃料は、燃料フィルタを通過し、流量調整弁によって流量を調整された後、高圧ポンプによって加圧されて内燃機関側へ吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した燃料供給システムにおいて異常が発生した場合、異常発生箇所を特定するためには、燃料供給システムを分解して調べる必要があるという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、分解の必要なく、異常発生箇所を特定することができる異常診断装置および異常診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る異常診断装置は、燃料を貯留する貯留部と、前記貯留部から前記燃料を汲み上げるフィードポンプと、前記フィードポンプにより汲み上げられた前記燃料に含まれる異物を捕集する燃料フィルタと、前記燃料フィルタを通過した前記燃料を加圧してコモンレールへ吐出する燃料ポンプと、を備えた燃料供給システムにおける異常を診断する異常診断装置であって、前記コモンレールに蓄えられた前記燃料の圧力値であるコモンレール圧力値と、前記燃料ポンプの上流側かつ前記燃料フィルタの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第1の上流側圧力値と、前記燃料フィルタの上流側かつ前記フィードポンプの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第2の上流側圧力値と、を受け取る入力部と、前記コモンレール圧力値が予め設定された第1閾値未満である場合、前記第1の上流側圧力値が予め設定された第2閾値未満であるか否かを判定し、前記第1の上流側圧力値が前記第2閾値未満である場合、前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定し、前記第1の上流側圧力値が前記第2閾値以上である場合、前記燃料ポンプに異常が発生したと判定する判定部と、を有し、前記判定部は、さらに、前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定した場合、前記第2の上流側圧力値が予め設定された第3閾値未満であるか否かを判定し、前記第2の上流側圧力値が前記第3閾値未満である場合、前記フィードポンプ、または、前記貯留部と前記燃料フィルタとの間の配管に異常が発生したと判定し、前記第2の上流側圧力値が前記第3閾値以上である場合、前記燃料フィルタに異常が発生したと判定する。
【0007】
本開示の一態様に係る異常診断方法は、燃料を貯留する貯留部と、前記貯留部から前記燃料を汲み上げるフィードポンプと、前記フィードポンプにより汲み上げられた前記燃料に含まれる異物を捕集する燃料フィルタと、前記燃料フィルタを通過した前記燃料を加圧してコモンレールへ吐出する燃料ポンプと、を備えた燃料供給システムにおける異常を診断する装置が行う異常診断方法であって、前記コモンレールに蓄えられた前記燃料の圧力値であるコモンレール圧力値と、前記燃料ポンプの上流側かつ前記燃料フィルタの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第1の上流側圧力値と、前記燃料フィルタの上流側かつ前記フィードポンプの下流側を流れる前記燃料の圧力値である第2の上流側圧力値と、を受け取るステップと、前記コモンレール圧力値が予め設定された第1閾値未満である場合、前記第1の上流側圧力値が予め設定された第2閾値未満であるか否かを判定するステップと、前記第1の上流側圧力値が前記第2閾値未満である場合、前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定する一方、前記第1の上流側圧力値が前記第2閾値以上である場合、前記燃料ポンプに異常が発生したと判定するステップと、前記燃料ポンプよりも上流側に異常が発生したと判定した場合、前記第2の上流側圧力値が予め設定された第3閾値未満であるか否かを判定するステップと、前記第2の上流側圧力値が前記第3閾値未満である場合、前記フィードポンプ、または、前記貯留部と前記燃料フィルタとの間の配管に異常が発生したと判定する一方、前記第2の上流側圧力値が前記第3閾値以上である場合、前記燃料フィルタに異常が発生したと判定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、分解の必要なく、異常発生箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る燃料供給システムおよび異常診断装置の構成の一例を示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係る異常診断装置の動作の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本開示の実施の形態に係る燃料供給システム1および異常診断装置100の構成について、
図1を用いて説明する。
【0012】
図1は、燃料供給システム1および異常診断装置100の構成の一例を示す図である。
図1において、実線の矢印は燃料の流れを示しており、破線の矢印は電気信号の流れを示している。
【0013】
図1に示す燃料供給システム1および異常診断装置100は、燃料(例えば、軽油)により駆動する内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)を備えた車両に搭載される。燃料供給システム1は、内燃機関に燃料を供給するシステムであり、異常診断装置100は、燃料供給システム1における異常の発生、および、異常発生箇所を特定する装置である。
【0014】
まず、燃料供給システム1の構成について説明する。
【0015】
燃料供給システム1は、燃料を貯留する燃料タンク2(貯留部の一例)、燃料タンク2から燃料を汲み上げるフィードポンプ3、燃料に含まれる異物を捕集する燃料フィルタ4、燃料をコモンレール8へ吐出する燃料ポンプ5を有する。
【0016】
燃料ポンプ5は、燃料の流量を調整する流量調整弁6、および、燃料を高圧に加圧する高圧ポンプ7を有する。
【0017】
流量調整弁6の開度は、コモンレール8に蓄えられた燃料の圧力(コモンレール圧)が運転状況(例えば、内燃機関の回転数およびアクセル開度)に基づいて決まる目標コモンレール圧となるように、図示しない制御装置(例えば、ECU:Electric Control Unit)によって制御される。
【0018】
コモンレール8には、随時、上述したコモンレール圧を検出し、検出されたコモンレール圧を示す値を異常診断装置100へ出力する第1圧力センサ9が設けられている。この第1圧力センサ9により検出される圧力値は、燃料ポンプ5の下流側の圧力値であるので、以下、「下流側圧力値」という。
【0019】
燃料フィルタ4の下流側かつ燃料ポンプ5の上流側には、随時、燃料フィルタ4の下流側かつ燃料ポンプ5の上流側の燃料の圧力を検出し、検出された圧力を示す値を異常診断装置100へ出力する第2圧力センサ10が設けられている。この第2圧力センサ10により検出される圧力値は、燃料ポンプ5の上流側の圧力値であるので、以下、「上流側圧力値」という。
【0020】
なお、
図1では、フィードポンプ3が燃料フィルタ4の上流側に設けられる場合を図示したが、これに限定されず、フィードポンプ3は、例えば燃料ポンプ5に設けられてもよい。
【0021】
また、
図1において、燃料フィルタ4の上流側(例えば、燃料タンク2とフィードポンプ3との間)に、燃料フィルタ4とは別の燃料フィルタが設けられてもよい。
【0022】
このように構成された燃料供給システム1では、燃料タンク2に貯留された燃料は、フィードポンプ3により汲み上げられ、燃料フィルタ4により異物が捕集された後、燃料ポンプ5へ流入する。そして、燃料は、流量調整弁6により内燃機関の運転状況に基づいた流量に調整され、高圧ポンプ7により高圧に加圧されてから、コモンレール8へ吐出される。コモンレール8に蓄えられた燃料は、内燃機関のインジェクタ(図示略)に供給される。
【0023】
次に、異常診断装置100の構成について説明する。
【0024】
異常診断装置100は、入力部110および判定部120を有する。
【0025】
図示は省略するが、異常診断装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路を有する。後述する判定部120の機能は、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0026】
入力部110は、第1圧力センサ9から下流側圧力値を随時受け取る。また、入力部110は、第2圧力センサ10から上流側圧力値を随時受け取る。
【0027】
判定部120は、下流側圧力値が予め設定された第1閾値未満であるか否かを判定する。第1閾値は、例えば、内燃機関の回転数およびアクセル開度に応じて決まる圧力値である。第1閾値の例としては、上述した目標コモンレール圧が挙げられる。第1閾値は、予め実施された実験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。
【0028】
なお、第1閾値は、入力部110が他の装置(例えばECU)から受け取ってもよいし、判定部120が算出してもよい。後者の場合、例えば、まず、入力部110は、クランク角度センサ(図示略)の検出値およびアクセル開度センサ(図示略)の検出値を受け取る。次に、判定部120は、検出されたクランク角度に基づいて内燃機関の回転数を算出する。次に、判定部120は、内燃機関の回転数およびアクセル開度に応じて目標コモンレール圧が定められたマップから、算出された内燃機関の回転数および検出されたアクセル開度に対応する目標コモンレール圧を特定し、それを第1閾値として用いる。
【0029】
また、判定部120は、下流側圧力値が第1閾値未満である場合、上流側圧力値が予め設定された第2閾値未満であるか否かを判定する。第2閾値は、例えば、内燃機関の回転数に応じて決まる圧力値である。第2閾値は、予め実施された実験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。
【0030】
なお、第2閾値は、入力部110が他の装置(例えばECU)から受け取ってもよいし、判定部120が算出してもよい。後者の場合、例えば、まず、入力部110は、クランク角度センサ(図示略)の検出値を受け取る。次に、判定部120は、検出されたクランク角度に基づいて内燃機関の回転数を算出する。次に、判定部120は、内燃機関の回転数に応じて圧力が定められたマップから、算出された内燃機関の回転数に対応する圧力を特定し、それを第2閾値として用いる。
【0031】
そして、判定部120は、上流側圧力値が第2閾値未満である場合、燃料ポンプ5の上流側(例えば、燃料フィルタ4、または、燃料タンク2と燃料ポンプ5との間の配管)に異常が発生したと判定する。
【0032】
一方、判定部120は、上流側圧力値が第2閾値以上である場合、燃料ポンプ5に異常が発生したと判定する。
【0033】
そして、判定部120は、異常が発生した箇所(燃料ポンプ5、または、燃料ポンプ5の上流側)を示す診断結果情報を、所定の装置へ出力または無線送信する。
【0034】
所定の装置は、例えば、車両に搭載された表示装置や記憶装置でもよいし、車両外に設置されたサーバ装置であってもよい。
【0035】
記憶装置またはサーバ装置に出力された診断結果情報は、例えば、異常が発生したデバイスの製造者や、異常が発生したデバイスを修理または交換する修理者によって、利用される。例えば、所定の装置がサーバ装置である場合、そのサーバ装置から修理者の端末装置へ診断結果情報が送信されることにより、修理者は、車両の修理が持ち込まれる前に、異常発生箇所を把握することができる。
【0036】
以上、燃料供給システム1および異常診断装置100の構成について説明した。
【0037】
次に、異常診断装置100の動作について、
図2を用いて説明する。
図2は、異常診断装置100の動作の一例を示す図である。
【0038】
まず、入力部110は、第1圧力センサ9から下流側圧力値を受け取り、第2圧力センサ10から上流側圧力値を受け取る(ステップS11)。
【0039】
次に、判定部120は、下流側圧力値が第1閾値未満であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0040】
下流側圧力値が第1閾値以上である場合(ステップS12:NO)、フローは終了する。
【0041】
一方、下流側圧力値が第1閾値未満である場合(ステップS12:YES)、判定部120は、上流側圧力値が第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0042】
判定部120は、上流側圧力値が第2閾値未満である場合(ステップS13:YES)、燃料ポンプ5よりも上流側に異常が発生したと判定する(ステップS14)。
【0043】
一方、判定部120は、上流側圧力値が第2閾値以上である場合(ステップS13:NO)、燃料ポンプ5に異常が発生したと判定する(ステップS15)。
【0044】
その後、判定部120は、判定結果を示す診断結果情報を、所定の装置へ出力または無線送信する。
【0045】
以上、異常診断装置100の動作について説明した。
【0046】
ここまで詳述したように、本実施の形態の異常診断装置100は、下流側圧力値が第1閾値未満である場合、上流側圧力値が第2閾値未満であるか否かを判定する。そして、異常診断装置100は、上流側圧力値が第2閾値未満である場合、燃料ポンプ5よりも上流側に異常が発生したと判定し、上流側圧力値が第2閾値以上である場合、燃料ポンプ5に異常が発生したと判定する。よって、燃料供給システム1において異常が発生した場合に、燃料供給システム1を分解して調べる必要がなく、燃料供給システム1における異常発生箇所を特定することができる。その結果、分解して異常発生箇所を特定する場合に比べて、時間や費用を削減できる。
【0047】
なお、本開示は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。以下、各変形例について説明する。
【0048】
[変形例1]
実施の形態では、異常診断装置100が車両に搭載される場合を例に挙げて説明したが、異常診断装置100は、車両の外部に備えられてもよい。
【0049】
その場合、例えば、車両に搭載された無線通信装置(例えば、テレマティクスで用いられる装置)が、第1圧力センサ9から受け取った上流側圧力値と、第2圧力センサ10から受け取った下流側圧力値とを、所定のネットワークを介して、異常診断装置100へ無線送信する。そして、異常診断装置100は、上流側圧力値および下流側圧力値を受信し、それらを用いて、上述した各判定処理を行う。
【0050】
[変形例2]
実施の形態で説明した燃料供給システム1は、排気管内へ燃料を噴射するインジェクタ(以下、排気管噴射用インジェクタという)に燃料を供給できるように構成されてもよい。
【0051】
その場合、例えば、燃料タンク2と燃料ポンプ5とを接続する配管から分岐する分岐管を設け、その分岐管と排気管噴射用インジェクタとを接続する。これにより、燃料は、分岐管を介して排気管噴射用インジェクタへ供給される。
【0052】
分岐管は、例えば、燃料フィルタ4の上流側に設けられてもよいし、燃料フィルタ4の下流側に設けられてもよい。
【0053】
また、例えば、分岐管において、シャットオフバルブ、第3圧力センサ、ドージングバルブ、第4圧力センサ、および排気管噴射用インジェクタがこの順に設けられてもよい。第3圧力センサは、シャットオフバルブとドージングバルブとの間の燃料の圧力を検出する。第4圧力センサは、ドージングバルブと排気管噴射用インジェクタとの間の燃料の圧力を検出する。そして、第3圧力センサまたは第4圧力センサによって検出された圧力値を、上述した上流側圧力値の代わりに用いてもよい。
【0054】
[変形例3]
実施の形態において、燃料ポンプ5の上流側に異常が発生したと判定した場合、さらに、燃料ポンプ5の上流側における異常発生箇所を判定してもよい。この場合について、以下に説明する。
【0055】
図1に示した燃料供給システム1において、フィードポンプ3の下流側かつ燃料フィルタ4の上流側の燃料の圧力を検出する第5圧力センサを設ける。
【0056】
入力部110は、上述した下流側圧力値および上流側圧力値に加えて、第5圧力センサにより検出された圧力値(以下、最上流側圧力値という)を受け取る。
【0057】
判定部120は、燃料ポンプ5の上流側に異常が発生したと判定した場合、最上流側圧力値が第3閾値未満であるか否かを判定する。第3閾値は、例えば、内燃機関の回転数に応じて決まる圧力値である。
【0058】
判定部120は、最上流側圧力値が第3閾値未満である場合、燃料フィルタ4の上流側(例えば、フィードポンプ3、または、燃料タンク2と燃料フィルタ4との間の配管)に異常が発生したと判定する。
【0059】
一方、判定部120は、最上流側圧力値が第3閾値以上である場合、燃料フィルタ4に異常が発生したと判定する。
【0060】
その後、判定部120は、異常が発生した箇所(燃料フィルタ4、または、燃料フィルタ4の上流側)を示す診断結果情報を、所定の装置へ出力または無線送信する。
【0061】
このように本変形例によれば、燃料ポンプ5の上流側の異常発生箇所を特定することができる。
【0062】
以上、各変形例について説明した。なお、各変形例は、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の異常診断装置および異常診断方法は、燃料供給システムにおける異常発生箇所の特定に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 燃料供給システム
2 燃料タンク
3 フィードポンプ
4 燃料フィルタ
5 燃料ポンプ
6 流量調整弁
7 高圧ポンプ
8 コモンレール
9 第1圧力センサ
10 第2圧力センサ
100 異常診断装置
110 入力部
120 判定部