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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20220809BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220809BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 C
B60C11/03 300B
B60C11/03 300E
B60C11/00 D
B60C11/13 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018078689
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019182340
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】増山 達也
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-086605(JP,A)
【文献】特開昭61-295103(JP,A)
【文献】特開昭63-106114(JP,A)
【文献】特開昭63-222905(JP,A)
【文献】特開平04-050006(JP,A)
【文献】特開2003-054221(JP,A)
【文献】特開2011-152836(JP,A)
【文献】特開2012-116245(JP,A)
【文献】特開平04-278808(JP,A)
【文献】特開2009-006983(JP,A)
【文献】特開平03-010911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、回転方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部のタイヤ赤道上にタイヤ周方向に沿ってタイヤ全周に亘って延在する1本の細溝が形成され、
タイヤ赤道の両側に前記細溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在してトレッド端まで到達する複数本のラグ溝がタイヤ周方向に間隔をおいて形成され、前記細溝および前記ラグ溝によって複数のブロックが区画され、前記ラグ溝の前記細溝に連通する端部は前記ラグ溝のトレッド端側の端部よりも踏込側に位置し、前記細溝の前記ブロック間における溝深さは前記ラグ溝の溝深さの15%~85%であり、
タイヤ赤道からトレッド端までのタイヤ幅方向の距離をWとし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.25W離間した位置とタイヤ赤道との間の領域を第一領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.25W離間した位置とタイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.50W離間した位置との間の領域を第二領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.50W離間した位置とタイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.75W離間した位置との間の領域を第三領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.75W離間した位置とトレッド端との間の領域を第四領域としたとき、
前記第一領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度よりも前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が小さくなり、前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度よりも前記第三領域および前記第四領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が大きくなるように前記ラグ溝が湾曲または屈曲していることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第一領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度と前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度との差が35°以上45°以下であり、前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度と前記第三領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度との差が35°以上45°以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が28°~38°であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第二乃至第三領域にタイヤ周方向に隣り合うラグ溝どうしを連結する補助溝が形成され、前記補助溝のタイヤ周方向に対する角度が10°~20°であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
トレッド踏面において、前記細溝と前記ラグ溝と前記補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部の角度が60°~75°であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記細溝と前記ラグ溝と前記補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部に面取り処理が施されていることを特徴とする請求項4または5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
トレッド踏面において、前記細溝と前記ラグ溝と前記補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部と蹴り出し側かつタイヤ幅方向外側の角部との間の踏込側の輪郭線がブロック外側に向かって凸となる円弧であることを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
トレッド踏面において、前記細溝と前記ラグ溝と前記補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックのタイヤ赤道側の輪郭線が、前記タイヤ赤道側の輪郭線とタイヤ赤道との距離が踏込側よりも蹴出側で大きくなるように傾斜していることを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記補助溝の溝深さが前記ラグ溝の溝深さの75%~85%であることを特徴とする請求項4~8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記ラグ溝の溝深さが15mm~25mmであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部を構成するトレッドゴムのJIS-A硬度が61~65であり、100%伸長時のモジュラスが2.0MPa~2.8MPaであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤとして好適な空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、未舗装路における走行性能を向上しながら、低騒音性能を改善した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラック等の建設車両に用いられる重荷重用空気入りタイヤは、主として、未舗装路における走行性能(トラクション性能)に優れることが求められる。そのため、タイヤ幅方向に延在するラグ溝を多数備えたブロック基調のトレッドパターンが採用される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方で、近年、各種タイヤに対する要求性能が高まっており、上記のようなタイヤにおいても、未舗装路における走行性能だけでなく、舗装路におけるタイヤ性能(例えば、低騒音性能)を改善することが求められている。そのため、未舗装路におけるトラクション性能を向上しながら、低騒音性能を改善するための対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4676959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、未舗装路における走行性能を向上しながら、低騒音性能を改善した空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、回転方向が指定された空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部のタイヤ赤道上にタイヤ周方向に沿ってタイヤ全周に亘って延在する1本の細溝が形成され、タイヤ赤道の両側に前記細溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在してトレッド端まで到達する複数本のラグ溝がタイヤ周方向に間隔をおいて形成され、前記細溝および前記ラグ溝によって複数のブロックが区画され、前記ラグ溝の前記細溝に連通する端部は前記ラグ溝のトレッド端側の端部よりも踏込側に位置し、前記細溝の前記ブロック間における溝深さは前記ラグ溝の溝深さの15%~85%であり、タイヤ赤道からトレッド端までのタイヤ幅方向の距離をWとし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.25W離間した位置とタイヤ赤道との間の領域を第一領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.25W離間した位置とタイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.50W離間した位置との間の領域を第二領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.50W離間した位置とタイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.75W離間した位置との間の領域を第三領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.75W離間した位置とトレッド端との間の領域を第四領域としたとき、前記第一領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度よりも前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が小さくなり、前記第二領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度よりも前記第三領域および前記第四領域における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が大きくなるように前記ラグ溝が湾曲または屈曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、上述のように、ラグ溝が第一乃至第四領域のそれぞれにおいてタイヤ周方向に対して適切な角度となるように湾曲または屈曲しているため、未舗装路におけるトラクション性能を向上しながら、低騒音性能を向上することができる。即ち、タイヤ赤道に近い第一領域とトレッド端に近い第三乃至第四領域においてラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が相対的に大きいことで、タイヤ幅方向の成分を充分に確保することができ、トラクション性能を向上することができる。一方で、第二領域においてラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が小さくなってラグ溝全体が上記のように湾曲または屈曲していることで、気柱共鳴音の発生を抑制することができ、且つ、ラグ溝を通じて車両内側から車両外側に向かって騒音が放出されることを抑制できるので、低騒音性能を向上することができる。
【0008】
本発明では、第一領域におけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度と第二領域におけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度との差が35°以上45°以下であり、第二領域におけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度と第三領域におけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度との差が35°以上45°以下であることが好ましい。このように領域間のラグ溝の角度差を適度な範囲に設定することで、ラグ溝のタイヤ幅方向の成分を充分に確保しながら、ラグ溝を適度に湾曲または屈曲させることができ、トラクション性能を確保しながら低騒音性能を向上するには有利になる。
【0009】
本発明では、第二領域におけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度が28°~38°であることが好ましい。これにより、ラグ溝の湾曲または屈曲した形状がより良好になるため、トラクション性能と低騒音性能とをバランスよく向上するには有利になる。
【0010】
本発明では、第二乃至第三領域にタイヤ周方向に隣り合うラグ溝どうしを連結する補助溝が形成され、補助溝のタイヤ周方向に対する角度が10°~20°であることが好ましい。このように補助溝を設けることで、タイヤ周方向の溝成分を追加することができ、トラクション時にタイヤが横ずれすることを防止して安定性を向上することができる。
【0011】
このとき、トレッド踏面において、細溝とラグ溝と補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部の角度が60°~75°であることが好ましい。これにより、当該ブロックの踏込側の剛性を低減して、ブロックによる打音を低減することができ、低騒音性能を向上するには有利になる。
【0012】
このとき、細溝とラグ溝と補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部に面取り処理が施されていることが好ましい。これにより、ブロックの接地圧が均一になり、摩耗初期の偏摩耗を抑制することができる。
【0013】
このとき、トレッド踏面において、細溝とラグ溝と補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部と蹴り出し側かつタイヤ幅方向外側の角部との間の踏込側の輪郭線がブロック外側に向かって凸となる円弧であることが好ましい。これにより、ブロックによる打音を分散させることができ、低騒音性能を向上するには有利になる。
【0014】
このとき、トレッド踏面において、細溝とラグ溝と補助溝とで区画されたタイヤ赤道側のブロックのタイヤ赤道側の輪郭線が、タイヤ赤道側の輪郭線とタイヤ赤道との距離が踏込側よりも蹴出側で大きくなるように傾斜していることが好ましい。これにより、細溝の溝幅を変動させて、細溝において生じる気柱共鳴音の発生を抑制することができ、低騒音性能を向上するには有利になる。
【0015】
このとき、補助溝の溝深さがラグ溝の溝深さの75%~85%であることが好ましい。このように補助溝をラグ溝よりも浅くすることで、補助溝に隣接するブロックの剛性を高めることができ、トラクション性能を向上するには有利になる。
【0016】
本発明では、前述のように、細溝の前記ブロック間における溝深さがラグ溝の溝深さの15%~85%である。このように細溝にラグ溝よりも浅い領域を設けることで、細溝に隣接するブロックの剛性を高めることができ、トラクション性能を向上するには有利になる。
【0017】
本発明では、ラグ溝の溝深さが15mm~25mmであることが好ましい。また、トレッド部を構成するトレッドゴムのJIS-A硬度が61~65であり、100%伸長時のモジュラスが2.0MPa~2.8MPaであることが好ましい。本発明は、このような特徴を有する重荷重用空気入りタイヤにおいて、トラクション性能、耐偏摩耗性能、低騒音性能について、特に優れた性能を発揮することができる。尚、本発明において、「JIS-A硬度」とは、JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠して、温度23℃でタイプAのデュロメータを用いて測定される硬度である。また、「100%伸長時のモジュラス」とは、JIS K6251に準拠して3号型ダンベル試験片を用い、引張速度500mm/分、温度23℃の各条件で測定した値である。
【0018】
本発明において、「トレッド端」とは、タイヤを正規リムにリム組みして、正規内圧を充填し、荷重を加えない状態(無負荷状態)で、タイヤのトレッド模様部分の両端である。本発明における「タイヤ赤道からトレッド端までのタイヤ幅方向の距離W」は、上述の状態でタイヤ幅方向に沿って測定されるトレッド端間の直線距離であるトレッド展開幅(JATMAで規定される「トレッド幅」)の1/2に相当する。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE OAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド面を示す正面図である。
図3】従来例の空気入りタイヤのトレッド面の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Eはトレッド端を示す。図示の例では、トレッド端Eが、タイヤ幅方向最外側のブロックのタイヤ幅方向外側のエッジ(タイヤ幅方向最外側のブロックの踏面とタイヤ幅方向外側の側面とが成す縁部)と一致している。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0022】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では4層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~60°の範囲に設定されている。図1の空気入りタイヤでは採用されていないが、本発明では、ベルト層7の外周側に、更にベルト補強層(不図示)を設けることもできる。ベルト補強層を設ける場合、ベルト補強層は、例えばタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含み、この有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定することができる。
【0023】
トレッド部1におけるカーカス層4およびベルト層7の外周側にはトレッドゴム層10が配される。サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層20が配される。ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層30が配される。トレッドゴム層10は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッドゴム層およびアンダートレッドゴム層)がタイヤ径方向に積層した構造であってもよい。
【0024】
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その断面構造は上述の基本構造に限定されるものではない。尚、本発明は、主として重荷重用空気入りタイヤとして用いることを意図したものであり、その場合、トレッドゴム10として、JIS-A硬度が61~65であり、100%伸長時のモジュラスが2.0MPa~2.8MPaであるゴム組成物を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部1の表面には、図2に示すように、タイヤ赤道CL上でタイヤ周方向に沿ってタイヤ全周に亘って延在する1本の細溝11が設けられる。この細溝11は、溝幅が例えば4mm~10mm、溝深さが例えば5mm~25mmであり、後述のラグ溝12よりも溝幅が小さい溝である。
【0026】
タイヤ赤道CLの両側には、細溝11からタイヤ幅方向外側に向かって延在してトレッド端Eまで到達する複数本のラグ溝12がタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。各ラグ溝12において、細溝11に連通する端部はトレッド端E側の端部よりも踏込側に位置している。即ち、本発明の空気入りタイヤは回転方向Rが指定されたタイヤであるが、各ラグ溝12はタイヤ赤道CL側からタイヤ幅方向外側に向かって回転方向Rとは反対方向に傾斜している。ラグ溝12は、溝幅が例えば13mm~30mm、溝深さが例えば15mm~25mmの溝である。
【0027】
各ラグ溝12は、図2に示すように、タイヤ赤道CLからトレッド端Eまでのタイヤ幅方向の距離をWとし、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.25W離間した位置とタイヤ赤道CLとの間の領域を第一領域Aとし、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.25W離間した位置とタイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.50W離間した位置との間の領域を第二領域Bとし、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.50W離間した位置とタイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.75W離間した位置との間の領域を第三領域Cとし、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.75W離間した位置とトレッド端Eとの間の領域を第四領域Dとしたとき、第一領域Aにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θaよりも第二領域Bにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θbが小さくなり、第二領域Bにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θbよりも第三領域Cおよび第四領域Dにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θcdが大きくなるようにラグ溝12が湾曲または屈曲している。言い換えると、各ラグ溝12は、タイヤ赤道CLからトレッド端Eに亘って滑らかな湾曲形状を有して、第二領域Bまたは第三領域C内に、湾曲の向きが反転する変曲点が1つ存在しているか、或いは、タイヤ赤道CLからトレッド端Eに至るまでに2回折れ曲がった屈曲形状を有して、第二領域Bまたは第三領域C内に2つの屈曲点が存在している。
【0028】
尚、ラグ溝12の平均角度は、各領域の境界位置におけるラグ溝12の溝幅方向の中点を結んだ直線がタイヤ周方向に対してなす角度として求めることができる。但し、第一領域Aと第四領域Dについては、図示のように、タイヤ赤道CLまたはトレッド端Eに向かって引いたラグ溝12の延長線のタイヤ赤道CLまたはトレッド端Eにおける中点を用いるものとする。また、2つの領域を跨いだ平均角度(例えば、平均角度θcd)は、第三領域Cのタイヤ赤道CL側の境界位置におけるラグ溝12の溝幅方向の中点と、第四領域Dのトレッド端E側の境界位置(即ちトレッド端E)におけるラグ溝12の幅方向の中点とを結んだ直線がタイヤ周方向に対してなす角度として求めることができる。
【0029】
更に、図2の例では、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝12どうしを連結するようにタイヤ周方向に沿って延在する補助溝13が形成されている。この補助溝13は、本発明において必ずしも設ける必要のない任意の要素であるが、この補助溝13を設けることで、タイヤ周方向の溝成分を追加することができ、トラクション時にタイヤが横ずれすることを防止して安定性を高めることができる。
【0030】
図示の例では、細溝11とラグ溝12と補助溝13とによって複数のブロックが区画される。以下の説明では、これらブロックのうち、細溝11とラグ溝12と補助溝13とで区画されてタイヤ赤道CL側に位置するブロックをセンターブロック21、細溝11とラグ溝12と補助溝13とで区画されてトレッド端E側に位置するブロックをショルダーブロック22という。
【0031】
本発明では、上述のように、ラグ溝12が第一乃至第四領域A~Dのそれぞれにおいてタイヤ周方向に対して適切な角度となるように湾曲または屈曲しているため、未舗装路におけるトラクション性能を向上しながら、低騒音性能を向上することができる。即ち、タイヤ赤道CLに近い第一領域Aとトレッド端Eに近い第三乃至第四領域C,Dのそれぞれにおいてラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度が相対的に大きいことで、タイヤ幅方向の溝成分を充分に確保することができ、トラクション性能を向上することができる。一方で、第二領域Bにおいてラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度が小さくなってラグ溝12全体が上記のように湾曲または屈曲していることで、気柱共鳴音の発生を抑制することができ、且つ、ラグ溝12を通じて車両内側から車両外側に向かって騒音が放出されることを抑制できるので、低騒音性能を向上することができる。ラグ溝12の湾曲または屈曲形状が上述の角度の関係を満たしていないと、ラグ溝12のタイヤ幅方向の溝成分を充分に確保することができず、また、ラグ溝12を充分に湾曲または屈曲させることができないため、未舗装路におけるトラクション性能や低騒音性能を向上する効果が限定的になる。
【0032】
上記のようにラグ溝12の角度を設定するにあたって、第一領域Aにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θaと第二領域Bにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θbとの差が35°以上45°以下であることが好ましい。同様に、第二領域Bにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θbと第三領域Cにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θcとの差が35°以上45°以下であることが好ましい。このように領域間のラグ溝12の角度差を適度な範囲に設定することで、ラグ溝12のタイヤ幅方向の溝成分を充分に確保しながら、ラグ溝12を適度に湾曲または屈曲させることができ、トラクション性能を確保しながら低騒音性能を向上するには有利になる。このとき、これら角度差が35°未満であると、湾曲または屈曲しない溝と実質的に同等となり、低騒音性能を向上する効果が充分に得られない。これら角度差が45°を超えるとラグ溝12の湾曲または屈曲が大きくなり過ぎて、ラグ溝12のタイヤ幅方向成分とタイヤ周方向成分とをバランスよく確保することが却って難しくなり、未舗装路におけるトラクション性能と低騒音性能とをバランスよく向上することが難しくなる。
【0033】
各領域の平均角度は、当該タイヤにおいて重視する性能によって適宜設定することができるが、第一領域Aにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θaを例えば70°~85°、第二領域Bにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θbを例えば30°~40°、第三領域Cにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θcを例えば70°~80°、第四領域Dにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θdを例えば75°~85°に設定するとよい。これら角度の中でも、第二領域Bにおけるラグ溝12のタイヤ周方向に対する平均角度θbを設定することは低騒音性能を向上するために有効であり、より好ましくは平均角度θbを28°~38°に設定するとよい。このように平均角度を設定することで、ラグ溝12の湾曲または屈曲した形状がより良好になるため、トラクション性能と低騒音性能とをバランスよく向上するには有利になる。平均角度θbが28°未満であると、ラグ溝12の湾曲または屈曲が大きくなり過ぎて、ラグ溝12のタイヤ幅方向成分とタイヤ周方向成分とをバランスよく確保することが却って難しくなり、未舗装路におけるトラクション性能と低騒音性能とをバランスよく向上することが難しくなる。平均角度θbが38°を超えると、ラグ溝12を適度に湾曲または屈曲させることが難しくなり、低騒音性能を向上する効果が充分に得られない。
【0034】
上記のように、補助溝13を設ける場合、補助溝13は第二領域B乃至第三領域Cに配置することが好ましい。例えば、図示の例では第二領域Bに補助溝13が設けられている。また、補助溝13のタイヤ周方向に対する角度αを10°~20°にすることが好ましい。このように補助溝13を設けることで、タイヤ周方向の溝成分を確実に確保することができ、トラクション時にタイヤが横ずれすることを防止して安定性を高めることができる。補助溝13が第一領域Aに形成されるとセンターブロック21が相対的に小さくなり、補助溝13が第四領域Dに形成されるとショルダーブロック22が相対的に小さくなり、いずれの場合も相対的に小さくなるブロックの剛性の確保が難しくなるので、トラクション性能に影響が出る虞がある。補助溝13の角度αが10°未満であると、補助溝13によって得られるタイヤ幅方向の成分が実質的に無くなるため、補助溝13によるトラクション性能の向上は見込めなくなる。補助溝13の角度αが20°を超えると、補助溝13によってタイヤ周方向の成分を効率的に追加することが難しくなり、トラクション時の安定性を向上する効果が限定的になる。
【0035】
本発明においてトレッド部1に形成されるブロック(センターブロック21、ショルダーブロック22)の形状は、上述の溝(細溝11、ラグ溝12、補助溝13)の構成によって得られた形状である限り特に限定されないが、センターブロック21については、騒音性能を向上するうえで、以下のように構成することが好ましい。即ち、ブロック踏面におけるセンターブロック21の踏込側かつタイヤ赤道CL側の角部の角度βを60°~75°にするとよい。これにより、センターブロック21の踏込側の剛性を低減して、ブロックによる打音を低減することができ、低騒音性能を向上するには有利になる。角度βが60°未満であると、当該角部が鋭くなり過ぎてブロック自体の耐久性に影響が出る虞がある。角度βが75°を超えると、センターブロック21の踏込側の剛性を低減する効果が限定的になり、低騒音性能を効率よく向上することが難しくなる。
【0036】
また、トレッド踏面において、センターブロック21の踏込側かつタイヤ赤道CL側の角部と蹴り出し側かつタイヤ幅方向外側の角部との間の踏込側の輪郭線がブロック外側に向かって凸となる円弧であることが好ましい。センターブロック21をこのような形状とすることで、センターブロック21による打音を分散させることが可能になり、低騒音性能を向上するには有利になる。
【0037】
更に、トレッド踏面において、センターブロック21のタイヤ赤道CL側の輪郭線が、タイヤ赤道CL側の輪郭線とタイヤ赤道CLとの距離が踏込側よりも蹴出側で大きくなるように傾斜していることが好ましい。特に、図示の例では、タイヤ赤道CLの一方側のラグ溝12と他方側のラグ溝12とがタイヤ周方向にずれて配置されており、タイヤ赤道CLの一方側のセンターブロック21と他方側のセンターブロック21もタイヤ周方向にずれて配置されている。そのため、上述の傾斜形状のタイヤ赤道CL側の輪郭線は、タイヤ赤道CLの両側で、タイヤ周方向にずれたハの字状を成している。このような形状であることで、細溝11において生じる気柱共鳴音を低減することができ、低騒音性能を向上するには有利になる。
【0038】
本発明は、上述のように、主としてダンプトラック等の建設車両に用いられる重荷重用空気入りタイヤとして意図されるが、その場合、トレッドパターンがブロック基調であることに加えて、使用条件の関係上、制動および駆動の頻度が高く、また、急カーブ走行の頻度も高いため、偏摩耗を起こしやすい傾向がある。そのため、上記構造に加えて、センターブロック21の踏込側かつタイヤ赤道CL側の角部には面取り処理を施すことが好ましい。これにより、センターブロック21の接地圧が均一になり、摩耗初期の偏摩耗を抑制することが可能になる。
【0039】
上記のように、本発明では、細溝11とラグ溝12と任意で補助溝13が設けられるが、これら溝のうちラグ溝12が最も深く、細溝11および補助溝13はラグ溝12よりも溝深さが小さいことが好ましい。具体的には、補助溝13の溝深さをラグ溝12の溝深さの75%~85%にすることが好ましい。このように補助溝13をラグ溝12よりも浅くすることで、13に隣接するブロック(センターブロック21およびショルダーブロック22)の剛性を高めることができ、トラクション性能を向上するには有利になる。また、細溝11のブロック間における溝深さをラグ溝12の溝深さの15%~85%にすることが好ましい。このように細溝11にラグ溝12よりも浅い領域を設けることで、細溝11に隣接するブロック(センターブロック21)の剛性を高めることができ、トラクション性能を向上するには有利になる。
【実施例
【0040】
タイヤサイズが315/80R22.5であり、図1に例示する基本構造を有し、基調とするトレッドパターン、第一領域Aにおけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度θa、第二領域Bにおけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度θb、第三領域Cにおけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度θc、第四領域Dにおけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度θd、第三領域Cおよび第四領域Dにおけるラグ溝のタイヤ周方向に対する平均角度θcd、平均角度θaとθbの大小関係、平均角度θbとθcdの大小関係、平均角度の差|θa-θb|、平均角度の差|θb-θc|、補助溝の位置、補助溝のタイヤ周方向に対する角度α、ブロック踏面におけるセンターブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部の角度β、センターブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部と蹴り出し側かつタイヤ幅方向外側の角部との間の踏込側の輪郭線の形状(踏込側輪郭線の形状)、センターブロックの踏込側かつタイヤ赤道側の角部の面取り処理の有無(角部の面取りの有無)、センターブロックのタイヤ赤道側の輪郭線の形状、ラグ溝の溝深さに対する細溝の溝深さの割合、ラグ溝の溝深さに対する補助溝の溝深さの割合をそれぞれ表1~3のように設定した従来例1、比較例1~2、実施例1~24の27種類の空気入りタイヤを作製した(尚、「ラグ溝の溝深さに対する細溝の溝深さの割合」が15%~85%の範囲から外れる実施例1~16は参考例である)
【0041】
表1~3の「トレッドパターン」の欄について、対応する図面の番号を記載した。尚、比較例1~2は、ラグ溝の湾曲または屈曲が少ないパターンであるが、便宜的に図2のパターンに対応するものとして各項目の数値等を表示した。表1~3の「踏込側輪郭線の形状」の欄について、当該輪郭線がブロック外側に向かって凸となる円弧である場合は「円弧」、当該輪郭線が屈曲してセンターブロックが踏込側かつタイヤ幅方向外側に角部を有する場合は「角」と表示した。表1~3の「赤道側の輪郭線の形状」の欄について、当該輪郭線がタイヤ赤道との距離が踏込側よりも蹴出側で大きくなるように傾斜している場合は「傾斜」、当該輪郭線がタイヤ赤道と平行であり当該輪郭線とタイヤ赤道との距離が一定である場合は「平行」と表示した。
【0042】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、トラクション性能、低騒音性能、耐偏摩耗性能を評価し、その結果を表1~3に併せて示した。
【0043】
トラクション性能
各試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のホイールに組み付けて、空気圧を850kPaとして、試験車両(車軸配列が6×4であるトラック)の駆動軸に装着し、舗装路面からなるテストコースと未舗装路からなるテストコースでそれぞれテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどトラクション性能に優れることを意味する。
【0044】
低騒音性能
各試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のホイールに組み付けて、試験車両(車軸配列が6×4であるトラック)の駆動軸に装着し、ECE R117-02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に定めるタイヤ騒音試験法に準拠して車外通過音を測定した。具体的には、試験車両を騒音測定区間の充分手前から走行させ、当該区間の直前でエンジンを停止し、惰行走行させた時の騒音測定区間における最大騒音値(dB)(周波数800~1200Hzの範囲の騒音値)を、基準速度に対し±10km/時の速度範囲をほぼ等間隔に8以上に区切った複数の速度で測定し、その平均を車外通過騒音とした。最大騒音値dBは、騒音測定区間内の中間点において走行中心線から側方に7.5mかつ路面から1.2mの高さに設置した定置マイクロフォンを用いてA特性周波数補正回路を通して測定した音圧〔dB(A)〕である。評価結果は、測定値の逆数を用いて、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど車外通過騒音が小さく低騒音性能に優れることを意味する。
【0045】
耐偏摩耗性能
各試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のホイールに組み付けて、空気圧を850kPaとして、試験車両(車軸配列が6×4であるトラック)の駆動軸に装着し、40000kmのパターン走行を行った後のブロックの摩耗量(ヒールアンドトウ摩耗)を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど摩耗量が少なく耐偏摩耗性能に優れることを意味する。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表1~3から明らかなように、実施例1~24はいずれも、従来例1と比較して、トラクション性および低騒音性能を向上した。特に、実施例16~24は、トラクション性能および低騒音性能に加えて、耐偏摩耗性能についても向上した。尚、実施例10は、耐偏摩耗性能が低下しているが、少なくともトラクション性および低騒音性能については優れた結果を示している。また、実施例11の耐偏摩耗性能は、基準とした従来例1に対して著しく悪化するものではなく、実用上問題のないレベルは維持している。
【0050】
一方、比較例1は、ラグ溝の屈曲形状が不適切(各領域間の角度の大小関係が不適当)であるため、トラクション性能と低騒音性能を向上する効果が得られなかった。比較例2は、ラグ溝の平均角度がすべての領域で一定であり、ラグ溝が湾曲または屈曲していないため低騒音性能が悪化した。
【符号の説明】
【0051】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
11 細溝
12 ラグ溝
13 補助溝
21 センターブロック
22 ショルダーブロック
A 第一領域
B 第二領域
C 第三領域
D 第四領域
CL タイヤ赤道
E トレッド端
図1
図2
図3