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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】乾燥殺菌装置および乾燥殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/48 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A47K10/48 A
A47K10/48 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018083033
(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公開番号】P2019187727
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 龍志
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-062981(JP,A)
【文献】特開2017-136145(JP,A)
【文献】特開2009-224089(JP,A)
【文献】特表昭63-501622(JP,A)
【文献】特開2013-244248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/48
A61L 9/20
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に開口部を有し、前記開口部から人体の一部を含む対象物を挿入可能な空洞部を備える筐体と、
前記空洞部の内部に向けて空気を吹き出す送風部と、
前記空洞部の内部に向けて紫外線を放射する紫外線放射部と、
前記空洞部の内部における前記対象物の有無を検出するセンサ部と、
前記送風部、前記紫外線放射部および前記センサ部に電力を供給可能な給電部と、
前記センサ部による検出結果に基づいて、前記給電部を制御して、前記送風部および前記紫外線放射部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記紫外線放射部は、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、および230nm超237nm以下の少なくとも一部を含み、波長190nm以上237nm以下の波長域以外を含まない紫外線を放射し、
前記制御部は、
前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されたことを検出したとき、前記給電部を制御して前記紫外線放射部の駆動を開始し、前記紫外線放射部の駆動を開始してから一定時間経過後に、前記給電部を制御して前記送風部の駆動を開始することを特徴とする乾燥殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線放射部は、
放射光が、波長190nm以上237nm以下の波長域の紫外線を含む光源と、
フィルタ部材と、を備え、
前記光源からの放射光を、前記フィルタ部材を介して前記空洞部の内部に向けて放射するように構成されており、
前記フィルタ部材は、前記光源からの放射光が入射角0°で入射したとき、波長190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および波長230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を透過させると共に、波長190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線の透過を阻止するものであることを特徴とする請求項1に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項3】
前記光源は、KrClエキシマランプまたはKrBrエキシマランプであることを特徴とする請求項2に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項4】
前記KrClエキシマランプまたは前記KrBrエキシマランプが有する発光管は、誘電体により構成され、断面が矩形状である直方体状空洞体であることを特徴とする請求項3に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項5】
前記紫外線放射部は、前記光源からの放射光を、前記フィルタ部材を介して前記空洞部の内部に向けて放射するように反射する反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項6】
前記フィルタ部材は、SiO2層およびAl23層による誘電体多層膜を有することを特徴とする請求項5に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項7】
前記フィルタ部材は、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜を有することを特徴とする請求項5に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項8】
前記紫外線放射部は、当該紫外線放射部から放射される前記紫外線が、前記空洞部の内壁の少なくとも一部に到達するように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項9】
前記空洞部は、対向する少なくとも2つの側壁部と、上方に設けられた前記開口部に対向する底面部と、を有し、
前記紫外線放射部は、当該紫外線放射部から放射される前記紫外線が、前記側壁部と前記底面部とに到達するように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項10】
前記空洞部は、対向する2つの側壁部を有し、
前記紫外線放射部は、前記2つの側壁部のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項11】
前記空洞部は、対向する2つの側壁部を有し、
前記紫外線放射部は、前記2つの側壁部のうちの一方の側壁部に設けられ、
他方の側壁部には、前記紫外線放射部から放射される前記紫外線の一部を前記空洞部の内部に向けて反射する反射ミラー部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部から離脱したことを検出してから一定時間経過後に、前記給電部を制御して、前記送風部および前記紫外線放射部の駆動を停止することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されていないことを検出している期間中の少なくとも一定時間、前記給電部を制御して、前記紫外線放射部を駆動することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されていないことを検出している期間中に、前記紫外線放射部が駆動する駆動期間と前記紫外線放射部が駆動を停止する休止期間とを交互に所定回数繰り返すように、前記紫外線放射部の動作を制御することを特徴とする請求項13に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部から離脱したことを検出した後、前記紫外線放射部の駆動を停止してから所定時間、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されていないことを検出している場合は、前記紫外線放射部の駆動を停止した状態を継続することを特徴とする請求項13に記載の乾燥殺菌装置。
【請求項16】
筐体に設けられた、少なくとも一方向に開口部を有し、前記開口部から人体の一部を含む対象物を挿入可能な空洞部の内部に向けて、空気を吹き出す工程と、
前記空洞部の内部に向けて紫外線を放射する工程と、を備え、
前記紫外線を放射する工程では、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、および230nm超237nm以下の少なくとも一部を含み、波長190nm以上237nm以下の波長域以外を含まない紫外線を放射し、
前記空洞部の内部における前記対象物の有無を検出するセンサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されたことを検出したとき、前記紫外線を放射する工程の実行を開始し、前記紫外線の放射を開始してから一定時間経過後に、前記空気を吹き出す工程を実行することを特徴とする乾燥殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濡れた手など、人体の一部を含む対象物を乾燥させると共に殺菌することができる乾燥殺菌装置および乾燥殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手洗い後の濡れた手指から迅速に水分を除去するために、手指乾燥機(ハンドドライヤー)が用いられている。手指乾燥機は、濡れた手指に温風を当てて手指を乾燥させる装置であり、その簡便さからオフィスビル、商業施設、学校等の建物内の手洗場等に広く普及している。
一方で、病院や養護施設、食品工場等といった、衛生面が重視され、細菌等の除菌・殺菌が強く要求される現場においては、手指の乾燥に加え、手指上の細菌の殺菌が可能な手指乾燥殺菌装置の需要が高い。
【0003】
例えば特許文献1には、水で洗った手を乾燥させると共に殺菌することもできるエアータオル装置が開示されている。このエアータオル装置は、紫外線殺菌灯を備え、手指に温風と、波長が200nm~280nmの範囲で波長設定された紫外線とを当てる装置である。
また、特許文献2にも、温風による乾燥機に紫外線殺菌灯を搭載した手乾燥殺菌装置が開示されている。この手乾燥殺菌装置は、紫外線殺菌灯から放射される紫外線が目に入り込むことを防止するために、紫外線を遮るための遮光板を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3157460号公報
【文献】特開2011-142930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のエアータオル装置では、手に照射される紫外線が人体に及ぼす悪影響については、全く考慮されていない。特許文献1には、波長253.7nmの紫外線が最も強い殺菌効果が得られることから、通常は、紫外線殺菌灯の波長を253.7nmに設定する点が開示されている。この波長は、大腸菌(O-157)や黄色ブドウ球菌(MRSA)といった細菌を殺菌することは可能であるが、人体についても害を及ぼす可能性のある波長である。
また、上記特許文献2に記載の手乾燥殺菌装置では、紫外線殺菌灯から放射される紫外線の波長規定は開示されていないものの、目に悪影響を及ぼすことが記載されている。つまり、この紫外線殺菌灯から放射される紫外線には、人体に害を及ぼす波長成分が含まれると考えられる。
【0006】
そのため、上記各特許文献に記載の技術にあっては、紫外線殺菌灯から放射される紫外線が手に照射される積算露光量が多くなるにつれ、人体の正常細胞が大きなダメージを受けるおそれがある。その結果、例えば光老化や皮膚癌の発生といった人間の健康への悪影響への懸念が大きい。
そこで、本発明は、人体へ悪影響を及ぼすことなく、人体の一部を含む対象物を乾燥および殺菌することができる乾燥殺菌装置および乾燥殺菌方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る乾燥殺菌装置の一態様は、少なくとも一方向に開口部を有し、前記開口部から人体の一部を含む対象物を挿入可能な空洞部を備える筐体と、前記空洞部の内部に向けて空気を吹き出す送風部と、前記空洞部の内部に向けて紫外線を放射する紫外線放射部と、前記空洞部の内部における前記対象物の有無を検出するセンサ部と、前記送風部、前記紫外線放射部および前記センサ部に電力を供給可能な給電部と、前記センサ部による検出結果に基づいて、前記給電部を制御して、前記送風部および前記紫外線放射部の動作を制御する制御部と、を備え、前記紫外線放射部は、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、および230nm超237nm以下の少なくとも一部を含み、波長190nm以上237nm以下の波長域以外を含まない紫外線を放射し、前記制御部は、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されたことを検出したとき、前記給電部を制御して前記紫外線放射部の駆動を開始し、前記紫外線放射部の駆動を開始してから一定時間経過後に、前記給電部を制御して前記送風部の駆動を開始する
上記の波長域の紫外線により、身体上に存在する殺菌対象の細菌に対して、身体の細胞への危害を回避または抑制しながら不活化処理を行うことができる。したがって、上記の乾燥殺菌装置は、人体へ悪影響を及ぼすことなく、人体の一部を含む対象物を乾燥および殺菌することができる。
また、対象物が空洞部の内部に挿入された場合、送風に先立って紫外線の放射を開始することで、まず対象物上の細菌等の殺菌が行われ、その後、対象物に付着した水分が風により除去されることになる。したがって、風により飛散する水分中の細菌を減少させることができ、空洞部の内部や周囲空間への細菌の拡散を抑制することができる。
【0008】
また、上記の乾燥殺菌装置において、前記紫外線放射部は、放射光が、波長190nm以上237nm以下の波長域の紫外線を含む光源と、フィルタ部材と、を備え、前記光源からの放射光を、前記フィルタ部材を介して前記空洞部の内部に向けて放射するように構成されており、前記フィルタ部材は、前記光源からの放射光が入射角0°で入射したとき、波長190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および波長230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を透過させると共に、波長190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線の透過を阻止するものであってもよい。
このように、上記の光学特性を有するフィルタ部材を用いることで、光源からの放射光を高い効率で利用することができ、乾燥殺菌装置の省エネルギー化を図ることができる。また、上記の光学特性を有するフィルタ部材は、入射角の大きい光も透過させることができる。そのため、当該フィルタ部材から拡散角の大きい光を出射することができ、大きい有効照射面積が得られる。
【0009】
さらに、上記の乾燥殺菌装置において、前記光源は、KrClエキシマランプまたはKrBrエキシマランプであってもよい。
この場合、光源からの放射光の中心波長を190nm以上230nm以下とすることができる。光源がKrClエキシマランプである場合、放射光の中心波長は222nmであり、光源がKrBrエキシマランプである場合、放射光の中心波長は207nmである。
【0010】
また、上記の乾燥殺菌装置において、前記KrClエキシマランプまたは前記KrBrエキシマランプが有する発光管は、誘電体により構成され、断面が矩形状である直方体状空洞体であってもよい。このように、光源が直方体形状である場合、発光面全面をフィルタ部材に近接されることができる。したがって、紫外線放射部をコンパクトに構成することが可能となる。
さらに、上記の乾燥殺菌装置において、前記紫外線放射部は、前記光源からの放射光を、前記フィルタ部材を介して前記空洞部の内部に向けて放射するように反射する反射部材をさらに備えてもよい。この場合、光源からの放射光を有効に利用することができる。
【0011】
また、上記の乾燥殺菌装置において、前記フィルタ部材は、SiO2層およびAl23層による誘電体多層膜を有していてもよいし、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜を有していてもよい。
これにより、上記の光学特性を適切に実現することができる。また、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜を有するフィルタ部材の場合、SiO2層およびAl23層による誘電体多層膜を有するフィルタ部材と比較して、誘電体多層膜の層数を少なくすることが可能となる。このため、光源からの放射光のピーク波長の紫外線について、高い透過率が得られる。また、誘電体多層膜の層数が少ないことにより、低コストでカット波長の再現性のよいフィルタ部材とすることができる。
【0012】
また、上記の乾燥殺菌装置において、前記紫外線放射部は、当該紫外線放射部から放射される前記紫外線が、前記空洞部の内壁の少なくとも一部に到達するように構成されていてもよい。この場合、空洞部の内壁に付着した細菌を殺菌することができ、当該細菌が風により周囲空間に飛散しないようにすることができる。
さらにまた、上記の乾燥殺菌装置において、前記空洞部は、対向する少なくとも2つの側壁部と、上方に設けられた前記開口部に対向する底面部と、を有し、前記紫外線放射部は、当該紫外線放射部から放射される前記紫外線が、前記側壁部と前記底面部とに到達するように構成されていてもよい。この場合、適切に空洞部の内壁に付着した細菌を殺菌することができる。また、空洞部の内部に対象物が挿入された場合、対象物の表面全体に適切に紫外線を照射させることが可能となり、対象物の表面に付着する細菌を適切に殺菌することができる。
【0013】
また、上記の乾燥殺菌装置において、前記空洞部は、対向する2つの側壁部を有し、前記紫外線放射部は、前記2つの側壁部のそれぞれに設けられていてもよい。この場合、空洞部の内部に対象物が挿入された場合、対象物に対して確実に2方向から紫外線を照射させることができる。
さらに、上記の乾燥殺菌装置において、前記空洞部は、対向する2つの側壁部を有し、前記紫外線放射部は、前記2つの側壁部のうちの一方の側壁部に設けられ、他方の側壁部には、前記紫外線放射部から放射される前記紫外線の一部を前記空洞部の内部に向けて反射する反射ミラー部が設けられていてもよい。この場合、1つの紫外線放射部を用いて複数の方向から対象物に対して紫外線を照射させることができる。そのため、乾燥殺菌装置の省電力化を図ることができる。
【0015】
さらに、上記の乾燥殺菌装置において、前記制御部は、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部から離脱したことを検出してから一定時間経過後に、前記給電部を制御して、前記送風部および前記紫外線放射部の駆動を停止するようにしてもよい。
このように、空洞部から対象物が離脱した後も、一定時間、風の放出を継続することで、空洞部の内壁に付着した水分の所定の水受け部への移動を加速させることが可能となる。また、空洞部から対象物が離脱した後も、一定時間、紫外線の放射を継続することで、空洞部の内部を殺菌することができる。
【0017】
さらにまた、上記の乾燥殺菌装置において、前記制御部は、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されていないことを検出している期間中の少なくとも一定時間、前記給電部を制御して、前記紫外線放射部を駆動するようにしてもよい。この場合、空洞部の内部に残留する細菌を殺菌し、空洞部の内部における細菌の増殖を抑制することができる。
また、上記の乾燥殺菌装置において、前記制御部は、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されていないことを検出している期間中に、前記紫外線放射部が駆動する駆動期間と前記紫外線放射部が駆動を停止する休止期間とを交互に所定回数繰り返すように、前記紫外線放射部の動作を制御するようにしてもよい。このように、定期的に紫外線の放射を行うことで、より適切に空洞部の内部に残留する細菌を殺菌することができる。
【0018】
さらに、上記の乾燥殺菌装置において、前記制御部は、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部から離脱したことを検出した後、前記紫外線放射部の駆動を停止してから所定時間、前記センサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されていないことを検出している場合は、前記紫外線放射部の駆動を停止した状態を継続するようにしてもよい。
この場合、次の使用者が来る可能性のある期間は、紫外線放射による空洞部の内部の殺菌処理を行わないようにすることができる。したがって、次の使用者に対して、適切に送風および紫外線放射を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る乾燥殺菌方法の一態様は、筐体に設けられた、少なくとも一方向に開口部を有し、前記開口部から人体の一部を含む対象物を挿入可能な空洞部の内部に向けて、空気を吹き出す工程と、前記空洞部の内部に向けて紫外線を放射する工程と、を備え、前記紫外線を放射する工程では、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、および230nm超237nm以下の少なくとも一部を含み、波長190nm以上237nm以下の波長域以外を含まない紫外線を放射し、前記空洞部の内部における前記対象物の有無を検出するセンサ部により前記対象物が前記空洞部の内部に挿入されたことを検出したとき、前記紫外線を放射する工程の実行を開始し、前記紫外線の放射を開始してから一定時間経過後に、前記空気を吹き出す工程を実行する
上記の波長域の紫外線により、身体上に存在する殺菌対象の細菌に対して、身体の細胞への危害を回避または抑制しながら不活化処理を行うことができる。したがって、上記の乾燥殺菌方法により、人体へ悪影響を及ぼすことなく、人体の一部を含む対象物を乾燥および殺菌することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、および波長230nm超237nm以下の少なくとも一部を含み、波長190nm以上237以下の波長域以外を含まない紫外線を放射する紫外線放射部を備えるので、人体へ悪影響を及ぼすことなく、人体の一部を含む乾燥および殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態における乾燥殺菌装置の構成例を示す斜視図である。
図2】本実施形態における乾燥殺菌装置の構成例を示す側面図である。
図3】エアノズル部の例である。
図4図1の乾燥殺菌装置のA-A断面図である。
図5】紫外線放射ユニットの構成例である。
図6】エキシマランプの構成例を示す説明用断面図である。
図7】エキシマランプの別の構成例を示す説明用断面図である。
図8図7のエキシマランプのB-B断面図である。
図9】比較用のフィルタ部材における光透過率の分光分布を示す図である。
図10】本実施形態のフィルタ部材における光透過率の分光分布を示す図である。
図11】本実施形態のフィルタ部材における光透過率の分光分布を示す図である。
図12】乾燥殺菌装置の別の例を示す側面図である。
図13】乾燥殺菌装置の別の例を示す断面図である。
図14】乾燥殺菌装置の第1の動作モードを説明するタイミングチャートである。
図15】乾燥殺菌装置の第2の動作モードを説明するタイミングチャートである。
図16】乾燥殺菌装置の第3の動作モードを説明するタイミングチャートである。
図17】乾燥殺菌装置の第4の動作モードを説明するタイミングチャートである。
図18】乾燥殺菌装置の第5の動作モードを説明するタイミングチャートである。
図19】乾燥殺菌装置の第6の動作モードを説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<乾燥殺菌装置の全体構成>
図1は、本実施形態における乾燥殺菌装置100の構成例を示す斜視図、図2は、本実施形態における乾燥殺菌装置100の構成例を示す側面図である。
本実施形態における乾燥殺菌装置100は、病院や養護施設、食品工場といった、衛生面が重視される建物内の手洗場等に設置可能な、使用者の水で濡れた手指を乾燥および殺菌するための手指乾燥殺菌装置である。
【0023】
図1に示すように、乾燥殺菌装置100は、筐体101を備える。筐体101は、一方向(上方)に開口部102を有し、開口部102に対向する他方(下方)に底面部103を有する空洞部104を備える。図2に示すように、この空洞部104に、開口部102から使用者の手指200が挿入されることで、濡れた手指200が乾燥殺菌される。よって、空洞部104の幅は、使用者の2つの手指200が挿入できる程度の大きさを有する。
【0024】
空洞部104の互いに対向する2つの側壁部105には、それぞれエアノズル部106が設けられている。エアノズル部106は、水洗いされた手指を乾燥させるための温風107を空洞部104内部に向けて放出する。例えば、エアノズル部106は、図1に示すように長方形形状であり、シート状の温風107を放出する。
また、エアノズル部106の下部には、それぞれ空洞部104の内部における手指の有無を検出するためのセンサ(センサ部)108が設けられている。
さらにセンサ108の下部には、それぞれ手指上の細菌等を殺菌するための紫外線を空洞部103内部に向けて放射する紫外線放射ユニット10A、10Bが設けられている。
【0025】
対向する2つの側壁部105のうち、一方の側壁部105に設けられた紫外線放射ユニット10Aは、図2に示すように、他方の側壁部105の全面と底面部103の一部とに紫外線が到達する位置に配置されている。同様に、他方の側壁部105に設けられた紫外線放射ユニット10Bは、一方の側壁部105の全面と底面部103の一部とに紫外線が到達する位置に配置されている。より具体的には、2つの紫外線放射ユニット10A、10Bは、当該2つの紫外線放射ユニット10A、10Bから放射される紫外線が、空洞部104の両側壁部105の全面および底面部103の全面に照射されるように配置されている。
【0026】
図2において、照射領域301は、紫外線放射ユニット10Aから放射される紫外線が照射される領域、照射領域302は、紫外線放射ユニット10Bから放射される紫外線が照射される領域である。また、照射領域303は、照射領域301と照射領域302とが重複する領域である。
したがって、手指全体にエアノズル部106からの温風107が当たって乾燥するように、使用者が空洞部104内に手指200を挿入すると、手指表面のほぼ全ての部分に紫外線が照射される。
【0027】
紫外線放射ユニット10A、10Bは、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、および波長230nm超237nm以下の少なくとも一部を含み、波長190nm以上237nm以下の波長域以外を含まない紫外線を放射する。ここで、「波長190nm以上237nm以下の波長域以外を含まない」とは、波長190nm以上237nm以下の波長域以外の各波長の紫外線の強度が波長222nm光のピーク強度の1/1000以下であることを意味する。
発明者は、鋭意研究した結果、波長190以上237nm以下の波長域にある紫外線は、ヒト細胞に対する危害を実質的に回避しながら、身体における殺菌対象部位に存在する殺菌対象生物を不活化(例えば、殺菌)させることができることを見出した。したがって、紫外線放射ユニット10A、10Bから放射される上記の波長域にある紫外線は、人体へ悪影響を及ぼすことなく、手指表面の細菌等を適切に殺菌することができる。
【0028】
また、空洞部104の底面部103は、図2に示すように、水平面に対して傾斜している。なお、図1および図2においては、底面部103は、紫外線放射ユニット10Aが配置された側壁部105へ向かうにつれて下方に傾斜しているが、底面部103の傾斜方向は上記に限定されない。底面部103は、手指から飛散する水分が収集される水受け部として機能し、後で述べるように、当該底面部103に設けられた飛散水回収用ドレイン116(図4参照)に飛散水が導入されるような形状であればよい。
【0029】
また、図1においては、エアノズル部106が長方形形状である場合について説明したが、エアノズル部106の形状は上記に限定されない。例えば、図3(a)に示すように、複数の円形孔106aが、空洞部104の幅に沿って直線状に配列されていてもよい。また、例えば図3(b)に示すように、複数の円形孔106aが、円弧状に配置されていてもよい。
【0030】
<温風供給構造>
図4は、図1のA-A断面図である。この図4に示すように、筐体101内部には、エアノズル部106と空間的に接続されている送風路111が設けられている。送風路111の内部には送風ファン112が配置され、送風ファン112とエアノズル部106との間にはヒータ113が配置されている。送風ファン112は、不図示の駆動モータにより回転駆動される。送風ファン112が回転駆動すると、筐体101の底部に設けられた空気吸入口114から送風路111内に空気が吸入され、エアノズル部106から空洞部104の内部に向かって高速の空気が放出される。このとき、送風路111内のヒータ113が動作することにより、空気吸入口114から吸入される空気は加熱される。そのため、エアノズル部106から放出される上記空気は、温風107となる。
【0031】
なお、空気吸入口114には、大気中のホコリ等の不純物が送風路111内に混入しないように、ダストフィルタ115が設けられていてもよい。
この図4において、送風路111、送風ファン112、ヒータ113、空気吸入口114、ダストフィルタ115およびエアノズル部106が、空洞部104の内部に向けて空気を放出する送風部に対応している。
【0032】
給電手段(給電部)130は、紫外線放射ユニット10Aおよび10B、センサ108、ヒータ113、送風ファン112の駆動モータ(不図示)へ電力を供給する。制御部135は、給電手段130を制御する。
センサ108は、空洞部104の内部における手指の有無を検出する。そして、センサ108は、空洞部104内への手指の挿入を検出すると、手指の挿入を検出したことを示す手指検出信号を制御部135に送出する。
【0033】
制御部135は、センサ108による手指検出信号に基づいて、紫外線放射ユニット10A、10B、ヒータ113および送風ファン112の駆動モータの動作を制御する。具体的には、制御部135は、センサ108から手指検出信号を受信すると、給電手段130を制御して、送風ファン112の駆動モータの駆動を開始すると共に、紫外線放射ユニット10Aおよび10Bの駆動を開始する。
すなわち、使用者が乾燥殺菌装置100の空洞部104内に手指を挿入すると、エアノズル部106から高速の温風107が放出される。また、紫外線放射ユニット10Aおよび10Bから190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部が、空洞部104内に放射される。
【0034】
エアノズル部106から放出される高速の温風107は、空洞部104内に挿入された濡れた手指に当たり、手指を乾燥させる。このとき、手指から飛散した水分は、空洞部104の水受け部として機能する底面部103に到達する。つまり、手指から飛散した水分は、直接底面部103に落下したり、空洞部104の側壁部105に付着した後、重力により底面部103に集まったりする。
上述したように、底面部103は傾斜しており、傾斜方向における下端部には飛散水回収用ドレイン116が設けられている。したがって、底面部103に集まった飛散水は、飛散水回収用ドレイン116に流入する。飛散水回収用ドレイン116に流入された飛散水は、排水路117を通過して排水口118より装置外部に排出され、所定の排水処理がなされる。
【0035】
なお、制御部135は、手指検出信号の受信が途切れた場合にも、所定時間、送風ファン112の駆動モータを駆動するようにしてもよい。
また、制御部135は、ヒータ113の温度制御を行ってもよい。例えば、周囲温度が高い夏季においては、ヒータ113の温度設定を低くしたり、ヒータ113への給電を遮断したりしてもよい。
【0036】
<紫外線放射ユニット>
(全体構成)
図5は、紫外線放射ユニット10Aの構成例である。なお、紫外線放射ユニット10Aと紫外線放射ユニット10Bとは同様の構成を有するため、ここでは紫外線放射ユニット10Aの構成について説明する。
紫外線放射ユニット10Aは、光源として紫外線を放射する紫外線ランプ20を備える。紫外線ランプ20は、例えば直方体状のランプ収容室12に収容されている。ランプ収容室12の一面(図5における右面)には、紫外線を透過する、例えば合成石英ガラスよりなる矩形の板状の窓部材14が設けられている。また、ランプ収容室12内における紫外線ランプ20の背後には、紫外線ランプ20からの放射光を窓部材14に向かって反射する樋状の反射部材(反射ミラー)16が、紫外線ランプ20を取り囲むように配置されている。
【0037】
紫外線ランプ20としては、放射光の中心波長が190nm~230nmであるものを用いることができる。例えば、紫外線ランプ20は、放射光の中心波長が207nmのKrBrエキシマランプや、放射光の中心波長が222nmのKrClエキシマランプとすることができる。
【0038】
さらに、ランプ収容室12の内部において、紫外線ランプ20と窓部材14との間には、窓部材14に対向して、矩形の板状のフィルタ部材40が配置されている。フィルタ部材40は、所定の波長の紫外線を取り出すための光学フィルタである。ここで、上記所定の波長は、190nm以上237nm以下である。より具体的には、フィルタ部材40は、190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を透過させると共に、190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線の透過を阻止する。
【0039】
ここで「紫外線の透過を阻止する」とは、光源から放射される紫外線のうち、フィルタ部材透過後の波長190nm以上237nm以下の波長域以外の各波長の紫外線の強度が波長222nm光のピーク強度の1/1000以下になることを意味する。
このような構成により、紫外線ランプ20から放射される紫外線は、直接もしくは反射部材16によって反射されてフィルタ部材40に入射し、フィルタ部材40によって190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線が遮断される。そして、フィルタ部材40を透過した190nm以上237nm以下の波長域の紫外線が窓部材14から空洞部104の内部に向けて放射される。
【0040】
なお、窓部材14は、図5に示すように側壁部105から空洞部104内に突出していてもよいし、側壁部105表面と窓部材14表面とがほぼ同一平面上にあるようにしてもよい。ただし、窓部材14が空洞部104内に突出している場合には、空洞部104における手指の利用空間の減少が顕著にならないように、突出高さが調節される。
【0041】
また、大気中の酸素は波長200nm以下の光を吸収するため、紫外線ランプ20からの光の強度が減衰することを防止するために、必要に応じて、ランプ収容室12の内部は、窒素(N2)ガスなどの不活性ガスによりパージされていてもよい。
この場合、窓部材14は、ランプ収容室12と気密に組み立てられ、空洞部104からの空気がランプ収容室12内に侵入することを防止する。また、この場合、窓部材14は、空洞部104からの湿気がランプ収容室12内に侵入することも防止することができるため、紫外線ランプ20の保護にもなる。さらに、窓部材14は、フィルタ部材40が飛散水等により汚れることを防止する役割も担う。
【0042】
(紫外線ランプの構成例1)
上記したように、紫外線ランプ20としては、例えば、放射光の中心波長が207nmのKrBrエキシマランプや放射光の中心波長が222nmのKrClエキシマランプを用いることができる。
図6は、紫外線ランプ(エキシマランプ)20の構成例を示す説明用断面図である。このエキシマランプ20は、密閉型の放電容器21を備える。放電容器21は、誘電体よりなる円筒状の一方の壁材22と、この一方の壁材22内にその筒軸に沿って配置された、当該一方の壁材22の内径よりも小さい外径を有する誘電体よりなる円筒状の他方の壁材23とを有する。この放電容器21においては、一方の壁材22および他方の壁材23の各々の両端部が封止壁部24、25によって接合され、一方の壁材22と他方の壁材23との間に円筒状の放電空間Sが形成されている。放電容器21を構成する誘電体としては、例えば石英ガラスを用いることができる。
【0043】
放電容器21における一方の壁材22には、その外周面22aに密接して、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の一方の電極26が設けられている。放電容器21における他方の壁材23には、その外面23aを覆うようアルミニウムよりなる膜状の他方の電極27が設けられている。一方の電極26および他方の電極27は、それぞれ給電手段130に接続されている。
放電容器21内には、クリプトン(Kr)と塩素(Cl2)または臭素(Br2)との混合物よりなる放電用ガスが充填されている。また、放電容器21内には、金属塩化物または金属臭化物よりなる発光用元素補給用物質28が配置されている。
【0044】
このエキシマランプ20においては、一方の電極26と他方の電極27との間に給電手段130より高周波電圧が印加されると、放電容器21内の放電空間Sにおいて誘電体バリア放電が発生する。これにより、放電容器21内においては、クリプトン元素と塩素元素または臭素元素とによるエキシマが生成され、このエキシマから放射されるエキシマ光が、一方の壁材22を介して一方の電極26の網目から外部に放射される。
【0045】
エキシマランプ20がKrClエキシマランプである場合には、エキシマランプ20から放射されるエキシマ光は、中心波長が例えば222nmであって、波長が230nm~300nmの波長域にある光を含むものである。
また、エキシマランプ20がKrBrエキシマランプである場合には、エキシマランプ20から放射されるエキシマ光は、中心波長が例えば207nmであって、波長が230nm~300nmの波長域にある光を含むものである。
【0046】
本実施形態におけるフィルタ部材40は、光源であるエキシマランプ20からの放射光が入射角0°で入射したとき、190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を透過させると共に、190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線の透過を阻止する。
このようなフィルタ部材40としては、SiO2膜およびAl23膜による誘電体多層膜を有するもの、またはHfO2膜およびSiO2膜による誘電体多層膜を有するものを用いることができる。
【0047】
(紫外線ランプの構成例2)
図5および図6に示したエキシマランプ20は、断面が円形の管状ランプであり、筐体101に設けられている空洞部104の開口部102の長手方向とほぼ平行な方向に伸びている。しかしながら、エキシマランプの放電容器の構造は、断面円形の二重管構造に限るものではない。例えば、放電容器は、断面が矩形状の矩形管構造であってもよい。
図7(a)および図7(b)は、矩形管構造の放電容器21Aを有するエキシマランプ20Aの構成例を示す説明用断面図である。図7(a)は長手方向の断面図、図7(b)は、図7(a)のB-B断面図である。
図7(a)および図7(b)に示すように、このエキシマランプ20Aは、中空の直方体形状の誘電体よりなる放電容器21Aを備える。放電容器21Aを構成する誘電体としては、例えば石英ガラスを用いることができる。
【0048】
放電容器21Aにおける外表面の一面(図7においては、上側の外表面)には、当該外表面に密接して、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の一方の電極26Aが設けられている。また、上記一方の電極26Aが設けられている外表面と対向する外表面(図7においては、下側の外表面)にも同様に、当該外表面に密接して、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の他方の電極27Aが設けられている。一方の電極26Aおよび他方の電極27Aは、それぞれ給電手段130に接続されている。
なお、一方の電極26Aおよび他方の電極27Aは、網状の電極に限るものではなく、例えば、導電性材料からなるメッシュパターンが放電容器21Aの外表面に印刷されてなるものであってもよい。
【0049】
放電容器21A内には、クリプトン(Kr)と塩素(Cl2)または臭素(Br2)との混合物よりなる放電用ガスが充填されている。また、放電容器21A内には、金属塩化物または金属臭化物よりなる発光用元素補給用物質28Aが配置されている。
このエキシマランプ20Aにおいても、一方の電極26Aと他方の電極27Aとの間に給電手段130より高周波電圧が印加されると、放電容器21A内の放電空間Sにおいて誘電体バリア放電が発生する。これにより、放電容器21A内においては、クリプトン元素と塩素元素または臭素元素とによるエキシマが生成され、このエキシマから放射されるエキシマ光が、一方の壁材を介して一方の電極26Aの網目から外部に放射される。
【0050】
このエキシマランプ20Aは、上述したように断面が矩形状の管状ランプであり、筐体101に設けられている空洞部104の開口部102の長手方向とほぼ平行な方向に伸ばして配置させることができる。
【0051】
図8は、エキシマランプ20Aを紫外線ランプとして採用した場合の紫外線放射ユニット10A´の構成例である。図8において、図5に示す紫外線放射ユニット10Aと同様の構成を有する部分には図5と同一符号を付し、以下、構成の異なる部分を中心に説明する。
エキシマランプ20Aは直方体形状であるので、エキシマランプ20Aの一方の発光面(一方の電極26Aが設けられている面)全面をフィルタ部材40に近接させることができる。また、エキシマランプ20Aの他方の発光面(他方の電極27Aが設けられている面)全面は、反射部材17に近接させることができる。ここで、反射部材17は、エキシマランプ20Aの断面形状に合わせて矩形状にすることができる。よって、紫外線放射ユニット10A´を、図5に示す紫外線放射ユニット10Aと比較してコンパクトに構成することが可能となる。
【0052】
(フィルタ部材)
上述したように、ヒト細胞を害することなく、殺菌対象生物であるバクテリアを選択的に不活化(殺菌)するための波長として本発明者が見出した波長域は、波長190以上237nm以下である。
KrClエキシマランプやKrBrエキシマランプは、中心波長が200nm~300nmの波長域にあり、これらのエキシマランプから放射される光の大部分は、波長190以上237nm以下の波長域内にある。しかしながら、上記エキシマランプからは、波長190以上237nm以下の波長域以外の紫外線も放射される。そのため、本実施形態では、波長190以上237nm以下の波長域以外の紫外線の透過を阻止するフィルタ部材40を用いる。
【0053】
図9は、比較用のフィルタ部材として、波長域190nm~230nm以外の光を遮断するために試作した光学フィルタの光透過率の分光分布を、KrClエキシマランプの分光スペクトルと共に示す図である。なお、波長190nm以上230nm以下の波長域は、従来、ヒト細胞を害することなく、殺菌対象生物であるバクテリアを選択的に不活化(殺菌)するための波長として考えられてきた波長域である。
この比較用の光学フィルタは、合成石英ガラスよりなる基板の両面にSiO2層およびAl23層が交互に積層されてなる誘電体多層膜が形成されて構成されている。誘電体多層膜におけるSiO2層およびAl23層の層数は230層であり、総厚みは10μmを越えている。
【0054】
同図において、曲線aは光学フィルタに入射角0°で光が入射したとき、曲線bは、入射角25°で光が入射したとき、曲線cは、入射角30°で光が入射したときの光透過率の分光分布曲線であり、曲線Lは、KrClエキシマランプの分光スペクトルである。
同図から明らかなように、波長222nm(KrClエキシマランプの放射光のピーク波長)の紫外線の透過率が、入射角が0°のときには約70%であるが、入射角が25°のときには約50%、入射角が30°のときは数%であることが示されている。このように、上記の比較用の光学フィルタは、入射角によって光の透過率が異なるという入射角依存性を有する。
【0055】
そのため、KrClエキシマランプからの放射光を、上記の比較用の光学フィルタを介して処理対象微生物に照射した場合、光学フィルタへの入射角が25°を超える光を有効に利用することができない。つまり、光源から放射される光を高い効率で利用することが困難となる。また、入射角の大きい光が遮断または減衰されることから、光学フィルタから出射される光の拡散角が小さくなり、殺菌対象部位において大きい有効照射面積を得ることも困難となる。
【0056】
一方、図10は、本実施形態におけるフィルタ部材40として、波長域190nm~237nm以外の光を遮断するために試作した光学フィルタ40の光透過率の分光分布を、KrClエキシマランプの分光スペクトルと共に示す図である。
この光学フィルタ40は、合成石英ガラスよりなる基板の両面にSiO2層およびAl23層が交互に積層されてなる誘電体多層膜が形成されて構成されている。誘電体多層膜におけるSiO2層およびAl23層の層数は230層であり、総厚みは10μmを越えている。
【0057】
同図において、曲線aは、光学フィルタ40に入射角0°で光が入射したとき、曲線bは、入射角25°で光が入射したとき、曲線cは、入射角30°で光が入射したとき、曲線dは、入射角40°で光が入射したときの光透過率の分光分布曲線であり、曲線Lは、KrClエキシマランプの分光スペクトルである。
同図から明らかなように、波長222nmの紫外線の透過率が、入射角が0°のときには約75%であるが、入射角が25°のときには50%以上、入射角が30°のときであっても40%以上であり、入射角が40°のときには数%であることが示されている。
【0058】
このように、図10に示すような光学特性を有する光学フィルタ40を用いた場合、KrClエキシマランプからの放射光を、光学フィルタ40を介して処理対象微生物に照射したとき、光学フィルタ40への入射角が30°以下であれば有効に利用することが可能であることがわかる。
つまり、図10に示すような光学特性を有する光学フィルタ40を用いることにより、同一材料により構成される光学フィルタであっても、図9に示すような光学特性を有する光学フィルタを用いた場合と比較して、入射角がより大きい光を有効に利用することが可能である。
【0059】
また、図11は、本実施形態におけるフィルタ部材40として、波長域190nm~237nm以外の光を遮断するために試作した別の光学フィルタ40の光透過率の分光分布を、KrClエキシマランプの分光スペクトルと共に示す図である。
この光学フィルタ40は、合成石英ガラスよりなる基板の一面にHfO2層およびSiO2層が交互に積層されてなる誘電体多層膜が形成されて構成されている。誘電体多層膜におけるHfO2層の厚みは約240nm、SiO2層の厚みは1460nmで、HfO2層およびSiO2層の層数は総数33層、HfO2層の厚みの合計が1700nmである。また、基板の他面には、HfO2層およびSiO2層によるARコーティングが施されている。
【0060】
同図において、曲線aは光学フィルタ40に入射角0°で光が入射したとき、曲線bは、入射角25°で光が入射したとき、曲線cは、入射角30°で光が入射したとき、曲線dは、入射角40°で光が入射したときの光透過率の分光分布曲線であり、曲線Lは、KrClエキシマランプの分光スペクトルである。
同図から明らかなように、波長222nmの紫外線の透過率が、入射角が0°のときには約85%であるが、入射角が25°のときには50%以上、入射角が30°のときであっても約35%であり、入射角が40°のときに数%であることが示されている。
【0061】
このように、図11に示すような光学特性を有する光学フィルタ40を用いた場合、KrClエキシマランプからの放射光を、光学フィルタ40を介して処理対象微生物に照射したとき、光学フィルタ40への入射角が30°以下であれば、有効に利用することが可能であることがわかることがわかる。
つまり、図11に示すような光学特性を有する光学フィルタ40を用いることにより、図9に示すような光学特性を有する光学フィルタを用いた場合と比較して、入射角がより大きい光を有効に利用することが可能である。
【0062】
以上のように、図10または図11に示すような光学特性を有する光学フィルタ40は、入射角がより大きい光を透過するため、より拡散角の大きい光を出射することができ、結果として大きい有効照射面積を得ることが可能となる。よって、容易に紫外線放射ユニット10A、10Bから放射される紫外線が空洞部104の両側壁部105および底面部103全面に照射されるように調整することができる。
【0063】
また、フィルタ部材40として、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることで、SiO2層およびAl23層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いた場合と比較して、層の総数を少なくすることができる。層の総数を少なくすることにより、入射角が0°のときの紫外線の透過率を高めることができる。また、層の総数が少ないことで、コストも削減することができる。
【0064】
<変形例>
上述した実施形態における乾燥殺菌装置100は、2つの紫外線放射ユニット10Aおよび10Bを備える場合について説明した。しかしながら、2つの紫外線放射ユニット10A、10Bのうち、一方を反射ミラーに置き換えてもよい。
図12は、紫外線放射ユニット10A、10Bのうち、一方の紫外線放射ユニット10Bを反射ミラー110に置き換えた乾燥殺菌装置100Aを示す側面図である。また、図13は、乾燥殺菌装置100Aの断面図である。
【0065】
乾燥殺菌装置100Aにおいて、反射ミラー110は、一方の側壁部105に設けられた紫外線放射ユニット10Aから放射される紫外線を反射するように、図1図2および図4における紫外線放射ユニット10Bが配置された他方の側壁部105に固定されている。反射ミラー110は、当該反射ミラー110によって反射された紫外線が、空洞部104の一方の側壁部105の全面と底面部103の一部とに照射される位置に配置されている。より具体的には、紫外線放射ユニット10Aおよび反射ミラー110は、紫外線放射ユニット10Aから放射される紫外線と反射ミラー110により反射される紫外線とが、空洞部104の両側壁部105の全面および底面部103の全面に照射されるように配置されている。
【0066】
この場合、図13に示すように、給電手段130は、紫外線放射ユニット10A、センサ108、ヒータ113、送風ファン112の駆動モータ(不図示)へ電力を供給する。つまり、給電手段130は、図4に示すように紫外線放射ユニット10Bへ電力を供給する必要がない。また、制御部135は、給電手段130を制御して紫外線放射ユニット10Bの動作を制御する必要もない。
そのため、図12および図13に示す乾燥殺菌装置100Aは、上述した乾燥殺菌装置100と比較して省電力化を図ることができる。
【0067】
<乾燥殺菌装置の動作モード>
以下、本実施形態における乾燥殺菌装置100の動作モードについて説明する。
(第1の動作モード)
図14は、乾燥殺菌装置100の第1の動作モードを説明するタイミングチャートである。
センサ108は、空洞部104内への手指の挿入を検出すると、手指検出信号を制御部135に送出する。このとき制御部135は、手指検出信号を受信し、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を開始する。
【0068】
すなわち、時刻t1においてセンサ108の手指検出信号がOnとなると、空洞部104内に紫外線放射ユニット10A、10Bから紫外線(UV光)が放射される。ここで、当該UV光は、190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を含み、190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線を含まない。また、この時刻t1では、送風ファンの駆動モータが作動し、エアノズル部106から高速の温風107が放出される。
【0069】
その後、空洞部104から手指が離脱すると、センサ108は手指を非検出となり、手指検出信号の送出を停止する。すると、制御部135は、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を停止する。すなわち、時刻t2においてセンサ108の手指検出信号がOffとなると、空洞部104内へのUV光の放射およびエアノズル部106からの高速の温風107の放出が停止する。
このように、乾燥殺菌装置100は、第1の動作モードでは、空洞部104の内部に手指が存在する期間において、手指に対する送風およびUV光照射を行う。したがって、手指の乾燥および殺菌を適切に行うことができる。
【0070】
(第2の動作モード)
図15は、乾燥殺菌装置100の第2の動作モードを説明するタイミングチャートである。この第2の動作モードにおける時刻t11の動作は、上述した第1の動作モードの時刻t1の動作と同様である。
第2の動作モードでは、時刻t12においてセンサ108の手指検出信号がOffとなった後、制御部135は給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を一定時間継続する。そして、時刻t12から一定時間が経過した時刻t13において、制御部135は、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を停止する。
【0071】
このように、センサ108の手指検出信号がOffとなった後も、一定時間、空洞部104内へのUV光の放射およびエアノズル部106からの高速の温風107の放出を継続する。このように、空洞部104から手指が離脱された後もUV光の放射を継続させることで、空洞部104内に残留する細菌を不活性化することが可能となる。また、空洞部104から手指が離脱された後も温風107の放出を継続させることで、空洞部104の側壁部105に付着した水分の底面部103への移動を加速させることも可能となる。
なお、センサ108の手指検出信号がOffとなった後に一定時間継続するのは、UV光の照射のみとしてもよい。
【0072】
(第3の動作モード)
図16は、乾燥殺菌装置100の第3の動作モードを説明するタイミングチャートである。
第3の動作モードでは、センサ108が、空洞部104内への手指の挿入を検出して手指検出信号を制御部135に送出すると、制御部135は、手指検出信号を受信し、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bへの給電を開始する。そして、制御部135は、一定時間(d)経過後、給電手段130を制御して、送風ファン112の駆動モータへの給電を開始する。
【0073】
すなわち、時刻t21においてセンサ108の手指検出信号がOnとなると、空洞部104内にUV光が放射され、一定時間(d)経過後の時刻t22において、エアノズル部106から高速の温風107が放出される。
その後、空洞部104から手指が離脱し、時刻t23においてセンサ108の手指検出信号がOffとなると、制御部135は、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を停止する。これにより、空洞部104内へのUV光の放射およびエアノズル部106からの高速の温風107の放出が停止する。
【0074】
このように、UV光の照射後、一定時間(d)遅延して高温の温風107が放出されるようにすることで、まず手指上の細菌等の不活化(殺菌)が行われ、その後、手指の水分が高速の温風107により除去されることになる。したがって、温風107により手指から水受けや周囲空間に飛散する水分中に存在する細菌の量を著しく減少させることができる。
【0075】
(第4の動作モード)
図17は、乾燥殺菌装置100の第4の動作モードを説明するタイミングチャートである。この第4の動作モードにおける時刻t31および時刻t32の動作は、上述した第3の動作モードの時刻t21および時刻t22の動作と同様である。
第4の動作モードでは、時刻t33においてセンサ108の手指検出信号がOffとなった後、制御部135は給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を一定時間継続する。そして、時刻t33から一定時間が経過した時刻t34において、制御部135は、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を停止する。
【0076】
このように、センサ108の手指検出信号がOffとなった後も、一定時間、空洞部104内へのUV光の放射およびエアノズル部106からの高速の温風107の放出を継続する。このように、空洞部104から手指が離脱された後もUV光の放射を継続させることで、空洞部104内に残留する細菌を不活性化することが可能となる。また、空洞部104から手指が離脱された後も温風107の放出を継続させることで、空洞部104の側壁部105に付着した水分の底面部103への移動を加速させることも可能となる。
なお、この第4の動作モードでは、高速の温風107の放出に先立って、UV光の放射が行われて手指上の細菌の不活化(殺菌)が行われるので、センサ108の手指検出信号がOffとなった後に一定時間継続するのは、高速の温風107の放出のみとしてもよい。
【0077】
(第5の動作モード)
図18は、乾燥殺菌装置100の第5の動作モードを説明するタイミングチャートである。
第5の動作モードでは、センサ108が空洞部104内への手指の挿入を検出していない期間において、制御部135は、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bへ一定の周期で給電を行う。具体的には、制御部135は、一定時間D1だけ給電状態を維持し、給電を停止した後、一定時間D2が経過すると、再び一定時間D1だけ給電状態を維持する。
【0078】
すなわち、センサ108の手指検出信号がOffとなっている時刻t41において、空洞部104内にUV光が放射され、一定時間D1だけUV光の照射が継続される。そして、時刻t41から一定時間D1が経過した時刻t42において、UV光の照射が停止され、一定時間D2経過後の時刻t43において、再び空洞部104内にUV光が照射される。以上の動作は、センサ108の手指検出信号がOffとなっている期間繰り返される。
このように、センサ108の手指検出信号がOffとなっている間も定期的に空洞部104内にUV光が照射されるので、乾燥殺菌空間(空洞部104内)に残留する細菌が定期的に殺菌され、当該空間内での細菌の増殖を抑制することができる。
【0079】
なお、上記のUV光の定期的な照射制御動作は、制御部135が有するタイマのフリッカ動作により周期的に行うことができる。タイマが時間D1を計測中、あるいは、時間D2を計測中に、センサ108が空洞部104内への手指の挿入を検出した場合には、タイマのフリッカ動作は停止し、センサ107による制御が優先される。ここで、センサ107による制御は、図14図17のいずれかに示す制御とすることができる。
【0080】
また、ここでは紫外線放射ユニット10A、10Bが駆動する駆動期間(D1)と、紫外線放射ユニット10A、10Bが駆動を停止する休止期間(D2)とを交互に繰り返す場合について説明した。しかしながら、手指検出信号がOffとなっている期間中の少なくとも一定時間、紫外線放射ユニット10A、10Bを駆動してUV光の照射を行うことでも一定の効果が得られる。
【0081】
(第6の動作モード)
図19は、乾燥殺菌装置100の第6の動作モードを説明するタイミングチャートである。
第6の動作モードでは、時刻t51においてセンサ108の手指検出信号がOffとなると、制御部135は給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bおよび送風ファン112の駆動モータへの給電を停止する。その後、制御部135が有するタイマは、所定時間D3フリッカ動作を停止し、所定時間D3が経過した後の時刻t52においてフリッカ動作を復帰する。そして、制御部135は、給電手段130を制御して、紫外線放射ユニット10A、10Bへ一定の周期で給電を行う。時刻t53以降の動作は、上述した第5の動作モードの時刻t41以降の動作と同様である。ここで、所定時間D3は、次の使用者が来ないと判断できる程度の時間に設定する。
【0082】
このように、センサ108の手指検出信号がOffとなった後、所定時間D3経過後に、定期的に空洞部104内にUV光が照射されるので、次の使用者が来ないと判断される場合に、乾燥殺菌空間(空洞部104内)に残留する細菌を定期的に殺菌する動作を行うことができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態における乾燥殺菌装置100は、筐体101に設けられた空洞部104の内部に挿入された対象物(例えば手指)に対して、温風107を吹き付けるとともに、紫外線放射ユニット10A,10Bから放射される紫外線を照射し、手指の乾燥と殺菌とを行う。
手指から温風107により除去された水分の大部分は、乾燥殺菌装置100の空洞部104の内壁(底面部103および側壁部105)によって捕捉されるが、一部は周囲空間に飛散する。乾燥殺菌装置100は、手指からの水分除去プロセス中に、紫外線照射により手指に付着している細菌を殺菌することができるので、空洞部104内や周囲空間への細菌の拡散を抑制することができる。
【0084】
また、乾燥殺菌装置100は、使用者の手指に対し、波長190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および波長230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を照射する。そのため、ヒト細胞に対する危害を実質的に回避しながら、身体における殺菌対象部位に存在する殺菌対象生物を不活化(例えば、殺菌)することができる。すなわち、乾燥殺菌装置100は、人体へ悪影響を及ぼすことなく、手指を乾燥および殺菌することができる。
【0085】
具体的には、乾燥殺菌装置100は、光源からの放射光が入射角0°で入射したとき、波長190nm以上230nm以下にある紫外線の少なくとも一部、および波長230nm超237nm以下にある紫外線の少なくとも一部を透過させると共に、波長190nm以上237nm以下の波長域以外の紫外線の透過を阻止するフィルタ部材(光学フィルタ)40を備え、光源からの放射光を、フィルタ部材40を介して空洞部104の内部に向けて放射する。
このように、フィルタ部材40を用いることで、光源から人体へ悪影響を及ぼすことのない波長域の紫外線を適切に取り出すことができる。
【0086】
また、上記のような光学特性を有するフィルタ部材40を用いることで、光源からの放射光を高い効率で利用することができ、乾燥殺菌装置100の省エネルギー化を図ることができる。さらに、上記の光学特性を有するフィルタ部材40は、入射角の大きい光も透過させることができる。そのため、当該フィルタ部材40から拡散角の大きい光を出射することができ、大きい有効照射面積が得られる。
【0087】
また、乾燥殺菌装置100は、乾燥殺菌空間である空洞部104の内壁全体に紫外線を照射するので、空洞部104の内壁に細菌が付着した場合であっても、当該細菌を不活化することができる。そのため、細菌が空洞部104内において増殖することを抑制することができる。また、当該細菌が風により周囲空間に飛散しないようにすることができる。
特に、手指から温風107により除去された水分は、空洞部104の底面部103に集まるため、当該底面部103において細菌が増殖しやすい。そのため、紫外線放射ユニット10A、10Bを、空洞部104の底面部103に紫外線が到達するように配置することで、効果的に細菌の増殖を抑制することができる。
【0088】
また、乾燥殺菌装置100における空洞部104の内壁が濡れたままであると、大気中に浮遊する細菌が当該内壁に付着して、細菌が増殖するおそれがある。すると、次回使用時に、温風107により空洞部104内に存在する細菌が周囲空間に飛散してしまうことも考えられる。
本実施形態における乾燥殺菌装置100は、制御部135を備え、手指への高速の温風107の放出タイミングや、手指への紫外線(UV光)の照射タイミングを適宜制御することができる。したがって、空洞部104や周囲大気中への細菌等の飛散を著しく抑制することが可能となる。
【0089】
例えば、制御部135は、使用者の手指が空洞部104の内部から離脱したことを検出した後、一定時間、送風と紫外線照射とを継続することができる。これにより、空洞部104内に残留する細菌を殺菌するとともに空洞部104内に残留する水分を除去し、空洞部104内における細菌の増殖が行われないようにすることができる。
また、制御部135は、使用者の手指が空洞部104の内部に挿入されたことを検出したとき、紫外線照射を開始し、当該紫外線照射を開始してから一定時間経過後に、送風を開始するようにすることもできる。この場合、まず手指上の細菌等の殺菌が行われ、その後、手指に付着した水分を温風107により除去することができる。したがって、温風107により飛散する水分中の細菌を減少させることができ、空洞部104の内部や周囲空間への細菌の拡散を抑制することができる。
【0090】
さらに、制御部135は、使用者の手指が空洞部104の内部に挿入されていないことを検出している期間中の少なくとも一定時間、紫外線照射を行うようにすることもできる。この場合、空洞部104の内部に残留する細菌を適切に殺菌し、空洞部104の内部における細菌の増殖を適切に抑制することができる。また、使用者の手指が空洞部104の内部に挿入されていないことを検出している期間中における紫外線照射を、定期的に(周期的に)行うことにより、より適切に空洞部104の内部に残留する細菌を殺菌することができる。
【0091】
以上のように、本実施形態における乾燥殺菌装置100は、手指殺菌に使用される紫外線が人体に害を及ぼすことなく細菌を殺菌することが可能であり、乾燥殺菌空間である空洞部104内において、残留する細菌を殺菌し、空洞部104内での細菌の増殖を抑制することができる。
【0092】
(変形例)
上記実施形態においては、乾燥殺菌装置100は、使用者の手指を乾燥殺菌の対象物とする場合について説明したが、対象物は上記に限定されるものではない。例えば、医療用器具や床屋のハサミなど、衛生的に使用すべき物体を乾燥殺菌の対象物に含めてもよい。この場合、使用者は、上記物体を把持して空洞部104内に挿入し、乾燥殺菌させるため、使用者の手指には紫外線が照射され得る。そのため、殺菌に使用される紫外線は、人体に害を及ぼさないことが望まれる。本乾燥殺菌装置100は、人体の一部を含む対象物を乾燥殺菌する場合に好適である。
【符号の説明】
【0093】
10A,10B…紫外線放射ユニット、20…紫外線ランプ、12…ランプ収容室、14…窓部材、16…反射部材、40…フィルタ部材、100…乾燥殺菌装置、101…筐体、102…開口部、103…底面部、104…空洞部、105…側壁部、106…エアノズル部、107…温風、108…センサ、110…反射ミラー
図1
図2
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