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特許7119554生タイヤ部材モデルの作成方法及び生タイヤモデルの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】生タイヤ部材モデルの作成方法及び生タイヤモデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20220809BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220809BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20220809BHJP
【FI】
G06F30/10
B60C19/00 Z
G06F30/23
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018093125
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019200470
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 一裕
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-225457(JP,A)
【文献】特開2016-004484(JP,A)
【文献】特開2006-232138(JP,A)
【文献】特開2006-023800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
B60C 19/00
G06F 30/23
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強コードが配列された少なくとも一つの第1部材を含む生タイヤ成形用部材の数値解析用モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法であって、
前記第1部材を離散化した第1部材モデルを、前記コンピュータに入力する工程を含み、
前記第1部材モデルは、前記補強コードを複数の節点を有する要素で離散化したコードモデルを含み、
前記方法は、前記コンピュータが、前記第1部材モデルの前記コードモデルに、前記節点の移動を拘束する条件における引張応力を定義する工程をさらに含む、
生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項2】
前記引張応力を定義する工程は、前記節点の移動を拘束する工程と、
前記節点の移動を拘束する工程の後、前記コードモデルの長手方向で隣り合う前記節点間において、前記要素の温度低下に伴う熱収縮量を計算する工程と、
前記熱収縮量に対応する前記引張応力を計算する工程とを含む、請求項1記載の生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項3】
前記引張応力を定義する工程は、前記コードモデルの長手方向で隣り合う前記節点間の距離が大きくなるように、前記要素の伸長を計算する工程と、
前記伸長に対応する前記引張応力を計算する工程と、
前記引張応力を計算する工程の後、前記節点の移動を拘束する工程とを含む、請求項1記載の生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項4】
前記生タイヤ成形用部材は、前記第1部材に重ねられる第2部材をさらに含み、
前記第1部材モデルを入力する工程は、前記第2部材と重ねる前の前記第1部材の形状に基づいて離散化する工程を含み、
前記方法は、前記第2部材を、前記第1部材と重ねる前の形状に基づいて、離散化した第2部材モデルを前記コンピュータに入力する工程と、
前記コンピュータが、前記第1部材モデル及び前記第2部材モデルを重ねる工程とをさらに含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項5】
前記引張応力を定義する工程は、前記重ねる工程の前に行われる、請求項4記載の生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項6】
前記引張応力を定義する工程は、前記重ねる工程の後に行われる、請求項4記載の生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項7】
前記方法は、前記重ねる工程の後、前記コンピュータが、前記第1部材モデルの前記コードモデルの前記節点の拘束を解くことで、前記第1部材モデルの前記コードモデルの収縮変形を許容する工程をさらに含む、請求項4ないし6のいずれかに記載の生タイヤ部材モデルの作成方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の前記方法で作成された生タイヤ部材モデルを用いて、生タイヤの数値解析用モデルを作成する工程を含む、
生タイヤモデルの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤ部材モデル及び生タイヤモデルを、コンピュータを用いて作成するための方法に関する。
【0002】
下記特許文献1は、コンピュータを用いて、生タイヤモデルを作成するための方法を提案している。下記特許文献1の方法では、先ず、コンピュータに、ベルトプライ等の補強材を離散化した補強材モデルが入力される。補強材モデルには、補強材のコードを、ビーム要素でモデル化したコードモデルが含まれている。
【0003】
次に、下記特許文献1の方法では、コンピュータに、ケーシングモデル、及び、トレッドリングモデルがそれぞれ入力される。トレッドリングモデルには、補強材モデルが含まれている。そして、下記特許文献1の方法では、ケーシングモデルの外側に、トレッドリングモデルを配置し、それらの変形計算が行われることで、生タイヤモデルが作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-225457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法で作成された生タイヤモデルの形状は、実際に製造される生タイヤの形状とはやや異なっている。
【0006】
例えば、実際に生タイヤを成形する工程では、プライ等の補強材のコードの弛みや蛇行等を防ぐ観点から、補強材を重ねるときに、コードに初期張力を付与することが行われている。そして、補強材がカーカスプライ等を含む生タイヤのケーシングに重ねられると、当該張力によってケーシングが締め付けられ、その形状変化に影響を及ぼしている。このような初期張力は、これまでの補強材モデルには再現されていなかった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、生タイヤ部材モデル及び生タイヤモデルを精度良く作成することができる方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、補強コードが配列された少なくとも一つの第1部材を含む生タイヤ成形用部材の数値解析用モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法であって、前記第1部材を離散化した第1部材モデルを、前記コンピュータに入力する工程を含み、前記第1部材モデルは、前記補強コードを複数の節点を有する要素で離散化したコードモデルを含み、前記方法は、前記コンピュータが、前記第1部材モデルの前記コードモデルに、前記節点の移動を拘束する条件の下で引張応力を定義する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る前記生タイヤ部材モデルの作成方法において、前記引張応力を定義する工程は、前記節点の移動を拘束する工程と、前記節点の移動を拘束する工程の後、前記コードモデルの長手方向で隣り合う前記節点間において、前記要素の温度低下に伴う熱収縮量を計算する工程と、前記熱収縮量に対応する前記引張応力を計算する工程とを含んでもよい。
【0010】
本発明に係る前記生タイヤ部材モデルの作成方法において、前記引張応力を定義する工程は、前記コードモデルの長手方向で隣り合う前記節点間の距離が大きくなるように、前記要素の伸長を計算する工程と、前記伸長に対応する前記引張応力を計算する工程と、前記引張応力を計算する工程の後、前記節点の移動を拘束する工程とを含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記生タイヤ部材モデルの作成方法において、前記生タイヤ成形用部材は、前記第1部材に重ねられる第2部材をさらに含み、前記第1部材モデルを入力する工程は、前記第2部材と重ねる前の前記第1部材の形状に基づいて離散化する工程を含み、前記方法は、前記第2部材を、前記第1部材と重ねる前の形状に基づいて、離散化した第2部材モデルを前記コンピュータに入力する工程と、前記コンピュータが、前記第1部材モデル及び前記第2部材モデルを重ねる工程とをさらに含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記生タイヤ部材モデルの作成方法において、前記引張応力を定義する工程は、前記重ねる工程の前に行われてもよい。
【0013】
本発明に係る前記生タイヤ部材モデルの作成方法において、前記引張応力を定義する工程は、前記重ねる工程の後に行われてもよい。
【0014】
本発明に係る前記生タイヤ部材モデルの作成方法において、前記重ねる工程の後、前記コンピュータが、前記第1部材モデルの前記コードモデルの前記節点の拘束を解くことで、前記第1部材モデルの前記コードモデルの収縮変形を許容する工程をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の前記方法で作成された生タイヤ部材モデルを用いて、生タイヤの数値解析用モデルを作成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の生タイヤ部材モデルの作成方法は、補強コードが配列された少なくとも一つの第1部材を離散化した第1部材モデルをコンピュータに入力する工程を含んでいる。前記第1部材モデルは、前記補強コードを複数の節点を有する要素で離散化したコードモデルを含んでいる。前記方法は、前記コンピュータが、前記第1部材モデルの前記コードモデルに、前記節点の移動を拘束する条件の下で引張応力を定義する工程をさらに含んでいる。
【0017】
前記第1部材モデルは、前記コードモデルに引張応力が定義されることにより、実際の生タイヤの成形工程において補強コードに初期張力が付与された第1部材を再現することができる。したがって、本発明の方法は、生タイヤモデルを精度良く作成可能な生タイヤ部材モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】生タイヤ部材モデルの作成方法及び生タイヤモデルの作成方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。
図2】生タイヤの一例を示す断面図である。
図3】第1部材の部分斜視図である。
図4】生タイヤ部材モデルの作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】第1部材モデル及び第2部材モデルの一例を示す概念図である。
図6】第1部材モデルの一部を示す分解斜視図である。
図7】引張応力定義工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】引張応力が定義されたコードモデルの一例を示す部分平面図である。
図9】本発明の他の実施形態の引張応力定義工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】(a)~(c)は、本発明の他の実施形態の引張応力定義工程を説明するための平面図である。
図11】接合工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】互いに重複する部分を有する第1部材モデル及び第2部材モデルの一例を示す概念図である。
図13】変形後の第1部材モデル及び第2部材モデルの一例を示す概念図である。
図14】密着した第1部材モデル及び第2部材モデルの一例を示す概念図である。
図15】生タイヤモデルの作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図16】半径方向外側に膨出したケーシングモデル、及び、トレッドリングモデルの一例を示す概念図である。
図17】生タイヤモデルの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の生タイヤ部材モデルの作成方法(以下、単に「第1方法」ということがある。)は、生タイヤ成形用部材の数値解析用モデルを、コンピュータを用いて作成するための方法である。また、本実施形態の生タイヤモデルの作成方法(以下、単に「第2方法」ということがある。)は、第1方法で作成された生タイヤ部材モデルを用いて、生タイヤの数値解析用モデルを作成するための方法である。図1は、生タイヤ部材モデルの作成方法、及び、生タイヤモデルの作成方法を実行するためのコンピュータ1の一例を示す斜視図である。
【0020】
コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dが含まれる。この本体1aには、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2などが設けられている。なお、記憶装置には、本実施形態の第1方法及び第2方法を実行するための処理手順(プログラム)が、予め記憶されている。
【0021】
図2は、生タイヤの一例を示す断面図である。生タイヤ2は、互いに重ねられた複数の生タイヤ成形用部材(以下、単に「生タイヤ部材」ということがある。)3を含んで構成されている。本実施形態の生タイヤ部材3は、補強コードが配列された少なくとも一つの第1部材5と、第1部材5に重ねられる第2部材6とを含んでいる。第1部材5及び第2部材6は、未加硫の状態である。ここで、未加硫とは、完全な加硫に至っていない全ての態様を含むもので、いわゆる半加硫の状態はこの「未加硫」に含まれる。
【0022】
本実施形態の第1部材5は、ベルトプライ7として構成される。このベルトプライ7は、後述の第2部材6のカーカスプライ6gやクッションゴム6hに重ねられる。ベルトプライ7は、内側ベルトプライ7aと、内側ベルトプライ7aのタイヤ半径方向外側に配される外側ベルトプライ7bとを含んで構成されている。なお、ベルトプライ7には、外側ベルトプライ7bのタイヤ半径方向外側に配される別のベルトプライ(図示省略)が含まれてもよい。本実施形態の第1部材5は、そのタイヤ軸方向の両端部が、カバリングゴム14で被覆されている。
【0023】
図3は、第1部材5の部分斜視図である。第1部材5(内側ベルトプライ7a及び外側ベルトプライ7b)は、補強コード8と、補強コード8を被覆するトッピングゴム9とを含んでいる。
【0024】
補強コード8は、タイヤ周方向に対して、例えば10~40度の角度θ1で傾斜して配列されている。内側ベルトプライ7aの補強コード8と、外側ベルトプライ7bの補強コード8とは、互いに交差する向きに重ね合わされている。なお、外側ベルトプライ7bの外側に別のベルトプライ(図示省略)が配される場合には、例えば、タイヤ周方向に対して0~5度の角度で配列された補強コード(図示省略)がさらに含まれる。本実施形態の補強コード8は、スチールコードとして構成されているが、このような態様に限定されない。
【0025】
図2に示されるように、本実施形態の第2部材6には、トレッドゴム6a、サイドウォールゴム6b、クリンチゴム6c、ビードエーペックスゴム6d、インナーライナーゴム6e、ビードコア6f、カーカスプライ6g、及び、クッションゴム6hが含まれる。
【0026】
トレッドゴム6aは、生タイヤ2のトレッド部2aにおいて、外側ベルトプライ7bのタイヤ半径方向外側に配されている。サイドウォールゴム6bは、生タイヤ2のサイドウォール部2bにおいて、カーカスプライ6gのタイヤ軸方向外側に配されている。クリンチゴム6cは、サイドウォールゴム6bのタイヤ半径方向内側に固定されている。
【0027】
ビードエーペックスゴム6dは、ビードコア6fからタイヤ半径方向外側にのびている。インナーライナーゴム6eは、カーカスプライ6gの内面に配置されている。クッションゴム6hは、生タイヤ2のバットレス部において、カーカスプライ6gの外側に配置されている。ビードコア6fは、例えば、スチール製のビードワイヤを螺旋巻きした断面略矩形状のものを、未加硫のゴムで被覆することで形成されている。
【0028】
カーカスプライ6gは、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア6fにのびている。カーカスプライ6gは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75~90度の角度で配列されたカーカスコード(図示省略)を、未加硫のトッピングゴム(図示省略)で被覆することで形成されている。
【0029】
生タイヤ2を成形する工程(以下、単位「成形工程」という。)では、従来の成形工程と同様に、第1部材5及び第2部材6が成形ドラム(図示省略)等で円環状に形成され、かつ、それらが重ねられることによって、生タイヤ2が成形される。なお、本実施形態の成形工程では、第1部材5の補強コード8(図3に示す)の弛みや蛇行等を防ぐ観点から、第2部材6を重ねるときに、補強コード8に初期張力を付与する工程が行われている。初期張力を付与する工程は、例えば、第1部材5(本実施形態では、内側ベルトプライ7a及び外側ベルトプライ7b)を成形ドラム(図示省略)上を巻き付ける際に、第1部材5を供給するローラーの回転速度を、成形ドラムの回転速度よりも遅く制御することで実施することができる。
【0030】
図4は、生タイヤ部材モデルの作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図5は、第1部材モデル11及び第2部材モデル12の一例を示す概念図である。生タイヤ部材モデル10は、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を含んでいる。
【0031】
本実施形態の第1方法では、先ず、第1部材5(図2に示す)を離散化した第1部材モデル11が、図1に示したコンピュータ1に入力される(工程S1)。工程S1では、図2に示した第2部材6と重ねる前の第1部材5の形状に基づいて離散化している。図6は、第1部材モデル11の一部を示す分解斜視図である。
【0032】
工程S1では、先ず、図2に示した生タイヤ2が形成される前(即ち、第2部材6と重ねる前)の第1部材5の設計データ(例えば、CADデータ)が、図1に示したコンピュータ1に入力される。設計データには、例えば、図2に示した第1部材5(本実施形態では、内側ベルトプライ7a及び外側ベルトプライ7b)の横断面形状などの数値データ等が含まれている。そして、工程S1では、第1部材5の設計データに基づいて、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素(図6に示した要素F(i)及び要素G(i))で離散化している。これにより、工程S1では、三次元の第1部材モデル11が設定される。
【0033】
第1部材モデル11には、内側ベルトプライ7a(図2に示す)をモデル化した内側ベルトプライモデル11a、及び、外側ベルトプライ7b(図2に示す)をモデル化した外側ベルトプライモデル11bが含まれる。図6に示されるように、本実施形態の第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)は、コードモデル16、トッピングゴムモデル17、及び、カバリングゴムモデル18(図5に示す)を含んで構成されている。
【0034】
本実施形態の第1部材モデル11は、タイヤ周方向に厚さを有する薄板状に形成されている。このような第1部材モデル11は、例えば、タイヤ周方向に連続したモデル(図示省略)に比べて、要素F(i)の数を少なくできるため、計算時間の短縮に役立つ。
【0035】
コードモデル16は、補強コード8(図3に示す)を、複数の節点19を有する有限個の要素F(i)(i=1、2、…)でそれぞれ離散化することで定義される。本実施形態の要素F(i)は、ビーム要素として定義される。要素F(i)は、補強コード8の配列に基づいて、補強コード8に沿って割り当てられる。これにより、工程S1では、コードモデル16を設定することができる。
【0036】
ビーム要素は、線状に定義された1次元要素である。このようなビーム要素は、2次元のシェル要素や3次元のソリッド要素とは異なり、各補強コード8(図3に示す)に作用する長手方向の引張や圧縮を計算することができる。
【0037】
要素F(i)の数値解析法としては、例えば、有限要素法、有限体積法、差分法、又は、境界要素法が適宜採用できるが、本実施形態では有限要素法が採用される。要素F(i)には、要素番号、節点19の座標値、及び、補強コード8(図3に示す)の材料特性(例えば、密度、引張剛性、圧縮剛性、せん断剛性、曲げ剛性、捩り剛性、弾性率、又は、補強コード8の長手方向に沿った熱膨張係数)等を含む数値データが定義される。さらに、要素F(i)には、図2に示した生タイヤ2の製造時の温度(例えば、15~35℃)が設定される。
【0038】
トッピングゴムモデル17及びカバリングゴムモデル18(図5に示す)は、トッピングゴム9及びカバリングゴム14を、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素G(i)(i=1、2、…)で離散化することで定義される。本実施形態の要素G(i)は、三次元のソリッド要素として定義されている。
【0039】
要素G(i)の数値解析法としては、要素F(i)と同一のものが採用される。要素G(i)には、要素番号、節点20の番号、節点20の座標値、及び、材料特性(例えば密度、ヤング率及び/又は減衰係数等)などの数値データが定義される。さらに、要素G(i)には、図2に示した生タイヤ2の製造時の温度が設定される。
【0040】
本実施形態のトッピングゴム9及びカバリングゴム14(図5に示す)は、未加硫のゴムで構成されている。未加硫のゴムの材料特性は、例えば、文献(針間浩、「未加硫ゴムの一定伸長速度下での大変形挙動」、日本レオロジー学会誌、社団法人日本レオロジー学会、1976年、Vol.4、p.3-9)や、文献(戸崎近雄、外3名、「グリーンストレングス指標、降伏応力の粘弾性的取扱い」、日本ゴム協会誌、一般社団法人日本ゴム協会、1969年、第42巻、第6号、p.433-438)等に基づいて定義される。
【0041】
次に、工程S1では、図2に示した第1部材5の設計データに基づいて、コードモデル16、トッピングゴムモデル17、及び、カバリングゴムモデル18が一体に固定される。これにより、工程S1では、図5に示されるように、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)を定義することができる。コードモデル16(図6に示す)、トッピングゴムモデル17(図6に示す)、及び、カバリングゴムモデル18の固定には、すり抜けを防ぐ接触条件や、互いの相対移動を禁止する固定条件を含む境界条件が用いられる。
【0042】
カバリングゴムモデル18の端部は、テーパ状に形成されている。これにより、後述の接合工程S4において、第1部材モデル11お帯び第2部材モデル12を隙間なく密着させることができる。第1部材モデル11は、図1に示したコンピュータ1に記憶される。
【0043】
次に、本実施形態の第1方法では、図2に示した第2部材6(図2に示す)を離散化した第2部材モデル12(図5に示す)が、図1に示したコンピュータ1に入力される(工程S2)。第2部材モデル12は、図2に示した第2部材6を第1部材5と重ねる前の形状に基づいて設定される。
【0044】
工程S2では、先ず、図2に示した生タイヤ2が形成される前(即ち、第1部材5と重ねる前)の第2部材6の設計データ(例えば、CADデータ)が、図1に示したコンピュータ1に入力される。設計データには、例えば、図2に示した第2部材6(トレッドゴム6a~クッションゴム6h)の横断面形状などの数値データ等が含まれている。そして、工程S2では、第2部材6の設計データに基づいて、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素H(i)(i=1、2、…)で離散化することで、三次元の第2部材モデル12が設定される。
【0045】
第2部材モデル12には、トレッドゴム6a(図2に示す)を離散化したトレッドゴムモデル12a、サイドウォールゴム6b(図2に示す)を離散化したサイドウォールゴムモデル12b、及び、クリンチゴム6c(図2に示す)を離散化したクリンチゴムモデル12cが含まれる。また、第2部材モデル12には、ビードエーペックスゴム6d(図2に示す)を離散化したビードエーペックスゴムモデル12d、インナーライナーゴム6e(図2に示す)を離散化したインナーライナーゴムモデル12e、及び、ビードコア6f(図2に示す)を離散化したビードコアモデル12fが含まれる。さらに、第2部材モデル12には、カーカスプライ6g(図2に示す)を離散化したカーカスプライモデル12g、及び、クッションゴム6h(図2に示す)を離散化したクッションゴムモデル12hが含まれる。
【0046】
本実施形態において、トレッドゴムモデル12a、サイドウォールゴムモデル12b、クリンチゴムモデル12c、ビードエーペックスゴムモデル12d、インナーライナーゴムモデル12e、カーカスプライモデル12g、及び、クッションゴムモデル12hの端部の少なくとも一部は、テーパ状にそれぞれ形成されている。これにより、後述の接合工程S4において、第2部材モデル12及び第1部材モデル11を隙間なく密着させることができる。
【0047】
本実施形態の第2部材モデル12は、タイヤ周方向に厚さを有する薄板状に形成されている。このような第2部材モデル12は、例えば、タイヤ周方向に連続したモデル(図示省略)に比べて、要素H(i)の数を少なくできるため、計算時間の短縮に役立つ。
【0048】
要素H(i)の数値解析法としては、図6に示した要素F(i)や要素G(i)と同一のものが採用される。要素H(i)は、三次元のソリッド要素や、ビーム要素等として定義されている。要素H(i)には、要素番号、節点26の番号、節点26の座標値、及び、図2に示した第2部材6の特性(例えば密度、ヤング率、熱膨張係数、及び/又は減衰係数等)などの数値データが定義される。さらに、要素H(i)には、図2に示した生タイヤ2の製造時の温度が設定される。未加硫のゴムを構成する部分の材料特性は、上記文献に基づいて定義される。第2部材モデル12は、図1に示したコンピュータ1に記憶される。
【0049】
次に、本実施形態の第1方法は、図1に示したコンピュータ1が、第1部材モデル11のコードモデル16に、節点19の移動を拘束する条件の下で引張応力を定義する(引張応力定義工程S3)。図7は、引張応力定義工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。図8は、引張応力Sが定義されたコードモデル16の一例を示す部分平面図である。
【0050】
本実施形態の引張応力定義工程S3では、先ず、コードモデル16の要素F(i)の節点19の移動が拘束される(工程S31)。本実施形態において、節点19の移動の拘束は、各要素F(i)の長手方向の両端に配された節点19、19について、節点19、19間の長手方向に沿った移動を拘束する境界条件によって設定されている。このような境界条件は、コードモデル16、及び、コードモデル16を含む第1部材モデル11の変形を許容する。
【0051】
また、境界条件は、各要素F(i)の長手方向の両端の節点19、19について、節点19、19間の距離L1が、元の距離L1aよりも小さくなる方向の移動のみが拘束されていてもよい。このような境界条件は、節点19、19間の距離L1が元の距離L1aよりも大きくなる方向の移動が許容されるため、コードモデル16のより柔軟な変形計算をすることができる。
【0052】
次に、本実施形態の引張応力定義工程S3では、コードモデル16の長手方向で隣り合う節点19、19間において、要素F(i)の温度低下に伴う熱収縮量を計算する(工程S32)。本実施形態の工程S32は、節点19の移動を拘束する工程S31の後に行われる。
【0053】
要素F(i)の温度低下については、予め定められた第1温度、及び、第2温度に基づいて定義される。第1温度としては、例えば、生タイヤ2の製造時の温度が設定される。第2温度としては、第1温度よりも低く設定されており、例えば、-10~10℃に設定される。
【0054】
工程S32では、コードモデル16の各要素F(i)の温度を、第1温度から第2温度に、微小時間(シミュレーションの単位時間)Tx(x=0、1、…)ごとに徐々に低下させている。これにより、工程S32では、各要素F(i)に定義された熱膨張係数に基づいて、各要素F(i)の熱収縮が計算される。
【0055】
各要素F(i)の熱収縮は、方向に依存することなく体積が等方収縮する方向に作用する。本実施形態の各要素F(i)は、ビーム要素である。このため、各要素F(i)の熱収縮は、コードモデル16の長手方向(収縮する方向)に作用する。このような熱収縮の計算は、例えば、JSOL社製のLS-DYNAなどの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算することができる。
【0056】
本実施形態では、各要素F(i)の節点19の移動が拘束されているため、各要素F(i)が熱収縮した状態(節点19、19間の距離L1が元の距離L1aよりも小さくなる状態)が計算されるわけではない。したがって、工程S32では、各コードモデル16の隣り合う節点19、19間において、要素F(i)の温度低下に伴う熱収縮量(熱ひずみ)が計算される。
【0057】
次に、本実施形態の引張応力定義工程S3では、熱収縮量に対応する引張応力Sを計算する(工程S33)。工程S33では、熱収縮量(熱ひずみ)に、補強コード8(図3に示す)の弾性率を乗じている。これにより、工程S33では、熱収縮量に対応する引張応力Sを計算することができる。引張応力Sは、コードモデル16の各要素F(i)に定義される。
【0058】
このように、本実施形態の引張応力定義工程S3では、コードモデル16に、節点19の移動を拘束する条件の下で引張応力Sを定義することができる。これにより、本実施形態の第1部材モデル11(図5及び図6に示す)は、補強コード8(図3に示す)に初期張力が付与された実際の第1部材5を再現することができる。したがって、本実施形態の第1方法は、生タイヤモデルを精度良く作成可能な生タイヤ部材モデル10を作成することができる。
【0059】
引張応力定義工程S3では、コードモデル16の各要素F(i)に引張応力Sが定義された後に、各要素F(i)の温度として、第1温度(本実施形態では、生タイヤ2の製造時の温度)が定義されるのが望ましい。これにより、第1方法では、コードモデル16とトッピングゴムモデル17との間、及び、コードモデル16とカバリングゴムモデル18(図5に示す)との間に、温度差が定義されるのを防ぐことができる。
【0060】
本実施形態の引張応力定義工程S3では、要素F(i)の温度低下に伴う熱収縮量に基づいて、コードモデル16の引張応力Sが計算されたが、このような態様に限定されない。図9は、本発明の他の実施形態の引張応力定義工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。図10(a)~(c)は、本発明の他の実施形態の引張応力定義工程S3を説明するための平面図である。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0061】
この実施形態の引張応力定義工程S3では、コードモデル16の長手方向で隣り合う節点19、19間の距離L1が大きく(元の距離L1aよりも大きく)なるように、要素F(i)の伸長を計算する(工程S34)。本実施形態の工程S34では、各要素F(i)の伸長計算に先立ち、図10(b)に示されるように、要素F(i)の節点19、19間の距離L1を小さく(元の距離L1aよりも小さく)している。これは、要素F(i)の伸長計算によって、節点19、19間の距離L1を、元の距離L1aに復元するためである。
【0062】
本実施形態では、要素F(i)の伸長計算での変化分Lb(図10(c))を考慮して、節点19、19間の距離L1を小さくしている。このとき、節点19、19間の距離L1の収縮に伴う要素F(i)の応力等については、計算されない。
【0063】
本実施形態の要素F(i)の伸長は、コードモデル16をタイヤ半径方向外側に膨張させる膨張計算によって行われる。このため、本実施形態では、膨張計算を考慮して、コードモデル16を、タイヤ半径方向内側に配置している。この場合、コードモデル16をタイヤ半径方向内側に配置するのに先立ち、コードモデル16とトッピングゴムモデル17(図6に示す)との互いの重なりを許容する境界条件が設定されるのが望ましい。
【0064】
次に、工程S34では、図10(b)に示した各要素F(i)の伸長が計算される。これにより、工程S34では、図10(c)に示されるように、コードモデル16の節点19、19間の距離L1を、図10(a)に示した元の距離L1aに復元することができる。
【0065】
上述したように、要素F(i)の伸長は、コードモデル16をタイヤ半径方向外側に膨張させる膨張計算によって行われる。コードモデル16の膨張計算は、コードモデル16の各要素F(i)の長手方向で隣り合う節点19、19間において、温度上昇に伴う各要素F(i)の膨張が計算される。要素F(i)の温度上昇については、予め定められた第1温度(本実施形態では、生タイヤ2の製造時の温度)、及び、第3温度に基づいて定義される。第3温度としては、第1温度よりも高く設定されており、例えば、40~60℃に設定される。
【0066】
工程S34では、コードモデル16の各要素F(i)の温度を、第1温度から第3温度に、微小時間(シミュレーションの単位時間)Txごとに徐々に上昇させている。これにより、工程S34では、各要素F(i)に定義された熱膨張係数に基づいて、各要素F(i)の熱膨張が計算される。このような熱膨張の計算は、上記の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算することができる。
【0067】
本実施形態の各要素F(i)は、ビーム要素である。このため、各要素F(i)の熱膨張は、コードモデル16の長手方向(伸長する方向)に作用する。したがって、工程S34では、各要素F(i)の伸長を計算することができる。これにより、工程S34では、コードモデル16の長手方向の長さ及びタイヤ半径方向の位置を、元の長さ及び元の位置に復元することができる。各要素F(i)の伸長が計算された後、コードモデル16とトッピングゴムモデル17との互いの重なりを禁止する境界条件が設定されるのが望ましい。
【0068】
次に、この実施形態の引張応力定義工程S3では、要素F(i)の伸長に対応する引張応力Sを計算する(工程S35)。引張応力Sは、要素F(i)の伸長によって生じた要素F(i)の歪みに、補強コード8(図3に示す)の弾性率を乗じることで求められる。要素F(i)の歪みは、要素F(i)の伸長分(節点19、19間の長手方向の変形分)Lb+Lb(図10(c)に示す)を、伸長前の要素F(i)の距離(元の距離)L1aで除することで求められる。引張応力Sは、コードモデル16の各要素F(i)に定義される。
【0069】
次に、この実施形態の引張応力定義工程S3では、コードモデル16の要素F(i)の節点19の移動が拘束される(工程S36)。本実施形態の工程S36は、引張応力Sを計算する工程S35の後に行われている。節点19の移動の拘束は、図7に示した前実施形態の引張応力定義工程S3の工程S31と同一の手順で実施することができる。
【0070】
このように、この実施形態の引張応力定義工程S3では、前実施形態と同様に、コードモデル16に、節点19の移動を拘束する条件の下で引張応力Sを定義することができる。これにより、この実施形態の第1部材モデル11は、補強コード8(図3に示す)に初期張力が付与された実際の第1部材5を再現することができる。したがって、この実施形態の第1方法は、生タイヤモデルを精度良く作成可能な生タイヤ部材モデル10を作成することができる。
【0071】
この実施形態の引張応力定義工程S3では、要素F(i)の伸長を計算する工程S34において、要素F(i)の伸長を計算するのに先立ち、図10(b)に示したようにコードモデル16の長手方向の距離L1を小さく(元の距離L1aよりも小さく)したが、このような態様に限定されない。例えば、工程S34では、コードモデル16の長手方向の距離L1を小さくせずに、要素F(i)の伸長を計算してもよい。この場合、節点19の移動を拘束する工程S36では、節点19の移動の拘束に先立ち、コードモデル16の長手方向の距離L1を、元の距離L1a(図10(a)に示す)に戻すのが望ましい。
【0072】
次に、本実施形態の第1方法では、図1に示したコンピュータ1が、図5に示した第1部材モデル11及び第2部材モデル12を重ねる(接合工程S4)。図11は、接合工程S4の処理手順の一例を示すフローチャートである。図12は、互いに重複する部分を有する第1部材モデル11及び第2部材モデル12の一例を示す概念図である。
【0073】
本実施形態の接合工程S4では、第1接合体モデル31、第2接合体モデル32、及び、トレッドリングモデル33が設定される。
【0074】
第1接合体モデル31は、インナーライナーゴムモデル12e、カーカスプライモデル12g、クリンチゴムモデル12c、サイドウォールゴムモデル12b、及び、クッションゴムモデル12hを含んで構成されている。接合工程S4では、これらのインナーライナーゴムモデル12e~クッションゴムモデル12hを重ねて配置(接合)することで、第1接合体モデル31を定義することができる。
【0075】
第2接合体モデル32は、ビードコアモデル12f、及び、ビードエーペックスゴムモデル12dを含んで構成されている。接合工程S4では、ビードコアモデル12f及びビードエーペックスゴムモデル12dを重ねて配置(接合)することで、第2接合体モデル32を定義することができる。
【0076】
トレッドリングモデル33は、内側ベルトプライモデル11a、外側ベルトプライモデル11b、及び、トレッドゴムモデル12aを含んで構成されている。接合工程S4では、これらの内側ベルトプライモデル11a、外側ベルトプライモデル11b、及び、トレッドゴムモデル12aを重ねて配置(接合)することで、トレッドリングモデル33を定義することができる。
【0077】
本実施形態の接合工程S4では、先ず、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)、及び、第2部材モデル12(トレッドゴムモデル12a~クッションゴムモデル12h)を、互いの重なりが許容される境界条件下で配置する(工程S41)。
【0078】
図12に示されるように、本実施形態の工程S41では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)、及び、第2部材モデル12(トレッドゴムモデル12a~クッションゴムモデル12h)について、第1部材5及び第2部材6を円環状に形成するための成形ドラム(図示省略)の軸心からの距離(即ち、タイヤ半径方向の距離)を揃えて配置している。
【0079】
工程S41では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)、及び、第2部材モデル12(トレッドゴムモデル12a~クッションゴムモデル12h)の各々の横断面形状を変化させることなく、互いの重なりを許容する境界条件の下で、第1部材モデル11及び第2部材モデル12がそれぞれ配置されている。このため、第1部材モデル11及び第2部材モデル12には、少なくとも一部が互いに重なる重複部分34(図12で破線で示している)が設けられる。
【0080】
本実施形態の重複部分34は、内側ベルトプライモデル11aと外側ベルトプライモデル11bとの間、カーカスプライモデル12gとクリンチゴムモデル12cとの間、及び、カーカスプライモデル12gとサイドウォールゴムモデル12bとの間に設けられている。なお、本実施形態のビードコアモデル12f及びビードエーペックスゴムモデル12dには、互いに重なる重複部分が設けられていない。
【0081】
次に、本実施形態の接合工程S4では、重複部分34がなくなるように、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を変形させる(工程S42)。工程S42では、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を、タイヤ半径方向の内側又は外側に移動させることで、重複部分34をなくしている。図13は、変形後の第1部材モデル11及び第2部材モデル12の一例を示す概念図である。
【0082】
第1部材モデル11及び第2部材モデル12の移動方法については、適宜採用することができる。本実施形態の工程S42では、各要素F(i)、G(i)及びH(i)にそれぞれ定義された熱膨張係数と、第1部材モデル11及び第2部材モデル12に設定される温度変化分とに基づいて、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を変形(膨張又は収縮)させている。
【0083】
工程S42では、図5及び図6に示した各要素F(i)、G(i)及びH(i)の温度を、初期温度(例えば、生タイヤ2の製造時の温度)から工程S42で設定される温度に、微小時間(シミュレーションの単位時間)Txごとに徐々に変化させている。これにより、工程S42では、各要素F(i)、G(i)及びH(i)に定義された熱膨張係数に基づいて、各要素F(i)、G(i)及びH(i)の熱膨張又は熱収縮が計算される。このような熱膨張及び熱収縮の計算は、上記の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算することができる。
【0084】
外側ベルトプライモデル11b及びトレッドゴムモデル12aには、初期温度よりも大きい温度が設定されている。これにより、工程S42では、外側ベルトプライモデル11b及びトレッドゴムモデル12aの膨張を計算することができるため、外側ベルトプライモデル11b及びトレッドゴムモデル12aをタイヤ半径方向外側に移動させることができる。したがって、工程S42では、内側ベルトプライモデル11aと外側ベルトプライモデル11bとの間の重複部分34(図12に示す)をなくすことができる。本実施形態の外側ベルトプライモデル11bのコードモデル16の要素F(i)は、節点19、19間の距離が大きくなる方向の移動が許容されている。このため、工程S42では、外側ベルトプライモデル11bの膨張変形が許容される。
【0085】
一方、クリンチゴムモデル12c及びサイドウォールゴムモデル12bには、初期温度よりも小さい温度が設定されている。これにより、工程S42では、クリンチゴムモデル12c及びサイドウォールゴムモデル12bの収縮を計算することができるため、クリンチゴムモデル12c及びサイドウォールゴムモデル12bをタイヤ半径方向内側に移動させることができる。これにより、工程S42では、カーカスプライモデル12gとクリンチゴムモデル12cとの間、及び、カーカスプライモデル12gとサイドウォールゴムモデル12bとの間の重複部分34(図12に示す)をなくすことができる。
【0086】
次に、本実施形態の接合工程S4では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)、及び、第2部材モデル12(トレッドゴムモデル12a~クッションゴムモデル12h)を密着させている(工程S43)。工程S43では、第1部材モデル11及び第2部材モデル12の互いの接触が許容され、かつ、互いの重なりが禁止される境界条件下で、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を隙間なく密着させている。図14は、密着した第1部材モデル11及び第2部材モデル12の一例を示す概念図である。
【0087】
本実施形態の工程S43では、初期温度とは異なる温度に設定された第1部材モデル11及び第2部材モデル12(外側ベルトプライモデル11b、トレッドゴムモデル12a、クリンチゴムモデル12c及びサイドウォールゴムモデル12b)の各要素F(i)、G(i)及びH(i)の温度について、初期温度とは異なる温度から初期温度(生タイヤ2の製造時の温度)に、微小時間(シミュレーションの単位時間)Txごとに徐々に戻している。これにより、工程S43では、第1部材モデル11及び第2部材モデル12の収縮又は膨張を計算することができるため、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を、タイヤ半径方向の元の位置に移動させることができる。このような熱収縮及び熱膨張の計算は、上記の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算することができる。
【0088】
上述したように、工程S43において、第1部材モデル11及び第2部材モデル12には、互いの接触が許容され、かつ、互いの重なりが禁止される境界条件が設定されている。これにより、工程S43では、第1部材モデル11及び第2部材モデル12の重複部分34(図12に示す)を防ぎつつ、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を密着させることができる。
【0089】
工程S43では、サイドウォールゴムモデル12b及びクッションゴムモデル12hの膨張計算により、インナーライナーゴムモデル12e、カーカスプライモデル12g、クリンチゴムモデル12c、サイドウォールゴムモデル12b及びクッションゴムモデル12hを密着させることができる。インナーライナーゴムモデル12e、カーカスプライモデル12g、クリンチゴムモデル12c、サイドウォールゴムモデル12b及びクッションゴムモデル12hの間には、相対移動を防ぐ境界条件が設定される。これにより、工程S43では、インナーライナーゴムモデル12e、カーカスプライモデル12g、クリンチゴムモデル12c、サイドウォールゴムモデル12b及びクッションゴムモデル12hを接合した第1接合体モデル31を設定することができる。
【0090】
さらに、工程S43では、外側ベルトプライモデル11b、及び、トレッドゴムモデル12aの収縮計算により、内側ベルトプライモデル11a、外側ベルトプライモデル11b、及び、トレッドゴムモデル12aを密着させることができる。内側ベルトプライモデル11a、外側ベルトプライモデル11b、及び、トレッドゴムモデル12aの間には、相対移動を防ぐ境界条件が設定される。これにより、工程S43では、内側ベルトプライモデル11a、外側ベルトプライモデル11b、及び、トレッドゴムモデル12aを接合したトレッドリングモデル33を設定することができる。
【0091】
本実施形態では、外側ベルトプライモデル11bのコードモデル16の節点19、19が、節点19、19間の距離L1が小さくなる(即ち、元の距離L1aよりも小さくなる)方向の移動のみ拘束されている。このため、外側ベルトプライモデル11bの収縮計算が行われても、節点19、19間の元の距離L1aが維持されるため、コードモデル16に定義された引張応力S(図8及び図10(c)に示す)が維持される。
【0092】
さらに、工程S43では、ビードコアモデル12f及びビードエーペックスゴムモデル12dの間に、相対移動を防ぐ境界条件が設定される。これにより、工程S43では、ビードコアモデル12f及びビードエーペックスゴムモデル12dを接合した第2接合体モデル32を設定することができる。第1接合体モデル31、第2接合体モデル32及びトレッドリングモデル33は、コンピュータに記憶される。
【0093】
本実施形態の第1方法では、実際の生タイヤ2(図2に示す)の成形工程と同様に、第1部材モデル11及び第2部材モデル12に重ねることができる。したがって、本実施形態の第1方法は、生タイヤモデルを精度良く作成可能な生タイヤ部材モデル10を作成することができる。
【0094】
次に、本実施形態の第1方法は、図1に示したコンピュータ1が、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)のコードモデル16の節点19(図8及び図10(c)に示す)の拘束を解くことで、第1部材モデル11のコードモデル16の収縮変形を許容する(工程S5)。本実施形態の工程S5は、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を重ねる工程(接合工程S4)の後に行われる。
【0095】
工程S5では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)のコードモデル16の節点19(図8及び図10(c)に示す)の移動を拘束していた境界条件が無効に設定される。これにより、工程S5では、各要素F(i)に定義された引張応力S(図8及び図10(c)に示す)に基づいて、コードモデル16の長手方向で隣り合う節点19、19間の距離L1(元の距離L1a)が小さくなる収縮変形が計算される。
【0096】
工程S5では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)のコードモデル16の収縮変形が許容されることにより、コードモデル16の長手方向の長さが小さくなり、第1部材モデル11が半径方向内側に縮径する。この第1部材モデル11の縮径により、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)に接合されている第2部材モデル12のトレッドゴムモデル12aも縮径する。これにより、工程S5では、トレッドリングモデル33を、半径方向内側に縮径させることができる。
【0097】
このようなトレッドリングモデル33は、初期張力が付与された補強コード8(図3に示す)の影響を受けて変形した生タイヤ部材3(本実施形態では、トレッドリング23)を再現することができる。したがって、本実施形態の第1方法は、生タイヤモデルを精度良く作成可能な生タイヤ部材モデル10を作成することができる。
【0098】
本実施形態の第1方法では、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を重ねる工程(接合工程S4)の前に、引張応力定義工程S3が行われたが、このような態様に限定されない。引張応力定義工程S3は、例えば、接合工程S4の後に行われてもよい。この場合、引張応力定義工程S3は、図7に示した手順に基づいて、要素F(i)の温度低下に伴う熱収縮量に基づいて、コードモデル16の引張応力S(図8に示す)が計算されるのが望ましい。これは、図7に示した手順が、図9に示した手順とは異なり、コードモデル16の半径方向の収縮計算及び膨張計算を必要としないため、計算時間を短縮できるからである。
【0099】
次に、本実施形態の生タイヤモデルの作成方法(第2方法)について説明する。第2方法では、第1方法で作成された生タイヤ部材モデルを用いて、生タイヤの数値解析用モデルが作成される。図15は、生タイヤモデルの作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0100】
本実施形態の第2方法は、先ず、図4に示した第1方法に基づいて生タイヤ部材モデル10(図14に示す)が作成される(工程S11)。次に、本実施形態の第2方法では、図14に示した第1接合体モデル31と、第2接合体モデル32とを密着させたケーシングモデル35を設定し(工程S12)、ケーシングモデル35をタイヤ半径方向外側に膨出させる変形計算が行なわれる(工程S13)。図16は、半径方向外側に膨出したケーシングモデル35の一例を示す概念図である。
【0101】
工程S13では、ケーシングモデル35のビード部35c、35cのタイヤ軸方向の距離を減じるように、ビード部35c、35cをタイヤ軸方向内側に移動させ、かつ、ケーシングモデル35をタイヤ半径方向外側に膨出させる変形計算が行なわれる。ケーシングモデル35の膨出は、ケーシングモデル35の内面に定義される等分布荷重w1に基づいて計算される。等分布荷重w1は、図2に示した生タイヤ2のケーシング(図示省略)を膨出させる高圧空気の圧力に基づいて設定される。このケーシングモデル35の膨出により、ケーシングモデル35の外面と、トレッドリングモデル33の内面とを接触させることができる。
【0102】
次に、本実施形態の第2方法では、トレッドリングモデル33(図14に示す)を、ケーシングモデル35側に変形させる(工程S14)。トレッドリングモデル33の変形は、トレッドリングモデル33の外面に定義される等分布荷重w2に基づいて計算される。等分布荷重w2は、図2に示した生タイヤ2のトレッドリング(図示省略)の外周面を押し付けるステッチングローラ(図示省略)の圧力に基づいて設定される。これにより、工程S14では、トレッドリングモデル33の内面が、ケーシングモデル35の外面に沿うように、トレッドリングモデル33の変形計算を実施することができる。
【0103】
次に、本実施形態の第2方法では、ビードコアモデル12fよりもタイヤ軸方向外側にはみ出したケーシングモデル35のはみ出し部分35oを、ビードコアモデル12fの廻りで巻き上げる(工程S15)。工程S15では、ケーシングモデル35のはみ出し部分35oの内面に定義される等分布荷重w3に基づいて、はみ出し部分35oが巻き上げられる。等分布荷重w3は、図2に示した生タイヤ2のはみ出し部分(図示省略)の内面を押し付けるブラダー(図示省略)の圧力に基づいて設定される。
【0104】
工程S15では、はみ出し部分35oの外面が、カーカスプライモデル12gの外面又はトレッドゴムモデル12aの外面に密着するように、巻き上げられたはみ出し部分35o、及び、ビードエーペックスゴムモデル12dの変形計算が実施される。これにより、工程S15では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)、及び、第2部材モデル12(トレッドゴムモデル12a~クッションゴムモデル12h)を隙間なく互いに密着させることができる。
【0105】
次に、本実施形態の第2方法では、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)、及び、第2部材モデル12(トレッドゴムモデル12a~クッションゴムモデル12h)が互いに離間しないように密着状態が保持される(工程S16)。工程S16では、互いに密着した第1部材モデル11及び第2部材モデル12間の接触面に、相対移動を防ぐ境界条件が設定される。これにより、生タイヤモデル36が作成される。図17は、生タイヤモデル36の一例を示す概念図である。
【0106】
本実施形態では、工程S5でのコードモデル16(図8及び図10(c)に示す)の収縮変形により、図2に示した初期張力が付与された補強コード8の影響を受けて変形したトレッドリング23(生タイヤ部材3)が再現されている。このようなトレッドリングモデル33がケーシングモデル35(図16に示す)に密着されることにより、ケーシングモデル35は、図3に示した補強コード8の初期張力によって締め付けられたケーシング(図示省略)を再現することができる。したがって、本実施形態の第2方法では、補強コード8がケーシングを締め付けることによる生タイヤ2の形状変化を考慮することができるため、実際の生タイヤ2(図2に示す)の形状を精度よく再現した生タイヤモデル36を作成することができる。生タイヤモデル36は、図1に示したコンピュータ1に記憶される。
【0107】
次に、本実施形態の第2方法では、生タイヤモデル36の形状が、良好か否かが判断される(工程S17)。判断する主体については、特に限定されるわけではなく、例えば、図1に示したコンピュータ1やオペレータによって判断されてもよい。
【0108】
工程S17において、生タイヤモデル36の形状が良好であると判断された場合(工程S17において、「Y」)、生タイヤ部材3の設計データに基づいて、生タイヤが製造される(工程S18)。他方、生タイヤモデル36の形状が良好でないと判断された場合(工程S17において、「N」)、生タイヤ部材3の設計データを変更して(工程S19)、工程S11~工程S17が再度実施される。
【0109】
本実施形態の第1方法及び第2方法では、実際の生タイヤ2(図2に示す)の形状を精度よく再現した生タイヤモデル36を作成することができるため、生タイヤモデル36の形状の良否を精度良く判断することができる。これにより、本実施形態の第2方法では、形状が良好な生タイヤ2を確実に製造することができる。
【0110】
本実施形態では、図4に示されるように、第1部材モデル11及び第2部材モデル12を重ねる接合工程S4の後に、第1部材モデル11(内側ベルトプライモデル11a及び外側ベルトプライモデル11b)の収縮変形を許容する工程S5が実施されたが、このような態様に限定されない。第1部材モデル11の収縮変形を許容する工程S5は、図15に示した生タイヤモデルの作成する第2方法において、第1部材モデル11、及び、第2部材モデル12が互いに離間しないように密着状態を保持する工程S16の後に実施されてもよい。このような第2方法では、補強コード8がケーシング(図示省略)を締め付けることによる生タイヤ2の形状変化を考慮した生タイヤモデル36を作成することができる。
【0111】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0112】
補強コードが配列された少なくとも一つの第1部材(図2及び図3に示す)を含む生タイヤ(図2に示す)が製造された(実験例)。実験例の補強コードには、0.7%の伸びを生じる初期張力が与えられた。
【0113】
コンピュータを用いて、補強コードが配列された少なくとも一つの第1部材を含む生タイヤ成形用部材の数値解析用モデルが作成された(実施例及び比較例)。実施例では、図4及び図8に示した処理手順に基づいて、第1部材モデルのコードモデルに、節点の移動を拘束する条件の下で引張応力が定義された。引張応力は、実験例の補強コードに与えられた初期張力に基づいて定義された。
【0114】
次に、実施例では、図11に示した処理手順に基づいて、第1部材モデル及び第2部材モデルが重ねられ、第1部材モデルのコードモデルの収縮変形を許容する工程が実施された。そして、実施例では、図15に示した処理手順に基づいて、生タイヤモデルが作成された。
【0115】
一方、比較例では、第1部材モデルのコードモデルに、引張応力が定義されなかった。そして、第1部材モデル及び第2部材モデルが重ねられ、生タイヤモデルが作成された。
【0116】
そして、実施例及び比較例の生タイヤモデルのトレッド中央部のタイヤ周方向の長さと、実験例の生タイヤのトレッド中央部のタイヤ周方向の長さとが比較された。共通仕様等については、明細書中に記載したものを除いて、次のとおりである。
タイヤサイズ:275/40ZR18
第1部材:内側ベルトプライ、外側ベルトプライ
テストの結果を、表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
テストの結果、実施例のトレッド中央部の長さは、比較例のトレッド中央部の長さに比べて、実験例のトレッド中央部の長さに近似した。したがって、実施例は、比較例に比べて、生タイヤ部材モデル及び生タイヤモデルを精度良く作成することができた。
【符号の説明】
【0119】
S1 第1部材モデルを入力する工程
S3 第1部材モデルのコードモデルに引張応力を定義する工程
図1
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