(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20220809BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220809BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20220809BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220809BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20220809BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/36
C08K5/548
C08K3/04
C08L25/08
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2018098908
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 健宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史也
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 昴
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232110(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178336(WO,A1)
【文献】特開2016-204504(JP,A)
【文献】特開2018-065907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、
前記ゴム成分100質量部に対する含有量が80質量部以上のシリカとを含有し、
下記式(A)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
(A)
0.9≦α1/α2≦1.2
α1:ゴム成分中の総スチレン量[質量%]
α2:ゴム成分中の総ビニル量[質量%]
【請求項2】
スチレン系樹脂を含有する請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
下記式(B)を満たす請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
(B) α1/β≦7
α1:ゴム成分中の総スチレン量[質量%]
β:ゴム成分100質量部に対するスチレン系樹脂の含有量[質量部]
【請求項4】
メルカプト系シランカップリング剤を含有する請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量が35質量部以上である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が160m
2/g以上のカーボンブラックを含有する請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記シリカの窒素吸着比表面積が220m
2/g以上である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記スチレンブタジエンゴムが、スチレン量及び/又はビニル量が異なる複数のスチレンブタジエンゴムで構成されている請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して低燃費化の要求が強くなっており、自動車用タイヤに用いるゴム組成物に対しても、低燃費性に優れることが求められている。
【0003】
タイヤには、安全性等の確保のため、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能等のグリップ性能が要求される。この要求に応えるため、ゴム成分としてスチレンブタジエンゴムが汎用されているが、スチレンブタジエンゴムを使用すると、低燃費性が低下する傾向がある。このように、グリップ性能、低燃費性は背反する関係にあり、これらを総合的に改善することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を総合的に改善できるタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、前記ゴム成分100質量部に対する含有量が80質量部以上のシリカとを含有し、下記式(A)を満たすタイヤ用ゴム組成物に関する。
(A) 0.8≦α1/α2≦1.2
α1:ゴム成分中の総スチレン量[質量%]
α2:ゴム成分中の総ビニル量[質量%]
【0006】
前記ゴム組成物は、スチレン系樹脂を含有することが好ましく、下記式(B)を満たすことがより好ましい。
(B) α1/β≦7
α1:ゴム成分中の総スチレン量[質量%]
β:ゴム成分100質量部に対するスチレン系樹脂の含有量[質量部]
【0007】
前記ゴム組成物は、メルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0008】
前記ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量が35質量部以上であることが好ましい。
【0009】
前記ゴム組成物は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が160m2/g以上のカーボンブラックを含有することが好ましい。
【0010】
前記シリカの窒素吸着比表面積が220m2/g以上であることが好ましい。
【0011】
前記スチレンブタジエンゴムが、スチレン量及び/又はビニル量が異なる複数のスチレンブタジエンゴムで構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムと、所定量のシリカとを含有し、式(A)を満たすタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能を総合的に改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)と、所定量のシリカとを含有し、式(A)を満たす。
【0015】
上記ゴム組成物は前述の効果が得られるが、これは以下の作用効果により奏するものと推察される。
SBRをゴム成分の主成分とする場合、グリップ性能が向上しやすくなるものの、低燃費性が低下する傾向がある。これに対し、上記ゴム組成物では、SBR以外のゴム成分としてBRを使用するとともに、シリカ量を特定の範囲に調整し、そして更に、ゴム成分中の総スチレン量と、ゴム成分中の総ビニル量とを特定の比率に調整することで、ゴム組成物中にシリカが良好に分散する。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能及びドライグリップ性能が総合的に改善されると考えられる。
【0016】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、SBRを含有する。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
【0017】
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0018】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0019】
変性SBRとして、特に下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRが好適である。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R
4及びR
5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
【0020】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、なかでも、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等)が好適に用いられる。
【0021】
R1、R2及びR3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R4及びR5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R4及びR5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0022】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0024】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0025】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0026】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0027】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性SBRが好ましい。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0028】
上記ゴム組成物において、SBRは、スチレン量及び/又はビニル量が異なる複数のSBRで構成されることが好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
複数のSBRにおいて、各々のスチレン量及び/又はビニル量の差は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0029】
複数のSBRの少なくとも1つは、スチレン量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは38質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、スチレン量は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0030】
複数のSBRの少なくとも1つは、ビニル量が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは24質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、ビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0031】
複数のSBRの少なくとも1つは、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは50万以上、より好ましくは75万以上であり、また、好ましくは120万以下、より好ましくは90万以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0032】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0033】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量(複数のSBRを使用する場合、その合計含有量)は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0034】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、BRを含有する。
BRとしては特に限定されず、高シス含量のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。BRのシス含量は90質量%以上(好ましくは95質量%以上)が好適であり、BRのビニル量は1~10質量%が好適である。
なお、シス含量、ビニル量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0035】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0036】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0037】
SBR、BR以外に使用可能なゴム成分としては、イソプレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記ゴム組成物は、ゴム成分中の総スチレン量、ゴム成分中の総ビニル量が、下記式(A)を満たす。
(A) 0.8≦α1/α2≦1.2
α1:ゴム成分中の総スチレン量[質量%]
α2:ゴム成分中の総ビニル量[質量%]
【0039】
式(A)において、α1/α2は、0.8~1.2であればよいが、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.1以上であり、また、好ましくは1.18以下、より好ましくは1.17以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
ゴム成分中の総スチレン量(ゴム成分全量中に含まれるスチレン部の合計含有量)は、式(A)を満たす範囲で調整すればよいが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは27質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは34質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
ここで、ゴム成分中の総スチレン量は、Σ(各スチレン含有ゴムの含有量×各スチレン含有ゴムのスチレン量/100)である。例えば、ゴム成分が、SBR(A)(スチレン量40質量%)90質量%、SBR(B)(スチレン量25質量%)5質量%、BR5質量%からなる場合、ゴム成分中の総スチレン量は、37.25質量%(=90×40/100+5×25/100)である。
【0041】
ゴム成分中の総ビニル量(ゴム成分全量中に含まれるビニル部の合計含有量)は、式(A)を満たす範囲で調整すればよいが、好ましくは15質量%以上、より好ましくは23質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは32質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
ここで、ゴム成分中の総ビニル量は、Σ(各ビニル含有ゴムの含有量×各ビニル含有ゴムのビニル量/100)である。例えば、ゴム成分が、SBR(A)(ビニル量20質量%)90質量%、SBR(B)(ビニル量10質量%)5質量%、BR5質量%(ビニル量2質量%)からなる場合、ゴム成分中の総ブタジエン量は、18.6質量%(=90×20/100+5×10/100+5×2/100)である。
【0042】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは110m2/g以上、より好ましくは150m2/g以上、更に好ましくは200m2/g以上、特に好ましくは220m2/g以上であり、また、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは260m2/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0044】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0045】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、80質量部以上であればよいが、好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
上記ゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましく、メルカプト系がより好ましい。
【0047】
なお、メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有する化合物の他、保護基によってメルカプト基が保護された構造の化合物(例えば、下記式(S1)で表される化合物)も使用可能である。
【0048】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
【化2】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007及び-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される一価の基(R
1006、R
1007及びR
1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化3】
【化4】
(式中、vは0以上の整数、wは1以上の整数である。R
11は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R
12は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R
11とR
12とで環構造を形成してもよい。)
【0049】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0050】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0051】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0052】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0053】
式(I)、(II)におけるR11について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
【0054】
式(I)、(II)におけるR12について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
【0055】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(v)と結合単位Bの繰り返し数(w)の合計の繰り返し数(v+w)は、3~300の範囲が好ましい。
【0056】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0057】
上記ゴム組成物は、スチレン系樹脂を含有することが好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして含むポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体との共重合体も挙げられる。
【0058】
他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類、テルペン、クロロプレン、ブタジエンイソプレン等の共役ジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の効果がより良好に得られる傾向があるという理由から、スチレン系樹脂は、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
【0060】
スチレン系樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは85℃以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本発明において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0061】
スチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0062】
スチレン系樹脂を含有する場合、スチレン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0063】
スチレン系樹脂を含有する場合、上記ゴム組成物は、ゴム成分中の総スチレン量、スチレン系樹脂の含有量が、下記式(B)を満たすことが好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
(B) α1/β≦7
α1:ゴム成分中の総スチレン量[質量%]
β:ゴム成分100質量部に対するスチレン系樹脂の含有量[質量部]
【0064】
式(B)において、α1/βは、7以下であればよいが、好ましくは6.4以下であり、また、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0065】
上記ゴム組成物は、スチレン系樹脂以外に、他の樹脂を含有していてもよい。他の樹脂としては、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、C5樹脂、C9樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、テルペン系樹脂が好ましい。
【0066】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0067】
ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0068】
ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0069】
芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。
【0070】
テルペン系樹脂の軟化点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは125℃以上であり、また、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0071】
テルペン系樹脂を含有する場合、テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0072】
スチレン系樹脂、テルペン系樹脂や他の樹脂の市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0073】
上記ゴム組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、上述のスチレン系樹脂、テルペン系等の樹脂の他、オイル、液状ゴム、ワックス等が含まれる。具体的には、ゴム組成物からアセトンを用いて抽出される成分である。
【0074】
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは35質量部以上、より好ましくは42質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0075】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルがより好ましい。
【0076】
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0077】
液状ゴムとしては、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)などが挙げられる。これらの液状ゴムは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、液状BR、液状SBRが好ましい。
【0078】
液状ゴムとしては、例えば、サートマー社(Sertomer Company Inc.)等の製品を使用できる。
【0079】
液状ゴムを含有する場合、液状ゴムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0080】
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0081】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0082】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、好ましくは110m2/g以上、より好ましくは160m2/g以上、更に好ましくは170m2/g以上、特に好ましくは180m2/g以上であり、また、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのCTAB比表面積は、JIS K6217-3:2001に準拠して測定される値である。
【0085】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは110m2/g以上、より好ましくは140m2/g以上、更に好ましくは177m2/g以上であり、また、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0086】
カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、好ましくは110mg/g以上、より好ましくは170mg/g以上、更に好ましくは188mg/g以上であり、また、好ましくは250mg/g以下、より好ましくは200mg/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのIAは、JIS K6217-1:2008に準拠して測定される値である。
【0087】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0088】
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0089】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0090】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0091】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0092】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0093】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0094】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0095】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0096】
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0098】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0099】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0100】
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは4質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0102】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0103】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0104】
上記ゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられるが、トレッド以外の部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0105】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0106】
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等に使用可能であり、特に、乗用車用タイヤに好適である。
【実施例】
【0107】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
SBR1:下記製造例1で合成した変性SBR(スチレン量:40質量%、ビニル量:30質量%、Mw:90万)
SBR2:下記製造例2で合成した変性SBR(スチレン量:40質量%、ビニル量:40質量%、Mw:75万)
SBR3:ダウ社製のSLR6430(スチレン量:40質量%、ビニル量:24質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR4:日本ゼオン(株)製のNipol NS522(スチレン量:38質量%、ビニル量:40質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
BR:LG Chem社製のBR1280(ビニル量:2質量%、シス含量:96モル%)
カーボンブラック1:試作品(CTAB:180m2/g、N2SA:177m2/g、IA:188mg/g)
カーボンブラック2:N134(CTAB:135m2/g)
シリカ1:エボニックデグッサ社製のウルトラシル9000GR(N2SA:240m2/g)
シリカ2:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:167m2/g)
シリカ3:ローディア社製のZEOSIL 1115MP(N2SA:115m2/g)
シランカップリング剤1:Momentive社製のNXT-Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
オイル:H&R社製のVIVATEC500(TDAEオイル)
テルペン系樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点:125℃)
スチレン系樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、Mn:700、軟化点:85℃)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:住友化学(株)製のアンチゲンFR(アミンとケトンの反応品を精製したものでアミンの残留がないもの、キノリン系老化防止剤)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0108】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR1を得た。
【0109】
(製造例2)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR2を得た。
【0110】
(SBRの分析)
SBRの構造同定(スチレン量、ビニル量の測定)は、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて行った。測定は、ポリマー0.1gを15mlのトルエンに溶解させ、30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで再沈殿させたものを、減圧乾燥後に測定した。
【0111】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記評価を行い、結果を表1に示した。
なお、表1において、油展ゴム中のゴム分はゴムの欄に記載し、油展ゴム中のオイル分はオイルの欄に加算している。また、可塑剤の含有量の欄には、オイル、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、ワックスの合計量を記載している。
【0112】
(低燃費性)
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した(低燃費性指数)。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。本実施形態では、目標を100以上としている。
【0113】
(ウェットグリップ性能)
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、比較例1を100とした時の指数で表示した(ウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほど制動距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。本実施形態では、目標を110以上としている。
【0114】
(ドライグリップ性能)
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。試験場所は、住友ゴム工業(株)の岡山テストコースで行い、気温は20~25℃であった。そして、その際における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100とした時の指数で表示した(ドライグリップ性能指数)。指数が大きいほどドライ路面におけるグリップ性能が優れることを示す。本実施形態では、目標を60以上としている。
【0115】