(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】発電機制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20220809BHJP
B60L 7/12 20060101ALI20220809BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20220809BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20220809BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02P9/04 L
B60L7/12 Q
F02D29/02 341
F02D29/06 E
B60R16/03 J
(21)【出願番号】P 2018100384
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰洋
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-184510(JP,A)
【文献】特開2005-176541(JP,A)
【文献】特開2004-229373(JP,A)
【文献】特開2004-232486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00-9/48
B60L 7/12
F02D 29/02
F02D 29/06
B60R 16/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の減速時に燃料噴射を停止し、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に達した場合に燃料噴射を再開する燃料カット制御部と、発電機の回生量を制限する回生量制限部と、を有するエンジンコントローラを備え、
前記回生量制限部は、エンジンから駆動輪までが伝達状態であり、車両が燃料カット状態で且つ減速状態にある場合、
前記エンジン回転数及び前記燃料カット復帰回転数に基づいて要求トルクを算出すると共に、車両の状態に基づいて前記発電機の要求発電ベーストルクを算出し、前記要求トルク及び前記要求発電ベーストルクのいずれか一方に基づいて前記発電機の回生量を制限することで、前記エンジン回転数が前記燃料カット復帰回転数に近づくにつれて前記発電機の回生量を小さくすることを特徴とする発電機制御装置。
【請求項2】
乗員の加速意思がない場合、前記エンジン回転数が前記燃料カット復帰回転数に近づくにつれて前記発電機の回生量を小さく
し、乗員の減速増大意思がある場合、前記エンジン回転数が前記燃料カット復帰回転数に近づくときは、回生量増加を抑制することを特徴とする請求項1に記載の発電機制御装置。
【請求項3】
前記回生量制限部は、前記要求トルクと前記要求発電ベーストルクとを比較し、小さい方のトルクを前記発電機の要求発電トルクに設定することを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載の発電機制御装置。
【請求項4】
燃料噴射を再開した後、前記発電機の発電トルクを所定時間低下させることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の発電機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び発電機を備える車両にあっては、減速時に燃料カット(燃料噴射の停止)を実施し、制動時に制動エネルギの回生を実施するものが存在する(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、車両の減速状態が検出されるとエンジンへの燃料噴射が停止され、制動時に回収した制動エネルギは、バッテリに供給される。
【0003】
また、特許文献1では、制動エネルギを回生する際に、発電機の電圧制御を実施する。例えば、所定の減速状態への移行が予測されると、その時点で発電機出力電圧をHi電圧に制御する。このように、予め電圧をHi電圧に制御することで、減速移行時に生じ得る減速ショックを抑制することが可能である。
【0004】
また、特許文献1では、燃料カット中にエンジン回転数が燃料カット復帰回転数に比較的近いと判断される場合に、直結クラッチの締結状態を解除して発電機出力電圧をLo電圧に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、燃料カット中にエンジン回転数が燃料カット復帰回転数に比較的近いと判断される場合に直結クラッチの締結状態を解除するので、回生エネルギの回収を行うことができない。しかし、直結クラッチが締結された状態で回生による発電機の出力電圧に変更すると、そのときの回生トルクの差に伴う減速ショックが発生する。このため、乗員は不快な振動を感じてしまうことになる。
【0007】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、回生終了後における車両の減速ショックを抑制することができる発電機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の発電機制御装置は、車両の減速時に燃料噴射を停止し、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に達した場合に燃料噴射を再開する燃料カット制御部と、発電機の回生量を制限する回生量制限部と、を有するエンジンコントローラを備え、前記回生量制限部は、エンジンから駆動輪までが伝達状態であり、車両が燃料カット状態で且つ減速状態にある場合、前記エンジン回転数及び前記燃料カット復帰回転数に基づいて要求トルクを算出すると共に、車両の状態に基づいて前記発電機の要求発電ベーストルクを算出し、前記要求トルク及び前記要求発電ベーストルクのいずれか一方に基づいて前記発電機の回生量を制限することで、前記エンジン回転数が前記燃料カット復帰回転数に近づくにつれて前記発電機の回生量を小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回生終了後における車両の減速ショックを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る発電機制御システムの全体構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る制御フローの一例を示す図である。
【
図3】本実施の形態における各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る発電機制御システムが適用される車両として、四輪車を例にして説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を他のタイプの車両に適用してもよい。
【0012】
図1を参照して、本実施の形態に係る発電機制御システムについて説明する。
図1は、本実施の形態に係る発電機制御システムの全体構成図である。なお、発電機制御システムは、以下に示す構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0013】
図1に示すように、車両は、エンジン1、発電機2、バッテリ3及び電気負荷4を備えている。エンジン1と発電機2とは、ベルト5を介して接続されている。これにより、エンジン1と発電機2との間で動力の伝達が可能になっている。
【0014】
エンジン1は、例えばガソリンエンジンで構成される。なお、エンジン1は、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジンで構成されてもよい。また、エンジン1は、エンジン1の及びその周辺構成の動作を制御するエンジンコントローラ6を備えている。
【0015】
エンジンコントローラ6は、エンジン1内外の各種構成を含む車両全体の動作を統括制御する。エンジンコントローラ6は、各種処理を実施するプロセッサやメモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体で構成される。メモリには、上記した各種構成を制御する制御プログラム等が記憶されている。
【0016】
エンジンコントローラ6は、車両内に設けられた各種センサから車両の状態を判断し、車両内の所定の構成部品の駆動の制御を実施する。具体的にエンジンコントローラ6は、制御の種類に応じた複数の機能ブロックを有する。例えば、エンジンコントローラ6は、車両の減速時に燃料噴射を停止し、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に達した場合に燃料噴射を再開する燃料カット制御部6aと、発電機2の回生量を制限する回生量制限部6bと、を有する。これらの機能ブロックについては後述する。
【0017】
発電機2は、エンジン1の駆動に応じて発電し、その電力をバッテリ3に供給する。詳細は後述するが、発電機2は、車両の減速時(例えば制動時)に制動エネルギの回生を実施する。また、発電機2の動作は、発電機コントローラ7によって制御される。例えば、発電機コントローラ7は、励磁電流を制御することにより、回生量を制御する。また、エンジンコントローラ6と発電機コントローラ7とは、CAN(Controller Area Network)により通信が可能に構成される。
【0018】
バッテリ3は、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池で構成される。バッテリ3は、発電機2で発電した電力や車両の回生エネルギを蓄える一方、車両内の所定構成に電力を供給する。なお、バッテリ3は、単一のバッテリで構成されてもよく、その他に上記電池を複数組み合わせて構成されてもよい。
【0019】
バッテリの一方の電極3aは、発電機2の一方の電極2aに接続される。電極3aと電極2aとの間には電気負荷4が接続され、電気負荷4は接地される。バッテリ3の他方の電極3bは、発電機2の他方の電極2bに接続される。電極3bもまた接地されている。
【0020】
上記のように、本実施の形態に係る発電機制御システム10は、エンジン1やその周辺構成の状態等、車両の状況に応じて発電機2の発電トルク、発電電圧等を制御するように構成される。
【0021】
ところで、車両の減速時に車両の走行エネルギを用いて発電機を駆動し、発電した電気をバッテリ等に供給する回生が従来から行われている。この回生は車両の減速度に影響を与えるものであり、その回生量が大きい程、車両の減速感が大きくなる。
【0022】
例えば、発電機の電圧制御を実施して車両の制動時における制動エネルギを回生する場合において、減速移行時の発電電圧の増大に伴う減速ショックを抑制するものが存在する。具体的には、所定の減速状態への移行が予想されると、その時点で発電機の出力電圧を高めに制御し、予め減速移行時の発電電圧の増大に備える。これにより、実際の減速移行時の減速ショックを抑制することが可能である。
【0023】
また、燃料カット制御と上記の発電電圧制御を組み合わせたものが存在する。例えば、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に比較的近いと判断されると、直結クラッチのスリップ状態又は締結状態が解除され、その後に発電機の出力電圧が低い電圧に制御される。なお、燃料カット復帰回転数とは、燃料カット状態から復帰する際のエンジン回転数を表している。
【0024】
しかしながら、発電機の回生量が大きい状態で上記の直結クラッチの接続が解除される場合にあっては、そのときの回生トルクの差が減速ショックとなり、乗員はこれを不快な振動として感じてしまうおそれがある。これは、エンジンから駆動輪まで伝達状態にある場合、回生量(回生トルク)を変化させるトルク段差が発生することに起因する。
【0025】
そこで、本件発明者は、燃料カット状態から燃料噴射再開の判定基準となる燃料カット復帰回転数と発電機の回生量に着目し、本発明に想到した。具体的に本実施の形態において、回生量制限部6bは、エンジン1から駆動輪までが伝達状態であり、車両が燃料カット状態で且つ減速状態にある場合、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に近づくにつれて発電機2の回生量を小さくする。
【0026】
この構成によれば、燃料カット状態から燃料噴射を再開して発電機2の回生が終了したときに、事前に発電機2の回生量を小さくしたことで、減速ショックの発生を抑制することが可能である。すなわち、本発明の骨子は、エンジン1が燃料復帰するときの減速ショックを抑制するため、エンジンコントローラ6で演算した燃料カット復帰回転数と実際のエンジン回転数が所定値以内になったときに、発電トルクを下げる制御を実施することである。以下、当該制御を回生量低減制御と呼ぶことがある。
【0027】
ここで、燃料カット復帰回転数は、車両の状況に基づいて所定時間ごとに更新される。例えば、エンジン1の補機(エアコンコンプレッサ等)の駆動有無を監視して、その変化に応じて燃料カット復帰回転数が調整される。
【0028】
また、「エンジン1から駆動輪までが伝達状態である」とは、MT(Manual Transmission)、AMT(Automated Manual Transmission)であればエンジン1と変速機の間に設けられるクラッチ(共に不図示)が締結状態であることを意味し、AT(Automatic Transmission)であればロックアップクラッチが締結又はスリップ状態であることを意味する。また、回生量はエンジン回転数に基づいて調整される。減速中に燃料カット復帰回転数やエンジン回転数が変動しても、その変動に合わせて回生量を調整するので、均一な減速感を得ることが可能である。
【0029】
また、乗員の加速意思がない場合、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に近づくにつれて発電機の回生量を小さくすることが好ましい。この構成によれば、車両が燃料カット状態で且つ減速状態にあり、上記の回生量低減制御を実施している場合、アクセルペダルが踏み込まれるまでは、回生量低減制御が継続される。また、ブレーキペダルの踏込量の増加に伴い、通常であれば回生量が増加する状態にあっても、回生量が増加しない。これにより、回生が停止されたときの減速ショックを効果的に抑制することができる。
【0030】
次に、
図2を参照して、本実施の形態に係る制御フローについて説明する。
図2は、本実施の形態に係る制御フローの一例を示す図である。なお、以下に示すフローでは、特に明示が無い限り、動作(算出(演算)や判定等)の主体はエンジンコントローラとする。
【0031】
図2に示すように、制御が開始されると、ステップST101において、エンジンコントローラ6は、エンジン1から駆動輪までが伝達状態で且つ減速状態であるか否かを判定する。伝達状態とは、クラッチが締結状態にあることを意味する。エンジンコントローラ6は、例えば、クラッチセンサ(不図示)等の出力から上記伝達状態を判定することが可能である。エンジン1から駆動輪までが伝達状態である場合(ステップST101:YES)、ステップST102の処理に進む。エンジン1から駆動輪までが伝達状態でない場合(ステップST101:NO)、ステップST101の処理が繰り返される。
【0032】
ステップST102において、エンジンコントローラ6は、燃料カット中であるか否かを判定する。エンジンコントローラ6は、例えば、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込有無、エンジン回転数や車速等に基づいて燃料カット中であるか否かを判定することが可能である。燃料カット中である場合(ステップST102:YES)、車両が減速中であるとして、ステップST103の処理に進む。燃料カット中でない場合(ステップST102:NO)、ステップST102の処理が繰り返される。
【0033】
ステップST103において、エンジンコントローラ6は、回生を実施するように発電機コントローラ7に指令を発する。発電機コントローラ7は、その指令に応じて、発電機2の回生を実施する。そして、ステップST104の処理に進む。
【0034】
ステップST104において、エンジンコントローラ6(回生量制限部6b)は、要求トルクT1及び要求発電ベーストルクT2を算出する。要求トルクT1は、実際のエンジン回転数及び燃料カット復帰回転数に基づいて算出される。例えば、要求トルクT1は、エンジン回転数が燃料カット復帰エンジン回転数に近づくにつれて小さくなるように算出される。すなわち、要求トルクT1は、エンジン回転数と燃料カット復帰回転数との差がゼロに近づくほど小さい値に設定される。また、要求発電ベーストルクT2は、車速やエンジン回転数、バッテリ3の充電状態、バッテリ3の温度状態等に基づいて算出されるベーストルクである。そして、ステップST105の処理に進む。
【0035】
ステップST105において、エンジンコントローラ6は、要求発電トルクT3を設定する。具体的にエンジンコントローラ6は、要求トルクT1と要求発電ベーストルクT2とを比較し、小さい方のトルクを発電機の要求発電トルクT3に設定する。すなわち、エンジンコントローラ6は、要求トルクT1が要求発電ベーストルクT2より小さい場合(T1<T2)、要求トルクT1を要求発電トルクT3に設定する(T1=T3)。一方、エンジンコントローラ6は、要求発電ベーストルクT2が要求トルクT1より小さい場合(T2<T1)、要求発電ベーストルクT2を要求発電トルクT3に設定する(T2=T3)。ステップST105で設定される要求発電トルクT3は、発電機2の回生量(回生トルク)を表している。そして、ステップST106の処理に進む。
【0036】
ステップST106において、エンジンコントローラ6は、要求発電トルクT3を発電機コントローラ7に送信する。発電機コントローラ7は、受信した要求発電トルクT3に基づいて発電機2の回生を実施する。そして、ステップST107の処理に進む。
【0037】
ステップST107において、エンジンコントローラ6は、アクセルペダルの踏み込みがあるか否かを判定する。アクセルペダルの踏み込みがある場合(ステップST107:YES)、乗員に加速意思があるものとして、ステップST108の処理に進む。アクセルペダルの踏み込みがない場合(ステップST107:NO)、乗員に加速意思がないものとして、ステップST108を飛ばしてステップST109の処理に進む。
【0038】
ステップST108において、エンジンコントローラ6は、要求トルクT1及び要求発電ベーストルクT2の算出を中止し、要求発電トルクT3の送信も中止する。すなわち、上記のステップST104-ST106の処理を中止する。そして、ステップST109の処理に進む。
【0039】
ステップST109において、エンジンコントローラ6は、燃料噴射が再開されたか否か、すなわち燃料カット状態から通常の燃料噴射状態に移行(復帰)したか否かを判定する。エンジンコントローラ6は、例えば、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に達したか否かに基づいて燃料噴射の再開を判定することが可能である。燃料噴射が再開された場合(ステップST109:YES)、ステップST110の処理に進む。燃料噴射が再開されない場合(ステップST109:NO)、ステップST104の処理に戻る。
【0040】
ステップST110において、発電機コントローラ7は、発電機2の回生を終了する。そして、制御が終了する。
【0041】
ここで、
図3を参照して、本実施の形態に係る制御を適用した場合の各種パラメータの経時変化について説明する。
図3は、本実施の形態における各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸は上から順に車速、エンジン回転数、燃料カットのオンオフ、発電機の回生量を示している。なお、
図3に示すタイムチャートはあくまで一例を示すものであり、これに限らず、適宜変更が可能である。また、
図3において、エンジン回転数の実線部分は実際のエンジン回転数を示し、一点鎖線が燃料カット復帰回転数を示している。また、回生量の二点鎖線は後述する変形例を示している。
【0042】
図3に示すように、燃料カットが成立し、車速が徐々に減少している状態において、エンジン回転数が小さくなると共に発電機2の回生量も徐々に小さくなっている。これは、車速が減速するに従って実際のエンジン回転数が燃料カット復帰回転数に近づいているためである。なお、
図3では減速の途中で変速段が例えば2速から1速に切り替わるため、一時的にエンジン1から駆動輪までの伝達状態が解除される部分が存在する。このため、変速の前後でエンジン回転数及び回生量の増減が生じている。
【0043】
変速(シフトダウン)後、更に車速及びエンジン回転数が減少し、これに伴って回生量も徐々に小さくなっている。そして、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数に達するタイミングTにおいて、燃料カットがオフされる。すなわち、燃料カット状態から通常の燃料噴射に復帰する。このとき、発電機2の回生量がゼロとなり、回生が終了する。その後、エンジン回転数及び車速が徐々に増加する方向に転じる。このように、燃料カット状態から復帰するタイミング、すなわち回生が終了するタイミングにおいて、事前に回生量が減少されているため、そのときの減速ショックを抑制することが可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態において、回生量制限部6bは、エンジン回転数及び燃料カット復帰回転数に基づいて要求トルクT1を算出すると共に、車両の状態に基づいて発電機2の要求発電ベーストルクT2を算出し、要求トルクT1及び要求発電ベーストルクT2のいずれか一方に基づいて発電機2の回生量を制限する。より具体的に回生量制限部6bは、要求トルクT1と要求発電ベーストルクT2とを比較し、小さい方のトルクを発電機2の要求発電トルクT3に設定する。
【0045】
この構成によれば、燃料カット復帰回転数に基づいて要求トルクT1を算出したことで、燃料カット状態から復帰するタイミングに合わせて発電機2の回生量を低減することが可能である。このため、エンジンから駆動輪までが伝達状態である場合において、燃料カット状態から復帰して回生が終了した後における車両の減速ショックを抑制することが可能である。
【0046】
次に、
図3及び
図4を参照して、変形例について説明する。
図4は、変形例に係る制御フロー図である。
図4は、ステップST110の直前にステップST111を実施する点でのみ
図2のフローと相違する。このため、ステップST111についてのみ説明する。
図4に示すように、ステップST111において、エンジンコントローラ6は、発電機2の発電トルク(発電量)低下を所定時間継続させる。すなわち、エンジンコントローラ6は、燃料噴射を再開した後、発電機2の発電トルクを所定時間低下させる。例えば、
図3の二点鎖線に示すように、回生が終了したタイミングT以後も継続的に発電トルクを減少させながら、発電を実施する。この発電トルクの減少は、タイミングT以後、発電トルクがゼロになるまで継続されてもよく、その途中で中止されてもよい。
【0047】
このように、変形例においては、燃料噴射復帰に伴って回生が終了しても、燃料噴射復帰後は発電量を徐々に減らしているので、発電を終了した場合のトルク段差の発生を抑えることができ、ショックの発生を抑制できる。また、発電終了のタイミングTaと、燃料噴射復帰のタイミングT、すなわち減速ショックが生じ得るタイミングとをずらすことができ、同様にショックの発生を抑えることが可能である。
【0048】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0049】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、回生終了後における車両の減速ショックを抑制することができるという効果を有し、特に、車両に適用される発電機制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 :エンジン
2 :発電機
2a :電極
2b :電極
3 :バッテリ
3a :電極
3b :電極
4 :電気負荷
5 :ベルト
6 :エンジンコントローラ
6a :燃料カット制御部
6b :回生量制限部
7 :発電機コントローラ
10 :発電機制御システム
T1 :要求トルク
T2 :要求発電ベーストルク
T3 :要求発電トルク