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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220809BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220809BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20220809BHJP
   B65H 29/52 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/00 461
B65H29/70
B65H29/52
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018103324
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019207351
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】澤村 淳
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-178009(JP,A)
【文献】特開2018-017814(JP,A)
【文献】特開2006-133404(JP,A)
【文献】特開平09-114153(JP,A)
【文献】特開2012-091891(JP,A)
【文献】特開2011-073880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0135705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
5/04
5/08-5/20
5/24-5/38
29/52-29/70
G03G 13/20
15/00
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着像を保持する用紙を加熱および加圧するニップ部を通過させるよう搬送して未定着像を定着させる定着手段と、
前記定着手段のニップ部から排出される用紙の片面側から接触して用紙の搬送を案内する第1案内手段と、
前記定着手段のニップ部から排出される用紙の反対面側から接触して用紙の搬送を案内する回転可能な第2案内手段と、
を備え、
前記第1案内手段と前記第2案内手段との間に、前記ニップ部から排出される用紙を通過させる空間からなる搬送通路が設けられ、
前記第1案内手段は、案内部として、用紙の搬送方向上流側に設ける上流側案内部と前記上流側案内部の終点位置で前記上流側案内部よりも前記第2案内手段に接近する方向に屈曲して前記搬送通路を曲げるよう延びる形状からなる曲げ案内部を有し、
前記第2案内手段は、その少なくとも一部が、前記曲げ案内部の用紙の搬送方向における上流端から下流端までの間に含まれるよう対向するとともに前記曲げ案内部と用紙を通過させる空間をあけて対向するよう配置されており、
前記第1案内手段は、用紙の搬送方向上流側に配置される軸を支点として揺動可能に設けられており、用紙が前記曲げ案内部に接触して通過するときに前記第2案内手段から離れる方向に揺動し得るよう構成されている画像形成装置。
【請求項2】
前記第1案内手段の曲げ案内部は、用紙の搬送方向下流側にむけて直線状に延びる形状で構成されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1案内手段の曲げ案内部は、用紙の搬送方向下流側にむけて曲線状に延びる形状で構成されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1案内手段は、揺動する方向に付勢する付勢手段が設けられておらず、前記第2案内手段から離れる方向に揺動するときの方向が重力に逆らって前記曲げ案内部が持ち上げられる状態になる方向である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1案内手段は、前記曲げ案内部が前記第2案内手段に接近する方向に揺動するよう付勢する付勢手段が設けられており、前記第2案内手段から離れる方向に揺動するときの方向が重力に逆らわず前記曲げ案内部が押し下げられる方向である請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着手段のニップ部と前記第2案内手段の間に、前記ニップ部の出口側で用紙を剥離して第2案内手段にむけて案内する剥離案内手段を備えている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記剥離案内手段は、前記第2案内手段に達するまで延びる形状からなる案内部を有している請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定着手段から排出される用紙のカール(湾曲、反り等の変形)を矯正する機能を有した画像形成装置としては、例えば、以下の特許文献1~3に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、定着装置等から搬送される用紙に当接して回転する第1の搬送部と、第1の搬送部よりも低硬度の部位が第1の搬送部に圧接配置され、搬送される用紙に当接して回転する第2の搬送部と、第1の搬送部と第2の搬送部とが当接するニップ部の用紙搬送方向下流側に設けられ、カールした用紙をカール修正方向にむけてガイドするガイド部材とを備え、そのニップ部の用紙搬送方向における位置が、搬送されてガイド部材に当接する用紙の剛性力によって変化(移動)可能に構成された画像形成装置が記載されている。
また特許文献1には、第1の搬送部と第2の搬送部のいずれか一方は、自重によってガイド部材側に配置され、他方の搬送部の回転中心を軸中心としてガイド部材側とは反対側に移動可能に構成されることが示されている。
さらに特許文献1には、第1の搬送部と第2の搬送部のうち移動可能に構成された一方の搬送部は、2つの搬送部の圧接部分を通過する用紙がカールの発生しにくい厚紙の場合に、その圧接部分から排出される用紙のガイド部材に対する投入角度が、カールが生じやすい薄紙の場合の突入角度よりも小さくなるようにガイド部材側と反対側に移動することも示されている。
【0004】
特許文献2には、定着部から排出された用紙を搬送するための2本の駆動ローラとその駆動ローラに接する1本の従動ローラとを備え、搬送されてきた用紙のカールを駆動ローラと従動ローラとにおける押圧力とターン形状により矯正するカール矯正装置であって、その従動ローラを、用紙の搬送力を受けて駆動ローラの一方に対して接離可能に、駆動ローラの下方に揺動可能に支持させたカール補正装置を備える画像形成装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、定着装置と記録紙搬送経路の分岐手段との間の搬送経路にバックカール矯正機構を備え、そのバックカール矯正機構が、定着装置における定着ニップ部において記録紙にバックカールが生じる側に備える駆動ローラと記録紙を加熱する側に備える従動ローラとにより形成され、記録紙を押圧し補助搬送を行う補助ニップ部と、その駆動ローラと同じ側に設けられて記録紙を案内するガイド部材と、そのガイド部材を前記補助ニップ部を通過中の記録紙を所要押圧する第1の位置と記録紙から離れる第2の位置とに移動するガイド部材移動手段とを有している画像形成装置が記載されている。
また特許文献3には、ガイド部材移動手段は、記録紙が厚紙であるときはガイド部材を第2の位置に移動させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-168940号公報
【文献】特開2009-214975号公報
【文献】特開2016-173500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、定着手段のニップ部から排出される用紙に発生するカールを、用紙の坪量に応じて特別な動作を行うことなく矯正することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(A1)の画像形成装置は、
未定着像を保持する用紙を加熱および加圧するニップ部を通過させるよう搬送して未定着像を定着させる定着手段と、
前記定着手段のニップ部から排出される用紙の片面側から接触して用紙の搬送を案内する第1案内手段と、
前記定着手段のニップ部から排出される用紙の反対面側から接触して用紙の搬送を案内する回転可能な第2案内手段と、
を備え、
前記第1案内手段と前記第2案内手段との間に、前記ニップ部から排出される用紙を通過させる空間からなる搬送通路が設けられ、
前記第1案内手段は、案内部として、用紙の搬送方向上流側に設ける上流側案内部と前記上流側案内部の終点位置で前記上流側案内部よりも前記第2案内手段に接近する方向に屈曲して前記搬送通路を曲げるよう延びる形状からなる曲げ案内部を有し、
前記第2案内手段は、その少なくとも一部が、前記曲げ案内部の用紙の搬送方向における上流端から下流端までの間に含まれるよう対向するとともに前記曲げ案内部と用紙を通過させる空間をあけて対向するよう配置されており、
前記第1案内手段は、用紙の搬送方向上流側に配置される軸を支点として揺動可能に設けられており、用紙が前記曲げ案内部に接触して通過するときに前記第2案内手段から離れる方向に揺動し得るよう構成されているものである。
【0009】
また、この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記第1案内手段の曲げ案内部は、用紙の搬送方向下流側にむけて直線状に延びる形状で構成されているものである。
この発明(A3)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記第1案内手段の曲げ案内部は、用紙の搬送方向下流側にむけて曲線状に延びる形状で構成されているものである。
この発明(A4)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記第1案内手段は、揺動する方向に付勢する付勢手段が設けられておらず、前記第2案内手段から離れる方向に揺動するときの方向が重力に逆らって前記曲げ案内部が持ち上げられる状態になる方向であるものである。
この発明(A5)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記第1案内手段は、前記曲げ案内部が前記第2案内手段に接近する方向に揺動するよう付勢する付勢手段が設けられており、前記第2案内手段から離れる方向に揺動するときの方向が重力に逆らわず前記曲げ案内部が押し下げられる方向であるものである。
この発明(A6)の画像形成装置は、上記発明A1からA5のいずれかの画像形成装置において、前記定着手段のニップ部と前記第2案内手段の間に、前記ニップ部の出口側で用紙を剥離して第2案内手段にむけて案内する剥離案内手段を備えているものである。
この発明(A7)の画像形成装置は、上記発明A6の画像形成装置において、前記剥離案内手段は、前記第2案内手段に達するまで延びる形状からなる案内部を有しているものである
【発明の効果】
【0010】
上記発明A1の画像形成装置によれば、定着手段のニップ部から排出される用紙に発生するカールを、用紙の坪量に応じて特別な動作を行うことなく矯正することができる。また、この画像形成装置によれば、第1案内手段についてその曲げ案内部に用紙が接触して通過するときに第2案内手段から離れる方向に揺動し得るよう構成しない場合に比べて、第1案内手段の揺動する量に応じて曲げ案内部の用紙に対する曲げ作用の強さを調整することができる。
上記発明A2の画像形成装置によれば、第1案内手段が固定した状態で設けられている
場合には曲げ案内部の用紙に対する曲げ作用を安定して付与することができ、また、第1案内手段が第2案内手段から離れる方向に揺動し得るよう設けられている場合には第1案内手段を接触して搬送される用紙によって揺動させやすくなる
上記発明A3の画像形成装置によれば、第1案内手段が固定した状態で設けられている場合には曲げ案内部と第2案内手段の間を用紙が通過しやすくなり、また、第1案内手段が第2案内手段から離れる方向に揺動し得るよう設けられている場合には曲げ案内部と第2案内手段の間を用紙が通過しやすくなることと曲げ案内部の用紙に対する曲げ作用の強さの調整を行うことが可能になる。
上記発明A4の画像形成装置によれば、付勢手段を設けることなく、第1案内手段の揺動する量に応じて曲げ案内部の用紙に対する曲げ作用の強さを調整することができる
上記発明A5の画像形成装置によれば、定着手段のニップ部から用紙がほぼ水平方向に排出される場合でも、その用紙に発生するカールを簡素な構成で矯正することができる
上記発明A6の画像形成装置によれば、定着手段のニップ部から排出された直後の用紙のカールを矯正することができる。
上記発明A7の画像形成装置によれば、定着手段のニップ部から排出された直後の用紙を第2案内手段を経由させて第1案内手段の曲げ案内部に案内しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る画像形成装置の全体を示す概要図である。
図2図1の画像形成装置の一部(主に定着部およびカール矯正部)を示す概要図である。
図3図2のカール矯正部をその上方側から見たときの状態で示す概要図である。
図4図2のカール矯正部の構成を示す概要図である。
図5】(A)は図2の定着部を通過した普通紙が図2のカール矯正部に導入されたときの動作状態を示す概要図、(B)は(A)の普通紙がカール矯正部を通過するときの動作状態を示す概念図である。
図6】(A)は図2の定着部を通過した厚紙が図2のカール矯正部に導入されたときの動作状態を示す概要図、(B)は(A)の厚紙がカール矯正部を通過するときの動作状態を示す概要図である。
図7】直線状の曲げ案内部を有する第1案内手段の他の構成例を示す概要図である。
図8】曲線状の曲げ案内部を有する第1案内手段の他の構成例を示す概要図である。
図9】実施の形態2における定着部およびカール矯正部を示す概要図である。
図10】(A)は図9の定着部を通過した普通紙が図9のカール矯正部に導入されたときの動作状態を示す概要図、(B)は(A)の普通紙がカール矯正部を通過するときの動作状態を示す概要図である。
図11】(A)は図9の定着部を通過した厚紙が図9のカール矯正部に導入されたときの動作状態を示す概要図、(B)は(A)の厚紙がカール矯正部を通過するときの動作状態を示す概要図である。
図12】定着部およびカール矯正部の他の構成例を示す概要図である。
図13】定着部およびカール矯正部の更に別の構成例を示す概要図である。
図14】(A)は1型ニップ部の定着部とその定着部から排出されて反イメージカールが発生した用紙を例示する概要図、(B)は2型ニップ部の定着部とその定着部から排出されてイメージカールが発生した用紙を例示する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[実施の形態1]
図1図2は、実施の形態1に係る画像形成装置1を示すものである。図1はその画像形成装置1の全体の構成を示し、図2はその画像形成装置1の一部(主に定着部およびカール矯正部)の構成を示している。
各図面中に符号X,Y,Zで示す矢印は、各図面において想定した3次元空間の幅、高さおよび奥行の各方向を示す。また図1図2等においてX,Yの方向の矢印が交わる部分の丸印は、Zの方向が図面の垂直下方に向いていることを示している。
【0014】
<画像形成装置の全体の構成>
画像形成装置1は、例えば、外部から入力される画像情報に基づく画像を用紙9に形成するプリンタとして構成されている。
この画像形成装置1は、図1に示されるように、筐体10の内部空間に、画像情報に基づく未定着像を形成して用紙9に転写する像形成部2と、像形成部2に供給する用紙9を収容する給紙部4と、像形成部2で転写された未定着像を用紙9に定着させる定着部5と、定着部5から排出される用紙9に発生するカールを矯正するカール矯正部6等を備えている。図1等における一点鎖線は、筐体10内で用紙9が搬送されるときの主な搬送経路を示している。
【0015】
ここで、画像情報は、例えば、文字、図形、写真、模様などの画像に関係する情報である。筐体10は、各種の支持部材、外装材等で所要の形状に形成された構造物である。この筐体10は、その上面部の一部に、画像が形成された後に排出される用紙9を重ねた状態で収容する排出収容部12とその排出収容部12にむけて用紙9が排出される排紙口13が形成されている。
【0016】
像形成部2は、例えば、矢印で示す方向に回転する感光体の一例である感光ドラム21の周囲に、電子写真方式に関係する以下の機器を配置して構成される部分である。
その機器は、感光ドラム21の外周面(像形成可能面)を帯電させる帯電装置22と、感光ドラム21の外周面に画像情報に基づく露光をして静電潜像を形成する露光装置23と、感光ドラム21の外周面に形成された静電潜像を現像剤(トナー)により現像して顕像化する現像装置24と、感光ドラム21の外周面に形成された未定着の像(トナー像)を用紙9に転写させる転写装置25と、感光ドラム21の外周面に付着するトナー、紙粉等の不要物を除去して清掃する清掃装置26等の機器である。この像形成部2では、感光ドラム21と転写装置25が接触又は対向する部位が、用紙9を通過させて未定着像であるトナー像の転写を行う転写位置TPになる。
【0017】
給紙部4は、例えば、収容カセット41、供給装置43等の機器を配置して構成される部分である。この給紙部4は、筐体10の内部で像形成部2よりも下方側の位置に設けられている。
このうち収容カセット41は、複数枚の用紙9を所要の向きで積載して収容する積載板42を有し、筐体10の外部に引き出し操作が可能になるよう取り付けられた収容部材である。また、供給装置43は、収容カセット41の積載板42上に積載されている用紙9を、複数のロール等により上方のものから1枚ずつ繰り出す装置である。
【0018】
定着部5は、図1図2に示されるように、用紙9の導入口や排出口が設けられた図示しない筐体の内部空間に加熱用回転体51と加圧用回転体52等の機器を配置して構成される部分(定着手段)である。この定着部5は、筐体10の内部で像形成部2の転写位置TPよりも上方側の位置に設けられている。
このうち加熱用回転体51は、矢印で示す方向に回転するロール形態等からなる定着手段の一部であり、例えば、その内部に配置された加熱源53にて所要の温度に保たれるよう加熱される。また、加圧用回転体52は、加熱用回転体51に所要の加圧下で接触して従動回転するロール形態等からなる定着手段の一部である。
【0019】
この定着部5では、加熱用回転体51と加圧用回転体52が接触する部位が、未定着像のトナー像が転写された用紙9を定着処理のために加熱および加圧するニップ部(定着処理部)FNとして構成される。
また、この定着部5は、定着が終了した用紙9をニップ部FNからほぼ上方向(例えば重力の方向と反対側の方向(鉛直方向)であって重力の方向を挟んで±45°の範囲内に含まれる方向)に排出するようになっている。以下では、このような排出を行う形式の定着部5を「上排出式の定着部5A」ということもある。
【0020】
また、画像形成装置1においては、図1に示されるように、給紙部4と像形成部2の間に、給紙部4にある用紙9を像形成部2の転写位置TPまで供給するよう搬送する給紙搬送路Rt1が設けられている。給紙搬送路Rt1は、用紙9を挟持して搬送する一対の搬送ロール44,45や、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない案内部材等を配置して構成されている。
さらに、定着部5と排出収容部12の間には、定着終了後の用紙9を排出収容部12に排出して収容するよう搬送する排出搬送路Rt2が設けられている。排出搬送路Rt2は、筐体10の排出収容部12の一部を構成する壁面に形成された排紙口13の手前において用紙9を挟持して搬送する一対の排出ロール46や、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない案内部材等を配置して構成されている。また、排出搬送路Rt2は、定着部5から上方側に一対の排出ロール46が存在する方向に曲がって延びる搬送経路を形成する搬送路になっている。
【0021】
<画像形成動作>
そして、この画像形成装置1では、以下の基本的な画像形成動作が行われる。
【0022】
まず、画像形成装置1は、図示しない制御手段が外部接続機器等から画像形成動作を要求する指令を受けると、像形成部2、給紙部4、定着部5等における所要の部分が所定のタイミングで始動する。
【0023】
像形成部2では、図1に示されるように、感光ドラム21が矢印で示す方向に回転始動し、帯電装置22がその感光ドラム21の外周面を所要の電位にそれぞれ帯電させた後、露光装置23が画像処理された画像信号に対応した光(破線の矢印)を感光ドラム21の帯電後の外周面に照射して静電潜像を形成する。しかる後、現像装置24が、その静電潜像を所要の色(例えば黒色)からなる現像剤としてのトナーを供給して静電作用により付着させることにより現像する。これにより、感光ドラム21の外周面には、静電潜像に対応した所要の色のトナー像が形成される。
【0024】
一方、給紙部4では、像形成部2における像形成の動作タイミングに合わせて、収容カセット41に収容されている用紙9を供給装置43により像形成部2における転写位置TPにむけて供給する。この際、給紙部4では、供給装置43により収容カセット41から供給される用紙9が、給紙搬送路Rt1における搬送ロール44を経てレジロールである搬送ロール45まで送られた後、その搬送ロール45により所要のタイミングで転写位置TPに送られる。
【0025】
そして、像形成部2では、転写装置25が感光ドラム21に形成されたトナー像を転写位置TPにおいて給紙部4から供給された用紙9に転写させる。また、像形成部2では、清掃装置26が感光ドラム21の転写後等における外周面に付着する不要物を除去して清掃する。
【0026】
続いて、像形成部2でトナー像が転写された用紙9が、その転写位置TPから排出されて定着部5へ送られる。定着部5では、そのトナー像を保持する用紙9がニップ部FNに導入されて通過させられる。これにより、用紙9上のトナー像は、ニップ部FNにおいて加圧下で加熱されて溶融した後、用紙9に定着される。
【0027】
最後に、定着終了後の用紙9は、定着部5から排出された後、排出搬送路Rt2を経由して搬送されて排出収容部12に収容される。この際、定着が終了して定着部5から排出される用紙9は、排出搬送路Rt2を通して排出ロール46まで送られた後、その排出ロール46により排紙口13を通して筐体10の外部に送り出されることで、排出収容部12に落下するようにして収容される。
【0028】
以上の一連の動作が行われることにより、1枚の用紙9の片面に対して所要の色の画像が形成され、基本的な画像形成動作が終了する。
また、この画像形成装置1では、複数枚の用紙9に対する画像形成動作を要求する指令が出された場合には、上記した一連の動作がその枚数分だけ同様に繰り返される。
【0029】
<定着時に発生するカール>
ところで、このような画像形成装置1においては、図14(A)に例示されるように、定着部(定着手段)5のニップ部FNから排出される用紙9に、未定着像(トナー像)MTが定着処理された直後の画像TIが存在する表面9aとは反対側の裏面9bの側に反るように湾曲して変形するカール(例えば「反イメージカール」とも称される)が発生することがある。
【0030】
このときのカールは、例えば、定着部5として加圧用回転体52が加熱用回転体51の表面に食い込んだニップ部FN1が形成される定着手段を適用する場合であって、用紙9として普通紙を使用する場合に、発生しやすい傾向にある。
【0031】
実施の形態1における定着部5は、図2図14(A)に示されるように、金属等からなるロール基体51aの外周面に少なくとも弾性層51bを設けた構成の加熱用回転体51と、金属等からなるロール基体52aに離型層52cを設けた構成の加圧用回転体52とを用いて、その加熱用回転体51の弾性層51bに加圧用回転体52が食い込んで窪んだ形状からなるニップ部FN1が形成されたもの(例えば1型ニップ部の定着部5)を適用している。
この定着部5は、上排出式の定着部5Aであってかつ1型ニップ部の定着部5であるため、以下では1型ニップ部の上排出式の定着部5A1と称することもある。また、ここでいう普通紙は、例えば薄紙や厚紙でない用紙であり、例えば坪量が60~105g/m2の範囲の用紙である。
なお、この1型ニップ部の上排出式定着部5A1に用紙9として厚紙(例えば坪量が106g/m2以上の用紙)を使用して定着を行った場合、その厚紙には上記反イメージカールが発生しない。この場合、その厚紙には、定着された直後の未定着像が存在する側の表面の側に湾曲するように変形するカール(例えば「イメージカール」とも称される)が発生することがある。
【0032】
ちなみに、定着部5として、図14(B)に例示するように、加熱用回転体51が加圧用回転体52の表面に食い込んだニップ部FN2が形成される定着手段を適用する場合であって、用紙9として普通紙を使用する場合においても、その普通紙の用紙9に上記イメージカールが発生する傾向がある。
このときの定着部5は、図12図14(B)に示されるように、金属等からなるロール基体51aの外周面に離型層51cを設けた構成の加熱用回転体51と、金属等からなるロール基体52aに弾性層52bを設けた構成の加圧用回転体52とを用い、その加熱用回転体51が加圧用回転体52の弾性層52bに食い込んで窪んだ形状のニップ部FN2が形成されたもの(例えば2型ニップ部の定着部5)を適用している。この定着部5は、上排出式の定着部5Aであってかつ2型ニップ部の定着部5であるため、以下では2型ニップ部の上排出式の定着部5A2と称することもある。
また、この2型ニップ部の上排出式定着部5A2に用紙9として厚紙を使用して定着を行った場合、その厚紙には、普通紙の場合ほど湾曲する程度が大きくないものの、上記イメージカールが発生することがある。
【0033】
<画像形成装置(カール矯正部)の詳細な構成>
そこで、この画像形成装置1においては、以下の構成からなるカール矯正部(矯正装置)6を備えている。
【0034】
カール矯正部6は、図2から図4等に示されるように、定着部5のニップ部FNから排出される用紙9の片面9bの側から接触して用紙9の搬送を案内する第1案内手段61と、定着部5のニップ部FNから排出される用紙9の反対面9aの側から接触して用紙9の搬送を案内する回転可能な第2案内手段65とを備えている。
ここで、用紙9の片面9bとは、矯正すべきカールが曲がる側になる表面をさす。また、用紙9の反対面9aとは、片面9bの反対側の表面であり、カールを矯正するために曲げられる側になる表面をさす。また、第1案内手段61は、定着部5から見た場合、ニップ部FNを境にして加圧用回転体52のある側に主に存在するよう配置されている。一方の第2案内手段65は、同じく、ニップ部FNを境にして加熱用回転体51のある側に存在するよう配置されている。
【0035】
また、カール矯正部6は、第1案内手段61について、図2図4に示されるように、用紙9を案内する部位である案内部として、用紙9の搬送方向Cの上流側に形成される上流側案内部62と、上流側案内部62の終点位置62eで上流側案内部62よりも用紙9の搬送通路(一点鎖線を含む空間)に入り込む方向に屈曲して延びる形状からなる曲げ案内部63を有する案内手段として構成している。
しかも、カール矯正部6は、第2案内手段65について、図2図4に示されるように、その少なくとも一部が、曲げ案内部63の用紙9の搬送方向Cにおける上流端63aから下流端63bまでの間に含まれるよう対向するとともに曲げ案内部63と用紙9を通過させる空間Sをあけて対向するよう配置している。
【0036】
上記第1案内手段61は、図2図4に示されるように、用紙9の搬送方向Cの上流側に配置される軸64を支点として揺動可能に設けられており、用紙9が曲げ案内部63に接触して通過するときに二点鎖線で例示するよう第2案内手段65から離れる方向D1に揺動することができるよう構成されている。
また、このときの第1案内手段61は、第1案内手段61が揺動する方向D1,D2に付勢するための付勢手段を設けておらず、第2案内手段65から離れる方向D1に揺動するときの方向が重力に逆らって曲げ案内部63が持ち上げられる状態になる方向になるよう設けられている。
この場合、軸64は、第1案内手段61のうち上流側案内部62を挟んで曲げ案内部63とは反対側の端部に存在するよう設けられている。また、軸64は、定着部5の加圧用回転体52に接近した位置に配置されているとともに、図3に示されるように定着部5のニップ部FNの長手方向にほぼ沿った方向に延びる状態で配置されている。
【0037】
さらに、第1案内手段61は、その上流側案内部62と曲げ案内部63がいずれも用紙9の搬送方向Cの下流側にむけて直線状に延びる形状で構成されている。この場合、直線状の曲げ案内部63は、直線状の上流側案内部62(の延長線)に対して用紙9の搬送経路側に所要の角度で屈曲する関係になるよう形成されている。
また、第1案内手段61は、少なくとも定着終了後の用紙9が接触して通過しないときに、次の状態に保たれるよう配置されている。
すなわち、第1案内手段61は、その直線状の上流側案内部62が、定着部5のニップ部FNから排出される用紙9を搬送経路として設定している方向にほぼ沿う状態になるよう配置されている。しかも、第1案内手段61は、その直線状の曲げ案内部63が、上流側案内部62の終点位置62eから用紙9の搬送通路に入り込む方向に屈曲した案内部であることから上流側案内部62よりも上記搬送経路として設定している方向に対して大きな角度で交差する状態になるよう配置されている。実施の形態1において搬送経路として設定している方向とは、例えば、図2中に一点鎖線で例示するよう斜め右上に配置されている一対の排出ロール46に向かうようニップ部FNから斜め右側で折れるように曲がって進む方向である。このような第1案内手段61は、その用紙9を案内する部位(面など)が全体として用紙9の搬送経路に対して凹部となるように窪んでいる案内手段であるともいえる。
このカール矯正部6では、第1案内手段61における上流側案内部62および曲げ案内部63が少なくとも定着終了後の用紙9が接触して通過しないときに上記した状態に保たれるよう、第1案内手段61の一部が第1位置決め規制手段66Aに接触して停止した状態に保たれるよう構成されている。
【0038】
一方、第2案内手段65は、定着終了後に搬送される用紙9が接触して通過することにより回転する円柱又は円筒状の回転部65aとその回転を支える軸部65bを有する部材で構成されている。この第2案内手段65は、その軸部65bが、例えば図示しない支持部材や後述する剥離案内手段(67)の一部に回転可能に取り付けられる。
【0039】
第2案内手段65は、その回転部65aの全部又は一部が、図4に示されるように、第1案内手段61の直線状の曲げ案内部63に対してその上流端63aと下流端63bをそれぞれ通過する垂直線L1,L2で挟まれる領域に含まれるように配置される。このような配置は、回転部65aの全部又は一部が、曲げ案内部63の上流端63aよりも用紙9の搬送方向Cの下流側に存在し、その下流端63bよりも用紙9の搬送方向Cの上流側に存在する配置であるともいえる。
この第2案内手段65は、用紙9を第1案内手段61の曲げ案内部63に接触させるよう誘導させる案内手段として機能させる観点からすると、その回転部65aが上記曲げ案内部63における上流端63aを通過する垂直線L1よりも用紙9の搬送方向Cの下流側に存在するよう配置することが好ましい。実施の形態1における第2案内手段65は、その回転部65aの全部が、上記垂直線L1,L2で挟まれる領域に含まれるように配置されている。
また、第2案内手段65は、その回転部65aが第1案内手段61の曲げ案内部63との間に用紙9を通過させる空間Sをあけた状態で配置される。このときの空間Sは、曲げ案内部63に接触して通過するときの用紙9が曲げ案内部63による曲げて案内する作用を受けながら詰まることなく通過することが可能になる程度の大きさ(間隔)に設定される。
【0040】
特に実施の形態1におけるカール矯正部6は、用紙9の種類に応じて第1案内手段61の揺動の有無および量が異なるよう設定されている。
すなわち、用紙9として普通紙(9A)や薄紙が第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過するときには、第1案内手段61が第2案内手段65から離れる方向D1に揺動しないか又は少しだけ揺動するように設定されている。また、用紙9として厚紙(9B)が曲げ案内部63に接触して通過するときには、第1案内手段61が第2案内手段65から離れる方向D1にその用紙9の剛性力等の強弱に応じた量だけ揺動するように設定されている。
【0041】
また、実施の形態1における第1案内手段61については、図3に示されるように、定着部5のニップ部FNの長手方向(又は加圧用回転体52の軸方向)において複数に分割した案内手段61を、軸64に所定の間隔をあけて取り付けた形態を採用している。第1案内手段61については、この他にも例えば、ニップ部FNの長手方向に連続した1つの(例えば板状の)案内手段61を軸64に取り付けた形態にしてもよい。
また、実施の形態1における第2案内手段65については、上記分割した第1案内手段61に対応してニップ部FNの長手方向において複数に分割した形態の案内手段65(回転部65a)を採用している。第2案内手段65についても、この他にも例えば、ニップ部FNの長手方向に連続した1つの案内手段65(回転部65a)からなる形態にしてもよい。
【0042】
また、このカール矯正部6では、第1案内手段61(実際には曲げ案内部63)が第2案内手段65から離れる方向D1に揺動するときの最大の許容位置で停止した状態に保たれるよう、第1案内手段61の一部が第2位置決め規制手段66Bに接触して停止した状態になるよう構成されている。
【0043】
さらに、このカール矯正部6は、図2から図4に示されるように、定着部5のニップ部FNと第2案内手段65の間に、ニップ部FNの出口側で用紙9を加熱用回転体51から剥離して第2案内手段65にむけて案内する剥離案内手段67を備えている。剥離案内手段67は、第2案内手段65に達するまで連続して延びる形状からなる案内部67aを有している。
この剥離案内手段67としては、例えば、図3に示されるように、その案内部67aをニップ部FNの長手方向に沿って延びる板状の部材で構成したうえで、その板状の案内部67aをその背面側から支持するとともに上記分割した形態の第2案内手段65の両脇に存在させるよう配置される複数の支持部67bに取り付けて固定した形態(バッフル型)のものを採用している。また、案内部67aのうち用紙9の搬送方向C上流側になる端部67cは、加熱用回転体51のニップ部FNを通過した外周面部分に接近した状態になるよう配置される。
【0044】
この他、カール矯正部6は、定着部5とは別体のものとして扱っているが、定着部5の一部として組み込んだものとして構成してもよい。
また、カール矯正部6における第1案内手段61、第2案内手段65および剥離案内手段67は、図2等に示されるように、第1案内手段61および第2案内手段65と一対の排出ロール46の間に配置される用紙9の排出案内手段47,48とを併せることにより、上記排出搬送路Rt2の搬送通路(空間)を構成している。
【0045】
上記排出案内手段47,48は、専用の案内部材や、他の支持部材の一部を案内部として形成して兼用するものにより構成される。
このうち排出案内手段47は、カール矯正部6における第2案内手段65と一対の排出ロール46の一方(例えば従動ロール46b)との間に下方側案内部47aを存在させた状態で配置される。
また、排出案内手段48は、カール矯正部6における第1案内手段61と一対の排出ロール46の他方(例えば駆動ロール46a)との間に上方側案内部48aを存在させた状態で配置される。また、排出案内手段48は、カール矯正部6における第1案内手段61との間において、第1案内手段61が第2案内手段65から離れる方向D1に最大に揺動して第2位置決め規制手段66Bに接触して停止したときに、その揺動した第1案内手段61を通過して搬送される用紙9を一対の排出ロール46側にむけて案内することが可能な関係になるよう配置されている。
【0046】
<カール矯正部の動作>
以下、このカール矯正部6の動作について説明する。
【0047】
はじめに、カール矯正部6は、定着後の用紙9が通過していないときは、図2図4に実線で示されるように、第1案内手段61が第1位置決め規制手段66Aに接触して停止させられた状態に保たれている。
【0048】
つまり、このときの第1案内手段61は、軸64を支点にして第2案内手段65に接近する方向D1に自重により揺動しようとする状態にあるが、この揺動する動きは第1案内手段61の一部が第1位置決め規制手段66Aに接触することで制止される。
また、このときの第1案内手段61は、図2図4等に示されるように、その上流側案内部62が、定着部5のニップ部FNから排出される用紙9を一対の排出ロール46が存在する側に傾くよう斜め上方の方向に曲げて案内することが可能な状態になる。
さらに、このときの第1案内手段61は、その曲げ案内部63が、排出搬送路Rt2における搬送通路の内側に入り込んで第2案内手段65に最も接近した状態になって、その用紙9を上流側案内部62よりも更に屈曲させるように曲げて一対の排出ロール46にむけて搬送するようほぼ水平の方向に案内することが可能な状態になる。
【0049】
次に、用紙9として普通紙9Aを使用した場合におけるカール矯正部6の動作について説明する。
【0050】
この場合、普通紙9Aは、定着に際して、図5(A)に例示されるような状態で定着部5のニップ部FNから排出されてカール矯正部6に進む。
このとき定着部5は、上記したように図14(A)に例示した1型ニップ部の上排出式定着部5A1である。このため、未定着像が転写された普通紙9Aは、その定着部5A1において矢印で示す方向に回転する加熱用回転体51とその加熱用回転体51の表面(弾性層51b)に食い込で圧接する加圧用回転体52との間におけるニップ部FN(FN1)を通過し、しかる後、加熱用回転体51から自然に剥離されるか又は剥離案内手段67の剥離作用により剥離されてほぼ上方向に排出される。
【0051】
この定着部5A1のニップ部FN1から排出された普通紙9Aは、図5(A)に例示するように、未定着像が転写された表面9aの反対面である裏面9bの側に反るように湾曲して変形する反イメージカール91が発生した状態で搬出されることがある。
続いて、反イメージカールが発生した普通紙9Aは、定着部5A1のニップ部FN1における搬送力を受けて搬送され続け、例えば、カール矯正部6における剥離案内手段67の案内部67aに一時的に案内されてカール矯正部6における第2案内手段65に達するように移動した後、その第2案内手段65を通過して第1案内手段61の曲げ案内部63に達するよう移動する。
このときの普通紙9Aは、上流側案内部62に接触して案内されることにより曲げ案内部63に達するよう移動するか、又はその曲げ案内部63に直接達するよう移動する。
【0052】
そして、カール矯正部6では、図5(A)に二点鎖線で例示したりあるいは図5(B)に例示されるように、反イメージカールが発生した普通紙9Aが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する際、その普通紙9Aを曲げ案内部63が案内する角度にほぼ沿ってその表面9a側に反らせる方向に曲げた状態にして移動させる。図5(B)に符号93で示す部分は、普通紙9Aのうち曲げ案内部63により曲げられた状態にさせられて移動しているときの部分である。
【0053】
このとき、第1案内手段61は、普通紙9Aが接触して通過しても、その普通紙9Aにより押し上げられることなく、その自重が勝って第2案内手段65から離れる方向D1に揺動しない状態におかれる。ただし、第1案内手段61は、例えば普通紙9Aの剛性力が相対的に強い等の条件の違いによっては、図5(B)に二点鎖線で例示されるように第2案内手段65から離れる方向D1に少し揺動する場合もある。
【0054】
続いて、このカール矯正部6における第1案内手段61の曲げ案内部63を通過した普通紙9Aは、図5(B)に矢付き二点鎖線で例示するように、排出案内手段47,48で形成される搬送通路に送られる。
しかる後、普通紙9Aは、その排出案内手段47,48との間の搬送通路を単に通過するか又は案内されながら通過した後、矢印で示す方向に回転する一対の排出ロール46(駆動排出ロール46aと従動排出ロール46bが圧接するニップ部)に達するよう搬送される。
【0055】
この際、普通紙9Aは、その前方部分が一対の排出ロール46に挟持されて搬送される段階になっても、カール矯正部6を通過している後方部分は第1案内手段61の曲げ案内部63で曲げられた状態で移動する。これは、定着部5のニップ部FNにおける加熱用回転体51および加圧用回転体52による用紙9(9A)に対する搬送速度が一対の排出ロール46の搬送速度よりもわずかに速い値に設定されることが多いため、その普通紙9Aの排出ロール46で送り出される量よりも定着部5のニップ部FNから送り出される量が相対的に多くなるよう搬送されるためである。
また、普通紙9Aは、その搬送時の後端が定着部5のニップ部FNを通過した段階でも、その後端部分は、カール矯正部6における第1案内手段61の曲げ案内部63と第2案内手段65の間の空間Sを通過する過程でその表面9aの側に反る方向にある程度曲げられた状態にされる。
【0056】
以上のように、カール矯正部6は、定着部5のニップ部FNから排出されて反イメージカールが発生する普通紙9Aに対して、第1案内手段61の曲げ案内部63を通過させる際に、その普通紙9Aをその表面9aの側に反るよう一時的に曲げ案内部63によって湾曲させた状態にして通過させる。これにより、普通紙9Aに発生する反イメージカールは、ほぼ消失されるように矯正される。
このときのカール矯正部6による反イメージカールの矯正は、カール矯正部6における第1案内手段61の曲げ案内部63と第2案内手段65によって主に行われるので、用紙9の坪量に応じて例えばカール矯正部6の少なくとも一部を駆動手段により制御する等の特別な動作を要することなく、比較的簡素な構成で行われることになる。
また、画像形成装置1においては、普通紙9Aは、定着部5のニップ部FNから排出された際に反イメージカールが発生した場合でも、カール矯正部6を通過することにより反イメージカールが矯正されてほぼ平らな状態にされた後、最終的に排出収容部12にほぼ正常な状態で収容される。
【0057】
次に、用紙9として厚紙9Bを使用した場合におけるカール矯正部6の動作について説明する。
【0058】
この場合、厚紙9Bは、定着に際して、図6(A)に例示されるような状態で定着部5のニップ部FNから排出されてカール矯正部6に進む。
このとき定着部5は、上記したように1型ニップ部の上排出式定着部5A1である。このため、未定着像が転写された厚紙9Bは、その定着部5A1におけるニップ部FN1を通過した後、加熱用回転体51から自然に剥離されるか又は剥離案内手段67の剥離作用により剥離されてほぼ上方向に排出される。
【0059】
この定着部5A1におけるニップ部FN1から排出された厚紙9Bは、そのニップ部FN1を通過するにもかかわらず、図6(A)に例示するように反イメージカール(91)が発生しない状態で排出される。ただし、厚紙9Bは、その種類の違い等によっては、その未定着像が転写された表面9aの側に反るように湾曲して変形するイメージカール92が少し発生した状態で搬出されることがある。
続いて、反イメージカールが発生しない厚紙9Bは、定着部5のニップ部FNにおける搬送力を受けて搬送され続け、例えば、カール矯正部6における剥離案内手段67の案内部67aに案内されることなくカール矯正部6における第2案内手段65に達するように移動した後、その第2案内手段65に誘導されて第1案内手段61の曲げ案内部63に達するよう移動する。また、このときの厚紙9Bは、その先端部のニップ部FNから排出されるときの向きの違いにより、第1案内手段61の上流側案内部62に接触して案内された後に曲げ案内部63に達するよう移動することもある。
【0060】
そして、カール矯正部6では、図6(B)に例示されるように、反イメージカールが発生しない厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する際、その厚紙9Bによって曲げ案内部63が押されて第1案内手段61の全体が軸64を支点にして第2案内手段65から離れる方向D1に揺動し、その曲げ案内部63が上方に持ち上げられた状態になる。
これにより、カール矯正部6は、反イメージカールが発生しない厚紙9Bを第1案内手段61の曲げ案内部63によってその表面9aの側に反らせる方向に曲げた状態にすることなく、その厚紙9Bが有する姿勢のままで移動させるようになる。
【0061】
この際、第1案内手段61は、上記離れる方向D1に揺動すると、図6(B)に示されるように、その一部が最終的に第2位置決め規制手段66Bに接触して停止し、それ以上は揺動できない状態におかれる。このときの第1案内手段61は、図6(B)に例示されるように、その曲げ案内部63が排出案内手段48の上方側案内部48aよりも一段低いが、その上方側案内部48aとほぼ連続した案内部を形成する状態になる。
また、このときのカール矯正部6は、その曲げ案内部63と第2案内手段65との間の空間Sが最大の空間Smaxになる。ただし、このときの第1案内手段61が離れる方向D1に揺動する量は、厚紙9Bの剛性力が相対的に弱い等の条件の違いによって、第2位置決め規制手段66Bに到達しない程度の揺動の量に止まる場合もある。
【0062】
続いて、このカール矯正部6における第1案内手段61の曲げ案内部63を通過した厚紙9Bは、図6(B)に矢付き二点鎖線で例示するように、排出案内手段47,48で形成される搬送通路に送られる。
しかる後、厚紙9Bは、その排出案内手段47,48との間の搬送通路を主に排出案内手段47の上方側案内部48aによって案内されながら通過した後、矢印で示す方向に回転する一対の排出ロール46(駆動排出ロール46aと従動排出ロール46bが圧接するニップ部)に達するよう搬送される。
【0063】
この際、厚紙9Bは、その前方部分が主に排出案内手段47の上方側案内部48aによって案内されながら一対の排出ロール46にむけて移動するが、その排出案内手段47の上方側案内部48aを通過するときに表面9aの側に反る方向に曲げられた状態にされることが殆どない。これは、定着部5のニップ部FNにおける加熱用回転体51および加圧用回転体52による用紙9(9B)に対する搬送速度が一対の排出ロール46の搬送速度よりもわずかに速い値に設定されることが多いため、その厚紙9Bの排出ロール46で送り出される量よりも定着部5のニップ部FNから送り出される量が相対的に多くなるよう搬送されて例えば第2案内手段65から離れるような軌跡を描いて移動するためである。
また、厚紙9Bは、その搬送時の後端が定着部5のニップ部FNを通過した段階でも、その後端部分は、カール矯正部6における第1案内手段61の曲げ案内部63と第2案内手段65の間の空間Sを通過する過程でその表面9aの側に反る方向に曲げられることが殆どない。
【0064】
最後に、カール矯正部6は、厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63を通過し終わると、第1案内手段61は自重により軸64を支点にして第2案内手段65に接近する方向D1に揺動し、厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する前の状態(図6(A))に自然に戻る。
【0065】
以上のように、カール矯正部6は、定着部5のニップ部FNから排出されて反イメージカールが発生しない厚紙9Bに対しては、その厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する際に、その厚紙9Bの押す力を借りて第1案内手段61が第2案内手段65から離れる方向D1に揺動した状態になる。これにより、カール矯正部6は、その厚紙9Bを第1案内手段61の曲げ案内部63によって表面9aの側に反るよう一時的に湾曲させた状態にほぼさせることなく通過させる。
この結果、カール矯正部6は、厚紙9Bがカール矯正部6を通過することがあっても、その厚紙9Bに反イメージカールやイメージカールを新たに発生させてしまうおそれがない。
また、厚紙9Bは、仮に図6(A)に符号92で示す部分のように定着部5のニップ部FNから排出された際にイメージカールが発生する場合でも、カール矯正部6における空間Sや排出案内手段47,48との間の搬送通路を通過する際に表面9aの側に反るよう一時的に湾曲させた状態にされることがない。このため、カール矯正部6は、イメージカールが発生した厚紙9Bが通過することがあっても、そのイメージカールの発生を助長してしまうおそれもない。
【0066】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1におけるカール矯正部6は、その第1案内手段61として、軸64に対して揺動させず位置が固定された状態で設ける固定型の第1案内手段61を適用して構成してもよい。
【0067】
この固定型の第1案内手段61を適用した場合は、実施の形態1における揺動型の第1案内手段61に比べて、位置決め規制手段66A,66Bなどを設ける必要もなく、定着部5のニップ部FNから排出される用紙9(普通紙9A)に発生する非イメージカールがより簡素な構成で矯正される。
一方、固定型の第1案内手段61を適用した場合は、その第1案内手段61と第2案内手段65の間の空間Sを厚紙9Bでも良好に通過させる等の観点から、例えばその空間Sの大きさや曲げ案内部63の形状等についてより一層適切に設定することが望ましい。
【0068】
また、実施の形態1におけるカール矯正部6は、その第1案内手段61として、例えば、図7図8に示すように一部変形した第1案内手段61を適用して構成してもよい。
【0069】
図7(A)に示す第1案内手段61は、直線状の曲げ案内部63について、直線状の上流側案内部62(の延長線)に対して用紙9の搬送経路側に屈曲する角度αが実施の形態1における曲げ案内部63(図4など)よりも大きい角度になるよう変更して構成したものである。
この変形例の第1案内手段61を適用した場合は、例えば、その曲げ案内部63による普通紙9Aに対する曲げる度合いが実施の形態1における曲げ案内部63の場合に比べて強くなり、また、その曲げ案内部63に厚紙9Bが接触して通過する際に曲げ案内部63を実施の形態1における曲げ案内部63の場合に比べて持ち上げやすくなる。
【0070】
図7(B)に示す第1案内手段61は、上流側案内部62について用紙9の搬送経路側に凸になるよう湾曲した曲線状に延びる上流側案内部62Bに変更し、かつ、直線状の曲げ案内部63について上流端63aよりも下流端63bが水平方向において上方に位置するよう角度を変更して構成したものである。
この変形例の第1案内手段61を適用した場合は、実施の形態1における第1案内手段61の場合に比べて、例えば、用紙9が第1案内手段61を通過する際に必要以上に湾曲させられて(つまり屈曲するような状態で曲げられて)紙詰まりを起こすことを抑制できる等の利点がある。
【0071】
図8(A)に示す第1案内手段61は、直線状の曲げ案内部63について、第2案内手段65から離れる方向に窪むよう湾曲した曲線状に延びる曲線状の曲げ案内部63Bに変更して構成したものである。
この変形例の第1案内手段61を適用した場合は、その第1案内手段61を実施の形態1における第1案内手段61のように揺動する状態で設けたときに、例えば、その曲線状の曲げ案内部63Bと第2案内手段65の間の空間Sを用紙9が通過しやすくなる。また、その変形例の第1案内手段61を固定して設けたときには、例えば、その曲線状の曲げ案内部63Bと第2案内手段65の間の空間Sを用紙9が(特に厚紙9Bであっても)通過しやすくなり、しかも、その曲げ案内部63Bの用紙9に対する曲げ作用の強さの調整を行うことが可能になる。
【0072】
図8(B)に示す第1案内手段61は、上流側案内部62について図7(B)に例示する曲線状に延びる上流側案内部62Bに変更し、かつ、曲げ案内部63について図8(A)に例示する曲線状の曲げ案内部63Bに変更して構成したものである。
この変形例の第1案内手段61を適用した場合は、その第1案内手段61を実施の形態1における第1案内手段61のように揺動する状態で設けたときに、例えば、用紙9が変形例の第1案内手段61を通過する際に滑らかに湾曲させられて、紙詰まりを起こしにくくなる等の利点がある。
【0073】
[実施の形態2]
図9は、実施の形態2に係る画像形成装置の一部(主に定着部およびカール矯正部)を示している。
【0074】
実施の形態2に係る画像形成装置は、定着部5として、図9に示されるように、定着が終了した用紙9をニップ部FNからほぼ横方向(例えば画像形成装置が設置される床面等における水平の方向を挟んで±45°の範囲内に含まれる方向)に排出する定着部5を適用している。以下では、このような排出を行う形式の定着部5を「横排出式の定着部5B」ということもある。
【0075】
また、実施の形態2に係る画像形成装置は、横排出式の定着部5Bを適用する関係から、像形成部2として転写位置TPから転写後の用紙9をほぼ横方向に排出する形式の像作像部が適用される。なお、実施の形態2に係る画像形成装置は、この形式の像作像部を適用する代わりに、像形成部2から排出される転写後の用紙9を定着部5Bに対してほぼ横方向から導入するよう搬送する搬送経路を適用した構成の画像形成装置であってもよい。
【0076】
さらに、実施の形態2における横排出式の定着部5Bは、実施の形態1における定着部5と同様に、図14(A)に例示した1型ニップ部の定着部でもある。このため、以下では、この横排出式の定着部5Bについて、1型ニップ部の横排出式の定着部5B1ということもある。
【0077】
次に、実施の形態2に係る画像形成装置は、カール矯正部6として、以下の構成からなるカール矯正部6Bを適用している。
【0078】
まず、カール矯正部6Bは、実施の形態1(その変形例を含む)におけるカール矯正部6とほぼ同様に、第1案内手段61と、第2案内手段65と、剥離案内手段67とを備えて構成されており、特にその第1案内手段61が第2案内手段65に接近する方向D2に揺動するように付勢する付勢手段69を設けている点で、実施の形態1におけるカール矯正部6と相違している。
【0079】
このカール矯正部6Bにおける第1案内手段61は、図9に示されるように、横排出式の定着部5Bのニップ部FN(FN1)から排出される用紙9の片面9bの側から接触して用紙9の搬送を案内するものであって、案内部として用紙9の搬送方向Cの下流側にむけて直線状に延びる直線状の上流側案内部62とこの上流側案内部62の終点位置62eで用紙9の搬送通路に入り込む方向に屈曲して用紙9の搬送方向Cの下流側にむけて直線状に延びる直線状の曲げ案内部63とを備えている。
また、上記第1案内手段61は、図9に示されるように、用紙9の搬送方向Cの上流側に(加圧用回転体52に接近した位置に)配置される軸64を支点として揺動可能に設けられており、用紙9が曲げ案内部63に接触して通過するときに二点鎖線で例示するよう第2案内手段65から離れる方向D1に揺動することができるよう構成されている。
【0080】
一方、カール矯正部6Bにおける第2案内手段65は、実施の形態1におけるカール矯正部6の第2案内手段65とほぼ同様に、その少なくとも一部が、第1案内手段61における曲げ案内部63の用紙9の搬送方向Cにおける上流端63aから下流端63bまでの間に含まれるよう対向するとともに曲げ案内部63と用紙9を通過させる空間Sをあけて対向するよう配置している。
【0081】
また、このカール矯正部6Bにおける第1案内手段61は、少なくとも定着終了後の用紙9が接触して通過しないときに、その直線状の上流側案内部62が定着部5のニップ部FNから排出される用紙9を搬送経路として設定している方向にほぼ沿う状態になり、しかも、その直線状の曲げ案内部63が上流側案内部62よりも上記搬送経路として設定している方向に対して大きな角度で交差する状態になるよう配置されている。実施の形態2において搬送経路として設定している方向とは、例えば、図9中に一点鎖線で例示するよう斜め右上に配置されている一対の排出ロール46に向かうようニップ部FN1から斜め右上に上昇するよう曲がって進む方向である。
【0082】
このカール矯正部6Bにおいても、実施の形態1におけるカール矯正部6の場合と同様に、第1案内手段61における上流側案内部62および曲げ案内部63が少なくとも定着終了後の用紙9が接触して通過しないときに上記した状態に保たれるよう、第1案内手段61の一部が第1位置決め規制手段66Aに接触して停止した状態に保たれるよう構成されている。
また、このカール矯正部6Bでは、図9に示されるように、第1案内手段61の一部が第1位置決め規制手段66Aに接触して停止することにより上記した状態に保たれるよう、第1案内手段61が第2案内手段65に接近する方向D2に揺動するように付勢する付勢手段69を設けている。
【0083】
付勢手段69としては、例えば、図9に示されるように、一端が支持フレームに固定されて他端が第1案内手段61の一部に押し当てられる押圧用のコイルばねが適用される。また、この付勢手段69は、定着終了後の用紙9が接触して通過しないときには第1案内手段61を第1位置決め規制手段66Aに接触させて停止した状態に保つよう弾性的に押し続ける付勢力を発揮するが、定着終了後の厚紙9Bが接触して通過するときには厚紙9Bに押された第1案内手段61が第2案内手段65から離れた方向D1に揺動することを可能にする程度に押す付勢力を発揮するものである。
付勢手段69としては、この他にも、第1案内手段61を第1位置決め規制手段66Aに接触させて停止した状態に保つよう弾性的に引っ張り続ける付勢力を発揮する引っ張り用のコイルばね等を適用してもよい。
【0084】
<カール矯正部の動作>
以下、このカール矯正部6Bの動作について説明する。
【0085】
はじめに、カール矯正部6Bは、定着後の用紙9が通過していないときは、図9に実線で示されるように、第1案内手段61が第1位置決め規制手段66Aに接触して停止させられた状態に保たれている。
【0086】
つまり、このときの第1案内手段61は、軸64を支点にして自重により第2案内手段65から離れる方向D1に揺動しようとする状態にあるが、この揺動する動きは第1案内手段61が付勢手段69により付勢されて第2案内手段65に接近する方向D2に揺動して第1位置決め規制手段66Aに接触して制止した状態に保たれる。
また、このときの第1案内手段61は、図9に示されるように、その上流側案内部62が、定着部5B1のニップ部FN1からほぼ横方向に排出される用紙9を一対の排出ロール46が存在する側に向かうよう斜め上方の方向に曲げて案内することが可能な状態になる。
さらに、このときの第1案内手段61は、その曲げ案内部63が、排出搬送路Rt2における搬送通路の内側に入り込んで第2案内手段65に最も接近した状態になって、その用紙9を上流側案内部62よりも上方に屈曲させるように曲げてほぼ鉛直の方向に案内することが可能な状態になる。
【0087】
次に、用紙9として普通紙9Aを使用した場合におけるカール矯正部6Bの動作について説明する。
【0088】
この場合、普通紙9Aは、定着に際して、図10(A)に例示されるような状態で定着部5のニップ部FNから排出されてカール矯正部6に進む。
このとき定着部5は、上記したように1型ニップ部の横排出式の定着部5B1である。このため、未定着像が転写された普通紙9Aは、その定着部5B1におけるニップ部FN1を通過した後、加熱用回転体51から自然に剥離されるか又は剥離案内手段67の剥離作用により剥離されてほぼ横方向に排出される。
【0089】
この定着部5B1におけるニップ部FN1から排出された普通紙9Aは、図10(A)に例示するように、実施の形態1における普通紙9Aの場合とほぼ同様に、反イメージカール91が発生した状態で搬出されることがある。
続いて、反イメージカールが発生した普通紙9Aは、定着部5B1のニップ部FN1における搬送力を受けて搬送され続けることにより、実施の形態1におけるカール矯正部6の場合とほぼ同様に、カール矯正部6Bにおける剥離案内手段67の案内部67aに一時的に案内されてカール矯正部6Bにおける第2案内手段65に達するように移動した後、その第2案内手段65を通過して第1案内手段61の曲げ案内部63に達するよう移動する。
【0090】
そして、カール矯正部6Bでは、図10(A)に二点鎖線で例示したりあるいは図10(B)に例示されるように、反イメージカールが発生した普通紙9Aが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する際、その普通紙9Aを曲げ案内部63が案内する角度にほぼ沿ってその表面9a側に反らせる方向に曲げた状態にして移動させる。図5(B)に符号93で示す部分は、普通紙9Aのうち曲げ案内部63により曲げられた状態にさせられて移動しているときの部分である。
【0091】
このとき、第1案内手段61は、普通紙9Aが接触して通過しても、その普通紙9Aにより押されて揺動することなく、付勢手段69の付勢力により第2案内手段65に接近する方向D2に揺動し続ける状態におかれる。ただし、第1案内手段61は、例えば普通紙9Aの剛性力が相対的に強い等の条件の違いによっては、図10(B)に二点鎖線で例示されるように第2案内手段65から離れる方向D1に少し揺動する場合もある。
【0092】
続いて、このカール矯正部6Bにおける第1案内手段61の曲げ案内部63を通過した普通紙9Aは、図10(B)に矢付き二点鎖線で例示するように、排出案内手段47,48で形成される搬送通路に送られる。
しかる後、普通紙9Aは、その排出案内手段47,48との間の搬送通路を単に通過するか又は案内されながら通過した後、矢印で示す方向に回転する一対の排出ロール46に達するよう搬送される。
【0093】
この際、普通紙9Aは、その前方部分が一対の排出ロール46に挟持されて搬送される段階になっても、実施の形態1において説明した同じ理由により、カール矯正部6Bを通過している後方部分は第1案内手段61の曲げ案内部63で曲げられた状態で移動する。
また、普通紙9Aは、その搬送時の後端が定着部5B1のニップ部FN1を通過した段階でも、その後端部分は、カール矯正部6Bにおける第1案内手段61の曲げ案内部63と第2案内手段65の間の空間Sを通過する過程でその表面9aの側に反る方向にある程度曲げられた状態にされる。
【0094】
以上のように、カール矯正部6Bは、定着部5B1のニップ部FN1から排出されて反イメージカールが発生する普通紙9Aに対して、第1案内手段61の曲げ案内部63を通過させる際に、その普通紙9Aをその表面9aの側に反るよう一時的に曲げ案内部63によって湾曲させた状態にして通過させる。これにより、普通紙9Aに発生する反イメージカールは、ほぼ消失されるように矯正される。
このときのカール矯正部6Bによる反イメージカールの矯正は、カール矯正部6Bにおける第1案内手段61の曲げ案内部63と第2案内手段65によって主に行われるので、比較的に簡素な構成で行われることになる。
【0095】
次に、用紙9として厚紙9Bを使用した場合におけるカール矯正部6Bの動作について説明する。
【0096】
この場合、厚紙9Bは、定着に際して、図11(A)に例示されるような状態で定着部5B1のニップ部FN1から排出されてカール矯正部6Bに進む。
このとき未定着像が転写された厚紙9Bは、上記したように1型ニップ部の横排出式定着部5B1におけるニップ部FN1を通過した後、加熱用回転体51から自然に剥離されるか又は剥離案内手段67の剥離作用により剥離されてほぼ横方向に排出される。
【0097】
この定着部5B1におけるニップ部FN1から排出された厚紙9Bは、そのニップ部FN1を通過するにもかかわらず、図11(A)に例示するように反イメージカール(91)が発生しない状態で排出されるが、その種類の違い等によってはイメージカール92が少し発生した状態で搬出されることがある。
続いて、反イメージカールが発生しない厚紙9Bは、定着部5B1のニップ部FN1における搬送力を受けて搬送され続けることにより、実施の形態1における厚紙9Bの場合とほぼ同様に、例えば、カール矯正部6Bにおける剥離案内手段67の案内部67aに案内されるか又は案内されることなくカール矯正部6Bにおける第2案内手段65に達するように移動した後、その第2案内手段65に誘導されて第1案内手段61の曲げ案内部63に達するよう移動する。
【0098】
そして、カール矯正部6Bでは、図11(B)に例示されるように、反イメージカールが発生しない厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する際、その厚紙9Bによって曲げ案内部63が押されて付勢手段69の付勢力に抗するよう第1案内手段61の全体が第2案内手段65から離れる方向D1に揺動し、その曲げ案内部63が搬送経路内からほぼ退避した状態になる。
これにより、カール矯正部6Bは、反イメージカールが発生しない厚紙9Bを第1案内手段61の曲げ案内部63によってその表面9aの側に反らせる方向に曲げた状態にすることなく、その厚紙9Bが有する姿勢のままで移動させるようになる。
【0099】
この際、第1案内手段61は、上記離れる方向D1に揺動すると、図11(B)に示されるように、その一部が最終的に第2位置決め規制手段66Bに接触して停止し、それ以上は揺動できない状態におかれる。このときの第1案内手段61は、図11(B)に例示されるように、その曲げ案内部63が排出案内手段47の下方側案内部47aよりも一段高いが、その下方側案内部47aとほぼ連続した案内部を形成する状態になる。
また、このときのカール矯正部6Bは、その曲げ案内部63と第2案内手段65との間の空間Sが最大の空間Smaxになる。ただし、このときの第1案内手段61が離れる方向D1に揺動する量についても、実施の形態1における厚紙9Bの場合と同様に、第2位置決め規制手段66Bに到達しない程度の揺動の量に止まる場合もある。
【0100】
続いて、このカール矯正部6Bにおける第1案内手段61の曲げ案内部63を通過した厚紙9Bは、図11(B)に矢付き二点鎖線で例示するように、排出案内手段47,48で形成される搬送通路に送られる。
しかる後、厚紙9Bは、その排出案内手段47,48との間の搬送通路を主に排出案内手段47の上方側案内部48aによって案内されながら通過した後、矢印で示す方向に回転する一対の排出ロール46に達するよう搬送される。
【0101】
この際、厚紙9Bは、その前方部分が主に排出案内手段47の上方側案内部48aによって案内されながら一対の排出ロール46にむけて移動するが、実施の形態1で説明した同じ理由により、その排出案内手段47の上方側案内部48aを通過するときに表面9aの側に反る方向に曲げられた状態にされることが殆どない。
また、厚紙9Bは、その搬送時の後端が定着部5B1のニップ部FN1を通過した段階でも、その後端部分は、カール矯正部6Bにおける第1案内手段61の曲げ案内部63と第2案内手段65の間の空間Sを通過する過程でその表面9aの側に反る方向に曲げられることが殆どない。
【0102】
最後に、カール矯正部6Bは、厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63を通過し終わると、第1案内手段61は付勢手段69の付勢力により軸64を支点にして第2案内手段65に接近する方向D1に揺動し、厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する前の状態(図11(A))に自然に戻る。
【0103】
以上のように、カール矯正部6Bは、定着部5B1のニップ部FN1から排出されて反イメージカールが発生しない厚紙9Bに対しては、その厚紙9Bが第1案内手段61の曲げ案内部63に接触して通過する際に、その厚紙9Bの押す力を借りて第1案内手段61が付勢手段69の付勢力に抗して第2案内手段65から離れる方向D1に揺動した状態になる。これにより、カール矯正部6Bは、その厚紙9Bを第1案内手段61の曲げ案内部63によって表面9aの側に反るよう一時的に湾曲させた状態にほぼさせることなく通過させる。
この結果、カール矯正部6Bは、厚紙9Bがカール矯正部6Bを通過することがあっても、その厚紙9Bに反イメージカールやイメージカールを新たに発生させてしまうおそれがない。
また、厚紙9Bは、仮に図11(A)に符号92で示す部分のように定着部5B1のニップ部FN1から排出された際にイメージカールが発生する場合でも、カール矯正部6Bにおける空間Sや排出案内手段47,48との間の搬送通路を通過する際に表面9aの側に反るよう一時的に湾曲させた状態にされることがない。このため、カール矯正部6Bは、イメージカールが発生した厚紙9Bが通過することがあっても、そのイメージカールの発生を助長してしまうおそれもない。
【0104】
[他の変形例]
この発明は、上記実施の形態1,2で例示した内容に何ら限定されるものではなく、例えば、以下に挙げるような変形例も含むものである。
【0105】
実施の形態1における画像形成装置1は、その定着部5に代えて、図12に示されるように、図14(B)で例示した2型ニップ部の上排出式の定着部5A2を適用して構成してもよい。
【0106】
この2型ニップ部の上排出式の定着部5A2を適用した場合におけるカール矯正部6Cは、図12に示されるように、実施の形態1(その変形例を含む)におけるカール矯正部6とほぼ同様に、第1案内手段61と、第2案内手段65と、剥離案内手段67とを備えたものである。
ただし、このカール矯正部6Cは、その第1案内手段61が主に定着部5A2におけるニップ部FN2より加熱用回転体51側に存在するよう配置され、その第2案内手段65と剥離案内手段67が定着部5A2における加圧用回転体52側に存在するよう配置されている点で、実施の形態1におけるカール矯正部6と相違している。
【0107】
この2型ニップ部の上排出式の定着部5A2を適用した画像形成装置においては、用紙9として普通紙9Aを使用したときには、定着部5A2におけるニップ部FN2から排出されたときの普通紙9Aには図12に太い二点鎖線で例示するようにイメージカール93が発生することがある。
しかし、このときのカール矯正部6Cは、定着部5A2のニップ部FN2から排出されてイメージカールが発生する普通紙9Aに対して、第1案内手段61の曲げ案内部63を通過させる際に、実施の形態1におけるカール矯正部6の場合とほぼ同様の作用により、その普通紙9Aをその裏面9bの側に反るよう一時的に曲げ案内部63によって湾曲させた状態にして通過させる。これにより、普通紙9Aに発生するイメージカールは、ほぼ消失されるように矯正される。
また、このカール矯正部6Cは、用紙9として厚紙9Bを使用したときには、実施の形態1におけるカール矯正部6の場合とほぼ同様に作動する。
【0108】
また、実施の形態2における画像形成装置は、その定着部5に代えて、図13に示されるように2型ニップ部の横排出式の定着部5B2を適用して構成してもよい。
【0109】
この2型ニップ部の横排出式の定着部5B2を適用した場合におけるカール矯正部6Dは、図13に示されるように、実施の形態2におけるカール矯正部6Bとほぼ同様に、第1案内手段61と、第2案内手段65と、剥離案内手段67とを備えたものである。
ただし、このカール矯正部6Dは、その第1案内手段61が主に定着部5A2におけるニップ部FN2より加熱用回転体51側に存在するよう配置され、その第2案内手段65と剥離案内手段67が定着部5D2における加圧用回転体52側に存在するよう配置されている点と、付勢手段69を設けていない点で、実施の形態2におけるカール矯正部6Bと相違している。
なお、このカール矯正部6Dにおいては、例えば、第1案内手段61における曲げ案内部63の下流端63bについて用紙9との接触摩擦を低減させる観点から、曲面状のアール加工をした端部にしたり、あるいは、ころ等の回転体を配置するとよい。
【0110】
この2型ニップ部の横排出式の定着部5B2を適用した画像形成装置においては、用紙9として普通紙9Aを使用したときには、定着部5B2におけるニップ部FN2から排出されたときの普通紙9Aには図13に太い二点鎖線で例示するようにイメージカール93が発生することがある。
しかし、この場合、カール矯正部6Dは、定着部5B2のニップ部FN2から排出されてイメージカールが発生する普通紙9Aに対して、第1案内手段61の曲げ案内部63を通過させる際に、実施の形態2におけるカール矯正部6Bの場合とほぼ同様の作用により、その普通紙9Aをその裏面9bの側に反るよう一時的に曲げ案内部63によって湾曲させた状態にして通過させる。これにより、普通紙9Aに発生するイメージカールは、ほぼ消失されるように矯正される。
また、このカール矯正部6Dは、用紙9として厚紙9Bを使用したときには、実施の形態2におけるカール矯正部6Bの場合とほぼ同様に作動する。
【0111】
さらに、実施の形態1,2では、画像形成装置1として現像剤から構成される単色画像を形成する像形成部2を備えた画像形成装置を例示したが、この発明は多色(カラー)画像を形成する像形成部2を備えた画像形成装置にも適用することができる。この多色画像を形成する像形成部2としては、例えば、各色の未定着像をそれぞれ形成する本体部分とその未定着像を一次転写して一時的に保持した後に用紙に二次転写する中間転写部分を有するものを適用することができる。
また、実施の形態1,2では、定着部5として加熱用回転体51と加圧用回転体52がロール形態で構成されている場合を例示したが、定着部5としては、この他にも例えば、加熱用回転体51と加圧用回転体52の一方又は双方がベルト-支持ロール形態で構成されている定着部やベルト-ニップ形態で構成されている定着部を適用しても構わない。
【符号の説明】
【0112】
1 …画像形成装置
5 …定着部(定着手段の一例)
9 …用紙
9a…表面(片面の一例)
9b…裏面(反対面の一例)
61…第1案内手段
62…上流側案内部
62e…終端位置
63…曲げ案内部
63a…上流端
63b…下流端
64…軸
65…第2案内手段
67…剥離案内手段
69…付勢手段
51…回転軸(軸部)
C …用紙の搬送方向
D2…第2案内手段から離れる方向
FN…ニップ部
MT…トナー像(未定着像の一例)
S …空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14