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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】クレーン設備およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/06 20060101AFI20220809BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20220809BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B66C1/06 N
B66C13/48 A
B66C15/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018107196
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019210093
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼村 辰也
(72)【発明者】
【氏名】野村 保
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-027779(JP,A)
【文献】特開2005-104665(JP,A)
【文献】特開2002-302384(JP,A)
【文献】特開平07-076488(JP,A)
【文献】特開平08-310788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66C 1/00- 3/20
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行方向に移動可能な桁部と、該走行方向と直交する横行方向に移動可能なトロリと、該トロリに昇降可能に懸吊されたフックと、を備え、スクラップヤード内に堆積させたスクラップの一部を、前記フックに懸吊され、磁力を調節可能なリフティングマグネットで吸着して、被搬送物として搬送するクレーンと、
前記クレーンの稼働領域内に設定された測定位置における固定物の高さを検出する第1センサと、
前記クレーンの動作を制御する制御部と、を備え、
該制御部が、
前記第1センサからの出力に基づいて、高さマップ情報を作成する高さマップ情報作成手段と、
該高さマップ情報および前記被搬送物の下端高さの予測値に基づいて、前記クレーンの搬送条件を決定する搬送条件決定手段と、
を有することを特徴とするクレーン設備。
【請求項2】
前記第1センサは、前記横行方向に沿って、前記桁部に複数配置されており、
前記高さマップ情報作成手段は、クレーン走行時に取得される前記第1センサからの出力に基づいて前記高さマップ情報を作成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン設備。
【請求項3】
前記フックで搬送される前記被搬送物の荷姿を検出する第3センサを、更に有することを特徴とする請求項1,2の何れかに記載のクレーン設備。
【請求項4】
前記搬送条件決定手段において決定される搬送条件が、搬送ルート、走行速度、横行速度、昇降高さおよび昇降速度であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載のクレーン設備。
【請求項5】
請求項1~に記載のクレーン設備の制御方法であって
前記高さマップ情報に基づいて、前記フックで吊られた被搬送物が前記固定物と干渉しないように、前記クレーンの走行・横行・昇降の各動作を制御することを特徴とするクレーン設備の制御方法。
【請求項6】
前記クレーンの走行動作および/又は横行動作を、昇降動作と同時に行うことを特徴とする請求項に記載のクレーン設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクラップヤードで稼働するクレーン設備およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼会社において、電気炉の原材料として用いられるスクラップは、トラック等で搬入される。搬入されたスクラップは、クレーンを用いて、工場内の予め定められたスクラップヤード内に積み上げられて保管される。そして、スクラップヤード内に保管されたスクラップを払い出す際、スクラップはクレーンを用いて一旦、装入バケットに搬送・収容され、その後、装入バケットごと電気炉に送られる。
【0003】
スクラップヤード内には、性状の異なる複数種類のスクラップ堆積物がそれぞれ山状に積み上げられており、その配置や高さは、各スクラップごとの受入れおよび払い出しの状況に応じて変化する。
このため、スクラップの払い出し作業は、従来、堆積物の配置や高さを確認しながら手動運転により実施されていた。クレーンの動作は、基本的に巻上げ、走行(横行)、巻下げである。手動運転においては、クレーン運転手が周囲の状況を目視で判断し、必要最低限の量だけ巻上げながら、同時に走行(および横行)動作を実施することで、スクラップ堆積物との干渉を回避しつつ、搬送時間の短縮化が図られていた。
【0004】
一方で、下記特許文献1に記載されているように、スクラップの払い出し作業を自動運転で行う場合もある。しかしながら、自動運転の場合、スクラップ堆積物との干渉を避けるため、まず巻上げ高さの上限まで巻上げ動作を行ない、その後にクレーンの走行(および横行)動作を行なっていたため、巻上げ作業に多大な時間を要することとなり、その結果、搬送時間が長くなってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-157071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、スクラップの搬送を自動運転で行なった場合でも、固定物との干渉を回避しつつ、短時間での搬送を実現することが可能なクレーン設備およびクレーン設備の制御方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して本発明のクレーン設備は、所定の走行方向に移動可能な桁部と、該走行方向と直交する横行方向に移動可能なトロリと、該トロリに昇降可能に懸吊されたフックと、を備え、スクラップヤード内に堆積させたスクラップの一部を、前記フックに懸吊され、磁力を調節可能なリフティングマグネットで吸着して、被搬送物として搬送するクレーンと、
前記クレーンの稼働領域内に設定された測定位置における固定物の高さを検出する第1センサと、
前記クレーンの動作を制御する制御部と、を備え、
該制御部が、前記第1センサからの出力に基づいて、高さマップ情報を作成する高さマップ情報作成手段と、該高さマップ情報および前記被搬送物の下端高さの予測値に基づいて、前記クレーンの搬送条件を決定する搬送条件決定手段と、を有することを特徴とする。

【0008】
本発明のクレーン設備では、第1センサからの出力に基づいて、クレーン稼働領域内にある固定物についての高さマップ情報が作成され、この高さマップ情報に基づいて、搬送条件決定手段により好適な搬送条件が決定されるため、スクラップの搬送を自動運転で行なった場合でも、固定物との干渉を回避しつつ、短時間での搬送を実現することができる。
【0009】
ここで本発明では、搬送条件決定手段において決定される搬送条件を、搬送ルート、走行速度、横行速度、昇降高さおよび昇降速度とすることができる。
【0010】
本発明では、前記第1センサを、前記横行方向に沿って、前記桁部に複数配置し、
前記高さマップ情報作成手段において、クレーン走行時に取得される前記第1センサからの出力に基づいて前記高さマップ情報を作成するように構成することができる。
【0011】
固定物の高さを検出する第1センサは、例えば建屋の構造物に取付固定することも可能であるが、その場合、測定位置の数と同数の第1センサが必要となってしまう。これに対し、第1センサをクレーンの桁部に配置して、クレーン走行時に第1センサも移動するように構成すれば、走行方向にセンサの共通化が図られ、第1センサの数を大幅に削減することができる。
【0012】
本発明ではまた、前記フックにより搬送される前記被搬送物の下端高さを検出する第2センサを、更に設けておくことができる。
搬送中において、固定物と干渉するのは、主に被搬送物の下端部分である。被搬送物の下端高さは、ある程度予想できるものの、実際の搬送物の下端高さを検出することで、搬送条件決定手段で決定される搬送条件の信頼性を高めることができる。
【0013】
また場合によっては、前記第2センサの代わりに、前記被搬送物の荷姿を検出する第3センサを設けておくことも可能である。被搬送物の下端部分だけでなく、被搬送物の側面部分での干渉も懸念される場合に有効である。
【0014】
本発明のクレーン設備の制御方法は、前記高さマップ情報に基づいて、前記フックで吊られた被搬送物が前記固定物と干渉しないように、前記クレーンの走行・横行・昇降の各動作を制御することを特徴とする。
この制御方法によれば、スクラップの搬送を自動運転で行なった場合でも、固定物との干渉を回避しつつ、短時間での搬送を実現することができる。ここで、前記クレーンの走行動作および/又は横行動作は、昇降動作と同時に行うようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のクレーン設備をスクラップヤード等の周辺部とともに示した図である。
図2図1のクレーン設備の側面図である。
図3】同クレーン設備の電気系統のブロック図である。
図4】高さマップ情報作成手段についての説明図である。
図5】高さマップ情報の一例を示した図である。
図6】搬送条件決定手段についての説明図である。
図7図6に続く搬送条件決定手段についての説明図である。
図8】本発明の他の実施形態を示した図である。
図9】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の一実施形態のクレーン設備を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、Yは、電気炉の原材料として用いられるスクラップを貯蔵・保管するスクラップヤードで、仕切り壁8によって囲まれている。10は、スクラップの受入れおよび払い出しの際に用いられる天井クレーンで、クレーン設備1の主要部を構成する。本例のクレーン設備1は、この天井クレーン10のほか、後述する第1センサ30および制御部46を含んで構成されている。
【0017】
Mは、スクラップの受入スペースである。スクラップ受入れの際には、受入スペースMに駐車した車両54の荷台56から、天井クレーン10を用いてスクラップを吊り上げて、スクラップヤードY内の所定の位置に搬送する。なお、スクラップヤードY内には、通常、性状の異なる複数種類のスクラップが保管される。このため、スクラップの種別ごとにスクラップヤードY内での保管位置が定められており、受入れされたスクラップは、同種のスクラップがすでに保管されている位置もしくはその近傍に積み上げられる。
【0018】
スクラップヤードYの、受入スペースMとは反対側には、貯留ホッパHが配置されている。スクラップヤードY内に保管されているスクラップが払い出される際、スクラップは、天井クレーン10を用いて、一旦、貯留ホッパHに払い出される。貯留ホッパHの下方には、スクラップを電気炉に搬送するための装入バケット(図示省略)が待機しており、貯留ホッパHの底が開くことで、貯留ホッパHの内部に収容されていたスクラップが装入バケット内に移載される。このように天井クレーン10は、スクラップの受入れおよび払い出しに用いられる。
【0019】
天井クレーン10は、スクラップヤードYの上方に位置し、図2に示すように、建屋11の幅方向に架け渡された桁部12と、桁部12上を横行するトロリ14と、ワイヤーロープ16を介してトロリ14に懸吊されたフック18と、フック18に懸吊されたリフティングマグネット(以下、リフマグと称する場合がある)20と、を備えている。
【0020】
桁部12は、横行するトロリ14の荷重を受ける一対の主桁22,22と、これら主桁22の長手方向の両端部に一体に接合されたサドル部24とを備えている。サドル部24は車輪28を有し、この車輪28は走行用駆動装置25からの駆動力により回転可能に構成されている、これにより桁部12は、建屋11の両側の壁に沿って設けられた走行用レール26上を、走行方向(図1参照)に移動可能とされている。天井クレーン10における稼働領域は、スクラップヤードY、受入スペースMおよび貯留ホッパHを含んでいる。
【0021】
本例では、一対の主桁22,22の外側面に、横行方向に沿って等間隔に第1センサ30が複数取り付けられている。この第1センサ30は、その下方に位置するスクラップ堆積物等の固定物の高さを検出する。第1センサ30としては、例えば、発光部および受光部を備えた光反射型のセンサ等を用いることができる。
【0022】
トロリ14は、車輪32付きの台車33と、台車33上に載置された横行用駆動装置35および昇降装置37で構成されている。横行用駆動装置35は横行用モータ35aを有し、その駆動力を車輪32に伝達し、車輪32を回転させる。これによりトロリ14は、桁部12の上面に設けられた横行用レール23上を横行方向に移動可能とされている。
一方、昇降装置37は、昇降用モータ37aおよび電磁ブレーキ37bを備え、ワイヤーロープ16を介して、ワイヤーロープ16に懸吊されたフック18を昇降させ、また任意の位置で停止させる。
【0023】
フック18に懸吊されたリフマグ20は、内部に電磁石が埋設されており、給電装置40を介しての給電により、磁力を発生させてスクラップを吸着する。リフマグ20の磁力は段階的に調節可能とされており、リフマグ20により吸着可能なスクラップの量を調整することができる。
【0024】
天井クレーン10は、位置検出手段として、桁部12の走行位置を検出する走行位置検出センサ42、トロリ14の横行位置を検出する横行位置検出センサ43、フック18の昇降高さを検出する昇降高さ検出センサ44、を備えている。図3に矢印で示すように、これらセンサからの信号は制御部46に入力され、現在のフック18の位置を特定することができるように構成されている。本例では、これらセンサ42,43,44として、光学式の測距センサを用いているが、これに代わる位置検出手段としてロータリーエンコーダ等を採用することも可能である。
なお、図3に示す制御部46には、上記のセンサ42,43,44のほか、第1センサ30や操作部50がそれぞれ接続されている。
【0025】
制御部46は、CPU、ROM、RAM、記憶部等を含んで構成され、記憶部に記憶された制御プログラムをCPUなどのプロセッサが実行する。そして、各種センサからの信号や操作部50から操作信号に基づいて演算処理をおこない、駆動装置等に信号を出力して天井クレーン10の動作を制御する。
【0026】
制御部46には、走行用駆動装置25を構成する走行用モータ25aや、横行用駆動装置35を構成する横行用モータ35a、昇降装置37を構成する昇降用モータ37aおよび電磁ブレーキ37b、リフマグ20に励磁用の電力を供給する給電装置40が接続されている。
【0027】
更に、制御部46は、高さマップ情報作成手段47と搬送条件決定手段49を有している。
【0028】
高さマップ情報作成手段47では、クレーン稼働領域内(ここではスクラップヤードY内)に設定された測定位置Pでの固定物(ここではスクラップ堆積物)の高さ分布を示すマップ情報を作成する。
具体的には、図4(A)に示すように、予めスクラップヤードY内の領域を走行方向、等間隔に区画して、スクラップ堆積物の高さを測定する走行方向の位置L(L1,L2・・Ln)を設定しておく。そして、例えば始業時に1回、天井クレーン10をL1からLnに亘って移動させ、各走行方向の位置L1,L2・・Lnに到達した際の第1センサ30の出力値を、各測定位置Pでの高さ情報として順次取り込む。このようにすることで、図4(B)で示すように、走行方向の位置Lと走行方向に移動する第1センサ30との交点(すなわち測定位置P)で、スクラップ堆積物の高さに関する情報を得ることができる。得られた高さ情報は、各測定位置Pの位置情報と関連付けて高さマップデータとして記憶部に記録される。
【0029】
図5は、得られた高さマップ情報の一例である。このようにスクラップヤードY内の固定物、具体的にはスクラップ堆積物の高さ分布を認識することができる。
なお、第1センサ30の取付ピッチや走行方向の位置Lのピッチを狭めて、測定位置Pを増やすことで、高さマップ情報の精度を高めることができる。各測定位置P間ピッチは、適宜設定可能であるが、スクラップを吸着するリフマグ20の外形寸法よりも小さくすることが望ましい。
【0030】
高さマップ情報作成手段47では、データの更新頻度を高めて、現状の高さ分布をマップ情報に反映させることが重要である。本例では、クレーン10が走行し、第1センサ30が測定位置Pを通過するたびに、かかる測定位置Pに対応する高さ情報を更新する。
また本例では、図1に示すように、リフマグ20の走行方法の両側にそれぞれ第1センサ30が設けられているため、例えば、スクラップ堆積物の一部を吸着したことにより、堆積物の高さが変動した場合、その後クレーン10が走行方向に移動すれば、何れかの第1センサ30にて吸着直後のスクラップ堆積物の高さを求めることができる利点がある。
【0031】
次に搬送条件決定手段49について説明する。
搬送条件決定手段49では、高さマップ情報作成手段47で得られた高さマップ情報を利用して、搬送条件(具体的には、クレーン10の搬送ルート、走行速度、横行速度、昇降高さおよび昇降速度)を決定する。
【0032】
ここでは、スクラップヤードY内に保管されているスクラップの一部を、貯留ホッパHに向けて払い出す作業を例に説明する。
搬送条件決定の前提条件として、(1)搬送開始位置(すなわち、対象スクラップを吸着する位置)と、搬送終了位置(ここでは貯留ホッパHの直上位置)とを平面視直線で結んだ搬送ルートを移動するものとする。(2)また昇降動作(巻上げ動作および巻下げ動作)中に同時に走行(横行)動作を行ない搬送時間の短縮を図るものとする。(3)図6で示す被搬送物Sの下端高さ(リフマグ20の下面から被搬送物の下端までの距離)Kは、予測値を採用するものとする。
【0033】
搬送条件決定手段49では、まず指定された搬送ルートを含んだ初期の搬送条件D1を決定する。次に、記憶部に記憶されているマップ情報を呼び出し、図6で示すように、搬送条件D1において、被搬送物Sの下端S0が、スクラップ堆積物Wと干渉するか否かをシミュレーションにて確認する。
【0034】
ここで、初期の搬送条件D1にて干渉有りと判断された場合には、干渉を回避するために必要な昇降高さ(具体的には巻上げ高さ)を算出し、更にスクラップ堆積物Wと干渉する地点に到達する前に、必要な巻上け動作が完了する走行速度および横行速度を算出し、新たな搬送条件D2を決定する。
この搬送条件D2に従ってクレーン10を移動させれば、図6で示すように被搬送物Sの下端S0がスクラップ堆積物Wと干渉するのを回避することができる。
また、この搬送条件D2は、従来の自動運転にて用いられていた搬送条件D3(図6参照)、すなわちスクラップ堆積物Wとの干渉を避けるため、まず巻上げ高さの上限まで巻上げ動作を行ない、その後にクレーン10の走行(および横行)動作を行なう搬送条件、に比べて搬送時間を短縮することができる。
【0035】
なお、上記の例では搬送ルートを変更することなく、走行速度および横行速度を変化させることでスクラップ堆積物Wとの干渉を避けた例であるが、平面視における搬送ルートを変更することで、スクラップ堆積物Wとの干渉を避ける搬送条件を選択することも可能である。また、複数の搬送条件を求めた後、それぞれの搬送時間を比較して最短の搬送時間となる搬送条件を選択決定することも可能である。
【0036】
以上は、クレーン10が被搬送物Sを巻上げる際の動作について述べたが、本例の搬送条件決定手段49では、クレーン10が被搬送物Sを巻下げる際の動作においても高さマップ情報を利用してその搬送条件が決定され、図7に示すように、搬送条件D2ではスクラップ堆積物Wとの干渉を回避しつつ、巻下げ動作中に同時に走行(横行)動作が実行される。このため従来の自動搬送にて用いられていた搬送条件D3に比べて搬送時間の短縮を図ることができる。
【0037】
以上のように本実施形態のクレーン設備1では、例えば払い出し作業において、操作部50から搬送開始位置(すなわち、対象スクラップを吸着する位置)を入力すれば、貯留ホッパHに対象スクラップ搬送するための好適な搬送条件が搬送条件決定手段49により決定されるため、自動運転下でも、スクラップ堆積物Wとの干渉を回避しつつ、短時間での搬送を実現することができる。
【0038】
特に本例の搬送条件決定手段49で決定した搬送条件D2は、図6に示すようにクレーンの走行(および横行)動作を、昇降動作(巻上げ動作および巻下げ動作)と同時に行うため、上述の搬送条件D3に比べて搬送時間を短縮することができる。
【0039】
また本実施形態のクレーン設備1では、第1センサ30を、横行方向に沿って、桁部12に複数配置し、高さマップ情報作成手段47において、クレーン走行時に取得される第1センサ30からの出力に基づいて高さマップ情報を作成するように構成している。
第1センサ30は、例えば建屋の構造物に取付固定することも可能であるが、その場合、測定位置Pの数と同数の第1センサ30が必要となってしまう。これに対し本例では、第1センサ30を天井クレーン10の桁部12に配置して、クレーン走行時に第1センサ30も移動するように構成することで、走行方向にセンサの共通化が図られ、第1センサ30の数を大幅に削減することができる。
【0040】
また本実施形態のクレーン設備1では、上述の高さマップ情報作成手段47および搬送条件決定手段49を用いることで、スクラップの受入れ作業の自動化を図ることも可能である。例えば、図1で示すように、受入スペースMに停車した車両54の荷台56からリフマグ20で直接スクラップを吸着して搬送するのであれば、受入スペースMに停車した車両54の荷台56の形状を認識するためのセンサ58を設け、制御部46に対して撮像画像を出力するように構成する。センサ58としては、例えばCCD、CMOS等の撮像素子で構成された画像センサを用いることができる。
このようにすることで、車両54の荷台56の平面視の位置を特定することができる。
【0041】
また、荷台56に積載されたスクラップの高さは、天井クレーン10に取り付けられた第1センサ30により求めることができる。これらの情報に基づき吸着開始点、すなわち搬送開始位置の位置情報が決定される。続いて搬送終了位置の情報を入力すれば、上記払い出し作業の場合と同じ手順で、自動運転に必要な搬送条件を決定することができる。
【0042】
図8は、本発明の他の実施形態を示した図である。
本例の天井クレーン10Bでは、主桁22より下向きに延出させた取付部材60の下側端部に、被搬送物Sの下端高さKを検出する第2センサ62を設けている。搬送中にスクラップ堆積物と干渉するのは、主に被搬送物Sの下端S0部分である。本例によれば、実際の被搬送物Sの下端高さKを検出することで、搬送条件決定手段49で決定される搬送条件の信頼性を高めることができる。
【0043】
また第2センサ62の代わりに、被搬送物Sの荷姿を検出する第3センサ64を設けることも可能である。被搬送物Sの下端S0部分だけでなく、被搬送物Sの側面部分での干渉も懸念される場合に有効である。
【0044】
図9は、本発明の更に他の実施形態を示した図である。
本例の天井クレーン10Cでは、主桁22の外側面から走行方向外側に延出させた取付部材65の端部に、第1センサ30を設けている。
高さマップ情報に基づいて搬送条件を決定することを特徴とする本発明では、スクラップヤードY内の堆積物の高さが突発的に変化した場合に、そのまま走行を継続すると被搬送物Sが堆積物と干渉する虞がある。このような場合を考慮すれば、本例のように第1センサ30を、干渉が生じる被搬送物Sから所定距離離間させておくことが有効である。
改めて第1センサ30により得られた高さ情報が、搬送条件の前提としたマップ情報と異なっている場合に、クレーン10Cの走行を停止させたり、搬送条件の変更等を行うことで堆積物との干渉を回避できるからである。
【0045】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまでも一例示である。例えば上記実施形態では、第1センサ30を、天井クレーンの桁部に取り付けたが、建屋の構造物に取り付けることも可能である。また上記実施形態では、スクラップを吊り上げるための吊り具としてリフマグを用いているが、リフマグに代えてグラブバケット等を用いることも可能である。また上記実施形態は、天井クレーンを用いた例であったが、特開平9-25085号公報等に開示されているような門形移動クレーンに適用することも可能である等、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々変更を加えた形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 クレーン設備
10,10B,10C 天井クレーン
12 桁部
14 トロリ
18 フック
30 第1センサ
46 制御部
47 高さマップ情報作成手段
49 搬送条件決定手段
62 第2センサ
64 第3センサ
P 測定位置
S 被搬送物
Y スクラップヤード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9