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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】加工システム及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/18 20060101AFI20220809BHJP
   B23B 41/12 20060101ALI20220809BHJP
   B23B 41/16 20060101ALI20220809BHJP
   B23B 39/08 20060101ALI20220809BHJP
   B23B 47/00 20060101ALI20220809BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20220809BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20220809BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20220809BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20220809BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20220809BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20220809BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B23Q15/18
B23B41/12
B23B41/16
B23B39/08
B23B47/00 A
B23B35/00
B23Q17/22 A
B23Q11/12 A
B23Q17/20 A
B23Q7/00 C
B23B49/00 Z
G05B19/404 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018109483
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019209448
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】竹下 吉次
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 克美
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-018914(JP,U)
【文献】特開平02-292110(JP,A)
【文献】特開平05-038643(JP,A)
【文献】実開平06-031938(JP,U)
【文献】特開平07-019693(JP,A)
【文献】特開平10-230404(JP,A)
【文献】特開2007-190653(JP,A)
【文献】特開2009-039786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00- 7/18
B23Q 11/00-13/00
B23Q 15/00-15/28
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて配置された複数のステーションと、
鉛直な第1軸方向に上昇、水平な第2軸方向に前進、前記第1軸方向に下降、前記第2軸方向に後退を繰り返し、前記第2軸方向に長手のトランスファバー及び前記トランスファバーに前記所定の間隔を隔てて配置され、ワークを位置決め支持する載置部を備えた搬送装置と、を備え、
前記複数のステーションのうち、1つは、前記ワークに対し、加工装置により前記第1軸方向へ所定の加工を施す加工ステーションである加工システムにおいて、
前記加工装置は、
ベッドと、
前記ベッドの上面に立設されるコラムと、
前記コラムの前面に前記第1軸方向に移動可能に設けられて加工動作を行う加工ヘッドと、
前記加工ヘッドの下方に配置され、前記ワークを治具側位置決め部に位置決め支持する治具と、
前記ベッド上に設けられ、前記治具を前記第2軸と交差する水平な第3軸を少なくとも含む所定の水平方向へ移動可能とするテーブル部と、
前記加工ヘッドと前記治具との間の前記第3軸方向の位置ずれを検知する位置ずれ検知部と、
前記位置ずれ検知部による検知結果に基づき前記テーブル部を制御し、前記治具を前記第3軸方向へ移動させて位置ずれを補正する補正部と、
を備え、
前記搬送装置は、前記ワークを隣の前記ステーションから前記加工ステーションへ搬送する際に、前記治具が前記テーブル部によってワーク受け渡し用の原位置に設定された状態で、前記トランスファバーの前記載置部に位置決め支持された前記ワークを前記治具へ受け渡して前記治具側位置決め部に位置決めし、
前記加工装置は、前記治具が前記ワークを前記治具側位置決め部に位置決め支持した状態で前記位置ずれ検知部により前記位置ずれを検知し、前記補正部により前記治具を前記第3軸方向へ移動させて前記位置ずれを補正した状態で、前記加工ヘッドにより前記加工動作を行い、
前記位置ずれ検知部は、
前記治具に配置されてその水平位置の基準となる基準部と、
前記加工ヘッドに設けられて前記基準部の水平位置を測定するセンサと、を備える、加工システム。
【請求項2】
前記テーブル部には、前記トランスファバーを前記第2軸方向に貫通して挿通するU字状空間が形成されている、請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記加工ステーションの前のステーションは、搬入ステーションであり、前記搬入ステーションは、加工前の前記ワークを冷却するための冷却装置が設けられる、請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記加工装置は、前記ベッド及び前記コラムの少なくとも一方に冷却媒体の流動による冷却機構が設けられる、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工システム。
【請求項5】
前記加工ステーションによる加工後の前記ワークを検測するための検測ステーションをさらに備える、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工システム。
【請求項6】
前記加工装置は、前記ワークの穴を加工する中ぐり加工装置である、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工システム。
【請求項7】
前記加工装置は、シリンダブロックのボア穴加工用の中ぐり加工装置である、請求項に記載の加工システム。
【請求項8】
ワークを搬入するための搬入ステーションと、
加工ヘッドを鉛直な第1軸方向に移動させながら加工動作を行う加工装置を有し、前記搬入ステーションから搬入された前記ワークに対し、前記加工装置により前記第1軸方向へ所定の加工を施す加工ステーションと、
前記ワークをトランスファバーの載置部に位置決め支持し、水平な第2軸方向に前記搬入ステーションから前記加工ステーションへ搬送する搬送装置と、を備える加工システムにおける加工方法であって、
前記ワークをトランスファバーの前記載置部に位置決め支持して前記搬入ステーションから前記加工ステーションへ搬送し、
前記加工ヘッドの下方に配置される治具がワーク受け渡し用の原位置に設定された状態で、前記ワークを前記トランスファバーから前記治具へ受け渡して治具側位置決め部に位置決め支持してクランプし、
前記治具が前記ワークをクランプした状態で、前記治具に配置されてその水平位置の基準となる基準部と前記加工ヘッドに設けられて前記基準部の水平位置を測定するセンサとを用いて、前記加工ヘッドと前記治具との間の前記第2軸と交差する水平な第3軸方向の位置ずれを検知し、
前記治具を前記第3軸方向へ移動させて前記位置ずれを補正し、
前記加工ヘッドを前記第1軸方向に移動させながら前記治具にクランプされた前記ワークに対し加工動作を行い、
前記ワークの加工終了後、前記治具を前記ワーク受け渡し用の原位置に復帰させ、
前記加工終了後の前記ワークを前記治具からアンクランプし、
前記トランスファバーを前記加工ステーションから前記搬入ステーションへ復帰移動させる、加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工システム及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のシリンダブロックのボア穴を加工する場合には、中ぐり加工装置を使用して加工が行われている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
この中ぐり加工装置は、ベッド上に起立固定されたコラムの前面に主軸ヘッドが鉛直なZ軸方向に昇降自在に案内支持され、送り機構を介してZ軸送り用モータにより昇降されるようになっている。主軸ヘッドには工具を鉛直に保持する主軸が設けられ、回転用モータにより回転駆動されるようになっている。ベッドに支持された水平なX軸方向に移動可能な治具ユニットの治具上には、シリンダブロックがトランスファバーにより搬入されてクランプされる。この状態で治具をX軸方向に移動してシリンダブロックをそのボア穴が工具と同軸的となる位置で主軸ヘッドを回転用モータにより回転駆動し、Z軸送り用モータを作動させて主軸ヘッドを下降させ、シリンダブロックのボア穴の中ぐり加工を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-307216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の中ぐり加工装置において、ベッドやコラムに熱変位が生じた場合、ベッド側に設けられる治具とコラム側に設けられる主軸ヘッドとの間に位置ずれが生じ、加工精度に影響を及ぼすという問題がある。
【0006】
本発明は、熱変位の影響を排除して高精度な加工を行うことができる加工システム及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加工システムは、所定の間隔を隔てて配置された複数のステーションと、鉛直な第1軸方向に上昇、水平な第2軸方向に前進、前記第1軸方向に下降、前記第2軸方向に後退を繰り返し、前記第2軸方向に長手のトランスファバー及び前記トランスファバーに前記所定の間隔を隔てて配置され、前記ワークを位置決め支持する載置部を備えた搬送装置と、を備え、前記複数のステーションのうち、1つは、前記ワークに対し、加工装置により前記第1軸方向へ所定の加工を施す加工ステーションである。
【0008】
さらに、加工システムは、前記加工装置は、ベッドと、前記ベッドの上面に立設されるコラムと、前記コラムの前面に前記第1軸方向に移動可能に設けられて加工動作を行う加工ヘッドと、前記加工ヘッドの下方に配置され、前記ワークを治具側位置決め部に位置決め支持する治具と、前記ベッド上に設けられ、前記治具を前記第2軸と交差する水平な第3軸を少なくとも含む所定の水平方向へ移動可能とするテーブル部と、前記加工ヘッドと前記治具との間の前記第3軸方向の位置ずれを検知する位置ずれ検知部と、前記位置ずれ検知部による検知結果に基づき前記テーブル部を制御し、前記治具を前記第3軸方向へ移動させて位置ずれを補正する補正部と、を備える。
【0009】
そして、前記搬送装置は、前記ワークを隣の前記ステーションから前記加工ステーションへ搬送する際に、前記治具が前記テーブル部によってワーク受け渡し用の原位置に設定された状態で、前記トランスファバーの前記載置部に位置決め支持された前記ワークを前記治具へ受け渡して前記治具側位置決め部に位置決めし、前記加工装置は、前記治具が前記ワークを前記治具側位置決め部に位置決め支持した状態で前記位置ずれ検知部により前記位置ずれを検知し、前記補正部により前記治具を前記第3軸方向へ移動させて前記位置ずれを補正した状態で、前記加工ヘッドにより前記加工動作を行う。
さらに、前記位置ずれ検知部は、前記治具に配置されてその水平位置の基準となる基準部と、前記加工ヘッドに設けられて前記基準部の水平位置を測定するセンサと、を備える。
【0010】
この構成によれば、搬送装置は、トランスファバーの載置部に位置決め支持されたワークを、ワーク受け渡し用の原位置に設定された治具へ確実に受け渡し、治具側位置決め部に位置決めすることができる。また、加工装置は、治具がワークを治具側位置決め部に位置決め支持した状態で位置ずれ検知部により第3軸方向の位置ずれを検知し、補正部により治具を第3軸方向へ移動させて位置ずれを補正した状態で加工ヘッドにより加工動作を行うことができる。よって、熱変位の影響を排除して高精度に加工を行うことができるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る加工方法は、ワークを搬入するための搬入ステーションと、加工ヘッドを鉛直な第1軸方向に移動させながら加工動作を行う加工装置を有し、前記搬入ステーションから搬入された前記ワークに対し、前記加工装置により前記第1軸方向へ所定の加工を施す加工ステーションと、前記ワークをトランスファバーの載置部に位置決め支持し、水平な第2軸方向に前記搬入ステーションから前記加工ステーションへ搬送する搬送装置と、を備える加工システムにおける加工方法である。
【0012】
そして、本発明に係る加工方法は、前記ワークをトランスファバーの前記載置部に位置
決め支持して前記搬入ステーションから前記加工ステーションへ搬送し、前記加工ヘッドの下方に配置される治具がワーク受け渡し用の原位置に設定された状態で、前記ワークを前記トランスファバーから前記治具へ受け渡して治具側位置決め部に位置決め支持してクランプし、前記治具が前記ワークをクランプした状態で、前記治具に配置されてその水平位置の基準となる基準部と前記加工ヘッドに設けられて前記基準部の水平位置を測定するセンサとを用いて、前記加工ヘッドと前記治具との間の前記第2軸と交差する水平な第3軸方向の位置ずれを検知し、前記治具を前記第3軸方向へ移動させて前記位置ずれを補正し、前記加工ヘッドを前記第1軸方向に移動させながら前記治具にクランプされた前記ワークに対し加工動作を行い、前記ワークの加工終了後、前記治具を前記ワーク受け渡し用の原位置に復帰させ、前記加工終了後の前記ワークを前記治具からアンクランプし、前記トランスファバーを前記加工ステーションから前記搬入ステーションへ復帰移動させる。
【0013】
この方法によれば、トランスファバーの載置部に位置決め支持されたワークを、ワーク受け渡し用の原位置に設定された治具へ確実に受け渡し、治具側位置決め部に位置決めすることができる。また、治具がワークを治具側位置決め部に位置決め支持した状態で位置ずれを検知し、治具を第3軸方向へ移動させて位置ずれを補正した状態で加工ヘッドにより加工動作を行うことができる。よって、熱変位の影響を排除して高精度に加工を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る加工システムの全体構成を示す正面図である。
図2】加工システムの工程別概略説明図である。
図3】洗浄冷却ステーションをトランスファバーの長手方向と直交する面で切断して示す断面図である。
図4】中ぐり加工装置の側面図である。
図5】中ぐり加工装置の制御回路図である。
図6】中ぐり加工装置における動作の流れを示すフローチャートである。
図7】トランスファバーが後退位置で上昇したワーク搬送前の様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図8】トランスファバーが前進位置で下降したワーク搬送後の様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図9】タッチセンサにより基準穴の位置測定を行う様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図10】補正動作時の様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図11】第1ボア穴の中ぐり加工を行う様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図12】第2ボア穴の中ぐり加工を行う様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図13】第3ボア穴の中ぐり加工を行う様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図14】中ぐり加工後に治具を受け渡し位置に復帰させた状態を示す中ぐり加工装置の正面図である。
図15】トランスファバーが後退位置で下降した次のワーク搬送前の様子を示す中ぐり加工装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した加工システム及び加工方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(1.加工システムSの全体構成)
加工システムSは、シリンダブロックを加工対象のワークWとするものであって、シリンダブロックの3つのボア穴Wbに中ぐり加工を施す加工システムである。図1は加工システムSの全体構成を示す正面図であり、図2は加工システムSの工程別概略説明図である。加工システムSは、図1図2に示すように、ワークWの搬入、ワークWの洗浄冷却を行うための搬入・洗浄冷却ステーションST1と、ワークWに中ぐり加工を行う加工ステーションST2と、加工後のワークWの検測を行うための検測ステーションST3と、隣接する搬入ステーションST1と加工ステーションST2との間、及び加工ステーションST2と検測ステーションST3との間でワークWを搬送するための搬送装置100と、を備えて構成される。
【0017】
(2.搬送装置100の構成)
搬送装置100は、長尺状のトランスファバーを用いてワークを搬送する公知の搬送装置であって、トランスファバー101と、トランスファバー101を鉛直方向(Z軸方向)と水平方向(X軸方向)とにそれぞれ往復動作させるトランスファバー駆動部110とを備えて構成される。尚、Z軸が本発明における鉛直な第1軸に対応し、X軸が水平な第2軸に対応する。
【0018】
トランスファバー101は、ワークWを位置決め載置して搬送するための長尺状部材であって、長手方向における搬入側の上面にワークWを位置決め載置するための搬入側載置部102が設けられ、搬出側の上面にも同様に搬出側載置部103が設けられている。搬入側載置部102及び搬出側載置部103には、ワークWの四隅の位置に対応して、本発明の載置部としての位置決めピン104が4本ずつ突設されている。ワークWは、トランスファバー101上面の搬入側載置部102及び搬出側載置部103において、ワークW下面の各位置決め穴に対応する各位置決めピン104を係合させることによって位置決め載置される。
【0019】
トランスファバー駆動部110は、図略の上下動機構および進退機構により駆動され、当該技術分野にて周知のリフト・アンド・キャリー運動を与える駆動機構である。
【0020】
(3.搬入・洗浄冷却ステーションST1の構成)
搬入・洗浄冷却ステーションST1には、加工前のワークWをクーラントによって予め冷却するための冷却装置200が設置されている。冷却装置200は、箱形のカバー201と、カバー201の入口201a及び出口201bに設けられたシャッター202と、カバー201内の上部に複数配列されてクーラントを噴出するノズル203と、洗浄冷却ステーションのワークWを位置決めする冷却用治具205とを備えて構成される。入口201aの外側が搬入ステーションであり、カバー201内が洗浄冷却ステーションである。図3は、洗浄冷却ステーションをトランスファバー191の長手方向と直交する面で切断して示す断面図である。搬入ステーションから洗浄冷却ステーションにかけてトランスファバー101の両側(トランスファバー101の長手方向と直交する方向の両側)には複数のローラ204が配列され、入口201aのシャッター202が開放されると、ワークWはローラ204の回転によってカバー201内へ搬送される。ワークWがカバー201内に搬送されると、シャッター202が下がって入口201aが閉鎖され、冷却用治具205が上昇してそれがワークW下面の位置決め穴に挿入され、ノズル203から噴出するクーラントが全体に吹きかけられる。クーラントは、加工ステーションST2での中ぐり加工時と同一温度に設定されているため、ワークWは搬入ステーションST1で中ぐり加工前に予め同一温度に冷却され、熱変位の影響の低減を図ることができる。
【0021】
出口201bのシャッター202が開放されると、冷却装置200で冷却されたワークWは、トランスファバー101の後退動作によって搬入側載置部102が出口201b側から進入した状態でトランスファバー101が上昇動作を行うことによって位置決めピン104によって位置決め載置され、トランスファバー101の前進動作、下降動作によって加工ステーションST2へ搬送される。出口201bのシャッター202が閉鎖され、入口201aのシャッター202が開放され、冷却用治具205が下降して次のワークWの搬入に備える。
【0022】
(4.加工ステーションST2(中ぐり加工装置1)の構成)
加工ステーションST2には、ワークWとしてのシリンダブロックのボア穴に中ぐり加工を施すための中ぐり加工装置1が設置される。図4は中ぐり加工装置1の外観を示す側面図であり、図5は中ぐり加工装置1の制御回路図である。中ぐり加工装置1は、図4図5に示すように、ベッド10と、コラム20と、主軸ヘッド30と、治具ユニット50と、タッチセンサ60と、制御装置80とを備える。
【0023】
ベッド10は、鋳物により厚肉平板状に形成され、床上に固定されている。ベッド10には、クーラント流路10aが形成されており、クーラント流路10aを温度調整されたクーラントが絶えず流れることによってベッド10の温度上昇の抑制が図られる。
【0024】
コラム20は、コラム本体21と、Z軸送り用ボールねじ(図示せず)と、Z軸送り用モータ22とを備えている。コラム本体21は、鋳物によりほぼ直方体状に形成され、ベッド10上に立設され、主軸ヘッド30を摺動可能に支持している。このコラム本体21の側面には、2本のガイドレール21cが鉛直方向に延びるように且つ平行に形成されている。Z軸送り用ボールねじは、2本のガイドレール21cの間に鉛直方向に延びるように、且つ、鉛直なZ軸周りに回転可能となるように、コラム本体21に支持されている。Z軸送り用モータ22は、コラム本体21の上端に配置され、Z軸送り用ボールねじを回転駆動するように、Z軸送り用ボールねじの上端に連結されている。コラム本体21内の上部には、クーラント供給管21aに連通してクーラントを噴出する複数のノズル21bが配列されている。ノズル21bから噴出し、温度調整されたクーラントが絶えずコラム本体21の内壁全体に吹きかけられることによって、温度上昇の抑制が図られ、ほぼ一定の温度に保たれる。
【0025】
主軸ヘッド30は、本発明の加工ヘッドであって、主軸ヘッド本体31と、主軸32と、工具35を保持する工具ホルダ34と、回転用モータ38と、回転伝達機構39とを備えている。主軸ヘッド30の詳細な構成は後述する。ここでは、主軸ヘッド30の概要について説明する。
【0026】
主軸ヘッド本体31がコラム本体21に対して鉛直方向に摺動可能に支持されている。この主軸ヘッド本体31には、鉛直なZ軸回りに回転可能に主軸32が設けられている。この主軸32の下端に、工具ホルダ34が固定されている。つまり、工具ホルダ34を軸心回りに回転させながら、シリンダブロックであるワークWに対してZ軸方向に送ることによってボア穴Wbを中ぐり加工する。ここで、主軸32の回転は、回転伝達機構39を介して、回転用モータ38が駆動することにより行われる。
【0027】
治具ユニット50は、ベッド10上に配置されており、コラム本体21の前面側であって、主軸ヘッド本体31の下側に位置している。治具ユニット50は、ワークWを位置決めし載置するための加工用治具としての位置決めピン51pと、ワークWを上から押さえつけてクランプするクランプ装置59(図4にて図示略)と、ベッド10上面に固定されて位置決めピン51pを支持すると共にX軸方向及びY軸方向に移動させるテーブル部52とを備えて構成される。Y軸は、X軸と直交する水平方向であり、本発明における第2軸と交差する水平な第3軸に対応する。後述するY軸テーブル51の上面には、ワーク搬送方向と直交する中央部にU字状空間51aがワーク搬送方向に貫通して形成され、このU字状空間51aを通るトランスファバー101によってワークWが搬送される。治具51上面には、ワークWを位置決めするための治具側位置決め部、加工用治具としての位置決めピン51pが設けられ、この位置決めピン51pがワークWの下面に形成された位置決め穴に係合することによって位置決めがなされる。クランプ装置59は、制御装置80からの指令に応じてワークWを固定するクランプ状態とワークWを解放するアンクランプ状態とを切り替え可能に構成されている。
【0028】
テーブル部52は、ベッド10上面に固定されるX軸送り機構53と、ベッド10上面にX軸方向に摺動可能に支持され、X軸送り機構53によってX軸方向に送られるX軸テーブル部55と、X軸テーブル部55に固定されるY軸送り機構54と、X軸テーブル55上面にY軸方向に摺動可能に支持され、Y軸送り機構54によってY軸方向に送られるY軸テーブル部51とを備えて構成される。尚、Y軸テーブル部51が、本発明の治具を構成するものである。X軸送り機構53は、X軸送り用モータ53aを備え、X軸送り用ボールねじを駆動することによりベッド10に対してコラム本体21の両端間でX軸テーブル55をX軸方向に移動自在とされている。Y軸送り機構54は、Y軸送り用モータ54aを備え、Y軸送り用ボールねじを駆動することによりY軸テーブル51をコラム本体21に対して接近又は離間するY軸方向に移動自在とされている。そして、治具ユニット50は、トランスファバー101に載置されてU字状空間51aへ搬入されてきたワークWを位置決めピン51pで位置決めしてクランプ装置59でクランプする。
【0029】
タッチセンサ60は、先端に測定子を備えており、この測定子を被測定物に接触させ、測定子が被測定物に接したときのY軸テーブル51の位置をY軸送りモータ53aについている図略のY軸エンコーダで読み取ることによって被測定物の位置を検出するように構成された公知の接触センサである。タッチセンサ60は、主軸ヘッド本体31において、ワークWの搬出側における主軸32の隣に設けられている。タッチセンサ60は、主軸ヘッド本体31と共に、治具51の上面に接近または離間するZ軸方向に移動可能である。このタッチセンサ60は、主軸32と治具51とのY軸方向の相対位置を測定する。具体的には、タッチセンサ60は、治具51側に固定された基準穴ブロック70上面の基準穴71のY軸方向の2位置を測定する。尚、タッチセンサ60と基準穴71とで、本発明の位置ずれ検知部が構成される。
【0030】
基準穴ブロック70は、直方体ブロック状に形成され、上面中央に水平断面が円形の基準穴71が設けられている。基準穴ブロック70は、温度の影響を受けにくい材質によって形成することが好ましく、例えば、低膨張鋳物を好適に用いることができる。基準穴ブロック70は、治具ユニット50のY軸テーブル51上に配置され、X軸テーブル55をX軸送り機構53によってY軸方向に駆動して、タッチセンサ60直下の測定位置へ移動させることができる。この後、タッチセンサ60を下降させ、Y軸送り機構54によりY軸テーブル51をコラム本体21に対して接近する方向へ移動させて接触検知し、Y軸エンコーダの値を読み取り、続いてコラム本体21に対して離間する方向に移動させて接触検知し、Y軸エンコーダの値を読み取り、Y軸エンコーダで読み取った2つの値から基準穴71の中心の位置を演算する。演算した基準穴71の中心位置と、理論上の基準穴71の中心位置との差から、熱膨張による基準穴71の中心位置のずれを検出する。この後、タッチセンサ60を上昇させ、X軸テーブル55をX軸送り機構53によってX軸方向に駆動してタッチセンサ60とX軸テーブル55を元の位置、すなわち加工を行える位置へ戻す。
【0031】
(4.1 主軸ヘッド30の構成)
主軸ヘッド30の詳細構成について、図4を参照しつつ説明する。上述したように、主軸ヘッド30は、主軸ヘッド本体31と、主軸32と、工具ホルダ34と、回転用モータ38と、回転伝達機構39とを備えている。
【0032】
主軸ヘッド本体31は、鋳物によりほぼ直方体状に形成されている。この主軸ヘッド本体31の背面にはボールねじナット(図示せず)が取付けられている。このボールねじナットは、コラム本体21に取り付けられたZ軸送り用ボールねじに螺合している。つまり、コラム本体21に取り付けられたZ軸送り用モータ22を回転駆動させることにより、Z軸送り用ボールねじが回転し、その回転に伴って主軸ヘッド本体31がコラム本体21に対して鉛直方向に移動する。主軸32は、円筒状からなり、主軸ヘッド本体31に軸受を介して回転可能に挿通されている。
【0033】
(4.2 制御装置80の構成)
次に、制御装置80の詳細構成について、図5の制御回路図を参照しつつ説明する。図5に示すように、制御装置80は、加工制御部82と、測定制御部83と、補正部84とから構成される。
【0034】
加工制御部82は、加工プログラムに基づいて加工に必要な各種モータを制御する。具体的には、加工制御部82は、主軸ヘッド30を駆動するZ軸送り用モータ22、回転用モータ38、治具ユニット50のX軸送り用モータ53aを制御する。
【0035】
測定制御部83は、主軸32と治具51との相対位置を測定するための一連の動作を制御する。具体的には、測定制御部83は、タッチセンサ60を基準穴71に挿入・離脱するために主軸ヘッド30をZ軸方向に駆動するZ軸送り用モータ22を制御すると共に、タッチセンサ60を基準穴71にY軸方向に接触させるために、Y軸テーブル51をコラム本体21に対して接近する方向に移動させたり、Y軸テーブル51をコラム本体21に対して離間する方向に移動させたりして測定動作を行って、主軸ヘッド30(タッチセンサ60)とY軸テーブル51(基準穴71)とのY軸方向の位置ずれを検知する。
【0036】
補正部84は、タッチセンサ60がY軸方向の2位置で基準穴71に接触したときのY軸テーブル51の位置、Y軸エンコーダの値を入力し、Y軸方向の2位置から基準穴71の中心を演算し、演算した基準穴71の中心位置と、理論上の基準穴71の中心位置との差を演算し、その差分だけY軸送り用モータ54aを制御してY軸テーブル51をY軸方向に移動させ、熱膨張によるコラム本体21の倒れによる主軸32のY軸方向の位置ずれをY軸テーブル51のY軸方向の移動によって補正する。
【0037】
(4.3 中ぐり加工動作の流れ)
次に、中ぐり加工装置1において実行されるワークWのボア穴Wbの中ぐり加工動作の流れについて、図6のフローチャートに沿って図7図15を適宜参照しつつ説明する。
【0038】
初期状態において、Y軸テーブル51はテーブル部52上でワーク受け渡し用の原位置(x0、y0)に位置している。ワーク受け渡し用の原位置は、テーブル部52によって設定されるY軸テーブル51の初期位置であって、トランスファバー101からY軸テーブル51へワークWの受け渡しが行われる際のY軸テーブル51の特定位置である。すなわち、トランスファバー101の搬入側載置部102に位置決めピン104で位置決めされたワークWを、Y軸テーブル51に受け渡して位置決めピン51pで位置決め載置するためには、Y軸テーブル51を常に同じ特定位置に設定してワークWの受け渡しをする必要があるからである。
【0039】
まず、ステップ1(以下、S1と略記する。他のステップも同様。)で、ワーク搬送を行う。具体的には、搬入側載置部102が搬入ステーションST1へ後退しているトランスファバー101を上昇させ、洗浄・冷却ステーションの冷却用治具205に位置決めされた未加工のワークWを搬入側載置部102で位置決めピン104により位置決めしつつ載置すると同時に、加工済みのワークWを搬出側載置部103で位置決めピン104により位置決めしつつ載置する。図7は、トランスファバー101の搬入側載置部102に未加工のワークWが、搬出側載置部103に加工済みのワークWが、それぞれ載置された状態を示している。
【0040】
次に、トランスファバー101を搬入側載置部102が加工ステーションST2内となる位置へ前進させて、搬入側載置部102に載置された未加工のワークWをY軸テーブル51のU字状空間51aの位置へ搬送すると共に、搬出側載置部103に載置された加工済みのワークWを検測ステーションST3へ搬送する。続いて、トランスファバー101を下降させて、搬入側載置部102に載置された未加工のワークWを各位置決めピン104から離脱させながら、Y軸テーブル51上へ位置決めピン51pを介して位置決めしつつ載置する。同時に、搬出側載置部103に載置された加工済みのワークWを各位置決めピン104から離脱させながら、検測ステーションST3の検測用治具303へ位置決めしつつ載置する。つまり、S1において、搬送装置100は、ワークWを搬入ステーションST1から加工ステーションST2へ搬送する際、Y軸テーブル51がテーブル部52によってワーク受け渡し用の原位置に設定された状態で、トランスファバー101の搬入側載置部102で位置決めピン104に位置決め支持されたワークWをY軸テーブル51へ受け渡して位置決めピン51pに位置決めするのである。図8は、未加工のワークWがY軸テーブル51上に載置された状態を示している。
【0041】
次に、S2で、ワークWのクランプを行う。具体的には、未加工のワークWが加工用治具51p上に載置された状態で、クランプ装置59を駆動してワークWをY軸テーブル51にクランプし固定する。
【0042】
次に、S3で、主軸ヘッド30(タッチセンサ60)とY軸テーブル51(基準穴71)との位置ずれ検知を行う。具体的には、測定制御部83がX軸送り用モータ53aを制御して、基準ブロック70の基準穴71がタッチセンサ60の直下となる測定位置へ治具51をX軸方向に所定距離Lだけ後退させる。例えば、ワーク受け渡し用の原位置を(x0,y0)としたとき、測定位置は(x0-L,y0)と表される。続いて、測定制御部83は、Z軸送り用モータ22を制御して主軸ヘッド30を下降させてタッチセンサ60先端の測定子を基準穴71へ差し込む。熱膨張が無く位置ずれが無いときは、タッチセンサ60は基準穴71の中心に位置する。Y軸テーブル51をコラム本体21に対して接近する方向に移動させ、タッチセンサ60が基準穴71に接触したらY軸テーブル51の移動を停止させ、Y軸エンコーダの値を読み取る。続いて、Y軸テーブル51をコラム本体21に対して離間する方向へ移動させ、タッチセンサ60が基準穴71に接触したらY軸テーブル51の移動を停止させ、Y軸エンコーダの値を読み取る。Y軸エンコーダの2つの値を足して2で除算すると、現在の基準穴71の中心が求まる。演算した基準穴71の中心位置と、理論上の基準穴71の中心位置との差を演算し、その差分だけY軸テーブル51の位置を補正する。その後、Z軸送り用モータ22を制御して主軸ヘッド30を元の高さまで上昇させる。図9は、タッチセンサ60により基準穴71の位置測定を行う様子を示し、図10は基準穴71の位置測定が終了してタッチセンサ60を支持する主軸ヘッド30が測定前の高さに戻った様子を示している。
【0043】
次に、S4で位置ずれ補正動作を行う。具体的には、補正部84が、タッチセンサ60による測定結果に基づいてY軸送り用モータ54aを制御してY軸テーブル51をY軸方向へ移動させて位置ずれ補正を行う。例えば、理論上の基準穴71の位置を(x0-L,y0)とし、タッチセンサ60の測定結果の位置座標を(x0-L,y1)とした場合、補正部84が、Y軸送り用モータ54aを制御してY軸方向へ位置ずれ分Δy=y1-y0だけ移動させることにより、Y軸テーブル51の位置ずれ補正が行われる。つまり、中ぐり加工装置1は、S3~S4で、Y軸テーブル51がワークWを位置決めピン51pに位置決め支持した状態で測定制御部83によりタッチセンサ60で位置ずれを検知し、補正部84により治具51をX軸方向及びY軸方向へ移動させて位置ずれを補正し、その後S5~S7で主軸ヘッド30により加工動作を行っている。位置ずれ部Δyは、大きくても数十μmから数百μm程であり、これだけ移動させてもY軸テーブル51とトランスファバー101が干渉する恐れがない。基準穴71の直径は、せいぜい20mmであり、基準穴71の中心からコラム本体21に接近する方向あるいは離間する方向に10mm移動させてもY軸テーブル51とトランスファバー101が干渉する恐れがない。
【0044】
次に、S5で第1ボア穴Wbの加工を行う。ここで、ワークWであるシリンダブロックに設けられた3つのボア穴のうち搬出側のボア穴を第1ボア穴Wbと称し、真ん中を第2ボア穴Wb、搬入側のボア穴を第3ボア穴Wbと称する。具体的には、加工制御部82がX軸送り用モータ53aを制御して治具51をX軸方向へ前進移動させ、第1番ボア穴Wbを主軸32の直下に位置させる。続いて、加工制御部82は、Z軸送り用モータ22を制御して主軸ヘッド30を下降させると同時に、回転用モータ38を制御して第1番ボア穴Wbの中ぐり加工を実施する。尚、ボア穴Wbの中ぐり加工動作において、主軸ヘッド30によりZ軸方向のみへの送り動作が行われ、X軸方向及びY軸方向への送り動作は行われない。図11は、第1ボア穴Wbの中ぐり加工を行う様子を示している。
【0045】
次に、S6で第2ボア穴Wbの加工を行う。具体的には、加工制御部82がX軸送り用モータ53を制御して治具51を隣接するボア穴Wbの中心間のピッチ分だけX軸方向に後退させ、2番目のボア穴Wbを主軸32の直下に位置させる。続いて、加工制御部82は、Z軸送り用モータ22を制御して主軸ヘッド30を下降させると同時に、回転用モータ38を制御して第2番ボア穴Wbの中ぐり加工を実施する。図12は、第1ボア穴Wbの中ぐり加工を行う様子を示している。
【0046】
次に、S7で第3ボア穴の加工を行う。具体的には、加工制御部82がX軸送り用モータ53を制御して治具51を隣接するボア穴Wbの中心間のピッチ分だけX軸方向に後退させ、3番目のボア穴Wbを主軸32の直下に位置させる。続いて、加工制御部82は、Z軸送り用モータ22を制御して主軸ヘッド30を下降させると同時に、回転用モータ38を制御して第3ボア穴Wbの中ぐり加工を実施する。図13は、第1ボア穴Wbの中ぐり加工を行う様子を示している。つまり、S5~S7では、S6で治具51が位置ずれ補正された状態で各ボア穴Wbの中ぐり加工を実施するので、熱変位の影響を排除して高精度に加工を行うことができる。
【0047】
第3ボア穴Wbの中ぐり加工が終了すると、S8でY軸テーブル51をワーク受け渡し用の原位置(x0,y0)へ復帰移動させる。具体的には、X軸送り用モータ53a及びY軸送り用モータ54aを制御して、Y軸テーブル51をS1と同じ位置である原位置(x0,y0)へ復帰移動させる。図14は、Y軸テーブル51を原位置に復帰移動させた状態を示している。
【0048】
続いて、S9でワークWのアンクランプを行う。具体的には、制御装置がクランプ装置59を制御してアンクランプ駆動し、ワークWをY軸テーブル51からアンクランプして固定を解除する。
【0049】
次に、S10で、次に加工するワークWの搬送準備のために、トランスファバー101の後退動作を行う。すなわち、トランスファバー101を、図15に示すように、搬入側載置部102が搬入ステーションST1内となる位置まで後退動作させる。この後、S1へ戻り、以後、S1からS10を繰り返す。
【0050】
つまり、本実施形態に係る加工方法は、ワークWをトランスファバー101の位置決め部ピン104に位置決め支持して搬入ステーションST1から加工ステーションST2へ搬送し(S1)、主軸ヘッド30の下方に配置されるY軸テーブル51がワーク受け渡し用の原位置に設定された状態で、ワークWをトランスファバー101からY軸テーブル51へ受け渡して位置決めピン51pに位置決め支持してクランプし(S2)、Y軸テーブル51がワークWをクランプした状態で加工ヘッドとしての主軸ヘッド30とY軸テーブル51との間の位置ずれを検知し(S3)、治具51をX軸及びY軸を含む水平方向へ移動させて位置ずれを補正し(S4)、主軸ヘッド30をZ軸方向に移動させながらワークWに対し加工動作を行い(S5~S7)、ワークWの加工終了後、Y軸テーブル51をワーク受け渡し用の原位置に復帰させ(S8)、加工終了後のワークWをアンクランプし(S9)、トランスファバー101を加工ステーションST2から搬入ステーションST1へ復帰移動させるものである(S10)。
【0051】
(5.検測ステーションST3の構成)
検測ステーションST3には、加工後のワークWを検測するための検測装置300が設置されている。検測装置300は、測定ヘッド301と、測定ヘッド301を鉛直なZ軸方向に駆動するZ軸駆動機構302z及び測定ヘッド301をワークWの搬送方向であるX軸方向に駆動するX軸駆動機構302xを有するヘッド駆動部302と、検測対象のワークWを位置決め支持する検測用治具303と、トランスファバー101の両側(トランスファバー101の長手方向と直交する方向の両側)に配列された複数のローラ304とを備えて構成される。検測用治具303は、シリンダ装置によって上下動する。
【0052】
測定ヘッド301は、ワークWであるシリンダブロックのボア穴Wbの内径よりも一回り小さい外径を有する円筒状に形成され、加工ステーションST2で中ぐり加工が終了したシリンダブロックのボア穴Wbの内径を測定する。
【0053】
X軸駆動機構302xは、測定ヘッド301をX軸方向へ駆動して、シリンダブロックの第1~第3ボア穴Wbの中心位置まで順次移動させる。そして、測定ヘッド301をZ軸駆動機構302zにより下降させてボア穴Wb内に挿入し、ボア穴Wbの内径を測定する。ボア穴Wbの内径測定後、測定ヘッド301は上昇し、X軸方向の原点に復帰する。検査用治具303は下降し、ローラ304にワークWが支持され、加工システムSの外へ搬出される。ワークWの搬出後、検測用治具303は上昇し、次の搬入に備える。測定ヘッド301により測定されたボア穴Wbの内径が所定の基準寸法を満たさない場合は不良として検出される。よって、加工システムSによれば、ワークWの搬入、中ぐり加工及び検測まで円滑に実施することができる。
【0054】
(6.まとめ)
本実施形態によれば、搬送装置100は、トランスファバー101の位置決め部104に位置決め支持されたワークWを、ワーク受け渡し用の原位置(x0,y0)に設定されたY軸テーブル51へ確実に受け渡し、位置決めピン51pに位置決めすることができる。また、中ぐり加工装置1は、Y軸テーブル51がワークWを位置決めピン51pに位置決め支持した状態でタッチセンサ60により位置ずれを検知し、補正部84によりY軸テーブル51をY軸方向へ移動させて位置ずれを補正した状態で主軸ヘッド30により加工動作を行うことができる。よって、熱変位の影響を排除して高精度に加工を行うことができるという効果を奏する。尚、従来は季節によりボア穴の位置度の調整を行っていたが、本実施形態によれば、加工システムS自身で位置ずれ補正がなされるので、季節による調整が不要となる。
【0055】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をシリンダブロックのボア穴の中ぐり加工を行う加工システムに適用した例を示したが、これには限られない。本発明は、シリンダブロックのボア穴以外の中ぐり加工を行う加工システムに適用してもよく、中ぐり加工以外の加工を行う加工システムに適用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、接触式のタッチセンサ60により基準穴71の位置を測定して位置ずれを検知する構成としたが、光を用いる非接触式のセンサにより位置ずれを検知する構成としてもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、加工ステーションSt2の前ステーションを搬入・洗浄冷却ステーションST1、加工ステーションST2の後ステーションを検測ステーションST3としたが、前ステーション、後ステーションとも加工ステーションとしてもよい。いずれも加工ステーションST2の中ぐり加工装置1と同様な加工装置を備え、工具は中ぐりでなく、ドリル、エンドミルなどであってもよい。加工ステーション毎に熱膨張によるコラム本体21の倒れ量が異なり、主軸32のY軸方向の位置ずれ量が異なるので、Y軸テーブル51のY軸方向の移動量も異なる。また、冷却用治具205、検測用治具303を用いる代わりに、シリンダ装置によって進退するストッパにワークWを当てて、ワークWを位置決めしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
S…加工システム、W…ワーク、ST1…搬入・洗浄冷却ステーション、ST2…加工ステーション、ST3…検測ステーション、1…中ぐり加工装置(加工装置)、10…ベッド、20…コラム、30…主軸ヘッド(加工ヘッド)、51…Y軸テーブル(治具)、51p…位置決めピン(治具側位置決め部)、52…テーブル部、60…タッチセンサ(センサ、位置ずれ検知部)、71…基準穴(基準部、位置ずれ検知部)、83…測定制御部、84…補正部、100…搬送装置、101…トランスファバー、104…位置決めピン(載置部)、200…冷却装置。
図1
図2
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図10
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図15