(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】車両の排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20220809BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20220809BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220809BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F01N13/00 A
F01N3/00 F
F01N3/24 J
F02D35/00 368E
(21)【出願番号】P 2018109930
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 翔太
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127511(JP,A)
【文献】特開2000-310116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
F01N 3/00
F01N 3/24
F02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車のエンジンに接続される排気管と、
前記排気管の下流側に接続されるマフラと、
前記マフラ内に配置される触媒と、
排気ガス中の所定成分を検出する排気ガスセンサと、を備え、
前記マフラは前記自動二輪車の後輪の側方に配置され、前記排気管は前記マフラのマフラボディの中心軸より下側に偏って前記マフラボディの前面側に接続され、
前記
排気管の下流側に接続され
て前記マフラボディ内に配置される配管
は、前記排気管の下流側端部から前記マフラボディの中心軸に沿って後方へ延びる第1のストレートパイプと、前記第1のストレートパイプの後端から上方に湾曲してから前記マフラボディの中心軸付近で前方に湾曲するU字パイプと、前記マフラボディの中心軸より上側に偏って前記マフラボディの中心軸に沿って前記U字パイプから前方に延びる第2のストレートパイプと、を備え、
前記第1のストレートパイプと前記第2のストレートパイプのいずれかに前記触媒が配置され、
前記第2のストレートパイプの前端が前記マフラ
ボディの前面
を貫通し、
前記排気ガスセンサは、
前記第2のストレートパイプの前端に取り付けられ
、前記マフラボディの前方に突出して前記排気管の上方に位置することを特徴とする車両の排気装置。
【請求項2】
前記触媒は、前記第1のストレートパイプに配置されており、
前記第2のストレートパイプの前端近傍には、外面を貫通して前記マフラボディの内部空間に通じる複数の開放孔を備え、
前記複数の開放孔は前記触媒の上方に位置し、前記マフラの側面視で、前記複数の開放孔の一部が前記マフラの前後方向において前記触媒と重なっていることを特徴とする請求項1に記載の車両の排気装置。
【請求項3】
前記第2のストレートパイプの前端は、前記マフラボディの前面と同じ位置に設けられ、
前記排気ガスセンサの検出部は、前記マフラボディ内に位置し、前記第2のストレートパイプの軸方向で前記複数の開放孔の一部と重なり、
前記排気ガスセンサは、軸方向が前記第2のストレートパイプと平行に向けられ、前記マフラボディの幅内に配置されることを特徴とする請求項2に記載の車両の排気装置。
【請求項4】
前記マフラ
ボディの外面には、当該マフラ
ボディを車体に取り付けるためのブラケットが設けられ、
前記排気ガスセンサは、前記ブラケットよりも車両内側に配置され、側面視において少なくとも一部が前記ブラケットに重なることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の車両の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の排ガス規制に伴い、車両用エンジンの排気システムにおいては、排気ガスを浄化する触媒の劣化状況をモニタすることが求められている。例えば、特許文献1では、触媒の下流側に排気ガスの酸素濃度を検出する酸素センサが設けられている。
【0003】
具体的に特許文献1では、消音器の内部が複数の隔壁(セパレータ)によって区画されており、複数の膨張室が形成されている。消音器の内部には触媒が配置されており、触媒の下流端が所定の膨張室内に突出するまで延びている。また、各膨張室及び触媒には、複数の排気管が接続されている。酸素センサは、触媒の下流側における排気管を貫通するように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、酸素センサを配置するために消音器の外壁の一部を凹ませている。よって、外壁が凹んだ分だけ膨張室の容積が小さくなり、排気ガスの消音効果が低減するおそれがある。また、排気ガスは下流に行くほど温度が下がるため、触媒や酸素センサの温度活性化の観点から、排気浄化性能を確保しつつ排気ガスの酸素濃度を適切に検出することができないおそれがある。
【0006】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、マフラの容量を犠牲にすることなく適切に排気ガスの酸素濃度を検出することができる車両の排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の車両の排気装置は、自動二輪車のエンジンに接続される排気管と、前記排気管の下流側に接続されるマフラと、前記マフラ内に配置される触媒と、排気ガス中の所定成分を検出する排気ガスセンサと、を備え、前記マフラは前記自動二輪車の後輪の側方に配置され、前記排気管は前記マフラのマフラボディの中心軸より下側に偏って前記マフラボディの前面側に接続され、前記排気管の下流側に接続されて前記マフラボディ内に配置される配管は、前記排気管の下流側端部から前記マフラボディの中心軸に沿って後方へ延びる第1のストレートパイプと、前記第1のストレートパイプの後端から上方に湾曲してから前記マフラボディの中心軸付近で前方に湾曲するU字パイプと、前記マフラボディの中心軸より上側に偏って前記マフラボディの中心軸に沿って前記U字パイプから前方に延びる第2のストレートパイプと、を備え、前記第1のストレートパイプと前記第2のストレートパイプのいずれかに前記触媒が配置され、前記第2のストレートパイプの前端が前記マフラボディの前面を貫通し、前記排気ガスセンサは、前記第2のストレートパイプの前端に取り付けられ、前記マフラボディの前方に突出して前記排気管の上方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マフラの容量を犠牲にすることなく適切に排気ガスの酸素濃度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る車両の排気装置周辺の右側面図である。
【
図2】本実施の形態に係るマフラの内部構造を示す斜視図である。
【
図4】第1変形例に係るマフラの内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明をスクータタイプの二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を、他のタイプの車両、例えばバギータイプの三輪車、四輪車等の鞍乗型車両に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印REでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両の排気装置周辺の右側面図である。
【0012】
図1に示すように、自動二輪車1は、スクータタイプの自動二輪車であり、鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム(不図示)にエンジン2を懸架(支持)して構成される。車体フレームは、外装カバー3によって覆われる。エンジン2は、例えば、ユニットスイング式の単気筒エンジンで構成される。なお、エンジン2の構成は、これに限らず適宜変更が可能である。
【0013】
エンジン2は、図示しないシート下方に配置される。エンジン2の後方には、スイングアーム4を介して後輪5が取り付けられている。また、エンジン2の排気ポート(不図示)には、エキゾーストパイプ6を介してマフラ7が接続されている。詳細は後述するが、エキゾーストパイプ6及びマフラ7は、本実施の形態に係る車両の排気装置を構成する。
【0014】
エキゾーストパイプ6は、エンジン2の右方且つ下方を通って後方に延びている。マフラ7は、エキゾーストパイプ6の下流側に接続され、スイングアーム4及び後輪5の右側に配置される。エキゾーストパイプ6の下方には、センタースタンド8が配置される。また、詳細は後述するが、マフラ7の前端には排気ガスセンサ9が取り付けられる。排気ガスセンサ9は、センサカバー10によって覆われる。マフラ7の外面には、マフラカバー11が取り付けられる。
【0015】
次に
図2及び
図3を参照して、本実施の形態に係る車両の排気装置について説明する。
図2は、本実施の形態に係るマフラの内部構造を示す斜視図である。
図3は、本実施の形態に係るマフラの断面図である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、車両の排気装置は、車両用のエンジン2(
図1参照)に接続されるエキゾーストパイプ6と、エキゾーストパイプ6の下流側に接続されるマフラ7と、マフラ7内に配置される触媒74と、排気ガス中の所定成分を検出する排気ガスセンサ9と、を含んで構成される。エキゾーストパイプ6及びマフラ7により、エンジン2からの排気ガスを排出するための排気通路が形成される。
【0017】
マフラ7は、前後に延びる略円柱形状の内部空間を形成するマフラボディ70を備えている。マフラボディ70は、円筒状の外筒部及び内筒部を重ねた二重管構造を有している。マフラボディ70の外形は、エキゾーストパイプ6の外径より十分に大きく設定されている。マフラボディ70の先端は蓋部材としてのヘッド部70aによって塞がれ、マフラボディ70の後端は蓋部材としてのテール部70bによって塞がれる。マフラボディ70の先端(ヘッド部70a)にエキゾーストパイプ6の下流端が接続される。エキゾーストパイプ6下流端は、マフラボディ70の中心軸より下側に偏って接続される(
図3参照)。
【0018】
また、マフラボディ70の内部空間は、3つの隔壁によって前後方向に3つの膨張室S1-S3に区画されている。3つの隔壁は、マフラ7の前方から第1バッフルプレート71a、第2バッフルプレート71b、第3バッフルプレート71cの順に配置される。第1バッフルプレート71aより前側の空間が膨張室S1であり、第1バッフルプレート71a、第2バッフルプレート71b間の空間が膨張室S2であり、第2バッフルプレート71b、第3バッフルプレート71c間の空間が膨張室S3である。
【0019】
マフラボディ70内には、各膨張室S1-S3を連通してマフラボディ70の排気通路を形成する複数のバッフルパイプ等が配置される。具体的にマフラボディ70内には、エキゾーストパイプ6の下流端に接続される第1バッフルパイプ72a(第1のストレートパイプ)、膨張室S1、S3を連通する第2バッフルパイプ72b、膨張室S3、S2を連通する第3バッフルパイプ72c、及び膨張室S2とマフラ7の外部とを連通するテールパイプ72dが配置される。
【0020】
第1バッフルパイプ72aは、マフラボディ70の先端部分(ヘッド部70a)において、エキゾーストパイプ6に接続される。第1バッフルパイプ72aは、エキゾーストパイプ6と同一径のままマフラボディ70の軸方向に沿って後方に延びている。第1バッフルパイプ72aは、第1バッフルプレート71aを貫通し、その下流端が膨張室S2内に入り込んでいる。
【0021】
第1バッフルパイプ72aの下流端には、排気流路を反転させるU字パイプ73が接続される。U字パイプ73は、膨張室S2内で第1バッフルパイプ72aと同一径を維持しながら後方且つ上方に湾曲し、マフラボディ70の中心軸付近で前方且つ上方に湾曲した側面視U字状に形成される。
【0022】
U字パイプ73の下流端には、第1テーパパイプ74aが接続される。第1テーパパイプ74aは、第1バッフルパイプ72aの下流端の真上に位置し、膨張室S2内で下流(前方)に向かうに従って拡径している。
【0023】
第1テーパパイプ74aの下流端(前端)には、触媒74(第2のストレートパイプ)が接続される。触媒74は、膨張室S2から第1バッフルプレート71aを貫通して前方の膨張室S1で前方に向かって延びている。触媒74は、拡径した第1テーパパイプ74aに連なる外筒部内に円柱状のハニカム部を収容して構成される。触媒74は、第1バッフルパイプ72aの真上に位置し、第1バッフルパイプ72aと平行に前方に向かって延びている。触媒74は、例えば三元触媒で構成され、排気ガス内の汚染物質(一酸化炭素、炭化水素や窒素酸化物等)を吸着して無害な物質(二酸化炭素、水、窒素等)に変換する。
【0024】
触媒74の下流端(前端)には、第2テーパパイプ74bが接続される。第2テーパパイプ74bは、膨張室S1内で下流(前方)に向かうに従って縮径している。特に第2テーパパイプ74bは、触媒74の中止軸に対して上方に偏るように縮径している。このため、第2テーパパイプ74bの下流端における中心位置が、上流端における中心位置より上方にずれている。すなわち、第2テーパパイプ74bの出口がマフラボディ70の内面(内筒部)に近づけられている。
【0025】
第2テーパパイプ74bの下流端(前端)には、外面に複数の開放孔75aが形成されたパンチングパイプ75(第2のストレートパイプ)が接続される。パンチングパイプ75は、縮径した第2テーパパイプ74bと同一径で前方に向かって延びている。パンチングパイプ75の先端は、ヘッド部70aを貫通し、ヘッド部70aの前面から外部に突出している。複数の開放孔75aは、パンチングパイプ75の軸方向略中央から後方に至る部分に、周方向及び軸方向に所定間隔で並んで形成されている。これにより、パンチングパイプ75と膨張室S1とが連通される。
【0026】
マフラ7の外部に突出したパンチングパイプ75の下流端(先端)には、ナット76を介して排気ガスセンサ9が取り付けられる。ナット76は、中心がパンチングパイプ75の中心に一致するように溶接される。排気ガスセンサ9は、所定の長さを有する円柱状に形成され、一端側が検出部9aを構成する。排気ガスセンサ9の他端側には配線(不図示)が接続される。
【0027】
排気ガスセンサ9は、検出部9aをパンチングパイプ75内に挿入するようにしてナット76にねじ込むことで取り付けられる。このように、排気ガスセンサ9によってパンチングパイプ75の先端が塞がれる。また、検出部9aがパンチングパイプ75内に入り込むことで、パンチングパイプ75に流れ込む排気ガス中の所定成分を検出することが可能になる。
【0028】
第1バッフルパイプ72aの右側には、第2バッフルパイプ72bが配置される。第2バッフルパイプ72bは、第1バッフルパイプ72aと平行に延びており、上流端である先端がパンチングパイプ75の開放孔75a近傍に位置づけられている。すなわち、第2バッフルパイプ72bの上流端は、膨張室S1内で開放されている。第2バッフルパイプ72bは、第1バッフルプレート71a及び第2バッフルプレート71bを貫通し、その下流端が膨張室S3内で開放されている。第2バッフルパイプ72bにより、膨張室S1、S3が連通される。
【0029】
U字パイプ73を挟んで第2バッフルパイプ72bの左側には、第3バッフルパイプ72cが配置される。第3バッフルパイプ72cは、第2バッフルパイプ72bと平行に延びており、上流端である後端が膨張室S3内で開放されている。第3バッフルパイプ72cは、第2バッフルプレート71bを貫通し、その下流端である前端が膨張室S2内で開放されている。第3バッフルパイプ72cにより、膨張室S3、S2が連通される。
【0030】
第3バッフルパイプ72cの上側には、テールパイプ72dが配置される。テールパイプ72dは上流端である前端が膨張室S2内で開放されており、第2バッフルプレート71bを貫通して後方に延びている。また、テールパイプ72dは、膨張室S3内で上方に僅かに屈曲しながら後方に延び、更に第3バッフルプレート71c及びテール部70bを貫通する。これにより、テールパイプ72dの下流端がマフラ7の外部に開放され、膨張室S3と外部とが連通される。
【0031】
このように構成される車両の排気装置において、エンジン2から発生する排気ガスは、エキゾーストパイプ6を通じてマフラ7内に流れ込む。マフラ7内において、排気ガスは、第1バッフルパイプ72aを通じて後方に流れ、U字パイプ73によって流路方向が前方に向かうように反転される。その後、排気ガスは、触媒74に流れ込み浄化される。浄化された後の排気ガスは、パンチングパイプ75の先端で検出部9aにぶつかってから開放孔75aを通じて膨張室S1内に拡散される。
【0032】
膨張室S1内の排気ガスは、第2バッフルパイプ72bを通じて後方の膨張室S3内に流れ込む。当該排気ガスは、第3バッフルパイプ72cを通じて前方の膨張室S2に流れ込み、テールパイプ72dを通じて外部に排出される。このように、マフラ内では、排気ガスが複数のバッフルパイプ及び3つの膨張室S1-S3を通じて圧縮膨張が繰り返されることにより、消音されると共に外部へ排出される。
【0033】
ところで、昨今の排ガス規制に伴い、触媒の下流における排気ガス中の酸素濃度を正確に測定する必要がある。しかしながら、マフラ内に触媒が配置される場合、触媒の下流端に取り付けられる配管に排気ガスを配置することが困難となることが想定される。このため、排気ガス中の酸素濃度を正確に測定できなくなるおそれがあった。
【0034】
また、排気ガスセンサの配置スペースを確保するためにマフラに凹部を形成することが考えられる。しかしながら、凹部によってマフラの容量が減少するため、騒音悪化の要因となり得る。また、マフラに直接排気ガスセンサを設けることで従来よりも排気ガスセンサの位置が車両後方となってしまい、配線の取り回しが困難になることも想定される。
【0035】
そこで、本件発明者は、マフラ内に触媒が配置される場合において、触媒の下流側に接続される配管とマフラボディとの位置関係に着目し、本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、マフラボディ70内の触媒74の下流側に接続される配管(パンチングパイプ75)をマフラボディ70の前面から外部に突出させ、排気ガスセンサ9を外部に突出したパンチングパイプ75の下流端(先端)に取り付ける構成とした。
【0036】
この構成によれば、マフラボディ70を凹ませることなく排気ガスセンサ9を取り付けることができる。このため、マフラ7の容量を犠牲にすることなく触媒74を通過した後の排気ガス中の酸素濃度を正確に測ることが可能である。また、マフラボディ70の前面に排気ガスセンサ9を取り付けたことで、マフラ7の中で排気ガスセンサ9を可能な限り車両前側に近づけて配置することができ、配線取り回しを容易にすることが可能である。
【0037】
また、本実施の形態では、排気ガスセンサ9(検出部9a)の近傍でパンチングパイプ75の外面に複数の開放孔75aを形成している。これにより、排気ガスの流れを阻害せずに排気ガスセンサ9をマフラ7の前面に配置できると共に、開放孔75aよりも下流に排気ガスセンサ9を配置した場合であっても排気ガス中の酸素濃度を適切に測ることができる。
【0038】
また、パンチングパイプ75の下流端(先端)は、マフラ7の前面と略同じ位置に設けられており、排気ガスセンサ9の検出部9aは、パンチングパイプ75内に位置している。この構成によれば、ヘッド部70aに対する外部への排気ガスセンサ9の突出長さを最小限にすることができる。このため、排気ガスセンサ9の保護を容易にすることが可能である。また、検出部9aをなるべくマフラ7内に配置することで、排気ガス中の酸素濃度を精度よく測ることが可能である。
【0039】
また、排気ガスセンサ9は、軸方向がパンチングパイプ75、すなわちマフラ7の軸方向と平行に向けられており、マフラボディ70の幅内に配置されている。この構成によれば、排気ガスセンサ9がマフラボディ70の外面から径方向外側に突出することがなく、センサカバー10で排気ガスセンサ9を容易に保護することが可能である。この結果、外的要因による排気ガスセンサ9の測定精度の低下を抑制することが可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、触媒74の下流端に接続されるパンチングパイプ75をマフラ7の前面から突出させ、その先端に排気ガスセンサ9を取り付けたことで、マフラ7の容量を犠牲にすることなく適切に排気ガスの酸素濃度を検出することができる。
【0041】
次に、
図4から
図6を参照して、第1変形例に係る車両の排気装置について説明する。
図4は、第1変形例に係るマフラの内部構造を示す斜視図である。
図5は、第1変形例に係るマフラの上面図である。
図6は、第1変形例に係るマフラの断面図である。第1変形例においては、マフラ内の配管レイアウトが
図2及び
図3の形態と相違する。このため、一部共通部品は同一の符号を示して説明する。
【0042】
図4から
図6に示すように、第1変形例に係るマフラ100は、前後に延びる円筒状のマフラボディ101と、マフラボディ101の先端を塞ぐ蓋部材としてのヘッド部102と、マフラボディ101の後端を塞ぐ蓋部材としてのテール部103と、を有している。ヘッド部102には、エキゾーストパイプ6の下流端が接続される。エキゾーストパイプ6下流端は、マフラボディ70の中心軸より下側に偏って接続される。
【0043】
また、マフラボディ101の内部空間は、バッフルプレート104によって前後方向に2つの膨張室S1、S2に区画されている。バッフルプレート104より前側の空間が膨張室S1であり、バッフルプレート104より後側の空間が膨張室S2である。
【0044】
マフラボディ101内には、各膨張室S1、S2を連通してマフラボディ101の排気通路を形成する複数の配管等が配置される。具体的にマフラボディ101内には、エキゾーストパイプ6の下流端に接続される第1テーパパイプ105(第1のストレートパイプ)、第1テーパパイプ105に接続される触媒106(第1のストレートパイプ)、触媒106の下流側に接続される第2テーパパイプ107(第1のストレートパイプ)、第2テーパパイプ107に接続されるU字パイプ108、U字パイプ108に接続されるストレートパイプ109(第2のストレートパイプ)、膨張室S1、S2を連通するバッフルパイプ110、及び膨張室S2と外部とを連通するテールパイプ111が配置される。
【0045】
第1テーパパイプ105は、エキゾーストパイプ6に接続される。第1テーパパイプ105は、膨張室S1内で下流(後方)に向かうに従って拡径している。第1テーパパイプ74aの下流端(後端)には、触媒106が接続される。触媒106の下流端(後端)には、第2テーパパイプ107が接続される。第2テーパパイプ107は、膨張室S1内で下流(前方)に向かうに従って縮径し、所定の外径まで縮径した後、当該外径を維持して後方に延びている。第2テーパパイプ107の下流端はバッフルプレート104を貫通して膨張室S2内に入り込んでいる。
【0046】
第2テーパパイプ107の下流端には、排気流路を反転させるU字パイプ108が接続される。U字パイプ108は、膨張室S2内で同一径を維持しながら後方且つ上方に湾曲し、マフラボディ101の中心軸付近で前方且つ上方に湾曲した側面視U字状に形成される。U字パイプ108の下流端には、ストレートパイプ109が接続される。
【0047】
ストレートパイプ109は、同一径を維持したまま前方に向かって延びており、触媒106の真上に位置している。ストレートパイプ109の先端は、一部がヘッド部102を貫通し、ヘッド部102の前面から外部に突出している。また、ストレートパイプ109の先端側には、膨張室S1内において、外面を貫通する複数の開放孔112が形成されている。複数の開放孔112は、マフラボディ101とヘッド部102が接続される部分の近傍において、ストレートパイプ109の周方向及び軸方向に所定間隔で並んで形成されている。これにより、ストレートパイプ109と膨張室S1とが連通される。
【0048】
マフラ7の外部に突出したストレートパイプ109の下流端(先端)には、ナット76を介して排気ガスセンサ9が取り付けられる。ナット76は、中心がパンチングパイプ75の中心に一致するように溶接される。排気ガスセンサ9は、所定の長さを有する円柱状に形成され、一端側が検出部9aを構成する。排気ガスセンサ9の他端側には配線(不図示)が接続される。
【0049】
排気ガスセンサ9は、検出部9aをパンチングパイプ75内に挿入するようにしてナット76にねじ込むことで取り付けられる。このように、排気ガスセンサ9によってパンチングパイプ75の先端が塞がれる。また、検出部9aがパンチングパイプ75内に入り込むことで、パンチングパイプ75に流れ込む排気ガス中の所定成分を検出することが可能になる。また、検出部9aは、ストレートパイプ109の軸方向において、開放孔112と重なっている。
【0050】
第2テーパパイプ107及びストレートパイプ109の左側には、バッフルパイプ110が配置される。バッフルパイプ110は、第2テーパパイプ107及びストレートパイプ109と平行に延びており、上流端である先端が膨張室S1内で開放されている。バッフルパイプ110は、バッフルプレート104を貫通し、その下流端が膨張室S2内で開放されている。すなわち、バッフルパイプ110により、膨張室S1、S2が連通される。
【0051】
U字パイプ108の後方には、テールパイプ111が配置される。テールパイプ111は上流端である前端が膨張室S2内で開放されており、テール部103を貫通して下流端が外部に開放されている。これにより、膨張室S2と外部とが連通される。
【0052】
このように構成される車両の排気装置において、エンジン2から発生する排気ガスは、エキゾーストパイプ6を通じてマフラ100内に流れ込む。マフラ100内において、排気ガスは、触媒106に流れ込み浄化され後、U字パイプ108によって流路方向が前方に向かうように反転される。その後、排気ガスは、ストレートパイプ109の先端で検出部9aにぶつかってから開放孔112を通じて膨張室S1内に拡散される。
【0053】
膨張室S1内の排気ガスは、バッフルパイプ110を通じて後方の膨張室S2内に流れ込み、テールパイプ111を通じて外部に排出される。このように、マフラ内では、排気ガスが所定の配管及び2つの膨張室S1、S2を通じて圧縮膨張が繰り返されることにより、消音されると共に外部へ排出される。
【0054】
特に第1変形例では、排気ガスセンサ9の検出部9aが開放孔112と軸方向で重なるように配置されている。この構成によれば、排気ガス流れの途中に検出部9aが位置することになり、排気ガスは、開放孔112を通過する際に検出部9aに当たり易くなっている。この結果、排気ガス中の酸素濃度をより正確に測定することが可能である。
【0055】
また、第1変形例に係るマフラ100には、マフラ100を車体に取り付けるためのブラケット113が溶接されている。具体的にブラケット113は、
図5及び
図6に示すように、エキゾーストパイプ6の後端部分からマフラボディ101の軸方向中央部分に至る所定範囲において、鉛直方向に立ち上がる板状体で形成される。特に
図6に示すように、ブラケット113は、排気ガスセンサ9の右側方を覆うように形成されている。すなわち、排気ガスセンサ9は、ブラケット113よりも車両内側に配置され、側面視において少なくとも一部がブラケット113に重なっている。この構成によれば、排気ガスセンサ9がブラケット113によって保護されるため、別途保護カバーを設ける必要がなくなり、構成が簡略化される。
【0056】
なお、上記の実施形態では、単気筒のエンジン2を例にして説明したが、この構成に限定されない。例えば、エンジン2は、2気筒以上の多気筒エンジンで構成されてもよく、各気筒の配置も適宜変更が可能である。
【0057】
また、上記の実施形態では、マフラ7、100が、エンジン2の右方に配置される構成としたが、この構成に限定されない。マフラ7、100は、エンジン2の左方に配置されてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、触媒の下流側に接続される配管として、複数の開放孔が形成されるパンチングパイプ75やストレートパイプ109を例にして説明したが、これに限定されない。
図7に示す構成も可能である。
図7は、第2変形例に係るマフラの断面図である。
【0059】
図7に示すように、触媒74の下流側に接続されるストレートパイプ77
(第2のストレートパイプ)の先端側には、膨張室S1内において単一の開放孔77aが形成されている。開放孔77aは、ストレートパイプ77の外面を下方に貫通するように形成されている。すなわち、開放孔77aは、第1バッフルパイプ72aに対向している。開放孔77aにより、ストレートパイプ77と膨張室S1とが連通される。また、検出部9aは、開放孔77aと軸方向で重なるように配置されている。このように、第2変形例においても、上記の形態と同様に排気ガスの酸素濃度の正確に測定することが可能である。
【0060】
また、上記の実施形態では、触媒74の下流側に接続される配管の軸方向と排気ガスセンサ9の軸方向が一致する(平行である)場合について説明したが、これに限定されない。
図8に示す構成も可能である。
図8は、第3変形例に係るマフラの断面図である。
【0061】
図8に示すように、ヘッド部102を貫通して外部に突出したストレートパイプ109の先端は、有底筒状の蓋部材114が溶接されることで塞がれている。突出したストレートパイプ109の先端部外面には上方から貫通孔が形成され、当該貫通孔の周囲を囲うようにナット76が溶接されている。排気ガスセンサ9は、検出部9aをストレートパイプ109内に挿入するようにしてナット76にねじ込むことで取り付けられる。これにより、検出部9aがストレートパイプ109内に入り込み、ストレートパイプ109に流れ込む排気ガス中の所定成分を検出部9aで検出することが可能になる。このように、第3変形においても、上記の形態と同様に排気ガスの酸素濃度の正確に測定することが可能である。また、排気ガスセンサ9は、マフラボディ101の左右幅内に収められ、右側方にブラケット113が位置している。このため、別途保護カバーを必要とすることなく、排気ガスセンサ9を保護することが可能である。
【0062】
また、複数の実施形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0063】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、マフラの容量を犠牲にすることなく適切に排気ガスの酸素濃度を検出することができるという効果を有し、特に、自動二輪車の排気装置に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 :自動二輪車(車両)
2 :エンジン
6 :エキゾーストパイプ(排気管)
7 :マフラ
9 :排気ガスセンサ
9a :検出部
70 :マフラボディ
70a :ヘッド部
70b :テール部
72a :第1バッフルパイプ(配管、第1のストレートパイプ)
74 :触媒(第2のストレートパイプ)
75 :パンチングパイプ(配管、第2のストレートパイプ)
75a :開放孔
77 :ストレートパイプ(配管、第2のストレートパイプ)
77a :開放孔
100 :マフラ
101 :マフラボディ
102 :ヘッド部
103 :テール部
106 :触媒(第1のストレートパイプ)
109 :ストレートパイプ(配管、第2のストレートパイプ)
112 :開放孔
113 :ブラケット