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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】車両用物標検出方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20220809BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220809BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018116267
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019219252
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】奥木 友和
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】寺島 将太
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102675(JP,A)
【文献】特開2000-199786(JP,A)
【文献】特開2016-148515(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151507(WO,A1)
【文献】特開2001-324566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0247352(US,A1)
【文献】特開2017-203736(JP,A)
【文献】特開2005-009886(JP,A)
【文献】特開平11-258341(JP,A)
【文献】小倉 一峰 ほか,位相情報を用いた微小変位検出レーダによる複数物体識別方式,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2017年05月18日,第117巻 第56号,Pages: 123-126,ISSN: 0913-5685
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
B60R 21/00 - 21/13
21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダを発信する送信部と、当該送信部からのレーダの反射信号を受信する受信部と、当該受信部が受信した信号を解析する処理部と、データを記憶する記憶部と、を備えた自車両の前記送信部から発信されるレーダを用いて自車両周辺の物標を検出する方法であって、
前記レーダの反射信号を前記受信部が受信し、受信した信号に基づいて前記処理部が、自車両からの距離と信号強度との関係を表す連続的な距離スペクトルを得る第1のステップと、
前記処理部が、前記第1のステップで得られた距離スペクトルから、前記物標が他車両であった場合に得られる標準的な距離スペクトルである車両モデルデータを差し引いた差分スペクトルを得る第2のステップと、
前記処理部が、前記第2のステップで得られた差分スペクトルを調べ、当該差分スペクトルの中に所定の閾値以上の強度をもった成分が含まれる場合に歩行者が存在すると判定する第3のステップとを含み、
前記車両モデルデータは、自車両周辺に他車両のみが存在する場合に前記第1のステップと同様の処理により得られる距離スペクトルであり、前記記憶部に予め記憶されている、ことを特徴とする車両用物標検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用物標検出方法において、
前記第3のステップにおいて、前記処理部は、前記第2のステップで得られた差分スペクトルから、前記車両モデルデータのピーク位置の周辺に対応する一部の距離範囲のデータを抽出し、当該抽出したデータの中に前記閾値以上の成分が含まれる場合に歩行者が存在すると判定する、ことを特徴とする車両用物標検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用物標検出方法において、
前記第2のステップにおいて、前記処理部は、前記第1のステップで得られた距離スペクトルを増幅し、この増幅後の距離スペクトルから、同様の方法で増幅された前記車両モデルデータを差し引くことにより、前記差分スペクトルを得る、ことを特徴とする車両用物標検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用物標検出方法において、
前記第2のステップにおいて、前記処理部は、コヒーレント積分を用いて前記距離スペクトルを増幅する、ことを特徴とする車両用物標検出方法。
【請求項5】
自車両から発信されるレーダを用いて自車両周辺の物標を検出する装置であって、
前記レーダを発信する送信部と、
前記送信部からのレーダの反射信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した信号を解析することにより歩行者の存在の有無を判定する処理部と
データを記憶する記憶部とを備え、
前記処理部は、
前記受信部が受信した信号に基づいて、自車両からの距離と信号強度との関係を表す連続的な距離スペクトルを得る第1の処理と、
前記第1の処理で得られた距離スペクトルから、前記物標が他車両であった場合に得られる標準的な距離スペクトルである車両モデルデータを差し引いて差分スペクトルを得る第2の処理と、
前記第2の処理で得られた差分スペクトルを調べ、当該差分スペクトルの中に所定の閾値以上の強度をもった成分が含まれる場合に歩行者が存在すると判定する第3の処理とを実行し、
前記車両モデルデータは、自車両周辺に他車両のみが存在する場合に前記第1の処理と同様の処理により得られる距離スペクトルであり、前記記憶部に予め記憶されている、ことを特徴とする車両用物標検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両から発信されるレーダを用いて自車両周辺の物標を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性向上の観点から、自車両の周囲の障害物をレーダにより認識し、必要に応じて自動ブレーキ等の回避措置をとる運転支援機能を搭載した車両が増えてきている。このような運転支援機能付きの車両において、自車両の周囲に他車両および歩行者の双方が存在する場合には、両者を区別して認識すること(特に歩行者を車両と区別して認識すること)が望ましく、そのための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、自車両からレーダを照射してその反射信号を受信する信号取得手段と、受信された反射信号をFFT処理することにより、歩行者からの反射信号に由来する周波数成分と先行車両からの反射信号に由来する周波数成分とを含んだ離散的な第1のスペクトル信号を得るスペクトル信号取得手段と、自車両と先行車両との相対距離および相対速度の計測結果を用いた所定の演算により、先行車両の周波数成分を示す離散的な第2のスペクトル信号を得るスペクトル信号算出手段と、第1のスペクトル信号から第2のスペクトル信号を減算するスペクトル信号減算手段と、減算後のスペクトル信号に基づいて歩行者を検出する(自車両と歩行者との相対距離および相対速度を算出する)距離速度算出手段とを備えたレーダ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-102675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、反射信号をFFT処理することで得られるスペクトルデータ(第1のスペクトル信号)から、理論的に(演算により)求められる他車両のスペクトルデータ(第2のスペクトル信号)が減算されるので、自車両の周囲に他車両と歩行者とが混在する状況であっても、上記減算後のデータに基づいて精度よく歩行者を検出できるとされている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、周波数が離れた離散的なスペクトルデータがFFT処理によって生成されるので、例えば歩行者が他車両に近接して存在するような場合には、歩行者からの反射信号が他車両からの反射信号に埋もれてしまい、歩行者を示す周波数成分と他車両を示す周波数成分とが同じ周波数をもった1つの成分として抽出されるおそれがある。この場合において、仮に上記のように他車両のスペクトルデータを減算する処理を行った場合には、この減算後のデータ中に歩行者を示す周波数成分が残らなくなり、歩行者は存在しないと誤って認識されるおそれがある。このように、上記特許文献1の方法では、歩行者の検出精度が期待通りには向上しないと考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、他車両と歩行者とが近接している場合でも精度よく歩行者を検出することが可能な車両用物標検出方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、レーダを発信する送信部と、当該送信部からのレーダの反射信号を受信する受信部と、当該受信部が受信した信号を解析する処理部と、データを記憶する記憶部と、を備えた自車両の前記送信部から発信されるレーダを用いて自車両周辺の物標を検出する方法であって、前記レーダの反射信号を前記受信部が受信し、受信した信号に基づいて前記処理部が、自車両からの距離と信号強度との関係を表す連続的な距離スペクトルを得る第1のステップと、前記処理部が、前記第1のステップで得られた距離スペクトルから、前記物標が他車両であった場合に得られる標準的な距離スペクトルである車両モデルデータを差し引いた差分スペクトルを得る第2のステップと、前記処理部が、前記第2のステップで得られた差分スペクトルを調べ、当該差分スペクトルの中に所定の閾値以上の強度をもった成分が含まれる場合に歩行者が存在すると判定する第3のステップとを含み、前記車両モデルデータは、自車両周辺に他車両のみが存在する場合に前記第1のステップと同様の処理により得られる距離スペクトルであり、前記記憶部に予め記憶されている、ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】
他車両および歩行者の双方に自車両からレーダを発信した場合、一般に、他車両から返ってくる反射信号の強度は、歩行者から返ってくる反射信号の強度に比べてかなり大きい。このため、仮に歩行者が他車両に近接している状況でレーダを発信し、その反射信号に基づいて距離スペクトルを得たとしても、ほとんどの場合、歩行者の位置を明確に示すようなピークが当該距離スペクトルに現れることはない。このため、前記距離スペクトルをそのままの状態で解析したのでは、歩行者の存在を見落とすおそれがある。これに対し、本発明では、レーダの反射信号から得られる連続的な距離スペクトルから、他車両からの反射信号による(他車両が存在し且つ歩行者が存在しない場合に得られる)標準的な距離スペクトルである車両モデルデータが差し引かれ、これによって車両由来の成分を除去したとみなせる差分スペクトルが算出されるので、この差分スペクトルを用いて歩行者の有無を調べることにより、たとえ歩行者が他車両に近接している場合であっても、当該歩行者の存在を精度よく検出することができる。
【0010】
好ましくは、前記第3のステップにおいて、前記処理部は、前記第2のステップで得られた差分スペクトルから、前記車両モデルデータのピーク位置の周辺に対応する一部の距離範囲のデータを抽出し、当該抽出したデータの中に前記閾値以上の成分が含まれる場合に歩行者が存在すると判定する(請求項2)。
【0011】
この構成によれば、解析対象となるデータ範囲を絞り込んで処理負担を軽減しながら、他車両の近くに存在する歩行者を差分スペクトルを用いた前記の方法により精度よく検出することができる。
【0012】
好ましくは、前記第2のステップにおいて、前記処理部は、前記第1のステップで得られた距離スペクトルを増幅し、この増幅後の距離スペクトルから、同様の方法で増幅された前記車両モデルデータを差し引くことにより、前記差分スペクトルを得る(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、増幅処理によって差分スペクトルの強度の最大値と最小値との差が拡大されるので、歩行者を判定するのに適したレベルの閾値を容易に設定することができ、この閾値を用いて歩行者を精度よく検出することができる。
【0014】
前記第2のステップにおいて、前記処理部は、コヒーレント積分を用いて前記距離スペクトルを増幅することができる(請求項4)。
【0015】
この構成によれば、増減を繰り返すノイズについては基本的に増幅されないので、ノイズ以外の成分を選択的に増幅することができ、ノイズに起因した誤検出を効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明は、自車両から発信されるレーダを用いて自車両周辺の物標を検出する装置であって、前記レーダを発信する送信部と、前記送信部からのレーダの反射信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した信号を解析することにより歩行者の存在の有無を判定する処理部と、データを記憶する記憶部とを備え、前記処理部は、前記受信部が受信した信号に基づいて、自車両からの距離と信号強度との関係を表す連続的な距離スペクトルを得る第1の処理と、前記第1の処理で得られた距離スペクトルから、前記物標が他車両であった場合に得られる標準的な距離スペクトルである車両モデルデータを差し引いて差分スペクトルを得る第2の処理と、前記第2の処理で得られた差分スペクトルを調べ、当該差分スペクトルの中に所定の閾値以上の強度をもった成分が含まれる場合に歩行者が存在すると判定する第3の処理とを実行し、前記車両モデルデータは、自車両周辺に他車両のみが存在する場合に前記第1の処理と同様の処理により得られる距離スペクトルであり、前記記憶部に予め記憶されている、ことを特徴とするものである(請求項5)。
【0017】
この物標検出装置によれば、上述した物標検出方法の発明と同様に、他車両に近接している歩行者を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、他車両と歩行者とが近接している場合でも精度よく歩行者を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の物標検出方法(または装置)が適用された車両の好ましい実施形態を示す概略平面図である。
図2】上記車両の制御系統を示すブロック図である。
図3】上記車両の走行中に実行される歩行者の検出処理の前半部を示すフローチャートである。
図4】上記歩行者の検出処理の後半部を示すフローチャートである。
図5図4のステップS11の処理により得られるコヒーレント積分後の距離スペクトルの一例を示す図である。
図6図4のステップS12の処理により読み出される車両モデルデータの一例を示す図である。
図7図4のステップS13の処理により算出される差分スペクトルの一例を示す図である。
図8】他車両(駐車車両)の影から飛び出そうとする歩行者を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の物標検出方法(または装置)が適用された車両の好ましい実施形態を示す概略平面図である。本図に示される車両は、自車両の周囲の障害物を検出するための複数のレーダユニット1(1A~1E)および複数のカメラユニット2(2A,2B)を備えている。
【0021】
上記複数のレーダユニット1は、車両の前端部の中央に配置された第1レーダユニット1Aと、車両の前端部の左端に配置された第2レーダユニット1Bと、車両の前端部の右端に配置された第3レーダユニット1Cと、車両の後端部の左端に配置された第4レーダユニット1Dと、車両の後端部の右端に配置された第5レーダユニット1Eとを含んでいる。第1レーダユニット1Aは、例えばフロントグリルに配置され、第2・第3レーダユニット1B,1Cは、例えばフロントバンパーフェースの裏面に配置され、第4・第5レーダユニット1D,1Eは、例えばリヤバンパーフェースの裏面に配置されている。
【0022】
第1~第5レーダユニット1A~1Eは、それぞれ、自車両の周囲に向けてレーダ(例えばミリ波レーダ)を発信する送信部5と、送信部5から発信されたレーダの反射信号、つまり周囲の障害物等で反射して自車両に返ってくるレーダを受信する受信部6とを有している(いずれも図2参照)。各レーダユニット1A~1Eは、それぞれ、自身を中心に扇状に拡がる領域を検出範囲とするレーダ検出器であり、これら各レーダユニット1A~1Eが図1に示した車両の各位置に分散して配置されることにより、車両のほぼ全周囲がレーダによる検出範囲とされている。なお、以下では、第1~第5レーダユニット1A~1Eを特に区別せずに指すときは、単にレーダユニット1というものとする。
【0023】
上記複数のカメラユニット2は、車室内からフロントガラスを通じて車両の前方を撮像する第1カメラユニット2Aと、車両の後端部から車両の後方を撮像する第2カメラユニット2Bとを含んでいる。第1カメラユニット2Aは、例えばフロントガラスの上端部における車室内側の面に配置されており、第2カメラユニット2Bは、例えばリヤゲートに配置されている。
【0024】
図示を省略するが、第1・第2カメラユニット2A,2Bは、それぞれ、レンズ部と、レンズ部を通じて入光された光を電気信号に変換するイメージセンサと、イメージセンサからの信号を処理して画像データとして出力するデータ処理部とを有している。各カメラユニット2A,2Bは、それぞれ、自身を中心に扇状に拡がる領域を撮像範囲とする撮像装置であり、これら各カメラユニット2A,2Bが車両の前後に分かれて配置されることにより、車両の前方および後方の比較的広角な範囲がカメラによる撮像範囲とされている。なお、以下では、第1・第2カメラユニット2A,2Bを特に区別せずに指すときは、単にカメラユニット2というものとする。
【0025】
図2は、当実施形態の車両の制御系統を示すブロック図である。本図に示されるコントローラ10は、車両の各部を制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、RAM、ROM等から構成されている。
【0026】
コントローラ10は、レーダユニット1およびカメラユニット2と電気的に接続されており、各ユニット1,2との間で種々の信号を送受信する。例えば、コントローラ10は、レーダユニット1の送信部5に対し所定の制御信号を出力するとともに、レーダユニット1の受信部6からレーダの反射信号を示すデータを受け付ける。また、コントローラ10は、カメラユニット2に対し所定の制御信号を出力するとともに、カメラユニット2から画像データを受け付ける。
【0027】
コントローラ10は、処理部11および記憶部12を機能的に有している。処理部11は、レーダユニット1およびカメラユニット2の各動作を制御しつつ各ユニット1,2から入力されるデータに基づいて種々の解析や判定等を行うものである。記憶部12は、処理部11による処理に必要な各種データを記憶するものである。
【0028】
図3および図4は、以上のようなコントローラ10によって実行される歩行者の検出処理の具体的手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、レーダを用いて歩行者を検出する処理を示しているが、当実施形態の車両では、このフローチャートに示す処理以外にも、カメラを用いて歩行者または他車両を検出したり、レーダを用いて他車両を検出する処理を併せて実行することが可能である。言い換えると、このフローチャートは、カメラでは見逃すおそれのある歩行者をレーダを用いて検出するための処理を示しているといえる。また、このフローチャートの処理は、第1~第5レーダユニット1A~1Eごとに個別に行われるが、いずれのレーダユニット1A~1Eを用いた場合の処理も基本的に同じであるので、以下では特に断らない限り、第1~第5レーダユニット1A~1Eを総称して単に「レーダユニット1」というものとする。
【0029】
図3に示す処理がスタートすると、コントローラ10の処理部11は、ステップS1において、レーダユニット1の送信部5からレーダを発信させる。
【0030】
次いで、処理部11は、ステップS2に移行して、送信部5から発信されたレーダの反射信号、つまり自車両の周囲で反射してレーダユニット1の受信部6で受信されたレーダの信号を取り込む。
【0031】
次いで、処理部11は、ステップS3に移行して、受信部6から取り込んだデータをアナログデータからデジタルデータに変換するAD変換を実行する。
【0032】
次いで、処理部11は、ステップS4に移行して、上記ステップS3によるAD変換後のデータに基づいて、IQデータを生成する。IQデータとは、時系列の信号を正弦波の振幅、周波数、位相の時間関数で表した極座標形式のデータのことである。
【0033】
次いで、処理部11は、ステップS5に移行して、上記ステップS4の処理により得られたIQデータをフーリエ変換することにより、周波数と信号強度(振幅)との関係を示す周波数スペクトルを生成するFFT処理を実行する。
【0034】
次いで、処理部11は、ステップS6に移行して、上記ステップS5の処理により得られた周波数スペクトルに基づいて、自車両からの距離と信号強度との関係を表す距離スペクトルを生成する。すなわち、周波数と距離との間にはレーダの送受信方式(例えばFMCW方式など)に応じて定まる1対1の相関関係があるので、この相関関係に基づいた所定の演算処理を施すことにより、上記周波数スペクトルから上記距離スペクトルを生成することができる。なお、後述する図5にも示されるように、上記ステップS6の処理により得られる距離スペクトルは、自車両からの距離が連続的に変化した場合の信号強度(受信電力)の連続的な変化を示すデータとなる。
【0035】
以上のようなレーダ信号の処理と並行して、コントローラ10は、ステップS7,S8にて撮像処理を実行する。すなわち、コントローラ10の処理部11は、カメラユニット2(第1・第2カメラユニット2A,2B)に撮像動作を行わせるとともに(ステップS7)、当該撮像動作により取得された画像に所定の画像処理を施す(ステップS8)。
【0036】
次いで、処理部11は、図4のステップS10に移行して、上記ステップS8による画像処理後のデータに基づいて、自車両の進行方向に駐車車両が存在するか否かを判定する。例えば、自車両が前進している場合、処理部11は、自車両の前方を撮像範囲とする第1カメラユニット2Aによる撮像画像の中に駐車中の他車両が含まれるか否かを判定する。また、自車両が後退している場合、処理部11は、自車両の後方を撮像範囲とする第2カメラユニット2Bによる撮像画像の中に駐車中の他車両が含まれるか否かを判定する。なお、撮像画像に他車両が含まれるか否かは、パターンマッチング等の処理を経て判定することができ、当該他車両が駐車車両であるか否か(停止しているか否か)は、カメラユニット2による撮像画像(あるいはレーダの受信信号でもよい)から測定される自車両から他車両までの距離の変化に基づいて判定することができる。このため、上記ステップS10で駐車車両が特定された場合、当該駐車車両と自車両との間の距離も併せて特定されたことになる。言い換えると、上記ステップS10の処理は、駐車車両までの距離(車間距離)を特定する処理でもある。
【0037】
ここで、カメラユニット2を用いた上記の判定によって駐車車両が検出されなかった場合でも、それが画像処理精度の限界による誤判断である可能性もある。そこで、上記ステップS10において、カメラユニット2により駐車車両が検出されなかった場合には、さらにレーダユニット1を用いて駐車車両の有無が判定される。すなわち、処理部11は、自車両の進行方向を検出範囲とするレーダユニット1(1A~1Eのいずれか)による検出信号の中に、駐車車両からの反射信号と推定されるような高い強度の信号の有無を調べ、このような強い信号が確認された場合に、駐車車両が存在すると判定する。例えば、自車両が前進している場合、処理部11は、自車両の前方を検出範囲とする第1~第3レーダユニット1A~1Cによる検出信号に基づき駐車車両の有無を判定する。また、自車両が後退している場合、処理部11は、自車両の後方を検出範囲とする第4・第5レーダユニット1D,1Eによる検出信号に基づき駐車車両の有無を判定する。なお、後のステップS12等でも説明するとおり、他車両でレーダが反射した場合にどの程度の強度の反射信号が得られるかは予め分かっているので、この既知の信号パターンに基づいて、他車両の存在の有無を判定することができる。また、当該他車両が駐車車両であるか否かは、距離スペクトルのピーク位置から推定される自車両から他車両までの距離の変化に基づいて判定することができる。このように、レーダユニット1を用いて駐車車両が特定された場合にも、その駐車車両まで距離(車間距離)が併せて特定される。
【0038】
上記ステップS10でYESと判定された場合、つまり、カメラユニット2による撮像画像もしくはレーダユニット1による検出信号に基づき自車両の進行方向に駐車車両が存在することが確認された場合、処理部11は、ステップS11に移行して、上記ステップS6の処理により得られた距離スペクトルをコヒーレント積分する処理を実行する。具体的に、このステップS11では、上記ステップS10においてその存在が確認された駐車車両の位置を検出範囲とするレーダユニット1(第1~第5レーダユニット1A~1Eのいずれか)に基づく距離スペクトルに対しコヒーレント積分を実施する。
【0039】
ここで、コヒーレント積分とは、波構造が変化しないとみなせる(コヒーレントな)時間の間、取得した信号を時間領域で足し合わせる処理のことである。このコヒーレント積分により、レーダユニット1のサンプリング周期ごと(例えば1msecごと)に生成される複数の距離スペクトルが足し合わされる(時間的に積分される)結果、ノイズ以外の成分が増幅される。すなわち、ノイズは不規則に増減する信号である一方で、ノイズ以外の成分、つまり車両や歩行者といった反射体からの反射信号は、コヒーレント積分の時間の間ほぼ一定の強度を保っていると考えられる。そこで、上記ステップS11のようにコヒーレント積分を実施して、複数の距離スペクトルを足し合わせることにより、ノイズ以外の成分を際立たせた増幅データを得ることができる。図5は、コヒーレント積分を実施した後の距離スペクトル(以下、増幅距離スペクトルともいう)の一例を示している。この図5の例による増幅距離スペクトルの波形は、距離約10mの位置に大きなピークを有しているが、これは、自車両から距離約10mの位置に駐車車両が存在することを意味している。
【0040】
次いで、処理部11は、ステップS12に移行して、記憶部12に予め記憶されている車両モデルデータを読み出す。車両モデルデータとは、自車両の周囲に他車両のみが存在する場合に得られる標準的な距離スペクトルのことである。より詳しくは、記憶部12には、上記車両モデルデータとして、他車両のみが存在する場合に得られる標準的な距離スペクトルに対し、上記ステップS11と同様の手法によるコヒーレント積分を実施した場合の増幅データが予め記憶されている。また、記憶部12には、自車両と他車両との距離が少しずつ異なった種々の車両モデルデータが予め記憶されており、処理部11は、これらの種々の車両モデルデータの中から、上記ステップS10においてその存在が確認された駐車車両の位置に対応する(自車両からの距離が一致またはほぼ一致する)車両モデルデータを読み出す。
【0041】
図6は、上記のようにして読み出された車両モデルデータの一例を示している。この図6の例では、自車両から駐車車両までの距離が約10mであることに対応して、距離約10mの位置にピークを有する車両モデルデータが読み出されている。すなわち、上記ステップS10で駐車車両の存在が確認されたときに、自車両から駐車車両までの距離は、画像またはレーダを用いた測定により約10mと特定されている。そこで、上記ステップS12では、自車両から約10mの距離に他車両が存在する場合の標準的な距離スペクトルとして、距離約10mの位置にピークを有する車両モデルデータが、記憶部12に記憶されている種々の車両モデルデータの中から読み出される。
【0042】
なお、上記ステップS12では、種々の距離に対応する種々の車両モデルデータの中から1つのデータを選択的に読み出すようにしたが、このような方法に代えて、所定の距離に対応する単一または複数の車両モデルデータを必要に応じ補正したもの(例えば距離の相違に応じた所定の演算式により補正したもの)を用いるようにしてもよい。
【0043】
上記のようにして車両モデルデータの読み出しが終了すると、処理部11は、ステップS13に移行して、上記ステップS11で得られた距離スペクトル(増幅距離スペクトル)から、上記ステップS12で読み出された車両モデルデータを差し引くことにより、差分スペクトルを算出する。図7は、この差分スペクトルの一例を示している。この図7では、距離約10mの位置にピークを有する車両モデルデータ(図6)が差し引かれたことに対応して、距離10m付近の位置にピークは見られなくなっている。
【0044】
次いで、処理部11は、ステップS14に移行して、上記ステップS13で得られた差分スペクトルから、上記ステップS12で読み出された車両モデルデータのピーク位置(ここでは距離約10mの位置)の周辺にあたる特定距離範囲のデータを抽出する。詳しくは、ステップS14において、処理部11は、車両モデルデータのピーク位置(言い換えれば駐車車両の推定位置)から、車両の進行方向に所定距離だけ離れた位置までを特定距離範囲X(図7)として、この特定距離範囲Xに含まれる差分スペクトルのデータを抽出する。例えば、車両が前進している場合には、図7に示すように、駐車車両の推定位置である自車両の前方約10mの位置から、車両の進行方向(プラスの方向)にさらに所定距離だけ離れた位置までが、特定距離範囲Xとして選ばれる。所定距離は、例えば7~10mのいずれかとすることができる。
【0045】
次いで、処理部11は、ステップS15に移行して、後のステップS16での判定(歩行者の有無の判定)に使用される閾値を設定する。この閾値は、自車両から駐車車両までの距離が長いほど小さくされる。これは、自車両からの距離が長いほど反射信号の強度が弱まることに由来している。
【0046】
次いで、処理部11は、ステップS16に移行して、上記ステップS14で抽出された特定距離範囲Xの差分スペクトル(図7)の中に、上記ステップS15で設定された閾値以上の強度をもったピークが存在するか否かを判定する。より詳しくは、処理部11は、レーダのサンプリング周期(例えば1~10msec)ごとに生成される上記差分スペクトルを所定期間(例えば50~100msec)に亘って継続的に調べ、当該所定期間に亘って上記閾値以上の強度をもったピークが継続的に検出されるか否かを判定する。
【0047】
図7では、上記ステップS14での判定に用いられる閾値をZと表記している。この閾値Zは、これ以上の強度のピークがあると歩行者が存在すると判断できる値であり、車両からの反射信号により得られるピーク強度よりも小さい値に設定される。すなわち、歩行者からの反射信号の強度は、一般に、他車両からの反射信号の強度よりもかなり小さい。このため、他車両の存在を判定するのに適した閾値を車両用の閾値W(図5参照)とすると、歩行者用の閾値Zは、この車両用の閾値Wよりも十分に小さい値に設定する必要がある。例えば、車両用の閾値Wが-40~-50dBであるとすると、歩行者用の閾値Zは-60~-80dBに設定するのが好ましい。
【0048】
なお、図7の例では、閾値Z以上の強度をもつピークとして、距離約12mの位置に、符号Pで示すピークが現れている。このピークPは、上記所定期間に亘って継続的に検出されるピークである。上記ステップS16では、このようなピーク(閾値Z以上の継続的なピーク)の存在が確認された場合に、その判定がYESとされる。一方、図7に破線の波形で示すように、上記ピークPよりも左側の位置(距離が短い側)にも、閾値Z以上の強度をもったピークが存在している。ただし、この破線のピークは、上記所定期間に亘って継続的に現れるピークではなく、瞬間的に現れては消えるピークである。このような瞬間的なピークは、歩行者からの反射信号によるものではなく、ノイズ等に起因したものである可能性が高い。そこで、仮にこのようなピークが存在しても、上述した符号Pのような継続的なピークが他に確認されない限り、上記ステップS16での判定はNOとされる。
【0049】
上記ステップS16でNOと判定された場合、つまり、閾値Z以上の強度をもった継続的なピークが検出されなかった場合には、自車両の進行方向(且つ駐車車両の近傍)に歩行者は存在しないと考えられる。そこで、処理部11は、後述するステップS17,S18の処理を実行することなく、リターンする。
【0050】
一方、上記ステップS16でYESと判定されて閾値Z以上の強度をもった継続的なピークが検出された場合、つまり自車両の進行方向(且つ駐車車両の近傍)に歩行者が存在することが確認された場合、処理部11は、ステップS17に移行して、上記ステップS16において所定期間に亘り検出された閾値Z以上のピークの動向を調べ、近接するデータをひとかたまりのデータとして捉えるクラスタリング処理を実行する。すなわち、サンプリング周期ごとに都度特定される図7のピークPについて、各ピークPの横軸の値(つまり距離)を含むデータを上記所定期間に亘り座標系にプロットし、近接するプロットをセグメント化して1つの塊のデータ(つまり同じ歩行者に由来するデータ)として捉える処理を実行する。
【0051】
次いで、処理部11は、ステップS18に移行して、上記ステップS17によるクラスタリング処理後のデータに基づいて、歩行者までの距離(自車両から歩行者までの距離)と人数を特定する。例えば、ステップS17のクラスタリング処理によって抽出されたセグメントが1つであった場合、処理部11は、上記ステップS18において歩行者は1人であると認識するとともに、その1人の歩行者までの距離を上記セグメント内の平均値に基づいて算出する。同様に、抽出されたセグメントが2つであった場合、処理部11は、歩行者は2人であると認識するとともに、各歩行者までの距離を各セグメント内の平均値に基づいて算出する。なお、図7のように自車両からの距離約12mの位置に閾値Z以上の1つのピークPが検出されるケースでは、歩行者は1人であり、且つ歩行者までの距離は約12mと特定されることになる。
【0052】
以上説明したように、当実施形態では、レーダユニット1から送信されたレーダの反射信号に基づいて自車両からの距離と信号強度との関係を表す連続的な距離スペクトル(図5)が生成されるとともに、この距離スペクトルから、他車両が存在する場合に得られる標準的な距離スペクトルである車両モデルデータ(図6)が差し引かれて差分スペクトル(図7)が算出される。そして、この差分スペクトルの中に閾値Z以上の強度をもった成分が含まれるか否かが判定され、当該成分の存在が確認された場合(より詳しくは閾値Z以上のピークPが所定期間に亘り継続して検出された場合)に、自車両の周囲に歩行者が存在すると判定される。このような構成によれば、他車両と歩行者とが近接している場合でも精度よく歩行者を検出できるという利点がある。
【0053】
すなわち、他車両および歩行者の双方に自車両からレーダを発信した場合、一般に、他車両から返ってくる反射信号の強度は、歩行者から返ってくる反射信号の強度に比べてかなり大きい。このため、仮に歩行者が他車両に近接している状況でレーダを発信し、その反射信号に基づいて距離スペクトルを得たとしても、ほとんどの場合、他車両の位置に対応する距離において強度が最も大きくなる概ね山型の距離スペクトルの波形が得られるだけで(図5参照)、歩行者の位置を明確に示すような別の大きなピークが当該波形の中に現れることは少ない。このため、上記距離スペクトルをそのままの状態で解析したのでは、歩行者の存在を見落とすおそれがある。これに対し、上記実施形態では、レーダの反射信号から得られる連続的な距離スペクトルから、他車両からの反射信号による(他車両が存在し且つ歩行者が存在しない場合に得られる)標準的な距離スペクトルである車両モデルデータ(図6)が差し引かれ、これによって車両由来の成分を除去したとみなせる差分スペクトル(図7)が算出されるので、この差分スペクトルを用いて歩行者の有無を調べることにより、たとえ歩行者が他車両に近接している場合であっても、当該歩行者の存在を精度よく検出することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、自車両の進行方向に駐車中の他車両(駐車車両)が存在するか否かがカメラユニット2またはレーダユニット1を用いて調べられ、当該駐車車両が存在する場合にのみ、上述した歩行者の有無を調べる処理(差分スペクトルを特定して閾値Z以上の成分の有無を調べる処理)が実行されるので、安全性を担保しながらコントローラ10の処理負担を軽減することができる。
【0055】
すなわち、自車両の進行方向に駐車車両が存在するということは、図8に示すように、その駐車車両の陰から歩行者が飛び出してくる可能性があることを意味する。逆に、このような駐車車両が存在しない場合、つまり、自車両の進行方向に他車両が全く存在しないか、他車両が存在してもそれが走行車両である場合には、通常、上記のような歩行者の飛び出しは想定されない。これに対し、上記実施形態では、自車両の進行方向に駐車車両が存在する場合にのみ、差分スペクトルを解析して歩行者の有無を判定する上記処理が実行されるので、歩行者の飛び出しに備える必要がある場合にのみ差分スペクトルの解析等を行うことができ、安全性を担保しつつ処理負担を軽減することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、上述した差分スペクトル(図7)から、車両モデルデータのピーク位置(つまり駐車車両の推定位置)から車両の進行方向に所定距離だけ離れた位置までの範囲である特定距離範囲X分のデータが抽出され、当該抽出後のデータを用いて歩行者の有無が調べられるので、図8に示したように、駐車車両の奥側(自車両から遠い側)に位置するためにカメラユニット2による撮像画像からはその存在を特定し難い歩行者を、差分スペクトルを用いた上記の方法により精度よく検出することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、レーダの反射信号から得られる距離スペクトルがコヒーレント積分により増幅され、この増幅後の距離スペクトルから、同様の方法で増幅された車両モデルデータが差し引かれることにより、上述した差分スペクトルが特定されるので、コヒーレント積分(増幅処理)が省略された場合に比べて、差分スペクトルの強度の最大値と最小値との差が拡大する。このため、歩行者を判定するのに適したレベルの閾値Zを容易に設定することができ、この閾値Zを用いて歩行者を精度よく検出することができる。特に、上記実施形態では、増幅の手段としてコヒーレント積分が用いられるので、増減を繰り返すノイズについては基本的に増幅されず、ノイズ以外の成分を選択的に増幅することができる。これにより、ノイズに起因した誤検出を効果的に防止することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定して解釈されるべきものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、画像もしくはレーダにより自車両の進行方向に駐車中の他車両(駐車車両)が存在するか否かを判定し、当該駐車車両の存在が確認された場合にのみ、図4のステップS11~S18による歩行者の検出処理(差分スペクトルを求めてこれを解析する処理)を実行するようにしたが、他車両が駐車車両でなく走行車両であった場合にも、同様の歩行者の検出処理を実行するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、他車両(駐車車両)の推定位置から自車両の進行方向に所定距離だけ離れた位置までの範囲を特定距離範囲X(図7)として、この特定距離範囲Xに含まれる差分スペクトルのデータのみを用いて歩行者の有無を調べるようにしたが、他車両の推定位置(つまり車両モデルデータのピーク位置)を中心にして進行方向プラス側の範囲とマイナス側の範囲とを含む所定の距離範囲を、上記特定距離範囲Xとして設定してもよい。
【符号の説明】
【0061】
5 送信部
6 受信部
11 処理部
12 記憶部
X 特定距離範囲(差分スペクトルの一部の距離範囲)
Z 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8