(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20220809BHJP
H02K 5/08 20060101ALI20220809BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02K5/16 A
H02K5/08 A
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2018124540
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小野 次良
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-526175(JP,A)
【文献】特開2017-216794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
H02K 5/08
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと該ステータコアに巻回された巻線を備えたステータと、
絶縁樹脂によって形成され前記ステータを収容するモータ外郭と、
回転軸に固定されたロータと、
前記回転軸を回転自在に支持する一対のベアリングと、
前記一対のベアリングの各々が収容され前記モータ外郭に嵌め合わされた一対のブラケットと、
前記ステータコアに接触する第1接触部と、前記一対のブラケットのうち一方のブラケットに接触する第2接触部を形成した導通部材と、
前記一対のブラケットを互いに短絡させる短絡部材を備えたモータであって、
前記モータ外郭は、前記ステータコアの外周面の一部を外部に露出させる開口部を備え、
前記導通部材は、L字状に形成された板状の部材であり、前記第1接触部が前記開口部に装着され前記ステータコアの前記外周面の一部に接触し、前記第2接触部が前記一方のブラケットの先端部に接触している
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
ステータコアと該ステータコアに巻回された巻線を備えたステータと、
絶縁樹脂によって形成され前記ステータを収容するモータ外郭と、
回転軸に固定されたロータと、
前記回転軸を回転自在に支持する第1ベアリングおよび第2ベアリングと、
前記第1ベアリングが収容され前記モータ外郭に固定された第1ブラケットと、
前記第2ベアリングが収容され前記モータ外郭に固定された第2ブラケットと、
前記ステータと前記第1ブラケットの間に配置されたプリント基板と、
前記ステータコアに接触する第1接触部と、前記第1ブラケットに接触する第2接触部を形成した導通部材と、
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットを短絡させる短絡部材を備えたモータであって、
前記モータ外郭は、前記ステータコアの外周面の一部を外部に露出させる開口部を備え、
前記導通部材は、L字状に形成された板状の部材であり、前記第1接触部が前記開口部に装着され前記ステータコアの前記外周面の一部に接触し、前記第2接触部が前記第1ブラケットの先端部に接触している
ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
前記モータ外郭は、前記開口部の位置に前記導通部材の前記第1接触部を前記ステータコアの外周面に接触させた状態で保持させる保持部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1接触部は、前記保持部に接触させる接触部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記開口部は、前記第1接触部を前記保持部に保持した状態で、前記第2接触部が前記一方のブラケットまたは前記第1ブラケットの先端部に接触させる位置に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のモータ。
【請求項6】
前記第1接触部は、前記ステータコアと前記導通部材との電気的接続を確認するための導通確認窓が形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングに生じる電食を防ぐための金属製の導通部材を備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータとして、ステータの内部にロータを回転可能に配置したインナーロータ型のモータが知られている。この型のモータには、例えば、空気調和機の室内機に搭載される送風ファンを回転駆動するブラシレスDCモータがある。
このブラシレスDCモータは、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動すると、軸受の内輪と外輪の間に電位差(軸電圧)が生じ、この軸電圧が軸受内部の油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受内部に電食を発生させる。
【0003】
この場合のモータの駆動は、プリント基板に搭載されたPWM方式のインバータから出力される交流電圧をステータコアに巻回されたステータ巻線に供給することにより行われる。
そして、軸受内部に発生する電食は、ブラシレスDCモータ内に各構成部材間に形成される浮遊容量を通じてループ状の高周波の循環電流が発生することにより生じる。この循環電流は、例えばステータコアから巻線、プリント基板、プリント基板側に位置する一方のブラケット、一端側のベアリング、回転軸、ロータを通じてステータコアに戻るループ状の電流路を流れる。
【0004】
この高周波の循環電流による軸受内部に発生する電食を抑制するために、ステータコアとプリント基板側に位置する一方のブラケット間を導通部材で短絡することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載されたモータでは、ステータコアとプリント基板側に位置する一方のブラケットを導通部材で短絡させて、ステータコアとブラケットを同電位とするようにしている。この場合、ステータコアとブラケットを短絡する導通部材は、絶縁樹脂によって形成されステータを収容するモータ外郭内に配置されている。この導通部材はステータコア側接続端子とブラケット側接続端子の2つの接続端子を備えている。ステータコア側接続端子は、ステータコアに接触又は溶接固定されてモータ外郭と一体成形され、ブラケット側接続端子は、ステータコア側接続端子にはんだ付け又は溶接固定されてステータコア側接続端子と反対側の端部がモータ外郭に支持されている。
【0007】
一方、ブラケット側接続端子とブラケットは、ブラケットがモータ外郭に圧入されることにより、ブラケット側接続端子のステータコア側接続端子と反対側の端部が、ブラケットに接触するようになっている。
このため、上記特許文献1に記載されたモータでは、ステータコアとプリント基板側に位置する一方のブラケットを短絡させるための導通部材として、2つの接続端子を連結する必要があり、複数の部品が必要であった。
また、ステータコア側接続端子をステータコアに溶接した後、ステータコア側接続端子をモータ外郭と一体成形し、次に、ブラケット側接続端子をステータコア側接続端子にはんだ付けした後、ブラケットをモータ外郭に圧入してブラケット側接続端子に接触するようにしているため、導通部材によってステータコアとプリント基板側に位置する一方のブラケットを短絡させるための成形加工や組立作業が面倒であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来例の課題に着目してなされたものであり、ステータコアとブラケットを短絡させる導通部材の部品点数を削減するとともに、ステータコアとブラケットを短絡させるための成形加工や組立作業を簡単に行うことができるモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータの一態様は、ステータコアと該ステータコアに巻回された巻線を備えたステータと、絶縁樹脂によって形成されステータを収容するモータ外郭と、回転軸に固定されたロータと、回転軸を回転自在に支持する一対のベアリングと、一対のベアリングの各々が収容されモータ外郭に嵌め合わされた一対のブラケットと、ステータコアに接触する第1接触部と、一対のブラケットのうち一方のブラケットに接触する第2接触部を形成した導通部材と、一対のブラケットを互いに短絡させる短絡部材を備えたモータであって、モータ外郭は、ステータコアの外周面の一部を外部に露出させる開口部を備え、導通部材は、L字状に形成された板状の部材であり、第1接触部が開口部に装着されステータコアの外周面の一部に接触し、第2接触部が一方のブラケットの先端部に接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るモータの一態様によれば、ステータコアとブラケットを短絡させる導通部材の部品点数を削減するとともに、ステータコアとブラケットを短絡させるための成形加工や組立作業を簡単に行うことができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】モータ外郭の開口部を示す拡大斜視図である。
【
図7】モータ外郭の開口部に導通部材を装着した状態の拡大斜視図である。
【
図8】モータ外郭の導通部材の装着前の状態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
<モータの構成>
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1乃至
図8は、本実施形態におけるモータ1の構成を説明する図である。
図1乃至
図8に示すように、モータ1は、例えば、空気調和機の室内機に搭載される送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータである。以下では、ブラシレスDCモータとして、2つの送風ファンを回転駆動するため、モータ1の軸方向両側に回転軸31が突出する両軸モータを例に説明する。本実施形態におけるモータ1は、ステータ2と、ロータ3と、第1ベアリング41と、第2ベアリング42と、第1ブラケット51と、第2ブラケット52と、導通部材6と、モータ外郭7を備えている。なお、一対のベアリングは第1ベアリング41と第2ベアリング42であり、一対のブラケットは第1ブラケット51と第2ブラケット52である。
【0014】
<ステータとロータ>
ステータ2は、
図2に示すように、円筒形状のヨーク部とヨーク部から内径側に延びる複数のティース部とを有したステータコア23を備え、一方側のインシュレータ211と他方側のインシュレータ212を介してティース部に巻線22が巻回されている。このステータ2は、ステータコア23の内周面を除いて、絶縁樹脂で形成されたモータ外郭7内に収容されている。
【0015】
ロータ3は、内径側から外径側に向って、回転軸31と、内周側鉄心32と、絶縁部材33と、外周側鉄心34と、永久磁石35を備えている。このロータ3は、ステータ2のステータコア23の内周面に所定の空隙(ギャップ)を保って対向して回転自在に配置されている。
回転軸31は、第1ベアリング41および第2ベアリング42によって回転自在に支持されている。
内周側鉄心32は、環状に形成され、中心に中心軸Oの方向に貫通する貫通穴を備えており、内周側鉄心32の貫通穴に回転軸31が圧入やカシメによって固定されている。
外周側鉄心34は、環状に形成され、内周側鉄心32の外周側に絶縁部材33を介して同軸的に配置されている。
【0016】
絶縁部材33は、PBTやBMCなどの誘電体の樹脂で円筒状に形成されている。この絶縁部材33は、内周側鉄心32と外周側鉄心34の間に樹脂が充填されることで、内周側鉄心32と外周側鉄心34に一体に形成されている。この絶縁部材33は、内周側鉄心32と外周側鉄心34の間の静電容量(ステータ2の巻線22と回転軸31の間の静電容量の一部)を小さくして第1ベアリング41および第2ベアリング42の内輪側の電位を下げることにより内輪側と外輪側の電位を近似させている。
この絶縁部材33では、静電容量を小さくするために軸方向の両端から内側に向かう軸方向穴331および332が壁部333を介して対向させて円周方向に複数形成されている。これら軸方向穴331および332を形成することにより、絶縁部材33より小さいほぼ1程度の比誘電率の空気を利用して静電容量を低減することができる。
【0017】
永久磁石35は、N極とS極が周方向に等間隔に交互に表れるように複数(例えば8個)の永久磁石片351で環状に形成されている。なお、永久磁石35は、磁石粉末を樹脂で固めることで環状に形成されたプラスチックマグネットを用いてもよい。
【0018】
<モータ外郭>
モータ外郭7は、
図2および
図5に示すように、ステータ2を収容する大径筒部71と、この大径筒部71より径が小さい中径筒部72と、この中径筒部72より径が小さい小径筒部73とが軸方向に順に一体成形された構造になっている。
大径筒部71には、一方側のインシュレータ211、他方側のインシュレータ212、巻線22およびステータコア23がステータコア23の内周面以外が埋設されている。この大径筒部71は、中径筒部72側の最大径の第1収容部711と、中径筒部72とは反対側の第1収容部711より小径の第2収容部712を備えている。
【0019】
第1収容部711は、ステータコア23と中径筒部72側のインシュレータ212(他方側のインシュレータ)および巻線22を収容している。第2収容部712は、中径筒部72とは反対側のインシュレータ211(一方側のインシュレータ)および巻線22を収容している。この第1収容部711は、第2収容部712側の端面がステータコア23の端面と同一位置となるように設定されている。
第2収容部712には、第1収容部711とは反対側の端部の外周側に環状台部713が形成されている。この環状台部713からは第1ブラケット51を第2収容部712に固定するための3つのブラケット固定用段部713aが形成されている。また、この環状台部713からはステータ2の巻線22の一端に接続された巻線端子714が突出されている。そして、
図2に示すように、環状台部713の端面には、円板状のプリント基板8がプリント基板8上のパターン(図示省略)と巻線端子714とはんだSで固定されている。
【0020】
このプリント基板8は、巻線端子714を貫通させた状態で環状台部713上に固定されている。このプリント基板8には、インバータ(図示せず)等のモータ1を駆動する電子回路を搭載している。また、プリント基板8には、中心部に回転軸31を挿通する貫通孔81が形成されている。
【0021】
<ベアリングとブラケット>
第1ベアリング41は、ロータ3の回転軸31の一端側(一方の送風ファンを連結する側)を回転自在に支持している。第2ベアリング42は、ロータ3の回転軸31の他端側(他方の送風ファンを連結する側)を回転自在に支持している。第1ベアリング41および第2ベアリング42は、例えば、ボールベアリングが用いられる。
【0022】
第1ブラケット51(一対のブラケットのうち一方のブラケット)は、金属製(鋼板やアルミニウムなど)であり、ロータ3の回転軸31における一端側のモータ外郭7(第2収容部712側)に配置されている。第1ブラケット51は、一端に底面を有し、他端を開放した有底円筒形状のブラケット本体部511と、底面に設けられ第1ベアリング41を収容するための第1ベアリングハウス512を有する。第1ブラケット51のブラケット本体部511は、後述するモータ外郭7の外周面(第2収容部712の外周面)に嵌め合わされている。例えば、第1ブラケット51のブラケット本体部511はモータ外郭7の外周面に隙間嵌めされている。第1ブラケット51の第1ベアリングハウス512は、底面を有する円筒形状に形成されており、底面の中央に孔を有し、この孔から回転軸31の一端側が突出している。このブラケット本体部511は、後述するように、開放端側が導通部材6を介してステータ2のステータコア23と短絡されている。
【0023】
第2ブラケット52(一対のブラケットのうち他方のブラケット)は、金属製(鋼板やアルミニウムなど)であり、ロータ3の回転軸31の他端側のモータ外郭7(中径筒部72および小径筒部73側)に配置されている。第2ブラケット52は、第2ベアリング42を収容するための第2ベアリングハウス521と、第2ベアリングハウス521の周りに広がるフランジ部522を有する。第2ブラケット52の第2ベアリングハウス521は、底面を有する円筒形状に形成されており、底面の中央に孔を有し、この孔から回転軸31の他端側が突出している。第2ブラケット52のフランジ部522は、一部が樹脂で覆われモータ外郭7(中径筒部72および小径筒部73側)と一体になっている。
【0024】
第1ベアリング41は、第1ブラケット51に設けられた第1ベアリングハウス512に収容され、第2ベアリング42は、第2ブラケット52に設けられた第2ベアリングハウス521に収容されており、第1ベアリング41と第1ベアリングハウス512、第2ベアリング42と第2ベアリングハウス521は、それぞれ電気的に導通している。また、第1ブラケット51と第2ブラケット52は、第1ブラケット51と第2ブラケット52を短絡部材、例えば、リード線(図示省略)により短絡し同電位となるようにしており、さらに、第1ブラケット51は、例えば、空気調和機の室内機の筐体や熱交換器を介してアースする接地部(図示省略)を備えている。
【0025】
<導通部材の構成>
以上のように構成されたモータ1では、背景技術の項で説明したように、ステータ2の巻線22にプリント基板に搭載されたPWM方式のインバータからの交流電圧が供給される。これにより、ブラシレスDCモータ内の各構成部材間に形成される浮遊容量を通じてループ状の高周波の循環電流が発生することにより軸受内部に電食を発生させる。
この循環電流は、例えば、ステータコア23から巻線22、プリント基板8、第1ブラケット51、第1ベアリング41、回転軸31、ロータ3を通じてステータコア23に戻る電流路を流れる。この高周波の循環電流による軸受内部に発生する電食を抑制するために、ステータコア23と第1ブラケット51間を導通部材6で短絡している。
【0026】
この導通部材6を配置するために、
図6、
図7に拡大図示するように、モータ外郭7の第1収容部711の第2収容部712側に開口部716が形成されている。開口部716は、ステータコア23の外周面231に沿って開放され、
図8に拡大図示するように、モータ外郭7を軸方向から見ると、方形に形成されている。開口部716は、
図6に示すように、ステータコア23の外周面231(
図6でハッチングで表示されている)を外部に露出させている。この開口部716は、第1収容部711の巻線端子714が設けられていない外周面の第2収容部712側に形成されている。また、開口部716は、第2収容部712の外周面より内側となるステータコア23の外周面231に達する深さにしている。ここで、ステータコア23の開口部716に対向する外周面231は平面231aに形成されている。
【0027】
この開口部716の外周側には導通部材6を保持する保持部717が形成されている。この保持部717は、
図8に拡大図示するように、モータ外郭7を軸方向から見ると、開口部716を形成する円周方向の両端の側壁における外周側端部から互いに対向して開口部716の円周方向の両端部を覆うように突出する一対の保持片718を備えている。従って、一対の保持片718の間には、
図6に示すように、隙間S1が形成されるとともに、保持片718とステータコア23の外周面231の間には、
図3に示すように、隙間S2が形成される。
また、第2収容部712の開口部716に対向する外周面に、底部が開口部716の底部と同一位置となるように案内溝719が形成されている。この案内溝719は、環状台部713の開放端面に達するように軸方向に形成されている。
【0028】
そして、導通部材6が開口部716内に挿入され、保持部717によって保持されている。この導通部材6は、真鍮、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属で製作されている。なお、導通部材6の
図4に示すX方向をモータ外郭7の周方向、Y1方向とY1方向に対して逆向きのY2方向をモータ1の軸方向、Z1方向とZ1方向に対して逆向きのZ2方向をモータ1の径方向に一致する方向とする。この導通部材6は、
図3および
図4に示すように、L字状に形成された板状の部材であり、ステータコア23に接触する第1接触部61と、第1接触部61の一端側に形成され第1ブラケット51に接触する第2接触部62を備えている。第1接触部61は、開口部716に装着されステータコア23の外周面231に接触し、第2接触部62は、第1ブラケット51のブラケット本体部511の先端部511aに接触する。
【0029】
第1接触部61には、第2接触部62のL字状の折り曲げ方向(Z1方向)側の表面の4隅に、それぞれ接触部611が第2接触部62の折り曲げ方向(Z1方向)に突出して形成されている。これら接触部611は、導通部材6を形成するプレス加工でZ1方向に突出するU字状に一体成型されている。また、第1接触部61の裏面614の中央部には、裏面614からZ2方向に突出する突起部612が形成されている。
接触部611の第1接触部61の裏面614からの高さは保持部717の保持片718の内面718aと開口部716で露出されているステータコア23の外周面231までの高さより高く設定されている。したがって、接触部611を保持片718に接触させたときに、接触部611の頂部が保持片718によって押圧されることにより、接触部611が保持片718に接触するとともに、突起部612がステータコア23の外周面231の平面231aに接触する。
また、第1接触部61には、第2接触部62を形成した一端とは反対側の他端にステータコア23と導通部材6の電気的接続を確認するための導通確認窓613が形成されている。
【0030】
第2接触部62は、第1接触部61の一対の接触部611間の一端側から折り曲げられている。この第2接触部62は、導通部材6を保持部717に保持した状態で、第1ブラケット51をモータ外郭7における大径筒部71の第2収容部712の外周面に隙間嵌めしたときに、第1ブラケット51のブラケット本体部511の開放された先端部511aが直接接触可能な位置まで延長されている。また、第2接触部62は、第1接触部61の表面とのなす角が90度より大きい鈍角となるように折り曲げられている。したがって、後述するように、第1ブラケット51のブラケット本体部511が第2接触部62に接触したときに、第2接触部62が撓んで弾性変形し、第1ブラケット51と導通部材6が確実に接触する。
【0031】
<モータの組み立て方法>
次に、上記構成を有するモータの組み立て方法について説明する。
先ず、モータ外郭7をインサート成型によって製作する。このモータ外郭7は、ステータ2および第2ブラケット52を金型にセットしてから金型内に、加熱し軟化した熱硬化性樹脂を所定圧力で流し込み、更に加熱することで硬化させるインサート成型によって製作される。
これにより、大径筒部71の第1収容部711内に他方側のインシュレータ212、巻線22およびステータコア23が埋設される。これと同時に、大径筒部71の第2収容部712内に一方側のインシュレータ211および巻線22が埋設され、さらに中径筒部72および小径筒部73の内周面側に第2ブラケット52が固定される。
【0032】
このモータ外郭7には、
図6に示すように、第1収容部711に開口部716が形成されているので、この開口部716を通じてステータコア23の外周面231が外部に露出されている。
この開口部716に導通部材6を装着して保持部717に保持させる。この導通部材6の装着は、第2収容部712に形成された開口部716につながる案内溝719の底部(
図6、7の第2収容部712を正面から見て凹んだ部分)に導通部材6の第1接触部61の裏面614を接触させる。このとき、導通部材6は、第2接触部62を環状台部713側とし、第1接触部61のY2方向の導通確認窓613側の弾性接触部611を保持部717の保持片718の内面側と対向させる。
【0033】
この状態で、例えば第2接触部62を把持して、導通部材6の第1接触部61の裏面614側が案内溝719の底部に沿うように軸方向に開口部716側に第1接触部61を摺動させる。これにより、Y1方向における他端側の接触部611がX方向における保持部717の両側の保持片718の内面に接触して第1接触部61の裏面614側に撓む。さらに、導通部材6を保持部717内に押し込むことにより、Y1方向の一端側の接触部611が保持部717の保持片718の内面に接触して第1接触部61の裏面614側に撓む。したがって、
図3に示すように、各接触部611の弾性力によって導通部材6の第1接触部61の裏面614から突出する突起部612がステータコア23の外周面231に確実に接触する。
図3に示すように、この突起部612の長手方向がステータコア23の鋼板の積層方向に一致するように形成されているので、ステータコア23の外周面231において積層による凹凸があっても、突起部612が確実に接触する。なお、第1接触部61の裏面614から突起部612を形成しない場合、第1接触部61の裏面614側の平面をステータコア23の外周面231に接触するようにしてもよい。
【0034】
このように、モータ外郭7の保持部717内に導通部材6を保持させることにより、ステータコア23の外周面231と導通部材6とを互いに接触させた状態で保持することができる。
そして、ロータ3は、外周側鉄心34に永久磁石35を接着剤で貼り付け、内周側鉄心32と、永久磁石35を貼り付けた外周側鉄心34を樹脂により一体成型され、一体成型された内周側鉄心32の貫通穴を回転軸31に挿入し、固定する。次いで、ロータ3を一体化した回転軸31に対して2箇所にEリング36を装着し、回転軸31に第1ベアリング41と第2ベアリング42の内輪を圧入する。そして、第2ブラケット52の第2ベアリングハウス521に予圧バネ37を配置し、第2ベアリングハウス521に対して第2ベアリング42の外輪を隙間嵌めすることで、回転軸31と一体化したロータ3をモータ外郭7に組み付ける。
【0035】
次いで、ロータ3をモータ外郭7に組み付けた後、プリント基板8を環状台部713に装着して、プリント基板8と巻線端子714をはんだ付けする。そして、第1ブラケット51の第1ベアリングハウス512に対して第1ベアリング41の外輪を隙間嵌めすることで、第1ブラケット51をロータ3に組み付けて、その後、モータ外郭7の第2収容部712の外周面に、第1ブラケット51のブラケット本体部511の内周面を隙間嵌めする。
次いで、モータ外郭7に対して第1ブラケット51を隙間嵌めした後、第1ブラケット51の開放側にある3箇所のネジ固定用段部(図示省略)がモータ外郭7の環状台部713から突出する3箇所のブラケット固定用段部713aに当接させ、3個のネジNで固定する。この結果、
図3に示すように、第1ブラケット51のブラケット本体部511の先端部511aが導通部材6の第2接触部62に接触し、この第2接触部62を弾性変形させる。
【0036】
そして、この第1ブラケット51とモータ外郭7のネジ固定が完了すると、回転軸31に固定されたロータ3の永久磁石35の外周面がステータ2のステータコア23の内周面に所定のギャップを開けて対向する。
これにより、
図1に示すように、第1ブラケット51とモータ外郭7とをネジ止めすることにより、第1ブラケット51とモータ外郭7とを一体化して、モータ1の組み立てを完了する。このようにモータ1を組み立てた結果、導通部材6と第1ブラケット51が弾性接触して電気的な導通を確実に行うことができる。
【0037】
<導通部材の作用と効果>
以上説明してきた導通部材6を備えたモータ1によれば、モータ外郭7に、内部に収容するステータ2のステータコア23の外周面231を露出させる開口部716を形成し、この開口部716に導通部材6を保持するようにしている。このため、ステータコア23とプリント基板8側に位置する第1ブラケット51を短絡させる導通部材6は、従来技術のように、2つの接続端子を連結する導通部材と比べて、部品点数を削減することができる。また、導通部材6によって、ステータコア23と第1ブラケット51を確実に短絡させることができる。したがって、第1ブラケット51と第2ブラケット52を短絡部材であるリード線により短絡させて第1ブラケット51の接地部を用いてアースするようにしたモータ1の場合に、特に、ステータコア23、第1ブラケット51及び第2ブラケット52を導通させることで、第1ベアリング41および第2ベアリング42にかかる軸電圧を大幅に低減することができる。この結果、第1ベアリング41および第2ベアリング42での電食の発生を抑制することができる。
【0038】
しかも、モータ外郭7の成型時に開口部716を形成し、成型後に導通部材6を開口部716に装着するだけで、ステータコア23と第1ブラケット51とを短絡することができ、ステータコア23と第1ブラケット51を短絡させるための加工や組立作業を簡単に行うことができる。
そして、開口部716の外側には導通部材6を保持する保持部717を形成している。このため、保持部717に導通部材6を挿入して保持させることにより、導通部材6とステータコア23を直接接触させることができ、導通部材6とステータコア23の導通を容易に行うことができる。
【0039】
このとき、モータ外郭7の第2収容部712に第1収容部711に形成した開口部716に繋がる案内溝719が形成されているので、保持部717への導通部材6の挿入を容易に行うことができ、導通部材6の装着作業を短時間で行うことができる。
また、導通部材6の第1接触部61に保持部717に接触する接触部611を形成することにより、導通部材6を保持部717に保持させたときに、接触部611が弾性変形する。この接触部611の弾性変形により、第1接触部61の裏面614から突出する突起部612がステータコア23の外周面231に押し付けられてガタを生じることなく確実な導通を得ることができる。
【0040】
さらに、第1接触部61に導通確認窓613を形成することにより、ステータコア23の外周面231と導通部材6との電気的接続が確実にとれているかを、導通確認窓613を通じで、ミリオームメータ等の測定器により確認することができる。また、モータ1の組立完成時に、導通確認窓613を通じて、ステータコア23、第1ブラケット51及び第2ブラケット52の電気的接続に異常がないかを点検することができる。
また、導通部材6と第1ブラケット51の導通は、第1ブラケット51をモータ外郭7の第2収容部712の外周面に隙間嵌めし、第1ブラケット51とモータ外郭7のネジ固定が完了した時点で、第1ブラケット51のブラケット本体部511の先端部511aが導通部材6の第2接触部62に接触して、第2接触部62を弾性変形させる。このため、導通部材6と第1ブラケット51の導通を容易且つ確実に行うことができる。
【0041】
<本実施形態の変形例>
なお、本実施形態によるモータ1では、モータ外郭7の第1収容部711の第2収容部712と接する端部が、モータ外郭7の内部に収容するステータコア23の第1ブラケット51側の端部と同一位置となるようにした場合について説明した。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、第1収容部711の第2収容部712と接する端部の位置は、ステータコア23の第1ブラケット51側の端部と同一位置に形成する必要はない。例えば、第1収容部711の第2収容部712と接する端部の位置がステータコア23の端部より第1ブラケット51側となるように形成した場合には、導通部材6の第1接触部61をステータコア23の端部より第1ブラケット51側に延長させて第2接触部62と第1ブラケット51を接触させるようにすればよい。
【0042】
また、導通部材6の第1接触部61の表面に形成した接触部611を保持部717の保持片718に接触させる場合に限らず、第1接触部61の裏面614側に接触部611を形成し、この接触部611をステータコア23の外周面231に接触させるようにしてもよい。また、接触部611の形状は、導通部材6を形成するプレス加工でZ方向に突出するU字状とする場合に限らず、台形状としたり、第1接触部61から切り起こした切り起こし片としたりすることができ、要は弾性変形可能であれば任意の形状とすることができる。
【0043】
また、導通部材6の第1接触部61の一端側に形成した第2接触部62を第1ブラケット51に接触させる場合に限らず、第2接触部62に代えて、第1ブラケット51に接触する固定接触部を形成し、この固定接触部とは反対側に導通部材6を第1ブラケット51側に付勢する弾性片やばね等の弾性部材を設けるようにしてもよい。
また、モータ外郭7の開口部716への導通部材6の装着は、第2収容部712に形成した案内溝719を通じて摺動させる場合に限らず、開口部716に備えた保持部717の一対の保持片718に対して導通部材6を半径方向に押し込んで、スナップフィット結合等で固定するようにしてもよい。この場合には、接触部611を第1接触部61の裏面614側に形成して接触部611をステータコア23に接触させることが好ましい。
【0044】
また、上記実施形態では、保持部717は、一対の保持片718で形成する場合に限らず、保持片718同士を連結して開口部716を覆う形状とすることもでき、この場合には、導通部材6の導通確認窓613に対向する位置に開口を形成すればよい。
また、上記実施形態では、ステータコア23の開口部716に対向する位置の外周面231は平面231aとする場合に限らず、円筒面のままとし、導通部材6の第1接触部61を円筒面に接触する円筒面に形成するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態によるモータ1では、ブラシレスDCモータとして、モータ1の軸方向両側に回転軸31が突出する両軸モータを例に説明したが、本発明はこれに限らず、第1ブラケット51が配置される回転軸31の一端側を出力側、第2ブラケット52が配置される回転軸31の他端側を反出力側とするモータでもよく、第1ブラケット51が配置される回転軸31の一端側を反出力側、第2ブラケット52が配置される回転軸31の他端側を出力側とするモータでもよい。
また、本実施形態によるモータ1では、ロータ3がロータコアの外周面に固定された表面磁石形の構成を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、永久磁石をロータコアのスロット内に埋め込んだ埋込磁石形の構成とすることもできる。
【0046】
また、本実施形態によるモータ1では、ステータコア23に接触する第1接触部61と第1ブラケット51に接触する第2接触部62を形成した導通部材6を備え、第1接触部61が開口部716に装着されステータコア23の外周面231に接触され、第2接触部62が第1ブラケット51の先端部511aに接触されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第2ブラケット52の形状をプリント基板8側に配置された第1ブラケット51と同様な形状に形成し、かつ、モータ外郭7を第1ブラケット51側と同様な形状に形成して軸方向に対称形のモータとする。この場合、一対のブラケットは第1ブラケット51と第2ブラケット52であり、第1ブラケット51と第2ブラケット52がモータ外郭7の外周面にそれぞれ嵌め合わされるモータになる。そして、このモータにおいて、導通部材6をステータコア23と第1ブラケット51(一対のブラケットのうち一方のブラケット)に接触させてもよく、また、導通部材6の第1接触部61がステータコア23の外周面231に接触され、第2接触部62が第2ブラケット52の先端部に接触されるように、モータ外郭7の開口部を軸方向に反転させて形成することにより、導通部材6をステータコア23と第2ブラケット52(一対のブラケットのうち一方のブラケット)に接触させてもよい。
【0047】
また、本実施形態の変形例として、上述のように、第2ブラケット52の形状をプリント基板8側に配置された第1ブラケット51と同様な形状に形成し、かつ、モータ外郭7を第1ブラケット51側と同様な形状に形成して軸方向に対称形のモータとし、第1ブラケット51と第2ブラケット52がモータ外郭7の外周面にそれぞれ嵌め合わされるモータの場合、
図3及び
図4で示したように、開口部716内に挿入されて保持部717によって保持されている導通部材6はL字状に形成した板状の部材に限らない。すなわち、導通部材6を、例えば、ステータコア23の外周面231に接触する第1接触部と、この第1接触部の一端からZ1方向に折り曲げられた第2接触部と、第1接触部の他端からZ1方向に折り曲げられた第3接触部を有するコ字状に形成した板状の部材とし、モータ外郭7の開口部716を、Y1方向とY2方向にそれぞれ開放されるように形成する。そして、このモータにおいて、コ字状に形成した導通部材6を開口部716に装着し、第1接触部がステータコア23の外周面231に接触し、第2接触部が第1ブラケット51の先端部に接触し、第3接触部が第2ブラケット52の先端部に接触するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 モータ
2 ステータ
211 一方側のインシュレータ
212 他方側のインシュレータ
22 巻線
23 ステータコア
231 外周面
231a 平面
3 ロータ
31 回転軸
32 内周側鉄心
33 絶縁部材
331 軸方向穴
332 軸方向穴
333 壁部
34 外周側鉄心
35 永久磁石
351 永久磁石片
36 Eリング
37 予圧バネ
41 第1ベアリング
42 第2ベアリング
51 第1ブラケット
511 ブラケット本体部
511a 先端部
512 第1ベアリングハウス
52 第2ブラケット
521 第2ベアリングハウス
522 フランジ部
6 導通部材
61 第1接触部
611 接触部
612 突起部
613 導通確認窓
614 裏面
62 第2接触部
7 モータ外郭
71 大径筒部
711 第1収容部
712 第2収容部
713 環状台部
713a ブラケット固定用段部
714 巻線端子
716 開口部
717 保持部
718 保持片
718a 内面
719 案内溝
72 中径筒部
73 小径筒部
8 プリント基板
81 貫通孔