(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電池パック及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/244 20210101AFI20220809BHJP
H01M 50/247 20210101ALI20220809BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20220809BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20220809BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/247
H01M50/296
B25F5/00 H
B25F5/02
(21)【出願番号】P 2018129348
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】菅野 翔太
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121461(WO,A1)
【文献】特開2016-192308(JP,A)
【文献】特開2014-216284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B25F 1/00- 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、
前記電池セルを収容するケースと、
前記ケースの外部に露出し作業者に操作される操作部と、前記操作部に接続され電気機器本体と係合可能に構成された係合部と、を有するラッチ機構と、
前記係合部が前記電気機器本体と係合するよう前記ラッチ機構を付勢する付勢部材と、
を備え、前記電気機器本体に対して接続方向に装着される電池パックであって、
前記ラッチ機構を操作しない状態で前記ケースが前記電気機器本体に対して
前記接続方向と反対の方向に移動した際に
、前記係合部
と前記電気機器本体との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する案内部を設けた、電池パック。
【請求項2】
前記案内部は、前記ケースが前記電気機器本体に対して
前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部
と前記電気機器本体との係合が外れる方向に
前記ラッチ機構を案内する傾斜部を有する、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面と、前記電気機器本体への
前記接続方向において前記係合面の反対側に位置する反係合面と、を有し、
前記傾斜部は、前記ケースのうち前記反係合面と対向する部分に設けられる、請求項
2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記ケースは、前記電気機器本体への装着ガイドとなる凹条部と、前記凹条部の底部に開口した穴部と、を有し、
前記係合部は、前記穴部を通って前記凹条部の前記底部から外側に突出し、
前記穴部の開口部が前記凹条部の側部に跨がり、又は、前記穴部に連なる凹部が前記凹条部の側部に設けられ、
前記係合部は、前記凹条部の側部の前記開口部内、又は、前記凹部の内側に延在し、
前記傾斜部は、前記開口部の内面、又は、前記凹部の内面に設けられる、請求項
3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記案内部は、前記ケースが前記電気機器本体に対して前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部と前記電気機器本体との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する曲面部を有し、
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面と、前記電気機器本体への前記接続方向において前記係合面の反対側に位置する反係合面と、を有し、
前記曲面部は、前記ケースのうち前記反係合面と対向する部分に設けられる、請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面と、前記電気機器本体への
前記接続方向において前記係合面の反対側に位置する反係合面と、を有し、
前記傾斜部は、前記反係合面に設けられる、請求項
2に記載の電池パック。
【請求項7】
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面を有し、
前記傾斜部は、前記係合面に設けられる、請求項
2に記載の電池パック。
【請求項8】
前記付勢部材の付勢力より、前記ケースが前記電気機器本体に対して外れる方向に移動したことにより前記案内部に加わる前記付勢力と反対向きの力が大きくなると、前記係合部と前記電気機器本体との係合が解除される、請求項
1から6のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の電池パックと、
前記電池パックが装着される電気機器本体と、を備える、電気機器。
【請求項10】
前記電気機器本体は、前記電池パックの前記係合部と係合する被係合部を有し、
前記被係合部は、前記電池パックが前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部と前記被係合部との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する傾斜部を有する、請求項9に記載の電気機器。
【請求項11】
電気機器本体と、
前記電気機器本体に
対して接続方向に装着される電池パックと、
を備え、
前記電気機器本体と前記電池パックの一方に設けられて作業者に操作される操作部と、前記一方に設けられ前記操作部に接続され前記電気機器本体と前記電池パックの他方に設けた被係合部と係合する係合部と、を有するラッチ機構と、
前記係合部が前記被係合部と係合するよう前記ラッチ機構を付勢する付勢部材と、
を有し、
前記ラッチ機構を操作しない状態で前記電池パックが前記電気機器本体に対して
前記接続方向と反対の方向に移動した際に
、前記係合部と前記被係合部の他方と接触して前記係合部
と前記被係合部
との係合が外れる方向に
前記ラッチ機構を案内する案内部を
前記係合部と前記被係合部の一方に設けた、電気機器。
【請求項12】
前記案内部は、前記電池パックが前記電気機器本体に対して
前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部
と前記被係合部
との係合が外れる方向に
前記ラッチ機構を案内する傾斜部を有する、請求項11に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコードレス電動工具等の電気機器の本体に着脱可能に装着される電池パック、及び電池パックを着脱可能に装着する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックからの供給電力で動作する電気機器(例えばコードレス電動工具)が広く知られている。電池パックは、充電可能なリチウム電池等の二次電池セルを内蔵する。電池パックは、例えば、電気機器本体の電池取付部に、レール部に沿って横方向にスライドさせて装着され、ラッチ機構により装着状態が維持される。具体的には、電池パックに設けられたラッチ機構の爪部と、電気機器本体に設けられたラッチ凹部あるいはラッチ凸部とが係合し、電池パックが電気機器本体から外れないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池パックを装着した電気機器が地面に落下した場合等には、ラッチ機構に負荷がかかり、ラッチ機構が破損する恐れがある。
【0005】
本発明は、ラッチ機構の破損を抑制することの可能な電池パック及び電気機器を提供することを目的とする。また、本発明は、ラッチ機構に負荷がかかった際に電池パックが電気機器本体から外れやすい電池パック及び電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電池パックである。この電池パックは、
電池セルと、
前記電池セルを収容するケースと、
前記ケースの外部に露出し作業者に操作される操作部と、前記操作部に接続され電気機器本体と係合可能に構成された係合部と、を有するラッチ機構と、
前記係合部が前記電気機器本体と係合するよう前記ラッチ機構を付勢する付勢部材と、
を備え、前記電気機器本体に対して接続方向に装着される電池パックであって、
前記ラッチ機構を操作しない状態で前記ケースが前記電気機器本体に対して前記接続方向と反対の方向に移動した際に、前記係合部と前記電気機器本体との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する案内部を有する。
【0007】
前記案内部は、前記ケースが前記電気機器本体に対して前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部と前記電気機器本体との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する傾斜部を有てもよい。
【0009】
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面と、前記電気機器本体への前記接続方向において前記係合面の反対側に位置する反係合面と、を有し、
前記傾斜部は、前記ケースのうち前記反係合面と対向する部分に設けられてもよい。
【0010】
前記ケースは、前記電気機器本体への装着ガイドとなる凹条部と、前記凹条部の底部に開口した穴部と、を有し、
前記係合部は、前記穴部を通って前記凹条部の前記底部から外側に突出し、
前記穴部の開口部が前記凹条部の側部に跨がり、又は、前記穴部に連なる凹部が前記凹条部の側部に設けられ、
前記係合部は、前記凹条部の側部の前記開口部内、又は、前記凹部の内側に延在し、
前記傾斜部は、前記開口部の内面、又は、前記凹部の内面に設けられてもよい。
【0011】
前記案内部は、前記ケースが前記電気機器本体に対して前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部と前記電気機器本体との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する曲面部を有し、
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面と、前記電気機器本体への前記接続方向において前記係合面の反対側に位置する反係合面と、を有し、
前記曲面部は、前記ケースのうち前記反係合面と対向する部分に設けられてもよい。
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面と、前記電気機器本体への前記接続方向において前記係合面の反対側に位置する反係合面と、を有し、
前記傾斜部は、前記反係合面に設けられてもよい。
【0012】
前記係合部は、前記電気機器本体と係合する係合面を有し、
前記傾斜部は、前記係合面に設けられてもよい。
【0014】
前記付勢部材の付勢力より、前記ケースが前記電気機器本体に対して外れる方向に移動したことにより前記案内部に加わる前記付勢力と反対向きの力が大きくなると、前記係合部と前記電気機器本体との係合が解除されてもよい。
【0015】
本発明のもう1つの態様は、電気機器である。この電気機器は、
前記電池パックと、
前記電池パックが装着される電気機器本体と、を備える。
前記電気機器本体は、前記電池パックの前記係合部と係合する被係合部を有し、
前記被係合部は、前記電池パックが前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部と前記被係合部との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する傾斜部を有してもよい。
【0016】
本発明のもう1つの態様は、電気機器である。この電気機器は、
電気機器本体と、
前記電気機器本体に対して接続方向に装着される電池パックと、
を備え、
前記電気機器本体と前記電池パックの一方に設けられて作業者に操作される操作部と、前記一方に設けられ前記操作部に接続され前記電気機器本体と前記電池パックの他方に設けた被係合部と係合する係合部と、を有するラッチ機構と、
前記係合部が前記被係合部と係合するよう前記ラッチ機構を付勢する付勢部材と、
を有し、
前記ラッチ機構を操作しない状態で前記電池パックが前記電気機器本体に対して前記接続方向と反対の方向に移動した際に、前記係合部と前記被係合部の他方と接触して前記係合部と前記被係合部との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する案内部を前記係合部と前記被係合部の一方に有する。
【0017】
前記案内部は、前記電池パックが前記電気機器本体に対して前記接続方向と反対の方向に移動した際に前記係合部と接触して前記係合部と前記被係合部との係合が外れる方向に前記ラッチ機構を案内する傾斜部を有してもよい。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ラッチ機構の破損を抑制することの可能な電池パック及び電気機器を提供することができる。また、本発明によれば、ラッチ機構に負荷がかかった際に電池パックが電気機器本体から外れやすい電池パック及び電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電動工具1の側面図。
【
図2】電動工具1が床面70に落下する様子の一例を示す側面図。
【
図5】電池パック2の上ケース4の左半分を、ラッチ機構20及びスプリング25を組み込んだ状態で下方から見た拡大図。
【
図6】
図5のラッチ機構20の周囲を拡大した斜視図。
【
図7】
図1の電動工具本体50の電池パック装着部52を下方から見た図。
【
図8】ラッチ機構20及びスプリング25を組み込んだ上ケース4と、電動工具本体50の電池パック装着部52と、の装着方法説明図。
【
図11】
図10の状態からラッチ機構20の操作部22を押し込んだ場合の断面図。
【
図12】
図2に示すように電動工具1を床面70に落下させた場合のラッチ機構20の状態を
図10と同じ断面で示す断面図。
【
図13】
図12から時間を進めた場合のラッチ機構20の状態を示す断面図。
【
図14】
図13から時間を進めた場合のラッチ機構20の状態を示す断面図。
【
図15】本発明の実施の形態2における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図。
【
図16】本発明の実施の形態3における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図。
【
図17】本発明の実施の形態4における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図。
【
図18】本発明の実施の形態5における電池パックのラッチ機構20近傍の拡大断面図。
【
図19】実施の形態5における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図。
【
図20】本発明の実施の形態6に係る電動工具の下部側面図。
【
図21】本発明の実施の形態7に係る電動工具の下部側面図。
【
図22】本発明の実施の形態8に係る電動工具の下部側面図。
【
図24】
図23の状態から作業者の操作によりラッチ解除状態とした場合の下部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
(実施の形態1)
図1~
図14を参照し、本発明の実施の形態1の電動工具1について説明する。電動工具1は、コードレス電動工具であり、電気機器の一例である。
図1に示すように、電動工具1は、電動工具本体50と、電池パック2と、を備える。電動工具本体50は、電気機器本体の一例である。電動工具本体50は、自身のハンドル部51の下端部に、電池パック装着部52を有する。電池パック装着部52、電池パック2が着脱可能にスライド装着される。電池パック2は、ラッチ機構20を有する。ラッチ機構20は、電池パック2を電池パック装着部52に固定(係止)する。作業者は、ラッチ機構20の操作部22を押し込むことで、ラッチ機構20による固定を解除し、電池パック装着部52から電池パック2を取り外すことができる。
【0023】
図3及び
図4に示すように、電池パック2は、ケース3と、電池セル6と、基板7と、セパレータ8と、電池側端子(電池側ターミナル)9と、ラッチ機構(ラッチ部材)20と、を有する。
図3により、電池パック2における前後、上下、左右の各方向を定義する。ケース3は、上ケース4及び下ケース5を組み合わせたものであり、左右対称形状である。電池パック2は、ダブルラッチ構造であり、左右のラッチ機構20は、互いに左右対称形状である。電池セル6、基板7、及びセパレータ8は、ケース3に収容される。
【0024】
電池セル6は、例えば充電可能なリチウム電池等の二次電池セルである。基板7は、セパレータ8に保持される。基板7には、マイコンや保護回路等のICや各種素子(電子部品)が搭載され、また導電パターンが形成される。セパレータ8は、ケース3内において、電池セル6を所定位置に保持する。電池側端子9は、基板7上に設けられる。電池側端子9は、電池パック2が電池パック装着部52に装着された場合に、電動工具本体50の
図7に示す工具側端子55に接触し電気的に接続される。工具側端子55は、機器側端子の一例である。
【0025】
上ケース4は、左右両側面の上部にそれぞれ、凹条部11及び凸条部13を有する。凹条部11及び凸条部13は、電池パック2を電池パック装着部52にスライド装着する際のガイドとなる。凹条部11及び凸条部13は、前後方向と平行に延びる。
図7に示すように、電池パック装着部52には、凸条部53が設けられる。
図8に示すように電池パック2と電池パック装着部52とを相対的に前後方向にスライドさせると、電池パック2の凹条部11内に電池パック装着部52の凸条部53が入り、
図9に示す状態となる。
【0026】
凹条部11の底部には、穴部15(
図4)が開口する。凹条部11の深さ方向は、左右方向である。凹条部11の底部(底面)は、凹条部11の最深部(最深面)を意味する。凹条部11の側部(側面)は、凹条部11の幅方向両側部分、すなわち凹条部11の底部の上下部分(上下の側面)をいう。凹条部11の上側の側部は、凸条部13の下部(下面)である。穴部15は、ラッチ機構20の爪部(係合部)21を凹条部11の底部から上ケース4の外側に突出(露出)させるために設けられる。穴部15の開口部は、凹条部11の下側の側部に跨がっている。すなわち、凹条部11の下側の側部に開口した穴部17は、開口部が穴部15の開口部と連なっている。凹条部11の、上側の側部(穴部17が設けられた側部とは反対側の側部)には、凹部19(
図5及び
図6)が設けられる。凹部19は、穴部15に連なる。
【0027】
ラッチ機構20は、係合部としての爪部21と、操作部22と、連結部(腕部)23と、を含む。連結部23は、上ケース4内を通って爪部21と操作部22とを互いに連結する。爪部21は、上ケース4の穴部15を通って凹条部11の底部から外側(左右方向)に突出する。爪部21は、前面が好ましくは鈍角に丸味を帯びて屈曲する。
図5、
図10、
図11に示すように、爪部21の前面の屈曲部の頂点21cは、丸味を帯びた角部となっている。爪部21は、凹部19内に延在する。爪部21が
図10に示すように電動工具本体50の電池パック装着部52のラッチ凸部(被係合部)54に引っ掛かる(係合する)ことで、電池パック2が電池パック装着部52に固定(係止)される。爪部21の後面は、ラッチ凸部54と係合する係合面である。爪部21の前面は、反係合面である。操作部22は、上ケース4から外側(左右方向)に突出する。操作部22は、上ケース4内に設けられた付勢部材としてのスプリング25(
図10等)により、外側に付勢される。作業者が操作部22を押すと、
図11に示すようにスプリング25の付勢に抗してラッチ部材20が上ケース4の内側に押し込まれ(スライド移動し)、ラッチ部材20の爪部21と電池パック装着部52のラッチ凸部54との係合が解除され、電池パック2を電動工具本体50から取り外すことができる。
【0028】
図5及び
図6に示すように、上ケース4には、案内部としての傾斜部(傾斜面)40が設けられる。傾斜部40は、例えば
図2に示すように電動工具1が床面70に落下する等により、ケース3が電動工具本体50に対して外れる方向に移動した際に、爪部21と接触して爪部21が上ケース4の内部に引っ込む方向に動作するように案内する。傾斜部40は、前後方向と垂直な面に対して傾斜した部分であり、上下方向と平行である。
図5に示すように、左側の傾斜部40は、左後ろから右前に延びるように傾斜する。傾斜部40は、爪部21の前方に設けられ、爪部21の前面(反係合面)と対向する。
図6に示す傾斜部40aは、傾斜部40のうち、凹部19の内面に位置する部分である。傾斜部40bは、傾斜部40のうち、穴部17の内面に位置する部分である。
【0029】
図12~
図14を参照し、
図2に示すように電動工具1が床面70に落下した場合のラッチ機構20の動作を説明する。
図12~
図14に示す同図中における右向きの矢印は、
図2に示すように電動工具1が床面70に落下した場合に電池パック装着部52が上ケース4に対して相対移動しようとする向きである。
図2に示すように電動工具1が床面70に落下すると、落下の衝撃により、電池パック装着部52のラッチ凸部54が、ラッチ機構20の爪部21を急激に前方に引っ張る。これにより、ラッチ機構20の連結部23が瞬間的に前後方向に引き延ばされる。ここで、電池パック2はダブルラッチ構造であり、凹条部11に爪部21が突出する関係で、連結部23は前後方向に比較的長く延出する。このため、連結部23に前後方向に引き延ばされる力が働くと、爪部21は比較的大きく前方に移動し、上ケース4の傾斜部40に接触する。具体的には、
図12中に示す点P1の位置で、爪部21の前面(
図10に示す頂点21c)が上ケース4の傾斜部40に衝突する。このとき、爪部21は、傾斜部40のうち、凹部19の内面に位置する傾斜部40aと衝突する。傾斜部40の傾斜に案内される形で、ラッチ機構20は、爪部21が上ケース4の内側に引っ込む方向に回動する。すなわち、爪部21と傾斜部40の接触位置は、傾斜部40の傾斜に案内され、
図12に示す点P1から、
図13に示す点P2、
図14に示す点P3と順に上ケース4の内側にずれていく。
図14の状態では、爪部21とラッチ凸部54の係合は解除されている。スプリング25の付勢力より、上ケース4が電動工具本体50に対して外れる方向に移動したことにより傾斜部40に加わる前記付勢力と反対向きの力が大きいと、爪部21とラッチ凸部54との係合が解除される。その後、電池パック装着部52が上ケース4に対して更に前方に移動することで、電池パック2が電池パック装着部52から外れる。ここで、傾斜部40が前後方向と垂直な面の場合には、
図12~
図14に示すようなラッチ機構20の回動がスムーズに行かずに、応力集中によりラッチ機構20が破損するリスクがある。傾斜部40は、そのようなラッチ機構20の破損リスクを抑制するものである。
【0030】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0031】
(1) 上ケース4が傾斜部40を有するため、
図2に示すように電動工具1が床面70に落下する等によりケース3が電動工具本体50に対して外れる方向に移動した際に、爪部21が傾斜部40に案内されて上ケース4の内部に引っ込む方向に動作し、爪部21とラッチ凸部54との係合が解除される。このため、ラッチ機構20に過大な負荷がかかることを抑制でき、ラッチ機構20の破損を抑制することができる。また、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パック2を電動工具本体50から外れやすくすることができる。
【0032】
(2) 傾斜部40が、凹部19の内面に位置する傾斜部40aを有し、爪部21が凹部19内に延在するため、
図2に示すように電動工具1が床面70に落下する等によりケース3が電動工具本体50に対して外れる方向に移動した際に、傾斜部40aが爪部21を受け止めることができる。すなわち、爪部21をより確実に傾斜部40で受けることができ、爪部21をより確実に上ケース4の内部に引っ込む方向に動作させることができる。
【0033】
実施の形態1において、爪部21は、凹部19内に延在することに加えて又はそれに替えて、穴部17内に延在してもよい。爪部21が穴部17内に延在する場合、
図2に示すように電動工具1が床面70に落下する等によりケース3が電動工具本体50に対して外れる方向に移動した際に、穴部17の内面に位置する傾斜部40bが爪部21を受けることができる。すなわち、爪部21をより確実に傾斜部40で受けることができ、爪部21をより確実に上ケース4の内部に引っ込む方向に動作させることができる。また、爪部12を凹部19及び穴部17の両方に延在させてもよい。この場合、爪部21と傾斜部40との接触領域が大きくなるため爪部21をより確実に傾斜部40で受けることができ、爪部21をより確実に上ケース4の内部に引っ込む方向に動作させることができる。
【0034】
(実施の形態2)
図15は、本発明の実施の形態2における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図である。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。実施の形態1の傾斜部40は、本実施の形態では前後方向と垂直な面に変わっている。爪部21は、後面(係合面)に、案内部としての傾斜部(傾斜面)21aを有する。傾斜部21aは、前後方向と垂直な面に対して傾斜した部分であり、上下方向と平行である。左側のラッチ機構20の爪部21の傾斜部21aは、左前から右後ろに延びるように傾斜する。本実施の形態では、上ケース4が電池パック装着部52に対して外れる方向に移動した際に、傾斜部21aとラッチ凸部54との係合により、爪部21が上ケース4の内部に引っ込む方向に動作し、爪部21とラッチ凸部54との係合が解除される。このため、ラッチ機構20に過大な負荷がかかることを抑制でき、ラッチ機構20の破損を抑制することができる。また、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パックを電動工具本体から外れやすくすることができる。
【0035】
(実施の形態3)
図16は、本発明の実施の形態3における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図である。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。実施の形態1の傾斜部40は、本実施の形態では前後方向と垂直な面に変わっている。ラッチ凸部54は、爪部21と係合する係合面に、案内部としての傾斜部(傾斜面)54aを有する。傾斜部54aは、前後方向と垂直な面に対して傾斜した部分であり、上下方向と平行である。左側のラッチ凸部54の傾斜部54aは、左前から右後ろに延びるように傾斜する。本実施の形態では、上ケース4が電池パック装着部52に対して外れる方向に移動した際に、傾斜部54aと爪部21との係合により、爪部21が上ケース4の内部に引っ込む方向に動作し、爪部21とラッチ凸部54との係合が解除される。このため、ラッチ機構20に過大な負荷がかかることを抑制でき、ラッチ機構20の破損を抑制することができる。また、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パックを電動工具本体から外れやすくすることができる。
【0036】
(実施の形態4)
図17は、本発明の実施の形態4における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図である。本実施の形態は、実施の形態2及び実施の形態3の組合せに対応し、爪部21が後面に傾斜部21aを有し、ラッチ凸部54が爪部21との係合面に傾斜部54aを有する。本実施の形態によれば、傾斜部21aと傾斜部54aの係合により、実施の形態2及び実施の形態3と同様に、ラッチ機構20の破損を抑制し、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パックを電動工具本体から外れやすくすることができる。
【0037】
(実施の形態5)
図18は、本発明の実施の形態5における電池パックのラッチ機構20近傍の拡大断面図である。
図19は、実施の形態5における、電動工具本体の電池パック装着部52と、電池パックのラッチ機構20と、の相互係合部近傍の拡大断面図である。以下、実施の形態4との相違点を中心に説明する。爪部21は、前面(反係合面)に、案内部としての傾斜部(傾斜面)21bを有する。傾斜部21bは、前後方向と垂直な面に対して傾斜した部分であり、上下方向と平行である。左側のラッチ機構20の爪部21の傾斜部21bは、左後ろから右前に延びるように傾斜する。上ケース4は、傾斜部21bと対向する位置に、R面41を有する。上ケース4の左側のR面41は、右後方に凸となるR面である。本実施の形態によれば、傾斜部21aと傾斜部54aの係合に加え、傾斜部21bとR面41の係合も、ラッチ機構20の破損を抑制し、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パックを電動工具本体から外れやすくする効果を奏する。
【0038】
(実施の形態6)
図20は、本発明の実施の形態6に係る電動工具の下部側面図である。
図15に示す実施の形態2の技術をシングルラッチ構造の電池パック2Aに適用したものである。電動工具本体の電池パック装着部52Aに、電池パック2Aが前後方向にスライド装着される。ラッチ機構20は、電池パック2Aの後上部中央に設けられる。ラッチ機構20の爪部21は、上方に突出して、電池パック装着部52Aのラッチ凹部(被係合部)57に入り込む。本実施の形態の電動工具は、電池パック2Aのラッチ機構20の爪部21が後面に案内部としての傾斜部(傾斜面)21eを有する以外は構造として周知である。傾斜部21eは、前後方向と垂直な面に対して傾斜した部分であり、左右方向と平行である。傾斜部21eは、後方下部から、前方上部に延びように傾斜する。本実施の形態では、電池パック2Aが電池パック装着部52Aに対して外れる方向に移動した際に、傾斜部21eとラッチ凹部57との係合により、爪部21が電池パック2Aのケース内に引っ込む方向に動作し、爪部21とラッチ凹部57との係合が解除される。このため、ラッチ機構20に過大な負荷がかかることを抑制でき、ラッチ機構20の破損を抑制することができる。また、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パック2Aを電池パック装着部52Aから外れやすくすることができる。
【0039】
(実施の形態7)
図21は、本発明の実施の形態7に係る電動工具の下部側面図である。以下、実施の形態6との相違点を中心に説明する。電池パック2Bのラッチ機構20の爪部21の後面は、非傾斜部であり、前後方向と垂直である。一方、電池パック装着部52Bのラッチ凹部57の、爪部21の後面との対向面は、案内部としての傾斜部(傾斜面)57aとなっている。傾斜部57aは、前後方向と垂直な面に対して傾斜した部分であり、左右方向と平行である。傾斜部57aは、後方下部から、前方上部に延びように傾斜する。本実施の形態では、電池パック2Bが電池パック装着部52Bに対して外れる方向に移動した際に、傾斜部57aと爪部21との係合により、爪部21が電池パック2Bのケース内に引っ込む方向に動作し、爪部21とラッチ凹部57との係合が解除される。このため、ラッチ機構20に過大な負荷がかかることを抑制でき、ラッチ機構20の破損を抑制することができる。また、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パック2Bを電池パック装着部52Bから外れやすくすることができる。
【0040】
(実施の形態8)
図22は、本発明の実施の形態8に係る電動工具の下部側面図である。本実施の形態は、実施の形態6及び実施の形態7の組合せに対応し、電池パック2Cのラッチ機構20の爪部21が後面に傾斜部21eを有し、電池パック装着部52Cのラッチ凹部57は爪部21の後面との対向面に傾斜部57aを有する。本実施の形態によれば、傾斜部21eと傾斜部57aの係合により、実施の形態6及び実施の形態7と同様に、ラッチ機構20の破損を抑制し、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パック2Cを電池パック装着部52Cから外れやすくすることができる。
【0041】
図23は、比較例に係る電動工具の下部側面図である。
図24は、
図23の状態から作業者の操作によりラッチ解除状態とした場合の下部側面図である。本比較例は、
図20に示す実施の形態6の爪部21の後面を非傾斜部としたものである。本比較例において、作業者が操作部22を押し下げることで爪部21とラッチ凹部57との係合を解除できる点は、前述の
図20~
図22の実施形態と同様である。本比較例では、前述の
図20~
図22の実施形態と異なり、電池パック2Dが電池パック装着部52Dに対して外れる方向に移動しても、爪部21を電池パック2Dのケース内に引っ込む方向に動作させる力が働きにくく、ラッチ機構20に過大な負荷がかかり、ラッチ機構20が破損しやすい。また、ラッチ機構20に負荷がかかった際に電池パック2Dが電池パック装着部52Dから外れにくい。
【0042】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0043】
本発明の電気機器は、実施の形態で例示した電動工具に限定されず、電池パックを着脱可能に装着する他の種類の電気機器であってもよい。また、ラッチ機構20を電気機器本体側に設け、ラッチ機構20の爪部(係合部)21が係合する被係合部(ラッチ凸部54やラッチ凹部57に相当)を電池パック側に設けた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 電動工具(電気機器)、2 電池パック、2A~2D 電池パック、3 ケース、4 上ケース、5 下ケース、6 電池セル、7 基板、8 セパレータ、9 電池側端子(電池側ターミナル)、11 凹条部、13 凸条部、15 穴部、17 穴部、19 凹部、20 ラッチ部材(ラッチ機構)、21 爪部(係合部)、21a 傾斜部(案内部)、21b 傾斜部(案内部)、22 操作部、23 連結部(腕部)、25 スプリング(付勢部材)、40 傾斜部(案内部)、40a 傾斜部(案内部)、40b 傾斜部(案内部)、41 R面、50 電動工具本体(電気機器本体)、51 ハンドル部、52 電池パック装着部、52A~52D 電池パック装着部、53 凸状部、54 ラッチ凸部(被係合部)、54a 傾斜部、55 工具側端子(工具側ターミナル)、57 ラッチ凹部(被係合部)、57a 傾斜部、70 床面