(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220809BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220809BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220809BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220809BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20220809BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 C
B32B27/36
B32B7/12
B32B7/02
(21)【出願番号】P 2018131643
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 臣吾
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082821(JP,A)
【文献】特開2013-237247(JP,A)
【文献】特開2004-330776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが20μm以上150μm以下の範囲であり、ポリエステル系材料を含む基材フィルム層と、
前記基材フィルム層の一方の面に設けられた絵柄印刷層と、
前記絵柄印刷層上に設けられた表面保護層と、
前記基材フィルム層の前記絵柄印刷層が設けられた面とは反対側の面に接着剤層を介して貼り合わされ、ポリプロピレン系材料を含む透明フィルム層と、
を備え
、
前記透明フィルム層は、ガスバリア層を積層したポリプロピレン系防湿フィルムである
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記接着剤層に用いられる接着剤は、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が400%以上800%以下の範囲であり、かつ最大点応力が5MPa/mm
2以上20MPa/mm
2以下の範囲であること
を特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記接着剤層に用いられる接着剤は、ポリエステルポリオール樹脂又はアクリルポリオール樹脂と、イソシア硬化剤との反応によるウレタン樹脂を含むこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記接着剤層に用いる接着剤の厚みは、3g/m
2以上10g/m
2下の範囲であること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記基材フィルム層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム、又は結晶化度が70%以上のポリブチレンテレフタレートフィルムであること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記透明フィルム層は、(メタ)アクリル酸系重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体との組成物により形成された
前記ガスバリア層を積層した
前記ポリプロピレン系防湿フィルムであること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記透明フィルム層の透湿度は、3g/m
2・day以下であること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記透明フィルム層は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであること
を特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記透明フィルム層の厚みは、10μm以上100μm以下の範囲であること
を特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具の反り防止等を目的として、ポリエステル系基材フィルムに絵柄印刷層と表面保護コート層を設けて、前述の絵柄印刷層とは反対の面に接着剤層を介して、ポリエステル系防湿フィルムを貼り合せた2層以上のポリエステル系フィルムによる複層の化粧シートが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエステル系防湿フィルムは酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明ガスバリア性フィルムである。前述の化粧シートは、ラミネート、切削性、穴あけ加工及びVカット等の加工の際において伸長された時にガスバリア性が低下することで防湿性能が低下してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、ラミネート、切削性、穴あけ加工及びVカット等の加工の際に伸長されても、防湿性能を維持することができる化粧シートを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による化粧シートは、厚みが20μm以上150μm以下の範囲であり、ポリエステル系材料を含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の一方の面に設けられた絵柄印刷層と、前記絵柄印刷層上に設けられた表面保護層と、前記基材フィルム層の前記絵柄印刷層が設けられた面とは反対側の面に接着剤層を介して貼り合わされ、ポリプロピレン系材料を含む透明フィルム層と、を備え、前記透明フィルム層は、ガスバリア層を積層したポリプロピレン系防湿フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工の際に伸長されても防湿性能を維持することができる化粧シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のある実施形態に係る化粧シート10の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のある実施形態に係る化粧シートについて、図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた形態も、本発明の範囲に含まれる。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している場合がある。また、各図面において、「表面」とは、基材フィルム層における一方の面(表面、おもて面)を基準として、同じ向きの面を各層の「表面」とし、各層の「表面」と反対側の面を「裏面」と称する。
【0010】
(化粧シートの構成)
図1に示すように、本発明のある実施形態に係る化粧シート10は、複層構成の化粧シートであって、基材フィルム層1と、基材フィルム層1の一方の面に設けられた絵柄印刷層2と、絵柄印刷層2上に設けられた表面保護層3と、を備えている。具体的には、絵柄印刷層2は、基材フィルム層1の表面11aに設けられており、表面保護層3は、絵柄印刷層2の表面12aに設けられている。
また、基材フィルム層1において、絵柄印刷層2が設けられている面である表面11aとは反対側の面(裏面11b)には、接着剤層4を介して透明フィルム層5が貼り合わされている。また、透明フィルム層5において、接着剤層4で接着された面である表面15aとは反対側の面(裏面15b)には、プライマー層6が設けられている。なお、
図1は、理解を容易にするため化粧シート10を構成する複層間に間隙を設けて図示しているが、実際は、化粧シート10の複層間において
図1に示すような間隙は設けられていない。
【0011】
(基材フィルム層)
本実施形態における基材フィルム層1は、厚みが20μm以上150μm以下のポリエステル系樹脂を含むフィルムである。基材フィルム層1の厚みが150μmを超過した場合、例えばVカット等の加工の際において、化粧シート10を貼り合わせた基材が割れるおそれがある。例えば基材フィルム層1の材料としては、絵柄印刷層2を設けるのに適したものであれば、特に限定されるものではない。
【0012】
例えば、基材フィルム層1に用いられるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレート等が挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。
【0013】
また、基材フィルム層1は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム、又は結晶化度が70%以上のポリブチレンテレフタレートフィルムであると、化粧シート10全体の強度、耐熱性をより好適なものとすることが可能となるので好ましい。
【0014】
また、基材フィルム層1は着色したものが好ましい。そして、着色されるためには、顔料及び染料の少なくとも何れか一方が配合されていることが必要である。
上記顔料としては、無機顔料と有機顔料とに分類することができ、上記無機顔料としては、酸化チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、弁柄、朱、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメートなどが挙げられる。また、上記有機顔料としては、フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系などの顔料が挙げられ、代表的なものとして、キナクリドン、ウォッチアングレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
また、上記染料としては、天然染料と合成染料に分類することができ、上記天然染料としては、インジゴ(藍)等が代表される。また、上記合成染料としては、アゾ染料、インジゴイド染料、硫化染料、ニトロ染料、ニトロソ染料等が挙げられる。これらの顔料及び染料は、1種又は2種以上併用して使用することができ、耐光性に優れ、ポリエステル系基材フィルムに隠蔽性を持たすようにするためには、無機顔料が好ましい。
【0015】
また、基材フィルム層1中には本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
【0016】
(絵柄印刷層)
絵柄印刷層2は、化粧シート10に絵柄による意匠性を付与するために、必要に応じて設けられるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。上記模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0017】
絵柄印刷層2に用いるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0018】
インキの着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
【0019】
(表面保護層)
本実施形態における表面保護層3としては、化粧シートとしての各種表面耐性が得られるものであれば、その材料は特に限定しないが、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂等を用いることができる。表面保護層3は、表面保護層3を通して、絵柄印刷層2の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材料で形成されている。
【0020】
(接着剤層)
本実施形態における接着剤層4には、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が400%以上800%以下の範囲であり、かつ最大点応力が5MPa/mm2以上20MPa/mm2以下の範囲である接着剤が用いられる。
また、接着剤層4に用いる接着剤としては、例えばポリエステルポリオール樹脂又はアクリルポリオール樹脂と、イソシア硬化剤との反応によるウレタン樹脂等が好適に用いられる。なお、接着剤にはこれらの成分以外にも、所定の添加物が含有され得る。
上述の接着剤を接着剤層4に用いることにより、本実施形態による化粧シート10は、加工適性を有し、合板、MDF、パーティクルボード等の平板へのラミネート時、切削時、穴明け時に複層フィルム間が剥がれたり欠けたりしてしまうといった不具合を防止することができる。
また、接着剤層4における接着剤の厚みは、3g/m2以上10g/m2以下の範囲が好適である。
【0021】
(透明フィルム層)
本実施形態における透明フィルム層5は、基材フィルム層1の絵柄印刷層2を設けた表面11a側とは反対側の面(裏面11b)側に接着剤層4を介して設けられている。具体的には、透明フィルム層5は、接着剤層4により、基材フィルム層1の裏面11bに接着されている。
透明フィルム層5は、厚みが10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。
また、透明フィルム層5は、(メタ)アクリル酸系重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体との組成物により形成されたガスバリア層を積層したポリプロピレン系防湿フィルムである。例えば透明フィルム層5は、ポリプロピレンと変性ポリプロピレン重合体を共押し出しした積層シートに、(メタ)アクリル酸系重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体とにより形成されたガスバリア層をコーティングして、横方向へ延伸した透明ポリプロピレンフィルムである。
透明フィルム層5は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを透明フィルム層5として用いることで、加工時等において化粧シート10が伸長された場合に、ガスバリア層におけるクラックの発生を防止することができる。また、透明フィルム層5の透湿度は、3g/m2・day以下であることが好ましい。
本実施形態による化粧シート10は、基材フィルム層1の裏面11b側に上述の構成による透明フィルム層5を備えることにより、加工等の際に伸長された場合に防湿性能を維持可能である。さらに、透明フィルム層5に二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いることで、加工の際に伸長された場合も、積層された各フィルム間においてフィルムが剥がれたり欠けたりしてしまうといった不具合を防止することができる。したがって、本実施形態による化粧シート10は、伸長時における防湿性能の維持と加工適性とを両立させることができる。
【0022】
(プライマー層)
本実施形態において、プライマー層6としては、例えば化粧シート10を貼り合わせる基材が木質系基材の場合には、例えば、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。この場合、プライマー層6を構成する樹脂としては、ウレタン-アクリレート系樹脂が好ましい、すなわち、アクリル系樹脂とウレタン系樹脂との共重合体とイソシアネートとからなる樹脂で形成するのが特に好ましい。
プライマー層6は、例えば、化粧シート10を基材に貼り合わせて化粧板を形成する際に、当該基材と化粧シート10との密着性を向上させるために形成される層である。このため、化粧シート10において、プライマー層6の形成を省略してもよい。
【0023】
以上説明したように、本実施形態による化粧シート10は、少なくとも透明フィルム層5と、接着剤層4と、基材フィルム層1と、絵柄印刷層2と、表面保護層3とがこの順で積層されている。そして、基材フィルム層1は、ポリエステル系材料を含み、その厚みが20μm以上150μm以下の範囲であり、また、透明フィルム層5は、ポリプロピレン系材料を含んでいる。
これにより、化粧シート10は、加工等の際において伸長された場合にも、防湿性能を維持することができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本実施例において、基材フィルム層1としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂(大倉工業株式会社製)を使用した。また、基材フィルム層1の厚みは60μmとした。また、基材フィルム層1の表面上に、絵柄印刷層2を形成した。絵柄印刷層2において、印刷のインキとしては、ウレタン・塩酢ビ系樹脂(東洋インキ株式会社製)を使用した。
次に、絵柄印刷層2の表面上に表面保護層3を形成した。表面保護層3の材料としては、アクリル系樹脂(DICグラフィックス株式会社製)を用いた。
次に、基材フィルム層1の絵柄印刷層2を設けた表面11aとは反対側の裏面11bに接着剤(東洋モートン株式会社製、「TMX」)を、5g/m2となる厚みで設けて接着剤層4を形成した。この接着剤の樹脂特性は、25℃条件下での伸び率が500%であり、最大点応力が8MPa/mm2であった。
ここで、上記(塗膜)伸び率は、以下のようにして測定した。すなわち、サンプルサイズの幅10mm×長さ40mm×厚み0.15mmを基準とし、測定時の温度は25℃で測定速度は100mm/min、破断時の状態(塗膜が伸びきった時点の破断)での伸び率(%)を測定した。
また、上記最大点応力は、以下のようにして測定した。すなわち、サンプルサイズと測定条件は伸び率測定時と同条件にて、引っ張り試験にて最大点応力を塗膜の断面積(mm2)で割った値で算出した。
次に、接着剤層4を介して、ポリプロピレン系防湿フィルムであるWH-OP HE-1(三井化学東セロ株式会社製 厚み25μm)を貼り合せて透明フィルム層5を形成して、実施例1の化粧シートを作製した。
プライマー層6は、主剤としたウレタン樹脂及び塩酢ビ系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂を、グラビア印刷法にて固形分としての塗布量が1g/m2になるように設けた。
【0025】
(実施例2)
接着剤層4として、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が300%であり、かつ最大点応力が20MPa/mm2の接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを作製した。
【0026】
(実施例3)
接着剤層4として、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が480%であり、かつ最大点応力が30MPa/mm2の接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の化粧シートを作製した。
【0027】
(実施例4)
接着剤層4として、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が200%であり、かつ最大点応力が40MPa/mm2の接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧シートを作製した。
【0028】
(比較例1)
接着剤層4として、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が520%であり、かつ最大点応力が7MPa/mm2の接着剤を用いた。また、透明フィルム層5として、ポリプロピレン系防湿フィルムの替わりに、ポリエステル系防湿フィルム(三菱ケミカル株式会社製「テックバリア」)をシリカ蒸着で厚み12μmで用いた。接着剤層4と透明フィルム層5以外は、実施例1と同様にして比較例1の化粧シートを作製した。
【0029】
(評価)
実施例1~4、および比較例1の化粧シートに対して、以下の防湿性能評価および加工適性評価を行った。
【0030】
(防湿性能評価)
<化粧シートを伸長前の透湿度>
JIS Z0208のカップ法にて40℃90%条件下で化粧シートの透湿度を測定した。透湿度が3g/m2・day以下であれば合格「〇」、3g/m2・dayを超過していれば不合格「×」と評価した。
【0031】
<化粧シートを伸長後の透湿度>
化粧シートを25℃条件下で2mm/minのスピードで10秒間伸ばした後、JIS Z0208のカップ法にて40℃90%条件下で化粧シートの透湿度を測定した。透湿度が3g/m2・day以下であれば合格「〇」、3g/m2・dayを超過していれば不合格「×」と評価した。
【0032】
(加工適性評価)
<切削性>
木質基材に化粧シートを接着剤により貼り合せて化粧板を作製した。その後にパネルソーやランニングソーにより上記化粧板をカットした際のカット面の状態がフィルム、木質基材の欠け、バリ等がなく切削できた場合を合格「○」、そうでない場合を不合格「△」で評価した。
【0033】
<穴開け性>
木質基材に化粧シートを接着剤により貼り合せて化粧板を作製した。その後にNCルーター等により上記化粧板に穴開け加工した際の加工面の状態がフィルム、木質基材の欠け、バリ等がなく加工できた場合を合格「○」、そうでない場合を不合格「△」で評価した。
【0034】
<Vカット試験>
木質基材に化粧シートを接着剤により貼り合せて化粧板を作製した。その後に上記化粧板の裏面にV溝カットを施して、90度に曲げた時にシートにクラックによる白化が出た場合を不合格「△」、白化していない場合を合格「〇」として評価した。
性能評価結果(防湿性能評価および加工適性評価の結果)を表1に示す。
【0035】
【0036】
表1に示す結果から、本実施形態に基づく実施例1の化粧シートは、防湿性能評価結果が全て合格「○」であり、伸長時においても防湿性能を維持できることを検証することができた。さらに、実施例1による化粧シートは、加工適性評価結果が全て合格「○」であり、切削、穴開け加工、Vカットといった加工の際において欠けや白化といった不具合が生じることを防止可能であることを検証することができた。以下、表1に示された評価結果について説明する。
【0037】
表1に示すように、比較例1の化粧シートは、防湿性能評価が全て合格ではなかった。
【0038】
具体的には、比較例1の化粧シートには、基材フィルム層において絵柄印刷層が設けられた面と反対の面に設けられた透明フィルム層がポリプロピレン系材料を含むものではない。このため、化粧シートを伸ばした後において、防湿性能を維持することができず、「化粧シートを伸長後の透湿度」の評価結果が不合格「×」となった。
【0039】
これに対し、実施例1~4の化粧シートは、基材フィルム層において絵柄印刷層が設けられた面と反対の面に設けられた透明フィルム層としてポリプロピレン系防湿フィルム(本例では、二軸延伸ポリプロピレンフィルム)が設けられている。したがって、実施例1~4の化粧シートは、防湿性能評価において、「化粧シートを伸長前の透湿度」および「化粧シートを伸長後の透湿度」がいずれも合格「○」となった。
【0040】
また、表1に示すように、実施例1の化粧シートは、加工適性評価の結果が全て合格「○」となった。一方、実施例2~4の化粧シートは、加工適性評価の結果がそれほど優れてはいなかった。
【0041】
具体的には、実施例2~4の化粧シートにおいて接着剤層として用いられた接着剤は、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が400%以上800%以下の範囲であり、かつ最大点応力が5MPa/mm2以上20MPa/mm2以下の範囲であるという条件を満たしていない。このため、切削加工、穴開け加工の際に実施例2~4の化粧シートにおいて複層のフィルムに多少課題を要する点が見受けられた。
【0042】
これに対し、実施例1の化粧シートにおいて、接着剤層として用いられた接着剤は、樹脂特性が25℃条件下での伸び率が400%以上800%以下の範囲であり、かつ最大点応力が5MPa/mm2以上20MPa/mm2以下の範囲であるという条件を満たしている。したがって、実施例1の化粧シートでは、加工の際に複層のフィルムが剥がれたり、欠けたりするといった不具合が生じることなく、加工適性の評価結果が全て「○」となった。
【0043】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 基材フィルム層
2 絵柄印刷層
3 表面保護層
4 接着剤層
5 透明フィルム層
6 プライマー層
10 化粧シート
11a、12a、15a、 表面
11b、15b 裏面