(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】閉鎖型継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20220809BHJP
H01H 1/021 20060101ALI20220809BHJP
H01H 1/023 20060101ALI20220809BHJP
H01H 1/0233 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01H50/54 S
H01H1/021 101
H01H1/023 A
H01H1/0233
(21)【出願番号】P 2018133684
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼ 啓介
(72)【発明者】
【氏名】平川 真千子
(72)【発明者】
【氏名】入江 正雄
(72)【発明者】
【氏名】豊田 良
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-070143(JP,U)
【文献】国際公開第2005/071707(WO,A1)
【文献】特表2009-531540(JP,A)
【文献】特開平10-223112(JP,A)
【文献】特開平08-138511(JP,A)
【文献】特開平05-225879(JP,A)
【文献】特開2014-007096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/00 - 1/04
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点を有する可動端子と、固定接点を有する固定端子と、コイルとが取り付けられたベースと、
前記ベースに取り付けられたケースであって、前記可動端子、前記固定端子、および前記コイルを、前記ベースにより形成された空間に閉鎖する前記ケースと、を含み、
前記コイルに電流を供給して発生した磁力により前記可動端子を動かして、前記可動接点と前記固定接点とを間を接触または非接触にする閉鎖型継電器であって、
前記可動接点および前記固定接点の少なくとも1つが、
40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含
み、
前記可動端子と前記固定端子の間に交流電流が供給され、
外形容積は、1cc以上で、100cc以下であることを特徴とする閉鎖型継電器。
【請求項2】
可動接点を有する可動端子と、前記可動端子を挟んで対向配置された、固定接点を有する少なくとも一つの固定端子と、コイルとが取り付けられたベースと、
前記ベースに取り付けられたケースであって、前記可動端子、前記固定端子、および前記コイルを、前記ベースにより形成された空間に閉鎖する前記ケースと、を含み、
前記コイルに電流を供給して発生した磁力により前記可動端子を動かして、いずれかの前記固定端子の固定接点に、前記可動端子の可動接点を接触させる閉鎖型継電器であって、
前記可動接点および前記固定接点の少なくとも1つが、
40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含
み、
外形容積は、1cc以上で、100cc以下であることを特徴とする閉鎖型継電器。
【請求項3】
前記可動接点および前記固定接点の少なくとも1つが、
40重量%以上で99重量%以下の銀と、1重量%以上で60重量%以下のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の閉鎖型継電器。
【請求項4】
前記可動接点および前記固定接点の少なくとも1つが、
85重量%以上で97重量%以下の銀と、3重量%以上で15重量%以下のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の閉鎖型継電器。
【請求項5】
前記可動接点および前記固定接点の少なくとも1つが、
さらに、炭素、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、銅、タンタル、バナジウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、インジウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウムおよびジルコニウムからなるグループから選択される少なくとも1つの元素を添加物として含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の閉鎖型継電器。
【請求項6】
前記可動端子と前記固定端子の間に交流電流が供給される請求項
2に記載の閉鎖型継電器。
【請求項7】
上記交流電流は、交流電圧が50V以上で300V以下、かつ定格電流が5A以上で30A以下、であることを特徴とする請求項
1または6に記載の閉鎖型継電器。
【請求項8】
前記コイルは、1アンペアターン以上で、750000アンペアターン以下の起磁力を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の閉鎖型継電器。
【請求項9】
前記コイルは、1アンペアターン以上で、300000アンペアターン以下の起磁力を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の閉鎖型継電器。
【請求項10】
外形容積は、1cc以上で、20cc以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の閉鎖型継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、閉鎖型継電器に関し、特に、銀タングステンまたは銀タングステンカーバイドを接点材料に用いた閉鎖型継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路を機械的に開閉する継電器では、固定端子に固定接点が設けられ、可動端子には可動接点が設けられ、可動端子が動くことにより、固定接点と可動接点とが接触/非接触状態となり、電気回路の開閉を行う。固定接点および可動接点の材料としては、酸化物を含み、溶着が発生しにくい材料として、AgSnO2、AgSnO2In2O3等の酸化スズ系材料が用いられている。また、固定接点や可動接点が大気に曝された場合、接点の汚染や腐食による故障、特に溶着故障が発生するため、固定端子や可動端子は、容器で覆うことにより閉鎖されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器で閉鎖した継電器では、接点の汚染や腐食が防止できるにもかかわらず溶着故障が発生する場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、固定端子や可動端子が容器で覆われた閉鎖型構造を有し、かつ接点間の溶着故障を防止する閉鎖型継電器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例は、
可動接点を有する可動端子と、固定接点を有する固定端子と、コイルとが取り付けられたベースと、
前記ベースに取り付けられたケースであって、前記可動端子、前記固定端子、および前記コイルを、前記ベースにより形成された空間に閉鎖する前記ケースと、を含み、
前記コイルに電流を供給して発生した磁力により前記可動端子を動かして、前記可動接点と前記固定接点とを間を接触または非接触にする閉鎖型継電器であって、
前記可動接点および前記固定接点の少なくとも1つが、
40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含むことを特徴とする閉鎖型継電器である。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる閉鎖型継電器では、開閉動作(リレー/スイッチング)動作中の、可動端子と固定接点との間の溶着を防止し、閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示にかかる閉鎖型継電器の斜視図を示す。
【
図2A】本開示にかかる閉鎖型継電器の内部構造の概略図を示す。
【
図2B】本開示にかかる閉鎖型継電器の内部構造の概略図を示す。
【
図3】AgSnO系材料で接点を作製した場合の、接点の開閉回数と、閉鎖空間中の酸素濃度との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0010】
図1は、全体が100で表される、本開示にかかる閉鎖型継電器(リレー)の斜視図であり、閉鎖前の状態を示す。
図2A、
図2Bは、
図1の閉鎖型継電器の内部構造の概略図であり、リレーのスイッチング前後の状態を示す。
【0011】
図1に示すように、閉鎖型継電器100は、ベース10およびケース20を含む。ベース10およびケース20は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)や液晶ポリマー(LDP)等の樹脂材料から形成される。ベース10の上には、コイル30が載置される。また、ベース10の上には、可動端子40と固定端子50が設けられている。可動端子40には可動接点45が設けられ、固定端子50には固定接点55が設けられている。可動端子40と固定端子50は、共に導電性材料から形成されるが、可動端子40には導電性のバネ材料が用いられる。
図2A、
図2Bに示すように、ケース20はベース10の上に、接着剤で固定され、内部が閉鎖される。
【0012】
閉鎖型継電器100は、ベース10にケース20を接着して、内部に空気(大気)を含んだ状態となっている。閉鎖型継電器100では、継電器内への異物の侵入や、液体の侵入は完全に防げる(例えば、バブルリークA50以上の試験をクリア)が、空気の出入りは可能であり、空気の出入りも遮断する密封型継電器とは異なっている。ただし、後述するように、内部でアーク放電が起きた場合、内部の酸素が消費されることにより、酸素濃度は低下する。
【0013】
閉鎖型継電器100では、可動端子40の可動接点45、および固定端子50の固定接点55は、銀タングステン(AgW)または銀タングステンカーバイド(AgWC)から形成される。ここでは、銀タングステン(AgW)は、40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンとを含み、好ましくは、銀が40重量%以上で99重量%以下、タングステンが1重量%以上で60重量%以下、更に好ましくは、銀が40重量%以上で97重量%以下、タングステンが3重量%以上で60重量%以下、または銀が85重量%以上で99重量%以下、タングステンが1重量%以上で15重量%以下、特に好ましくは、銀が85重量%以上で97重量%以下、タングステンが3重量%以上で15重量%以下である。
【0014】
また、銀タングステンカーバイド(AgWC)は、40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンカーバイドとを含み、好ましくは、銀が40重量%以上で99重量%以下、タングステンカーバイドが1重量%以上で60重量%以下、更に好ましくは、銀が40重量%以上で97重量%以下、タングステンカーバイドが3重量%以上で60重量%以下、または銀が85重量%以上で99重量%以下、タングステンカーバイドが1重量%以上で15重量%以下、特に好ましくは、銀が85重量%以上で97重量%以下、タングステンカーバイドが3重量%以上で15重量%以下である。
【0015】
なお、銀タングステン(AgW)、タングステンカーバイド(AgWC)は、不可避的不純物を含む場合もある。さらに、微量添加物として、炭素(C)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ソリウム(Th)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)を含んでも良い。これらの元素を含むことで、より長寿命の閉鎖型継電器が得られる。
【0016】
また、可動接点45および固定接点55の双方を、タングステン(AgW)やタングステンカーバイド(AgWC)から形成することが好ましいが、いずれか一方を、これらの材料から形成して、他方を他の材料、例えばAgSnで形成しても良い。
【0017】
次に、
図2A、
図2Bを用いて閉鎖型継電器100のリレー/スイッチング動作について説明する。
図2Aはコイル30に電流が印加されていない状態であり、可動端子40の可動接点45と、固定端子50の固定接点55とは接触しており、両端子の間は導通状態になっている。
【0018】
図2Bはコイル30に電流が印加されている状態であり、鉄心60が磁化されて可動端子40を吸着する。これにより、可動端子40の可動接点45は、固定端子50の固定接点55から離れ、両端子の間は導通状態が解除される。
【0019】
閉鎖型継電器100では、コイル30に電流をオン/オフすることにより、リレー/スイッチング動作が行われる。コイル30は、1アンペアターン以上で、750000アンペアターン以下の起磁力を有し、好ましくは1アンペアターン以上で、300000アンペアターン以下の起磁力を有する。また、閉鎖型継電器100では、外形容積は1cc以上で、100cc以下であり、好適には1cc以上で、20cc以下である。ここで、外形容積とは、端子を除いた閉鎖型継電器100の容積であり、ケース20の外形の容積に略等しい。
【0020】
ここでは、コイル30に電流を供給した場合にオン状態になる例について説明したが、コイル30に電流を供給した場合にオフ状態になる構造であっても良い。また、2つの固定端子と、その間に挟まれた可動端子を有し、可動端子が2つの固定端子に交互に接続される構造であっても良い。この場合は、接触する可動接点45と固定接点55の少なくとも一方が上述の材料とすれば良い。
【0021】
次に、本実施の形態にかかる閉鎖型継電器100において溶着故障が抑制できる原理について説明する。
従来、継電器では、可動接点および固定接点の材料として、導電性が高くかつ溶着が防止できる材料として、例えばAgSnO系材料が用いられてきた。AgSnO系材料では、導電性の高いAgが主成分となり、その中に酸化物であるSnO2が添加されているため、高い導電性と溶着の防止の双方を可能としていた。つまり、可動接点と固定接点との間にアークが発生して、SnO2が分解しても、雰囲気中の酸素によりSnが再酸化されて酸化物SnO2に戻り、溶着を防止していた。
【0022】
ここで、塵埃や腐食性ガスが、接点表面に付着し、接点表面が汚染や腐食されると、リレー/スイッチの安定動作が妨げるため、開口部を減らした閉鎖型継電器が用いられる。閉鎖型継電器100では、ベース10とケース20で囲まれた内部が閉鎖空間となっているため、接点が接触する瞬間に発生するアーク放電によりAgが酸化されると、内部の酸素濃度が次第に低下する。
【0023】
図3は、AgSnO系材料で可動接点および固定接点を作製した場合の、接点の開閉回数(リレー/スイッチ回数)と、閉鎖空間中の酸素濃度との関係を示す。
図3からわかるように、開閉回数が増えるに従って、閉鎖空間中の酸素濃度は減少する。つまり、アーク放電により、AgSnO系材料中のAgが酸化され、
4Ag+O
2→2Ag
2O
の酸化反応により、閉鎖空間中の酸素が消費される。
【0024】
一方、AgSnO系材料中の酸化物SnO2は、アーク放電により分解されて、
SnO2→Sn+O2
となるが、閉鎖容器中では酸素濃度が低いため、Snは再酸化されず、AgSnO系材料中の酸化物SnO2の量が低下する。
【0025】
表1は、継電器の端子に使用される代表的な材料の融点である。
【0026】
【0027】
表1に示すように、SnO2の融点は1625℃であるが、これがSnになると融点が232℃に低下する。これに伴い、Snの軟化温度もSnO2に比べて大きく低下する。
【0028】
このため、接点にAgSnO系材料を用いた従来の閉鎖型継電器では、開閉回数が増え、接点中のSnO2の量が減少しSnが増加すると、接点が軟化し、溶着を起こしやすくなる。
【0029】
これに対して、本開示では、可動接点45、固定接点55の材料に、タングステン(AgW)やタングステンカーバイド(AgWC)が用いられる。これらの材料では、アークの発生によりAgが酸化されて、閉鎖空間中の酸素濃度が低下しても、WまたはWCはアークにより分解されず、当然に再酸化も不要である。
【0030】
このため、閉鎖型継電器100の開閉回数(リレー/スイッチング回数)が増えても、端子材料が軟化せず、端子間の溶着故障を防止できる。
【0031】
なお、閉鎖型継電器100の内部のような低酸素雰囲気下では、交流電圧50~300V、定格電流5A~30A領域で、特にこのような溶着故障が問題となる。即ち、低酸素雰囲気下では、熱的ピンチ効果によりアーク密度が増加し、アーク継続時間が短縮する。
【0032】
例えば、端子間が直流負荷電圧DC12~30Vの場合、低酸素雰囲気ではアーク密度が増加するものの、一方でアークの継続時間が短縮するため、接点端子が受ける総ダメージ量は比較的少ない。これに対して、端子間が交流負荷電圧50V~300Vの場合、アーク継続時間は交流特有のゼロクロス時間のみに依存する。このため、低酸素雰囲気下では、アーク密度が増加し、継続時間は変化しないため、結果的に接点端子が受けるダメージは大きくなる。
【0033】
次に、本開示かかる材料から形成された端子を有する閉鎖型継電器(実施例1、2)と、他の材料から形成された端子を有する閉鎖型継電器(比較例1、2)について、開閉動作(リレー/スイッチング動作)を行った結果を示す。
【0034】
表2は、実施例1、2、比較例1、2に用いた継電器の端子の組成である。条件に示すように、いずれの継電器も閉鎖型継電器とした。
【0035】
【0036】
表3は、評価に用いた条件である。可動端子と固定端子との間に印加される電圧/電流は、交流250V/16Aで、端子の開閉は、1.0秒間ON(接触)/9.0秒OFF(非接触)の繰り返しとした。試験雰囲気温度は、23℃(室温)である。
【0037】
【0038】
評価は、この評価条件で端子間が溶着故障するまでの開閉回数で行った。それぞれの比較例、実施例について、5サンプルずつ評価を行った。
図4に評価結果を示す。
【0039】
図4から明らかなように、比較例1(Ag-SnO
212wt%)では、20,000回以下の開閉で溶着故障が発生し、比較例2(Ag-Ni10wt%)では60,000回程度で溶着故障が発生した。これに対して、実施例1(Ag-W10wt%)、実施例2(Ag-W60wt%)では、100,000回またはそれ以上の開閉が可能となった。
【0040】
このように、端子材料としてAgW系材料(Ag-W10wt%Ag-W60wt%)を用いることにより、閉鎖型継電器の開閉動作(リレー/スイッチング動作)において、比較例のような端子材料の軟化が発生せず、溶着故障を防止して長寿命化が可能となることがわかった。
【0041】
以上、図面を参照して本開示にかかる実施の形態について説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。なお、以下の説明では、一例として、参照符号を添えて記載する。
【0042】
本開示の第1の態様の閉鎖型継電器100は、
可動接点45を有する可動端子40と、固定接点55を有する固定端子50と、コイル30とが取り付けられたベース10と、
前記ベース10に取り付けられたケース20であって、前記可動端子40、前記固定端子50、および前記コイル30を、前記ベース10により形成された空間に閉鎖する前記ケース20と、を含み、
前記コイル30に電流を供給して発生した磁力により前記可動端子40を動かして、前記可動接点45と前記固定接点55とを間を接触または非接触にする閉鎖型継電器100であって、
前記可動接点45および前記固定接点55の少なくとも1つが、
40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含む。
【0043】
本開示の第1の態様の閉鎖型継電器100によれば、開閉動作(リレー/スイッチング)動作中の、可動端子40と固定端子50との間の溶着を防止し、閉鎖型継電器100の長寿命化が可能となる。特に、閉鎖型の継電器で、酸素濃度が低下する環境においても、溶着を防止することができる。
【0044】
本発明の第2の態様の閉鎖型継電器100は、
可動接点45を有する可動端子40と、前記可動端子40を挟んで対向配置された、固定接点55を有する1対の固定端子50と、コイル30とが取り付けられたベース10と、
前記ベース10に取り付けられたケース20であって、前記可動端子40、前記固定端子50、および前記コイル30を、前記ベース10により形成された空間に閉鎖する前記ケース20と、を含み、
前記コイル30に電流を供給して発生した磁力により前記可動端子40を動かして、いずれかの前記固定端子50の固定接点55に、前記可動端子40の可動接点45を接触させる閉鎖型継電器100であって、
前記可動接点45および前記固定接点55の少なくとも1つが、
40重量%以上の銀と、1重量%以上のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含む。
【0045】
本開示の第2の態様の閉鎖型継電器100によれば、開閉動作(リレー/スイッチング)動作中の、2つの可動端子40と固定端子50との間の溶着を防止し、閉鎖型継電器100の長寿命化が可能となる。特に、閉鎖型の継電器で、酸素濃度が低下する環境においても、溶着を防止することができる。
【0046】
本開示の第3の態様の閉鎖型継電器100では、
前記可動接点45および前記固定接点55の少なくとも1つが、
40重量%以上で99重量%以下の銀と、1重量%以上で60重量%以下のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含む。
【0047】
本開示の第3の態様の閉鎖型継電器100によれば、開閉動作中の、可動端子40と固定端子50との間の溶着を防止し、閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0048】
本開示の第4の態様の閉鎖型継電器100では、
前記前記可動接点45および前記固定接点55の少なくとも1つが、
85重量%以上で97重量%以下の銀と、3重量%以上で15重量%以下のタングステンおよび/またはタングステンカーバイドと、を含む。
【0049】
本開示の第4の態様の閉鎖型継電器100によれば、開閉動作中の、可動端子40と固定端子50との間の溶着を防止し、閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0050】
本開示の第5の態様の閉鎖型継電器100では、
前記前記可動接点45および前記固定接点55の少なくとも1つが、さらに、炭素、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、銅、タンタル、バナジウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、インジウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウムおよびジルコニウムからなるグループから選択される少なくとも1つの元素を添加物として含む。
【0051】
本開示の第5の態様の閉鎖型継電器100によれば、より長寿命の閉鎖型継電器が得られる。
【0052】
本開示の第6の態様では、
前記可動端子40と前記固定端子50の間に交流電流が供給される。
【0053】
本開示の第6の態様の閉鎖型継電器100では、接点端子が受けるダメージが大きくなる交流電流に対しても、開閉動作中の、可動端子40と固定端子50との間の溶着を防止し、閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0054】
本開示の第7の態様では、
上記交流電流は、交流電圧が50V以上で300V以下、かつ定格電流が5A以上で30A以下、である。
【0055】
本開示の第7の態様の閉鎖型継電器100によれば、一般に低酸素雰囲気下では、アーク密度が増加し、継続時間は変化しないため、結果的に端子が受けるダメージは大きくなるが、端子間の溶着を防止し、閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0056】
本開示の第8の態様では、
前記コイルは、1アンペアターン以上で、750000アンペアターン以下の起磁力を有する。
【0057】
本開示の第8の態様の閉鎖型継電器100によれば、このようなコイルを用いた閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0058】
本開示の第9の態様では、
前記コイルは、1アンペアターン以上で、300000アンペアターン以下の起磁力を有する。
【0059】
本開示の第9の態様の閉鎖型継電器100によれば、このようなコイルを用いた閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0060】
本発明の第10の態様の閉鎖型継電器100では、
外形容積は、1cc以上で、100cc以下である。
【0061】
本開示の第10の態様の閉鎖型継電器100によれば、このようなコイルを用いた閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0062】
本発明の第11の態様の閉鎖型継電器100では、
外形容積は、1cc以上で、20cc以下である。
【0063】
本開示の第11の態様の閉鎖型継電器100によれば、このようなコイルを用いた閉鎖型継電器の長寿命化が可能となる。
【0064】
本開示の第12の態様の閉鎖型継電器100では、
図1で示される1対の固定端子50および1対の固定接点55の替わりに、1つの固定端子および1つ固定接点を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示の閉鎖型継電器は、例えば、車載用の継電器として使用される。
【符号の説明】
【0066】
10 ベース
20 ケース
30 コイル
40 可動端子
45 可動接点
50 固定端子
55 固定接点
60 鉄心
100 閉鎖型継電器