(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】旋回式油圧作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20220809BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220809BHJP
F15B 11/16 20060101ALI20220809BHJP
F15B 11/17 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/22 C
F15B11/16 B
F15B11/17
(21)【出願番号】P 2018134812
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】白神 則文
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065956(JP,A)
【文献】特開2017-089168(JP,A)
【文献】特開2005-083427(JP,A)
【文献】特開2014-031827(JP,A)
【文献】特開昭62-121878(JP,A)
【文献】特開2015-086959(JP,A)
【文献】特開昭62-253825(JP,A)
【文献】特開2012-077855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0179691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/28
F15B 11/16
F15B 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載される第1油圧ポンプ、および第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧アクチュエータと、
前記上部旋回体を旋回させる旋回モータであって、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する旋回モータと、
前記油圧アクチュエータの作動を指令するためのアクチュエータ操作が与えられるアクチュエータ操作器と、
前記第2油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在し、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油を前記旋回モータに給排する旋回制御弁と、
前記第2油圧ポンプと前記旋回制御弁との間に介在し、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油を、前記旋回モータと前記油圧アクチュエータとに分配する分配弁と、
前記分配弁を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記アクチュエータ操作器の操作量に応じて、前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ基本合流流量の作動油を分配供給するように前記分配弁の開度を変化させる通常制御を行う通常制御部と、
前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの作動油の分配供給量を
前記基本合流流量よりも少ない量にする、またはゼロにするように、前記分配弁の開度を変化させる制限制御を行う制限制御部と、を有しており、
前記油圧アクチュエータの操作と前記旋回モータの操作との複合操作時に、前記コントローラは、前記第2油圧ポンプの圧力、前記上部旋回体の旋回移動量、もしくは前記上部旋回体の旋回速度が、所定の閾値まで上昇していない場合は前記制限制御を行い、そうでない場合は前記通常制御を行う
、
旋回式油圧作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回式油圧作業機械において、
前記コントローラは、前記第2油圧ポンプの圧力、前記上部旋回体の旋回移動量、もしくは前記上部旋回体の旋回速度が、所定の閾値まで上昇しているか否かを判定する制限制御開始判定部を有し、
前記コントローラは、前記制限制御開始判定部にて、前記第2油圧ポンプの圧力、前記上部旋回体の旋回移動量、もしくは前記上部旋回体の旋回速度が、所定の閾値まで上昇していないと判定された場合は前記制限制御を行い、そうでない場合は前記通常制御を行う、
旋回式油圧作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の旋回式油圧作業機械において、
前記制限制御開始判定部は、前記旋回制御弁に入力される旋回パイロット圧が大きいほど、前記所定の閾値を大きな値に設定する、
旋回式油圧作業機械。
【請求項4】
請求項2または3に記載の旋回式油圧作業機械において、
前記コントローラは、前記旋回モータが起動後に作動安定状態に入ったか否かを判定する制限制御継続判定部を有し、
前記コントローラは、前記制限制御継続判定部にて、前記旋回モータの作動が安定した
と判定されない場合、前記制限制御を行い、前記旋回モータの作動が安定したと判定されたら前記通常制御を行う、
旋回式油圧作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の旋回式油圧作業機械において、
前記制限制御継続判定部は、前記旋回モータが起動後に作動安定状態に入ったか否かを、前記第2油圧ポンプの圧力の大きさで判定する、
旋回式油圧作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の旋回式油圧作業機械において、
前記制限制御継続判定部は、前記第2油圧ポンプの圧力が、前記第1油圧ポンプの圧力の大きさに基づいて設定された設定圧まで降下したら、前記旋回モータの作動が安定したと判定する、
旋回式油圧作業機械。
【請求項7】
下部走行体と、
前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載される第1油圧ポンプ、および第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧アクチュエータと、
前記上部旋回体を旋回させる旋回モータであって、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する旋回モータと、
前記油圧アクチュエータの作動を指令するためのアクチュエータ操作が与えられるアクチュエータ操作器と、
前記第2油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在し、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油を前記旋回モータに給排する旋回制御弁と、
前記第2油圧ポンプと前記旋回制御弁との間に介在し、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油を、前記旋回モータと前記油圧アクチュエータとに分配する分配弁と、
前記分配弁を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記アクチュエータ操作器の操作量に応じて、前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ基本合流流量の作動油を分配供給するように前記分配弁の開度を変化させる通常制御を行う通常制御部と、
前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの作動油の分配供給量を前記基本合流流量よりも少ない量にする、またはゼロにするように、前記分配弁の開度を変化させる制限制御を行う制限制御部と、を有しており、
前記油圧アクチュエータの操作と前記旋回モータの操作との複合操作時に、前記コントローラは、設定された時間、前記制限制御を行い、設定された時間が過ぎれば前記通常制御を行う、
旋回式油圧作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの旋回式油圧作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の技術は、旋回式油圧作業機械の制御に関するものであって、前提として、ブーム上げ操作では第1油圧ポンプおよび第2油圧ポンプからの作動油を合流させてブームシリンダに供給し、旋回操作では第2油圧ポンプからの作動油を旋回モータに供給する制御構成となっている。
【0003】
このような制御構成を有する旋回式油圧作業機械では、上部旋回体が水平ではなく傾斜した状態でその旋回駆動が行われる場合、当該上部旋回体の旋回方向によっては当該上部旋回体をこれに作用する重力に逆らって旋回駆動しなければならず、当該旋回駆動に要する作動油の圧力は水平状態での旋回駆動に要する圧力よりも高くなる。この場合に、第2油圧ポンプからの作動油の多くがブームシリンダに分配されると、旋回駆動力が不足し、最悪の場合には旋回の起動ができなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の旋回式油圧作業機械は、上部旋回体の傾斜にかかわらずその旋回駆動を確実に可能とするように、次のような制御構成を備えている。この旋回式油圧作業機械は、上部旋回体の傾斜方向および傾斜角を検出する傾斜センサを備える。そして、コントローラは、上記傾斜センサが検出する傾斜方向に基づき旋回方向が上部旋回体に作用する重力に逆らう登坂方向であるか否かを判定し、登坂方向であると判定した場合、上部旋回体の傾斜角が大きいほどブームシリンダに分配される作動油の流量を制限するようにアクチュエータ制御弁の開度を減少させるように構成されている。
【0005】
上記構成によると、上部旋回体の傾斜にかかわらずその旋回駆動を確実に可能とするように、旋回モータおよびブームシリンダへの作動油の適正な分配を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の旋回式油圧作業機械には、次のような問題がある。特許文献1に記載の旋回式油圧作業機械では、上部旋回体の傾斜方向および傾斜角を検出する傾斜センサが必要であるので、その分、コストアップとなってしまう。また、上記傾斜センサからの信号に基づいてアクチュエータ制御弁の開度を制御するソフト(制御ロジック)が必要となり制御が複雑化してしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上部旋回体の傾斜方向および傾斜角を検出することなく、すなわち、傾斜センサを用いることなく、傾斜地であっても旋回モータの起動を確保することが可能な制御構成を備えた旋回式油圧作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る旋回式油圧作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載される第1油圧ポンプ、および第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧アクチュエータと、前記上部旋回体を旋回させる旋回モータであって、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する旋回モータと、前記油圧アクチュエータの作動を指令するためのアクチュエータ操作が与えられるアクチュエータ操作器と、前記第2油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在し、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油を前記旋回モータに給排する旋回制御弁と、前記第2油圧ポンプと前記旋回制御弁との間に介在し、前記第2油圧ポンプにより吐出される作動油を、前記旋回モータと前記油圧アクチュエータとに分配する分配弁と、前記分配弁を制御するコントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記アクチュエータ操作器の操作量に応じて、前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ基本合流流量の作動油を分配供給するように前記分配弁の開度を変化させる通常制御を行う通常制御部と、前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの作動油の分配供給量を制限するように、前記分配弁の開度を変化させる制限制御を行う制限制御部と、を有している。前記油圧アクチュエータの操作と前記旋回モータの操作との複合操作時に、前記コントローラは、前記第2油圧ポンプの圧力、前記上部旋回体の旋回移動量、もしくは前記上部旋回体の旋回速度が、所定の閾値まで上昇していない場合は前記制限制御を行い、そうでない場合は前記通常制御を行う、または、設定された時間、前記制限制御を行い、設定された時間が過ぎれば前記通常制御を行うように構成されている。
【0010】
この構成によると、上部旋回体の傾斜方向および傾斜角を検出することなく、すなわち、傾斜センサを用いることなく、傾斜地であっても旋回モータの起動を確保することができる。また、旋回モータの起動を確保した後には旋回モータの旋回作動と油圧アクチュエータのそれぞれの作動性を確保することができる。
【0011】
本発明の好適な実施の形態においては、前記コントローラは、前記第2油圧ポンプの圧力、前記上部旋回体の旋回移動量、もしくは前記上部旋回体の旋回速度が、所定の閾値まで上昇しているか否かを判定する制限制御開始判定部を有し、前記コントローラは、前記制限制御開始判定部にて、前記第2油圧ポンプの圧力、前記上部旋回体の旋回移動量、もしくは前記上部旋回体の旋回速度が、所定の閾値まで上昇していないと判定された場合は前記制限制御を行い、そうでない場合は前記通常制御を行う。
【0012】
この構成によると、油圧アクチュエータの操作と旋回モータの操作との複合操作が開始されたとき、油圧アクチュエータの作動を常に制限することを抑制できる。例えば、平地では、上記複合操作がされたとき、制限制御に入ることも有り得るが、通常制御に入ることで、これまでどおりの速さで油圧アクチュエータが作動するようにすることができ、且つ旋回の操作性も確保される。
【0013】
本発明の好適な実施の形態においては、前記制限制御開始判定部は、前記旋回制御弁に入力される旋回パイロット圧が大きいほど、前記所定の閾値を大きな値に設定する。
【0014】
この構成によると、旋回モータの起動をより確実に確保することができる。
【0015】
本発明の好適な実施の形態においては、前記コントローラは、前記旋回モータが起動後に作動安定状態に入ったか否かを判定する制限制御継続判定部を有し、前記コントローラは、前記制限制御継続判定部にて、前記旋回モータの作動が安定したと判定されない場合、前記制限制御を行い、前記旋回モータの作動が安定したと判定されたら前記通常制御を行う。
【0016】
この構成によると、旋回モータの起動が確保された後は、通常制御により、旋回モータの旋回作動と油圧アクチュエータのそれぞれの作動性を確保することができる。
【0017】
本発明の好適な実施の形態においては、前記制限制御継続判定部は、前記旋回モータが起動後に作動安定状態に入ったか否かを、前記第2油圧ポンプの圧力の大きさで判定する。
【0018】
旋回モータが作動安定状態に入ったか否かは、第2油圧ポンプの圧力に現れる。上記構成によると、旋回モータが作動安定状態に入ったか否かをコントローラにて判定することができる。
【0019】
本発明の好適な実施の形態においては、前記制限制御継続判定部は、前記第2油圧ポンプの圧力が、前記第1油圧ポンプの圧力の大きさに基づいて設定された設定圧まで降下したら、前記旋回モータの作動が安定したと判定する。
【0020】
この構成によると、旋回モータの起動をより確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、上部旋回体の傾斜方向および傾斜角を検出することなく、すなわち、傾斜センサを用いることなく、傾斜地であっても旋回モータの起動を確保することが可能な制御構成を備えた旋回式油圧作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】旋回式油圧作業機械である油圧ショベルの側面図である。
【
図2】上記油圧ショベルに搭載される第1実施形態の油圧回路を示す図である。
【
図3】第1実施形態の制御動作を示すフローチャートである。
【
図5】ブーム上げ操作と旋回操作との複合操作時の第1油圧ポンプの圧力、および第2油圧ポンプの圧力の時系列変化の一例を示す図である。
【
図7】第2実施形態の制御動作を示すフローチャートである。
【
図9】第3実施形態の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下に示される油圧ショベルに限らず、上部旋回体を備えかつ油圧を主たる動力として作動する作業機械に広く適用され得るものである。
【0024】
(油圧ショベルの構成)
図1に示すように、油圧ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に搭載される上部旋回体2とを備える。上部旋回体2は、運転室であるキャブ3を備え、後側部分にエンジンルーム4が設けられる。上部旋回体2の前側部分には、ブーム5が取り付けられ、ブーム5の先端部にアーム6、アーム6の先端部にバケット7が取り付けられる。ブーム5、アーム6、およびバケット7は、それぞれ、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、およびバケットシリンダ10で駆動される。ブームシリンダ8、アームシリンダ9、およびバケットシリンダ10は、いずれも、油圧アクチュエータであり、例えばブームシリンダ8は、その伸長および収縮によりブーム5を上げ方向および下げ方向にそれぞれ駆動する。
【0025】
(油圧ショベルの制御構成(第1実施形態))
図2は、油圧ショベル100に搭載される油圧回路のうち上部旋回体2の旋回駆動およびブーム5の起伏駆動に関与する部分を示す。
図2に示すように、油圧ショベル100は、ブームシリンダ8などの他に、エンジン12、エンジン12の出力軸に連結される2連の第1油圧ポンプ13・第2油圧ポンプ14、パイロットポンプ15、旋回モータ11、ブームリモコン弁21(アクチュエータ操作器)、旋回リモコン弁22などを備える。なお、第1油圧ポンプ13、および第2油圧ポンプ14は、上部旋回体2に搭載される。第1油圧ポンプ13、および第2油圧ポンプ14は、それぞれ、レギュレータを備える。旋回モータ11は、上部旋回体2を旋回駆動するための油圧モータである。
【0026】
また、
図2に示す油圧回路は、ブーム制御弁16(アクチュエータ制御弁)、旋回制御弁17、分配弁18、およびパイロット圧操作弁19を備える。これら弁のうち、ブーム制御弁16、旋回制御弁17、および分配弁18は、油圧パイロット切換弁であり、パイロットポンプ15からのパイロット圧の供給を受けることにより、そのパイロット圧の大きさに応じたストローク分、作動する。一方、パイロット圧操作弁19は、電磁比例弁であり、コントローラ20により開度が制御されることで、パイロットポンプ15から分配弁18のパイロットポート18Aへ供給されるパイロット圧を操作する。
【0027】
ブーム制御弁16は、第1油圧ポンプ13により吐出される作動油をブームシリンダ8に給排するセンターバイパス型の方向切換弁であって、第1油圧ポンプ13とブームシリンダ8との間に介在する。このブーム制御弁16は、3位置の油圧パイロット切換弁であり、一対のパイロットポート16A、16Bを有する。ブーム制御弁16は、パイロットポート16Aに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストローク分、中立位置16nからブーム上げ位置16aにシフトし、第1油圧ポンプ13からの作動油が上記ストロークに対応した流量でブームシリンダ8のヘッド側室8Hに供給される。これにより、ブームシリンダ8は、上記ストロークに対応する速度でブーム上げ方向に作動する。逆に、ブーム制御弁16は、パイロットポート16Bに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストローク分、中立位置16nからブーム下げ位置16bにシフトし、第1油圧ポンプ13からの作動油がブームシリンダ8のロッド側室8Rに供給される。これにより、ブームシリンダ8は、ブーム下げ方向に作動する。
【0028】
旋回制御弁17は、第2油圧ポンプ14により吐出される作動油を旋回モータ11に給排するセンターバイパス型の方向切換弁であって、第2油圧ポンプ14と旋回モータ11との間に介在する。この旋回制御弁17は、3位置の油圧パイロット切換弁であり、一対のパイロットポート17A、17Bを有する。旋回制御弁17は、パイロットポート17Aに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストローク分、中立位置17nから左旋回位置17aにシフトし、第2油圧ポンプ14からの作動油が上記ストロークに対応した流量で旋回モータ11の第1ポート11aに供給される。これにより、旋回モータ11は、上記ストロークに対応する速度で左旋回方向に作動する。逆に、旋回制御弁17は、パイロットポート17Bに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストローク分、中立位置17nから右旋回位置17bにシフトし、第2油圧ポンプ14からの作動油が上記ストロークに対応した流量で旋回モータ11の第2ポート11bに供給される。これにより、旋回モータ11は、上記ストロークに対応する速度で右旋回方向に作動する。
【0029】
分配弁18は、第2油圧ポンプ14により吐出される作動油を旋回モータ11とブームシリンダ8とに分配する弁であって、第2油圧ポンプ14と旋回制御弁17との間に介在する。この分配弁18は、2位置の油圧パイロット切換弁であり、単一のパイロットポート18Aを有する。分配弁18は、パイロットポート18Aに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストローク分、中立位置18nからブーム合流位置18aにシフトし、第2油圧ポンプ14からの作動油が上記ストロークに対応した流量でブームシリンダ8のヘッド側室8Hに供給される。これにより、ブームシリンダ8の上げ方向の駆動は、上記ストロークに対応する度合いで増速する。
【0030】
ブームリモコン弁21は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ8の作動を指令するためのアクチュエータ操作がオペレータによって与えられるアクチュエータ操作器であって、ブーム操作レバー21aと、ブーム操作レバー21aの動きとリンクして開弁作動する弁本体21bとを有する。ブーム制御弁16は、ブーム操作レバー21aに与えられた操作の方向に対応した方向に当該操作の量に対応したストローク分、作動する。
【0031】
旋回リモコン弁22は、旋回モータ11の作動を指令するための操作がオペレータによって与えられる旋回操作器であって、旋回操作レバー22aと、旋回操作レバー22aの動きとリンクして開弁作動する弁本体22bとを有する。旋回制御弁17は、旋回操作レバー22aに与えられた操作の方向に対応した方向に当該操作の量に対応したストローク分、作動する。
【0032】
図2に示す油圧回路には、複数のセンサ23、24、25、26A、および26Bが配置されている。これら複数のセンサ23、24、25、26A、および26Bは、第1油圧ポンプ圧センサ23と、第2油圧ポンプ圧センサ24と、ブーム上げパイロット圧センサ25と、一対の旋回パイロット圧センサ26A、26Bとである。
【0033】
第1油圧ポンプ圧センサ23は、第1油圧ポンプ13の吐出圧を検出する圧力センサであり、第2油圧ポンプ圧センサ24は、第2油圧ポンプ14の吐出圧を検出する圧力センサである。ブーム上げパイロット圧センサ25は、ブーム制御弁16のパイロットポート16Aに供給されるパイロット圧を検出するセンサである。また、旋回パイロット圧センサ26A、26Bは、旋回制御弁17のパイロットポート17A、17Bに供給されるパイロット圧(旋回パイロット圧)を検出するセンサである。
【0034】
センサ23、24、25、26A、および26Bの検出信号は電気信号としてコントローラ20に入力される。
【0035】
上記分配弁18は、コントローラ20により制御される。コントローラ20は、パイロット圧操作弁19を介して分配弁18を制御する。パイロット圧操作弁19は、コントローラ20からソレノイド19Aに供給される励磁電流に比例した開度で開弁し、これにより、分配弁18のパイロットポート18Aに供給されるパイロット圧が変化する。
【0036】
コントローラ20は、通常制御部53、制限制御部54、制限制御開始判定部51、および制限制御継続判定部52を有する。
【0037】
<通常制御>
通常制御部53は、アクチュエータ操作器であるブームリモコン弁21のブーム操作レバー21aのブーム上げ方向の操作量に応じて、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ8へ基本合流流量の作動油を分配供給するように、パイロット圧操作弁19のソレノイド19Aへの通電を行わない通常制御を行う制御部を構成する。なお、ブーム操作レバー21aのブーム上げ方向の操作量は、ブーム上げパイロット圧センサ25により検出される。
【0038】
<制限制御>
制限制御部54は、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ8への作動油の分配供給量を制限するように、パイロット圧操作弁19のソレノイド19Aへ通電を行い分配弁18の開度を変化させる制限制御を行う制御部を構成する。なお、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ8への作動油の分配供給量を制限するとは、上記通常制御の場合の対応する基本合流流量よりも少ない量の作動油を、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ8へ分配供給する、または、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ8への作動油の供給をゼロにする、ということである。
【0039】
制限制御開始判定部51は、第2油圧ポンプ14の圧力(吐出圧)が、所定の閾値まで上昇しているか否かを判定するように制御構成されている。
【0040】
また、詳しくは後述するが、制限制御継続判定部52は、旋回モータ11が起動後に作動安定状態に入ったか否かを判定するように制御構成されている。
【0041】
(制御フロー)
コントローラ20が行う具体的な制御について、
図3に示すフローチャートなどを参照しつつ説明する。
【0042】
コントローラ20は、各フラグの初期値設定として、制限開始フラグ、および制限継続フラグを「OFF」にする(ステップS1)。コントローラ20は、各センサ23、24、25、26A、26Bからの信号などを取り込む(ステップS2)。コントローラ20は、ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号の有無を判断する(ステップS3)。ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号の有無の判断は、コントローラ20に取り込まれたブーム上げパイロット圧センサ25、および旋回パイロット圧センサ26A(または26B)からの信号を用いてなされる。ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号のうちのいずれか一方でも信号が無ければ(ステップS3でNO)、コントローラ20の通常制御部53は、前記通常制御を行う(ステップS4)。
【0043】
一方、ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号の両方の信号が有れば(ステップS3でYES)、コントローラ20は、制限開始フラグが「OFF」であるか否かを判断する(ステップS5)。制限開始フラグが「OFF」である場合(ステップS5でYES)、コントローラ20の制限制御開始判定部51は、旋回パイロット圧センサ26A(または26B)からの信号の大きさ(旋回パイロット圧の大きさ)に応じた制限制御開始の閾値Pxを設定する(ステップS6)。具体的には、制限制御開始判定部51は、旋回制御弁17に入力される旋回パイロット圧が大きいほど、上記閾値Pxを大きな値に設定する。なお、制限制御開始の閾値Pxは、旋回パイロット圧の大きさに関係なく予め決まられた(予めコントローラ20に入力された)任意の値であってもよい。
【0044】
そして、制限制御開始判定部51は、第2油圧ポンプ圧センサ24にて検出された第2油圧ポンプ14の圧力P2が上記閾値Pxまで上昇しているか否かを判定する(ステップS7)。P2<Pxの場合、すなわち第2油圧ポンプ14の圧力P2が上記閾値Pxまで上昇していない場合(ステップS7でYES)、制限制御開始判定部51は、制限開始フラグを「ON」にする(ステップS8)。なお、P2<Pxを満たさない場合(ステップS7でNO)、すなわち、第2油圧ポンプ14の圧力P2が十分に高い場合は、コントローラ20の通常制御部53は、前記通常制御を行う(ステップS4)。
【0045】
コントローラ20は、ステップ5でNOの場合(=制限開始フラグが「ON」の場合)、およびステップ8を実施した後、制限継続フラグが「OFF」であるか否かを判断する(ステップS9)。制限継続フラグが「OFF」である場合(ステップS9でYES)、コントローラ20は、制限継続フラグを「ON」にし(ステップS10)、コントローラ20の制限制御部54は、前記制限制御を行う(ステップS11)。
【0046】
一方、制限継続フラグが「ON」の場合(ステップS9でNO)、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、旋回モータ11が起動後に作動安定状態に入ったか否か、すなわち、制限制御の継続条件を満たしているか否かの判断をする(ステップS12)。制限制御の継続条件を満たしているか否かの判断方法(判定方法)を、一覧表にして
図4に示している。
図4は、
図3に示すステップS12の様々な判定方法を示す一覧表である。
図4に示すように、制限制御の継続条件を満たしているか否かの判定方法は、複数ある。以下、
図4に記載の判定方法を説明する。
【0047】
図4に示すNo.1~3の判定方法は、旋回モータ11が起動後に作動安定状態に入ったか否かを、第2油圧ポンプ14の圧力の大きさで判定する方法である。
【0048】
No.1の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、第2油圧ポンプ14の圧力P2が、第1油圧ポンプ13の圧力P1の大きさに基づいて設定された設定圧P2sまで降下したら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定する。
【0049】
具体的には、P2≦P2sである場合、制限制御継続判定部52は、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し(ステップS12でNO)、コントローラ20は、制限開始フラグ、および制限継続フラグを「OFF」にする(ステップS13、14)。そしてコントローラ20の通常制御部53は、前記通常制御を行う(ステップS4)。P2>P2sの場合は、制限制御継続判定部52は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定し(ステップS12でYES)、コントローラ20の制限制御部54は、前記制限制御を行う(ステップS11)。
【0050】
ここで、第1油圧ポンプ13の圧力P1の大きさに基づいて設定された設定圧P2s(第2油圧ポンプ14の設定圧)というのは、
図5に示すように、例えば、第1油圧ポンプ13の圧力P1+10MPaと設定される。一方で、第1油圧ポンプ13の圧力P1は、
図5に示すように上昇することがあるので、圧力P1が上昇すると、上記設定圧P2sも上昇する。なお、第1油圧ポンプ13の圧力P1が上昇するときというのは、バケット7に多くの土砂が入っているときなどである。なお、制限制御を継続するか否かの判断に、第1油圧ポンプ13の圧力P1の大きさに基づいて設定された設定圧P2s(第2油圧ポンプ14の設定圧)を用いることで、旋回モータ11の起動をより確実に確保することができる。
【0051】
No.2の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、第2油圧ポンプ14の圧力P2が、任意に設定された固定の設定圧P2sまで降下したら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定する。
【0052】
例えば、P2≦P2s(例えば、20MPaといった固定の設定圧)である場合、制限制御継続判定部52は、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定する。P2>P2sの場合は、制限制御継続判定部52は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。
【0053】
No.3の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、第2油圧ポンプ14の圧力P2が、降下し始めたら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、第2油圧ポンプ14の圧力P2が、上昇している、または一定で推移している場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。なお、圧力P2の上昇、一定、降下の一連の変化については、
図5を参照されたい。
【0054】
図4に示すNo.4~9の判定方法についても順に説明する。
【0055】
No.4の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、第2油圧ポンプ14の圧力P2が一定になってから所定時間経過したら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、第2油圧ポンプ14の圧力P2が、一定になっていない(=圧力P2が上昇中)、または一定になってから所定時間経過していない場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。
【0056】
No.5の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、複合操作(=ブーム上げ操作+旋回操作)の開始から所定時間経過したら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、そうでない場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。
【0057】
No.6の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、上部旋回体2の旋回速度が、旋回リモコン弁22の旋回操作レバー22aに与えられた操作量に応じた速度に達したら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、そうでない場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。この判定方法の場合、油圧ショベル100は、上部旋回体2の旋回速度を検出する旋回速度センサを有し、旋回速度センサは、例えば下部走行体1に取り付けられる。また、旋回速度センサの検出信号は電気信号としてコントローラ20に入力される。旋回速度センサとしては、例えばジャイロセンサが用いられる。
【0058】
No.7の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、上部旋回体2の旋回の移動量、すなわち旋回移動量が、規定値以上となったら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、そうでない場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。この判定方法の場合、油圧ショベル100は、上部旋回体2の旋回移動量を検出する旋回移動量センサを有し、旋回移動量センサは、例えば下部走行体1に取り付けられる。また、旋回移動量センサの検出信号は電気信号としてコントローラ20に入力される。旋回移動量センサとしては、例えばジャイロセンサが用いられる。
【0059】
No.8の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、第2油圧ポンプ14の圧力P2が、ステップS6で設定した制限制御開始の閾値Pxまで降下していれば、すなわち、P2≦Pxであれば、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、そうでない場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。
【0060】
No.9の判定方法では、コントローラ20の制限制御継続判定部52は、油圧ポンプの流量が増加に転じたら、旋回モータ11の作動が安定した、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていないと判定し、そうでない場合は、旋回モータ11の作動が安定していない、すなわち、制限制御の継続条件を満たしていると判定する。この場合、第1油圧ポンプ13、第2油圧ポンプ14のトルクが当配の場合は、第1油圧ポンプ13の流量、第2油圧ポンプ14の流量、または、第1油圧ポンプ13の流量と第2油圧ポンプ14の流量とを合計した流量が判定に用いられる。第1油圧ポンプ13、第2油圧ポンプ14のトルクが不当配の場合は、第2油圧ポンプ14の流量が判定に用いられる。また、この判定方法の場合、油圧ポンプ13、14の流量を検出する流量計が設置される。
【0061】
なお、
図4に示すNo.1~4、8の判定方法において、第2油圧ポンプ14の圧力P2の代わりに、旋回モータ11に作用する圧力を用いてもよい。この場合、旋回モータ11に作用する圧力を検出する圧力センサが必要となる。
【0062】
(第2実施形態)
図6は、油圧ショベル100に搭載される第2実施形態の油圧回路を示す図である。
図7は、第2実施形態の制御動作を示すフローチャートである。以下、第2実施形態に関し、第1実施形態との相違点について主に説明する。
【0063】
第2実施形態の油圧回路には、
図6に示すように、旋回速度センサ31が配置される。旋回速度センサ31は、上部旋回体2の旋回速度を検出するセンサであり、例えば下部走行体1に取り付けられる。旋回速度センサ31の検出信号は電気信号としてコントローラ20に入力される。旋回速度センサとしては、例えばジャイロセンサが用いられる。
【0064】
コントローラ20が行う具体的な制御については、
図7に示している。第1実施形態と第2実施形態との違いは、ステップS6、S7である。第1実施形態では、旋回パイロット圧に応じた制限制御開始の閾値として、第2油圧ポンプの圧力に対して設定された圧力(Px)が用いられる。これに対して、第2実施形態では、旋回パイロット圧に応じた制限制御開始の閾値として、上部旋回体2の旋回速度に対して設定された旋回速度であるVxが用いられる。第1実施形態の場合と同様、制限制御開始判定部51は、旋回制御弁17に入力される旋回パイロット圧が大きいほど、上記閾値Vxを大きな値に設定する。なお、制限制御開始の閾値Vxは、旋回パイロット圧の大きさに関係なく予め決まられた(予めコントローラ20に入力された)任意の値であってもよい。
【0065】
制限制御開始判定部51は、旋回速度センサ31にて検出され上部旋回体2の旋回速度Vが上記閾値Vxまで上昇しているか否かを判定する(ステップS7)。V<Vxの場合、すなわち上部旋回体2の旋回速度Vが上記閾値Vxまで上昇していない場合(ステップS7でYES)、制限制御開始判定部51は、制限開始フラグを「ON」にする(ステップ8)。なお、V<Vxを満たさない場合(ステップS7でNO)、すなわち、上部旋回体2の旋回速度Vが十分に速い場合は、コントローラ20の通常制御部53は、前記通常制御を行う(ステップS4)。
【0066】
なお、制限制御開始の閾値として、上部旋回体2の旋回速度に代えて、上部旋回体2の旋回移動量が用いられてもよい。この場合、上部旋回体2の旋回移動量を検出する旋回移動量センサが必要となる。なお、ジャイロセンサは、旋回速度センサとして用いることもできるし、旋回移動量センサとして用いることもできる。
【0067】
上部旋回体2の旋回速度、および上部旋回体2の旋回移動量は、第2油圧ポンプの圧力よりも、旋回モータ11の動きをより直接的に反映するパラメータである。そのため、制限制御開始の閾値として、上部旋回体2の旋回速度に対して設定された旋回速度や、上部旋回体2の旋回移動量に対して設定された旋回移動量の値を用いることで、旋回モータの起動をより確実に確保することができる、きめ細かな制御が可能となる。
【0068】
(第3実施形態)
図8は、油圧ショベル100に搭載される第3実施形態の油圧回路を示す図である。
図9は、第3実施形態の制御動作を示すフローチャートである。以下、第3実施形態に関し、第1実施形態との相違点について主に説明する。
【0069】
第3実施形態の油圧回路には、第1油圧ポンプ圧センサ23、第2油圧ポンプ圧センサ24(
図2参照)が配置されない。すなわち、第3実施形態では、第1油圧ポンプ圧センサ23、第2油圧ポンプ圧センサ24は不要である。また、第3実施形態のコントローラ20は、制限制御開始判定部51、および制限制御継続判定部52を有さない。
【0070】
コントローラ20が行う具体的な制御について、
図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0071】
コントローラ20は、各センサ25、26A、26Bからの信号などを取り込む(ステップS1)。コントローラ20は、ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号の有無を判断する(ステップS2)。ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号の有無の判断は、コントローラ20に取り込まれたブーム上げパイロット圧センサ25、および旋回パイロット圧センサ26A(または26B)からの信号を用いてなされる。ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号のうちのいずれか一方でも信号が無ければ(ステップS2でNO)、コントローラ20の通常制御部53は、前記通常制御を行う(ステップS3)。
【0072】
一方、ブーム上げ操作信号、および旋回操作信号の両方の信号が有れば(ステップS2でYES)、コントローラ20は、制限制御を行う指示電流値Iと、制限制御を行う時間Tを設定する(ステップS4)。上記指示電流値Iは、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ8への作動油の分配供給量を制限する、通常制御の場合よりも小さい電流値であって、コントローラ20からソレノイド19Aに供給される励磁電流の指示電流値のことである。上記指示電流値Iは、傾斜地であっても旋回モータ11の起動を確保することができる電流値に設定される。また、上記指示電流値Iは、旋回制御弁17に入力される旋回パイロット圧が大きいほど、小さな値に設定されることが好ましい。旋回モータ11への作動油の供給をより優先させるためである。また、上記指示電流値Iは、ブーム上げパイロット圧と旋回パイロット圧との関係において、第2油圧ポンプ14の圧力が30MPa以上になるように設定されることが好ましい。
【0073】
コントローラ20の制限制御部54は、ステップS4で設定された時間Tの間、ステップS4で設定された指示電流値Iでパイロット圧操作弁19を駆動して前記制限制御を行う(ステップS5、S6)。ステップS4で設定された時間Tが過ぎれば、コントローラ20の通常制御部53が、前記通常制御を行う(ステップS3)。この第3実施形態によると、必要なセンサが少なくてすむというメリットがある。
【0074】
以上、本発明の実施形態ついて説明したが、その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことができる。
【0075】
第1油圧ポンプ13により吐出される作動油の供給を受けて作動するとともに、第2油圧ポンプ14により吐出される作動油が分配供給される油圧アクチュエータは、ブームシリンダ8に限定されない。上記油圧アクチュエータは、例えば、アームシリンダ9、またはバケットシリンダ10であってもよい。さらには、共通の油圧ポンプに旋回モータ11とそれ以外の油圧アクチュエータとが接続されていて、当該油圧アクチュエータに供給される作動油の流量が、当該旋回モータ11に供給される作動油の流量に影響を与えるものについて広く適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:下部走行体
2:上部旋回体
5:ブーム
8:ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
11:旋回モータ
13:第1油圧ポンプ
14:第2油圧ポンプ
17:旋回制御弁
18:分配弁
20:コントローラ
21:ブームリモコン弁(アクチュエータ操作器)
51:制限制御開始判定部
52:制限制御継続判定部
53:通常制御部
54:制限制御部
100:油圧ショベル(旋回式油圧作業機械)