(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】作業工程管理システム、作業工程管理方法、および作業工程管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220809BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220809BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2018135205
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】松山 巨樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧村 俊則
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277546(JP,A)
【文献】特開2018-109880(JP,A)
【文献】特開平8-6992(JP,A)
【文献】特開昭63-267149(JP,A)
【文献】特開2011-34234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が作業を行う領域を撮影する撮影部と、
前記撮影部から動画データを取得して、前記動画データの中の前記作業者の動作から前記作業者が行っている第1の工程における作業を認識する作業認識部と、
認識した前記作業者の作業から前記第1の工程における作業の進捗度を判定する進捗度判定部と、
前記進捗度判定部が判定した進捗度が所定の進捗度に達したときに、前記第1の工程とは異なる第2の工程における作業を行う作業者に情報を伝える情報端末へ、前記進捗度が前記所定の進捗度に達したこと通知する通知処理部と、
を有
し、
前記作業認識部は、前記動画データの中から前記作業者の両手首の関節の座標値を取得し、取得した右手首の関節の座標値の変化と左手首の関節の座標値の変化の違いから、特定の作業内容を認識する、作業工程管理システム。
【請求項2】
前記作業認識部は、
作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、一方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化せず、かつ、他方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化している場合、梱包する際に、所定の場所からテープを取る作業、または所定の場所にテープを戻す作業と認識する、請求項1に記載の作業工程管理システム。
【請求項3】
前記作業認識部は、
作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、両方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が一定時間変化しない場合、または、一方の手首の関節に対して他方の手首の関節が直線的な動きをしている場合、梱包する際に、テープを貼る作業と認識する、請求項
1に記載の作業工程管理システム。
【請求項4】
前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間を記憶する記憶部を有し、
前記進捗度判定部は、前記第1の工程における作業の開始時刻から前記作業認識部で前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間と、前記標準作業時間とを比較して、前記作業認識部が認識した作業が前記標準作業時間より早く進んでいるか遅れているかを示す前記第1の工程の進行状況を判定し、
前記通知処理部は、判定された前記第1の工程の進行状況を前記情報端末へ通知する、請求項1~3のいずれか1つに記載の作業工程管理システム。
【請求項5】
前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間を記憶すると共に、複数の作業者について作業者ごとの習熟度を記憶する記憶部を有し、
前記作業認識部は、前記動画データから前記第1の工程の作業を行う作業者を識別し、
前記進捗度判定部は、前記識別した作業者の前記習熟度、前記第1の工程における作業の開始時刻から前記作業認識部で前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間、および前記標準作業時間から、前記第1の工程の作業終了時刻を予測し、
前記通知処理部は、予測された前記第1の工程の作業終了時刻を前記情報端末に通知する、請求項1~4のいずれか1つに記載の作業工程管理システム。
【請求項6】
前記情報端末は、前記第2の工程の作業場に備え付けられている信号灯もしくはディスプレイ、または前記第2の工程の前記作業者が携帯している携帯情報端末である、請求項1~5のいずれか1つに記載の作業工程管理システム。
【請求項7】
作業者が作業を行う領域を撮影した動画データを取得する段階(a)と、
前記動画データの中の前記作業者の動作から前記作業者が行っている第1の工程における作業を認識する段階(b)と、
認識した前記作業者の作業から前記第1の工程における作業の進捗度を判定する段階(c)と、
判定した進捗度が所定の進捗度に達したときに、前記第1の工程とは異なる第2の工程における作業を行う作業者に情報を伝える情報端末へ、前記進捗度が前記所定の進捗度に達したこと通知する段階(d)と、
を有
し、
前記段階(b)は、前記動画データの中から前記作業者の両手首の関節の座標値を取得し、取得した右手首の関節の座標値の変化と左手首の関節の座標値の変化の違いから、特定の作業内容を認識する、作業工程管理方法。
【請求項8】
前記段階(b)は、
作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、一方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化せず、かつ、他方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化している場合、梱包する際に、所定の場所からテープを取る作業、または所定の場所にテープを戻す作業と認識する、請求項7に記載の作業工程管理方法。
【請求項9】
前記段階(b)は、
作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、両方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が一定時間変化しない場合、または、一方の手首の関節に対して他方の手首の関節が直線的な動きをしている場合、梱包する際に、テープを貼る作業と認識する、請求項
7に記載の作業工程管理方法。
【請求項10】
前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間をあらかじめ記憶しておき、
前記第1の工程における作業の開始時刻から前記段階(b)において前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間と、前記標準作業時間とを比較して、前記段階(b)において認識した作業が前記標準作業時間より早く進んでいるか遅れているかを示す前記第1の工程の進行状況を判定する段階(e)を有し、
前記段階(d)においては、判定された前記第1の工程の作業の進行状況を前記情報端末へ通知する、請求項7~9のいずれか1つに記載の作業工程管理方法。
【請求項11】
前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間、および、複数の作業者について作業者ごとの習熟度をあらかじめ記憶しておき、
前記動画データから前記第1の工程で作業を行っている作業者を識別する段階(f)と、
前記識別した作業者の前記習熟度、前記第1の工程における作業の開始時刻から前記段階(b)において前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間、および前記標準作業時間から、前記第1の工程の作業終了時刻を予測する段階(g)を有し、
前記段階(d)においては、予測された前記第1の工程の作業終了時刻を前記情報端末へ通知する、請求項7~10のいずれか1つに記載の作業工程管理方法。
【請求項12】
請求項
7~11のいずれか1つに記載の作業工程管理方法をコンピューターに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業工程管理システム、作業工程管理方法、および作業工程管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業の作業現場では、作業効率向上のために、作業の進捗を管理するための技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、サーバーに、複数の作業工程ごとに作業内容と、その実行予定時間が割り当てられた進行計画表を記憶しておき、各工程から作業内容の進行状況を受信する。そして、サーバーは、受信した進行状況が進行計画表の計画に対して遅れているか否かを判定し、進行状況が計画より遅れている作業内容の表示形態と、遅れていない作業内容の表示形態とを区別して進行状況表として表示する。これにより、作業現場における作業の進捗状況をリアルタイムに近い時間で管理できることとなっている。さらに、この特許文献1では、作業が予定より早く進んでいる作業者を、予定より遅い作業者のいる工程へ向かわせて作業を補助させることで、複数の各工程の作業時間の遅延を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術は、進行状況が進行計画表の計画に対して早いか遅れているかを判定することで、作業の進行状況をリアルタイムに近い時間で管理することとしている。
【0006】
しかし、このような従来技術では、各工程における作業の進捗度がわからない。このため、ある工程へ応援に来た作業者が、段取り開始のタイミングがわからず作業開始までの時間が無駄になってしまったり、また、ある工程において次の作業のための段取りを準備していたにも関わらず、前工程の進捗が悪くて作業できずに無駄になってしまったりする。さらには、作業者が他の工程へ応援に行ったことで、本来その作業者が作業していた工程に遅延が発生してしまうこともある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ある工程の作業の進捗度をリアルタイムに把握して、他の工程に通知することのできる作業工程管理システム、作業工程管理方法、および作業工程管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)作業者が作業を行う領域を撮影する撮影部と、
前記撮影部から動画データを取得して、前記動画データの中の前記作業者の動作から前記作業者が行っている第1の工程における作業を認識する作業認識部と、
認識した前記作業者の作業から前記第1の工程における作業の進捗度を判定する進捗度判定部と、
前記進捗度判定部が判定した進捗度が所定の進捗度に達したときに、前記第1の工程とは異なる第2の工程における作業を行う作業者に情報を伝える情報端末へ、前記進捗度が前記所定の進捗度に達したこと通知する通知処理部と、
を有し、
前記作業認識部は、前記動画データの中から前記作業者の両手首の関節の座標値を取得し、取得した右手首の関節の座標値の変化と左手首の関節の座標値の変化の違いから、特定の作業内容を認識する、作業工程管理システム。
【0010】
(2)前記作業認識部は、作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、一方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化せず、かつ、他方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化している場合、梱包する際に、所定の場所からテープを取る作業、または所定の場所にテープを戻す作業と認識する、上記(1)に記載の作業工程管理システム。
【0011】
(3)前記作業認識部は、作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、両方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が一定時間変化しない場合、または、一方の手首の関節に対して他方の手首の関節が直線的な動きをしている場合、梱包する際に、テープを貼る作業と認識する、上記(1)に記載の作業工程管理システム。
【0012】
(4)前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間を記憶する記憶部を有し、
前記進捗度判定部は、前記第1の工程における作業の開始時刻から前記作業認識部で前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間と、前記標準作業時間とを比較して、前記作業認識部が認識した作業が前記標準作業時間より早く進んでいるか遅れているかを示す前記第1の工程の進行状況を判定し、
前記通知処理部は、判定された前記第1の工程の進行状況を前記情報端末へ通知する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の作業工程管理システム。
【0013】
(5)前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間を記憶すると共に、複数の作業者について作業者ごとの習熟度を記憶する記憶部を有し、
前記作業認識部は、前記動画データから前記第1の工程の作業を行う作業者を識別し、
前記進捗度判定部は、前記識別した作業者の前記習熟度、前記第1の工程における作業の開始時刻から前記作業認識部で前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間、および前記標準作業時間から、前記第1の工程の作業終了時刻を予測し、
前記通知処理部は、予測された前記第1の工程の作業終了時刻を前記情報端末に通知する、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の作業工程管理システム。
【0014】
(6)前記情報端末は、前記第2の工程の作業場に備え付けられている信号灯もしくはディスプレイ、または前記第2の工程の前記作業者が携帯している携帯情報端末である、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の作業工程管理システム。
【0015】
(7)作業者が作業を行う領域を撮影した動画データを取得する段階(a)と、
前記動画データの中の前記作業者の動作から前記作業者が行っている第1の工程における作業を認識する段階(b)と、
認識した前記作業者の作業から前記第1の工程における作業の進捗度を判定する段階(c)と、
判定した進捗度が所定の進捗度に達したときに、前記第1の工程とは異なる第2の工程における作業を行う作業者に情報を伝える情報端末へ、前記進捗度が前記所定の進捗度に達したこと通知する段階(d)と、
を有し、
前記段階(b)は、前記動画データの中から前記作業者の両手首の関節の座標値を取得し、取得した右手首の関節の座標値の変化と左手首の関節の座標値の変化の違いから、特定の作業内容を認識する、作業工程管理方法。
【0016】
(8)前記段階(b)は、作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、一方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化せず、かつ、他方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が変化している場合、梱包する際に、所定の場所からテープを取る作業、または所定の場所にテープを戻す作業と認識する、上記(7)に記載の作業工程管理方法。
【0017】
(9)前記段階(b)は、作業者を上方から撮影した動画データのフレーム内において、作業者の左右方向に対応する第1の軸、および前記第1の軸と交差する第2の軸から構成される2次元座標系において、両方の手首の関節の前記第2の軸における座標値が一定時間変化しない場合、または、一方の手首の関節に対して他方の手首の関節が直線的な動きをしている場合、梱包する際に、テープを貼る作業と認識する、上記(7)に記載の作業工程管理方法。
【0018】
(10)
前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間をあらかじめ記憶しておき、
前記第1の工程における作業の開始時刻から前記段階(b)において前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間と、前記標準作業時間とを比較して、前記段階(b)において認識した作業が前記標準作業時間より早く進んでいるか遅れているかを示す前記第1の工程の進行状況を判定する段階(e)を有し、
前記段階(d)においては、判定された前記第1の工程の作業の進行状況を前記情報端末へ通知する、上記(7)~(9)のいずれか1つに記載の作業工程管理方法。
【0019】
(11)前記第1の工程は複数の作業からなり、前記複数の作業の中の1つ1つの作業ごとに要する標準作業時間または前記複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに要する標準作業時間、および、複数の作業者について作業者ごとの習熟度をあらかじめ記憶しておき、
前記動画データから前記第1の工程で作業を行っている作業者を識別する段階(f)と、
前記識別した作業者の前記習熟度、前記第1の工程における作業の開始時刻から前記段階(b)において前記複数の作業の中の前記1つの作業または前記まとめた作業を認識した時刻までの時間、および前記標準作業時間から、前記第1の工程の作業終了時刻を予測する段階(g)を有し、
前記段階(d)においては、予測された前記第1の工程の作業終了時刻を前記情報端末へ通知する、上記(7)~(10)のいずれか1つに記載の作業工程管理方法。
【0020】
(12)上記(7)~(11)のいずれか1つに記載の作業工程管理方法をコンピューターに実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1工程の作業者を撮影した動画データから、作業者が行っている作業を認識して、認識した作業から第1の工程の進捗度を判定し、所定の進捗度になれば第1の工程と異なる第2の工程に居る作業者が見られる情報端末へ通知することとした。これにより第2の工程の作業者は、リアルタイムに第1の工程の進捗度がわかる。したがって、段取りの無駄や作業開始の遅延を少なく、またはなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の作業工程管理システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態の作業工程管理システムの機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図3】梱包工程を撮影した画像の一例を示す図である。
【
図4】梱包工程の作業内容を説明するための説明図である。
【
図5】梱包工程の作業内容を説明するための説明図である。
【
図6】梱包工程の作業内容を説明するための説明図である。
【
図7】左右の手首関節R1およびL1のY軸座標値を時系列に示したグラフである。
【
図8】作業者個人の習熟度の一例を示す習熟度テーブルである。
【
図9】進捗度の通知を受けた携帯情報端末の画面表示例を示す図である。
【
図10】工程管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図10に続く、工程管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
図1は、実施形態の作業工程管理システムの全体構成を示す概略図である。
図2は、実施形態の作業工程管理システムの機能を説明するための機能ブロック図である。
【0025】
この作業工程管理システム1は、複数の工程51~53の作業場にそれぞれ設置されたカメラユニット11~13と、カメラユニット11~13が接続されたサーバー20と、工程51~53で作業を行う作業者が携帯する携帯情報端末41または工程51~53の作業場に備えられた積層信号灯42とを有する。
【0026】
複数の工程51~53は、製品(物品)を製造した後の工程であり、検査工程51、梱包工程52、パレタイズ工程53である。これらの工程51~53は、いずれも作業者31~33による作業が必要である。検査工程51は、生産された物品を作業者31が検査する。梱包工程52は、検査後、検査合格した物品を作業者32が段ボール箱に詰める。パレタイズ工程53は、梱包された段ボール箱を作業者33がパレットに載せる。なお、これらの工程51~53は、あくまでも一例であり、本発明は、その他の工程であっても適用可能である。
【0027】
カメラユニット11~13は、いずれも同じものであり、カメラ15と、カメラ15に一体化されたコンピューター(COMP:Computer)16からなる。
【0028】
カメラ15は、撮影部101(
図2参照)となる。カメラ15は、それぞれの工程51~53において作業者31~33がそれぞれ作業する領域を撮影する。したがって、カメラユニット11~13は、工程51~53ごとにその工程で作業を行う作業者の動きを撮影できる位置に設置する。たとえば、作業者31~33が主に腕を上下に動かすことで作業を行うような場合は作業者31~33の腕の上下動を撮影することができる位置に設置することが好ましい。また、作業者31~33が主に腕を前後に動かすことで作業を行うような場合は作業者31~33の腕の前後動を撮影することができる位置に設置することが好ましい。そのほかの作業者31~33の動作についても同様であり、作業者31~33が行う作業内容を撮影することができる位置に設置する。カメラ15自体は一般的なカラームービーカメラを用いることができる。
【0029】
コンピューター16は、作業認識部102および進捗度判定部103(
図2参照)として機能する(詳細後述)。コンピューター16は、各種の演算処理を実行するプロセッサー(CPU:Central Processing UnitまたはGPU:Graphics Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などが適宜組み合わされて構成されている記憶装置(記憶部111)を備える。また、カメラ15と動画データを受信するために、たとえば、PCI Express、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、その他のビデオ信号用インターフェースなどのいずれか(またはこれら複数)を備える。
【0030】
このコンピューター16は、たとえば、カメラ15と同じ筐体内に設置されるか、または、カメラ15の筐体とコンピューター16の筐体とが接続されて一体となっていてもよい。このため、このコンピューター16は、たとえば1ボードコンピューターや1チップコンピューターなど小型のものであることが好ましい。しかし、このコンピューター16は、必ずしもカメラと一体化されている必要はなく、たとえば別筐体のカメラ15とビデオ信号用ケーブルで接続されたパソコンなどであってもよい。ただし、本実施形態では、カメラ15とコンピューター16が1対1に対応していて、1台のカメラ15からの動画データを用いて作業認識部102および進捗度判定部103として機能する。
【0031】
また、このコンピューター16は、サーバー20と接続するためのインターフェースを備えている。たとえば、イーサネット(登録商標)、IEEE1394などの規格によるBluetooth(登録商標)、IEEE802.11などの無線通信インターフェースなどである。
【0032】
サーバー20は、通知処理部104(
図2参照)として機能する(詳細後述)。サーバー20もコンピューターであり、プロセッサーおよび記憶装置(記憶部112)、各種インターフェースを備える(ハードウェア構成は、上述したカメラ15に一体化されているコンピューター16と同様であるので説明は省略する)。
【0033】
サーバー20は、カメラユニット11~13のコンピューター16と接続するためのインターフェースを備えている。カメラユニット11~13のコンピューター16と同様である。
【0034】
また、サーバー20は、前記の無線通信インターフェースを介して作業者31~33が持つ携帯情報端末41と接続される。また、サーバー20は、各工程51~53の作業場にある積層信号灯(以下、信号灯42という)に接続されている。
【0035】
携帯情報端末41および信号灯42は、サーバー20から前工程の進捗度が所定の進捗度となった段階で、その通知を受けて表示する情報端末105である(
図2参照)。
【0036】
携帯情報端末41は、たとえばディスプレイを備えるスマートフォンやタブレット、または専用端末である。携帯情報端末41は、サーバー20から前工程の進捗度が所定の進捗度となったことを示す通知を受けてディスプレイに表示する。
【0037】
信号灯42は、各工程に備え付けられている。信号灯42は、サーバー20から前工程の進捗度が所定の進捗度となったことを示す通知を受けて信号灯42の点灯する色を変化させる。たとえば前工程の進捗度が正常に終了した通知であれば緑色、前工程の進捗度が遅れている通知であれば黄色、前工程の作業が停止した通知であれば赤色などとする。もちろん、信号灯42を点灯させる色は、通知される内容に応じて変えてもよい。
【0038】
次に、
図2を参照して、実施形態の作業工程管理システムの機能を説明する。
【0039】
撮影部101は既に説明したとおりカメラ15である。
【0040】
作業認識部102は、カメラ15からの動画データを取得して、作業者の作業を認識する。
【0041】
作業者の作業の認識は、カメラ15による動画データから行う。たとえば、骨格認識技術を用いて、作業者の特定の関節の位置(座標値)を取得して、関節位置(座標)から、作業内容を認識する。
【0042】
骨格認識技術は、たとえば、オープンポーズ(Open Pose)がある。オープンポーズは、コンピュータービジョンに関する国際学会CVPR2017でCMU(カーネギーメロン大学)が発表した、keypoint(特徴点)の検出とkeypoint同士の関係の推定を行う技術である。オープンポーズを使うことで人の関節の位置など、人の体における特徴点がどの座標にあるかわかる(たとえばhttp://leapmind.io/blog/2018/01/22/%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%BD%8D%E7%BD%AE%E3%82%84%E5%90%91%E3%81%8D%E3%81%8C%E6%8E%A8%E5%AE%9A%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8Bopenpose%E3%82%92%E7%B4%B9%E4%BB%8B/ 参照)。また同様の骨格認識技術として、ディープポーズ(Deep Pose(https://www.slideshare.net/mitmul/deeppose-human-pose-estimation-via-deep-neural-networks など参照))がある。
【0043】
具体例を挙げて、骨格認識技術を用いた作業者の作業の認識について説明する。
図3は、梱包工程を撮影した画像の一例を示す図である。
【0044】
この
図3の画像例は、梱包工程52において、カメラ15が撮影領域200を撮影した映像(動画データ)の1フレーム分を示している。撮影領域200は作業者32が作業を行う領域を含んでいる。ここでは、カメラ15を、作業者32をほぼ真上から撮影するように設置している。動画データには、フレームの画面内にX-Yの2次元座標系を設定している。
【0045】
撮影領域200内には、作業者32が梱包工程52に来たことを検知するための作業領域201を設定している。作業領域201は作業者32がこの工程で作業をする際に存在する領域(作業のための移動を含む)であり、2次元座標系の座標値で設定する。同様に、作業対象である段ボール箱80が置かれる位置もワーク領域202として座標値で設定している。さらに、作業に必要なツールが置かれるツール領域203を座標値で設定している。ここでのツールは段ボール箱80を閉じる際に貼り付ける梱包用の粘着テープ90(OPP(Oriented Poly Propylene)テープや、いわゆるガムテープなど)である。
【0046】
この撮影領域200には作業者32が居る。この画像には、骨格認識技術により、作業者32の骨格が映し出されている。この画像では、作業者32の骨格として、右肩301R、右上腕302R、右前腕303R、左肩301L、左上腕302L、左前腕303Lが映し出されている。
【0047】
骨格認識技術では、これらの骨格や関節の現在の座標値(動画データにおける各フレーム内での座標値)を得ることができる。ここでは、手首関節R1およびL1の座標値と、肩関節R2およびL2の座標値を取得している。手首関節R1およびL1の座標値は、手の動きを認識するために使用する。また、肩関節R2およびL2の座標値は作業者32の位置を認識するために使用する。もちろんその他の骨格や関節の座標値なども得られているので、必要により使用する。
【0048】
作業認識部102は、このように骨格認識技術を用いて作業者32の手首と肩の位置(座標値)を認識する。
【0049】
そして、作業認識部102は、得られた作業者32の手首と肩の位置(座標値)から、どのような作業を行っているかを認識する。これには2通りの方法がある。第1は、作業者32の特定の関節の座標値の時系列の変化から認識する方法である。第2は、作業者32の特定の関節の座標値が作業内容に対応した所定領域に入ったか否かにより認識する方法である。
【0050】
まず、作業者の特定の関節の座標値の時系列の変化から認識する方法を説明する。
【0051】
図4~6は、梱包工程の作業内容を説明するための説明図である。
図4~6は、前述の
図3同様に梱包工程52における画像例であり、
図3に続く作業内容を示している。
【0052】
ここでは、前述の
図3を作業開始とする。
図4はツール領域203から粘着テープ90を取る作業を示している。
図5は段ボール箱80のフラップ81を閉じて粘着テープ90を貼っている作業を示している。
図6はテープ貼りが終わって粘着テープ90をツール領域203に戻す作業を示している。
【0053】
図7は、左右の手首関節R1およびL1のY軸座標値を時系列に示したグラフである。縦軸はY軸座標値、横軸は時間である。
図7から左右の手首関節R1およびL1のY軸方向の動きがわかる。なお、ここでのY軸の方向は、
図3~6に示したとおり、動画データの画面におけるY軸方向である。
【0054】
まず、作業開始は、
図3の状態であり、1個の梱包作業の開始である。
図7を見れば、時系列の初めに、手首関節R1およびL1のY軸座標値が共に高くなっている。これは、空の段ボール箱80を両手で持って作業台のワーク領域202に置いたためである。
【0055】
このような時系列の初めに手首関節R1およびL1のY軸座標値が共に高くなるパターンをあらかじめ「1個の梱包開始」の作業として記憶部111に記憶しておく。そして、作業認識部102は、動画データから、このパターンと同様の手首関節R1およびL1のY軸座標値を検出したなら、それを「1個の梱包開始」の作業を行ったものと認識する。
【0056】
続いて、
図7を見れば、手首関節R1のみY軸座標値が急激に高くなって、その後低くなっている。これは、
図4に示すように粘着テープ90を右手で取りに行ったためである。
【0057】
したがって、この手首関節R1のみY軸座標値が急激に高くなりすぐに低くなるパターンを「テープ取り作業」として記憶部111に記憶しておき、作業認識部102が動画データから作業を認識するために使用する。
【0058】
続いて、
図7を見れば、手首関節R1およびL1のY軸座標値が共にほぼ同じ位置にとどまって時間が経過している。しかも、途中、手首関節R1およびL1が異なる動きをしているものの、計3回(P1~P3)にわたり、手首関節R1およびL1がある程度の時間同じ位置になっている。これは、
図5に示すように、段ボール箱80のフラップ81を閉じて粘着テープ90を貼っている作業である(貼り付けたテープ91)。ここでP1~P3の3回行われているのは、フラップ81を閉じ合わせてテープを貼るP1、フラップ81のサイド部分の角にテープを貼るP2およびP3である。つまり、ここでは段ボール箱80に対して、いわいる「H貼り」という貼り方としている(
図6の貼り付けたテープ91参照)。したがって、この手首関節R1およびL1のY軸座標値が共にほぼ同じ位置にとどまって、ある程度の時間が経過するパターンを、「テープ貼り作業として」として記憶部111に記憶しておき、作業認識部102が動画データから作業を認識するために使用する。なお、テープ貼り作業の回数は、テープの貼り方次第である。たとえば十字型に貼る場合は、手首関節R1およびL1のY軸座標値が2回ほぼ同じ位置になる。また、フラップ81を閉じ合わせた部分にテープを貼って終わる場合は、手首関節R1およびL1のY軸座標値が1回だけ、ほぼ同じ位置になる。
【0059】
ここで手首関節R1およびL1のY軸座標値が共に「ほぼ同じ位置」とは、手首関節R1およびL1のY軸座標値が許容される誤差範囲内にあるものをいう。
【0060】
テープ貼り作業は、多くの場合、片方の手でテープを押さえ、もう片方の手でテープロールを回し引きしながら貼って行く。このため手首関節R1およびL1のY軸座標値は、多くの場合同じ位置となる。しかし、作業者32によっては元々テープを押さえる手とテープロールを引く手の位置がずれていたり(手首関節R1およびL1のY軸座標値がずれている)、段ボール箱80が斜めに置かれたりする。このため手首関節R1およびL1のY軸座標値に多少の違いが生じることがある。そこで、手首関節R1のY軸座標値と手首関節L1のY軸座標値の差分を誤差として、許容できる誤差範囲を設けておくのである。
【0061】
これを式で表すと、右手首関節R1のY軸座標値を「R1y」、左手首関節L1のY軸座標値を「L1y」として、下記(1)式のとおりである。
【0062】
|R1y-L1y|≦誤差範囲 …(1)
このような誤差範囲は、たとえば、実験や実績などから求めて決定することが好ましい。具体的な誤差範囲の値は、段ボール箱80の大きさや作業者によって異なるものの、たとえば、1~10cm程度である。
【0063】
なお、ここでは手首関節R1およびL1のY軸座標値のみに着目しているがX軸、Y軸の両方から手首関節R1およびL1の位置がほぼ直線的な動きをしたか否か判断してもよい。テープ貼り作業は、上述のとおり、多くの場合、片方の手に対してもう片方の手が直線的に離れてゆく。したがってこの手の動き、すなわち、手首関節R1およびL1のX軸およびY軸の値の変化から手首関節R1に対して手首関節L1がほぼ直線的な動きをしていれば、テープ貼り作業と認識できる。ここでもほぼ直線的とは、上記の誤差範囲と同様に許容できる誤差範囲を設定するとよい。
【0064】
また、直方体の段ボール箱80が斜めに置かれた場合に、置かれた段ボール箱80の辺の延在方向に応じて座標軸の回転処理(Y軸からY’軸)を行い、回転後の座標系におけるY’軸座標値において、これらの判断を行うようにしてもよい。また、動画データから、3次元座標系を認識する系であれば、鉛直方向をZ軸として、手首関節R1およびL1のZ軸座標値がほぼ同じ位置であることで、テープ貼り作業と認識するようにしてもよい。3次元座標系において、手首関節R1およびL1のZ軸座標値がほぼ同じ位置である場合、両手がほぼ水平に移動していることになる。これは片方の手でテープを押さえ、もう片方の手でテープロールを回し引きしながら貼って行く作業と一致する。
【0065】
続いて、
図7を見れば、再度、手首関節R1のみ、Y軸座標値が急激に高くなって下がっている。これは、使い終わった粘着テープ90を右手でツール領域203へ戻したためである。
【0066】
したがって、2回目の手首関節R1のみY軸座標値が急激に高くなりすぐに低くなるパターンを「テープ戻し作業」として記憶部111に記憶しておき、作業認識部102が動画データから作業を認識するために使用する。
【0067】
さらに、テープ取り、テープ貼り、およびテープ戻しの一連の作業は、作業開始の直後に行われている(未だ、物品の詰め込む作業をしていない)。このことから、この一連の動作は、段ボール箱80の底面に粘着テープ90を貼って底蓋を作る作業である。このような一連の動作パターンを記憶部111に記憶しておくことで、作業認識部102が動画データからこの一連のパターンと同様の動きを検出することで、段ボール箱80の底面にテープを貼る作業であると認識する。
【0068】
続いて、
図7を見れば、手首関節R1およびL1のY軸座標値が不規則に変化している。このような動きは物品を段ボール箱80に詰めるために、左右の手が段ボール箱80の方へ行ったり、段ボール箱80から離れたりするために起こる。
【0069】
したがって、このような手首関節R1およびL1のY軸座標値が時系列に沿って不規則に変化するパターンを「物品詰め作業」として記憶部111に記憶しておき、作業認識部102が動画データから作業を認識するために使用する。
【0070】
続いて、
図7を見れば、再び、テープ取り作業、テープ貼り作業(P4~P6)、そして、テープ戻し作業となっている。最後のテープ戻し作業が
図6に示したものである。
図6では、梱包作業が終了した段ボール箱80に貼り付けたテープ91が、上から見てH型となっている。テープ取り作業、テープ貼り作業(P4~P6)、およびテープ戻し作業からなる一連の作業は2回目である。このことから、作業認識部102が動画データからこの一連のパターンと同様の動きを検出し、しかもそれが2回目であれば、段ボール箱80の上面を閉じるためにテープを貼る作業であると認識する。
【0071】
その後は、手首関節R1およびL1のY軸座標値が共に低くなっている。これは1個の梱包作業を終了したため、手を段ボール箱80から離した動作である。
【0072】
このように梱包作業における手の動きを時系列に追うと、作業内容ごとに特徴がある、そしてそれらの特徴は手首関節R1およびL1のY軸の座標値の変化として捉えることができる。したがって、既に説明したように、それぞれの作業ごとの手首関節R1およびL1のY軸座標値をパターンとして記憶部111に記憶しておき、実際の作業が行われた際に動画データからそれらの動きと同様の動きを検出することで各作業を認識できる。
【0073】
特に、テープ貼り作業は、手首関節R1およびL1のY軸座標値がほぼ同じ位置になって、一定時間推移するという特徴的な動きとなっている。このためテープ貼り作業は、他の動作と比較して判別しやすい。この例では、テープ貼り作業が6回(P1~P6)行われているので、この6回のテープ貼り作業だけ認識することとしてもよい。
【0074】
次に、作業者の特定の関節の座標値が所定位置に来たか否かにより認識する方法を説明する。
【0075】
作業開始は、たとえば、作業領域201に作業者32が入ったことを検知した時点とする。これには、たとえば作業者32の肩関節R2またはL2が作業領域201に入れば作業開始と判断する。また、梱包工程52においては、作業者32が複数の梱包作業を連続して行うために作業領域201から出ないことがある。そのような場合において作業開始は、たとえば、ワーク領域202(この場合のワークとは段ボール箱80である)に段ボール箱80を置いたことを検知した時点とする。その他にも、梱包工程52においては、作業開始として、最初の粘着テープ90を取り行った時点(後述)としてもよい。
【0076】
続いて、作業者32は粘着テープ90を取りに行き、テープ貼り後、テープを戻しに行く。このため、手首関節R1の座標値が、ツール領域203内に2回出入りしたことで、テープ取りとテープ戻しの作業が行われたことがわかる。これにより、テープ取りとテープ戻しの間に粘着テープ90を段ボール箱80に貼る作業を行ったと推定できる。既に説明したように、梱包工程52では、まず段ボールの底面を形成し、その後物品を詰め込んでから、上蓋をテープ貼りする。したがって、手首関節R1の座標値が、ツール領域内に入ることが合計4回行われることになる。
【0077】
このように、特定の関節として、肩関節および手首関節の位置(座標値)と作業内容に対応した領域の座標値から、作業内容を認識することができる。
【0078】
以上の作業内容の認識方法は、それぞれ単独で行ってもよいが、時系列での判別と所定領域での判別を組み合わせてもよい。たとえば、1個の梱包作業の開始は、作業者32が作業領域201に入ったこと、または段ボール箱80をワーク領域202に置いたことで判別する。また、手首関節R1がツール領域203に入ったことでテープ貼りのトリガーとして使用し、その後、時系列での判断として、手首関節R1がツール領域203に入った後、手首関節R1およびL1が所定時間ほぼ同じY軸座標値にあることでテープ貼り作業と認識する。
【0079】
このような作業の認識は、他の工程においても作業認識部102により行われる。たとえば、検査工程51が物品の表面検査であれば、物品を作業領域201に運び入れたり、検査領域に作業者31が入る、また、必要なツールを取るなどにより認識する。また、パレタイズ工程53では、たとえば、パレットに段ボール箱80を4個積む場合、同じ動作が4回繰り返されることになる。したがって、時系列に同じ動作が4回繰り返されたなら、1枚のパレットの積み込み作業終了と認識する。
【0080】
作業認識部102は、作業内容(作業開始を含む)を認識するたびに(作業内容が判明するたびに)、認識した作業内容を進捗度判定部103へ送信する。
【0081】
進捗度判定部103は、受信した作業内容から現在時点における作業の進捗度を判定する。進捗度判定部103は、進捗度を判定するために、作業内容とそれに対応する進捗度をあらかじめ記憶部111に記憶しておく。そして、進捗度判定部103は、作業認識部102から作業内容と記憶している作業内容を対比して進捗度を求める。
【0082】
たとえば、テープ貼り作業から進捗度を求める場合、
図7に示したように、テープ貼り作業はP1~P6の6回ある。そこで、テープ貼り作業P1~P6に対応させて進捗度を規定しておく。たとえば、テープ貼り作業P1で進捗度1%、テープ貼り作業P2で進捗度5%、テープ貼り作業P3で進捗度10%、その後物品の詰め込み作業があり、テープ貼り作業P4で進捗度90%、テープ貼り作業P5で進捗度95%、そして最後のテープ貼り作業P6が終われば進捗度100%などとする。
【0083】
このような進捗度の規定は、たとえば、モデルとなる作業者に実際に作業をさせて、各作業内容とその時の進捗度を求めておいて、記憶部111に作業内容に対応する進捗度として記憶しておく。その他、たとえば、これまでの作業の実績から各作業内容と進捗度を対応させてもよいし、作業内容に対応して設計的に想定される進捗度を対応させてもよい。
【0084】
また、進捗度判定部103は、進捗度と共に、作業ごとの進行状況を判定することもできる。ここで進行状況とは、標準的な作業の進行時間に対して実際の作業が早く進んでいるか遅れているかを示すものである。
【0085】
このために記憶部111には標準作業時間を記憶しておく。標準作業時間は、たとえば、1つの工程が複数の作業からなる場合に、全作業の開始から終了まで時間である。また、複数の作業からなる1つの工程であっても、それら1つ1つの作業ごと、または複数の作業の中のいくつかをまとめた作業ごとに標準作業時間を決めておいてもよい。
【0086】
進捗度判定部103は、作業認識部102が作業内容を認識した時刻を記録し、作業開始時刻(後述)から作業内容を認識した時刻までの間の時間と、記憶部111から読み出した標準作業時間を対比する。これにより標準作業時間に対して実際の作業が進んでいるか遅れているかを判定する。
【0087】
作業開始時刻は、1つの工程における開始から終了までの進行状況を求めるため、基本的に、その工程における最初の作業の開始時刻となる。しかし、1つ1つの作業(または一まとめにした複数の作業)ごとに進行状況を求める場合は、それら1つ1つの作業(または一まとめにした複数の作業)作業開始時刻としてもよい。
【0088】
一例を説明する。たとえば、
図7に示した梱包工程は、既に説明したように、複数の作業からなる。そしてテープ貼り作業はP1~P6の6回ある。そこで、この6回のテープ貼り作業P1~P6について、前半の3回をまとめた底面テープ貼り作業の標準作業時間、後半の3回をまとめた上面テープ貼り作業の標準作業時間、そして底面テープ貼り作業と上面テープ貼り作業の間にある詰め込み作業の標準作業時間をそれぞれ記憶しておく。
【0089】
そして、進捗度判定部103は、実際に作業を認識時刻と標準作業時間とを比較することで、複数の作業の中の1つの作業ごとまたはまとめた作業ごとに早いか遅いかが判定できる。
【0090】
1例を表1に示す。ここでは、1回目テープ取り作業を1個の梱包作業開始、1回目テープ戻し作業から2回目テープ取り作業までを詰め込み作業、テープ貼り作業P6終了で1個の梱包作業終了とする。
【0091】
【0092】
表1に示したように、テープ貼り作業P3終了まで、すなわち、底面テープ貼り終了までは認識した作業が5秒早い。しかし、梱包作業で1分遅れが出ている。そして、最終的には50秒の遅れとなって作業終了となっている。このような進行状況から、テープ貼り作業単独では標準より早く進行するが、物品の詰め込み作業には遅れが生じすると推定できる。また、進行状況が判明した時点で、次工程(第2の工程)の情報端末105へ通知することで前工程(第1の工程)が早く進んでいるか遅れているかがわかるようになる。
【0093】
さらに、進捗度判定部103は、作業者個人の習熟度と標準作業時間から作業終了時刻を予測する。このために、記憶部111には、標準作業時間を記憶しておくとともに、あらかじめ作業者個人の習熟度を記憶しておく。進捗度判定部103は、記憶部111から標準作業時間と作業者個人の習熟度を読み出して作業終了時刻を予測する。
【0094】
図8は、作業者個人の習熟度の一例を示す習熟度テーブルである。ここでは作業者個人の習熟度を標準作業時間に対する掛け率として示している。また、習熟度は、作業開始からテープ貼り作業P3までと、その後、物品の詰め込み作業を終えて、事実上の作業終了となるテープ貼り作業P6までに分けている。このような習熟度テーブルをあらかじめ記憶部110に記憶しておく。
【0095】
この作業終了時刻の予測には、作業者個人を特定する必要がある。それには、たとえば、工程に入るごとに作業者が個人の識別情報(ID(identification))を入力するようにしてもよいし、また、作業者のヘルメットや作業服、その他に無線IDタグを付けて、読み取り機などで自動で読み取るようにしてもよい。
【0096】
また、実施形態ではカメラ15が作業者を撮影しているので、その動画データを使用して個人識別を行うようにしてもよい。それには、たとえば動画データを用いた顔認証技術を用いることができる。この場合、カメラ15の設置位置は、上述した作業者の手や腕の動きだけでなく、顔も撮影できる位置に設置する(顔認証のために別のカメラを設けてもよい)。顔認証技術については、既存技術を使用すればよい。また、上述したオープンポーズでも顔の骨格を認識することが可能であるので、オープンポーズで認識される顔骨格から個人の識別を行うようにしてもよい。このような顔認証技術や骨格認識技術を用いることで、ID入力や無線IDタグなどがなくてもカメラ15による撮影だけで作業者個人を識別して特定できる。
【0097】
進捗度判定部103は、作業者個人の特定を行って習熟度テーブルを参照することで、その工程に現在入っている作業者の習熟度を取得し、標準作業時間に掛けることで、作業終了時刻を予測する。
【0098】
作業終了時刻の予測は、たとえば、各作業内容が認識された時刻から予測する(予測した終了時刻を作業終了予測時刻という)。また、ここでは
図8に示したように、習熟度を作業内容により2つに分けているので、作業開始からテープ貼りP3までで、事実上の段ボール箱80の底面テープ貼りに要する時間がわかる。また、テープ貼りP6までで、事実上の物品の詰め込みが終了するので、梱包作業終了までの時刻がそれぞれ予測される。
【0099】
進捗度判定部103は、判定した進捗度、進行状況、および作業終了予測時刻を判定し次第、通知処理部104(サーバー20)へ送信する。ただし、進行状況および作業終了予測時刻はこれらを求めている場合だけ送信する。
【0100】
通知処理部104では、進捗度判定部103から受信した進捗度を情報端末105へ通知する。通知先は次工程の作業者が持つ携帯情報端末41または次工程の作業場所に備えられている信号灯42のうち、いずれか備えられている方である。両方備えられている場合は両方に通知してもよい。通知するタイミングは、あらかじめ記憶部112へ記憶しておく。たとえば、進捗度0%であれば、通知を受けた次工程の作業者が前工程で作業が始まったとわかる。また、進捗度80%であれば、通知を受けた次工程の作業者が前工程での作業が間もなく終わることがわかる。さらに、進捗度100%であれば、通知を受けた次工程の作業者が前工程での作業が終わり、物品がすぐに来ることがわかる。もちろん、通知タイミングは任意に決めればよい。
【0101】
進捗度の通知を受けた情報端末105である携帯情報端末41または信号灯42は、あらかじめ決められた表示を行う。たとえば、進捗度80%で1回だけ通知する場合、携帯情報端末41では、その旨の表示と共に決められた音を鳴らすなどである。信号灯42では、それまで緑色または黄色の表示を赤色に変えるなどすればよい。表示色はそのように設定してもよい。また、進捗度は1つの工程において、複数回通知するようにしてもよい。その場合、所定の進捗度としては、たとえば、進捗度0%(作業開始)、10%、50%、80%、90%などとすることができる。また、たとえば、5%ごとや10%ごとなど一定の進捗度ごとに通知するなどとしてもよい。もちろん、このような通知を行うトリガーとなる、所定の進捗度は任意に決めておけばよい。
【0102】
図9は、進捗度の通知を受けた携帯情報端末の画面表示例を示す図である。
【0103】
携帯情報端末41の場合は、ディスプレイ411があるので、そこに進捗度を、たとえば、
図9に示すような棒グラフなどで表示する。また、このときグラフの色を進捗度に応じて変えるようにしてもよい。
【0104】
信号灯42の場合は、たとえば、進捗度に応じて点灯させる色を変えるなどとする。進捗度0%(作業開始)は緑色、50%で黄色、100%で赤色などである。さらに各色を点滅させるなどとしてもよい。
【0105】
また、通知処理部104は、進捗度判定部103で進行状況および作業終了予測時刻を求めていれば、これらを受信して、情報端末105へ通知する。通知のタイミングは、進捗度と同じタイミングでもよいし、進捗度判定部103から進行状況および作業終了予測時刻を受けたタイミングで通知してもよい。特に、進捗度判定部103から進行状況および作業終了予測時刻を受けたタイミングで通知することで、進行状況および作業終了予測時刻をリアルタイムにその内容を知ることができる。進行状況および作業終了予測時刻は、携帯情報端末41では、受信した進行状況および作業終了予測時刻をそのまま文字やグラフなどで表示すればよい。一方、信号灯42では、たとえば、あらかじめ点灯する色や点滅状態など(複数色同時でもよい)と、進行状況および作業終了予測時刻に対応させて決めておくとよい。たとえば、進行状況の表示では、赤色は標準より遅延、黄色は標準より早い、緑色は標準などである。作業終了予測時刻も同様に、標準より遅くなる、早くなる、または標準のそれぞれに対して点灯色を変えることを規定しておくとよい。
【0106】
次に、本実施形態のシステムを用いた工程管理方法の処理手順を説明する。
図10および11は、工程管理方法の処理手順を示すフローチャートである。ここでは梱包工程52(第1の工程)を例に説明する。また、このフローチャートでは上述した作業認識部102および進捗度判定部103、および通知処理部104の処理手順を説明する。また、このフローチャートでは作業終了時刻を予測する処理を含む。
【0107】
まず、作業認識部102が、梱包工程52の作業場を撮影するカメラ15から動画データの取得を開始する(S11)。これ以降、カメラ15からの動画データは常時取得する。
【0108】
続いて、作業認識部102は、作業者32が作業領域201に入ったか、または段ボール箱80がワーク領域202に置かれたかを判断する(S12)。ここで作業者32が作業領域201に入ったかまたは段ボール箱80がワーク領域202に置かれたことで(S12:YES)、1個の梱包作業開始を認識し、同時に作業者個人を識別する(S13)。
【0109】
続いて、作業認識部102は、動画データから手首関節R1のX,Y軸座標値(図中R1xyと記す)から、手首関節R1がツール領域203に入ったか否かを判断し(S14)、入っていれば(S14:YES)、テープ取り作業を認識する(S15)。そして、進捗度判定部103へ送信する。S14で手首関節R1がツール領域203に入っていなければ(S14:NO)、そのままS14の処理を継続する。なお、この処理では、手首関節R1がツール領域203に入ったか否かを判断しているが、これは、作業標準として、作業者の利き手(右利き)に合わせて右側にツール領域203を配置して粘着テープ90を置き、右手で取りに行くためである。もちろん、その他の作業標準や、作業者の利き手に合わせるなどして判断する関節は変更される。
【0110】
進捗度判定部103は標準作業時間および作業者32の習熟度を記憶部111から読み出し、テープ取りを認識した時刻を作業開始時刻として作業終了時刻を予測し、予測した終了時刻を通知処理部104へ送信する。通知処理部104は予測した作業終了時刻を情報端末105へ通知する(S16)。
【0111】
続いて、作業認識部102は、動画データから両手首関節R1およびL1のY軸座標値(図中R1yおよびL1yと記す)が許容される誤差範囲内でほぼ同じ位置か否かを判断する(S17)。ほぼ同じ位置でなければ(S17:NO)、S17の処理を継続する。
【0112】
S17で両手首関節R1およびL1のY軸座標値が許容される誤差範囲内でほぼ同じ位置であれば(S17:YES)、作業認識部102は、所定時間経過したか否かを判断する(S18)。所定時間経過していなければ(S18:NO)、S17へ戻り処理を継続する。
【0113】
所定時間経過していれば(S18:YES)、作業認識部102は、テープ貼り作業と認識して進捗度判定部103へ送信する(S19)。進捗度判定部103は、認識したテープ貼り作業回数をカウントする(S20)。進捗度判定部103は、カウントしたテープ貼り作業回数から進捗度を判定する。ここではカウント数1で進捗度1%、カウント数2で進捗度5%、カウント数3で進捗度10%である(S21)。進捗度判定部103は、判定した進捗度を通知処理部104へ送信し、通知処理部104が所定の進捗度に達していれば情報端末105へ進捗度を通知する(S22)。ここでの所定の進捗度としては、たとえば進捗度10%ごととしておくと、通知処理部104は、進捗度10%を受信した段階で通知することになる。
【0114】
続いて、作業認識部102は、動画データから手首関節R1のX,Y軸座標値から、手首関節R1がツール領域203に入ったか否かを判断し(S23)、入っていれば(S23:YES)、テープ戻し作業を認識する(S24)。この段階でのテープ戻し作業の認識で段ボール箱80の底面テープ貼り終了となる。S23で手首関節R1がツール領域203に入っていなければ(S23:NO)、そのままS17へ戻りの処理を継続する。
【0115】
続いて、作業認識部102は、動画データから手首関節R1のX,Y軸座標値から、手首関節R1がツール領域203に入ったか否かを判断し(S25)、入っていれば(S25:YES)、テープ取り作業を認識する(S26)。このテープ取り作業の認識で段ボール箱80に物品が詰め込まれた後、上面のテープ貼り作業が開始されたと認識される。S25で手首関節R1がツール領域203に入っていなければ(S25:NO)、そのままS25の処理を継続する。
【0116】
続いて、作業認識部102は、動画データから両手首関節R1およびL1のY軸座標値が許容される誤差範囲内でほぼ同じ位置か否かを判断する(S27)。ほぼ同じ位置でなければ(S27:NO)、S27の処理を継続する。
【0117】
S27で両手首関節R1およびL1のY軸座標値が許容される誤差範囲内でほぼ同じ位置であれば(S27:YES)、作業認識部102は、所定時間経過したか否かを判断する(S28)。所定時間経過していなければ(S28:NO)、S27へ戻り処理を継続する。
【0118】
所定時間経過していれば(S28:YES)、作業認識部102は、テープ貼り作業と認識して進捗度判定部103へ送信する(S29)。進捗度判定部103は、認識したテープ貼り作業回数をカウントする(S30)。進捗度判定部103は、カウントしたテープ貼り作業回数から進捗度を判定する。ここでは前のカウントを継続しており、カウント数4で進捗度90%、カウント数5で進捗度95%、カウント数6で進捗度100%である(S31)。進捗度判定部103は、判定した進捗度を通知処理部104へ送信し、通知処理部104が情報端末105へ進捗度を通知する(S32)。前述のように所定の進捗度を進捗度10%ごととしたので、通知処理部104は、進捗度90%および100%を受信した段階で通知することになる。
【0119】
その後、進捗度判定部103が進捗度100%か否かを判断して(S33)、進捗度100%でなければ(S33:NO)、S27へ戻り処理を継続する。一方、進捗度100%になっていれば(S33:YES)、処理を終了し(処理終了によりすべてのカウントをリセットする)、次の梱包作業のため、スタートから処理を行うことになる。
【0120】
以上説明した本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0121】
本実施形態は、1つの工程(第1の工程)において作業者が行っている作業を認識して、進捗度を判定し、判定した進捗度が所定の進捗度になれば、他の工程(第2の工程)の作業者が見ることのできる情報端末105へ通知することとした。
【0122】
これにより第2の工程の作業者は、リアルタイムで第1の工程の進捗度がわかる。このことから、たとえば、次工程の作業者は、前工程の進捗度に合わせて自分の工程の段取りを行うことができる。また、たとえば、前工程の進捗度があまり進んでおらず、自分の工程の段取りが早く終わっていれば他工程へ応援に行くことも可能である。また、他の工程へ応援に行っている作業者は、前工程の進捗度が100%に近づいていれば、自分の工程にタイミングよく戻って次工程に遅延を発生させないようにできる。特に、情報端末105として、携帯情報端末41を各作業者に持たせることで、信号灯42を直接見ることができない場所に行った作業者(たとえば他工程への応援)でも、自分の担当している工程の前工程の進捗度がわかる。
【0123】
また、本実施形態は、カメラ15の動画データから作業者が行っている作業を認識しているため、たとえば、作業者の作業服や安全帽などに特別な仕掛けやポインターを付けたりする必要がないため、作業者の負担がない(または少ない)。また、作業者が作業ごとに開始や終了を入力する手間もないため、社業内容の確認のためだけに作業者に負担を掛けることがなくなる(または少なくなる)。
【0124】
また、作業の進行状況を求めて、次工程の作業者へ通知することとしたので、次工程の作業者が前工程において作業が早く進んでいるか遅れているかがわかるようになる。
【0125】
また、作業者個人の習熟度から作業終了時刻(時間)を予測することとしたので、前工程に入っている作業者によって変動する作業終了時刻がわかる。
【0126】
また、本実施形態では、動画データから作業を認識する作業認識部102と作業内容から進捗度を判定する進捗度判定部103をカメラ15と一体化させたコンピューター16により実行させている。これにより、動画データのようにデータ量の多いデータをサーバー20へ送る必要がなくなるので、サーバー20との間の通信負荷を低減させることができる。特に、複数の工程があり、工程ごとにカメラユニット11~13を配置しているような場合に、通信量を少なくすることができる。
【0127】
(変形例1)
上述した実施形態は、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の各機能をカメラユニット11~13のコンピューター16とサーバー20に分けて担わせている。しかし本発明は、このような各機能の分担に限定されない。以下、変形例として、各機能とハードウェア構成について説明する。
【0128】
変形例1は、カメラユニット11~13のコンピューター16に、作業認識部102および進捗度判定部103に加えて、通知処理部104の機能も担わせたものである。
図12は、変形例1の全体構成を示す概略図である。なお、変形例1において、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の機能は、前述した実施形態と同じであるので、これらの説明は省略する。また、機能ブロック図についても省略する。
【0129】
変形例1の作業工程管理システム2は、カメラ15にコンピューター16が一体化したカメラユニット11~13が各工程51~53に設置される。カメラユニット11~13のコンピューター16は、情報端末105である各工程51~53の作業者が持つ携帯情報端末41および各工程51~53の信号灯42と有線または無線により接続される。このため、コンピューター16は通信インターフェースを備える。
【0130】
コンピューター16は、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の機能をすべて担っている。
【0131】
これにより、実施形態と同様の効果に加えて、サーバー20が不要になるので、システム全体のハードウェア構成が簡単になる。
【0132】
通信機能を備えたカメラ一体型のコンピューター16としては、たとえばスマートフォンやタブレットなどを用いることができる。そして、スマートフォンやタブレットに上述した各部機能を実施するプログラムを実行させることで、本発明を達成できる。また、必ずしもカメラ一体型のコンピューター16に限定されず、カメラとコンピューター(いわゆるパソコン)が各工程に備えられて、そのコンピューターが他の工程の携帯情報端末および信号灯と有線または無線により接続された形態であってもよい。
【0133】
(変形例2)
変形例2は、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の機能をすべてサーバー20に担わせたものである。
図13は、変形例2の全体構成を示す概略図である。なお、変形例2においても、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の機能は、前述した実施形態と同じであるので、これらの説明は省略する。また、機能ブロック図についても省略する。
【0134】
変形例2の作業工程管理システム3は、カメラ15が各工程51~53に設置され、サーバー20と有線または無線により接続されていている。また、サーバー20は、情報端末105である各工程51~53の作業者が持つ携帯情報端末41、および各工程51~53の信号灯42に有線または無線により接続されている。カメラ15からの動画データが直接サーバー20へ送信される。
【0135】
サーバー20は、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の機能をすべて担っている。
【0136】
これにより、実施形態と同様の効果に加えて、たとえば、複数の工場にある複数の工程を一か所のサーバーで一元管理することも可能となる。特に、動画データもサーバー20に送信するので、サーバー20を介して、たとえば別のコンピューターへ動画データを送信(転送)し、そこで各工程の状況を見ることもできる。
【0137】
また、本変形例2のように、サーバー20にすべての機能を担わせる構成は、たとえば、サーバー20としてインターネット上のクラウドサーバーを用いることも可能である。クラウドサーバーを用いる場合、クラウドサーバーは、たとえば複数のサーバーによって構成されていることもあり、それら複数のサーバーで互いにデータのやり取りを行って、作業認識部102、進捗度判定部103、および通知処理部104の機能を分散処理させることも可能である。分散処理によって、工程の数が多くデータ量が多くなっても、処理に遅延がなく(または少なく)、リアルタイム処理が可能になる。また、カメラ15にコンピューターを付ける必要がないので、一般的なムービーカメラや監視カメラ、さらには簡易ないわゆるウェブカメラなどをそのまま用いることもできる。
【0138】
さらに、変形例として、作業認識部102の機能をカメラ一体型のコンピューター
16に担わせ、進捗度判定部103および通知処理部104の機能をサーバー20に担わせるようにしてもよい。この場合、ハードウェアの構成は、
図1に示したシステム構成と同様となる。
【0139】
以上本発明の実施形態、およびその変形例を説明したが、さらに本発明は様々な変形が可能である。
【0140】
たとえば、1工程に1台のカメラ15ではなく、複数の工程の複数の作業者を撮影する1台のカメラ15としてもよい。上述したオープンポーズやディープポーズなどの骨格認識技術は、1つの動画データに写っている複数の人の骨格を同時に認識できる。したがって、複数の作業者を1台のカメラ15で撮影した場合でも、作業者ごとに個別に行っている作業を認識して、進捗度などを求めることが可能である
また、工程の進捗度などを通知する先は、物品の流れとしての次工程に限定されない。たとえば、前工程に次工程の進捗度を通知するようにしてもよい。つまり、物品の流れとして第2の工程が前工程、第1の工程が次工程となる。そして前工程(第2の工程)へ次工程(第1の工程)の進捗度を通知する。このようにすることで次工程で遅延が発生した場合に、そのような状況が前工程ですぐにわかり、次工程へ応援に行くことが可能となる。このため、たとえば前工程での滞留や在庫の抱え過ぎを防ぐことができる。
【0141】
また、通知先の第2の工程は、第1の工程に対して直後または直前の工程だけでなく、さらに後の工程やさらに前の工程であってもよい。
【0142】
また、作業者の行っている作業の認識は、カメラ15の動画データを用いるだけでなく、その他のセンサーなどを用いてもよい。たとえば、物体までの距離値を得るライダー(LIDAR(Light Detection and Ranging))により人の各部位までの距離値を得て、人の姿勢(特に腕の方向)を推定する技術を用いることができる。この場合ライダーが撮影部101となる。
【0143】
また、信号灯42がある場合においては、3色とは限らず、2色の信号灯42、1色の信号灯42などの場合でも適用可能である。また、4色、5色といった信号灯42を用いてもよい。
【0144】
また、信号灯42に代えて、または追加で、ディスプレイまたはディスプレイを備えたほかのコンピューターを設置して、サーバー20から進捗度の通知を受けて表示させてもよい。この場合、ディスプレイまたは他のコンピューターは、サーバー20と有線または無線インターフェースを介して接続される。
【0145】
また、情報端末105として各工程51~53に備える携帯情報端末41および信号灯42はいずれか一方だけであってもよいし、工程や作業者に応じて、異なる情報端末105を備えるようにしてもよい。
【0146】
また、実施形態は、梱包工程を例に説明したが、もちろん本発明は梱包工程に限定されない。たとえば、流れ作業の中で、途中で放置されると劣化が起こる製造ラインの各工程に好適である。たとえば、その物品の製造や加工のために使用する薬品では、混合や調製後、すぐに使用しなければならないものもある。そこで、本発明を適用することで、前後の工程の進捗度がわかるようになるので、その進捗度に合わせて、薬品の混合や調製を行うことができる。
【0147】
さらに、実施形態の説明の中で使用した条件や数値などはあくまでも説明のためのものであり、本発明がこれら条件や数値に限定されるものではない。
【0148】
本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0149】
11~13 カメラユニット、
15 カメラ、
20 サーバー、
31~33 作業者、
41 携帯情報端末、
42 積層信号灯、
51 検査工程、
52 梱包工程、
53 パレタイズ工程、
80 段ボール箱、
90 粘着テープ、
101 撮影部、
102 作業認識部、
103 進捗度判定部、
104 通知処理部、
105 情報端末、
200 撮影領域、
201 作業領域、
202 ワーク領域、
203 ツール領域。