(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20220809BHJP
F04C 18/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F04C29/00 B
F04C29/00 S
F04C29/00 C
F04C18/02 311B
(21)【出願番号】P 2018143988
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅史
(72)【発明者】
【氏名】沖 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 忠資
(72)【発明者】
【氏名】方田 智貴
(72)【発明者】
【氏名】杉本 遊
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 雅至
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-213463(JP,A)
【文献】特開2005-016342(JP,A)
【文献】特開2001-207976(JP,A)
【文献】特開2006-274976(JP,A)
【文献】中国実用新案第206943005(CN,U)
【文献】特開平09-177674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00-29/12
F04C 2/00-2/077;18/00-18/077
F04B 39/00-39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記軸受部材は、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
前記ハウジングは、少なくとも前記軸線方向の一方側に開口部(121a)を有するとともに、前記圧縮機の外殻を構成する筒状のハウジング本体部(121)と、前記ハウジング本体部に対して前記軸線方向の前記一方側の位置で前記開口部を覆うとともに、前記圧縮機の外殻を構成する蓋部(122)とを有し、
前記蓋部は、前記固定スクロール部材のうち前記軸線方向の前記一方側の一方側端面(321a)または前記一方側端面と前記蓋部との間の介在物に当接する当接面(122a)が形成された当接面形成部(122b)を有し、
前記複数の第2ボルト(73)は、前記軸受固定部と前記当接面形成部との間に前記固定スクロール部材が挟持された状態で、前記3部品を共締めしている、圧縮機。
【請求項2】
前記軸受固定部には、前記複数の第2ボルトが有する雄ねじ部(73a)に対応する雌ねじ部(367)が形成されている、請求項
1に記載の圧縮機。
【請求項3】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記圧縮機構部のうち前記複数の第2ボルトが配置された位置で前記軸線方向に直交する仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのそれぞれは、前記駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
前記複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
前記駆動軸の軸線は、重力方向に対して交差する方向へ延びており、
前記複数の第2ボルトの本数は、奇数であり、
前記複数の第2ボルトの本数をn本とし、前記圧縮機構部に作用する重力(F
G
)の作用方向を、前記仮想平面上での前記円の前記中心(Op)を起点として前記仮想平面上に示したときの方向を基準方向とし、前記仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのうち1本の第2ボルト(72-3)の中心(Ob3)と前記円の前記中心(Op)とを結ぶ線分が、前記基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
F
)としたとき、
前記支持角度は、0°±(45/n)°または180°±(45/n)°の範囲内である、圧縮機。
【請求項4】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記圧縮機構部のうち前記複数の第2ボルトが配置された位置で前記軸線方向に直交する仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのそれぞれは、前記駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
前記複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
前記軸受部は第1軸受部であり、
前記圧縮機は、前記ハウジングの内部で前記駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を有し、
前記第2軸受部は、前記第1軸受部に対する前記圧縮機構部側とは反対側に、前記第1軸受部に対して離れて配置されており、
前記複数の第2ボルトの本数は、奇数であり、
前記複数の第2ボルトの本数をn本とし、前記圧縮機が使用される運転条件の中で、前記駆動軸が前記第2軸受部から受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重(F
P
)が作用する方向を、前記仮想平面上での前記円の前記中心(Op)を起点として前記仮想平面上に示したときの方向を基準方向とし、前記仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのうち1本の第2ボルト(72-3)の中心(Ob3)と前記円の前記中心(O
P
)とを結ぶ線分が、前記基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
F
)としたとき、
前記支持角度は、0°±(45/n)°または180°±(45/n)°の範囲内である、圧縮機。
【請求項5】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記圧縮機構部のうち前記複数の第2ボルトが配置された位置で前記軸線方向に直交する仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのそれぞれは、前記駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
前記複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
前記駆動軸の軸線は、重力方向に対して交差する方向へ延びており、
前記複数の第2ボルトの本数は、偶数であり、
前記複数の第2ボルトの本数をn本とし、前記圧縮機構部に作用する重力(F
G
)の作用方向を、前記仮想平面上での前記円の前記中心(Op)を起点として示したときの方向を基準方向とし、前記仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのうち隣り合う2本の第2ボルト(72-1、72-4)のそれぞれの中心(Ob1、Ob4)と前記円の前記中心(O
P
)とを結ぶ線分がなす角度を二等分する二等分線(Lb)が、前記基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
L
)としたとき、
前記支持角度は、90°±(90/n)°の範囲内である、圧縮機。
【請求項6】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記圧縮機構部のうち前記複数の第2ボルトが配置された位置で前記軸線方向に直交する仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのそれぞれは、前記駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
前記複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
前記軸受部は第1軸受部であり、
前記圧縮機は、前記ハウジングの内部で前記駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を有し、
前記第2軸受部は、前記第1軸受部に対する前記圧縮機構部側とは反対側に、前記第1軸受部に対して離れて配置されており、
前記複数の第2ボルトの本数は、偶数であり、
前記複数の第2ボルトの本数をn本とし、前記圧縮機が使用される運転条件の中で、前記駆動軸が前記第2軸受部から受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重(F
P
)が作用する方向を、前記仮想平面上での前記円の前記中心(Op)を起点として前記仮想平面上に示したときの方向を基準方向とし、前記仮想平面上において、前記複数の第2ボルトのうち隣り合う2本の第2ボルト(72-1、72-4)のそれぞれの中心(Ob1、Ob4)と前記円の前記中心(O
P
)とを結ぶ線分がなす角度を二等分する二等分線が、前記基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
L
)としたとき、
前記支持角度は、90°±(90/n)°の範囲内である、圧縮機。
【請求項7】
前記複数の締結ボルトの少なくとも一部は、前記円周に沿って、前記第1ボルトと前記第2ボルトとが交互に配置されている、請求項
3ないし6のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項8】
前記軸受部材は、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
前記ハウジングは、少なくとも前記軸線方向の一方側に開口部(121a)を有する筒状のハウジング本体部(121)を有し、
前記ハウジング本体部は、前記軸受固定部のうち前記軸線方向の他方側の端面(362b)に対して直にまたは介在物を介して当接する当接面(60a、81)が形成された当接面形成部(60、80)を有し、
前記複数の第2ボルト(72)は、前記当接面形成部と前記固定スクロール部材との間に前記軸受固定部が挟持された状態で、前記3部品を共締めしている、請求項
3ないし7のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項9】
前記当接面形成部には、前記複数の第2ボルトが有する雄ねじ部(72a)に対応する複数の雌ねじ部(61、84)が形成されている、請求項
8に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記当接面形成部は、前記ハウジング本体部から前記駆動軸側へ突出した突出部(60)である、請求項
8または
9に記載の圧縮機。
【請求項11】
前記ハウジング本体部は、第1内周面(82)と、前記第1内周面よりも前記軸線方向の前記一方側に位置し、前記第1内周面よりも直径が大きい第2内周面(83)と、前記第1内周面と前記第2内周面とをつなぐ段差面(81)とを有し、
前記当接面は、前記段差面であり、
前記当接面形成部は、前記ハウジング本体部のうち前記段差面を形成する段差部(80)である、請求項
8または
9に記載の圧縮機。
【請求項12】
前記軸受部材は、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
前記ハウジングは、少なくとも前記軸線方向の一方側に開口部(121a)を有する筒状のハウジング本体部(121)と、前記ハウジング本体部に対して前記軸線方向の前記一方側の位置で前記開口部を覆う蓋部(122)とを有し、
前記蓋部は、前記固定スクロール部材のうち前記軸線方向の前記一方側の一方側端面(321a)または前記一方側端面と前記蓋部との間の介在物に当接する当接面(122a)が形成された当接面形成部(122b)を有し、
前記複数の第2ボルト(73)は、前記軸受固定部と前記当接面形成部との間に前記固定スクロール部材が挟持された状態で、前記3部品を共締めしている、請求項
3ないし7のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項13】
前記軸受固定部には、前記複数の第2ボルトが有する雄ねじ部(73a)に対応する雌ねじ部(367)が形成されている、請求項
12に記載の圧縮機。
【請求項14】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記軸受部材は、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
前記ハウジングは、少なくとも前記軸線方向の一方側に開口部(121a)を有する筒状のハウジング本体部(121)を有し、
前記ハウジング本体部は、前記軸受固定部のうち前記軸線方向の他方側の端面(362b)に対して直にまたは介在物を介して当接する当接面(60a、81)が形成された当接面形成部(60、80)を有し、
前記複数の第2ボルト(72)は、前記当接面形成部と前記固定スクロール部材との間に前記軸受固定部が挟持された状態で、前記3部品を共締めしており、
前記ハウジング本体部は、前記開口部を有する筒部(121d)と、前記筒部よりも前記軸線方向の他方側に底部(121e)を有するとともに、前記筒部と前記底部とが継ぎ目のない一体成形品として構成されており、
前記軸受部は第1軸受部であり、
前記底部の一部は、前記駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を形成し、
前記圧縮機構部の外周面(30a)と前記ハウジング本体部の内周面(83)との間には、前記第1軸受部と前記駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法と、前記第2軸受部と前記駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法との合計よりもラジアル方向での寸法が大きな隙間(δp)が形成されている、圧縮機。
【請求項15】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機であって、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
前記圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
前記圧縮機構部および前記駆動軸を収容するハウジング(12)と、
前記圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
前記圧縮機構部は、
前記ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
前記駆動軸の軸線方向で前記固定スクロール部材と並んで配置され、前記駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、前記固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
前記駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
前記複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
前記複数の第1ボルトは、前記固定スクロール部材と、前記軸受部材と、前記ハウジングとの3部品のうち前記固定スクロール部材と前記軸受部材との2部品のみを締結し、
前記複数の第2ボルトは、前記3部品を共締めして
おり、
前記軸受部材は、前記複数の締結ボルトによって前記固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
前記ハウジングは、少なくとも前記軸線方向の一方側に開口部(121a)を有する筒状のハウジング本体部(121)と、前記ハウジング本体部に対して前記軸線方向の前記一方側の位置で前記開口部を覆う蓋部(122)とを有し、
前記蓋部は、前記固定スクロール部材のうち前記軸線方向の前記一方側の一方側端面(321a)または前記一方側端面と前記蓋部との間の介在物に当接する当接面(122a)が形成された当接面形成部(122b)を有し、
前記複数の第2ボルト(73)は、前記軸受固定部と前記当接面形成部との間に前記固定スクロール部材が挟持された状態で、前記3部品を共締めしており、
前記ハウジング本体部は、前記開口部を有する筒部(121d)と、前記筒部よりも前記軸線方向の他方側に底部(121e)を有するとともに、前記筒部と前記底部とが継ぎ目のない一体成形品として構成されており、
前記軸受部は第1軸受部であり、
前記底部の一部は、前記駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を形成し、
前記圧縮機構部の外周面(30a)と前記ハウジング本体部の内周面(83)との間には、前記第1軸受部と前記駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法と、前記第2軸受部と前記駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法との合計よりもラジアル方向での寸法が大きな隙間(δp)が形成されている、圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入した冷媒を圧縮して吐出するスクロール型の圧縮機に関する。とりわけ、本発明は、高低圧差の大きいCO2冷媒が使用される冷凍サイクル装置に用いられ、軸受部に高荷重が作用するために、耐久性の要求レベルが高い圧縮機において有効である。また、本発明は、例えば、車載用圧縮機のような、小型・軽量化のニーズの高い圧縮機において有効である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクロール型の圧縮機が開示されている。この圧縮機は、スクロール型の圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する駆動軸と、圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数のボルトとを備える。圧縮機構部は、固定スクロール部材と旋回スクロール部材とを有する。駆動軸は、旋回スクロール部材を旋回させるための固定クランク機構を有する。
【0003】
この圧縮機の構成部品の組付けでは、まず、圧縮機構部の芯出し組付けが行われる。圧縮機構部の芯出し組付けでは、圧縮機構部の構成部品同士が複数のボルトによって仮の締結固定が行われる。その状態で、固定スクロール部材と旋回スクロール部材との芯合わせが行われる。その後、圧縮機構部の構成部品同士が複数のボルトによって締結固定される。圧縮機構部の芯出し組付けの後、圧縮機構部がハウジングに挿入される。その後、圧縮機構部とハウジングとが、溶接または圧入によって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記のスクロール型の圧縮機において、圧縮機構部の構成部品同士を締結し、圧縮機構部とハウジングとを締結しない複数の圧縮機構部用ボルトと、圧縮機構部の構成部品同士を締結せず、圧縮機構部とハウジングとを締結する複数のハウジング用ボルトとの2種類のボルトを用いることを検討した。
【0006】
しかし、この場合、圧縮機構用ボルトとハウジング用ボルトとのうち圧縮機構用ボルトのみを用いる場合と比較して、ボルトの総本数が増大し、部品点数が増大する。このため、圧縮機の製造コストが増大する。
【0007】
さらに、この場合、圧縮機構用ボルトのみを用いる場合と比較して、ボルトの配置スペースの増大が必要となる。圧縮機全体の体格を維持しつつ、ボルトの配置スペースを増大させると、吸入通路が縮小したり、自転防止機構の設置スペースが縮小したりする。自転防止機構の設置スペースが縮小すると、自転防止機構の剛性が低下する。また、吸入通路および自転防止機構の設置スペースの広さを維持しつつ、ボルトの配置スペースを増大させると、圧縮機全体の体格が増大する。なお、ボルトの軸径を大きくして、ボルト軸力を増大させることで、ボルトの総本数を減らすことが考えられる。しかし、この場合であっても、ボルトの軸径が大きくなることで、ボルトの配置スペースが増大し、圧縮機全体の体格が増大する。
【0008】
そこで、本発明者は、ボルトの総本数の増大を回避する方法として、圧縮機構用ボルトの全部を、圧縮機構部の複数の構成部品とハウジングとを共締めする共締めボルトにすることを検討した。この共締めボルトは、圧縮機構部の構成部品同士を締結するボルトと、圧縮機構部とハウジングとを締結するボルトとを兼ねる。
【0009】
しかし、圧縮機構用ボルトの全部を共締めボルトとすると、圧縮機構部をハウジングに収容する前に、圧縮機構部の芯出し組付けを行うことができなくなる。すなわち、圧縮機の構成部品同士の組付け性が悪化する。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、圧縮機構部の構成部品同士の締結および圧縮機構部とハウジングとの締結を目的とした締結ボルトの総本数を減らすことができ、かつ、圧縮機の構成部品同士の組付け性の悪化を回避することができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1、3、4、5、6、14、15に記載の発明によれば、
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機は、
スクロール型の圧縮機構部(30)と、
圧縮機構部に駆動力を伝達する駆動軸(14)と、
圧縮機構部および駆動軸を収容するハウジング(12)と、
圧縮機構部の構成部品同士を締結する複数の締結ボルト(70)とを備え、
圧縮機構部は、
ハウジングに対して固定される固定スクロール部材(32)と、
駆動軸の軸線方向で固定スクロール部材と並んで配置され、駆動軸の駆動力により旋回運動する際に、固定スクロール部材と噛み合うことで冷媒を圧縮する旋回スクロール部材(34)と、
駆動軸を回転可能に支持する軸受部(361a)を形成するとともに、複数の締結ボルトによって固定スクロール部材に固定される軸受部材(36)とを有し、
複数の締結ボルトは、複数の第1ボルト(71)と、複数の第2ボルト(72、73)とを含み、
複数の第1ボルトは、固定スクロール部材と、軸受部材と、ハウジングとの3部品のうち固定スクロール部材と軸受部材との2部品のみを締結し、
複数の第2ボルトは、3部品を共締めしている。
さらに、請求項1に記載の発明によれば、
軸受部材は、複数の締結ボルトによって固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
ハウジングは、少なくとも軸線方向の一方側に開口部(121a)を有するとともに、圧縮機の外殻を構成する筒状のハウジング本体部(121)と、ハウジング本体部に対して軸線方向の一方側の位置で開口部を覆うとともに、圧縮機の外殻を構成する蓋部(122)とを有し、
蓋部は、固定スクロール部材のうち軸線方向の一方側の一方側端面(321a)または一方側端面と蓋部との間の介在物に当接する当接面(122a)が形成された当接面形成部(122b)を有し、
複数の第2ボルト(73)は、軸受固定部と当接面形成部との間に固定スクロール部材が挟持された状態で、3部品を共締めしている。
また、請求項3に記載の発明によれば、
圧縮機構部のうち複数の第2ボルトが配置された位置で軸線方向に直交する仮想平面上において、複数の第2ボルトのそれぞれは、駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
駆動軸の軸線は、重力方向に対して交差する方向へ延びており、
複数の第2ボルトの本数は、奇数であり、
複数の第2ボルトの本数をn本とし、圧縮機構部に作用する重力(F
G
)の作用方向を、仮想平面上での円の中心(Op)を起点として仮想平面上に示したときの方向を基準方向とし、仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち1本の第2ボルト(72-3)の中心(Ob3)と円の中心(Op)とを結ぶ線分が、基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
F
)としたとき、
支持角度は、0°±(45/n)°または180°±(45/n)°の範囲内である。
また、請求項4に記載の発明によれば、
圧縮機構部のうち複数の第2ボルトが配置された位置で軸線方向に直交する仮想平面上において、複数の第2ボルトのそれぞれは、駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
軸受部は第1軸受部であり、
圧縮機は、ハウジングの内部で駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を有し、
第2軸受部は、第1軸受部に対する圧縮機構部側とは反対側に、第1軸受部に対して離れて配置されており、
複数の第2ボルトの本数は、奇数であり、
複数の第2ボルトの本数をn本とし、圧縮機が使用される運転条件の中で、駆動軸が第2軸受部から受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重(F
P
)が作用する方向を、仮想平面上での円の中心(Op)を起点として仮想平面上に示したときの方向を基準方向とし、仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち1本の第2ボルト(72-3)の中心(Ob3)と円の中心(O
P
)とを結ぶ線分が、基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
F
)としたとき、
支持角度は、0°±(45/n)°または180°±(45/n)°の範囲内である。
また、請求項5に記載の発明によれば、
圧縮機構部のうち複数の第2ボルトが配置された位置で軸線方向に直交する仮想平面上において、複数の第2ボルトのそれぞれは、駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
駆動軸の軸線は、重力方向に対して交差する方向へ延びており、
複数の第2ボルトの本数は、偶数であり、
複数の第2ボルトの本数をn本とし、圧縮機構部に作用する重力(F
G
)の作用方向を、仮想平面上での円の中心(Op)を起点として示したときの方向を基準方向とし、仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち隣り合う2本の第2ボルト(72-1、72-4)のそれぞれの中心(Ob1、Ob4)と円の中心(O
P
)とを結ぶ線分がなす角度を二等分する二等分線(Lb)が、基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
L
)としたとき、
支持角度は、90°±(90/n)°の範囲内である。
また、請求項6に記載の発明によれば、
圧縮機構部のうち複数の第2ボルトが配置された位置で軸線方向に直交する仮想平面上において、複数の第2ボルトのそれぞれは、駆動軸の軸線(CL)の位置を中心(Op)とする円の円周に沿って等間隔で配置されており、
複数の第2ボルトの本数は、3本以上であり、
軸受部は第1軸受部であり、
圧縮機は、ハウジングの内部で駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を有し、
第2軸受部は、第1軸受部に対する圧縮機構部側とは反対側に、第1軸受部に対して離れて配置されており、
複数の第2ボルトの本数は、偶数であり、
複数の第2ボルトの本数をn本とし、圧縮機が使用される運転条件の中で、駆動軸が第2軸受部から受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重(F
P
)が作用する方向を、仮想平面上での円の中心(Op)を起点として仮想平面上に示したときの方向を基準方向とし、仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち隣り合う2本の第2ボルト(72-1、72-4)のそれぞれの中心(Ob1、Ob4)と円の中心(O
P
)とを結ぶ線分がなす角度を二等分する二等分線が、基準方向に対してなす角度を支持角度(θ
L
)としたとき、
支持角度は、90°±(90/n)°の範囲内である。
また、請求項14に記載の発明によれば、
軸受部材は、複数の締結ボルトによって固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
ハウジングは、少なくとも軸線方向の一方側に開口部(121a)を有する筒状のハウジング本体部(121)を有し、
ハウジング本体部は、軸受固定部のうち軸線方向の他方側の端面(362b)に対して直にまたは介在物を介して当接する当接面(60a、81)が形成された当接面形成部(60、80)を有し、
複数の第2ボルト(72)は、当接面形成部と固定スクロール部材との間に軸受固定部が挟持された状態で、3部品を共締めしており、
ハウジング本体部は、開口部を有する筒部(121d)と、筒部よりも軸線方向の他方側に底部(121e)を有するとともに、筒部と底部とが継ぎ目のない一体成形品として構成されており、
軸受部は第1軸受部であり、
底部の一部は、駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を形成し、
圧縮機構部の外周面(30a)とハウジング本体部の内周面(83)との間には、第1軸受部と駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法と、第2軸受部と駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法との合計よりもラジアル方向での寸法が大きな隙間(δp)が形成されている。
また、請求項15に記載の発明によれば、
軸受部材は、複数の締結ボルトによって固定スクロール部材に固定される軸受固定部(362)を有し、
ハウジングは、少なくとも軸線方向の一方側に開口部(121a)を有する筒状のハウジング本体部(121)と、ハウジング本体部に対して軸線方向の一方側の位置で開口部を覆う蓋部(122)とを有し、
蓋部は、固定スクロール部材のうち軸線方向の一方側の一方側端面(321a)または一方側端面と蓋部との間の介在物に当接する当接面(122a)が形成された当接面形成部(122b)を有し、
複数の第2ボルト(73)は、軸受固定部と当接面形成部との間に固定スクロール部材が挟持された状態で、3部品を共締めしており、
ハウジング本体部は、開口部を有する筒部(121d)と、筒部よりも軸線方向の他方側に底部(121e)を有するとともに、筒部と底部とが継ぎ目のない一体成形品として構成されており、
軸受部は第1軸受部であり、
底部の一部は、駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部(16a)を形成し、
圧縮機構部の外周面(30a)とハウジング本体部の内周面(83)との間には、第1軸受部と駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法と、第2軸受部と駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法との合計よりもラジアル方向での寸法が大きな隙間(δp)が形成されている。
【0012】
請求項1、3、4、5、6、14、15に記載の発明によれば、固定スクロール部材と軸受部材との2部品が、複数の第1ボルトによって締結されている。固定スクロール部材と、軸受部材と、ハウジングとの3部品が、複数の第2ボルトによって共締めされている。
【0013】
このため、圧縮機の構成部品の組付けにおいて、圧縮機構部をハウジングに挿入する前に、複数の第1ボルトを用いて、圧縮機構部の芯出し組付けを行うことができる。芯出し組付けがされた圧縮機構部をハウジングに挿入した後に、複数の第2ボルトを用いて、固定スクロール部材と軸受部材とを固定すると同時に、圧縮機構部をハウジングに固定することができる。よって、複数の締結ボルトの全部を共締め用のボルトとした場合の圧縮機の構成部品の組付け性の悪化を回避することができる。
【0014】
さらに、請求項1、3、4、5、6、14、15に記載の発明によれば、複数の第2ボルトは、固定スクロール部材と軸受部材とを締結するボルトと、圧縮機構部とハウジングとを締結するボルトとを兼ねている。このため、固定スクロール部材と軸受部材とを締結する圧縮機構用ボルトと、圧縮機構部とハウジングとを締結するハウジング用ボルトとの2種類のボルトを用いる場合と比較して、ボルトの総本数を減らすことができる。
【0015】
この結果、部品点数を減らすことができる。このため、2種類のボルトを用いる場合と比較して、圧縮機の製造コストを削減することができる。さらに、ボルトの総本数を減らすことで、2種類のボルトを用いる場合に生じる吸入通路の縮小を回避することができる。さらに、自転防止機構の設置スペースの縮小による自転防止機構の剛性の低下を回避することができる。さらに、ボルトの総本数を減らすことで、ボルトの配置スペースの増大を抑制することができる。このため、圧縮機全体の体格の増大を抑制することができる。これにより、小型化された圧縮機においては、圧縮機の小型化を維持することができ、商品競争力を維持することができる。
【0016】
なお、圧縮機構部の構成部品同士の固定に必要なボルト軸力と、圧縮機構部とハウジングとの固定に必要なボルト軸力とを比較すると、圧縮機構部の固定に必要なボルト軸力の方が大きいのが一般的である。このため、圧縮機構部の固定スクロール部材と軸受部材とを締結固定する複数のボルトの一部を、圧縮機構部とハウジングとの固定に使用しても、圧縮機構部とハウジングとの固定に必要な軸力が得られる。
【0017】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態における冷凍サイクル装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態における圧縮機の断面図である。
【
図3】
図2中の固定スクロール部材の一方側端面の正面図である。
【
図4A】第1実施形態における圧縮機の断面図であって、圧縮機構部とハウジングとの間に作用する作用荷重を示す図である。
【
図5A】第1実施形態における圧縮機の断面図であって、圧縮機構部とハウジングとの間に作用する作用荷重を示す図である。
【
図6】複数の第2ボルトの配置と作用荷重とを示す図である。
【
図7A】第2ボルトの本数が3本の場合の第2ボルトの配置角度に対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
【
図7B】
図7Aにおいてα値が最大となるときの3本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図7C】
図7Aにおいてα値が最大となるときの3本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図8A】第2ボルトの本数が5本の場合の第2ボルトの配置角度に対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
【
図8B】
図8Aにおいてα値が最大となるときの5本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図8C】
図8Aにおいてα値が最大となるときの5本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図9A】第2ボルトの本数が4本の場合の第2ボルトの配置角度に対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
【
図9B】
図9Aにおいてα値が最大となるときの4本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図9C】
図9Aにおいてα値が最大となるときの4本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図10A】第2ボルトの本数が6本の場合の第2ボルトの配置角度に対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
【
図10B】
図10Aにおいてα値が最大となるときの6本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図10C】
図10Aにおいてα値が最大となるときの6本の第2ボルトの配置を示す図である。
【
図11】第3実施形態における圧縮機の断面図である。
【
図12】第4実施形態における圧縮機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態の圧縮機は、車載用圧縮機である。圧縮機は、車両用空調装置を構成する冷凍サイクル装置に用いられる。
【0021】
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機10、圧縮機10から吐出された冷媒を放熱させる放熱器2、放熱器2から流出した冷媒を減圧させる減圧機器3、減圧機器3で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器4を含んでいる。冷凍サイクル装置1に用いられる冷媒の主成分は、二酸化炭素である。冷媒には、圧縮機10の内部の各摺動部位を潤滑する潤滑油が混合されている。潤滑油の一部は、冷媒とともにサイクル内を循環する。なお、冷媒は、フロン系冷媒であってもよい。
【0022】
以下、
図2を参照して圧縮機10の詳細について説明する。
図2は、圧縮機10の駆動軸14の軸線CLに沿って切断した断面を示す軸方向断面図である。なお、
図2中の上下を示す矢印は、圧縮機10を冷凍サイクル装置1に搭載した状態における上下方向DRvを示している。
図2中の矢印方向DRaは、駆動軸14の軸線方向DRaを示している。
【0023】
図2に示すように、圧縮機10は、ハウジング12と、駆動軸14と、電動機部20と、インバータ25と、スクロール型の圧縮機構部30とを備える。ハウジング12の内部に、駆動軸14と、電動機部20と、圧縮機構部30とが収容されている。圧縮機10は、電動圧縮機である。電動機部20を動力源として駆動軸14が回転する。当該駆動軸14の回転に伴って圧縮機構部30が駆動される。圧縮機10は、駆動軸14の軸線CLが略水平方向に延びるとともに、圧縮機構部30と電動機部20とが略水平方向に並んで配置される横置構造である。略水平方向は、重力方向に対して交差する方向である。
【0024】
ハウジング12は、圧縮機10の外殻を構成する。ハウジング12は、ハウジング本体部121と、第1蓋部122と、第2蓋部123とを有する。ハウジング本体部121、第1蓋部122および第2蓋部123は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されている。ハウジング本体部121は、駆動軸14の軸線方向DRaの一方側の開口部121aと軸線方向DRaの他方側の開口部121bとを有する筒状である。
【0025】
第1蓋部122は、ハウジング本体部121に対して軸線方向DRaの一方側の位置で、一方側の開口部121aを覆っている。第1蓋部122は、図示しない蓋部用ボルトによって、ハウジング本体部121に締結固定されている。ハウジング本体部121の軸線方向DRaの一方側の端部と第1蓋部122との間には、図示しないシール部材が介在している。
【0026】
第2蓋部123は、ハウジング本体部121に対して軸線方向DRaの他方側の位置で、他方側の開口部121bを覆っている。第2蓋部123は、図示しない蓋部用ボルトによって、ハウジング本体部121に締結固定されている。ハウジング本体部121の軸線方向DRaの他方側の端部と第2蓋部123との間には、図示しないシール部材が介在している。これらにより、ハウジング12は、密閉されている。
【0027】
電動機部20は、インバータ25からの給電により駆動される三相交流モータで構成されている。電動機部20は、ステータ21の内側にロータ22が配置されるインナーロータモータとして構成されている。
【0028】
ステータ21は、磁性材からなるステータコア211と、ステータコア211に巻き付けられたコイル212とを有する。ステータ21は、インバータ25から電力が供給されると、ロータ22を回転させる回転磁界を発生させる。
【0029】
ロータ22は、内側に駆動軸14が圧入等によって固定された円筒状の部材である。ロータ22の内部には、図示しない永久磁石が配置されている。また、ロータ22の側面には、旋回スクロール部材34などの偏心回転のアンバランスを相殺するためのバランスウェイト221、222が取り付けられている。
【0030】
インバータ25は、ステータ21に対して電力を供給する装置である。インバータ25は、ハウジング12の外側に対して取り付けられている。具体的には、インバータ25は、第2蓋部123に対して取り付けられている。
【0031】
このように構成される電動機部20は、インバータ25からステータ21に電力が供給されてステータ21の周囲に回転磁界が発生すると、ロータ22および駆動軸14が一体に回転する。
【0032】
なお、インバータ25と電動機部20とは、図示しない配線と、図示しない密封端子とを介して、電気的に接続されている。このため、ハウジング12は、密閉構造である。ここで、駆動軸14が大気に露出している開放型の圧縮機では、駆動軸14の露出部からの冷媒漏れの防止のために、シャフトシールがされている。しかしながら、シャフトシール部からの冷媒のスローリークによって、圧縮機10の運転中に冷媒不足運転に陥る可能性がある。本実施形態によれば、密閉構造のハウジング12の内部に電動機部20が収容されている。このため、運転中の冷媒不足を回避することができる。
【0033】
また、本実施形態の圧縮機10では、インバータ25によりエンジンの回転数に関係なく、圧縮機10の回転数を調整することができる。このため、冷房能力または暖房能力の調整が容易である。
【0034】
ハウジング12には、蒸発器4を通過した低圧冷媒を吸い込む吸入口125が形成されている。具体的には、吸入口125は、ハウジング本体部121のうち電動機部20よりも軸線方向DRaの他方側に形成されている。吸入口125には、蒸発器4に連なる図示しない吸入配管が接続されている。
【0035】
蒸発器4を通過した低圧冷媒は、吸入口125から電動機部20が配置されたハウジング12の内部に吸い込まれる。ハウジング12の内部に吸い込まれた低圧冷媒は、圧縮機構部30の図示しない吸入口より、圧縮機構部30の内部に吸入される。このため、電動機部20が配置されたハウジング12の内部は、ほぼ吸入圧力、すなわち、低圧、低温雰囲気となっている。これにより、電動機部20およびインバータ25を冷却することができる。よって、電動駆動部に対し、効率向上および信頼性向上を図ることができる。
【0036】
また、ハウジング12の第1蓋部122には、圧縮機構部30で圧縮された高圧冷媒を吐出する吐出口126が形成されている。吐出口126は、ハウジング12のうち圧縮機構部30に対して軸線方向DRaの一方側に形成されている。すなわち、吐出口126は、第1蓋部122に形成されている。
【0037】
駆動軸14は、ロータ22よりも軸線方向DRaの一方側に位置する一方側部分141を有する。圧縮機構部30は、電動機部20に対して駆動軸14の軸線方向DRaの一方側に位置する。一方側部分141は、圧縮機構部30と係合している。駆動軸14は、電動機部20にて発生する駆動力を圧縮機構部30に伝達する。一方側部分141は、後述する圧縮機構部30の主軸受部材36が有する主軸受部361aによって回転可能に支持されている。
【0038】
一方側部分141は、軸線方向DRaの一方側の端部に、駆動軸14の回転中心から偏芯した偏芯軸部142を有する。なお、偏芯は、偏心と同義である。偏芯軸部142は、後述する旋回スクロール部材34の旋回運動のためのクランク機構を構成している。偏心軸部142は、後述する旋回スクロール部材34が有する偏芯軸受部342aによって回転可能に支持されている。
【0039】
偏芯軸部142は、駆動軸14の本体部と一体である。本実施形態では、クランク機構として、偏芯量が一定である、いわゆる固定クランク機構が採用されている。なお、クランク機構には固定クランク機構以外に、偏芯軸部を別体として組み合わせることにより、偏芯量を可変とする、いわゆる従動クランク機構がある。しかしながら、従動クランク機構は、固定クランク機構と比較して2部品であるがゆえに嵌合部の隙間等の影響により、傾きに対する剛性が低い。特に、滑り軸受けとの組合せにおいては、軸受部の相対傾きが大きくなり、軸受の信頼性を大きく悪化させる場合がある。よって、上記のごとく、本実施形態では、固定クランク機構が採用されている。
【0040】
また、一方側部分141は、上下方向DRvに拡がるフランジ部143を有する。フランジ部143には、駆動軸14の偏芯回転を抑えるためのバランスウェイト143aが設けられている。
【0041】
駆動軸14は、ロータ22よりも軸線方向DRaの他方側に位置する他方側部分144を有する。他方側部分144は、副軸受部材16が有する副軸受部16aによって回転可能に支持されている。副軸受部16aは、第2軸受部に相当する。
【0042】
副軸受部材16は、台座17を介して、ハウジング本体部121に固定されている。台座17は、副軸受部材16とハウジング本体部121との間に介在する介在部材である。台座17は、上下方向DRvに拡がる環状の板部171と、板部171の外周部から軸線方向DRaの一方側に延びる筒部172とを有している。台座17は、筒部172がハウジング本体部121に当接した状態で固定されている。台座17には、吸入口125から導入された冷媒を電動機部20側に流すための貫通穴173が形成されている。
【0043】
副軸受部材16は、筒状の軸受形成部161と、軸受形成部161の端部から上下方向DRvに拡がる連結部162とを有する。軸受形成部161は、軸受形成部161の内周側に副軸受部16aを形成する。連結部162は、台座17の板部171に対して副軸受ボルト18によって締結固定されている。
【0044】
副軸受部材16および台座17は、鉄鋼材料またはアルミニウム合金で構成されている。副軸受部16aは、滑り軸受用の材料で構成されている。
【0045】
圧縮機構部30は、固定スクロール部材32と、旋回スクロール部材34と、主軸受部材36とを有する。固定スクロール部材32は、ハウジング12に対して固定されている。旋回スクロール部材34は、駆動軸14の駆動力により旋回運動する際に、固定スクロール部材32と噛み合うことで冷媒を圧縮する。旋回スクロール部材34は、軸線方向DRaで固定スクロール部材32と並ぶように配置されている。旋回スクロール部材34は、固定スクロール部材32に対して軸線方向DRaの他方側に配置されている。固定スクロール部材32および旋回スクロール部材34は、鉄鋼材料またはアルミニウム合金で構成されている。
【0046】
旋回スクロール部材34には、図示しないオルダムリングが連結されている。オルダムリングは、偏芯軸部142の周りを自転することを防止する自転防止機構を構成する。旋回スクロール部材34は、駆動軸14が回転すると、偏芯軸部142の周りを自転することなく、駆動軸14の軸線CLを公転中心とする公転運動を行う。換言すると。旋回スクロール部材34は、駆動軸14が回転すると、駆動軸14の軸線CLを中心とする旋回運動を行う。
【0047】
旋回スクロール部材34は、円盤状に形成された旋回基板部341を有する。旋回基板部341は、その略中心部に円筒状の軸受形成部342を有する。軸受形成部342は、軸受形成部342の内周側に、偏芯軸部142を回転可能に支持する偏芯軸受部342aを形成している。偏芯軸受部342aは、旋回基板部341とは別体であり、滑り軸受材料で構成されている。
【0048】
固定スクロール部材32は、円盤状に形成された固定基板部321を有する。固定スクロール部材32には、固定基板部321から旋回スクロール部材34側に向かって突き出る渦巻き状の固定歯部322が形成されている。一方、旋回スクロール部材34には、旋回基板部341から固定スクロール部材32側に向かって突き出る渦巻き状の旋回歯部343が形成されている。
【0049】
固定歯部322と旋回歯部343とが噛み合って複数箇所で接触することによって、三日月状の作動室31が複数箇所形成される。なお、
図2では、図示の都合上、複数個の作動室31のうち1つの作動室にだけ符号を付している。
【0050】
作動室31は、旋回スクロール部材34が旋回することによって外周側から中心側へ容積を減少させながら移動する。図示しないが、作動室31には、主軸受部材36等に形成された冷媒供給通路を通じて、吸入口125からハウジング12の内部に吸い込まれた冷媒が供給される。作動室31内の冷媒は、作動室31の容積が減少することによって圧縮される。
【0051】
固定基板部321の中心部には、作動室31で圧縮された冷媒を吐出する吐出穴323が形成されている。固定基板部321のうち軸線方向DRaの一方側の一方側端面321aには、作動室31への冷媒の逆流を防止する逆止弁をなす図示しないリード弁と、リード弁の最大開度を規制するストッパ324とが設けられている。なお、リード弁およびストッパ324は、固定基板部321に対して固定ボルト325によって締結固定されている。
【0052】
主軸受部材36は、主軸受部361aを含む軸受部材である。主軸受部361aは、第1軸受部に相当する。主軸受部材36は、固定スクロール部材32との間に空間部を形成している。この空間部に、偏芯軸部142、フランジ部143、バランスウェイト143a、旋回スクロール部材34が収容されている。
【0053】
具体的には、主軸受部材36は、軸受形成部361と、軸受固定部362と、連結部363とを含む。軸受形成部361、軸受固定部362および連結部363は、継ぎ目無く連続している。軸受形成部361は、筒状である。軸受形成部361は、軸受形成部361の内周側に主軸受部361aを形成している。
【0054】
軸受固定部362は、主軸受部材36のうち固定スクロール部材32に固定される部分である。軸受固定部362は、旋回スクロール部材34よりも駆動軸14の径方向外側に位置する。軸受固定部362には、主軸受部材36のうち外径が最大となる主軸受部材36の最外周面が含まれる。軸受固定部362の軸線方向DRaの一方側の一方側端面362aが、固定スクロール部材32に当接する。
【0055】
連結部363は、軸受形成部361と、軸受固定部362とを連結している。軸受固定部362は、軸受形成部361よりも駆動軸14の径方向外側に位置する。連結部363は、軸受形成部361から駆動軸14の径方向外側に向かって延伸している。
【0056】
主軸受部材36は、軸線方向DRaの他方側から一方側に向かって内径および外径が階段状に拡大する円筒形状である。主軸受部材36のうち内径が最小である内径最小部が軸受形成部361を構成している。主軸受部材36のうち外径が最大である外径最大部が軸受固定部362を構成している。
【0057】
軸受形成部361、軸受固定部362および連結部363は、鉄鋼材料またはアルミニウム合金で構成されている。主軸受部361aは、滑り軸受用の材料で構成されている。本実施形態では、主軸受部361aは、円筒形状の鉄鋼部材、および、その内周面にコーティングされた樹脂層等によって構成されている。なお、軸受形成部361、軸受固定部362および連結部363は、他の材料で構成されていてもよい。主軸受部361aは、軸受形成部361と同じ材料で構成されていてもよい。
【0058】
主軸受部材36と旋回スクロール部材34との間には、円環状に構成された2枚のスラストプレート364、344が配置されている。2枚のスラストプレート364、344のうち主軸受部材36側のスラストプレート364は、主軸受部材36に対して固定されている。また、旋回スクロール部材34側のスラストプレート344は、旋回スクロール部材34と一体的に回転するように、旋回スクロール部材34に対して固定されている。このため、2枚のスラストプレート364、344は、相対的に旋回運動を行なって摺動する。
【0059】
ハウジング本体部121は、圧縮機構部30を固定するための突出部60を有する。突出部60は、ハウジング本体部121の内周面121cに設けられている。突出部60は、ハウジング本体部121から駆動軸14側に向かって突出している。突出部60は、内周面121cの円周方向の全域にわたって配置されている。突出部60の軸線方向DRaの一方側の一方側端面60aは、主軸受部材36の軸受固定部362の他方側の他方側端面362bに直に当接している。
【0060】
なお、突出部60の一方側端面60aは、他方側端面362bに対して介在物を介して当接していてもよい。したがって、本実施形態では、一方側端面60aが、軸受固定部のうち軸線方向の他方側の端面に対して直にまたは介在物を介して当接する当接面に相当する。突出部60が、当接面が形成された当接面形成部に相当する。
【0061】
圧縮機10は、圧縮機構部30の構成部品を締結する複数の締結ボルト70を備える。複数の締結ボルト70は、主軸受部材36と固定スクロール部材32とを締結固定して圧縮機構部30を形成する。複数の締結ボルト70は、複数の第1ボルト71と、複数の第2ボルト72とを含む。複数の第2ボルト72の方が、複数の第1ボルト71よりも長い。
【0062】
複数の第1ボルト71は、固定スクロール部材32と、主軸受部材36と、ハウジング12との3部品32、36、12のうち固定スクロール部材32と主軸受部材36との2部品のみを締結している。複数の第2ボルト72は、ハウジング12の突出部60と固定スクロール部材32との間に主軸受部材36の軸受固定部362が挟持された態で、上記の3部品32、36、12を共締めしている。このように、複数の締結ボルト70は、長さが異なる2種類のボルトにより構成されている。
【0063】
第1ボルト71および第2ボルト72は、それぞれ、雄ねじ部71a、72aと頭部71b、72bとを有する。雄ねじ部71a、72aは、雄ねじが形成されたねじ部である。
【0064】
固定スクロール部材32には、複数の第1ボルト71が挿入されるボルト挿入穴326が形成されている。軸受固定部362には、複数の第1ボルト71の雄ねじ部71aに対応する複数の雌ねじ部365が形成されている。
【0065】
また、固定スクロール部材32には、複数の第2ボルト72が挿入されるボルト挿入穴327が形成されている。軸受固定部362には、複数の第2ボルト72が挿入されるボルト挿入穴366が形成されている。突出部60には、複数の第2ボルト72の雄ねじ部72aに対応する複数の雌ねじ部61が形成されている。雌ねじ部365、61は、内面に雌ねじが切られた穴部である。
【0066】
本実施形態の圧縮機10では、圧縮機構部30が冷媒を圧縮する際、作動室31の内圧が上昇する。これにより、旋回スクロール部材34にはラジアル方向荷重およびスラスト方向荷重が作用する。
【0067】
このラジアル方向荷重は、偏芯軸受部342aに係合している偏芯軸部142に作用する。偏芯軸部142に作用したラジアル方向荷重は、主軸受部361aを介して、主軸受部材36に支持される。主軸受部材36に作用したラジアル方向荷重は、複数の締結ボルト70により支持される。
【0068】
また、偏芯軸部142に作用したラジアル方向荷重は、副軸受部16aを介して、副軸受部材16にも支持される。副軸受部材16に作用したラジアル方向荷重は、副軸受ボルト18の軸力により支持される。さらに、副軸受部材16に作用したラジアル方向荷重は、台座17を介して、ハウジング12に支持される。
【0069】
また、スラスト方向荷重は、2枚のスラストプレート364、344に作用する。2枚のスラストプレート364、344に作用したスラスト方向荷重は、主軸受部材36により支持される。さらに、この荷重は、複数の締結ボルト70により支持される。
【0070】
また、本実施形態の圧縮機10では、偏芯軸部142、主軸受部361aおよび副軸受部16aは、滑り軸受を構成している。したがって、駆動軸14に作用するラジアル荷重の支持は、滑り軸受により行っている。滑り軸受けを使用することにより、CO2冷媒を使用する場合のように、高差圧に伴う高荷重が軸受に作用する場合においても、転がり軸受と比較して、摩耗劣化に対する信頼性が向上し、長寿命化を図ることが可能である。
【0071】
また、スクロール型の圧縮機では、駆動軸14からの駆動力の作用が片持ち構造である。このため、本実施形態の圧縮機10は、副軸受部16aを有することで、信頼性に優れている。また、副軸受部16aは、主軸受部361aに対し、距離を離した方が傾きの支持として、より効果的である。そこで、副軸受部16aを主軸受部361aから離して配置する際に、電動機部20を主軸受部361aと副軸受部16aとの間に配置することにより、ハウジング12の内部のスペースを有効に利用することができる。
【0072】
第1蓋部122の内部には、高圧マフラ室51と、オイル分離室52と、高圧貯油室53とが形成されている。高圧マフラ室51は、吐出穴323と連通している。高圧マフラ室51は、吐出穴323から吐出された冷媒の吐出脈動を軽減するための空間部である。オイル分離室52は、高圧マフラ室51と連通している。オイル分離室52は、高圧マフラ室51から流入した高圧冷媒から潤滑オイルを分離するための空間部である。オイル分離室52には、オイル分離室52に流入した高圧冷媒から潤滑オイルを分離するオイル分離器54が収容されている。オイル分離器54は、パイプ状である。オイル分離器54は、吐出口126に圧入等によって固定されている。高圧貯油室53は、オイル分離器54により分離された潤滑オイルを貯留する空間部である。
【0073】
このため、吐出穴323から吐出された高圧冷媒は、高圧マフラ室51を介して、オイル分離室52に流入する。オイル分離室52に高圧冷媒が流入すると、オイル分離器54によって高圧冷媒に含まれる冷媒と潤滑オイルとが分離される。オイル分離器54によって分離された高圧冷媒は、オイル分離器54の内側の通路を介して吐出口126から放熱器2に向けて吐出される。一方、オイル分離器54によって分離された潤滑オイルは、自重によって下方に落下し、高圧貯油室53に貯留される。
【0074】
駆動軸14の内部には、各軸受部16a、342a、361aに潤滑オイルを供給するためのオイル供給路145が形成されている。オイル供給路145は、固定スクロール部材32および旋回スクロール部材34に形成された図示しないオイル流路を介して、高圧貯油室53に通じている。これにより、高圧貯油室53に貯留された潤滑オイルが、オイル供給路145から各軸受部16a、342a、361aに供給される。各軸受部16a、342a、361aは、内部強制潤滑されている。
【0075】
次に、圧縮機10の構成部品の組付けについて説明する。この組付けは、作業員が機械を操作することによって行われる。
【0076】
まず、圧縮機構部30の芯出し組付けが行われる。この芯出し組付けでは、駆動軸14と、主軸受部材36と、旋回スクロール部材34と、固定スクロール部材32とが組み合わされた状態で、主軸受部材36と固定スクロール部材32とが複数の第1ボルト71によって仮組みされる。その後、主軸受部材36と固定スクロール部材32との芯合わせを行なうことにより、旋回スクロール部材34と固定スクロール部材32との芯合わせが行われる。
【0077】
ここで、本実施形態の圧縮機構部30は、旋回スクロール部材34の旋回運動のためのクランク機構として、固定クランク機構を採用している。固定クランク機構では、いわゆる従動クランク機構のような、旋回スクロール部材34の旋回半径を調整する機能が無い。このため、固定歯部322と旋回歯部343との相対位置を高い精度で決める必要がある。それを個々の部品の加工精度で実現しようとすると、極めて高精度の機械加工が必要となり、量産性に乏しく、コストも高くなる。そこで、本実施形態では、圧縮機構部30の組付けにおいて、1台ごとに芯合せをしてボルト締結をする、いわゆる芯出し組付けを行なっている。
【0078】
圧縮機構部30の芯出し組付け後に、圧縮機構部30のハウジング本体部121への組付けが行われる。圧縮機構部30のハウジング本体部121への組付けでは、ハウジング本体部121の軸線方向DRaの一方側から圧縮機構部30が、ハウジング本体部121の内部に挿入される。そして、圧縮機構部30の主軸受部材36の他方側端面362bが、ハウジング本体部121の突出部60に当接した状態とされる。この状態で、軸線方向DRaの一方側から他方側へ向かって複数の第2ボルト72が挿入される。すなわち、圧縮機構部30の電動機部20の無い側より電動機部20の有る側へ向かって複数の第2ボルト72が挿入される。圧縮機構部30は、複数の第2ボルト72によってハウジング12に締結固定される。
【0079】
本実施形態によれば、突出部60には、複数の雌ねじ部61が形成されている。このため、上記の通り、軸線方向DRaの一方側から他方側に向かって、複数の第2ボルト72を挿入することができる。よって、複数の第2ボルト72の組付けが容易である。
【0080】
圧縮機構部30のハウジング本体部121への組付け後に、第1蓋部122がハウジング本体部121に固定される。
【0081】
また、圧縮機構部30のハウジング本体部121への組付け前に、電動機部20のステータ21のハウジング本体部121への組み付けがあらかじめ行われる。このとき、ステータ21は、ハウジング本体部121の軸線方向DRaの他方側からハウジング本体部121の内部に挿入される。また、電動機部20のロータ22は、圧縮機構部30のハウジング本体部121への組付け前に、あらかじめ駆動軸14に、焼嵌め等の手段にて固定される。
【0082】
その後、副軸受部材16および台座17のハウジング本体部121への組付けが行われる。この組付けでは、台座17がハウジング本体部121へ圧入される。副軸受部材16が台座17に副軸受ボルト18によって締結固定される。このとき、駆動軸14の軸受に対する相対傾きを最小限とするために、副軸受部16aと主軸受部361aとが互いに芯合せされた状態となるように、副軸受部材16の位置が調整された状態で、締結固定される。
【0083】
その後、第2蓋部123がハウジング本体部121に固定される。第2蓋部123にインバータ25が組み付けられる。このようにして、圧縮機10が組み付けられる。
【0084】
次に、
図3を用いて、複数の締結ボルト70の配置について説明する。
図3は、固定スクロール部材32の一方側端面321aの正面図である。
図3では、複数の締結ボルト70のそれぞれの頭部の図示を省略している。
図3では、複数の第2ボルト72にハッチングを付している。
【0085】
複数の締結ボルト70の本数は8本である。その内訳は、複数の第1ボルト71が4本、複数の第2ボルト72が4本である。したがって、圧縮機構部30の構成部品を締結固定するボルトは8本である。圧縮機構部30とハウジング12とを締結固定するボルトは4本である。
【0086】
ここで、本実施形態と異なり、複数の圧縮機構部用ボルトと、複数のハウジング用ボルトとの2種類のボルトを配置する場合が考えられる。複数の圧縮機構部用ボルトは、圧縮機構部の構成部品同士を締結し、圧縮機構部とハウジングとを締結しないボルトである。複数のハウジング用ボルトは、圧縮機構部の構成部品同士を締結せず、圧縮機構部とハウジングとを締結するボルトである。この場合、8本の圧縮機構部用ボルトと、4本のハウジング用ボルトとの合計12本のボルトを配置する必要がある。
【0087】
これに対して、本実施形態によれば、4本のボルトを、圧縮機構部30の構成部品の締結固定と、圧縮機構部30とハウジング12との締結固定とに兼用している。このため、複数の締結ボルトを8本配置するだけで、2種類のボルトを12本配置する場合と同様の効果が得られている。
【0088】
また、兼用しているため、8本の圧縮機構部用ボルトを配置するスペースに加えて、4本のハウジング用ボルトを配置するスペースを新たにレイアウトする必要がない。これにより、図示していない冷媒吸入経路、オイル吸入、排出経路、自転防止機構等のスペースを削減する必要がない。よって、性能、信頼性を損なうことはない。
【0089】
なお、2種類のボルトを配置する場合では、ボルトの軸径を大きくして、ボルトの1本当たりの軸力を増大させることで、ボルトの総本数を減らすことが考えられる。しかし、この場合であっても、ボルトの軸径が大きくなることで、ボルトの配置スペースが増大する。このため、圧縮機構部の外径が大きくなり、ひいては圧縮機全体の体格が増大する。その結果、商品競争力が低下する。これに対して、本実施形態によれば、このような問題を回避することができる。
【0090】
また、本発明者は、本実施形態と異なり、複数の締結ボルト70の全部を、圧縮機構部30の構成部品とハウジング12とを共締めする共締めボルトにすることを検討した。しかし、この場合、圧縮機構部30をハウジング12に収容する前に、圧縮機構部40の芯出し組付けを行うことができなくなる。すなわち、圧縮機10の構成部品の組付け性が悪化する。
【0091】
これに対して、本実施形態によれば、上記の通り、圧縮機10の構成部品の組付けにおいて、圧縮機構部30をハウジング12に挿入する前に、複数の第1ボルト71を用いて、圧縮機構部30の芯出し組付けを行うことができる。芯出し組付けがされた圧縮機構部30をハウジング12に挿入した後に、複数の第2ボルト72を用いて、固定スクロール部材32と主軸受部材36とを固定すると同時に、圧縮機構部をハウジングに固定することができる。よって、複数の締結ボルト70の全部を共締め用のボルトとした場合の圧縮機10の構成部品の組付け性の悪化を回避することができる。
【0092】
また、
図3に示すように、複数の締結ボルト70のそれぞれは、固定スクロール部材32の中心O
Pを円の中心とする円周上に等間隔で配置されている。換言すると、複数の締結ボルト70のそれぞれは、固定スクロール部材32の中心O
Pを円の中心とする円周上に配置されている。このとき、複数の締結ボルト70のうち円周上で隣り合う2つのボルトのそれぞれの中心と、固定スクロール部材32の中心O
Pとを結ぶ2つの直線がなす角度が均等とされている。さらに、複数の第1ボルト71のそれぞれと、複数の第2ボルト72のそれぞれとは、交互に配置されている。
【0093】
なお、
図3に示される一方側端面321aは、圧縮機構部30のうち複数の第2ボルト72が配置された位置で軸線方向DRaに直交する仮想平面の一例に相当する。また、固定スクロール部材32の中心O
Pは、駆動軸14の軸線CLの位置である。また、複数の締結ボルト70のそれぞれは、円周に沿って配置されていれば、円周からずれて配置されていてもよい。また、「等間隔」は、その円における隣り合う2本のボルトの間の各円弧の最大値に対する各円弧の最小値の比が0.7~1.0の範囲内であることを意味する。このように、「等間隔」には、その円における隣り合う2本のボルトの間の各円弧の長さに違いが無い場合だけでなく、各円弧の長さに違いがある場合も含まれる。
【0094】
このように、複数の締結ボルト70は、円周に沿って略均等に配置されている。これにより、以下の効果が得られる。
【0095】
複数の締結ボルト70、すなわち、複数の第1ボルト71および複数の第2ボルト72の軸力は、圧縮機構部30の締結力を発生させる。複数の締結ボルト70は、円周に沿って略均等に配置されている。このため、圧縮機構部30の締結力は、圧縮機構部30の中心を円の中心とした円周上の各位置において、均等または均等に近い状態で発生している。これにより、ある特定の方向で、締結ボルト70の軸力が低いために、圧縮機構部30の構成部品間のずれが生じたり、圧縮機構部30が局所的に変形して、作動室31からの冷媒の洩れが増加したりするというリスクを最小限にすることができる。また、複数の締結ボルト70の軸力のバランスに偏りが生じ、弾性変形量にバラツキが生じ、圧縮機構部30の組付け状態において、傾きが生じることを防止することができる。
【0096】
また、複数の第2ボルト72の軸力は、圧縮機構部30とハウジング12との締結力を発生させる。ここで、複数の締結ボルト70は、円周に沿って略均等に配置されている。複数の第1ボルト71のそれぞれと、複数の第2ボルト72のそれぞれとは、交互に配置されている。これらの結果、複数の第2ボルト72のそれぞれも、円周に沿って略均等に配置されている。このため、圧縮機構部30とハウジング12との締結力においても、圧縮機構部30の中心を円の中心とした円周上の各位置において、均等または均等に近い状態で発生している。これにより、ある特定の方向で、複数の第2ボルト72の軸力が低いために、圧縮機構部30とハウジング12とにずれが生じたり、局所的に相互の部品が変形して、ハウジング12に対して圧縮機構部30が相対的に傾いたりすることを抑制することができる。その結果、駆動軸14と副軸受部16aが相対的に傾いて、滑り軸受部の偏当りによって生ずる局所面圧過大、油膜形成不良に起因する異常摩耗、凝着のリスクを低減することができる。逆に言えば、雄ねじ部72aの最小限の直径および複数の第2ボルト72の最小限の本数により、上記懸念点を回避することができる。
【0097】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の圧縮機10において、複数の第2ボルト72の本数とその最適な配置について説明する。
【0098】
まず、圧縮機構部30とハウジング12との間に作用する作用荷重およびモーメントについて、
図4A、4B、5A、5Bを用いて、作用荷重が重力である場合と、作用荷重が圧縮反力である場合との2つの場合のそれぞれを説明する。以下では、5本の第2ボルト72が、固定スクロール部材32の中心O
Pを円の中心とする円周上に、等間隔で配置される場合を例にとって説明する。
【0099】
(1)重力
図4Aに示すように、圧縮機10が横置構造の場合、圧縮機構部30の重心O
Gの位置に重力F
Gが作用する。この重力F
Gは、複数の第2ボルト72の軸力F
bにより発生した主軸受部材36の他方側端面362bと、突出部60の一方側端面60aとの間の摩擦力F
Gと釣り合っている。したがって、重力F
Gによって発生するモーメントMと、第2ボルト72の軸力F
bによって発生するモーメントMとのつり合い式は、下記の式(1)となる。
【0100】
【0101】
なお、式(1)中のL
Gは、突出部60の一方側端面60aと重心O
Gとの間の軸線方向DRaでの距離である。式(1)中のF
bは、1本の第2ボルト72の軸力である。式(1)中のR
bは、
図4Bに示す第2ボルト72の配置半径である。配置半径とは、固定スクロール部材32の中心O
Pを円の中心とし、複数の第2ボルト72のそれぞれの中心を通る円の半径である。式(1)中のθ
kは、
図4Bに示す第2ボルト72の配置角度である。第2ボルト72の配置角度は、第1基準方向に対して、第2ボルト72の中心と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ直線がなす角度である。第1基準方向は、固定スクロール部材32の一方側端面321a上において、圧縮機構部30の中心O
P、すなわち、固定スクロール部材32の中心O
Pを通り、荷重の作用方向に垂直な方向である。ここでの荷重は、重力F
Gである。また、式(1)中のkは、圧縮機構部30が傾くときに引っ張られる第2ボルト72の任意の番号である。式(1)中のnは、圧縮機構部30が傾くときに引っ張られる第2ボルト72の本数である。
図4Bの例では、固定スクロール部材32の上半分に配置される第2ボルト72-1、72-2が、圧縮機構部30が傾くときに引っ張られる。したがって、
図4Bの例では、nは2である。
【0102】
(2)圧縮反力
副軸受部16aには、圧縮反力としてラジアル方向荷重が作用する。その反作用として、駆動軸14は、副軸受部16aからラジアル方向荷重を受ける。この荷重の作用方向は、旋回スクロール部材34の旋回運動、すなわち、駆動軸14の回転に伴って変わる。このため、この荷重は、駆動軸14の1回転につき360°方向を変える、いわゆる回転荷重となっている。しかしながら、その荷重値は一定ではない。その荷重値は、スクロールの形状に伴う容積変化と、運転条件により1回転周期で変動する。このため、ある特定の方向でピーク荷重が発生している。その瞬間では、
図5Aに示すように、圧縮反力として副軸受部16aにラジアル方向ピーク荷重F
pが作用する。なお、
図5Aでは、駆動軸14が副軸受部16aから受けるラジアル方向ピーク荷重F
pを示している。このピーク荷重F
pは、複数の第2ボルト72の軸力F
bにより発生した主軸受部材36の他方側端面362bと、突出部60の一方側端面60aとの間の摩擦力F
pと釣り合っている。したがって、副軸受部16aに作用するラジアル方向ピーク荷重F
pによって発生するモーメントMと、第2ボルト72の軸力F
bによって発生するモーメントMとの釣り合いの式は、下記の式(2)となる。
【0103】
【0104】
なお、式(2)中のL
pは、主軸受部材36の他方側端面362bと副軸受部16aとの間の軸線方向DRaでの距離である。式(2)中のθ
kは、
図5Bに示す第2ボルト72の配置角度である。第2ボルト72の配置角度は、第1基準方向に対して、第2ボルト72の中心と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ直線がなす角度である。第1基準方向は、固定スクロール部材32の一方側端面321a上において、圧縮機構部30の中心O
Pを通り、荷重の作用方向に垂直な方向である。ここでの荷重は、ラジアル方向ピーク荷重F
pである。また、式(2)中のF
b、R
b、kおよびnは、式(1)と同じである。
図5Bの例では、固定スクロール部材32の下半分に配置される第2ボルト72-1、72-2、72-3が、圧縮機構部30が傾くときに引っ張られる。したがって、
図5Bの例では、nは3である。
【0105】
上記の(1)重力の場合、(2)圧縮反力の場合の両方におけるモーメントMは、下記の一般式(3)で表すことができる。したがって、圧縮機構部30とハウジング12との間に作用する作用荷重FによるモーメントMの釣り合いの一般式は、式(3)となる。
【0106】
【0107】
なお、式(3)中のFb、Rb、θk、kおよびnは、式(1)と同じである。αは、定数である。
【0108】
この式(3)より明らかなように、重力FGまたはラジアル方向ピーク荷重Fpの作用荷重Fに対して、複数の第2ボルト72の配置角度θkを、定数αが最大となるように決定することで、その作用荷重Fに対する支持力を最大にすることができる。すなわち、仕様面、運転条件面で必要な支持力に対し、第2ボルト72の雄ねじ部72aの直径、第2ボルト72の本数を最小限の値にすることができる。ひいては、圧縮機10の全体の体格および製造コストが最小限となるように、圧縮機10を設計することができる。
【0109】
ここで、モーメントMの釣り合いに寄与する第2ボルト72は、
図6の斜線部のごとく、
図6に示す作用荷重Fの作用方向に対し、引張り応力が作用する側の範囲、すなわち、0<θ
k<180°の範囲にある第2ボルト70である。圧縮応力が作用する側の範囲は、モーメントに寄与しないからである。
図6の例では、作用荷重の作用方向が上向きの場合を示している。
図6の例では、固定スクロール部材32の上半分に配置される3本の第2ボルト72-1、72-2、72-3である。前提として、主軸受部材36の軸受固定部362と、突出部60とは、弾性体である。また、軸受固定部362と突出部60との間で圧縮応力が作用する側の範囲は密着している。軸受固定部362と突出部60との間で引張応力が作用する範囲は、微小な変形を伴うものと仮定した。
【0110】
次に、第2ボルト72の本数と最適な配置角度について、
図7A~
図10Cを用いて説明する。以下では、複数の第2ボルト72は、固定スクロール部材32の中心O
Pを円の中心とする円周上に等間隔で配置される。
【0111】
(i)第2ボルト72の本数が2本以下の場合
図示しないが、第2ボルト72の本数が2本以下の場合、いずれか1本の第2ボルト72の配置角度が、θk=0°、もしくはθk=180°のとき、式(3)において、α=0となる。したがって、式(3)において、M=0となる。このため、第2ボルト72によって作用荷重により発生するモーメントを支持することができない。特に、圧縮反力FPは回転荷重であるため、駆動軸14が1回転する際に、必ず1回は上記の状態となる。したがって、第2ボルト72の本数は3本以上であることが、圧縮機構部30を安定して支持する上で必要である。
【0112】
(ii)第2ボルト72の本数が3本以上の奇数の場合
図7Aは、第2ボルト72の本数が3本の場合の第2ボルト72の配置角度θに対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
図7B、7Cは、
図7Aにおいてα値が最大となる瞬間の3本の第2ボルト72の配置を示している。
【0113】
図7Aの配置角度θは、
図7B、7Cに示すように、第1基準方向に対して、各第2ボルト72-1、72-2、72-3の中心Ob1、Ob2、Ob3と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ直線のうち、任意の1本の直線がなす角度である。この第1基準方向は、固定スクロール部材32の一方側端面321a上において、圧縮機構部30の中心O
Pを通り、荷重Fの作用方向に直交する方向である。
図7Aでは、3本の第2ボルト72のうち特定の1本の第2ボルト72の配置角度θが横軸に示されており、その時のα値が縦軸に示されている。
【0114】
図7Aから明らかなように、α値は60°の周期で変動している。α値がピーク値となるときの配置角度θは、30°、90°、150°等である。α値がピーク値となった瞬間の3本の第2ボルト72の配置は、
図7Bまたは
図7Cとなる。
図7Bにおいて、第2ボルト72-1の位置での配置角度θは30°であり、第2ボルト72-2の位置での配置角度θは150°であり、第2ボルト72-3の位置での配置角度θは270°である。
図7Cにおいて、第2ボルト72-1の位置での配置角度θは90°であり、第2ボルト72-2の位置での配置角度θは210°であり、第2ボルト72-3の位置での配置角度θは330°である。
【0115】
そして、
図7Bまたは
図7Cにおいて、圧縮機構部30または駆動軸14に作用する荷重Fの作用方向を、固定スクロール部材32の一方側端面321a上での圧縮機構部30の中心O
Pを起点として一方側端面321a上に示したときの方向を第2基準方向とする。一方側端面321a上において、3本の第2ボルト72のうち〇印を付した1本の第2ボルト72の中心と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ線分が、第2基準方向に対してなす角度を支持角度θ
Fとする。第2基準方向は、支持角度θ
Fを規定するための基準方向である。このとき、支持角度θ
Fは、0°または180°である。したがって、α値がピーク値となるように、支持角度θ
Fが0°または180°となる位置に、3本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0116】
また、
図7Aに示されるように、60°の1周期のうちその半分の30°の範囲であってピーク値となるときの角度を中心とする範囲では、α値が平均値以上となる。したがって、α値が平均値以上になるように、支持角度θ
Fが0°±15°または180°±15°の範囲内となる位置に、3本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。「0°±15°」中の「±」は、プラスマイナスである。
【0117】
図8Aは、
図7Aと同様に、第2ボルト72の本数が5本の場合の第2ボルト72の配置角度θに対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
図8B、8Cは、
図8Aにおいてα値が最大となる瞬間の5本の第2ボルト72の配置を示している。
【0118】
図8Aの配置角度θは、
図8B、8Cに示すように、第1基準方向に対して、各第2ボルト72-1、72-2、72-3、72-4、72-5の中心Ob1、Ob2、Ob3、Ob4、Ob5と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ直線のうち、任意の1本の直線がなす角度である。
図8Aでは、5本の第2ボルト72のうち特定の1本の第2ボルト72の配置角度θが横軸に示されている。
【0119】
図8Aから明らかなように、α値は36°の周期で変動している。α値がピーク値となるときの配置角度θは、18°、54°、90°等である。α値がピーク値となった瞬間の5本の第2ボルト72の配置は、
図8Bまたは
図8Cとなる。
【0120】
そして、
図8Bまたは
図8Cにおいて、5本の第2ボルト72のうち〇印を付した1本の第2ボルト72の中心と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ線分が、第2基準方向に対してなす支持角度θ
Fは、0°または180°である。第2基準方向の説明については、第2ボルト72の本数が3本の場合と同じである。したがって、α値がピーク値となるように、支持角度θ
Fが0°または180°となる位置に、5本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0121】
また、
図8Aに示されるように、36°の1周期のうちその半分の18°の範囲であってピーク値となるときの角度を中心とする範囲では、α値が平均値以上となる。したがって、α値が平均値以上になるように、支持角度θ
Fが0°±9°または180°±9°の範囲内となる位置に、5本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0122】
上記では、第2ボルト72の本数が3本、5本の場合を示したが、一般的には、本数がn本の奇数の場合は、支持角度θFが、0°±(45/n)°または180°±(45/n)°の範囲内となる位置に、n本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。これによれば、式(3)中のα値を平均値以上にすることができる。
【0123】
(iii)第2ボルト72の本数が4本以上の偶数の場合
図9Aは、
図7Aと同様に、第2ボルト72の本数が4本の場合の第2ボルト72の配置角度θに対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
図9B、9Cは、
図9Aにおいてα値が最大となる瞬間の4本の第2ボルト72の配置を示している。
【0124】
図9Aの配置角度θは、
図9B、9Cに示すように、第1基準方向に対して、各第2ボルト72-1、72-2、72-3、72-4の中心Ob1、Ob2、Ob3、Ob4と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ直線のうち、任意の1本の直線がなす角度である。
図9Aでは、4本の第2ボルト72のうち特定の1本の第2ボルト72の配置角度θが横軸に示されており、その時のα値が縦軸に示されている。
【0125】
図9Aから明らかなように、α値は90°の周期で変動している。α値がピーク値となるときの配置角度θは、45°、135°、225°等である。α値がピーク値となった瞬間の4本の第2ボルト72の配置は、
図9Bおよび
図9Cとなる。
図9B、9Cにおいて、第2ボルト72-1の位置での配置角度θは、45°である。
図9B、9Cにおいて、第2ボルト72-2の位置での配置角度θは、135°である。なお、
図9B、9Cの第2ボルト72の配置は同じである。
【0126】
そして、
図9B、9Cにおいて、4本の第2ボルト72のうち〇印を付した2本の第2ボルト72の二等分線Lbが、第2基準方向に対してなす支持角度θ
Lは、90°または270°である。二等分線Lbは、複数の第2ボルト72のうち隣り合う2つの第2ボルト72のそれぞれの中心と、圧縮機構部30の中心Opとを結ぶ線分がなす角度を2等分する線である。第2基準方向の説明については、第2ボルト72の本数が3本の場合と同じである。90°は、二等分線Lbが第2基準方向に対してなす角度のうち小さい方の角度である。270°は、二等分線Lbが第2基準方向に対してなす角度のうち大きい方の角度である。具体的には、
図9Bにおいて、隣り合う第2ボルト72-1と第2ボルト72-4の二等分線Lbが第2基準方向に対してなす支持角度θ
Lは、90°または270°である。
図9Cにおいても、隣り合う第2ボルト72-2と第2ボルト72-3の二等分線Lbが第2基準方向に対してなす支持角度θ
Lは、90°または270°である。支持角度θ
Lが90°のときと支持角度θ
Lが270°のときの4本の第2ボルト72の配置は、同じである。したがって、α値がピーク値となるように、支持角度θ
Lが90°となる位置に、4本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0127】
また、
図9Aに示されるように、90°の周期のうちその半分の45°の範囲であって、ピーク値を中心として含む範囲では、α値が平均値以上となる。したがって、支持角度θ
Lが、90°±22.5°の範囲内となる位置に、4本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0128】
図10Aは、
図7Aと同様に、第2ボルト72の本数が6本の場合の第2ボルト72の配置角度θに対する式(3)中のα値の変化を示すグラフである。
図10B、10Cは、
図10Aにおいてα値が最大となる瞬間の6本の第2ボルト72の配置を示している。
【0129】
図10Aの配置角度θは、
図10B、10Cに示すように、第1基準方向に対して、各第2ボルト72-1、72-2、72-3、72-4、72-5、72-6の中心Ob1、Ob2、Ob3、Ob4、Ob5、Ob6の中心と圧縮機構部30の中心O
Pとを結ぶ直線のうち、任意の1本の直線がなす角度である。
図10Aでは、6本の第2ボルト72のうち特定の1本の第2ボルト72の配置角度θが横軸に示されており、その時のα値が縦軸に示されている。
【0130】
図10Aから明らかなように、α値は60°の周期で変動している。α値がピーク値となるときの配置角度θは、30°、90°、150°等である。α値がピーク値となった瞬間の6本の第2ボルト72の配置は、
図10Bおよび
図10Cとなる。例えば、
図10B、10Cにおいて、第2ボルト72-1の位置での配置角度θは、30°である。
図10B、10Cにおいて、第2ボルト72-2の位置での配置角度θは、90°である。なお、
図10B、10Cの第2ボルト72の配置は同じである。
【0131】
そして、
図10B、10Cにおいて、6本の第2ボルト72のうち〇印を付した2本の第2ボルト72の二等分線Lbが、第2基準方向に対してなす支持角度θ
Lは、90°または270°である。二等分線Lbの説明については、第2ボルト72の本数が4本の場合と同じである。第2基準方向の説明については、第2ボルト72の本数が3本の場合と同じである。90°は、二等分線Lbが第2基準方向に対してなす角度のうち小さい方の角度である。270°は、二等分線Lbが第2基準方向に対してなす角度のうち大きい方の角度である。具体的には、
図10Bにおいて、隣り合う第2ボルト72-1と第2ボルト72-6の二等分線Lbが第2基準方向に対してなす支持角度θ
Lは、90°または270°である。
図10Cでは、隣り合う第2ボルト72-3と第2ボルト72-4の二等分線Lbが第2基準方向に対してなす支持角度θ
Lは、90°または270°である。支持角度θ
Lが90°のときと支持角度θ
Lが270°のときの6本の第2ボルト72の配置は、同じである。したがって、α値がピーク値となるように、支持角度θ
Lが90°となる位置に、6本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0132】
また、
図10Aに示されるように、60°の周期のうちその半分の30°の範囲であって、ピーク値を中心として含む範囲では、α値が平均値以上となる。したがって、支持角度θ
Lが、90°±15°の範囲内となる位置に、6本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。
【0133】
上記では、第2ボルト72の本数が4本、6本の場合を示した。しかしながら、一般的には、本数がn本の偶数の場合は、支持角度θLが、90°±(90/n)°の範囲内となる位置に、n本の第2ボルト72が配置されていることが好ましい。これによれば、α値を平均値以上にすることができる。
【0134】
なお、
図7B、7C、8B、8C、9B、9C、10B、10Cに示される一方側端面321aは、圧縮機構部30のうち複数の第2ボルト72が配置された位置で軸線方向DRaに直交する仮想平面の一例に相当する。
【0135】
また、上記の支持角度θF、θLの規定に用いられる「作用荷重F」は、圧縮機構部30に作用する重力FGまたは駆動軸14に作用するラジアル方向ピーク荷重Fpである。このピーク荷重Fpは、圧縮機10が使用される運転条件の中で、駆動軸14が副軸受部16aから受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重である。また、ピーク荷重Fpが作用する方向は、実験や圧縮機10の仕様からの算出等によって求められる。
【0136】
また、上記の(ii)(iii)では、作用荷重Fが重力FGまたはラジアル方向ピーク荷重FPの場合の複数の第2ボルト72の望ましい配置について説明した。しかしながら、作用荷重Fは、車両もしくは圧縮機の振動に伴って発生する慣性力でもよい。この慣性力の方向が明確になっている場合は、その方向に対し、上記(ii)(iii)のように複数の第2ボルト72を配置することで、α値を平均値以上にすることができる。
【0137】
(第3実施形態)
図11に示すように、本実施形態では、第1実施形態の複数の第2ボルト72の代わりに、複数の第2ボルト73が用いられている。複数の第2ボルト73は、主軸受部材36と第1蓋部122とが固定スクロール部材32を挟持した状態で、主軸受部材36と、固定スクロール部材32と、第1蓋部122との3部品を共締め固定している。以下、本実施形態の圧縮機10について具体的に説明する。
【0138】
第1蓋部122は、当接面122aが形成された当接面形成部122bを有している。当接面122aは、第1蓋部122のうち軸線方向DRaの他方側の面である。当接面122aは、固定スクロール部材32の一方側端面321aに当接する。なお、一方側端面321aと第1蓋部122との間にシール部材などの介在物が配置される場合、当接面122aは、介在物に当接する。当接面形成部122bは、第1蓋部122のうち外周側の部分に位置する。
【0139】
複数の第2ボルト73は、雄ねじ部73aと、頭部73bとを有する。当接面形成部122bには、複数の第2ボルト73が挿入されるボルト挿入穴122cが形成されている。固定スクロール部材32には、複数の第2ボルト73が挿入されるボルト挿入穴327が形成されている。軸受固定部362には、複数の第2ボルト73の雄ねじ部73aに対応する複数の雌ねじ部367が形成されている。
【0140】
本実施形態の圧縮機10の構成部品の組付けでは、第1実施形態と同様に、圧縮機構部30の芯出し組付けが行われる。その後、ハウジング本体部121の軸線方向DRaの一方側から、電動機部20および圧縮機構部30が、ハウジング本体部121の内部に挿入される。
【0141】
その後、第1蓋部122がハウジング本体部121の軸線方向DRaの一方側に配置される。このとき、第1蓋部122の当接面122aが固定スクロール部材32の一方側端面321aに当接する。この状態で、複数の第2ボルト73が、第1蓋部122に対する軸線方向DRaの一方側から、ボルト挿入穴122c、327および雌ねじ部367に挿入される。複数の第2ボルト73によって、軸受固定部362と当接面形成部122bとの間に固定スクロール部材32が挟持された状態で、主軸受部材36と、固定スクロール部材32と、第1蓋部122との3部品を共締めする。これにより、圧縮機構部30がハウジング12に固定される。
【0142】
本実施形態の圧縮機10の上記以外の構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態によれば、第1実施形態と共通の構成によって奏される効果が得られる。
【0143】
さらに、本実施形態によれば、第1実施形態の突出部60を設ける必要が無い。このため、ハウジング本体部121の形状を単純な形状にすることができる。これにより、ハウジング12の製造コストの低減を図ることができる。
【0144】
さらに、本実施形態によれば、圧縮機構部30と同様に、ハウジング本体部121に対する軸線方向DRaの一方側から、電動機部20をハウジング本体部121に組み付けることができる。これにより、圧縮機10の構成部品の組付け性を向上させることができる。
【0145】
なお、本実施形態においても、第2実施形態で説明した複数の締結ボルト70の望ましい本数および配置を適用することができる。これにより、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0146】
(第4実施形態)
図12に示すように、本実施形態では、ハウジング本体部121に、第1実施形態の突出部60の代わりに、段差面81を形成する段差部80が設けられている。
【0147】
ハウジング本体部121は、第1内周面82と、第2内周面83と、段差面81とを有する。第1内周面82は、ハウジング本体部121のうち電動機部20が配置されている部位でのハウジング本体部121の内周面である。第1内周面82は、円筒形状である。第2内周面83は、第1内周面82よりも軸線方向DRaの一方側に位置する。第2内周面83は、円筒形状である。第2内周面83は、ハウジング本体部121のうち圧縮機構部30が配置されている部位でのハウジング本体部121の内周面である。圧縮機構部30の外径は、電動機部20の外径よりも大きい。このため、第2内周面83の直径は、第1内周面82の直径よりも大きい。
【0148】
段差面81は、第1内周面82と第2内周面83とをつないでいる。段差面81は、軸線方向DRaに直交する方向に延びている。段差面81は、主軸受部材36の軸受固定部362の他方側の他方側端面362bに対して直に当接している。なお、段差面81は、他方側端面362bに対して介在物を介して当接していてもよい。したがって、本実施形態では、段差面81が、軸受固定部のうち軸線方向の他方側の端面に対して直にまたは介在物を介して当接する当接面に相当する。段差部80が、当接面が形成された当接面形成部に相当する。
【0149】
段差部80には、複数の第2ボルト72の雄ねじ部72aに対応する複数の雌ねじ部84が形成されている。
【0150】
ハウジング本体部121は、電動機部20が有る側が閉じているカップ状の形状である。すなわち、ハウジング本体部121は、筒部121dと、底部121eとを有する。筒部121dは、軸線方向DRaの一方側に開口部121aを有する。底部121eは、筒部121dよりも軸線方向DRaの他方側に位置する。ハウジング本体部121は、筒部121dと底部121eとが継ぎ目のない一体成形品として構成されている。
【0151】
底部121eには、筒状の軸受形成部161が設けられている。軸受形成部161は、軸受形成部161の内周側に副軸受部16aを形成する。軸受形成部161は、底部121eに対して一体に形成されている。すなわち、軸受形成部161と底部121eとは、継ぎ目のない一体成形品として構成されている。このため、本実施形態では、ハウジング本体部121に対する副軸受部16aの位置調整をすることができない。
【0152】
また、圧縮機構部30がハウジング本体部121に組み付けられた状態において、圧縮機構部30の外周面30aと、ハウジング本体部121の第2内周面83との間に、芯合せ用隙間δpが形成されている。この芯合せ用隙間δpのラジアル方向での寸法は、主軸受部361aと駆動軸14との間の図示しない隙間のラジアル方向での最大寸法と、副軸受部16aと駆動軸14との間の図示しない隙間のラジアル方向での最大寸法との合計よりも大きい。この理由は、圧縮機構部30を構成する各構成部品、主軸受部361a、副軸受部16aのそれぞれの同軸度のバラツキを積み上げた大きさよりも、芯合せ用隙間δpの寸法を大きくするためである。
【0153】
本実施形態の圧縮機10の構成部品の組付けでは、第1実施形態と同様に、圧縮機構部30の芯出し組付けが行われる。その後、ハウジング本体部121への組付けでは、ハウジング本体部121の軸線方向DRaの一方側から、電動機部20および圧縮機構部30が、ハウジング本体部121の内部に挿入される。
【0154】
そして、主軸受部材36の他方側端面362bが、ハウジング本体部121の段差面81に当接した状態とされる。この状態で、軸線方向DRaの一方側から他方側へ向かって複数の第2ボルト72が、ボルト挿入穴327、366および雌ねじ部84に挿入される。複数の第2ボルト72によって、段差部80と固定スクロール部材32との間に軸受固定部362が挟持された状態で、主軸受部材36と、固定スクロール部材32と、第1蓋部122との3部品を共締めする。これにより、圧縮機構部30がハウジング12に固定される。このとき、本実施形態では、主軸受部361aと副軸受部16aとの芯合わせを行いながら、複数の第2ボルト72によって、圧縮機構部30をハウジング12に締結する。
【0155】
圧縮機構部30のハウジング本体部121への組付け後に、第1蓋部122がハウジング本体部121に固定される。
【0156】
本実施形態の圧縮機10の上記以外の構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態によれば、第1実施形態と共通の構成によって奏される効果が得られる。
【0157】
さらに、本実施形態によれば、圧縮機構部30がハウジング本体部121に組み付けられた状態において、圧縮機構部30の外周面30aと、ハウジング本体部121の第2内周面83との間に、芯合せ用隙間δpが形成されている。このため、ハウジング本体部121に対して副軸受部16aの位置調整できなくても、圧縮機構部30をハウジング本体部121に組み付ける際に、圧縮機構部30の位置を軸線方向DRaに垂直な方向で調整することができる。これにより、主軸受部361aと副軸受部16aとの芯合わせを行うことができる。
【0158】
また、本実施形態によれば、ハウジング本体部121の底部121eの一部は、副軸受部16aを形成している。このため、第1実施形態の副軸受部材16および台座17を廃止することができる。このように、本実施形態によれば、芯合せ組付けを行なうことができ、かつ、部品点数を減らすことができる。このため、軸受信頼性を落とさずに、コスト低減が可能である。
【0159】
ところで、本実施形態と異なり、ハウジング本体部121の筒部121dと底部121eとが別体で構成されている場合、両者をボルトによって締結するためのボルト座等を構成するための肉厚を筒部121dと底部121eとに持たせる必要がある。
【0160】
これに対して、本実施形態によれば、ハウジング本体部121の筒部121dと底部121eとが、継ぎ目のない一体成形品として構成されている。このため、両者をボルトによって締結するためのボルト座等の肉が必要なく、比較的薄い肉厚で必要な剛性が得られる。よって、ハウジング12の重量を抑えながら耐圧性を維持することができる。
【0161】
(他の実施形態)
(1)上記の各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。例えば、第4実施形態において、第3実施形態のように、複数の第2ボルト73が、主軸受部材36と、固定スクロール部材32と、第1蓋部122との3部品を供締めしていてもよい。また、第1実施形態および第3実施形態において、第4実施形態のように、ハウジング本体部121が段差部80を有していてもよい。
【0162】
(2)上記各の実施形態では、複数の第1ボルト71の数と複数の第2ボルト72、73の数とが同じであるので、複数の締結ボルト70の全部において、複数の第1ボルト71のそれぞれと複数の第2ボルト72、73のそれぞれとが交互に配置されていた。しかしながら、複数の第1ボルト71の数と複数の第2ボルト72、73の数とが異なる場合、複数の締結ボルト70の一部において、第1ボルト71と第2ボルト72、73とが交互に配置されていなくてもよい。また、複数の締結ボルト70の全部において、第1ボルト71と第2ボルト72、73とが交互に配置されていなくてもよい。さらに、冷媒通路、オイル通路、自転防止機構等の他の機能部位のレイアウトの兼ね合いから、強度上許容される範囲内で、複数の締結ボルト70の配置が径方向、周方向に不均一であってもよい。
【0163】
(3)上記の各実施形態では、旋回スクロール部材の旋回運動のためのクランク機構として、固定クランク機構を採用していた。しかしながら、軸受部の相対傾きが信頼性面で許容される範囲内であれば、従動クランク機構を採用してもよい。
【0164】
(4)第1実施形態では、突出部60は、内周面121cの円周方向の全域にわたって配置されている。しかしながら、複数の突出部60のそれぞれが、内周面120cの円周方向で間をあけて、配置されていてもよい。
【0165】
(5)上記の各実施形態では、ハウジング12における吸入口125および吐出口126の位置を具体的に特定したが、これに限定されない。吸入口125および吐出口126は、ハウジング12のうち上述の実施形態で示した位置以外に設けられていてもよい。
【0166】
(6)上記の各実施形態では、上述の実施形態では、主軸受部361a、副軸受部16a、偏芯軸受部342aのそれぞれが滑り軸受で構成されていた。しかしながら、主軸受部361a、副軸受部16a、偏芯軸受部342aの少なくとも1つが、滑り軸受以外の軸受(例えば、玉軸受)で構成されていてもよい。
【0167】
(7)上記の各実施形態では、圧縮機10は、駆動軸14の軸心CLが略水平方向に延びるとともに、圧縮機構部30と電動機部20とが略水平方向に並んで配置される横置構造である。しかしながら、圧縮機10は、駆動軸14の軸心CLが略上下方向DRvに延びるとともに、圧縮機構部30と電動機部20とが略上下方向DRvに並んで配置される縦置構造であってもよい。
【0168】
(8)上記の各実施形態では、圧縮機10は、インバータ25がハウジング12に対して一体に取り付けられたインバータ一体型の圧縮機である。しかしながら、インタバータ25がハウジング12に対して別体で構成されていてもよい。
【0169】
(9)上記の各実施形態では、圧縮機10は、電動機部20を動力源として圧縮機構部30が駆動される電動圧縮機である。しかしながら、圧縮機10は、内燃機関を動力源として圧縮機構部30が駆動される構成であってもよい。
【0170】
(10)上記の各実施形態では、冷凍サイクル装置1に用いられる冷媒は、二酸化炭素であったが、フロン系冷媒であってもよい。
【0171】
(11)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0172】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、圧縮機は、スクロール型の圧縮機構部と、駆動軸と、ハウジングと、複数の締結ボルトとを備える。圧縮機構部は、固定スクロール部材と、旋回スクロール部材と、軸受部材とを有する。複数の締結ボルトは、複数の第1ボルトと、複数の第2ボルトとを含む。複数の第1ボルトは、固定スクロール部材と、軸受部材と、ハウジングとの3部品のうち固定スクロール部材と軸受部材との2部品のみを締結している。複数の第2ボルトは、その3部品を共締めしている。
【0173】
また、第2の観点によれば、軸受部材は、複数の締結ボルトによって固定スクロール部材に固定される軸受固定部を有する。ハウジングは、少なくとも軸線方向の一方側に開口部を有する筒状のハウジング本体部を有する。ハウジング本体部は、軸受固定部のうち軸線方向の他方側の端面に対して直にまたは介在物を介して当接する当接面が形成された当接面形成部を有する。複数の第2ボルトは、当接面形成部と固定スクロール部材との間に軸受固定部が挟持された状態で、3部品を共締めしている。
【0174】
このように、第1の観点の具体的な構成として、例えば、第2の観点の構成を採用することができる。
【0175】
また、第3の観点によれば、当接面形成部には、複数の第2ボルトが有する雄ねじ部に対応する複数の雌ねじ部が形成されている。これによれば、軸線方向の一方側から他方側に向かって、圧縮機構部をハウジング本体部に挿入する。その後、固定スクロール部材に対して、軸線方向の一方側から他方側に向かって、複数の第2ボルトを挿入することができる。よって、複数の第2ボルトの組付けが容易である。
【0176】
また、第4の観点によれば、当接面形成部は、ハウジング本体部から駆動軸側へ突出した突出部である。このように、第2の観点の具体的な構成として、例えば、第4の観点の構成を採用することができる。
【0177】
また、第5の観点によれば、ハウジング本体部は、第1内周面と、第1内周面よりも軸線方向の一方側に位置し、第1内周面よりも直径が大きい第2内周面と、第1内周面と第2内周面とをつなぐ段差面とを有する。当接面は、段差面である。当接面形成部は、ハウジング本体部のうち段差面を形成する段差部である。このように、第2の観点の具体的な構成として、例えば、第5の観点の構成を採用することができる。
【0178】
また、第6の観点によれば、軸受部材は、複数の締結ボルトによって固定スクロール部材に固定される軸受固定部を有する。ハウジングは、少なくとも軸線方向の一方側に開口部を有する筒状のハウジング本体部と、ハウジング本体部に対して軸線方向の一方側の位置で開口部を覆う蓋部とを有する。蓋部は、固定スクロール部材のうち軸線方向の一方側の一方側端面または一方側端面と蓋部との間の介在物に当接する当接面が形成された当接面形成部を有する。複数の第2ボルトは、軸受固定部と当接面形成部との間に固定スクロール部材が挟持された状態で、3部品を共締めしている。
【0179】
このように、第1の観点の具体的な構成として、例えば、第6の観点の構成を採用することができる。
【0180】
また、第7の観点によれば、軸受固定部には、複数の第2ボルトが有する雄ねじ部に対応する雌ねじ部が形成されている。これによれば、軸線方向の一方側から他方側に向かって、圧縮機構部をハウジング本体部に挿入した後に、ハウジング本体部の開口部をハウジング蓋部で覆う。その後、軸線方向の一方側から他方側に向かって、複数の第2ボルトを挿入することができる。よって、複数の第2ボルトの組付けが容易である。
【0181】
また、第8の観点によれば、圧縮機構部のうち複数の第2ボルトが配置された位置で軸線方向に直交する仮想平面上において、複数の第2ボルトのそれぞれは、駆動軸の軸線の位置を中心とする円の円周に沿って等間隔で配置されている。
【0182】
これによれば、複数の第2ボルトの締結力、すなわち、複数の第2ボルトの軸力を、圧縮機構部の中心を円の中心としたときの径方向での各方向において均等に発生させることができる。これにより、ある特定の方向で、複数の第2ボルトの軸力が低いことが原因で、圧縮機構部とハウジングとのずれが生じたり、局所的に相互の部品が変形して、ハウジングに対して圧縮機構部が相対的に傾いたりすることを抑制することができる。
【0183】
また、第9の観点によれば、複数の第2ボルトの本数は、3本以上である。これによれば、圧縮機構部を安定して支持することができる。
【0184】
また、第10の観点によれば、駆動軸の軸線は、重力方向に対して交差する方向へ延びている。複数の第2ボルトの本数は、奇数である。複数の第2ボルトの本数をn本とする。圧縮機構部に作用する重力の作用方向を、仮想平面上での前記円の中心を起点として仮想平面上に示したときの方向を基準方向とする。この仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち1本の第2ボルトの中心と前記円の中心とを結ぶ線分が、基準方向に対してなす角度を支持角度とする。このとき、支持角度が0°±(45/n)°は、180°±(45/n)°の範囲内である。
【0185】
これによれば、圧縮機構部に作用する重力に対する複数の第2ボルトの支持力を大きくすることができる。
【0186】
また、第11の観点によれば、軸受部は第1軸受部である。圧縮機は、ハウジングの内部で駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部を有する。第2軸受部は、第1軸受部に対する圧縮機構部側とは反対側に、第1軸受部に対して離れて配置されている。複数の第2ボルトの本数は、奇数である。複数の第2ボルトの本数をn本とする。圧縮機が使用される運転条件の中で、駆動軸が第2軸受部から受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重が作用する方向を、仮想平面上での前記円の中心を起点として仮想平面上に示したときの方向を基準方向とする。この仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち1本の第2ボルトの中心と前記円の中心とを結ぶ線分が、基準方向に対してなす角度を支持角度とする。このとき、支持角度は、0°±(45/n)°または180°±(45/n)°の範囲内である。
【0187】
これによれば、圧縮機構部に作用するラジアル方向のピーク荷重に対する複数の第2ボルトの支持力を大きくすることができる。
【0188】
また、第12の観点によれば、駆動軸の軸線は、重力方向に対して交差する方向へ延びている。複数の第2ボルトの本数は、偶数である。複数の第2ボルトの本数をn本とする。圧縮機構部に作用する重力の作用方向を、仮想平面上での前記円の中心を起点として示したときの方向を基準方向とする。仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち隣り合う2本の第2ボルトのそれぞれの中心と前記円の中心とを結ぶ線分がなす角度を二等分する二等分線が、基準方向に対してなす角度を支持角度(θL)とする。このとき、支持角度は、90°±(90/n)°の範囲内である。
【0189】
これによれば、圧縮機構部に作用する重力に対する複数の第2ボルトの支持力を大きくすることができる。
【0190】
また、第13の観点によれば、軸受部は第1軸受部である。圧縮機は、ハウジングの内部で駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部を有する。第2軸受部は、第1軸受部に対する圧縮機構部側とは反対側に、第1軸受部に対して離れて配置されている。複数の第2ボルトの本数は、偶数である。複数の第2ボルトの本数をn本とする。圧縮機が使用される運転条件の中で、駆動軸が第2軸受部から受けるラジアル方向の荷重が最大となる条件のときのピーク荷重が作用する方向を、仮想平面上での駆動軸の軸線の位置を起点として仮想平面上に示したときの方向を基準方向とする。仮想平面上において、複数の第2ボルトのうち隣り合う2本の第2ボルトのそれぞれの中心と駆動軸の軸線の位置とを結ぶ線分がなす角度を二等分する二等分線が、基準方向に対してなす角度を支持角度とする。このとき、支持角度は、90°±(90/n)°の範囲内である。
【0191】
これによれば、圧縮機構部に作用するラジアル方向のピーク荷重に対する複数の第2ボルトの支持力を大きくすることができる。
【0192】
また、第14の観点によれば、複数の締結ボルトの少なくとも一部は、円周に沿って、第1ボルトと第2ボルトとが交互に配置されている。これによれば、第1ボルトと第2ボルトとをバランスよく配置することができる。
【0193】
また、第15の観点によれば、ハウジング本体部は、軸線方向の一方側に開口部を有する筒部と、筒部よりも軸線方向の他方側に底部を有するとともに、筒部と底部とが継ぎ目のない一体成形品として構成されている。軸受部は第1軸受部である。底部の一部は、駆動軸を回転可能に支持する第2軸受部を形成する。圧縮機構部の外周面とハウジング本体部の内周面との間には、隙間が形成されている。この隙間のラジアル方向での寸法は、第1軸受部と駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法と、第2軸受部と駆動軸との間の隙間のラジアル方向での最大寸法との合計よりも大きい。
【0194】
これによれば、ハウジング本体部に対して第2軸受部の位置調整できなくても、圧縮機構部をハウジング本体部に組み付ける際に、圧縮機構部の位置を軸線方向に垂直な方向で調整することができる。これにより、第1軸受部と第2軸受部との芯合わせを行うことができる。
【符号の説明】
【0195】
12 ハウジング
14 駆動軸
30 圧縮機構部
32 固定スクロール部材32
34 旋回スクロール部材
36 軸受部材
70 複数の締結ボルト
71 複数の第1ボルト
72 複数の第2ボルト