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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】間仕切耐力壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20220809BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E04B2/56 645F
E04B2/56 604F
E04B2/56 622B
E04B2/56 622H
E04B2/56 605E
E04B1/94 L
E04B1/94 X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018148027
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023802
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】土方 和己
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 輝
(72)【発明者】
【氏名】浅井 福太郎
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185380(JP,A)
【文献】特開2012-052324(JP,A)
【文献】特開2018-080569(JP,A)
【文献】特開2008-031636(JP,A)
【文献】特開2011-111868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56 - 2/70
E04B 1/62 - 1/99
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井懐に横架される梁材と、
前記梁材を支持する2本の柱材と、
前記2本の柱材の間に架設される下枠材と、
前記梁材、前記2本の柱材の対向する面にそれぞれ取り付けられた縦取付下地材及び前記下枠材の上面に取り付けられた下枠付下地材により形成される方形枠内に配置される木質あらわし意匠を有する耐力面材と、
を備える室内に配置される間仕切耐力壁において、
前記梁材の下部には、前記天井懐を被覆して前記室内の天井を形成する天井材が設けられており、
前記耐力面材は、前記天井材より下方に配置されて、前記2本の柱材に固定され、前記天井材とは固定されておらず、
前記耐力面材と前記天井材との間に隙間と、
前記耐力面材と、前記2本の柱材、前記下枠材及び前記天井材との取り合い部に前記隙間、前記縦取付下地材、及び前記下枠付下地材を隠す化粧見切材と、を備え、
前記耐力面材の外形面は、前記2本の柱材から前記化粧見切材を介して2段内側に配置させたことを特徴とする間仕切耐力壁。
【請求項2】
前記耐力面材が、CLT(Cross Laminated Timber)パネルであることを特徴とする請求項1に記載の間仕切耐力壁。
【請求項3】
前記耐力面材が、複数の分割面材を上下方向に接合することにより形成され、前記分割面材の接合部には実加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の間仕切耐力壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質あらわし意匠を有しながら省令準耐火構造の建築物の室内に配置可能な間仕切耐力壁に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、風や地震等による水平荷重に抵抗するため、所定の必要壁量を満たすように耐力壁が配置される。そのため、室内に配置される間仕切壁についても耐力壁とする場合がある。このような間仕切耐力壁は、一般的に、天井懐に横架される梁材と、梁材を支持する2本の柱材とを軸組とし、軸組に対して水平耐力を主とした耐力要素として構造用面材や筋交いを設けることによって耐力壁として構成したものに、石こうボードで被覆を行い、その上にクロス等で仕上げを行うことによって、室内で耐力を負担する間仕切耐力壁として使用される。しかし、間仕切耐力壁は、室内に配置されるため、インテリアを構成する要素として意匠性が求められ、特に、木造建築物においては、木のぬくもりや質感等が重視されることも多い。そのため、耐力要素として木質あらわし意匠を有する面材を用いることによって、意匠性を向上させた間仕切耐力壁がこれまでに提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、独立行政法人住宅金融支援機構が、住宅等の建築物において省令準耐火構造というものを定めている。省令準耐火構造は、外部からの延焼防止、各室防火、他室への延焼遅延が考慮された構造となっており、木造建築物が省令準耐火構造として認証を受けた場合、通常の木造建築物よりも火災保険料が優遇されるため、省令準耐火構造に対応することが求められることも多い。省令準耐火構造では、室内の天井及び壁は、各室防火のための防火被覆として所定の厚さの石こうボードで被覆することが定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-111868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような木質あらわし意匠を有する耐力面材を用いた間仕切耐力壁は、面材の上部を梁材に対して固定する、または2本の柱材に横架された上枠材に対して固定する構造となっており、天井懐を被覆する天井材を貫通する形で間仕切耐力壁が設置される。従って、木質あらわし意匠を有する面材を用いた間仕切耐力壁を省令準耐火構造の建築物に設置しようとした場合にも、室内の天井を被覆する石こうボードを貫通してしまい、防火被覆が間仕切耐力壁によって破られる形になってしまっていた。以上のように、意匠性を優先し、木質あらわし意匠を有する耐力面材を用いた間仕切耐力壁とした場合、省令準耐火構造の建築物には設置できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、木質あらわし意匠を有する耐力面材を用いることで意匠性を向上させながら、省令準耐火構造の建築物の室内にも設置可能な間仕切耐力壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る間仕切耐力壁は、天井懐に横架される梁材と、梁材を支持する2本の柱材と、2本の柱材の間に架設される下枠材と、梁材、2本の柱材の対向する面にそれぞれ取り付けられた縦取付下地材及び下枠材の上面に取り付けられた下枠付下地材により形成される方形枠内に配置される木質あらわし意匠を有する耐力面材と、を備える室内に配置される間仕切耐力壁において、梁材の下部には、天井懐を被覆して室内の天井を形成する天井材が設けられており、耐力面材は、天井材より下方に配置されて、2本の柱材に固定され、天井材とは固定されておらず、耐力面材と天井材との間に隙間と、耐力面材と、2本の柱材、下枠材及び天井材との取り合い部に隙間、縦取付下地材、及び下枠付下地材を隠す化粧見切材と、を備え、耐力面材の外形面は、2本の柱材から化粧見切材を介して2段内側に配置させたことを特徴とする
【0008】
また、耐力面材が、CLT(Cross Laminated Timber)パネルであることを特徴とする。
【0009】
また、耐力面材が、複数の分割面材を上下方向に接合することにより形成され、分割面材の接合部には実加工が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
天井懐に横架される梁材と、梁材を支持する2本の柱材と、2本の柱材の間に架設される下枠材と、梁材、2本の柱材及び下枠材により形成される方形枠内に配置される木質あらわし意匠を有する耐力面材と、を備える室内に配置される間仕切耐力壁において、梁材の下部には、天井懐を被覆して室内の天井を形成する天井材が設けられており、耐力面材は、天井材より下方に配置されて、2本の柱材に固定され、天井材とは固定されないことを特徴とするため、室内の天井材を欠損させることなく木質あらわし意匠を有する耐力面材を用いた間仕切耐力壁の構成が可能となり、また、耐力面材は建築物にかかる鉛直方向の荷重の負担をしないため、耐力面材によって天井材に鉛直方向の力が加えられて天井材が破損することを防ぐことができる。従って、室内の天井が石こうボードで防火被覆されている省令準耐火構造の建築物にも適用することができる。
【0013】
また、耐力面材がCLTパネルであることを特徴とするので、耐力面材の表面には繊維方向が互いに略平行に揃えられた木質の意匠があらわれると共に、各層の繊維方向が互いに直交するように積層されているため、一般的な木材よりも剛性が高く、厚さの薄いCLTパネルを用いたとしても良好な壁倍率を得ることができる。また、国産の木材を使用したCLTパネルも製造されており、国産材の消費拡大にも貢献できる。
【0014】
また、耐力面材が、複数の分割面材を上下方向に接合することにより形成され、分割面材の接合部には実加工が施されていることを特徴とするため、容易に運搬することができ、また、施工時に分割面材を下から順番に取り付けることができて、上下方向の位置合わせ等を行うことなく容易に施工することができる。
【0015】
また、耐力面材と天井材との間に隙間が設けられていることを特徴とするため、耐力面材によって天井材に力が加えられて天井材が破損することを確実に防ぐことができる。
【0016】
また、耐力面材と、2本の柱材、下枠材及び天井材との取り合い部に化粧見切材を備え、耐力面材の外形面は、2本の柱材から化粧見切材を介して2段内側に配置されたことを特徴とするため、耐力面材の軽量感が得られ、意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る間仕切耐力壁が室内に設置された様子を示す概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る間仕切耐力壁の正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る間仕切耐力壁から化粧見切材を省略した一部省略正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る間仕切耐力壁から化粧見切材及び耐力面材を省略した一部省略正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る間仕切耐力壁の断面平面図または一部省略断面平面図である。(a)は図2のA-A矢視図である。(b)は図2のA-A矢視図から下枠材、第1下化粧見切材及び第2下化粧見切材を省略した図である。(c)は図3のC-C矢視図である。(d)は図4のD-D矢視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る間仕切耐力壁の断面側面図または一部省略断面側面図である。(a)は図2のB-B矢視図である。(b)は図4のE-E矢視図である。
図7】本発明の間仕切耐力壁が室内に配置される態様を示した概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る間仕切耐力壁の一実施形態について、以下、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る間仕切耐力壁1は、建築物の室内に配置される。間仕切耐力壁1は、室内を完全に2つの空間に隔てるための壁またはその一部として用いられるものではなく、室を隔てないパーティションとして用いられる。間仕切耐力壁1は、木質あらわし意匠を有する耐力面材5が室内に露出した形で設置され、また、耐力面材5と、室内の天井を形成する天井材91及び室内の床を形成する床材92と、耐力面材5の左右に立設する柱材3との取り合い部には、化粧見切材6が取り付けられている。耐力面材5の木質あらわし意匠及び化粧見切材6が、場合によっては柱材3と共に、室内における間仕切耐力壁1の外観を構成している。
【0019】
次に、間仕切耐力壁1の構成について説明する。図2に示すように、間仕切耐力壁1は、天井懐に横架される梁材2と、梁材2を支持する2本の柱材3と、2本の柱材3の間に架設される下枠材4と、により形成される方形枠の中に耐力面材5が配置されるが、梁材2の下部には、梁材2が横架される天井懐を被覆して、室内の天井を形成する天井材91が設けられており、下枠材4の上面には、室内の床を形成する床材92の端部が固定されている。従って、耐力面材5は、2本の柱材3と、天井材91及び床材92とによって形成される枠内に配置された形になっている。
【0020】
梁材2と2本の柱材3とは、建築物の構造躯体として構成されており、梁材2は建築物の1階の天井懐に横架され、柱材3は建築物の基礎または土台の上に立設される。ただし、それに限らず、梁材2が建築物の2階の天井懐に横架され、柱材3が2階の床下に横架される梁材2の上に立設される、というように建築物の2階以上に設けられていてもよい。
【0021】
図4に示すように、2本の柱材3の対向する面には、それぞれ縦取付下地材71が取り付けられ、下枠材4の上面には、下取付下地材75が取り付けられる。縦取付下地材71は、柱材3に当接して固定される当接部72と、当接部72から突出する突出部73とを有する断面L字状の長手状部材である。縦取付下地材71の長手方向の長さは、天井材91と床材92との距離よりも短く、縦取付下地材71は、天井材91と床材92との間で、柱材3の長手方向に沿って取付下地材固定用ビス82によって取り付けられる。下取付下地材75は、下枠材4の上面に当接して固定される当接部76と、当接部76から突出する突出部77とを有する断面L字状の長手状部材である。下取付下地材75の長手方向の長さは、下枠材4の長手方向の長さよりも短くなっており、下取付下地材75は、下枠材4の長手方向に沿って取付下地材固定用ビス82によって取り付けられる。図5(d)、図6(b)に示すように、縦取付下地材71及び下取付下地材75は、縦取付下地材71の突出部73の当接部72からの立ち上がり面と、下取付下地材75の突出部77の当接部76からの立ち上がり面とが略同一平面上の面となるように取り付けられる。面材固定用ビス81は、耐力壁としての粘り性能を向上させるために高靭性のものを用いることが好ましい。ビスでなく釘でもよい。
【0022】
耐力面材5は、下枠材4に取り付けられた下取付下地材75の当接部76の上に載置されて、2本の柱材3に取り付けられた縦取付下地材71の当接部72の間に、突起部73及び突起部77に当接するように嵌め込まれる。縦取付下地材71の当接部72の突起部73と反対側の端部から突起部73の立ち上がり面までの距離と、下取付下地材75の当接部76の突起部77と反対側の端部から突起部77の立ち上がり面までの距離とは、耐力面材5の厚さと略等しくなっており、図5(c)、図6(a)に示すように、耐力面材5を取り付けた時に、当接部72の突起部73と反対側の端部の柱材3からの立ち上がり面と、当接部76の突起部77と反対側の端部の下枠材4からの立ち上がり面と、耐力面材5の表面とは略同一平面上の面となるようになっている。また、図5(b)に示すように、耐力面材5が取り付けられたときに、耐力面材5が柱材3の幅方向略中心に位置するようになっている。
【0023】
耐力面材5は、木質あらわし意匠を有し、耐力を負担することができる面材である。木質あらわし意匠を有する面材とは、面材の素材として用いられる木材の持つ素材感や質感等が面材の表面にあらわれて意匠性を有する面材である。耐力面材5は、構造用面材として用いられながら、化粧材も兼ねており、仕上げ材等によって仕上げを施すことなく、間仕切耐力壁1の外観には、耐力面材5が有する木質あらわし意匠があらわれることになる。本実施形態では耐力面材5には、CLT(Cross Laminated Timber)パネルを用いている。CLTパネルは、直交集成板とも呼ばれ、ひき板の繊維方向を互いに略平行にして幅方向に並べた層を、各層の繊維方向が互いに直交するように積層接着した木造パネルである。従って、CLTパネルの表面には、繊維方向が略平行に整った木質の意匠があらわれるため、意匠性に優れると共に、各層の繊維方向が直交するように積層されていることから、一般的な木材パネルよりも剛性が高く、薄型のCLTパネルであっても耐力壁の耐力面材として良好な壁倍率が得られる。本実施形態の耐力面材5に用いるCLTパネルとしては、厚さ12mmの層を3層積層した36mmの薄型CLTパネルを好適に用いることができるが、これに限らず、図5(b)に示すように、耐力面材5の厚さは、柱材3の幅31よりも短いものであればよく、例えば、柱材3の幅31が120mmの時、耐力面材5としては、36mm~90mmの厚さのCLTパネルが好適に用いられる。また、板の層の積層数が奇数のCLTパネルを用いると、CLTパネルの両側の表面にあらわれる繊維方向が等しくなるため、間仕切耐力壁1を構成した時に、正面側と裏面側で同様の外観が得られる。また、本実施形態では耐力面材5を複数の分割面材を上下方向に接合することによって構成しており、接合部は水平方向の線状となるため、CLTパネルの表面の層の繊維方向が水平方向となるようにすると、接合部を目立ちにくくすることができる。
【0024】
図3及び図6に示すように、本実施形態では、耐力面材5は、下分割面材51、中分割面材52及び上分割面材53の3つの分割面材からなり、これらの分割面材を上下方向に接合することによって構成される。下分割面材51には下分割面材51及び中分割面材52の接合部にわたって突起状の雄実部55が設けられ、中分割面材52には雄実部55と嵌合する溝状の雌実部56が設けられており、雄実部55及び雌実部56が嵌合することによって下分割面材51と中分割面材52とが接合される。同様に、中分割面材52には中分割面材52及び上分割面材53の接合部にわたって突起状の雄実部57が設けられ、上分割面材53には雄実部57と嵌合する溝状の雌実部58が設けられており、雄実部57及び雌実部58が嵌合することによって中分割面材52と上分割面材53とが接合される。
【0025】
このように、耐力面材5を複数の分割面材で構成しているため、容易に運搬することができる。また、分割面材には実加工が施されているため、施工の際、まず、下分割面材51を下取付下地材75の当接部76に載置して、2つの縦取付下地材71の当接部72の間に嵌め込んで、下分割面材51を縦取付下地材71の突起部73に当接させて、下分割面材51と突起部73とを面材固定用ビス81によって固定することで、下分割面材51が取り付けられる。そして、中分割面材52を、2つの縦取付下地材71の当接部72の間に嵌め込んで、既に取り付けられている下分割面材51の雄実部55と、中分割面材52の雌実部56を嵌合させることによって、中分割面材52を下分割面材51に接合し、中分割面材52と当接する縦取付下地材71の突起部73に面材固定用ビス81によって固定する。そしてその後上分割面材53も同様に取り付ける、というように下から順番に分割面材を取り付けることができ、接合部の実加工によって、特に上下方向の位置決め等を行うことなく容易に施工することができる。
【0026】
また、図6(a)に示すように、耐力面材5を縦取付下地材71に固定した後、耐力面材5の上端部と天井材91との間、つまり上分割面材53の上端部と天井材91との間には、隙間59が設けられるようになっている。隙間59が設けられていることによって、間仕切耐力壁1に多少の変形があっても、耐力面材5によって天井材91に力が加えられて破損することを防ぐことができ、また、分割面材の実加工の精度にばらつきがあったり、分割面材の接合部が多少浮いてきたりした場合においても、上分割面材53が天井材91を圧迫して破損させてしまうことを防ぐことができる。隙間59は、化粧見切材6によって覆い隠される大きさであればよい。本実施形態では隙間59は15mm程度としている。なお、本実施形態では耐力面材5を3つの分割面材によって構成しているが、2つまたは4つ以上の分割面材によって構成してもよい。また、分割することなく1つの面材で構成してもよい。
【0027】
化粧見切材6は、耐力面材5と、2本の柱材3、天井材91及び床材92との取り合い部に取り付けられて、縦取付下地材71、下取付下地材75及び隙間59を覆い隠し、間仕切耐力壁1の外観の意匠性を向上させる。
【0028】
耐力面材5と柱材3との取り合い部には、図5(b)に示すように、第1縦化粧見切材61及び第2縦化粧見切材62が取り付けられる。図5(c)に示すように、耐力面材5が縦取付下地材71に取り付けられた状態で、一方側は、耐力面材5の表面と縦取付下地材71とは略同一平面となり、他方側は、耐力面材5の表面と縦取付下地材71とは、突起部73の分、耐力面材5の表面よりも縦取付下地材71が突出した形になっている。第1縦化粧見切材61は、断面長方形状で、長手方向の長さが天井材91と床材92との間の距離と略等しい長手状部材であり、耐力面材5の表面と縦取付下地材71とが略同一平面となる一方側に、長手方向が柱材3に沿うようにして、耐力面材5の端部と縦取付下地材71とに接着固定される。第1縦化粧見切材61によって、縦取付下地材71と耐力面材5との境界線、及び耐力面材5と縦取付下地材71とを固定する面材固定用ビス81が覆い隠される。第2縦化粧見切材62は、断面L字状で、長手方向の長さが天井材91と床材92との間の距離と略等しい長手状部材であり、縦取付下地材71が耐力面材5の表面よりも突出している他方側に、長手方向が柱材3に沿うようにして、耐力面材5の端部と縦取付下地材71とに接着固定される。第2縦化粧見切材62によって、縦取付下地材71の突起部73は覆い隠される。
【0029】
耐力面材5と床材92及び下枠材4との取り合い部には、図6(a)に示すように、第1下化粧見切材63及び第2下化粧見切材64が取り付けられる。耐力面材5が下取付下地材75に取り付けられた状態で、一方側は、耐力面材5の表面と下取付下地材75とは略同一平面となり、他方側は、耐力面材5の表面と下取付下地材75とは、突起部77の分、耐力面材5の表面よりも下取付下地材75が突出した形になっている。第1下化粧見切材63は、断面長方形状で、長手方向の長さが、取り付け後の2つの第1縦化粧見切材61間の間隔と略等しい長手状部材であり、耐力面材5の表面と下取付下地材75とが略同一平面となる一方側に、長手方向が下枠材4に沿うようにして、耐力面材5の端部と下取付下地材75とに接着固定される。第1下化粧見切材63によって、下取付下地材75と耐力面材5との境界線が覆い隠される。第2下化粧見切材64は、断面L字状で、長手方向の長さが、取り付け後の2つの第2縦化粧見切材62間の間隔と略等しい長手状部材であり、下取付下地材75が耐力面材5の表面よりも突出している他方側に、長手方向が下枠材4に沿うようにして、耐力面材5の端部と下取付下地材75とに接着固定される。第2下化粧見切材64によって、下取付下地材75の突起部77は覆い隠される。
【0030】
耐力面材5と天井材91との取り合い部には、図6(a)に示すように、上化粧見切材65が取り付けられる。上化粧見切材65は、断面長方形状で、長手方向の長さが、取り付け後の2つの第1縦化粧見切材61間の間隔または2つの第2縦化粧見切材62間の間隔と略等しい長手状部材であり、長手方向が天井材91に沿うようにして、耐力面材5の両側の表面の端部に接着固定される。上化粧見切材65によって、耐力面材5と天井材91との間に設けられている隙間59は覆い隠される。
【0031】
このように化粧見切材6が取り付けられることで、図2に示すように、間仕切耐力壁1の一方側は、2つの第1縦化粧見切材61、第1下化粧見切材63及び上化粧見切材65によって形成される枠を、他方側は、2つの第2縦化粧見切材62、第2下化粧見切材64及び上化粧見切材65によって形成される枠を、それぞれ額縁として、耐力面材5がその中に配置されて飾られているような外観となる。また、2つの第1縦化粧見切材61、第1下化粧見切材63及び上化粧見切材65によって形成される枠の表面、及び2つの第2縦化粧見切材62、第2下化粧見切材64及び上化粧見切材65によって形成される枠の表面は、図5(a)、図6(a)に示すようにそれぞれ略同一平面となっている。そして、これらの化粧見切材6が形成する枠の表面は、それぞれ2本の柱材3の表面が形成する面よりも内側になるようになっており、図5(b)に示すように、2本の柱材3の断面中心を通る線分を含む平面32を対称面として、間仕切耐力壁1の外形は略面対称となっている。間仕切耐力壁1の外観は、耐力面材5が、柱材3から化粧見切材6を介して2段内側に入った形となっているため、耐力面材5の軽量感が得られる意匠となっており、また、耐力面材5が有する木質あらわし意匠が、化粧見切材6が形成する枠内にあらわれ、室内のインテリアの構成要素として優れた意匠性を発揮することができる。
【0032】
以上のように、間仕切耐力壁1は、耐力面材5が、2本の柱材3にそれぞれ固定される縦取付下地材71と、下枠材4に固定される下取付下地材72と、天井材91とによって形成される枠に配置されて、縦取付下地材71に固定されることで、縦取付下地材71を介して柱材3に固定される構造となっており、また、下取付下地材75は耐力面材5の取り付けが容易になるように用いられて、耐力面材5と下取付下地材75とは固定されず、また、耐力面材5の上部と天井材91との間には隙間59を有し、耐力面材5と天井材91とは固定されない構造となっている。そのため、耐力面材5には、建築物にかかる鉛直方向の荷重を負担させないようになっており、耐力面材5によって天井材91に力が加えられて天井材91が破損することを防ぐ。また、間仕切耐力壁1の設置部で、耐力面材5の取り付けのために天井材91に欠損が生じることがないため、省令準耐火構造の建築物においても、間仕切耐力壁1を設置することができる。また、耐力面材5が、縦取付下地材71を介して構造躯体である柱材3に固定されるため、万が一、耐力面材5を破損等で交換することになった場合でも、構造躯体を傷つけることなく容易に耐力面材5を交換することができる。また、間仕切耐力壁1は、室を隔てないパーティションとして用いられることから、省令準耐火構造の建築物においても、耐力面材5に燃え代設計等を行うことなく、軽量感の得られる意匠を有する間仕切耐力壁1を構成できる。
【0033】
本実施形態においては、図1及び図7(a)に示すように、間仕切耐力壁1の2本の柱材3はどちらも室内に立設されるあらわし柱である例を示したが、それに限らず、間仕切耐力壁1が室を隔てる壁、または室を隔てる壁の一部となっていなければよい。図7(b)に示すように、2本の柱材3の少なくとも一方が室内の外周壁を構成する柱であってもよい。また、図7(c)に示すように、2本の柱材3の少なくとも一方が間仕切壁を構成する柱であってもよい。また、図7(d)に示すように、1つの柱材3を共用として2つの間仕切耐力壁1を連続配置してもよい。
【0034】
上記はあくまで本発明に係る間仕切耐力壁の一実施形態を示したものであるため、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 間仕切耐力壁 2 梁材
3 柱材 4 下枠材
5 耐力面材 51 下分割面材
52 中分割面材 53 上分割面材
55、57 雄実部 56、58 雌実部
6 化粧見切材 61 第1縦化粧見切材
62 第2縦化粧見切材 63 第1下化粧見切材
64 第2下化粧見切材 65 上化粧見切材
91 天井材 92 床材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7