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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220809BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220809BHJP
   G05F 1/67 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/38 150
H02M7/48 R
G05F1/67 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018148422
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020025394
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-107991(JP,A)
【文献】特開2017-208932(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185661(WO,A1)
【文献】特開2013-046503(JP,A)
【文献】特開2017-070129(JP,A)
【文献】特開2017-070130(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008413(WO,A1)
【文献】特開2015-211617(JP,A)
【文献】特開2015-100234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02M 7/48
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光により直流電力を発電する複数個の太陽電池を有した太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルで発電された直流電力を交流に変換して電力系統に出力するインバータと、
前記太陽電池パネルの出力電力が最大電力となる最大負荷点で動作するように出力目標値を算出する最大電力点追従制御部と、
前記インバータの出力電圧の位相が前記電力系統の系統電圧の位相となるように前記インバータに前記系統電圧の位相に同期した信号を出力する位相同期部と、
前記最大電力点追従制御部からの出力目標値に基づいて前記太陽電池パネルの出力電圧を所定値に維持しつつ前記インバータの出力電圧の位相が前記位相同期部で得られた前記電力系統の系統電圧の位相と一致するように前記インバータの出力電力を制御するインバータ制御部と、
前記位相同期部の応答を遅延させた回路を有しその回路で得られた前記系統電圧との位相差に基づいて同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し前記インバータ制御部に出力する発電機慣性力発生部と、
前記電力系統の負荷変動や前記太陽電池パネルの出力変動に備え前記最大電力点追従制御部で算出した出力目標値に代えて前記太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値を前記インバータ制御部に出力する出力抑制制御部とを備えたことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記電力系統の周波数が変動したとき前記同期発電機のガバナフリー運転に相当する周波数調整量を算出し前記インバータ制御部に出力するガバナフリー制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
太陽光により直流電力を発電する複数個の太陽電池を有した太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの出力電圧を昇圧するチョッパと、
前記太陽電池パネルで発電された直流電力を交流に変換して電力系統に出力するインバータと、
前記太陽電池パネルの出力電力が最大電力となる最大負荷点で動作するように出力目標値を算出する最大電力点追従制御部と、
前記最大電力点追従制御部からの出力目標値に基づいて前記チョッパの変換比を調整して前記太陽電池パネルの出力電圧を調整し前記太陽電池パネルの出力電力を制御するチョッパ制御部と、
前記インバータの出力電圧の位相が前記電力系統の系統電圧の位相となるように前記インバータに前記系統電圧の位相に同期した信号を出力する位相同期部と、
前記チョッパで昇圧した電圧を所定値に維持しつつ前記インバータの出力電圧の位相が前記位相同期部で得られた前記電力系統の系統電圧の位相と一致するように前記インバータの出力電力を制御するインバータ制御部と、
前記位相同期部の応答を遅延させた回路を有しその回路で得られた前記系統電圧との位相差に基づいて同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し前記チョッパ制御部に出力する発電機慣性力発生部と、
前記電力系統の負荷変動や前記太陽電池パネルの出力変動に備え前記最大電力点追従制御部で算出した出力目標値に代えて前記太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値を前記インバータ制御部に出力する出力抑制制御部とを備えたことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項4】
前記電力系統の周波数が変動したとき前記同期発電機のガバナフリー運転に相当する周波数調整量を算出し前記チョッパ制御部に出力するガバナフリー制御部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルで発電した直流電力を交流電力に変換し、連系した電力系統に交流電力を供給する太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、太陽光発電システムの太陽電池パネルは出力電力が最大電力となる最大負荷点で動作するように最大電力点追従制御で運転されている。このことから、同期発電機による発電システム(以下、同期発電機発電システムという)に替わり太陽光発電システムなどの再エネ電源が増加すると、電力系統の負荷電力が一定であれば同期発電機発電システムの同期発電機を解列して負荷電力の需給バランスを保つ。この場合、解列した同期発電機が持っていた分の慣性力が失われるので、電力系統の負荷急変時の周波数の変化が大きくなる。
【0003】
例えば、電力系統の負荷が急増した場合には、同一系統に接続されている同期発電機がこの増分を担うことになる。このとき負荷増直後は、原動機入力トルクTmは一定であり、また同期発電機発電機システムの同期発電機には慣性力があるため、内部誘起電圧位相は固定されており、負荷電力増分に相当する電力が同期発電機から出力される。これにより、同期発電機の慣性トルクTeがTe1からTe2に変化する。すなわち、Tm-Te1=0の状態からTm-Te2<0の状態となり(Tm-Te)/(M・s)に応じて周波数が低下する。
【0004】
一例として、2台の同期発電機の電力系統と、そのうちの1台の同期発電機を太陽光発電システムで置き換えた電力系統を考える。図10はその場合の電力系統の負荷及び周波数の一例を示すグラフであり、図10(a)はP1kW×2台の同期発電機で2P1kWの負荷に電力を供給していて、+0.5・P1kWだけ負荷が急増した場合の電力系統の負荷及び周波数のグラフ、図10(b)は1台の同期発電機を太陽光発電システムで置き換えた場合の電力系統の負荷及び周波数のグラフである。図10(a)において、Paは負荷電力、PG1は1台目の同期発電機の出力電力、PG2は2台目の同期発電機の出力電力、fは周波数である。図10(b)において、Paは負荷電力、PG1は同期発電機の出力電力、PPVは太陽光発電システムの出力電力、fは周波数である。
【0005】
図10(a)に示すように、いま、時点20[s]で+0.5・P1kWだけ負荷が急増した場合は、2台の同期発電機で急増した負荷を賄うように出力を増加させるが、その際には、2台の同期発電機の慣性力分があるので、周波数の変化は50Hzから49.47Hzであり周波数の一時的な低下は0.53Hzである。
【0006】
これに対し、1台の同期発電機の場合には、図10(b)に示すように、1台の同期発電機で負荷急増分を負担することになり、慣性力分も1台の同期発電機だけとなるので、周波数の変化は50Hzから48.79Hzであり周波数の一時的な低下は1.21Hzである。なお、時点0[s]~時点5[s]は太陽光発電システムの最大電力点追従制御により太陽光発電システムの出力が増加している状態を示している。このように、太陽光発電システムの増加に伴い同期発電機が太陽光発電システムに置き換わるため電力系統全体の単位慣性定数Mが小さくなり電力系統の周波数の低下が著しくなる。
【0007】
ここで、常時は太陽電池の動作点が最大電力点Pmaxとなるように出力電流を調整する最大電力点追尾制御を行い、連系点の電圧が規定の上限電圧に近づいたときには、動作点が最大電力点Pmaxと異なるように出力電流を設定して出力電力を最大電力よりも小さくするようにした太陽光発電システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-332553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のものは、連系点の電圧が規定の上限電圧に近づいたときには、太陽光発電システムの動作点が最大電力点Pmaxと異なるように出力電流を設定して出力電力を最大電力よりも小さくし、連系点の電圧が規定の上限電圧を超えないようにするものであり、電力系統の周波数の低下を抑制するためのものではない。太陽光発電システムにも同期発電機の慣性力を持たせることで周波数調整能力を持たせるようにしたものではない。
【0010】
本発明の目的は、同期発電機の慣性力を有し周波数調整能力を持たせた太陽光発電システムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明に係る太陽光発電システムは、太陽光により直流電力を発電する複数個の太陽電池を有した太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルで発電された直流電力を交流に変換して電力系統に出力するインバータと、前記太陽電池パネルの出力電力が最大電力となる最大負荷点で動作するように出力目標値を算出する最大電力点追従制御部と、前記インバータの出力電圧の位相が前記電力系統の系統電圧の位相となるように前記インバータに前記系統電圧の位相に同期した信号を出力する位相同期部と、前記最大電力点追従制御部からの出力目標値に基づいて前記太陽電池パネルの出力電圧を所定値に維持しつつ前記インバータの出力電圧の位相が前記位相同期部で得られた前記電力系統の系統電圧の位相と一致するように前記インバータの出力電力を制御するインバータ制御部と、前記位相同期部の応答を遅延させた回路を有しその回路で得られた前記系統電圧との位相差に基づいて同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し前記インバータ制御部に出力する発電機慣性力発生部と、前記電力系統の負荷変動や前記太陽電池パネルの出力変動に備え前記最大電力点追従制御部で算出した出力目標値に代えて前記太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値を前記インバータ制御部に出力する出力抑制制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明に係る太陽光発電システムは、請求項1の発明において、前記電力系統の周波数が変動したとき前記同期発電機のガバナフリー運転に相当する周波数調整量を算出し前記インバータ制御部に出力するガバナフリー制御部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明に係る太陽光発電システムは、太陽光により直流電力を発電する複数個の太陽電池を有した太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルの出力電圧を昇圧するチョッパと、前記太陽電池パネルで発電された直流電力を交流に変換して電力系統に出力するインバータと、前記太陽電池パネルの出力電力が最大電力となる最大負荷点で動作するように出力目標値を算出する最大電力点追従制御部と、前記最大電力点追従制御部からの出力目標値に基づいて前記チョッパの変換比を調整して前記太陽電池パネルの出力電圧を調整し前記太陽電池パネルの出力電力を制御するチョッパ制御部と、前記インバータの出力電圧の位相が前記電力系統の系統電圧の位相となるように前記インバータに前記系統電圧の位相に同期した信号を出力する位相同期部と、前記チョッパで昇圧した電圧を所定値に維持しつつ前記インバータの出力電圧の位相が前記位相同期部で得られた前記電力系統の系統電圧の位相と一致するように前記インバータの出力電力を制御するインバータ制御部と、前記位相同期部の応答を遅延させた回路を有しその回路で得られた前記系統電圧との位相差に基づいて同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し前記チョッパ制御部に出力する発電機慣性力発生部と、前記電力系統の負荷変動や前記太陽電池パネルの出力変動に備え前記最大電力点追従制御部で算出した出力目標値に代えて前記太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値を前記インバータ制御部に出力する出力抑制制御部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明に係る太陽光発電システムは、請求項3の発明において、前記電力系統の周波数が変動したとき前記同期発電機のガバナフリー運転に相当する周波数調整量を算出し前記チョッパ制御部に出力するガバナフリー制御部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出する発電機慣性力発生部と、太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値をインバータ制御部に出力する出力抑制制御部とを備えたので、電力系統の負荷変動に対して同期発電機の慣性力相当の周波数変動の抑制ができ、また、太陽電池パネルのから電力系統への出力電力を調整できるので、電力系統の負荷変動のときの周波数変動を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの構成図。
図2】本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの太陽電池パネルの出力電力の一例を示すグラフ。
図3】本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代の説明図。
図4】本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの効果の説明図。
図5】本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムの構成図。
図6】本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムの効果の説明図。
図7】本発明の第3実施形態に係る太陽光発電システムの構成図。
図8】本発明の第4実施形態に係る太陽光発電システムの構成図。
図9】本発明の実施形態と比較例との効果を対比した説明図。
図10】2台の同期発電機の電力系統とそのうちの1台の同期発電機を太陽光発電システムで置き換えた電力系統の負荷及び周波数の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。図1では、電力系統11に、同期発電機を有した同期発電機発電システム12及び太陽光発電設備13を有した太陽光発電システムが接続されたものを示している。
【0018】
同期発電機発電システム12は、同期発電機14を原動機15で駆動して電力系統11の負荷16に電力を供給するものであり、制御装置17は、電圧検出器18aで検出された同期発電機14の出力電圧及び電流検出器19aで検出された同期発電機14の出力電流を入力し、原動機15及び同期発電機14を制御して出力電力が目標値になるように制御する。
【0019】
太陽光発電システムは、太陽光発電設備13と、太陽光発電設備13を制御する交直変換器制御装置とからなる。太陽光発電設備13は、太陽電池パネル20のインバータ21を制御して電力系統11に有効電力及び無効電力を充放電するものであり、インバータ21はリアクトルL及び変圧器Trを介して電力系統11に接続されている。太陽光発電設備13を制御する交直変換器制御装置は、太陽光発電設備13のインバータ21を制御するものであり、PV出力演算部22、最大電力点追従制御部23、出力抑制制御部24、インバータ制御部25、位相同期部26、発電機慣性力発生部27等からなる。
【0020】
PV出力演算部22は、直流電圧検出器18dで検出された太陽電池パネル20の出力電圧Vd及び直流電流検出器19dで検出された太陽電池パネル20の出力電流Idを入力し太陽電池パネル20の発電電力PPVを演算し、最大電力点追従制御部23及び後述の加算器29d1に出力する。最大電力点追従制御部23は、PV出力演算部22からの太陽電池パネル20の発電電力PPV及び直流電圧検出器18dで検出された太陽電池パネル20の出力電圧Vdに基づいて、太陽電池パネル20の出力電力PPVが最大電力Pmaxとなる最大負荷点で動作するように太陽電池パネル20の出力目標値PPVrを算出し出力抑制制御部24に出力する。
【0021】
出力抑制制御部24は、最大電力点追従制御部23からの太陽電池パネル20の出力目標値PPVr、及び加算器29d1で求めた太陽電池パネル20の発電電力PPVと後述の発電機慣性力発生部27で演算された同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piとの加算値(PPV+Pi)に基づいて、太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrを求めてインバータ制御部25に出力するものである。
【0022】
すなわち、出力抑制制御部24の加算器29d2は、加算器29d1で求めた太陽電池パネル20の発電電力PPVと周波数変動抑制量Piとの加算値(PPV+Pi)と、太陽電池パネル20の出力電力PPVの上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値Pxとの差分(PPV+Pi-Px)を求め、制御演算要素45にて出力抑制を掛けた電圧値指令値Vdrxを求め、最大値選択回路(HVG)28に出力する。最大値選択回路(HVG)28は制御演算要素45からの電圧値指令値Vdrxと最大電力点追従制御部23からの太陽電池パネル20の出力目標値PPVrに対する電圧値指令値Vdrmとのうち大きい方を選択して太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrを求める。この説明詳細は後述する。
【0023】
インバータ制御部25は太陽電池パネル20から電力系統11に充放電する有効電力及び無効電力が目標値になるようにインバータ21に制御指令を出力するものであり、位相同期部26はインバータ21の出力電圧の位相が電力系統11の系統電圧の位相となるようにインバータ制御部25に系統電圧の位相に同期した信号を出力するものである。また、発電機慣性力発生部27は、位相同期部26の応答を遅延させた回路を有しその回路で得られた系統電圧との位相差に基づいて、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し出力抑制制御部24に出力するものである。
【0024】
インバータ制御部25の加算器29a1は、出力抑制制御部24で求めた太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrと、直流電圧検出器18dで検出された太陽電池パネル20の出力電圧Vdとの差分(Vdr-Vd)を求め、直流電圧調整器31に出力する。同様に、加算器29b1では、無効電力目標値Qrと、インバータ21から出力される無効電力Qとの差分ΔQ(Qr-Q)を演算し無効電力調整器32に出力する。
【0025】
インバータ制御部25の三相/dq変換部30aは、電流検出器19bで検出されたインバータ21の出力電流(三相電流)を入力して三相二相変換し、二相変換されたインバータ21の出力電流を加算器29a2、29b2に出力する。
【0026】
加算器29a2では、直流電圧調整器31の出力と三相/dq変換部30aで二相変換されたd軸電流との差分を演算しd軸電流調整器33に出力する。d軸電流調整器33の出力は加算器29a3にて後述の位相同期部26からの位相角信号が加算され充放電する有効電力指令値が演算される。同様に、加算器29b2では、無効電力調整器32の出力と三相/dq変換部30aで二相変換されたq軸電流との差分を演算しq軸電流調整器34に出力する。q軸電流調整器34の出力は加算器29b3にて後述の位相同期部26からの位相角信号が加算され無効電力指令値が演算される。
【0027】
加算器29a3からの有効電力指令値及び加算器29b3からの無効電力指令値は、dq/三相変換部35に入力され二相三相変換されてゲートパルス発生部36を介してインバータ21に入力される。これにより、インバータ21は、有効電力及び無効電力が目標値になるように制御され、太陽電池パネル20から同期発電機14の慣性力に相当する電力及び太陽電池パネル20の出力電力PPVの上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値Pxが加味された有効電力になるように制御される。
【0028】
次に、位相同期部26はインバータ21の出力電圧の位相が電力系統11の系統電圧の位相となるようにインバータ制御部25に系統電圧の位相に同期した信号を出力するものであり、位相同期回路PLL(Phase Locked Loop)で構成される。位相同期部26の三相/dq変換部30bは、電圧検出器18bで検出された変圧器Trの出力電圧(系統電圧)を入力し、三相の系統電圧を二相に変換するとともに、二相成分演算部37aで求めた内部信号(インバータ21の出力電圧)の二相成分の位相角(cosθH、sinθH)を入力し、系統電圧の位相と内部信号の位相とを比較する。そして、その比較結果を位相角信号としてインバータ制御部25の加算器29a3、29b3に出力するとともに位相差検出部38aに出力する。
【0029】
位相差検出部38aは、系統電圧の位相と内部信号の位相との位相差ΦHを演算し位相差調整部39aに出力する。位相差調整部39aは位相差ΦHが0となるような調整量を演算し加算器29c1に出力する。加算器29cは、位相差調整部39aからの調整量と基準周波数(系統電圧の周波数)とを加算して内部信号の角周波数ωHを求める。内部信号の角周波数ωHは積分要素40aに入力され、積分要素40aにて位相角θHが求められる。積分要素40aにて求められた位相角θHは二相成分演算部37aに入力され、二相成分演算部37aにて内部信号(インバータ21の出力電圧)の二相成分の位相角(cosθH、sinθH)が求められる。
【0030】
このように、位相同期部26は、内部信号(インバータ21の出力電圧)の位相が電力系統11の系統電圧の位相となるように、インバータ制御部25の加算器29a3、29b3に位相角信号として出力するものである。これにより、インバータ21の出力電圧の位相は電力系統11の系統電圧の位相に一致するように調整される。
【0031】
次に、発電機慣性力発生部27は、位相同期部26の応答を遅延させた回路を有し、その回路で得られた系統電圧との位相差に基づいて、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量を算出し、インバータ制御部25の有効電力の目標値に加算するものである。
【0032】
発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLは、三相/dq変換部30c、二相成分演算部37b、位相差検出部38b、位相差調整部39b、加算器29c2、積分要素40bで構成され、位相同期部26の位相同期回路PLL(位相同期部26の三相/dq変換部30b、二相成分演算部37a、位相差検出部38a、位相差調整部39a、加算器29c1、積分要素40a)と同様な回路構成である。発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLは、位相同期部26の位相同期回路PLLの応答を遅延させた回路である。
【0033】
インバータ21は、系統電圧に対して、いかなる電圧を発生するのかを瞬時に演算して太陽電池パネル20の出力電力を所望の電力になるように制御する必要がある。すなわち、系統電圧が実際のものと違っていれば太陽電池パネル20の出力電力を所望電力にすることは困難であるため、できる限り系統電圧は実際のものに近づけておく必要がある。そこで、位相同期部26の位相同期回路PLLは応答速度が早くなるように位相同期部26の位相差調整部39aの制御定数は定められている。一方、発電機慣性力発生部27の位相差調整部39bの制御定数は、位相同期部26の位相差調整部39aの制御定数より応答が遅くなるように設定されている。これは、電力系統11の負荷16の急変により電力系統11の周波数が変動した場合に、同期発電機14の特性と同様に電力系統11の周波数変動が抑制される応答とするためである。
【0034】
位相同期部26の位相同期回路PLLが発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLより応答が早いことから、図1では、位相同期部26の位相同期回路PLLの諸量には添え字Hを付し、発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLの諸量には添え字Lを付している。
【0035】
そして、発電機慣性力発生部27は、発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLL(位相同期部26の三相/dq変換部30b、二相成分演算部37a、位相差検出部38a、位相差調整部39a、加算器29c1、積分要素40a)に加え、発電機慣性力発生部27の位相同期回路PLLで得られた系統電圧との位相差ΦLに基づいて、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piを演算する慣性力演算部41を有する。慣性力演算部41は、同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piとして、負荷急変時に同期発電機14が出力する電気出力{Pi=(1/XT)*sinΦL}を演算する。XTはインバータ21の交流側のリアクタンス(主に交流リアクトルまたは変圧器のリアクタンス)、ΦLは系統電圧の位相と内部信号(インバータ21の出力電圧)の位相との位相差である。
【0036】
慣性力演算部41は演算した周波数変動抑制量Piを加算器29d1に出力する。加算器29d1は周波数変動抑制量PiをPV出力演算部22からの太陽電池パネル20の発電電力PPVに加算し、出力抑制部24の加算器29d2に出力する。出力抑制制御部24の加算器29d2は、加算器29d1で得られた加算値(PPV+Pi)と、太陽電池パネル20の出力電力PPVの上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値Pxとの差分(PPV+Pi-Px)を求め、制御演算要素45にて出力抑制を掛けた電圧値指令値Vdrxを求め、最大値選択回路28に出力する。最大値選択回路28は制御演算要素45からの電圧値指令値Vdrxと最大電力点追従制御部23からの太陽電池パネル20の出力目標値PPVrに対する電圧値指令値Vdrmとのうち大きい方を選択して太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrを求める。そして、インバータ制御部25に出力する。
【0037】
これにより、太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrに、同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量Piが加味されるので、電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を改善できる。
【0038】
図2は本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの太陽電池パネルの出力電力の一例を示すグラフである。いま、時点t0で太陽光発電の発電が開始されたとし、発電機慣性力発生部27による周波数変動抑制量がなく、出力抑制制御部24による出力抑制が掛かっていないとする。この場合は、最大電力点追従制御部23により、太陽電池パネル20の出力電力PPVが最大電力Pmaxとなるように最大電力点追従制御が行われる。時点t1で太陽電池パネル20の出力電力PPVが最大電力Pmaxとなると、時点t1以降は太陽電池パネル20の出力電力PPVは最大電力Pmaxに維持される。
【0039】
すなわち、最大電力点追従制御部23は、PV出力演算部22からの太陽電池パネル20の発電電力PPV及び直流電圧検出器18dで検出された太陽電池パネル20の出力電圧Vdに基づいて、太陽電池パネル20の出力電力PPVが最大電力Pmaxとなる最大負荷点で動作するように、太陽電池パネル20の出力目標値PPVrを算出する。発電機慣性力発生部27による周波数変動抑制量がなく、出力抑制制御部24による出力抑制が掛かっていない場合には、出力抑制制御部24は太陽電池パネル20の出力電圧Vdが最大電力Pmaxとなる電圧基準値Vdrmをインバータ制御部25に出力するので、インバータ制御部25は太陽電池パネル20の出力電圧Vd(インバータ21の入力電圧)が電圧基準値Vdrmになるようにインバータ21を制御する。これにより、太陽電池パネル20の出力電力PPVが最大電力Pmaxとなるように制御される。
【0040】
いま、時点t2において、電力系統11の負荷変動や太陽電池パネル20の出力変動に備え、太陽電池パネル20の出力電力を最大電力Pmaxより小さい出力抑制値Pxに抑制したとする。出力抑制制御部24は太陽電池パネル20の出力電圧Vdが出力抑制値Pxとなる電圧基準値Vdrxをインバータ制御部25に出力するので、インバータ制御部25は太陽電池パネル20の出力電圧Vd(インバータ21の入力電圧)が電圧基準値Vdrxになるようにインバータ21を制御する。これにより、太陽電池パネル20の出力電力PPVが出力抑制値Pxとなるように制御される。
【0041】
これにより、太陽電池パネル20の出力電力PPVは上げ代及び下げ代を確保できる。図3は本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの太陽電池パネルの出力電力の上げ代及び下げ代の説明図であり、図3(a)は日射強度や温度が一定である場合の太陽電池パネルのV-I特性(電圧電流特性)の一例を示すグラフ、図3(b)は日射強度や温度が一定である場合の太陽電池パネルのV-P特性(電圧電力特性)の一例を示すグラフである。
【0042】
図3(a)において、PV出力電圧Vd(太陽電池パネル20の出力電圧Vd)は0から開放電圧Voまで変化し、PV出力電流Id(太陽電池パネル20の出力電流Id)は0から短絡電流Ioまで変化する。PV出力電圧Vdが電圧基準値Vdrmのときに太陽電池パネル20の出力電力PPVは最大電力Pmaxとなり、黒枠の長方形の面積が最大電力Pmaxの大きさを表している。一方、PV出力電圧Vdが電圧基準値Vdrxのときに太陽電池パネル20の出力電力PPVは出力抑制値Pxとなり、一点鎖線枠の長方形の面積が出力抑制値Pxの大きさを表している。
【0043】
図3(b)において、PV出力電圧Vdが電圧基準値Vdrmのときに太陽電池パネル20の出力電力PPVは最大電力Pmax(A点)となり、この状態では、太陽電池パネル20の出力電力PPVは上げ代及び下げ代はない。一方、PV出力電圧Vdが電圧基準値Vdrxのときに太陽電池パネル20の出力電力PPVは出力抑制値Px(B点)となり、太陽電池パネル20の出力電力PPVは上げ代及び下げ代が確保できる。B点から出力電圧Vdを下げれば(Vdrx~Vdrm)の範囲で太陽電池パネル20の出力電力PPVを増加させることができ、B点から出力電圧Vdを上げれば(Vdrx~Vo)の範囲で太陽電池パネル20の出力電力PPVを減少させることができる。
【0044】
図2の時点t2以降の時点t3において、電力系統11の負荷16が増加した場合、電圧基準値Vdrxを変化させれば太陽電池パネル20の出力電力PPVを増加させることができる。図2では一過的に電圧基準値Vdrxを変化させて出力抑制値Px1とし、元の出力抑制値Pxに戻した場合を示している。
【0045】
図4は本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの効果の説明図であり、図4(a)は本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムを採用した場合の電力系統の負荷及び周波数のグラフ、図4(b)は比較のために示した図10(b)と同じグラフである。図4(a)及び図4(b)において、Paは負荷電力、PG1は1台目の同期発電機の出力電力、PPVは太陽光発電システムの出力電力、fは周波数である。
【0046】
図4(a)に示すように、いま、時点20[s]で+0.5・P1kWだけ負荷が急増した場合は、1台の同期発電機及び本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムの双方で急増した負荷を賄うように出力を増加させるが、その際には、1台の同期発電機の慣性力分があり、本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムにおいても発電機慣性力発生部27を有しているので、周波数の変化は50Hzから49.37Hzであり周波数の一時的な低下は0.63Hzである。これに対し、1台の同期発電機の場合には、図10(b)に示すように、1台の同期発電機で負荷急増分を負担することになり、慣性力分も1台の同期発電機だけとなるので、周波数の変化は50Hzから48.79Hzであり周波数の一時的な低下は1.21Hzであることから、本発明の第1実施形態に係る太陽光発電システムを採用することで電力系統11の周波数低下を改善できる。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。この第2の実施形態は、図1に示した第1実施形態に対し、太陽光発電設備13を制御する交直変換器制御装置にガバナフリー制御部42を追加して設けたものである。ガバナフリー制御部42は、同期発電機14のガバナフリー運転に相当する周波数調整量をインバータ制御部25に出力する。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0048】
ガバナフリー制御部42は、電力系統11の系統周波数が変動したとき、同期発電機14のガバナフリー運転に相当する周波数調整量ΔPfを算出するものである。ガバナフリー運転は、数秒~数十秒(1~2分くらいまで)の系統周波数の変動を吸収する周波数調整量ΔPfを出力するものである。なお、同期発電機14の慣性力による周波数変動の抑制は系統周波数の変動が0~10数秒の系統周波数の変動を吸収する周波数変動抑制量Piを出力するものである。
【0049】
図5において、電力系統11の系統周波数fは周波数検出器43で検出され、周波数検出器43で検出された系統周波数fは加算器29eに入力される。加算器29eは系統周波数fと基準周波数f0との差分を演算し周波数偏差Δfとして関数発生器44に出力する。関数発生器44は周波数偏差Δfに基づいて、同期発電機14のガバナフリー運転に相当する周波数調整量ΔPfを発生する。関数発生器44は周波数偏差Δfが0を中心として所定幅では周波数調整量ΔPfが0となる不感帯を有し、また、周波数偏差Δfの絶対値が所定値を超えると周波数調整量ΔPfが一定値となる関数を有する。周波数偏差Δfが不感帯及び絶対値が所定値を超えない範囲では、周波数調整量ΔPfは、Pf=-K・Δfで示される。Kは同期発電機14でいう速度調停率の逆数(K=1/速度調定率)である。
【0050】
系統周波数fが基準周波数f0より低下し不感帯を逸脱しているときは、周波数偏差Δfは負であるので、蓄電池20の放電を増加させる周波数調整量ΔPfが関数発生器44より出力される。逆に、系統周波数fが基準周波数f0より上昇し不感帯を逸脱しているときは、周波数偏差Δfは正であるので、蓄電池20の放電を減少させる周波数調整量ΔPfが関数発生器44より出力される。
【0051】
ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfは加算器29d3に出力される。加算器29d3は、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfと、PV出力演算部22から出力される太陽電池パネル20の出力電力PPVとを加算し加算値(ΔPf+PPV)を加算器29d1に出力する。加算器29d1は、加算器29d3で得られた加算値(ΔPf+PPV)と、発電機慣性力発生部27で演算された同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piとを加算し、加算値(ΔPf+PPV+Pi)を出力抑制部24の加算器29d2に出力する。
【0052】
出力抑制制御部24の加算器29d2は、加算器29d1で得られた加算値(ΔPf+PPV+Pi)と、太陽電池パネル20の出力電力PPVの上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値Pxとの差分(ΔPf+PPV+Pi-Px)を求め、制御演算要素45にて出力抑制を掛けた電圧値指令値Vdrxを求め、最大値選択回路28に出力する。最大値選択回路28は制御演算要素45からの電圧値指令値Vdrxと最大電力点追従制御部23からの太陽電池パネル20の出力目標値PPVrに対する電圧値指令値Vdrmとのうち大きい方を選択して太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrを求める。そして、インバータ制御部25に出力する。
【0053】
これにより、同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量Piに加え、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfも加味されるので、電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。
【0054】
図6は本発明の第2実施形態の太陽光圧電設備の効果の説明図であり、図6(a)は本発明の第2実施形態の太陽光圧電設備を採用した場合の電力系統の負荷及び周波数のグラフ、図6(b)は比較のために示した図10(b)と同じグラフである。図6(a)及び図6(b)において、Paは負荷電力、PG1は1台目の同期発電機の出力電力、PPVは太陽光発電システムの出力電力、fは周波数である。
【0055】
図6(a)に示すように、いま、時点20[s]で+0.5・P1kWだけ負荷が急増した場合は、1台の同期発電機及び本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムの双方で急増した負荷を賄うように出力を増加させるが、その際には、1台の同期発電機の慣性力分があり、本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムは発電機慣性力発生部27を有し、さらにガバナフリー制御部42を有しているので、周波数の変化は50Hzから49.45Hzであり周波数の一時的な低下は0.55Hzである。これに対し、1台の同期発電機の場合には、図10(b)に示すように、1台の同期発電機で負荷急増分を負担することになり、慣性力分も1台の同期発電機だけとなるので、周波数の変化は50Hzから48.79Hzであり周波数の一時的な低下は1.21Hzであることから、本発明の第2実施形態に係る太陽光発電システムを採用することで電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図7は本発明の第3実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。この第3の実施形態は、図1に示した第1実施形態に対し、太陽光発電設備13に太陽電池パネル20の出力電圧を昇圧するチョッパ46を有したものであり、これに伴い、太陽光発電設備13を制御する交直変換器制御装置にチョッパ制御部47を追加して設け、チョッパ制御部47はチョッパ46の変換比を調整して太陽電池パネル20の出力電圧Vd1を調整し太陽電池パネル20の出力電力PPVを制御し、インバータ制御部25は、チョッパ46で昇圧した電圧を所定値に維持しつつ、インバータ21の出力電圧の位相が位相同期部26で得られた電力系統11の系統電圧の位相と一致するようにインバータ21の出力電力を制御するようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0057】
チョッパ46はDC/DCコンバータであり、入力側の太陽電池パネル20の出力電圧Vdを指令された変換比で昇圧して太陽電池パネル20の端子電圧を適正に維持するものである。いま、チョッパ46のデューティ比をDとすると、入力側の太陽電池パネル20の出力電圧Vd1と出力側のインバータ21の入力電圧Vd2との関係は(1)式で示され、チョッパ46の変換比Kは(2)式で示される。
【0058】
Vd1=(1-D)Vd2 …(1)
K=Vd2/Vd1=1/(1-D) …(2)
インバータ21の入力電圧Vd2は、インバータ制御部19により所定値に維持されるので、チョッパ46の変換比K{=1/(1-D)}を調整することにより、太陽電池パネル20の出力電圧Vd1を調整できる。
【0059】
チョッパ制御部47は。出力抑制制御部24からの太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdr1に基づいて、チョッパ46の変換比を調整して太陽電池パネル20の出力電圧Vd1を調整し太陽電池パネル20の出力電力PPVを制御するものであり、チョッパ制御部47の加算器29f1は、出力抑制制御部24からの太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdr1と直流電圧検出器18d1で検出された太陽電池パネル20の出力電圧(チョッパ46の入力電圧)Vd1との差分(Vdr1-Vd1)を求め直流電圧調整器31bに出力する。加算器29f2では、直流電圧調整器31bの出力と直流電流検出器19dで検出された太陽電池パネル20の出力電流Idとの差分を演算し直流電流調整器33bに出力する。直流電流調整器33bの出力はゲートパルス発生部36bに入力されゲートパルス発生部36bはチョッパ46を制御する。チョッパ46により太陽電池パネル20の出力電圧Vd1を出力抑制制御部24からの電圧基準値Vdrに調整することにより、太陽電池パネル20の出力電力を調整する。
【0060】
インバータ制御部25は、チョッパ46で昇圧した電圧を所定値に維持しつつ、インバータ21の出力電圧の位相が位相同期部26で得られた電力系統11の系統電圧の位相と一致するようにインバータ21の出力電力を制御するものであり、インバータ制御部25の加算器29a1は、直流電圧検出器18d2で検出されたチョッパ46の出力電圧(インバータの入力電圧)Vd2と電圧基準値Vdr2との差分(Vdr1-Vd1)を求め直流電圧調整器31に出力する。これより、インバータ制御部25は、 チョッパ46で昇圧した電圧(インバータの入力電圧)Vd2を電圧基準値Vdr2に維持しつつ、インバータ21の出力電圧の位相が位相同期部26で得られた電力系統11の系統電圧の位相と一致するようにインバータの出力電力を制御する。
【0061】
この第3実施形態の場合も第1実施形態と同様に、負荷が急増した場合には、太陽光発電システムにおいても急増した負荷を賄うように出力を増加させることができ、太陽光発電システムは発電機慣性力発生部27を有しているので、電力系統11の周波数低下を改善できる。
【0062】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。図8は本発明の第4実施形態に係る太陽光発電システムの構成図である。この第4の実施形態は、図7に示した第3実施形態に対し、同期発電機14のガバナフリー運転に相当する周波数調整量をインバータ制御部25に出力するガバナフリー制御部42を追加して設けたものである。図7と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0063】
図8において、ガバナフリー制御部42は図5に示した第2実施形態のガバナフリー制御部42と同一構成であるので説明は省略する。また、図5に示した第2実施形態と同様に、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfは加算器29d3に出力され、加算器29d3は、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfと、PV出力演算部22から出力される太陽電池パネル20の出力電力PPVとを加算し加算値(ΔPf+PPV)を加算器29d1に出力する。そして、加算器29d1は、加算器29d3で得られた加算値(ΔPf+PPV)と、発電機慣性力発生部27で演算された同期発電機14の慣性力相当の周波数変動抑制量Piとを加算し、加算値(ΔPf+PPV+Pi)を出力抑制部24の加算器29d2に出力する。
【0064】
出力抑制制御部24の加算器29d2は、加算器29d1で得られた加算値(ΔPf+PPV+Pi)と、太陽電池パネル20の出力電力PPVの上げ代及び下げ代を確保した出力抑制値Pxとの差分(ΔPf+PPV+Pi-Px)を求め、制御演算要素45にて出力抑制を掛けた電圧値指令値Vdrxを求め、最大値選択回路28に出力する。最大値選択回路28は制御演算要素45からの電圧値指令値Vdrxと最大電力点追従制御部23からの太陽電池パネル20の出力目標値PPVrに対する電圧値指令値Vdrmとのうち大きい方を選択して太陽電池パネル20の出力電圧Vdの電圧基準値Vdrを求める。そして、インバータ制御部25に出力する。
【0065】
これにより、この第4実施形態の場合も第2実施形態の場合と同様に、同期発電機の慣性力相当の周波数変動抑制量Piに加え、ガバナフリー制御部42からの周波数調整量ΔPfも加味されるので、電力系統11の負荷16の急変時に電力系統11の周波数低下を大幅に改善できる。
【0066】
図9は本発明の実施形態と比較例との効果を対比した説明図であり、図9(a)は第1実施形態及び第2実施形態の効果と比較例の効果とを対比して示したグラフ、図9(b)はガバナフリー機能と出力抑制機能を採用した比較例1の電力系統の負荷及び周波数のグラフである。
【0067】
図9(a)は、図4図6と同じように時点20[s]で+0.5・P1kWだけ負荷が急増した場合の系統周波数の低下のグラフであり、曲線E1は第1実施形態(慣性力機能+出力抑制機能)での周波数変化の曲線、曲線E2は第2実施形態(慣性力機能+出力抑制機能+ガバナフリー機能)での周波数変化の曲線、曲線C1は比較例1(ガバナフリー機能+出力抑制機能)での周波数変化の曲線、曲線C2は比較例2(機能無し)での周波数変化の曲線である。
【0068】
第1実施形態(曲線E1)では、慣性力機能及び出力抑制機能を有するので、周波数の低下は図4(a)に示すように49.37Hzであり低下量は0.63Hzである。第2実施形態(曲線E2)では、慣性力機能及び出力抑制機能に加えガバナフリー機能を有するので、周波数の低下は図6(a)に示すように49.45Hzであり低下量は0.55Hzである。
【0069】
比較例1(曲線C1)では、図9(b)に示すように、時点20[s]で+0.5・P1kWだけ負荷が急増した場合は、1台の同期発電機及び太陽光発電システムの双方で急増した負荷を賄うように出力を増加させ(出力抑制機能)、さらに太陽光発電システムにおいてはガバナフリー機能を有しているので、周波数の変化は50Hzから49.10Hzであり周波数の一時的な低下は0.9Hzである。比較例1(曲線C1)は出力抑制機能及びガバナフリー機能を有するが、第1実施形態や第2実施形態と比較して周波数の一時的な低下が大きい。これは慣性力機能を有していないためと考えられる。
【0070】
比較例2(曲線C2)は、慣性力機能、出力抑制機能、ガバナフリー機能のいずれの機能も有していないので、周波数の低下は図4(b)及び図6(b)に示すように50Hzから48.79Hzであり周波数の一時的な低下は1.21Hzである。
【0071】
このように、本発明の実施形態では、太陽光発電設備13を制御する交直変換器制御装置に周波数維持効果を高めるために慣性力を持たせる。そのために、発電機慣性力発生部27を設ける。慣性力が大きいときには,負荷が急変して発電機端子電圧の電圧位相が急変しても、その瞬間は発電機の内部誘起電圧の位相は固定され徐々に変化していく。負荷急変時の発電機の電気出力としては、(1/X)・sinδなる電力が出力されるため、この電力と同等の電力を出力するような機能を太陽光発電設備13を制御する交直変換器制御装置に持たせる。一方、太陽光発電設備13は通常最大電力点追従制御で運転しているため出力を減らす方向には動作するが増やすことはできないと言う性質を有する。
【0072】
そこで、本発明の実施形態の交直変換器制御装置には、出力の部分抑制機能(出力抑制機能)を持たせた上で、系統位相を検出するPLL回路の応答を遅延させた回路を新たに追加し、位相に準じた電力を太陽光発電システムから供給できるようにするというものである。太陽光発電用の交直変換器制御装置としての機能を安定にするために、本体の位相検出機能(PLL機能)は高速に応答するものとして、発電機慣性力発生部27のPLL回路の応答は反応を鈍くする。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
11…電力系統
12…同期発電機発電システム
13…太陽光発電設備
14…同期発電機
15…原動機
16…負荷
17…制御装置
18…電圧検出器
19…電流検出器
20…太陽電池パネル
21…インバータ
22…PV出力演算部
23…最大電力点追従制御部
24…出力抑制制御部
25…インバータ制御部
26…位相同期部
27…発電機慣性力発生部
28…最大値選択回路
29…加算器
30…三相/dq変換部
31…直流電圧調整器
32…無効電力調整器
33…d軸電流調整器
34…q軸電流調整器
35…dq/三相変換部
36…ゲートパルス発生部
37…二相成分演算部
38…位相差検出部
39…位相差調整部
40…積分要素
41…慣性力演算部、
42…ガバナフリー制御部
43…周波数検出器
44…関数発生器
45…制御演算要素
46…チョッパ
47…チョッパ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10