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特許7119780切削インサートおよび刃先交換式切削工具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】切削インサートおよび刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20220809BHJP
   B23C 5/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/06 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018161805
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020032498
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】神原 正史
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 純
(72)【発明者】
【氏名】坂本 千波
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔太
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/120188(WO,A2)
【文献】特開平10-100015(JP,A)
【文献】特許第5715688(JP,B2)
【文献】特開2016-144831(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114094(WO,A1)
【文献】特開2017-159440(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052340(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/001907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互い反対側を向く第1、第2の多角形面と、これら第1、第2の多角形面の周囲に配置される複数の側面とを備えた多角形板状のインサート本体を有し、
このインサート本体の上記第1の多角形面のコーナ部のうち第1のコーナ部には、この第1の多角形面にコーナすくい面を有するコーナ刃が形成されるとともに、
このコーナ刃から上記第1の多角形面の周方向において上記第1のコーナ部に隣接する第2のコーナ部にかけては、上記コーナすくい面に連なる主すくい面を上記第1の多角形面に有して上記コーナ刃の第1の端部から延びる主切刃が形成され、
上記主切刃は、少なくとも上記コーナ刃側に、このコーナ刃の上記第1の端部から上記第2のコーナ部側に向かうに従い上記主すくい面のすくい角が正角側に漸次大きくなるすくい角漸増領域を備えており、
上記コーナ刃は、上記第1の端部に向かうに従い上記第2の多角形面から離れて突出する方向に延びており、上記第1の端部は、この第1の端部とは反対側の上記コーナ刃の第2の端部よりも突出し、
上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面の中心を通るインサート中心線を有しているとともに、
上記第1の多角形面には、上記主すくい面とは反対側において上記コーナすくい面に連なる副すくい面を該第1の多角形面に有して上記コーナ刃の第1の端部とは反対側の該コーナ刃の第2の端部から延びる副切刃が形成されており、
この副切刃は、上記インサート本体の複数の側面のうち該副切刃を介して上記副すくい面に交差する副逃げ面に対向する側面視において、上記コーナ刃の第2の端部から離れるに従い上記第2の多角形面側に向かうように延びていることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
上記すくい角漸増領域は、上記第1の多角形面に対向する平面視において上記コーナ刃の第1の端部から1.0mm~2.0mmの範囲内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
上記すくい角漸増領域におけるすくい角の漸増量が5°以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
上記コーナ刃の第1の端部から上記第1の多角形面の内側に延びる上記主すくい面とコーナすくい面との境界線は、該第1の多角形面に対向する平面視において上記主切刃に20°~60°の範囲内の交差角で交差していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項5】
上記コーナ刃は、上記インサート本体の複数の側面のうち該コーナ刃を介して上記コーナすくい面に交差するコーナ逃げ面に対向する側面視において凹曲線状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
上記コーナ刃の第1の端部は、この第1の端部とは反対側の上記コーナ刃の第2の端部に対し、上記インサート本体の複数の側面のうち該コーナ刃を介して上記コーナすくい面に交差するコーナ逃げ面に対向する側面視において0.05mm~0.15mmの範囲内の突出量で突出していることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
上記副切刃は、上記副逃げ面に対向する側面視において、上記インサート中心線に垂直な平面に対する傾斜角が0°~15°の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項8】
上記主切刃は、上記コーナ刃側では、このコーナ刃の上記第1の端部から上記第2のコーナ部側に向かうに従い、上記複数の側面のうち上記主すくい面と交差する主逃げ面に対向する側面視において、凸曲線を描きつつ上記第2の多角形面から離れた後に該第2の多角形面側に向けて延びていることを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項9】
上記主逃げ面に対向する側面視において、上記主切刃が描く凸曲線の曲率半径は3mm~10mmの範囲内であるとともに、上記コーナ刃の第1の端部から少なくとも1.0mmの範囲で上記主切刃が凸曲線を描いていることを特徴とする請求項に記載の切削インサート。
【請求項10】
上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面の中心を通るインサート中心線回りに120°ずつ回転対称形状であるとともに、上記第1、第2の多角形面に関して表裏反転対称形状の六角形板状に形成されており、
上記第1、第2の多角形面には3つずつの上記第1、第2のコーナ部が、周方向に交互に配置されるとともに、上記インサート中心線方向には互いに反対側に配置されており、
上記第1、第2の多角形面同士では、上記コーナ刃の第1の端部と、この第1の端部とは反対側の上記コーナ刃の第2の端部とが、上記インサート本体の周方向に反対側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項11】
上記インサート本体の側面は、上記インサート中心線に平行に延びていることを特徴とする請求項10に記載の切削インサート。
【請求項12】
軸線回りに回転される工具本体の先端部外周に形成されたインサート取付座に、請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の切削インサートが、上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に位置させるとともに、このコーナ刃の上記第1の端部から延びる上記主切刃を上記工具本体の外周側に位置させ、これらのコーナ刃と主切刃に連なる上記コーナすくい面と主すくい面を工具回転方向に向けて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式切削工具に着脱可能に取り付けられる切削インサート、および該切削インサートが軸線回りに回転される工具本体の先端部外周に着脱可能に取り付けられた刃先交換式切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような切削インサートとして、例えば特許文献1には、3つずつの主コーナと副コーナを上下面に交互に有する実質的に六角形板状のインサート本体を備え、上面の3つの主コーナのうち第1主コーナから隣接する2つの副コーナに向かって順に、コーナ刃と、コーナ刃から離れるにつれて下面に向かって傾斜する直線状の副切刃と、副切刃から離れるにつれて副切刃よりも大きな角度で下面に向かって傾斜する主切刃とが形成され、これら第1主コーナから隣接する2つの副コーナに向かって延びる部位が同一形状である、いわゆる勝手無しの切削インサートが記載されている。また、この特許文献1には、主切刃のすくい角を一定とすることも記載されている。
【0003】
このような切削インサートは、軸線回りに回転される刃先交換式切削工具の工具本体の先端部に形成されたインサート取付座に、上記コーナ刃を工具本体の先端外周側に位置させるとともに、このコーナ刃に連なる1組の副切刃と主切刃を工具本体の外周側に位置させ、他の1組の副切刃と主切刃を工具本体の先端側に位置させて着脱可能に取り付けられる。こうして工具本体に取り付けられた切削インサートにおいては、工具本体の外周側に位置した1組の副切刃と主切刃によって比較的大きな切り込みの壁面切削が行われるとともに、工具本体の先端側に位置した他の1組の副切刃と主切刃のうちの副切刃によって底面の仕上げ切削が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5715688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような切削インサートによる比較的大きな切り込みの切削加工では、薄板等の被削材においてビビリ振動を生じさせないように低い切削抵抗であることや、良好な面品位で精度の高い仕上げ面(壁面、底面)が得られること、さらに生成される切屑の噛み込みを防ぐことが可能な良好な切屑排出性が要求される。そして、特に切屑の排出方向を制御して良好な切屑排出性を得ることができなければ、切屑の噛み込みを生じることによって切削抵抗の増大を招くとともに、噛み込まれた切屑によって被削材の壁面や底面が傷付けられ、仕上げ面の品位や精度が損なわれる結果となる。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、工具本体の外周側に位置させられる主切刃によって生成される切屑の排出方向を制御することにより、切屑の噛み込みを防いで切削抵抗を抑制するとともに仕上げ面に高い品位や精度を確保することが可能な切削インサート、および該切削インサートが着脱可能に取り付けられた刃先交換式切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の切削インサートは、互い反対側を向く第1、第2の多角形面と、これら第1、第2の多角形面の周囲に配置される複数の側面とを備えた多角形板状のインサート本体を有し、このインサート本体の上記第1の多角形面のコーナ部のうち第1のコーナ部には、この第1の多角形面にコーナすくい面を有するコーナ刃が形成されるとともに、このコーナ刃から上記第1の多角形面の周方向において上記第1のコーナ部に隣接する第2のコーナ部にかけては、上記コーナすくい面に連なる主すくい面を上記第1の多角形面に有して上記コーナ刃の第1の端部から延びる主切刃が形成され、上記主切刃は、少なくとも上記コーナ刃側に、このコーナ刃の上記第1の端部から上記第2のコーナ部側に向かうに従い上記主すくい面のすくい角が正角側に漸次大きくなるすくい角漸増領域を備えており、上記コーナ刃は、上記第1の端部に向かうに従い上記第2の多角形面から離れて突出する方向に延びており、上記第1の端部は、この第1の端部とは反対側の上記コーナ刃の第2の端部よりも突出し、上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面の中心を通るインサート中心線を有しているとともに、上記第1の多角形面には、上記主すくい面とは反対側において上記コーナすくい面に連なる副すくい面を該第1の多角形面に有して上記コーナ刃の第1の端部とは反対側の該コーナ刃の第2の端部から延びる副切刃が形成されており、この副切刃は、上記インサート本体の複数の側面のうち該副切刃を介して上記副すくい面に交差する副逃げ面に対向する側面視において、上記コーナ刃の第2の端部から離れるに従い上記第2の多角形面側に向かうように延びていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の刃先交換式切削工具は、軸線回りに回転される工具本体の先端部外周に形成されたインサート取付座に、このような切削インサートが、上記コーナ刃を上記工具本体の先端外周側に位置させるとともに、このコーナ刃の上記第1の端部から延びる上記主切刃を上記工具本体の外周側に位置させ、これらのコーナ刃と主切刃に連なる上記コーナすくい面と主すくい面を工具回転方向に向けて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
このように構成された切削インサートおよび刃先交換式切削工具では、工具本体の外周側に位置させられる主切刃の工具本体先端側のコーナ刃側に、このコーナ刃の第1の端部から工具本体後端側に位置することになる第2のコーナ部側に向かうに従い主すくい面のすくい角が正角側に漸次大きくなるすくい角漸増領域が備えられており、コーナ刃側から主切刃によって生成される切屑は、主切刃の後端側で先端側よりも大きなすくい角の主すくい面に沿って流れるとともに、この後端側で先端側よりも工具回転方向側に大きなスペースが確保されるので、主切刃の後端側で先端側よりも大きな半径でカールさせられることになる。
【0010】
そして、これにより切屑は、このカールの中心線が先端部から後端部に向かうに従い主切刃から離れる方向、すなわち工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向に向けられて流出し、そのままの方向にカールされるように巻き癖が付けられながら排出される。従って、切屑は、主切刃によって切削された壁面から離れるように排出方向が制御されることになるので、切屑が被削材の切削された壁面とインサート本体との間に噛み込まれるのを防ぐことができ、このような切屑の噛み込みによって仕上げ面(壁面)が傷付けられて仕上げ面の品位や精度が損なわれるのを防止することができるとともに、切削抵抗が増大するのも抑えることができる。
さらにまた、上記コーナ刃を、上記第1の端部に向かうに従い上記第2の多角形面から離れて突出する方向に延びるように形成することにより、このコーナ刃から主切刃の先端部に亙って生成される切屑を、さらに工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かうように排出させ易くすることができる。
また、上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面の中心を通るインサート中心線を有しているとともに、上記第1の多角形面には、上記主すくい面とは反対側において上記コーナすくい面に連なる副すくい面を該第1の多角形面に有して上記コーナ刃の第1の端部とは反対側の該コーナ刃の第2の端部から延びる副切刃が形成され、この副切刃を、上記インサート本体の複数の側面のうち該副切刃を介して上記副すくい面に交差する副逃げ面に対向する側面視において、上記コーナ刃の第2の端部から離れるに従い上記第2の多角形面側に向かって延びるように形成することにより、この副切刃によっても切屑の先端部のカール半径を後端部よりも小さくして上述のような中心線の方向に切屑を案内することが可能となる。
【0011】
ここで、上記すくい角漸増領域は、上記第1の多角形面に対向する平面視において上記コーナ刃の第1の端部から1.0mm~2.0mmの範囲内に形成されていればよい。このような範囲内においてすくい角漸増領域が形成されていれば、切屑に上述のような巻き癖を付けて生成させて排出方向を制御することができるので、例えばコーナ刃の第1の端部から2.0mmを越える範囲では主切刃のすくい角が一定とされていてもよい。なお、すくい角漸増領域がコーナ刃の第1の端部から1.0mmよりも短い場合には、切屑に十分な巻き癖を付けることができなくなるおそれがある。
【0012】
また、上記すくい角漸増領域におけるすくい角の漸増量は5°以上であることが望ましい。このすくい角漸増領域におけるすくい角の漸増量が5°を下回ると、上述のように排出方向が工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向となるような巻き癖を十分に切屑に付けることが困難となり、切屑の噛み込みを確実に防ぐことができなくなるおそれがある。
【0013】
さらに、上記コーナ刃の第1の端部から上記第1の多角形面の内側に延びる上記主すくい面とコーナすくい面との境界線は、該第1の多角形面に対向する平面視において上記主切刃に20°~60°の範囲内の交差角で交差していることが望ましい。このような交差角で主すくい面とコーナすくい面とが交差して主すくい面のすくい角漸増領域が形成されることにより、この主すくい面とコーナすくい面との境界線に沿って切屑を案内して一層確実に排出方向を主切刃から離れる方向、すなわち工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向に制御することが可能となる。
【0014】
すなわち、この境界線の上記平面視における主切刃との交差角が20°を下回ると、切屑の排出方向を確実に工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向に制御することができなくなるおそれがある。また、逆に、この交差角が60°を上回ると、切屑が工具本体の後端側に排出され難くなり、工具本体の内周側に流出した切屑が工具本体のチップポケットの壁面に当たって外周側に流れ、主切刃と被削材の切削された壁面との間に噛み込まれるおそれが生じる。
【0015】
記コーナ刃を、上記インサート本体の複数の側面のうち該コーナ刃を介して上記コーナすくい面に交差するコーナ逃げ面に対向する側面視において凹曲線状に形成することにより、このコーナ刃によって生成される切屑の先端部を上述のように工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう中心線回りに確実にカールさせることができ、切屑の噛み込みを一層効果的に防止することが可能となる。
【0016】
なお、このようにコーナ刃を、その第1の端部に向かうに従い第2の多角形面から離れて突出する方向に延びるように形成した場合には、このコーナ刃の第1の端部は、この第1の端部とは反対側の上記コーナ刃の第2の端部に対して、上記インサート本体の複数の側面のうち該コーナ刃を介して上記コーナすくい面に交差するコーナ逃げ面に対向する側面視において0.05mm~0.15mmの範囲内の突出量で突出していることが望ましい。この突出量が0.05mmを下回ると、上述のように切屑の排出方向を工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向に制御する効果が小さくなるおそれがある一方、0.15mmを上回ると第1の端部におけるコーナ刃と主切刃との交差角が小さくなって欠損等を生じ易くなるおそれがある。
【0018】
なお、この場合に、上記副切刃は、上記副逃げ面に対向する側面視において、上記インサート中心線に垂直な平面に対する傾斜角が0°~15°の範囲内とされていることが望ましい。この傾斜角が0°を下回って、副切刃がコーナ刃の第2の端部から離れるに従い第2の多角形面とは反対側に向かうように延びていると、切屑のカールの中心線が工具本体の後端側に向かうに従い外周側に向かうことになって切屑の噛み込みを確実に防止することができなくなるおそれがある。また、この副切刃の上記傾斜角が15°を上回るほど大きいと、切屑が工具本体の後端側に排出され難くなって却って噛み込みを生じるおそれがある。
【0019】
一方、上記主切刃を、上記コーナ刃側では、このコーナ刃の上記第1の端部から上記第2のコーナ部側に向かうに従い、上記複数の側面のうち上記主すくい面と交差する主逃げ面に対向する側面視において、凸曲線を描きつつ上記第2の多角形面から離れた後に該第2の多角形面側に向けて延びるように形成することにより、切屑は主切刃がなす凸曲線に沿った断面凸曲線状に引き延ばされて薄肉に生成されるので、切屑の先端部のカール半径を後端部よりも小さく丸め込み易くすることができる。このため、さらに確実に切屑を工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう中心線回りに切屑をカールさせて排出方向を制御することができる。
【0020】
なお、この場合には、上記主逃げ面に対向する側面視において、上記主切刃が描く凸曲線の曲率半径は3mm~10mmの範囲内であるとともに、上記コーナ刃の第1の端部から少なくとも1.0mmの範囲で上記主切刃が凸曲線を描いていることが望ましい。主切刃が描く上記凸曲線の曲率半径が3mmを下回ると、この部分で主切刃に欠損等が生じ易くなるおそれがある一方、曲率半径が10mmを上回ると凸曲線が平坦になって切屑の排出方向を制御する効果が損なわれるおそれがある。また、このように主切刃が凸曲線を描く範囲がコーナ刃の第1の端部から1.0mmの範囲より短くても、切屑の排出方向を制御する効果を十分に発揮することができなくなるおそれがある。
【0021】
さらに、上記インサート本体が、上記第1、第2の多角形面の中心を通るインサート中心線回りに120°ずつ回転対称形状であるとともに、上記第1、第2の多角形面に関して表裏反転対称形状の六角形板状に形成されており、上記第1、第2の多角形面には3つずつの上記第1、第2のコーナ部が、周方向に交互に配置されるとともに、上記インサート中心線方向には互いに反対側に配置されていて、上記第1、第2の多角形面同士では、上記コーナ刃の第1の端部と、この第1の端部とは反対側の上記コーナ刃の第2の端部とが、上記インサート本体の周方向に反対側に配置されている場合には、1つのインサート本体によって表裏の第1、第2の多角形面(六角形面)それぞれ3回ずつの合計6回のコーナ刃、主切刃、あるいは副切刃の使用が可能となる。
【0022】
さらにまた、この場合には、上記インサート本体の側面を、上記インサート中心線に平行に延びるように形成して、ネガティブタイプの切削インサートとすれば、コーナ刃や主切刃、あるいは上記副切刃の刃物角を確保して刃先強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、コーナ刃側の切屑の先端部のカール半径を後端部よりも小さくして、切屑を工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かうカール中心線回りにカールさせることにより、主切刃によって形成される被削材の壁面から離れる方向に切屑の排出方向を制御することができ、これによって切屑が壁面と主切刃との間に噛み込まれるのを防ぐことができるので、仕上げ面の品位や精度の向上を図ることができるとともに、切削抵抗の増大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の切削インサートの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す実施形態の多角形面(六角形面)に対向する方向から見た平面図である。
図3図2における矢線V方向視の側面図である。
図4図2における矢線W方向視の側面図である。
図5図2における矢線X方向視の側面図である。
図6図2における矢線Y方向視の側面図である。
図7図2における矢線Z方向視の側面図である。
図8図1におけるA部分の拡大図である。
図9図3におけるA部分の拡大図である。
図10図4におけるA部分の拡大図である。
図11図2におけるAA断面図である。
図12図2におけるBB断面図である。
図13図2におけるCC断面図である。
図14図2におけるDD断面図である。
図15図2におけるEE断面図である。
図16図2におけるFF断面図である。
図17図2におけるGG断面図である。
図18図2におけるHH断面図である。
図19図2におけるII断面図である。
図20図2におけるJJ断面図である。
図21】本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態における工具本体の斜視図である。
図22図21に示す工具本体のインサート取付座周辺の拡大斜視図である。
図23】本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態を示す斜視図である。
図24図23に示す実施形態の底面図である。
図25図23に示す実施形態の側面図である。
図26図23に示す実施形態のインサート取付座周辺の拡大側面図である。
図27図23に示す実施形態のインサート取付座周辺の拡大斜視図である。
図28図1に示す実施形態の切削インサートによって切屑が生成される状態を示すものである。
図29】主切刃のすくい角が一定の切削インサートによって切屑が生成される状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図20は、本発明の切削インサートの一実施形態を示すものである。また、図21および図22は、この一実施形態の切削インサートが取り付けられる刃先交換式切削工具の工具本体を示すものであり、図23図27は、この工具本体に本発明の一実施形態の切削インサートが取り付けられた本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態を示すものである。さらに、図28は、この一実施形態の切削インサートによって切屑が生成される状態を示すものであり、図29は、特許文献1に記載されたような主切刃のすくい角が一定の切削インサートによって切屑が生成される状態を示すものである。
【0026】
本実施形態の切削インサートは、そのインサート本体1が超硬合金等の硬質材料により多角形の板状、特に偏六角形の板状に形成され、互いに反対側を向く2つの六角形面(第1、第2の多角形面)2と、これらの六角形面2の周囲に配置される複数(6つ)の側面3とを備えている。また、2つの六角形面2の中央には、インサート本体1を貫通する断面円形の取付孔4が開口している。
【0027】
インサート本体1は、この取付孔4の中心を通るインサート中心線C回りに120°ずつ回転対称形状であるとともに、2つの六角形面2に関して表裏反転対称形状である。なお、2つの六角形面2における取付孔4の開口部の周りはインサート中心線Cに垂直な円環状の平面部2aとされている。また、インサート中心線C方向から見たときの六角形面2の各辺の長さは略等しくされている。
【0028】
2つの六角形面2の各6つのコーナ部は、該六角形面2の周方向に交互に第1のコーナ部C1と第2のコーナ部C2とされている。第1のコーナ部C1において交差する六角形面2の2つの辺稜部の挟角は、第2のコーナ部C2において交差する六角形面2の2つの辺稜部の挟角よりも小さくされており、従って120°よりも小さくされていて、略90°に設定されている。
【0029】
また、2つの六角形面2同士では、一方の六角形面2における第1のコーナ部C1のインサート中心線C方向の反対側に他方の六角形面2の第1のコーナ部C1が位置し、一方の六角形面2における第2のコーナ部C2のインサート中心線C方向の反対側には他方の六角形面2の第2のコーナ部C2が位置している。なお、インサート本体1の複数の側面3はインサート中心線Cに平行な平面状であり、本実施形態の切削インサートはネガティブタイプの切削インサートとされる。
【0030】
第1のコーナ部C1には、各六角形面2にコーナすくい面5aを有するコーナ刃5が形成されている。このコーナ刃5は、インサート中心線C方向から見た六角形面2に対向する平面視において凸円弧等の凸曲線状に形成されている。従って、インサート本体1の側面3のうち、このコーナ刃5を介してコーナすくい面5aに交差する2つの側面3の交差稜線部はインサート中心線Cに平行な円筒面等の凸曲面状に形成され、コーナ逃げ面5bとされる。
【0031】
さらに、上記コーナすくい面5aと、次述する主すくい面6aおよび副すくい面7aとは、これらコーナすくい面5a、主すくい面6a、および副すくい面7aが形成された六角形面2の内側に向かうに従い、インサート中心線Cに垂直な平面に対して、この六角形面2とは反対の六角形面2側に向かうように傾斜している。
【0032】
また、このコーナ刃5の一方の端部である第1の端部(図2においてインサート中心線Cを中心としたコーナ刃5の反時計回り方向側の端部)5Aから、六角形面2の周方向において第1の端部5A側に隣接する第2のコーナ部C2にかけては、コーナすくい面5aに連なる主すくい面6aを各六角形面2に有する主切刃6が形成されている。インサート本体1の複数の側面3は平面状であるので、インサート中心線C方向から見た六角形面2に対向する平面視において主切刃6は直線状に形成され、これらの複数の側面3のうち、この主切刃6を介して主すくい面6aに交差する側面3は主切刃6の主逃げ面6bとされる。
【0033】
さらに、第1の端部5Aと反対側のコーナ刃5の他方の端部である第2の端部(図2においてインサート中心線Cを中心としたコーナ刃5の時計回り方向側の端部)5Bから、六角形面2の周方向において第2の端部5Bに隣接する第2のコーナ部C2にかけては、やはりコーナすくい面5aに連なる副すくい面7aを各六角形面2に有する副切刃7が形成されている。この副切刃7も主切刃6と同様にインサート中心線C方向から見た六角形面2に対向する平面視において直線状に形成され、インサート本体1の複数の側面3のうち、この副切刃7を介して副すくい面7aに交差する側面3は副切刃7の副逃げ面7bとされる。
【0034】
従って、インサート本体1が2つの六角形面2について表裏反転対称形状とされた本実施形態の切削インサートでは、これら2つの六角形面2同士において、コーナ刃5から主切刃6と副切刃7がインサート本体1の周方向において反対向きに延びることになる。すなわち、インサート本体1の1つの側面3は、一方の六角形面2との交差稜線部に主切刃6が形成されて、この主切刃6の主逃げ面6bとされるとともに、他方の六角形面2との交差稜線部に副切刃7が形成されて、この副切刃7の副逃げ面7bとされる。
【0035】
コーナ刃5は、上記第2の端部5Bから第1の端部5Aに向かうに従い、このコーナ刃が形成された六角形面2とは反対の六角形面2から離れて突出する方向に延びている。すなわち、コーナ刃5が第1の多角形面(一方の六角形面2)に形成されている場合には、このコーナ刃5はその第2の端部5Bから第1の端部5Aに向かうに従い第2の多角形面(他方の六角形面2)から離れて突出する方向に延びている。
【0036】
ここで、このコーナ刃5の第1の端部5Aは、この第1の端部5Aとは反対側のコーナ刃5の第2の端部5Bに対し、インサート中心線Cに垂直な平面に沿ってインサート本体1の複数の側面3のうち該コーナ刃5を介してコーナすくい面5aに交差する上記コーナ逃げ面5bに対向する側面視において、図5に示すようにインサート中心線C方向に0.05mm~0.15mmの範囲内の突出量tで突出している。また、このコーナ刃5は、上記コーナ逃げ面5bに対向する側面視において、図5図8に示すように凹曲線状をなすように形成されている。
【0037】
さらに、このコーナ刃5の第1の端部5Aに連なる主切刃6は、コーナ刃5側では、このコーナ刃の第1の端部5Aから、主切刃6を間にして第1のコーナ部C1とは反対側の上記第2のコーナ部C2側に向かうに従い、インサート本体1の複数の側面3のうち主すくい面6aと交差する主逃げ面6bに垂直に対向する側面視において図9図10に示すように、凸円弧等の凸曲線を描きつつ該主切刃6が形成された六角形面2とは反対の六角形面2から離れた後に、この主切刃6が形成された六角形面2とは反対の六角形面2側に向けて延びている。
【0038】
すなわち、主切刃6が第1の多角形面(一方の六角形面2)に形成されている場合は、この主切刃6は、この第1の多角形面のコーナ刃5の第2の端部5Bから第2のコーナ部C2に向かうに従い、コーナ刃5側において凸円弧等の凸曲線を描きつつ第2の多角形面(他方の六角形面2)から離れた後に、第2の多角形面(六角形面2)側に向けて延びている。
【0039】
ここで、上記主逃げ面6bに垂直に対向する側面視において、コーナ刃5側で主切刃6が描く凸曲線の曲率半径Rは3mm~10mmの範囲内であるとともに、コーナ刃5の第1の端部5Aから少なくとも1.0mmの範囲で主切刃6が凸曲線を描いている。なお、この範囲よりも第2のコーナ部C2側では、主切刃6は、上記側面視に凸曲線を描いたまま反対の六角形面2側に延びていてもよく、また直線状に反対の六角形面2側に延びていてもよく、凹曲線を描いていてもよい。
【0040】
一方、副切刃7は、インサート本体1の複数の側面3のうち該副切刃7を介して副すくい面7aに交差する上記副逃げ面7bに垂直に対向する側面視において、コーナ刃5の上記第2の端部5Bからインサート中心線Cに垂直な平面Pに沿って延びるように形成されるか、またはコーナ刃5の第2の端部5Bから離れるに従い該副切刃7が形成された六角形面2とは反対の六角形面2側に向かって延びるように形成されている。本実施形態では、図3および図9に示すようにコーナ刃5の第2の端部5Bから離れるに従い反対の六角形面2側に向かって延びるように形成されている。
【0041】
すなわち、副切刃7が第1の多角形面(一方の六角形面2)に形成されている場合、本実施形態では副切刃7は、この第1の多角形面のコーナ刃5の第2の端部5Bから第2のコーナ部C2に向かうに従い、第2の多角形面(他方の六角形面2)側に向けて延びている。なお、副切刃7は、上記副逃げ面7bに対向する側面視において、インサート中心線Cに垂直な平面Pに対する傾斜角αが0°~15°の範囲内とされている。副切刃7がインサート中心線Cに垂直な平面Pに沿って延びている場合には、この傾斜角αは0°である。
【0042】
また、主切刃6は、コーナ刃5の第1の端部5Aから、この第1の端部5A側の第2のコーナ部C2までの範囲で延びているのに対し、副切刃7は、コーナ刃5の第2の端部5Bから、この第2の端部5B側の第2のコーナ部C2に向けて主切刃6よりも短い範囲で延びている。コーナ刃5の第2の端部5Bとは反対側の副切刃7の端部から第2のコーナ部C2にかけての部分は、六角形面2と側面3との交差稜線部が副切刃7の上記傾斜角αよりも大きな角度で反対の六角形面2側に向かうように傾斜しており、この部分が切削に使用されることはない。
【0043】
さらにまた、コーナすくい面5a、主すくい面6a、および副すくい面7aは、それぞれコーナ刃5側、主切刃6側、および副切刃7側に、図11図16図19および図20に示すようにインサート中心線Cに沿って六角形面2に対向する方向から見た平面視におけるコーナ刃5、主切刃6、および副切刃7に直交する断面において、コーナすくい面5a、主すくい面6a、および副すくい面7aよりもインサート中心線Cに垂直な平面に対して緩やかな一定の傾斜角で六角形面2の内側に向かうに従い反対の六角形面2側に向かって延びるランド部5c、6c、7cを備えている。
【0044】
さらに、これらコーナすくい面5a、主すくい面6a、および副すくい面7aのランド部5c、6c、7cとコーナ刃5、主切刃6、および副切刃7との間には、これらのランド部5c、6c、7cよりもインサート中心線Cに垂直な平面に対してさらに緩やかな傾斜角で六角形面2の内側に向かうに従い反対の六角形面2側に向かうホーニング部5d、6d、7dが形成されている。このホーニング部5d、6d、7dは上記断面においてランド部5c、6c、7cよりも幅が狭い。なお、これらのホーニング部5d、6d、7dは、同じく上記断面においてインサート中心線Cに垂直な平面に沿って形成されていてもよい。
【0045】
また、これらコーナすくい面5a、主すくい面6a、および副すくい面7aは、上記断面においてそれぞれのランド部5c、6c、7cに凸曲線をなして接して直線状に六角形面2の内側に向かうに従い反対の六角形面2側に延び、さらに凹曲線をなして六角形面2の上記平面部2aに接するように形成されている。
【0046】
なお、本実施形態では、コーナ刃5が上述のようにコーナ逃げ面5bに対向する側面視において凹曲線状をなして第2の端部5Bから離れて第1の端部5Aに向かうに従い突出するように形成されているので、コーナすくい面5aおよびそのランド部5cも、副すくい面7aおよびそのランド部7cとの境界線Lから主すくい面6aおよびそのランド部6cとの境界線Mに向かうに従い、凹曲面を描きつつインサート中心線C方向に突出するように形成される。
【0047】
また、本実施形態では、主切刃6が、コーナ刃5側で、このコーナ刃5の第1の端部5Aから第2のコーナ部C2側に向かうに従い、主逃げ面6bに対向する側面視において、凸曲線を描きつつ反対の六角形面2から離れた後にこの反対の六角形面2側に向けて延びているので、主すくい面6aおよびそのランド部6cも、コーナすくい面5aおよびそのランド部5cとの上記境界線Mから第2のコーナ部C2側に向かうに従い凸曲面をなして反対の六角形面2から離れた後に、この反対の六角形面2側に向かうように延びることになる。
【0048】
なお、コーナ刃5の第1の端部5Aから六角形面2の内側に延びる上記主すくい面6aおよびそのランド部6cとコーナすくい面5aおよびそのランド部5cとの境界線Mは、図2に示すようにインサート中心線C方向に沿ってこの六角形面2に対向する方向から見た平面視において、上記主切刃6に対して20°~60°の範囲内の交差角βで交差している。
【0049】
そして、さらに上記構成の切削インサートでは、主切刃6は、少なくともコーナ刃5側に、このコーナ刃5の上記第1の端部5Aから上記第2のコーナ部C2側に向かうに従い主すくい面6aのすくい角θが正角側に漸次大きくなるすくい角漸増領域6eを備えている。すなわち、このすくい角漸増領域6eでは、インサート中心線Cに沿って六角形面2に対向する方向から見た平面視において主切刃6に直交する断面における主すくい面6aがインサート中心線Cに垂直な平面に対してなす角度であるすくい角θが、図11図14に示すようにコーナ刃5の第1の端部5Aから主切刃6に沿って離れるに従い漸次大きくなる。
【0050】
ここで、本実施形態では、このすくい角漸増領域6eは、インサート中心線C方向から見て六角形面2に対向する平面視において、コーナ刃5の第1の端部5Aから1.0mm~2.0mmの範囲N内に形成されている。また、本実施形態では、このすくい角漸増領域6eよりも第2のコーナ部C2側においては、主すくい面6aの上記すくい角θは一定とされている。さらに、このすくい角漸増領域6eにおけるすくい角θの漸増量、すなわちコーナ刃5の第1の端部5Aと、この第1の端部5Aとは反対側のすくい角漸増領域6eの終端との主すくい面6aのすくい角θの差は5°以上である。
【0051】
このような切削インサートは、図21および図22に示すような本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態における工具本体11の先端部外周に形成されたインサート取付座12にクランプネジ13によって着脱可能に取り付けられ、図23図27に示すような上記実施形態の刃先交換式切削工具(刃先交換式フライス)を構成する。
【0052】
本実施形態では、工具本体11は先端部(図25における下側部分)が大径とされた軸線Oを中心とした外形略円盤状に形成されており、この先端部の外周には後端側に延びるチップポケット14が形成されていて、インサート取付座12は、このチップポケット14の工具回転方向Tを向く壁面に、該壁面と工具本体11の先端面および外周面に開口する凹所として形成されている。本実施形態では、複数(4つ)のチップポケット14およびインサート取付座12が周方向に等間隔に形成されている。
【0053】
インサート取付座12は、図21および図22に示すように工具回転方向Tを向く円環状の平坦な底面12aと、この底面12aに垂直に工具回転方向T側に立ち上がる、工具本体11の先端外周側を向く壁面12bと先端内周側を向く壁面12cとを備えている。底面12aは工具本体11の後端側に向かうに従い工具回転方向Tに向かうように僅かに傾斜しており、その中央部には上記クランプネジ13がねじ込まれるネジ孔12dが形成されている。また、底面12aと壁面12b、12cとの間と、工具本体11の先端面および外周面と底面12aとの交差稜線部とには、インサート本体1との干渉を防ぐ逃げ部が形成されている。
【0054】
このようなインサート取付座12に、上記実施形態の切削インサートは、そのインサート本体1の1つの六角形面2を工具回転方向Tに向け、この1つの六角形面2の1つのコーナ刃5を図23および図25に示すように工具本体11の先端外周側に突出させるとともに、このコーナ刃5に連なる主切刃6を図25に示すように工具本体11の外周側に突出させて、図26に示すように後端側に向かうに従い工具回転方向Tとは反対側に延びるように、また該コーナ刃5に連なる副切刃7を図25に示すように工具本体11の先端側に突出させて、軸線Oに垂直な平面上か、工具本体11の内周側に向かうに従い僅かに後端側に延びるようにして着座させられる。
【0055】
また、インサート本体1の上記1つの六角形面2とは反対の他の1つの六角形面2は、その中央部の上記平面部2aがインサート取付座12の底面12aに密着するとともに、工具本体11の先端側に向けられた副切刃7以外の上記1つの六角形面2における残り2つの副切刃7に連なる副逃げ面7bが形成されたインサート本体1の2つの側面3がインサート取付座12の上記壁面12b、12cに当接させられる。なお、これらの壁面12b、12cの間の壁面は、こうして着座させられたインサート本体1と接触することはなく、対向する側面3との間に僅かな間隔があけられる。
【0056】
そして、このように着座させられたインサート本体1は、取付孔4に挿通されたクランプネジ13がネジ孔12dにねじ込まれることにより、上記他の1つの六角形面2の平面部2aが底面12aに押し付けられるとともに、上記2つの側面3が壁面12b、12cにそれぞれ押し付けられてインサート取付座12に固定され、工具本体11に取り付けられる。
【0057】
このように構成された切削インサートおよび該切削インサートを取り付けた刃先交換式切削工具では、工具本体11の外周側に突出させられる主切刃6の工具本体11先端側のコーナ刃5側に、このコーナ刃5の第1の端部5Aから工具本体11後端側に位置することになる第2のコーナ部C2側に向かうに従い主すくい面6aのすくい角θが正角側に漸次大きくなるすくい角漸増領域6eが備えられている。
【0058】
このため、コーナ刃5側から主切刃6によって生成される切屑は、主切刃6の後端側ですくい角θの大きな主すくい面6aに沿って流れるとともに、先端側よりも工具回転方向T側に大きなスペースが後端側に確保されるので、主切刃6の後端側で先端側よりも大きな半径でカールさせられることになる。従って、これにより切屑は、そのカールの中心線が先端から後端に向かうに従い主切刃6から離れる方向、すなわち工具本体11の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向に向けられて流出し、そのままの方向にカールされるように巻き癖が付けられつつ排出される。
【0059】
ここで、図28は上記実施形態の切削インサートによって切屑が生成される状態を示すものであり、図29は特許文献1に記載された主切刃のすくい角が一定の切削インサートによって切屑が生成される状態を示すものである。なお、これらの図は、切削条件として切削速度:160m/min、切り込み:2.0mm、1刃当たりの送り:0.2mm/t、主切刃6の軸線O回りの直径:80mmで、主切刃のコーナ刃側の部分が主すくい面に対向する方向から見てなす凸曲線の曲率半径Rは5.2mm、被削材:SCM440を切削加工した場合をシミュレーションしている。また、図28および図29の各図の左側はインサート本体を工具回転方向から見た図、右側は工具本体の外周側から見た図である。
【0060】
これら図28および図29の結果より、主切刃のすくい角が一定の場合の図29では、切屑が、主切刃の先端側(図29の各図の下側)でカールの半径が大きく、後端側(図29の各図の上側)でカールの半径が小さくなっており、カールの中心線は後端側に向かうに従い工具本体の外周側(図29の各左側の図の右側)に延びている。このため、主切刃によって形成された被削材の壁面に切屑が接触したり、壁面と主切刃との間に切屑が噛み込まれたりするおそれがあることが分かる。
【0061】
これに対して、図28では、図29とは逆に、切屑は、主切刃の先端側(図28の各図の下側)でカールの半径が小さく、後端側(図28の各図の上側)ではカールの半径が大きくなっていて、カールの中心線は後端側に向かうに従い工具本体の内周側(図28の各左側の図の左側)に延びている。すなわち、切屑は、主切刃によって切削された被削材の壁面から離れるように排出方向が制御されていることが分かる。なお、この図28では、すくい角漸増領域はコーナ刃の第1の端部から約1.0mmの範囲とされ、すくい角θは20°から30°に漸増している。
【0062】
このように、上記構成の切削インサートおよび刃先交換式切削工具によれば、主切刃6によって生成された切屑が、被削材の切削された壁面に接触したり、インサート本体1との間に噛み込まれたりするのを避けることができる。このため、たとえ切り込みが大きな切削条件でも、このような切屑の噛み込みによって仕上げ面(壁面)が傷付けられるのを防ぐことができるとともに、切削抵抗が増大するのも抑制することができ、高品位で高精度の仕上げ面を形成することができ、また薄板の切削加工でもビビリ振動が発生するのを防ぐことが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、上記すくい角漸増領域6eが、六角形面2に対向する平面視においてコーナ刃5の第1の端部5Aから1.0mm~2.0mmの比較的短い範囲N内に形成されている。このような短い範囲N内においても、すくい角漸増領域6eが形成されていれば、図28に示したように主切刃6の先端側(コーナ刃5側)で切屑のカール半径を小さくして上述のような巻き癖を付けることにより、切屑の排出方向を制御することが可能となる。なお、すくい角漸増領域6eがコーナ刃5の第1の端部5Aから1.0mmよりも短い場合には、このような巻き癖を十分に切屑に付けることができなくなるおそれがある。
【0064】
しかも、本実施形態においては、コーナ刃5の第1の端部5Aから2.0mmを越えたすくい角漸増領域6eよりも第2のコーナ部C2側の部分では、主すくい面6aのすくい角θが一定とされているので、主切刃6の後端側(第2のコーナ部C2側)で主切刃の刃物角が必要以上に小さくなることがなく、切り込みが大きい場合でも主切刃6に欠損やチッピングが生じるのを防ぐことができる。ただし、コーナ刃5の第1の端部5Aから2.0mmを越える範囲でも主すくい面6aのすくい角θが漸増するように形成されていてもよい。
【0065】
さらに、本実施形態では、このすくい角漸増領域6eにおける主すくい面6aのすくい角θの漸増量が5°以上とされており、これにより主切刃6のコーナ刃5側において生成される切屑に確実にカール半径が小さくなるような巻き癖を付けることができる。すなわち、このすくい角漸増領域6eにおけるすくい角θの漸増量が5°を下回ると、主切刃6のコーナ刃5側で切屑のカール径を小さくして上述のように排出方向が工具本体の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向となるような確実に切屑に付けることが困難となるおそれがある。
【0066】
なお、本実施形態では、主すくい面6aの主切刃6側にランド部6cとホーニング部6dが形成されているが、これらランド部6cやホーニング部6dのインサート中心線Cに垂直な平面に対する傾斜角、すなわちすくい角は、主すくい面6aのすくい角漸増領域6eに連動してコーナ刃5の第1の端部5Aから離れるに従い漸増していてもよく、また一定であってもよい。
【0067】
さらにまた、本実施形態では、コーナ刃5の第1の端部5Aから六角形面2の内側に延びる主すくい面6aとコーナすくい面5aとの境界線Mが、インサート中心線Cに沿って六角形面2に対向する方向から見た平面視において、主切刃6に20°~60°の範囲内の交差角βで交差しており、主すくい面6aのすくい角漸増領域6eは、このように主切刃6に対して傾斜した境界線から延びることになる。このため、さらに確実に切屑の排出方向を主切刃6から離れる方向に制御して、噛み込みの発生を防止することが可能となる。
【0068】
すなわち、上記交差角βが20°を下回ると、上記平面視において境界線Mが主切刃6に近づきすぎて切屑の排出方向を主切刃6から離れる方向に確実に制御することが困難となるおそれがある。一方、この交差角βが60°を上回ると、切屑が工具本体11の後端側に排出され難くなり、工具本体11の内周側に流出した切屑がチップポケット14の工具本体11外周側を向く壁面に当たってしまって外周側に流れ、主切刃6と主切刃6によって形成された被削材の壁面との間に噛み込まれるおそれが生じる。
【0069】
一方、本実施形態では、コーナ刃5が、その第1の端部5Aに向かうに従い、このコーナ刃5が形成された六角形面2とは反対の六角形面2から離れてインサート中心線C方向に突出する方向に延びるように形成されている。このため、このコーナ刃5から主切刃6の先端部によって生成される切屑の先端部を小さく巻き込むように一層小さなカール半径として、さらに工具本体11の後端側に向かうに従い内周側に向かうように排出方向を制御することが可能となる。
【0070】
しかも、本実施形態では、コーナ刃5がコーナ逃げ面5bに対向する側面視において凹曲線状に形成されており、この凹曲線に沿って生成される切屑の先端部をさらに小さな半径にカールさせることができるとともに、コーナすくい面5aも凹曲面状に形成されるので切屑の先端部をさらに小さな半径にカールさせることができる。従って、切屑のカールの中心線を一層確実に主切刃から離れて工具本体11の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向として排出方向を制御することができるので、切屑の噛み込みを効果的に防止することができる。ただし、第1の端部5Aが第2の端部5Bよりも突出していれば、コーナ刃5は上記側面視に直線状であってもよい。
【0071】
また、本実施形態では、上述のようにコーナ刃5を第1の端部5Aに向かうに従いインサート中心線C方向に突出する方向に延びるように形成する場合に、この第1の端部5Aを、これとは反対側のコーナ刃5の第2の端部5Bに対して、コーナ逃げ面5bに対向する側面視においてインサート中心線C方向の突出量tを0.05mm~0.15mmの範囲内としている。これにより、切屑の排出方向をより効果的に制御することができるとともに、第1の端部5Aにおいてコーナ刃5や主切刃6に欠損等が生じるのを防ぐことができる。
【0072】
すなわち、この突出量tが0.05mmを下回るほど小さいと、上述のように切屑の排出方向を工具本体11の後端側に向かうに従い内周側に向かう方向に制御する効果が小さくなるおそれがある。その一方で、この突出量tが0.15mmを上回ると、コーナ刃5の第1の端部5Aにおけるコーナ刃5と主切刃6との交差角が小さくなってしまい、この第1の端部5Aにおいてコーナ刃5や主切刃6に欠損やチッピング等が生じ易くなるおそれがある。
【0073】
さらに、本実施形態の切削インサートは、そのインサート本体1が、表裏の六角形面2(第1、第2の多角形面)の中心を通るインサート中心線Cを有しているとともに、これらの六角形面2には、各六角形面2の主すくい面6aとは反対側においてコーナすくい面5aに連なる副すくい面7aを有してコーナ刃5の第1の端部5Aとは反対側の第2の端部5Bから延びる副切刃7が形成されており、この副切刃7によって被削材の加工面の底面を平滑に仕上げ加工することができる。
【0074】
そして、この副切刃7は、本実施形態では、その副逃げ面7bに対向する側面視において、コーナ刃5の第2の端部5Bから離れるに従い、該副切刃7が形成された六角形面2とは反対の六角形面2側に向かって延びるように形成されており、この副切刃7により、コーナ刃5から工具本体11の内周側に連続する切屑を、該工具本体11の内周側に引き込むようにして生成することができる。このため、切屑のカールの中心線をさらに確実に工具本体11の後端側に向かうに従い内周側に向かうように案内して排出方向を制御することが可能となる。
【0075】
なお、このように副切刃7を形成した場合には、参考例では、この副切刃7は、上記副逃げ面7bに対向する側面視において、コーナ刃5の第2の端部5Bからインサート中心線Cに垂直な平面Pに沿って形成されていて、この平面Pに対する傾斜角αが0°であってもよく、すなわちコーナ刃5の第2の端部5Bから離れるに従い反対の六角形面2から離れる方向に形成されて切屑が工具本体11の外周側に押し出されるようにされていなければよい。ただし、この傾斜角αが大きすぎると、切屑が工具本体11の内周側に引き込まれすぎて後端側に排出され難くなり、チップポケット14に滞留して噛み込みを生じ易くなるので、傾斜角αは15°以下とされるのが望ましい。
【0076】
さらにまた、本実施形態では、上記主切刃6が、主すくい面6aのすくい角漸増領域6eが形成されたコーナ刃5側で、このコーナ刃5の第1の端部5Aから第2のコーナ部C2側に向かうに従い、主逃げ面6bに対向する側面視において、凸曲線を描きつつ反対の六角形面2(第2の多角形面)から離れた後に、この反対の六角形面2側に向けて延びるように形成されている。
【0077】
このため、切屑は、コーナ刃5側の先端部で、主切刃6がなす凸曲線に沿った断面凸曲線状に引き延ばされて薄肉に生成されるので、より一層小さなカール半径に丸め込み易くなる。従って、この切屑の先端部のカール半径をさらに確実に後端部よりも小さくしてカールの中心線を工具本体11の後端側に向かうに従い内周側に向けさせ、切屑排出方向を制御することができる。
【0078】
なお、このように主切刃6がコーナ刃5側で主逃げ面6bに対向する側面視に第1の端部5Aから第2のコーナ部C2側に向かうに従い凸曲線を描きつつ反対の六角形面2から離れた後に反対の六角形面2側に向けて延びている場合には、本実施形態のように主切刃6が描く凸曲線の曲率半径Rは3mm~10mmの範囲内であるとともに、コーナ刃5の第1の端部5Aから少なくとも1.0mmの範囲で凸曲線をなしているのが望ましい。
【0079】
この主切刃6が描く凸曲線の曲率半径Rが3mmを下回ると、この部分で主切刃6が突起状となって欠損等が生じ易くなるおそれがある一方、この曲率半径Rが10mmを上回ると凸曲線が平坦になり、上述のように切屑の排出方向を制御する効果が損なわれるおそれがある。また、この主切刃6が凸曲線を描く範囲がコーナ刃5の第1の端部5Aから1.0mmの範囲より短い場合にも、切屑の排出方向を制御する効果を十分に発揮することができなくなるおそれがある。
【0080】
さらに、本実施形態では、インサート本体1が、第1、第2の多角形面である2つの六角形面2の中心を通るインサート中心線C回りに120°ずつ回転対称形状であるとともに、これら2つの六角形面2に関して表裏反転対称形状の六角形板状に形成されており、2つの六角形面2には3つずつの第1、第2のコーナ部C1、C2が、周方向に交互に配置されるとともに、インサート中心線C方向には互いに反対側に配置されていて、2つの六角形面2同士では、コーナ刃5の第1の端部5Aと第2の端部5Bとがインサート本体1の周方向に反対側に配置されており、従って表裏の六角形面2同士で主切刃6と副切刃7とがこれら第1、第2の端部5A、5Bから周方向に反対向きに延びている。
【0081】
すなわち、本実施形態の切削インサートは、勝手付きの切削インサートであり、1つのインサート本体1の表裏の六角形面2でそれぞれ3回ずつの合計6回のコーナ刃5、主切刃6、および副切刃7の使用を可能とすることができる。
【0082】
また、本実施形態の切削インサートは、インサート本体1のコーナ逃げ面5b、主逃げ面6b、および副逃げ面7bが形成される側面3がインサート中心線Cに平行に延びるように形成されたネガティブタイプの切削インサートであるので、コーナ刃5や主切刃6、副切刃7の刃物角を確保して刃先強度を向上させることができ、これらコーナ刃5、主切刃6、および副切刃7にチッピングや欠損等が生じるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 インサート本体
2 六角形面(第1、第2の多角形面)
3 側面
4 取付孔
5 コーナ刃
5A コーナ刃5の第1の端部
5B コーナ刃5の第2の端部
5a コーナすくい面
5b コーナ逃げ面
6 主切刃
6a 主すくい面
6b 主逃げ面
6e すくい角漸増領域
7 副切刃
7a 副すくい面
7b 副逃げ面
11 工具本体
12 インサート取付座
13 クランプネジ
C インサート中心線
L コーナすくい面5aおよびそのランド部5cと副すくい面7aおよびそのランド部7cとの境界線
M コーナすくい面5aおよびそのランド部5cと主すくい面6aおよびそのランド部6cとの境界線
N すくい角漸増領域6eが形成される範囲
P コーナ刃5の第2の端部5Bから延びるインサート中心線Cに垂直な平面
t コーナ刃5の第1の端部5Aの第2の端部5Bに対する突出量
R 主逃げ面6bに対向する側面視において主切刃6が描く凸曲線の曲率半径
O 工具本体11の軸線
T 工具回転方向
α 副逃げ面7bに対向する側面視において副切刃7が平面Pに対してなす傾斜角
β 六角形面2に対向する方向から見た平面視において境界線Mが主切刃6に対してなす交差角
θ すくい角漸増領域6eにおける主すくい面6Aのすくい角
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