(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20220809BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20220809BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220809BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20220809BHJP
G03G 7/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03G15/01 J
G03G15/01 114Z
G03G15/20 510
G03G15/16 103
G03G9/08 391
G03G7/00 M
(21)【出願番号】P 2018162769
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 智
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-142894(JP,A)
【文献】特開2016-001260(JP,A)
【文献】特開平11-237800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0351190(US,A1)
【文献】特開平07-261459(JP,A)
【文献】特開2003-005424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 15/20
G03G 15/16
G03G 9/08
G03G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
12297以上14019以下の範囲内である重量平均分子量を有する結着剤を含む第1トナーを用いて第1トナー像を形成する第1トナー像形成部と、
第2トナーを用いて第2トナー像を形成する第2トナー像形成部と、
高分子化合物を含む媒体に前記第1トナー像を転写させたのち、前記第1トナー像が転写された領域のうちの少なくとも一部と重なる領域において前記媒体に前記第2トナー像を転写させる転写部と
を備え、
前記第1トナー像および前記第2トナー像のそれぞれが転写される側における前記媒体の表面のベック平滑度は、100000秒以上である、
画像形成装置。
【請求項2】
12297以上14019以下の範囲内である重量平均分子量を有する結着剤を含む第1トナーを用いて、第1トナー像を形成し、
第2トナーを用いて、第2トナー像を形成し、
高分子化合物を含む媒体に、前記第1トナー像を転写させたのち、前記第1トナー像が転写された領域のうちの少なくとも一部と重なる領域において前記媒体に前記第2トナー像を転写させ、
前記第1トナー像および前記第2トナー像のそれぞれが転写される側における前記媒体の表面のベック平滑度は、100000秒以上である、
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを用いて画像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置が広く普及している。インクジェット方式などの他の方式の画像形成装置と比較して、鮮明な画像が短時間で得られるからである。
【0003】
この電子写真方式の画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」と呼称する。)は、トナーを用いて媒体に画像を形成する。この場合には、静電潜像に付着されたトナーが媒体に転写されたのち、そのトナーが媒体に定着されることにより、画像が形成される。
【0004】
画像形成装置の構成は、画像の品質に影響を及ぼすため、その画像形成装置の構成に関しては、様々な提案がなされている。具体的には、媒体の表面粗さが異なる場合においても所望の光沢を有する画像を得るために、媒体の上に透明現像剤像を形成したのち、その透明現像剤像の上に有色現像剤像を形成している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成装置の構成に関して様々な提案がなされているが、画像の品質は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高品質な画像を形成することが可能な画像形成装置および画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態の画像形成装置は、12297以上14019以下の範囲内である重量平均分子量を有する結着剤を含む第1トナーを用いて第1トナー像を形成する第1トナー像形成部と、第2トナーを用いて第2トナー像を形成する第2トナー像形成部と、高分子化合物を含む媒体に第1トナー像を転写させたのち、その第1トナー像が転写された領域のうちの少なくとも一部と重なる領域において媒体に第2トナー像を転写させる転写部とを備えたものである。
【0009】
本発明の一実施形態の画像形成方法は、12297以上14019以下の範囲内である重量平均分子量を有する結着剤を含む第1トナーを用いて第1トナー像を形成し、第2トナーを用いて第2トナー像を形成し、高分子化合物を含む媒体に第1トナー像を転写させたのち、その第1トナー像が転写された領域のうちの少なくとも一部と重なる領域において媒体に第2トナー像を転写させるものである。
【0010】
上記した「重量平均分子量」は、高速液体クロマトグラフィ法(HPLC)を用いて第1トナーを分析することにより求められる。この場合には、例えば、分析装置として株式会社島津製作所製の高速液体クロマトグラフ Prominenceシステム LC-20ADを用いると共に、分析条件はオーブン温度=40℃およびポンプ流量=10000ml/分(=10000cm3 /分)とする。なお、分析手順の詳細に関しては、後述する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態の画像形成装置または画像形成方法によれば、重量平均分子量が上記した範囲内である結着剤を含む第1トナーと共に第2トナーを用いて、媒体に第1トナー像および第2トナー像をこの順に転写させているので、高品質な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成を表す平面図である。
【
図2】下地トナー像が転写された媒体の構成を表す断面図である。
【
図3】下地画像が形成された媒体の構成を表す断面図である。
【
図4】カラートナー像が転写された媒体の構成を表す断面図である。
【
図5】カラー画像が形成された媒体の構成を表す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像の利点を説明するための断面図である。
【
図7】第2比較例の画像形成装置を用いて形成された画像の問題点を説明するための断面図である。
【
図8】第3比較例の画像形成装置を用いて画像が形成された媒体の構成を表す断面図である。
【
図9】第3比較例の画像形成装置を用いて形成された画像の問題点を説明するための断面図である。
【
図10】第4比較例の画像形成装置を用いて画像が形成された媒体の構成を表す断面図である。
【
図11】第4比較例の画像形成装置を用いて形成された画像の問題点を説明するための断面図である。
【
図12】画像パターン(7色)を説明するための平面図である。
【
図13】比較例の画像が形成された媒体の構成を表す断面図である。
【
図14】他の画像パターン(3色)を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.画像形成装置および画像形成方法
1-1.全体構成
1-2.トナーの構成
1-3.動作
1-4.作用および効果
2.変形例
【0014】
<1.画像形成装置および画像形成方法>
まず、本発明の一実施形態の画像形成装置に関して説明する。なお、本発明の一実施形態の画像形成方法は、画像形成装置の動作により実現されるため、その画像形成方法に関しては、以下で併せて説明する。
【0015】
ここで説明する画像形成装置は、後述するように、2種類のトナー(下地トナーおよびカラートナー)を用いて媒体Mに画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)を形成する装置であり、いわゆる電子写真方式のフルカラープリンタである(
図1~
図5参照)。この画像形成装置は、例えば、媒体Mに画像Gを形成するために中間転写媒体(転写ベルト41)を用いる中間転写方式を採用している。
【0016】
媒体Mは、高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいるため、いわゆる樹脂媒体である。高分子化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリ塩化ビニル(PVC)などである。後述するように、下地トナーの構成および物性との関係において、媒体Mの材質(高分子化合物の種類)が適正化されるからである。これにより、媒体Mに対する画像Gの定着性が向上するため、その媒体Mから画像Gが剥離しにくくなる。
【0017】
媒体Mの表面の平滑性は、特に限定されない。中でも、媒体Mの表面のベック平滑度は、100000秒以上であることが好ましい。後述するように、媒体Mの表面の平滑性を担保しながら、その媒体Mに対する画像Gの定着性が向上するからである。すなわち、媒体Mの表面の平滑性が高くても、その媒体Mに画像Gが定着しやすくなるため、その媒体Mから画像Gが剥離しにくくなるからである。
【0018】
ここで説明した媒体Mの表面とは、画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)が形成される側における媒体Mの表面であり、すなわち後述する下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBのそれぞれが転写される側における媒体Mの表面である(
図2および
図4参照)。なお、ベック平滑度の測定方法および測定条件などは、JIS P 8119:1998に準拠する。
【0019】
<1-1.全体構成>
図1は、画像形成装置の平面構成を表している。この画像形成装置では、画像の形成工程において、破線で示した搬送経路R1~R4のそれぞれに沿うように媒体Mが搬送されると共に、搬送方向F1~F4のそれぞれに向かって媒体Mが搬送される。
【0020】
この画像形成装置は、例えば、
図1に示したように、筐体1の内部に、トレイ10と、送り出しローラ20と、現像ユニット30と、転写ユニット40と、定着ユニット50と、搬送ローラ60と、搬送路切替ガイド70と、制御基板80とを備えている。この筐体1には、画像Gが形成された媒体Mを排出するためのスタッカ2が設けられており、その画像Gが形成された媒体Mは、筐体1に設けられた排出口1Hからスタッカ2に排出される。ここで、転写ユニット40は、本発明の一実施形態の「転写部」である。
【0021】
ここで説明する画像形成装置は、例えば、搬送路切替ガイド70を利用して媒体Mの搬送状態を制御することにより、媒体Mの片面に画像Gを形成可能であるだけでなく、媒体Mの両面に画像Gを形成可能であると共に、媒体Mの片面に画像Gを複数回形成可能である。
【0022】
以下では、画像形成装置が媒体Mの片面だけに画像Gを形成する場合において、その画像Gが形成される面を媒体Mの「表面」と呼称する。これに対して、媒体Mの片面(表面)と反対側の面を「裏面」と呼称する。
【0023】
また、以下で説明する一連のローラ、すなわち名称中に「ローラ」という文言を含む一連の構成要素は、
図1の紙面と交差する方向に延在する円筒状の部材であると共に、その方向に延在する回転軸を中心として回転可能である。
【0024】
[トレイおよび送り出しローラ]
トレイ10は、例えば、複数の媒体Mを収納しており、筐体1に着脱可能である。送り出しローラ20は、例えば、トレイ10から媒体Mを取り出すと共に、その媒体Mを搬送経路R1に送り出す。
【0025】
[現像ユニット]
現像ユニット30は、トナーを用いて現像処理を行う。具体的には、現像ユニット30は、例えば、静電潜像を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像にトナーを付着させる。
【0026】
この現像ユニット30は、例えば、現像処理を行う現像処理ユニット31を含んでいる。この現像処理ユニット31は、例えば、静電潜像が形成される感光体ドラム32を含んでおり、その現像処理ユニット31には、例えば、感光体ドラム32の表面に静電潜像を形成する光源33が付設されている。この光源33は、例えば、発光ダイオード(LED)などを含んでいる。ただし、現像処理ユニット31は、例えば、さらに、帯電ローラ、現像ローラ、供給ローラおよび現像ブレードなども含んでいる。
【0027】
ここでは、現像ユニット30は、例えば、5個の現像処理ユニット31(31S,31Y,31M,31C,31K)を含んでいる。現像処理ユニット31S,31Y,31M,31C,31Kは、例えば、後述する転写ベルト41の移動方向F5における上流から下流に向かってこの順に配置されている。ここで、現像処理ユニット31Sは、本発明の一実施形態の「第1トナー像形成部」であると共に、現像処理ユニット31Y,31M,31C,31Kのそれぞれは、本発明の一実施形態の「第2トナー像形成部」である。
【0028】
なお、現像処理ユニット31S,31Y,31M,31C,31Kのそれぞれは、例えば、現像処理に用いるトナーの種類および色が互いに異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。ここでは、上記したように、2種類のトナー(下地トナーおよびカラートナー)を用いている。
【0029】
具体的には、現像処理ユニット31Sは、例えば、下地トナーを搭載している。現像処理ユニット31Yは、例えば、カラートナー(イエロートナー)を搭載している。現像処理ユニット31Mは、例えば、カラートナー(マゼンタトナー)を搭載している。現像処理ユニット31Cは、例えば、カラートナー(シアントナー)を搭載している。現像処理ユニット31Kは、例えば、カラートナー(ブラックトナー)を搭載している。ここで、下地トナーは、本発明の一実施形態の「第1トナー」であると共に、カラートナーは、本発明の一実施形態の「第2トナー」である。
【0030】
カラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)は、フルカラーの画像を形成するために用いられるトナーであり、より具体的には、後述するカラー画像GBを形成するために用いられる(
図5参照)。一方、下地トナーは、画像Gの品質を担保するために用いられるトナーであり、より具体的には、後述する下地画像GAを形成するために用いられる(
図5参照)。ここで説明した画像Gの品質とは、後述するように、媒体Mに対する画像Gの定着性および画像Gの画質などである。なお、下地トナーおよびカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)のそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する。以下では、下地トナーおよびカラートナーを「トナー」と総称する。
【0031】
特に、現像処理ユニット31Sは、後述するように、下地画像GAを形成するために、下地トナーを用いて下地トナー像ZAを形成する(
図2参照)を形成する。一方、現像処理ユニット31Y,31M,31C,31Kのそれぞれは、後述するように、カラー画像GBを形成するために、カラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)を用いてカラートナー像ZBを形成する(
図4参照)。ここで、下地トナー像ZAは、本発明の一実施形態の「第1トナー像」であると共に、カラートナー像ZBは、本発明の一実施形態の「第2トナー像」である。
【0032】
[転写ユニット]
転写ユニット40は、現像ユニット30により現像処理されたトナーを用いて転写処理を行う。具体的には、転写ユニット40は、例えば、静電潜像に付着されたトナーを転写ベルト41に転写させると共に、その転写ベルト41から媒体Mにトナーを転写させる。
【0033】
この転写ユニット40は、例えば、転写ベルト41と、ドライブローラ42と、アイドルローラ43と、バックアップローラ44と、1次転写ローラ45と、2次転写ローラ46とを含んでいる。
【0034】
転写ベルト41は、例えば、無端のベルトである。この転写ベルト41は、例えば、ドライブローラ42、アイドルローラ43およびバックアップローラ44により張架された状態において、そのドライブローラ42の回転に応じて移動方向F5に向かって移動可能である。ドライブローラ42は、例えば、モータなどの駆動源を介して回転可能である。アイドルローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれは、例えば、ドライブローラ42の回転に応じて回転可能である。
【0035】
1次転写ローラ45は、転写ベルト41を介して感光体ドラム32に圧接されており、静電潜像に付着されたトナーを転写ベルト41に転写(1次転写)させる。ここでは、転写ユニット40は、例えば、5個の現像処理ユニット31(31S,31Y,31M,31C,31K)に対応する5個の1次転写ローラ45(45S,45Y,45M,45C,45K)を含んでいる。
【0036】
2次転写ローラ46は、搬送経路R1を介してバックアップローラ44に対向していると共に、転写ベルト41を介してバックアップローラ44に圧接されており、その転写ベルト41に転写されたトナーを媒体Mに転写(2次転写)させる。
【0037】
特に、転写ユニット40は、後述するように、転写ベルト41に下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBをこの順に転写させることにより、その転写ベルト41から媒体Mに下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBをこの順に転写させる(
図2~
図4参照)。
【0038】
より具体的には、転写ユニット40は、媒体Mに下地トナー像ZAを転写させたのち、その下地トナー像ZAが転写された領域のうちの一部または全部と重なる領域において媒体Mにカラートナー像ZBを転写させる。すなわち、カラートナー像ZBの転写領域は、下地トナー像ZAの転写領域のうちの一部でもよいし、下地トナー像ZAの転写領域のうちの全部でもよい。また、カラートナー像ZBの転写領域は、下地トナー像ZAの転写領域と一致していてもよいし、下地トナー像ZAの転写領域から部分的にずれていてもよい。カラートナー像ZBの一部または全部と媒体Mとの間に下地トナー像ZAが介在していれば、後述するように、カラートナー像ZBと媒体Mとの間に下地トナー像ZAが介在していない場合と比較して、その媒体Mに対する画像Gの定着性が向上するからである。
【0039】
中でも、転写ユニット40は、媒体Mにカラートナー像ZBを転写させる際に、下地トナー像ZAが転写された領域内において媒体Mにカラートナー像ZBを転写させることが好ましい。カラートナー像ZBの全体と媒体Mとの間に下地トナー像ZAが介在するため、その媒体Mに対する画像Gの定着性が著しく向上するからである。
【0040】
[定着ユニット]
定着ユニット50は、転写ユニット40により媒体Mに転写されたトナーを用いて定着処理を行う。具体的には、定着ユニット50は、例えば、トナーが転写された媒体Mを加熱しながら加圧することにより、そのトナーを媒体Mに定着させる。
【0041】
この定着ユニット50は、例えば、搬送経路R1を介して互いに対向する加熱ローラ51および加圧ローラ52を含んでいる。加熱ローラ51は、例えば、ハロゲンランプなどの加熱源を内蔵しており、トナーが転写された媒体Mを加熱する。加圧ローラ52は、加熱ローラ51に圧接されており、トナーが転写された媒体Mを加圧する。
【0042】
特に、定着ユニット50は、後述するように、媒体Mに転写された下地トナー像ZAを定着処理したのち、その媒体Mに転写されたカラートナー像ZBを定着処理する。前者の定着処理により、媒体Mに下地トナー像ZA(下地トナー)が定着されるため、その媒体Mに下地画像GAが形成される(
図2および
図3参照)。また、後者の定着処理により、媒体Mにカラートナー像ZB(カラートナー)が定着されるため、その媒体Mにカラー画像GBが形成される(
図4および
図5参照)。
【0043】
すなわち、転写ユニット40は、媒体Mに下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBのこの順に転写させる。これにより、定着ユニット50は、例えば、下地トナー像ZAを定着処理することにより、媒体Mに下地画像GAを形成したのち、カラートナー像ZBを定着処理することにより、その媒体Mにカラー画像GBを形成する。下地トナー像ZAの定着処理とカラートナー像ZBの定着処理とを別個の工程において行うことにより、下地トナー像ZAの定着処理とカラートナー像ZBの定着処理とを同一の工程において行う場合と比較して、下地画像GAが媒体Mに定着しやすくなると共に、カラー画像GBが下地画像GAに定着しやすくなるからである。よって、後述するように、媒体Mに下地画像GAおよびカラー画像GBがこの順に積層されるため、その下地画像GAおよびカラー画像GBを含む画像Gが形成される(
図2~
図5参照)。
【0044】
[搬送ローラ]
搬送ローラ60は、例えば、搬送経路R1~R5のそれぞれを介して互いに対向する一対のローラを含んでおり、その搬送経路R1~R5のそれぞれに沿うように媒体Mを搬送させる。ここでは、画像形成装置は、例えば、8個の搬送ローラ60(61~68)を備えている。
【0045】
媒体Mの片面(表面)だけに画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61~64により搬送経路R1,R2のそれぞれに沿うように搬送される。媒体Mの両面(表面および裏面)に画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61~68により搬送経路R1~R5のそれぞれに沿うように搬送される。媒体Mの片面(表面)に画像が複数回形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61~67により搬送経路R1~R4のそれぞれに沿うように搬送される。
【0046】
[搬送路切替ガイド]
搬送路切替ガイド70は、媒体Mに形成される画像の形式に応じて、その媒体Mの搬送状態を切り替える。この画像の形式とは、例えば、媒体Mの片面だけに画像が形成される形式、媒体Mの両面に画像が形成される形式および媒体の片面に画像が複数回形成される形式などである。
【0047】
ここでは、画像形成装置は、例えば、2個の搬送路切替ガイド70(71,72)を備えている。搬送路切替ガイド71は、例えば、搬送経路R2,R3の分岐点に配置されていると共に、搬送路切替ガイド72は、例えば、搬送経路R3~R5の分岐点に配置されている。
【0048】
[制御基板]
制御基板80は、画像形成装置の全体の動作を制御する。この制御基板80は、制御回路、メモリ、入出力ポートおよびタイマなどを備えた回路基板であり、その制御回路は、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。
【0049】
<1-2.トナーの構成>
ここで説明するトナーは、例えば、一成分現像方式の負帯電トナーである。すなわち、トナーは、例えば、負の帯電極性を有している。一成分現像方式とは、トナーに電荷を付与するためのキャリア(磁性粒子)を用いずに、そのトナー自身に適切な帯電量を付与する方式である。
【0050】
トナーの製造方法は、特に限定されないが、例えば、粉砕法および重合法などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。この重合法は、例えば、乳化重合凝集法および溶解懸濁法などである。
【0051】
[下地トナー]
下地トナーは、結着剤を含んでおり、その結着剤は、例えば、高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。高分子化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂などである。このポリエステル系樹脂は、ポリエステルおよびその誘導体を含む総称である。ポリエステル系樹脂は、いわゆる樹脂媒体である媒体Mに対して高い親和性を有するため、そのポリエステル系樹脂を含んでいる下地トナーは、その媒体Mに定着しやすくなるからである。これにより、媒体Mに下地画像GAが定着しやすくなるため、画像Gが媒体Mから剥離しにくくなる。なお、ポリエステル系樹脂の結晶状態は、特に限定されないため、結晶性でもよいし、非晶質でもよいし、双方を含む状態でもよい。
【0052】
ただし、結着剤(高分子化合物)の重量平均分子量Mwは、12297~14019である。媒体Mの材質(高分子化合物)に対して結着剤の重量平均分子量Mwが適正化されるため、画像Gの画質が担保されながら、媒体Mに対する画像Gの定着性が向上するからである。これにより、上記したように、媒体Mの表面の平滑性が高くても、その媒体Mに対して画像Gが十分に定着する。ここで説明した利点が得られる理由の詳細に関しては、後述する。
【0053】
重量平均分子量Mwを特定するためには、上記したように、高速液体クロマトグラフィ法(HPLC)を用いて下地トナーを分析する。これにより、結着剤(高分子化合物)の分子量分布が測定されるため、その分子量分布の測定結果に基づいて重量平均分子量Mwが求められる。
【0054】
分析用の試料を準備する場合には、例えば、テトラヒドロフランなどの有機溶剤中に下地トナーを投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、その下地トナー中の可溶成分(結着剤)を溶解させる。また、分析を行う場合には、例えば、上記したように、分析装置として株式会社島津製作所製の高速液体クロマトグラフ Prominenceシステム LC-20ADを用いると共に、分析条件はオーブン温度=40℃およびポンプ流量=10000ml/分とする。
【0055】
なお、下地トナーの色は、特に限定されない。このため、下地トナーは、着色剤を含んでいてもよいし、着色剤を含んでいなくてもよい。
【0056】
下地トナーが着色剤を含んでいない場合、その下地トナーの色は、無色(透明)である。この無色の下地トナーは、いわゆるクリアトナーである。この場合には、下地トナー像ZAの色が無色になるため、その下地トナー像ZAの色相がカラートナー像ZBの色相にほとんど影響を与えなくなる。
【0057】
下地トナーが着色剤を含んでいる場合、その下地トナーの色は、特に限定されない。このため、下地トナーの色は、イエローでもよいし、マゼンタでもよいし、シアンでもよいし、ブラックでもよいし、ホワイトでもよいし、それらのうちの2種類以上が混合された色でもよい。この場合において、下地トナーは、例えば、その下地トナーの色に対応する色の着色剤を含んでおり、その着色剤は、例えば、顔料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。具体的には、ホワイトの下地トナーは、例えば、着色剤として酸化チタンなどの顔料を含んでいる。
【0058】
ただし、下地トナーが着色剤を含んでいる場合、その下地トナーの色は、下地トナー像ZAの色相がカラートナー像ZBの色相に影響を及ぼしにくい色であることが好ましいため、ホワイトであることが好ましい。ただし、下地トナー像ZAの色相がカラートナー像ZBの色相に影響を及ぼしにくい色であれば、その下地トナーの色は、ホワイトに限らず、淡いグレーなどの淡色でもよい。
【0059】
中でも、下地トナーの色は、無色(透明)および白色であることがより好ましく、無色であることがさらに好ましい。すなわち、下地トナーは、着色剤を含んでいない無色トナー(クリアトナー)であることが特に好ましい。上記したように、下地トナー像ZAの色相がカラートナー像ZBの色相にほとんど影響を与えなくなるからである。
【0060】
なお、下地トナーは、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、外添剤、離型剤、帯電制御剤、蛍光増白剤、導電性調整剤、補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤およびクリーニング性向上剤などである。
【0061】
蛍光増白剤は、主に、下地トナーの白色度を増加させる。結着剤が白色以外の色に着色(例えば、僅かに黄色に着色)していることに起因して、下地トナーが意図せずに白色以外の色に着色している場合には、その下地トナーは蛍光増白剤を含んでいることが好ましい。下地トナー(結着剤)の白色度が増加するため、その下地トナーの色が白色に近くなるからである。なお、下地トナーが蛍光増白剤を含んでいる場合には、その下地トナーは紫外線光を受けると青色に発光するため、その蛍光増白剤は着色剤の一種であるとも考えられる。しかしながら、ここで説明する蛍光増白剤は、あくまで下地トナーの白色度を増加させる目的で用いられる添加剤(成分)であるため、着色剤(イエローなどの白色以外の色に着色させる顔料および染料など)とは異なる成分である。
【0062】
[カラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)]
イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナーのそれぞれは、それぞれの色に対応した色の着色剤を含んでいる。この着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤およびブラック着色剤である。
【0063】
具体的には、イエロートナーは、例えば、イエロー着色剤のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることを除いて、下地トナーと同様の構成を有している。イエロー着色剤は、例えば、ピグメントイエロー74などの顔料である。
【0064】
マゼンタトナーは、例えば、イエロー着色剤の代わりにマゼンタ着色剤を含んでいることを除いて、イエロートナーと同様の構成を有している。マゼンタ着色剤は、例えば、キナクリドンなどの顔料である。
【0065】
シアントナーは、例えば、イエロー着色剤の代わりにシアン着色剤を含んでいることを除いて、イエロートナーと同様の構成を有している。シアン着色剤は、例えば、フタロシアニンブルーなどの顔料である。
【0066】
ブラックトナーは、例えば、イエロー着色剤の代わりにブラック着色剤を含んでいることを除いて、イエロートナーと同様の構成を有している。ブラック着色剤は、例えば、カーボンブラックなどの顔料である。
【0067】
[トナーの付着量]
媒体Mに転写された下地トナーの転写量は、特に限定されない。同様に、媒体Mに転写されたカラートナーの転写量は、特に限定されない。
【0068】
中でも、下地トナーの転写量およびカラートナーの転写量に関しては、以下で説明する2つの条件を満たしていることが好ましい。
【0069】
第1に、媒体Mに転写された下地トナー像ZAの単位面積当たりの重量X(mg/cm2 )は、0.20mg/cm2 ~0.40mg/cm2 である。この重量Xは、いわゆる媒体Mに対する下地トナーの付着量である。
【0070】
第2に、媒体Mに転写された下地トナー像ZAの単位面積当たりの重量X(mg/cm2 )と媒体Mに転写されたカラートナー像ZBの単位面積当たりの重量(mg/cm2 )との和(総重量)Yは、(X+0.30)mg/cm2 ~(X+0.45)mg/cm2 である。この総重量Yは、いわゆる媒体Mに対する下地トナーおよびカラートナーの総付着量である。
【0071】
カラー画像GBの濃度が担保されながら、媒体Mに対する画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)の定着性がより向上するからである。ここで説明した利点が得られる理由の詳細に関しては、後述する。
【0072】
ただし、ここで説明した重量Xは、下地トナー像ZAが転写された領域とカラートナー像ZBが転写された領域とが互いに重なる領域における、その下地トナー像ZAの単位面積当たりの重量であることが好ましい。また、総重量Yは、下地トナー像ZAが転写された領域とカラートナー像ZBが転写された領域とが互いに重なる領域における、その下地トナー像ZAの単位面積当たりの重量Xとカラートナー像ZBの単位面積当たりの重量との和である。カラートナー像ZBの全体と媒体Mとの間に下地トナー像ZAが介在している場合において、重量Xおよび総重量Yのそれぞれが適正化されるため、媒体Mに対する画像Gの定着性が著しく向上するからである。
【0073】
<1-3.動作>
図2は、下地トナー像ZAが転写された媒体Mの断面構成を表していると共に、
図3は、下地画像GAが形成された媒体Mの断面構成を表している。
図4は、カラートナー像ZBが転写された媒体Mの断面構成を表していると共に、
図5は、カラー画像GBが形成された媒体Mの断面構成を表している。
図4および
図5のそれぞれでは、カラートナーを含んでいるカラートナー像ZBおよびカラー画像GBのそれぞれに網掛けを施している。
【0074】
なお、媒体Mの構成(材質およびベック平滑度など)、トナー(下地トナーおよびカラートナー)の構成(結着剤の重量平均分子量など)およびトナーの付着量(重量Xおよび総重量Y)に関して既に詳細に説明したので、以下では、それらの説明を随時省略する。
【0075】
媒体Mに画像Gを形成する場合には、例えば、パーソナルコンピュータなどの外部装置から画像形成装置に画像データが送信されると、送り出しローラ20によりトレイ10から搬送経路R1に媒体Mが送り出される。こののち、画像形成装置は、例えば、以下で説明するように、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理をこの順に行う。ここで説明する一連の処理に関する動作は、例えば、制御基板80により制御される。
【0076】
以下では、例えば、画像Gの形成工程において下地画像GAを形成したのちにカラー画像GBを形成するために、1次転写処理、2次転写処理および定着処理のそれぞれを2回行う場合に関して説明する。
【0077】
[現像処理]
最初に、現像ユニット30では、現像処理が行われる。具体的には、現像処理ユニット31Sにおいて、感光体ドラム32の表面に静電潜像が形成されたのち、その静電潜像に下地トナーが付着される。また、現像処理ユニット31Y,31M,31C,31Kのそれぞれにおいて、感光体ドラム32の表面に静電潜像が形成されたのち、その静電潜像にカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)が付着される。
【0078】
ただし、実際に現像処理ユニット31Y,31M,31C,31Kのそれぞれにおいて現像処理が行われるかどうかは、下地トナー像ZAを形成するために必要な色(色の組み合わせ)に応じて決定される。ここで説明したことは、実際に1次転写ローラ45Y,45M,45C,45Kのそれぞれにおいて後述する1次転写処理が行われるかどうかに関しても同様である。
【0079】
[1次転写処理(1回目)]
続いて、転写ユニット40では、転写ベルト41が移動方向F5に向かって移動すると、1次転写ローラ45Sが転写ベルト41を介して感光体ドラム32に圧接されているため、その感光体ドラム32(静電潜像)から転写ベルト41に下地トナーが1次転写される。これにより、転写ベルト41に下地トナー像ZAが形成される。
【0080】
[2次転写処理(1回目)]
続いて、転写ユニット40では、転写ベルト41がさらに移動方向F5に向かって移動すると、2次転写ローラ46が転写ベルト41を介してバックアップローラ44に圧接されているため、
図2に示したように、その転写ベルト41から媒体Mに下地トナー像ZAが2次転写される。
【0081】
なお、下地トナー像ZAの印字率は、特に限定されないが、中でも、50%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。下地画像GAの形成量が確保されるため、その下地画像GAを利用して媒体Mに画像Gが十分に定着するからである。
【0082】
[定着処理(1回目)]
続いて、定着ユニット50では、下地トナー像ZAが加圧ローラ52により加圧されながら加熱ローラ51により加熱される。これにより、下地トナー像ZAが媒体Mに定着されるため、
図3に示したように、その媒体Mに下地画像GAが形成される。
【0083】
[1次転写処理(2回目)]
続いて、転写ユニット40では、転写ベルト41が移動方向F5に向かって移動すると、1次転写ローラ45Y,45M,45C,45Kのそれぞれが転写ベルト41を介して各感光体ドラム32に圧接されているため、その各感光体ドラム32(静電潜像)から転写ベルト41にカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)が1次転写される。これにより、転写ベルト41にカラートナー像ZBが形成される。
【0084】
[2次転写処理(2回目)]
続いて、転写ユニット40では、転写ベルト41がさらに移動方向F5に向かって移動すると、2次転写ローラ46が転写ベルト41を介してバックアップローラ44に圧接されているため、
図4に示したように、その転写ベルト41から媒体Mにカラートナー像ZBが2次転写される。この場合には、下地画像GAの形成領域(下地トナー像ZAの転写領域)のうちの一部または全部と重なる領域において媒体Mにカラートナー像ZBが2次転写され、好ましくは下地画像GAの形成領域内において媒体Mにカラートナー像ZBが2次転写される。これにより、既に媒体Mに形成されている下地画像GAの上にカラートナー像ZBが積層される。なお、カラートナー像ZBの印字率は、任意に設定可能である。
【0085】
[定着処理(2回目)]
最後に、定着ユニット50では、カラートナー像ZBが加圧ローラ52により加圧されながら加熱ローラ51により加熱される。これにより、カラートナー像ZBが媒体Mに定着されるため、
図5に示したように、その媒体Mにカラー画像GBが形成される。この場合には、下地画像GAの上にカラー画像GBが形成されるため、媒体Mの上に下地画像GAおよびカラー画像GBがこの順に積層される。よって、下地画像GAおよびカラー画像GBを含む画像Gが形成される。
【0086】
これにより、画像Gの形成動作が完了する。なお、画像Gが形成された媒体Mは、搬送経路R2に沿うように搬送されたのち、排出口1Hからスタッカ1Sに排出される。
【0087】
<1-4.作用および効果>
この画像形成装置では、重量平均分子量Mwが上記した範囲内(Mw=12297~14019)である結着剤を含む下地トナーと共にカラートナーを用いて、媒体Mに下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBをこの順に転写させている。よって、以下で説明する理由により、高品質な画像Gを形成することができる。
【0088】
図6は、本実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの利点を説明するために、
図5に対応する断面構成を示している。
図7は、第2比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの問題点を説明するために、
図5に対応する断面構成を示している。ただし、
図6および
図7のそれぞれでは、カラー画像GBを模式的に示しており、より具体的には、そのカラー画像GB中に含まれている複数のカラートナーTを示している。
【0089】
第1比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成は、結着剤の重量平均分子量Mwが12297よりも小さいため、その重量平均分子量Mwが上記した範囲外であることを除いて、本実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成と同様である。
【0090】
第2比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成は、結着剤の重量平均分子量Mwが14019よりも大きいため、その重量平均分子量Mwが上記した範囲外であることを除いて、本実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成と同様である。
【0091】
第1比較例の画像Gが形成された場合には、重量平均分子量Mwが小さすぎるため、下地トナーの熱耐久性が低下する。この場合には、下地トナーと現像ブレードとの間に摩擦が発生すると、その摩擦に起因して下地トナーが現像ブレードに固着しやすくなるため、いわゆるブレードフィルミングが発生しやすくなる。これにより、下地トナーが現像ブレードに固着した箇所では、媒体Mに対するカラートナーの転写不良が発生しやすくなるため、いわゆる白縦スジなどの不具合が画像G中に発生しやすくなる。
【0092】
第2比較例の画像Gが形成された場合には、重量平均分子量Mwが大きすぎるため、カラートナー像ZBの定着処理時(加熱時)において下地画像GAが軟化しにくくなる。この場合には、
図7に示したように、カラートナーTが下地画像GA中に入り込みにくくなることに起因して、そのカラートナーTが下地画像GAの内部に埋め込まれにくくなるため、カラー画像GBが下地画像GAに定着しにくくなる。しかも、下地画像GAが媒体Mに密着しにくくなるため、その下地画像GAが媒体Mに定着しにくくなる。これにより、カラー画像GBが下地画像GAから剥離しやすくなると共に、その下地画像GAが媒体Mから剥離しやすくなるため、その媒体Mから画像Gが剥離しやすくなる。
【0093】
これに対して、本実施形態の画像Gが形成された場合には、重量平均分子量Mwが適正化される。この場合には、下地トナーの熱耐久性が担保されるため、その下地トナーが現像ブレードに固着しにくくなる。これにより、ブレードフィルミングが発生しにくくなるため、画像G中に白縦スジなどの不具合が発生しにくくなる。
【0094】
しかも、下地画像GAが軟化しやすくなるため、
図6に示したように、カラートナーTが下地画像GA中に入り込みやすくなることに起因して、そのカラートナーTが下地画像GAの内部に埋め込まれやすくなる。これにより、いわゆるアンカー効果を利用して、カラー画像GBが下地画像GAに定着しやすくなる。また、下地画像GAが媒体Mに密着しやすくなるため、その下地画像GAが媒体Mに定着しやすくなる。これにより、カラー画像GBが下地画像GAから剥離しにくくなると共に、その下地画像GAが媒体Mから剥離しにくくなるため、その媒体Mから画像Gが剥離しにくくなる。
【0095】
これらのことから、画像G中に白縦スジなどの不具合が発生しにくくなると共に、その画像Gが媒体Mから剥離しにくくなる。これにより、画像Gの画質が担保されながら、媒体Mに対する画像Gの定着性が向上するため、高品質な画像Gを形成することができる。
【0096】
この場合には、特に、媒体Mに対する画像Gの定着性が向上することにより、その媒体Mの表面の平滑性が高くても、画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)が媒体Mに定着しやすくなると共に、その画像Gの形成時において定着温度を過剰に高くしなくても、その媒体Mに画像Gが定着しやすくなる。よって、樹脂媒体である媒体Mを用いた場合において、表面の平滑性が高い媒体Mを用いても、過剰に高い定着温度に起因して媒体Mが変形および破損することを防止しながら、上記した効果を得ることができる。
【0097】
この他、転写ユニット40が下地トナー像ZAの転写領域内において媒体Mにカラートナー像ZBを転写させれば、カラートナー像ZBの全体と媒体Mとの間に下地トナー像ZAが介在する。よって、媒体Mに対する画像Gの定着性が著しく向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0098】
また、重量Xおよび総重量Yに関して上記した2つの条件が満たされていれば、以下で説明する理由により、カラー画像GBの濃度が担保されながら、媒体Mに対する画像Gの定着性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0099】
図8は、第3比較例の画像形成装置を用いて画像Gが形成された媒体Mの断面構成を表しており、
図5に対応していると共に、
図9は、第3比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの問題点を説明するために、
図8に対応する断面構成を示している。
【0100】
図10は、第4比較例の画像形成装置を用いて画像Gが形成された媒体Mの断面構成を表しており、
図5に対応していると共に、
図11は、第4比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの問題点を説明するために、
図10に対応する断面構成を示している。
【0101】
第3比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成は、
図8に示したように、重量Xが0.20mg/cm
2 よりも少ないため、重量Xおよび総重量Yに関して上記した2つの条件が満たされていないことを除いて、本実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成と同様である。
【0102】
第4比較例の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成は、
図10に示したように、重量Xが0.40mg/cm
2 よりも多いため、重量Xおよび総重量Yに関して上記した2つの条件が満たされていないことを除いて、本実施形態の画像形成装置を用いて形成された画像Gの構成と同様である。
【0103】
第3比較例の画像Gが形成された場合には、
図8に示したように、重量Xが少なすぎることに起因して、下地画像GAの形成量が少なすぎるため、カラートナーTが下地画像GAの内部に埋め込まれにくくなる可能性がある。これにより、十分なアンカー効果が得られないため、
図9に示したように、画像Gを擦ると、カラー画像GB(カラートナーT)が下地画像GAから剥離しやすくなる可能性がある。しかも、総重量Yが少なすぎることに起因して、カラー画像GBの形成量が少なすぎるため、カラートナーTの絶対量が不足する可能性がある。これにより、画像G(カラー画像GB)の濃度が不十分になる可能性もある。
【0104】
第4比較例の画像Gが形成された場合には、
図10に示したように、重量Xが多すぎることに起因して、下地画像GAの形成量が多すぎるため、その下地画像GAが軟化しにくくなる可能性がある。これにより、下地画像GAが媒体Mに定着しにくくなるため、
図11に示したように、画像Gを擦ると、下地画像GAが媒体Mから剥離しやすくなる可能性がある。
【0105】
これに対して、本実施形態の画像Gが形成された場合には、重量Xが適正化されることに応じて、総重量Yも適正化される。この場合には、カラートナーTの量が確保されるため、画像G(カラー画像GB)の濃度が十分に高くなる。しかも、カラートナーTが下地画像GAの内部に埋め込まれやすくなると共に、その下地画像GAが媒体Mに密着しやすくなるため、画像Gを擦っても、媒体Mから画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)が剥離しにくくなる。よって、カラー画像GBの濃度が担保されながら、媒体Mに対する画像Gの定着性がより向上する。
【0106】
また、上記した重量Xが下地トナー像ZAの転写領域とカラートナー像ZBの転写領域とが互いに重なる領域における下地トナー像ZAの単位面積当たりの重量であると共に、上記した総重量Yが下地トナー像ZAの転写領域とカラートナー像ZBの転写領域とが互いに重なる領域における下地トナー像ZAの単位面積当たりの重量Xとカラートナー像ZBの単位面積当たりの重量との和であれば、カラートナー像ZBの全体と媒体Mとの間に下地トナー像ZAが介在している場合において、重量Xおよび総重量Yのそれぞれが適正化される。よって、媒体Mに対する画像Gの定着性が著しく向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0107】
また、媒体Mの表面のベック平滑度が100000秒以上であれば、媒体Mの表面の平滑性が高くても、その媒体Mに画像Gが定着しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0108】
また、画像形成装置が定着ユニット50を備えており、その定着ユニット50が下地トナー像ZAを媒体Mに定着させたのちにカラートナー像ZBを媒体Mに定着させれば、下地画像GAが形成されたのち、その下地画像GAの上にカラー画像GBが形成される。これにより、下地画像GAが媒体Mに定着しやすくなると共に、カラー画像GBが下地画像GAに定着しやすくなる。よって、媒体Mから画像Gがより剥離しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0109】
また、下地トナーがクリアトナーであれば、下地トナー像ZAの色相がカラートナー像ZBの色相にほとんど影響を与えなくなる。よって、画像Gの画質がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0110】
また、媒体M(高分子化合物)がポリエチレンテレフタレートおよびポリ塩化ビニルのうちの一方または双方を含んでいれば、上記した下地トナーの構成および物性との関係において媒体Mの材質(高分子化合物の種類)が適正化される。よって、媒体Mに対する画像Gの定着性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0111】
なお、上記した画像形成装置の動作により実現される画像形成方法では、重量平均分子量Mwが上記した範囲内(Mw=12297~14019)である結着剤を含む下地トナーを用いて下地トナー像ZAを形成すると共に、カラートナーを用いてカラートナー像ZBを形成したのち、媒体Mに下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBをこの順に転写させている。よって、上記した画像形成装置と同様の理由により、高品質な画像Gを形成することができる。画像形成方法に関する他の作用および効果は、画像形成装置に関する他の作用および効果と同様である。
【0112】
<2.変形例>
上記した画像形成装置の構成および動作などに関しては、適宜、変更可能である。例えば、4種類のカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)を用いたが、そのカラートナーの種類は特に限定されない。具体的には、例えば、3種類のカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナー)を用いてもよい。この場合においても、下地画像GAを利用して上記した利点が得られるため、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0113】
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.重量平均分子量Mwに関する検証(定着温度=150℃)
2.重量Xおよび総重量Yに関する検証(定着温度=140℃)
3.総括
【0114】
<1.重量平均分子量Mwに関する検証(定着温度=150℃)>
まず、重量平均分子量Mwに関する検証を行った。この場合には、画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)の形成時における定着温度を150℃とした。
【0115】
(実験例1-1~1-8)
以下の手順により、画像形成装置を用いて媒体Mに画像Gを形成したのち、その画像Gの品質を評価した。
【0116】
[画像形成の準備]
最初に、画像形成装置と、媒体Mと、トナーとを準備した。
【0117】
(画像形成装置および媒体)
画像形成装置としては、電子写真方式のフルカラープリンタ(株式会社沖データ製の5色プリンタ VINCI C941)を用いた。媒体Mとしては、PETカード(桜井株式会社製のスターホワイトカード NTCARD50,ベック平滑度=205000)を用いた。
【0118】
(トナーの組成)
トナーとしては、1種類の下地トナー(クリアトナー)と、4種類のカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)とを用いた。
【0119】
(カラートナーの組成)
イエロートナーは、イエロー着色剤(ピグメントイエロー74)5質量部と、結着剤(非晶質ポリエステル)100質量部と、離型剤(日本精・株式会社製のパラフィンワックス SP-0145,融点=62℃)4質量部と、帯電制御剤(オリエント化学工業株式会社製のボントロンP-51)1質量部と、外添剤(複合酸化物粒子、コロイダルシリカおよびシリカ粉末)トナー母粒子100質量部に対して4.5質量部とを含んでいる。
【0120】
ただし、外添剤は、複合酸化物粒子(日本アエロジル株式会社製のSTX801,平均一次粒子径=18nm)トナー母粒子100質量部に対して1質量部と、コロイダルシリカ(信越化学工業株式会社製のゾルゲルシリカ X-24-9163A,平均一次粒子径=100nm)トナー母粒子100質量部に対して1質量部と、シリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のVPRY40S,平均一次粒子径=80nm)トナー母粒子100質量部に対して1質量部と、シリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のRY50,平均一次粒子径=40nm)トナー母粒子100質量部に対して1.5質量部とを含んでいる。
【0121】
マゼンタトナーは、イエロー着色剤の代わりにマゼンタ着色剤(キナクリドン)を含んでいることを除いて、イエロートナーと同様の組成を有している。シアントナーは、イエロー着色剤の代わりにシアン着色剤(フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3))を含んでいることを除いて、イエロートナーと同様の組成を有している。ブラックトナーは、イエロー着色剤の代わりにブラック着色剤(カーボンブラック)を含んでいることを除いて、イエロートナーと同様の組成を有している。
【0122】
(下地トナーの製造方法)
以下で説明する手順により、溶解懸濁法を用いて下地トナーを製造した。
【0123】
最初に、連続相を調製した。この場合には、まず、水性溶媒(純水)32678質量部に懸濁安定剤(工業用リン酸三ナトリウム十二水和物)1111質量部を混合したのち、その混合物(温度=60℃)を撹拌した。これにより、懸濁安定剤が溶解されたため、第1水溶液が得られた。こののち、第1水溶液にpH調整用の希硝酸を添加した。続いて、水性溶媒(純水)4357質量部に懸濁安定剤(工業用塩化カルシウム無水物)536質量部を混合したのち、その混合物を撹拌した。これにより、懸濁安定剤が溶解されたため、第2水溶液が得られた。続いて、第1水溶液と第2水溶液とを混合したのち、撹拌装置(プライミクス株式会社製のラインミル)を用いて混合物(温度=60℃)を撹拌(回転数=3566回転/分,撹拌時間=34分間)した。これにより、連続相が得られた。
【0124】
次に、分散相を調製した。この場合には、まず、有機溶剤(酢酸エチル,温度=50℃)を準備した。続いて、有機溶剤7060質量部に、離型剤(パラフィンワックス)143質量部と、蛍光増白剤3.72質量物とをこの順に混合したのち、その混合物を撹拌した。続いて、混合物に結着剤(結晶性ポリエステル)1760質量部を混合したのち、その混合物を固形物が消失するまで撹拌した。これにより、分散相が得られた。この場合には、表1に示した一連の重量平均分子量Mwを有する結晶性ポリエステルを用いた。
【0125】
次に、連続相および分散相を用いて造粒することにより、トナー母粒子を形成した。この場合には、連続相と分散相とを混合したのち、上記した撹拌装置を用いて混合物(温度=55℃)を撹拌(回転数=1000回転/分,撹拌時間=5分間)した。これにより、混合物が懸濁すると共に造粒されたため、複数の造粒物を含むスラリー溶液が得られた。続いて、スラリー溶液を減圧蒸留することにより、そのスラリー溶液中に含まれている有機溶剤(酢酸エチル)を揮発除去した。続いて、スラリー溶液にpH調整剤(硝酸)を添加することにより、pHを1.5となるように調整したのち、そのスラリー溶液を濾過することにより、懸濁安定剤を溶解除去した。続いて、スラリー溶液中に含まれている複数の造粒物を脱水したのち、その複数の造粒物を水性溶媒(純水)中に再分散させた。続いて、水性溶媒(純水)を用いて複数の造粒物を洗浄したのち、その複数の造粒物を濾過した。続いて、複数の造粒物を脱水乾燥させたのち、その複数の造粒物を分級した。これにより、複数のトナー母粒子が得られた。
【0126】
最後に、トナー母粒子500質量部に外添剤(複合酸化物およびシリカ粉末)4.5質量部を混合したのち、撹拌装置(日本コークス工業株式会社製のヘンシェルミキサ)を用いて混合物を撹拌(回転数=5400回転/分,撹拌時間=10分間)した。ただし、外添剤は、複合酸化物粒子(日本アエロジル株式会社製のSTX801,平均一次粒子径=18nm)1質量部と、シリカ粉末(日本アエロジル株式会社製のVPRY40S,平均一次粒子径=80nm)3.5質量部とを含んでいる。これにより、下地トナーが得られた。
【0127】
[画像の形成]
次に、下地トナーおよびカラートナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナー)が搭載された画像形成装置を用いて、媒体Mに画像Gを形成した。
【0128】
(画像の形成手順および形成条件)
具体的には、温度=25℃および湿度=55%の環境条件下において、
図2~
図5に示した手順にしたがって2回の定着処理を行うことにより、媒体Mに画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)を形成した。すなわち、媒体Mに下地トナー像ZAを転写させたのち、その媒体Mに下地トナー像ZAを定着させることにより、下地画像GAを形成した。続いて、下地画像GAが形成された媒体Mにカラートナー像ZBを転写させたのち、その媒体Mにカラートナー像ZBを定着させることにより、カラー画像GBを形成した。これにより、下地画像GAの上にカラー画像GBが積層されたため、画像Gが形成された。この場合には、定着温度=150℃、重量X=0.2mg/cm
2 および総重量Y=0.5mg/cm
2 とした。
【0129】
(画像パターン)
下地画像GAおよびカラー画像GBのそれぞれの画像パターンは、以下で説明する通りである。
図12は、画像パターン(7色)を説明するために、画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)が形成された媒体Mの平面構成を表している。
【0130】
媒体Mは、
図12に示したように、長手方向に延在する矩形の画像形成領域Fを有しており、その画像形成領域Fは、画像Gを形成可能である範囲である。この画像形成領域Fは、長手方向において7分割されているため、その長手方向に配列された7つの領域R1~R7を含んでいる。
【0131】
下地画像GAを形成する場合には、画像形成領域F、すなわち領域R1から領域R7に至る全範囲にベタ画像(印字率=100%)を形成した。ブラックトナーを用いてカラー画像GBを形成する場合には、領域R1にベタ画像(印字率=100%)を形成した。イエロートナーを用いてカラー画像GBを形成する場合には、領域R2,R5,R6のそれぞれにベタ画像(印字率=100%)を形成した。マゼンタトナーを用いてカラー画像GBを形成する場合には、領域R3,R5,R7のそれぞれにベタ画像(印字率=100%)を形成した。シアントナーを用いてカラー画像GBを形成する場合には、領域R4,R6,R7のそれぞれにベタ画像(印字率=100%)を形成した。
【0132】
これにより、領域R1にブラック(K)のカラー画像GBを形成し、領域R2にイエロー(Y)のカラー画像GBを形成し、領域R3にマゼンタ(M)のカラー画像GBを形成し、領域R4にシアン(C)のカラー画像GBを形成した。
【0133】
また、領域R5にイエローとマゼンタとの混合色であるレッド(R)のカラー画像GBを形成し、領域R6にイエローとシアンとの混合色であるグリーン(G)のカラー画像GBを形成し、領域R7にマゼンタとシアンとの混合色であるブルー(B)のカラー画像GBを形成した。
【0134】
これにより、媒体Mに7色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーンおよびブルー)の画像Gを形成した。
【0135】
[画像の品質評価]
次に、画像Gの品質を評価したところ、表1に示した結果が得られた。ここでは、画像Gの品質を評価するために、定着性および画質を調べた。
【0136】
なお、比較のために、
図13に示した比較例の画像Iも形成することにより、その画像Iの品質も併せて評価した。
図13に示した画像Iは、媒体Mの上にカラー画像GBおよび下地画像GAがこの順に積層されていることを除いて、画像Gと同様の構成を有している。
【0137】
表1に示した「構成」は、媒体Mに形成された画像の構成を表している。具体的には、「M/GA/GB」とは、媒体Mの上に下地画像GAおよびカラー画像GBがこの順に積層されているため、その媒体Mに画像Gが形成されていることを表している。また、「M/GB/GA」とは、媒体Mの上にカラー画像GBおよび下地画像GAがこの順に積層されているため、その媒体Mに画像Iが形成されていることを表している。
【0138】
以下では、画像Gに関する評価手順を説明しているが、画像Iに関しても同様の手順により評価を行った。
【0139】
(定着性)
定着性を調べる場合には、媒体Mに形成された画像Gの全体を爪で5回擦ったのち、その画像Gの状態を目視で確認することにより、その画像Gの定着状態に関するレベルを判定した。具体的には、いずれの色の画像Gも剥離しなかった場合には、レベルを「5」とした。レッドの画像Gだけが剥離した場合には、レベルを「4」とした。マゼンタの画像Gと、レッド、グリーンおよびブルーのうちのいずれか2色の画像Gとが剥離した場合には、レベルを「3」とした。マゼンタの画像Gと、レッド、グリーンおよびブルーの全ての画像Gとが剥離した場合には、レベルを「2」とした。ブラック、イエローおよびシアンのうちのいずれか1色以上の画像Gが剥離した場合には、レベルを「1」とした。
【0140】
こののち、上記した画像Gの定着状態に関するレベルを評価した。具体的には、画像Gの定着状態のレベルが5である場合には、媒体Mに対する画像Gの定着性が担保されたことに起因して、その媒体Mから画像Gが剥離しなかったため、「A」とした。画像Gの定着状態のレベルが4以下である場合には、媒体Mに対する画像Gの定着性が担保されなかったことに起因して、その媒体Mから画像Gが剥離したため、「B」とした。
【0141】
(画質)
画質を調べる場合には、媒体Mに形成された画像Gの状態を目視で調べることにより、ブレードフィルミングに起因する白縦スジが発生しているか否かを確認したのち、その画像Gの状態を評価した。具体的には、媒体Mの長手方向に延在する白縦スジが発生していなかった場合には、「A」とした。一方、白縦スジが発生していた場合には、「B」とした。
【0142】
(総合評価)
上記した定着性および画質のそれぞれを評価したのち、その評価結果に基づいて画像Gの品質を総合評価した。具体的には、定着性の評価結果がAであると共に画質の評価結果もAである場合には、「A」とした。定着性の評価結果および画質の評価結果のうちのいずれかがBである場合には、「B」とした。
【0143】
【0144】
[考察]
表1に示したように、画像G,Iのそれぞれの定着性および画質は、下地トナーに含まれている結着剤の重量平均分子量Mwに応じて変動した。
【0145】
具体的には、画像Iを用いた場合、すなわち媒体Mとカラー画像GBとの間に下地画像GAが介在していない場合(実験例1-8)には、上記した下地画像GAを利用する利点が得られなかったため、定着性が確保されなかったと共に、画質も低下した。
【0146】
これに対して、画像Gを用いた場合、すなわち媒体Mとカラー画像GBとの間に下地画像GAが介在している場合(実験例1-1~1-7)には、重量平均分子量Mwに応じて定着性および画質のそれぞれが異なる傾向を示した。
【0147】
重量平均分子量Mwが12297よりも小さい場合(実験例1-1)には、定着性は確保されたが、画質が低下した。また、重量平均分子量Mwが14019よりも大きい場合(実験例1-6,1-7)には、画質は向上したが、定着性が確保されなかった。しかしながら、重量平均分子量Mwが12297~14019である場合(実験例1-2~1-5)には、定着性が確保されたと共に、画質も向上した。
【0148】
<2.重量Xおよび総重量Yに関する検証(定着温度=140℃)>
次に、重量Xおよび総重量Yに関する検証を行った。この場合には、画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)の形成時における定着温度を140℃とした。すなわち、上記した重量平均分子量Mwに関する検証を行った場合よりも定着温度を10℃下げることにより、検証条件を厳しくした。
【0149】
(実験例2-1~2-6)
以下の手順により、画像形成装置を用いて媒体Mに画像Gを形成したのち、その画像Gの品質を評価した。この場合には、以下で説明することを除いて、上記した実験例1-1~1-8と同様の手順を用いた。
【0150】
[画像の形成]
下地トナーおよびカラートナー(イエロートナーおよびマゼンタトナー)が搭載された画像形成装置を用いて、媒体Mに画像Gを形成した。この場合には、定着温度=140℃とした。また、現像ローラの印加電圧(静電潜像に対する下地トナーおよびカラートナーのそれぞれの付着量)を変化させることにより、表2に示したように、重量X(mg/cm2 )および総重量Y(mg/cm2 )のそれぞれを調整した。
【0151】
下地画像GAおよびカラー画像GBのそれぞれの画像パターンは、以下で説明する通りである。
図14は、他の画像パターン(3色)を説明するために、画像G(下地画像GAおよびカラー画像GB)が形成された媒体Mの平面構成を表しており、
図12に対応している。
【0152】
媒体Mに設定されている画像形成領域Fは、
図14に示したように、3分割されているため、3つの領域R11~R13を含んでいる。下地画像GAの形成範囲は、上記したように、画像形成領域F(領域R11~R13)である。イエロートナーを用いてカラー画像GBを形成する場合には、領域R11,R12のそれぞれにベタ画像(印字率=100%)を形成した。マゼンタトナーを用いてカラー画像GBを形成する場合には、領域R12,R13のそれぞれにベタ画像(印字率=100%)を形成した。これにより、領域R11にイエロー(Y)のカラー画像GBを形成し、領域R12にレッド(R)のカラー画像GBを形成し、領域R13にマゼンタ(M)のカラー画像GBを形成した。
【0153】
よって、媒体Mに3色(イエロー、マゼンタおよびレッド)の画像Gを形成した。
【0154】
[画像の品質評価]
次に、画像Gの品質を評価したところ、表2に示した結果が得られた。ここでは、画像Gの品質を評価するために、定着性および濃度特性を調べた。
【0155】
定着性に関する判定手順および評価手順は、上記した通りである。濃度特性を調べる場合には、分光濃度計(エックスライト社製のX-rite518)を用いて、イエローの画像Gの濃度を測定すると共に、マゼンタの画像Gの濃度を測定することにより、それらの濃度の測定結果を評価した。具体的には、濃度が1.2以上である場合には、十分な濃度が得られたため、「A」とした。濃度が1.2未満である場合には、十分な濃度が得られなかったため、「B」とした。
【0156】
なお、表2では、定着性の評価結果(AまたはB)と濃度特性の評価結果(AまたはB)とを1つの欄中に併記している。一例を挙げると、「B,B」という表記は、定着性の評価結果がBであると共に濃度特性の評価結果がBであることを表している。また、「A、A」という表記は、定着性の評価結果がAであると共に濃度特性の評価結果がAであることを表している。
【0157】
【0158】
[考察]
表2に示したように、画像Gの定着性および濃度特性は、重量Xおよび総重量Yに応じて変動した。
【0159】
具体的には、重量Xが0.20mg/cm2 よりも少ない場合(実験例2-1)および重量Xが0.4mg/cm2 よりも多い場合(実験例2-5,2-6)には、十分な定着性が得られず、場合によっては十分な濃度特性も得られなかった。
【0160】
これに対して、重量Xが0.20mg/cm2 ~0.40mg/cm2 である場合(実験例2-2~2-4)には、その重量Xと総重量Yとの関係によっては、十分な定着性が得られたと共に、十分な濃度特性も得られた。すなわち、重量Xが0.20mg/cm2 ~0.40mg/cm2 である場合には、総重量Yが(X+0.30)mg/cm2 ~(X+0.45)mg/cm2 であると、重量Xと総重量Yとの関係が適正化されたため、定着性と濃度特性とが両立された。
【0161】
<3.総括>
表1および表2に示した結果から、重量平均分子量Mwが特定の範囲内(Mw=12297~14019)である結着剤を含む下地トナーと共にカラートナーを用いて、媒体Mに下地トナー像ZAおよびカラートナー像ZBをこの順に転写させることにより、画像Gの定着性および画質が改善された。よって、高品質な画像Gが形成された。
【0162】
以上、一実施形態を挙げながら本発明の態様に関して説明したが、その本発明の態様は、上記した態様に限定されない。
【0163】
具体的には、例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置は、プリンタに限られず、複写機、ファクシミリおよび複合機などでもよい。また、例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置は、中間転写媒体を用いる中間転写方式を採用する場合に限られず、その中間転写媒体を用いない直接転写方式を採用してもよい。
【符号の説明】
【0164】
30…現像ユニット、現像処理ユニット31(31S,31Y,31M,31C,31K)…現像処理ユニット、40…転写ユニット、50…定着ユニット、G…画像、GA…下地画像、GB…カラー画像、M…媒体、ZA…下地トナー像、ZB…カラートナー像。