(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20220809BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20220809BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20220809BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61F13/56 210
A61F13/514 400
A61F13/51
A61F13/49 311Z
(21)【出願番号】P 2018171607
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】木村 笙子
(72)【発明者】
【氏名】田代 和泉
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-183332(JP,A)
【文献】特開2018-050675(JP,A)
【文献】特開2000-107226(JP,A)
【文献】特開2013-192819(JP,A)
【文献】特開2007-236967(JP,A)
【文献】特開2008-012139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体を有し、前身頃,股下部及び後身頃に亘って設けられ、幅方向に延びる基準線を基準に全体形状が線対称又は略線対称であり、全域に亘って実質的に同じ第一色彩の本体部と、
前記前身頃及び前記後身頃の一方において、前記本体部に対して幅方向の端部から外側に延出する止着部と、
前記前身頃及び前記後身頃の他方において、幅方向に延在し、前記本体部に積層され、最も非肌面側に配置され、前記止着部が固定されるパッチと、
前記一方で非肌面側から外観可能に設けられた第一デザイン部と前記他方で非肌面側から外観可能に設けられた第二デザイン部とを有し、前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部の外観が互いに同一又は類似するデザイン部と、を備え、
前記本体部が、前記一方のみ又は前記他方のみに設けられるとともに幅方向に伸縮するギャザーを有
し、
前記吸収体の幅方向の両端部において長手方向へ仮想的に延びる一対の折曲線で三つ折りにされた折畳状態から前記一対の折曲線での折り畳みが展開された平面状の展開状態に展開されて装着され、前記展開状態において肌面側を向く内面のうち前記一対の折曲線よりも幅方向外側の第一面が前記一対の折曲線よりも幅方向内側の第二面に対して前記折畳状態で対面して重ね合わせられ、製品出荷時において前記折畳状態をなす吸収性物品であって、
前記パッチが、
前記第二デザイン部に対して非肌面側に配置され、透明もしくは半透明である、又は、前記第二デザイン部と一体的に当該第二デザイン部の外観を構成する主部と、
当該パッチにおいて延在方向の両端部に位置し、前記本体部及び前記主部とは異なる第二色彩である一対の識別部とを有し、
前記一対の識別部は、前記展開状態において前記一対の折曲線よりも幅方向外側に配置された
吸収性物品。
【請求項2】
前記主部の全光線透過率が65~99%であり、
前記パッチのほうが前記第二デザイン部よりも幅方向寸法が大きく、
前記一対の識別部が、前記パッチの自由端をなす
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前身頃,股下部及び後身頃に亘って設けられ、幅方向に延びる基準線を基準に全体形状が線対称又は略線対称であり、全域に亘って実質的に同じ第一色彩の本体部と、
前記前身頃及び前記後身頃の一方において、前記本体部に対して幅方向の端部から外側に延出する止着部と、
前記前身頃及び前記後身頃の他方において、幅方向に延在し、前記本体部に積層され、最も非肌面側に配置され、前記止着部が固定されるパッチと、
前記一方で非肌面側から外観可能に設けられた第一デザイン部と前記他方で非肌面側から外観可能に設けられた第二デザイン部とを有し、前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部の外観が互いに同一又は類似するデザイン部と、を備え、
前記本体部が、前記一方のみ又は前記他方のみにおいて前記デザイン部に重複して設けられるとともに幅方向に伸縮するギャザーを有する
吸収性物品。
【請求項4】
前記パッチが、
前記第二デザイン部に対して非肌面側に配置され、透明もしくは半透明である、又は、前記第二デザイン部と一体的に当該第二デザイン部の外観を構成する主部と、
当該パッチにおいて延在方向の両端部に位置し、前記本体部及び前記主部とは異なる第二色彩である一対の識別部とを有し、
前記主部の全光線透過率が65~99%であり、
前記パッチのほうが前記第二デザイン部よりも幅方向寸法が大きく、
前記一対の識別部が、前記パッチの自由端をなす
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部の外観が互いに同一又は類似する前記デザイン部には、色彩又は模様が同一又は類似する前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部、前記模様の配置が同一又は類似する前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部、幅方向寸法が同一又は略同一の前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部、長手方向寸法が同一又は略同一の前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部の少なくとも何れかが含まれる
請求項1
若しくは請求項2
、又は、請求項3若しくは請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記止着部が、
前記パッチに固定される係止部材と、
前記係止部材が積層され、前記係止部材と前記本体部とを幅方向に結ぶ基材シートとを有し、
前記基材シートが、前記第一色彩と異なる色彩であるとともに前記一対の識別部と同系の第二同系色彩である
請求項1、2及び請求項1若しくは請求項2を引用する請求項5の何れか一項、又は、請求項
4若しくは請求項
4を引用する請求項
5に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ型おむつは、幅方向外側に延出したファスニングテープが引っ張られて、フロントパッチ(ランディングテープ)に止め着けられることで、前身頃と後身頃とが着用者の腰部や腹部まわりで連結される。このようなテープ型おむつの一例として、特許文献1には、透明領域と不透明領域とを所定の面積比で設けた止着領域を有するファスニングテープを用いることで、製造時におけるファスニングテープの取り付け位置の確認が容易な使い捨ておむつが提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、おむつの前後を区別するために、前身頃及び後身頃の少なくとも一方に、粘着剤層を被覆する剥離シートを備えたパンツ型おむつが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-167025号公報
【文献】特許第3439269号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る吸収性物品は、前身頃,股下部及び後身頃に亘って設けられ、幅方向に延びる基準線を基準に全体形状が線対称又は略線対称であり、全域に亘って実質的に同じ第一色彩の本体部と、前記前身頃及び前記後身頃の一方において、前記本体部に対して幅方向の端部から外側に延出する止着部と、前記前身頃及び前記後身頃の他方において、幅方向に延在し、前記本体部に積層され、最も非肌面側に配置され、前記止着部が固定されるパッチと、前記一方で非肌面側から外観可能に設けられた第一デザイン部と前記他方で非肌面側から外観可能に設けられた第二デザイン部とを有し、前記第一デザイン部及び前記第二デザイン部の外観が互いに同一又は類似するデザイン部と、を備える。前記本体部が、前記一方のみ又は前記他方のみに設けられるとともに幅方向に伸縮するギャザーを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パッチの位置の判別、及び、使用時において止着部(ファスニングテープ)をパッチへ固定する際の位置決めが容易である、新規な吸収性物品が得られる。また、本発明によれば、着用者に対する吸収性物品の前後の判別が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】吸収性物品の基本構成を示す分解斜視図である。
【
図2】非肌面側から平面視した展開状態の吸収性物品の基本構成を示す模式図である。
【
図3】(a)は一方の仮想線(折曲線)にて本体部を折り畳んだ状態の吸収性物品を肌面側から平面視した模式図であり、(b)は一対の仮想線にて本体部を折り畳んだ状態の吸収性物品を肌面側から平面視した模式図であり、(c)は(b)の吸収性物品が更に折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【
図4】パッチの端部における断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本件を実施するための形態を説明する。本実施形態で述べる吸収性物品は、装着時に着用者から排泄される尿や経血といった液体の水分(以下「排泄水分」という)を吸収体で吸収し保持する衛生用品である。この吸収性物品には、テープ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」)が含まれる。
以下の実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつ(以下、単に「テープ型おむつ」という。)を例示する。
【0010】
テープ型おむつは、着用者に装着され、排泄物の水分を吸収して保持するおむつの一種である。テープ型おむつは、着用者の腰回りが周状に連続して構成されたパンツ型おむつとは異なり、腰回りの前後に分離した前身頃及び後身頃をもつ。このテープ型おむつは、乳幼児のほか、成人の要介護者といったさまざまな着用者に装着される。
【0011】
本実施形態では、説明に用いる方向を下記のように定義する。
テープ型おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、テープ型おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向に沿った方向から視ることを平面視とする。
【0012】
[1.構成]
まず、
図1及び
図2を参照して、テープ型おむつ1の基本構成を説明する。その後に、テープ型おむつ1の詳細な構成を述べる。なお、下記の説明では「テープ型おむつ」を単に「おむつ」と略称する。
【0013】
[1-1.基本構成]
おむつ1は、幅方向の中心線CL1を基準として対称に構成されている。また、おむつ1は長手方向Lに沿って前身頃1A、股下部1B及び後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0014】
〈吸収体〉
おむつ1には、前身頃1A、股下部1B及び後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体10が内蔵されている。この吸収体10は、股下部1Bにおいて長手方向全域に配置され、前身頃1A及び後身頃1Cにおいて長手方向端部を除く大部分に配置される。
吸収体10は、水分を吸収して保持するマット状の部材である。この吸収体10では、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に吸水性樹脂(「SAP〈Super Absorbent Polymer〉」とも称される)を混合したマットが親水性の不織布やティシュなどのラップシートで被包(ラップ)されている。
【0015】
〈シート〉
上記した吸収体10に対して肌面側及び非肌面側には、以下に述べる種々のシート11,12,13,14がおむつ1の長手方向全域に設けられ、本体部100が構成される。つまり、本体部100は、吸収体10とシート11,12,13,14との積層体である。
吸収体10に対して、肌面側にはセンターシート11が積層され、非肌面側にはバックシート12が積層される。バックシート12の非肌面側には、カバーシート14が積層される。また、センターシート11の側方(幅方向外側)には、サイドシート13が配置される。
【0016】
センターシート11は、水分を透過させて吸収体10に吸収させるため、透水性を有する。また、センターシート11は、サイドシート13を除いて、おむつ1において最も肌面側に配置される(
図1参照)。このことから、センターシート11は「トップシート」とも称される。このセンターシート11は、吸収体10よりも幅方向寸法が大きく、肌面側から吸収体10を被覆する。
【0017】
バックシート12は、吸収体10からの液漏れを防ぐため、非透水性を有する。
また、サイドシート13は、幅方向側方への液漏れを防ぐため、疎水性を有する。このサイドシート13は、おむつ1において最も肌面側に配置される。このことから、サイドシートは、センターシートと同様に「トップシート」とも称される。
【0018】
カバーシート14は、上記した吸収体10及びシート11,12,13を非肌面側から被覆する。このカバーシート14は、バックシート12を補強するとともに触感(たとえば手触り)を向上させるために設けられる。このカバーシート14としては、通気性を高める観点から、いわゆるエアスルー不織布を用いることが好ましい。
なお、カバーシート14は、単層構造に限らず、インナカバーシートやアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0019】
〈ギャザー〉
そのほか、おむつ1には、装着状態における着用者への追従性を高めるため、立体ギャザー21、レッグギャザー22やウエストギャザー23(ギャザー)などのギャザーが設けられている。これらのギャザー21,22,23では、糸ゴム31,32,33(弾性部材)の貼り付けられたサイドシート13やバックシート12などが皺寄せられる。なお、糸ゴム31,32,33に替えて又は加えて、天然ゴムあるいは伸縮フィルムといった弾性部材を用いてもよい。
【0020】
立体ギャザー21は、幅方向外側への排泄物の漏出を防ぐため、サイドシート13の幅方向内側に配備される。この立体ギャザー21では、サイドシート13の幅方向内側の端縁で長手方向に沿って糸ゴム31が設けられている。
レッグギャザー22は、着用者の脚部に対するおむつ1の隙間を抑えるため、装着状態において着用者の脚部周縁となる箇所に設けられる。このレッグギャザー22では、股下部1B及びその周辺においてバックシート12の幅方向外側の端縁で、長手方向に沿って糸ゴム32が設けられている。
ウエストギャザー23は、幅方向に伸縮し、着用者の胴回りのフィット性を調節するため、後身頃1Cの長手方向端部にのみ設けられる。このウエストギャザー23では、後身頃1Cの長手方向の端縁で、幅方向に沿って糸ゴム33が設けられている。
【0021】
〈ファスニング機構〉
このおむつ1には、後身頃1Cで幅方向外側に延出するように取り付けられた一対の止着部6,6、いわゆるファスニングテープ6,6が設けられ、前身頃1Aの最も非肌面側(外表面)にパッチ4が設けられている。ここでは、矩形のパッチ4が用いられる。ファスニングテープ6,6が引っ張られてパッチ4に止め着けられ、固定されることで、おむつ1が着用者に装着される。なお、以下において「ファスニングテープ」を「テープ」と略称する。
これらのパッチ4及びテープ6によって、止め着け機能を実現するファスニング機構が構成される。なお、
図1及び
図2では、本体部100における後身頃1Cの幅方向両側に一つずつ設けられた一対のテープ6,6を例示する。ただし、幅方向Wの端部に設けられるテープ6の数は特に限定されず、少なくとも幅方向両側に一つずつのテープ6が設けられていればよい。
【0022】
(ファスニングテープ)
テープ6は、基材シート61と係止部材62とを有する。
基材シート61の幅方向内側の基部61A(一箇所のみ符号を付す)は、例えば、ヒートシールや超音波シールによってサイドシート13及び/又はカバーシート14に熱融着されていてもよいし、ホットメルトなどの接着剤によってサイドシート13及び/又はカバーシート14に接着されていてもよい。また、
図1に示すように、基部61Aがサイドシート13とカバーシート14との間に挟装され、シート13,14に熱融着又は接着されていてもよい。つまり、基部61Aをサイドシート13とカバーシート14との間に挟装する態様では、基部61Aに対して、サイドシート13のうち幅方向外側の端部が肌面側に積層され、カバーシート14のうち幅方向外側の端部が非肌面側に積層される。
また、基材シート61において、基部61Aを除く延出部61B(一箇所のみ符号を付す)は、シート13,14よりも幅方向外側に延在する状態に設けられている。
【0023】
基材シート61を構成する材料としては、例えば、織布、不織布、その他の布、紙、プラスチックフィルム又はこれらの複合素材を用いることができる。また、不織布を構成する素材としては、例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系又はポリスチレン系の合成樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
係止部材62は、基材シート61における延出部61Bの肌面側に設けられる。すなわち、係止部材62と本体部100とが基材シート61によって幅方向に結ばれている。係止部材62はパッチ4に係合可能な部材である。係止部材62は、例えば、粘着剤や粘着テープであってもよいし、パッチ4に機械的に結合される面状ファスナーであってもよい。面状ファスナーとは、フック材(雄部材)とループ材(雌部材)の機械的結合により固定を行う仕組みである。面状ファスナーは、例えば、表面に多数の突起(鉤状、きのこ状等)が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。例えば、テープ6の係止部材62としてフック材を採用し、パッチ4の表面にループ材を形成すればよい。ただし、テープ6の係止部材62としてループ材を採用し、パッチ4の表面にフック材を形成することも可能である。ループ材の表面にフック材を貼り合わせると、フック材の多数の突起がループ材の表面に係合する。このため、面状ファスナーによれば、フック材とループ材を剥離可能な状態で、かつ強固に固着させることができる。このように、繰り返しの使用が可能である点、及び固着強度が高いという点において、面状ファスナーを採用することが好ましい。
【0025】
(パッチ)
パッチ4は、本体部100における前身頃1Aの外表面においてテープ6の止め着けを容易にするために設けられる。つまり、パッチ4は、本体部100の非肌面側に外装(積層)される。
係止部材62がフック材の場合、パッチ4としては、フィルム層と、その外面全体に設けられたループ材とを有するフィルムタイプのものを好適に用いることができる。ループ材には、係止部材62のフック材が着脱自在に係合可能である。この場合におけるループ材としては、糸で編まれた網状体であってループを有するものがフィルム層上に取り付けられている形態の他、熱可塑性樹脂の不織布が間欠的な超音波シールによりフィルム層上に取り付けられ、不織布の繊維がループをなす形態等が挙げられる。また、パッチ4として、熱可塑性樹脂の不織布にエンボス加工を施したものでフィルム層が無いフィルムレスタイプのものを用いることもできる。フィルム層やループ材を構成する材料としては不織布が好ましく、基材シート61を構成する材料として例示した合成樹脂等を用いた不織布がより好ましい。
【0026】
上記のパッチ4は、以下に例示する機能1~3の少なくも何れかを満たす。
・機能1:係止部材62を取り付けるための適正な位置を示す機能
・機能2:係止部材62の繰り返しの止め着けを安定させる機能
・機能3:カバーシート14に止め着け不能な係止部材62の止め着け先を確保する機能
上記の機能1は、パッチ4の延在範囲に係止部材62が止め着けられることにより、適正な位置へのテープ6の止め着けに寄与し、着用者へのおむつ1の適正な装着に資する。
上記の機能2は、フック材の係止部材62が繰り返し止め着けられた際に毛羽立ちし難い強度(物性)をパッチ4にもたせることにより、係止部材62の繰り返しの止め着けが安定する。仮に、カバーシート(不織布)にフック材の係止部材が繰り返し止め着けられる場合には、不織布の毛羽立ちや止め着け安定性の低下を招くおそれがある。これに対し、パッチ4に係止部材62を止め着けることにより、毛羽立ちの抑制や止め着け安定性の確保に資する。
上記の機能3は、係止部材62がカバーシート14に止め着けられない場合に、係止部材62の止め着け先を確保することができる。
【0027】
〈デザイン部〉
図2に示すように、本体部100には、前身頃1A及び後身頃1Cのそれぞれに外観可能な一対のデザイン部5A,5Bが付されている。デザイン部5A,5Bは、文字、図形、記号、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、単に「図柄」という。)を有し、デザイン部5A,5Bとそれ以外の部分とを目視により区別可能な領域である。このようなデザイン部5A,5Bは、例えば、バックシート12又はカバーシート14の非肌面側に印刷加工を施すことで設けられる。あるいは、バックシート12とカバーシート14との間にデザイン部5が別設される。
図2には、バックシート12に設けられたデザイン部5A,5Bを示す。
前身頃1A及び後身頃1Cにおいてデザイン部5A,5Bが配置される領域は特に限定されない。例えば、
図2には、前身頃1A及び後身頃1Cのそれぞれにおいて、本体部100の長手方向端部から長手方向寸法の1/3又は1/4程度の位置までの範囲で長手方向の境界が規定され、吸収体10の幅方向寸法と略等しい範囲で幅方向の境界が規定されたデザイン部5A,5Bを示す。
デザイン部5A,5Bは互いに同一の図柄であってもよいし、互いに異なる図柄であってもよい。また、デザイン部5A,5Bは互いに少なくとも一部が同一の図柄であってもよい。なお、以下において「デザイン部5A,5B」を単に「デザイン部5」と記載することがある。
【0028】
ここで例示するデザイン部5A,5Bには、
図2に示すように、前身頃1Aの前デザイン部5A(第二デザイン部)と及び後身頃1Cの後デザイン部5B(第一デザイン部)とが設けられている。
本実施形態のデザイン部5A,5Bは、外観が互いに同一又は類似する。ここでいう「外観が互いに同一又は類似するデザイン部5A,5B」には、下記に例を列挙する態様1~4の少なくとも何れかが含まれる。
・態様1:色彩又は模様が同一又は類似するデザイン部5A,5B
・態様2:模様の配置が同一又は類似するデザイン部5A,5B
・態様3:幅方向寸法が同一又は略同一のデザイン部5A,5B
・態様4:長手方向寸法が同一又は略同一のデザイン部5A,5B
例えば、デザイン部5A,5Bは、長手方向に線対称又は略線対称な外観をなしている。
【0029】
[1-2.詳細構成]
前身頃1A及び後身頃1Cのそれぞれに外観可能な一対のデザイン部5A,5Bの付された本体部100において、パッチ4は前デザイン部5に外装(非肌面側に配置)される。
図2に示すように、パッチ4は前デザイン部5Aとの重複部4A(主部)を有し、重複部4Aにテープ6が止め着けられて固定される。なお、前デザイン部5Aの幅方向寸法よりもパッチ4の幅方向寸法が大きい場合には、パッチ4は、重複部4Aの幅方向外側に、デザイン部5と重複しない非重複部4B,4Bを有することがある。
このような態様のおむつ1では、前デザイン部5Aとパッチ4との視覚的な混同を引き起こすことがあり、デザイン部5A,5Bのどちら側にパッチ4が配置されているか視認が困難になること、つまり、使用者にとってパッチ4の位置の判別が困難になることがある。パッチ4の位置が判別できないと、使用者は、テープ6を適正位置に迅速に固定し、適度なフィット感で着用者におむつ1を装着することが難しい。また、使用者は、パッチ4の位置によりおむつ1の前後を認識することがあるため、パッチ4の位置が判別できないと、着用者に対するおむつ1の前後を錯誤するおそれがある。
特に、デザイン部5の視認性や見栄えを向上させるため、光透過性を有するパッチ4(透明又は半透明の材料を用いたパッチ4)、前デザイン部5Aが有する色彩と同系の色彩を有するパッチ4、前デザイン部5Aと同一の図柄のパッチ4や、前デザイン部5Aと少なくとも一部が同一の図柄を有するパッチ4といった一体的に前デザイン部5Aの外観を構成する重複部4Aの設けられたパッチ4をデザイン部5に外装する場合には、パッチ4の位置の判別はさらに困難になる傾向がある。
なお、パッチ4の「光透過性」とは、パッチ4が外装された位置のデザイン部5に光を透過させると共に、そのデザイン部5が反射する反射光を視認可能な程度に透過させる機能である。
【0030】
また、おむつ1は、製品出荷時において所定形状に折り畳まれた状態で包装体に収納される。例えば、おむつ1は、吸収体10の幅方向Wにおける両端部(ここではデザイン部5A,5Bの幅方向Wにおける両端部でもあり、デザイン部5A,5Bが仮想線VL1,VL2の幅方向内側に配置される)において幅方向Wに直交し長手方向Lへ仮想的に延びる一対の仮想線VL1,VL2(折曲線)により、肌面側を内側にして、仮想線VL1,VL2よりも幅方向外側の部分が折り返される(
図3(a)及び
図3(b)参照)。次いで、おむつ1は、幅方向Wに延びる仮想線VL3,VL4(折畳線)により、本体部100が長手方向Lに対して三つ折りされて、所定形状の折り畳み状態となる(
図3(c)参照)。
【0031】
このような折り畳み工程は、一般に、おむつ1の製造ラインの一部に組み込まれている。展開状態のおむつ1に対して適切な位置(例えば、仮想線VL1,VL2)で折り加工が施されないと、折り畳み状態のおむつ1は所定形状にならず、そのサイズにバラつきが生じる。その結果、折り畳み状態のおむつ1を包装体に収納する際に、包装体が破損するおそれがある。つまり、折り畳み状態のおむつ1を包装体に収納することが困難になり、おむつ1の生産性の低下を招くことがある。
特に、仮想線VL1,VL2での折り加工は、展開状態におけるおむつ1の肌面側を確認しながら行われるため、肌面側から平面視したときに本体部100が実質的に同じ色彩を有する場合には、折り加工を施す適切な位置を判別しにくい。
また、折り畳み状態のおむつ1(
図3(c)参照)を使用する際に、使用者は、まず、仮想線VL3,VL4による折り畳みを長手方向Lに展開する(
図3(b)参照)。そして、使用者は、仮想線VL1,VL2による折り返しを展開し、その後、おむつ1を着用者に装着する。
【0032】
以下、
図3(a)~(c)に示すように少なくとも仮想線VL1,VL2で折り畳まれた状態を「折畳状態」と称する。折畳状態のおむつ1では、一対の仮想線VL1,VL2よりも幅方向外側の第一面が、一対の仮想線VL1,VL2よりも幅方向内側の第二面に対して対面して重ね合わせられる。また、
図2に示すように仮想線VL1,VL2,VL3,VL4での折り畳みが展開された平面状の状態を「展開状態」と称する。
このように、使用者はおむつ1を肌面側から平面視しながら展開し、着用者に対する装着作業を進める。
図3(c)に示す折畳状態のおむつ1を見た使用者は、パッチ4の位置によりおむつ1の前後を判別できる場合もあるが、本態様のおむつ1ではデザイン部5とパッチ4との視覚的な混同を引き起こしやすいため、パッチ4の視認が困難である。つまり、使用者は、パッチ4の位置により、おむつ1の前後を判別できないことがある。また、展開状態のおむつ1は、長手方向の中心線CL2(基準線,
図3参照)を基準として全体形状が線対称又は略略線対称である、あるいは、デザイン部5A,5Bの外観が互いに同一または類似するため、展開状態のおむつ1を肌面側から平面視するだけでは、おむつ1の前後の判別が難しい。
【0033】
〈識別部と弾性部材との関係〉
そこで、
図2に示すように、幅方向Wに伸縮する糸ゴム33を後身頃1Cにのみ配置している。
糸ゴム33により、バックシート12の後身頃1C部分のみが幅方向Wに皺寄せられたウエストギャザー23が形成されるため、使用者はウエストギャザー23の触覚により、おむつ1の前後位置を判別できる。
【0034】
また、パッチ4を前身頃1Aにのみ配置している。このパッチ4には、幅方向の両端部に一対の識別部4C,4Cを設けている。一対の識別部4C,4Cは、展開状態のおむつ1を非肌面側から見たときに周囲の色彩と異なる色彩(第二色彩)である。具体的に言えば、識別部4C,4Cの色彩は、パッチ4の重複部4A及び本体部100の色彩とは異なる。このようにパッチ4において延在方向の両端部に位置する一対の識別部4C,4Cは、互いに実質的に同じ色彩を有している。一方、パッチ4の重複部4Aは、一体的に前デザイン部5Aの外観を構成する。
【0035】
このような態様のおむつ1において、仮想線VL1,VL2で折り加工が行われると、肌面側から平面視したときに、識別部4C,4Cを視認できる(
図3(b)参照)。そのため、識別部4C,4Cを折り加工が適切な位置にて行われたか否かを判別するマーカーとして利用できる。つまり、識別部4C,4Cの互いの位置をマーカー認識手段により検出することで、適切な位置で折り加工が行われたおむつと、不適切な位置で折り加工が行われたおむつとを判別できる。マーカー認識手段としては、反射タイプや透過タイプの光電管を用いる認識装置、CCDカメラや一般的なカメラを利用した撮像装置等が挙げられる。上記の適切な位置で折り加工が行われたおむつ1に対して、仮想線VL3,VL4による三つ折り加工を行うことで、所定形状に折り畳まれたおむつ1を効率よく製造できる。その結果、包装体に対する折り畳まれたおむつ1の収納性が向上し、おむつ1の生産性に優れる。なお、不適切な位置で折り加工が行われたおむつは、展開され、再び折り畳み工程が行われる。
【0036】
通常、パッチ4はおむつ1の幅方向の中心線CL1(
図1参照)を基準として対称に配置される。パッチ4の幅方向Wにおける両端部に一対の識別部4C,4Cを設けることで、使用者は、おむつ1の中心位置、及び、一対の識別部4C,4Cの間に存在するパッチ4の位置を判別することができる。そして、使用者は、パッチ4の位置から、おむつ1の前後を推測できる。
したがって、使用者は、前身頃1Aに配置されたパッチ4の位置と後身頃1Cに配置されたウエストギャザー23の位置とから、おむつ1の前後を判別できる。その結果、着用者に対するおむつ1の位置決めが容易になる。また、おむつ1を装着する際にテープ6のパッチ4への止め着け、すなわち、パッチ4に対するテープ6の位置決めが容易になる。
なお、パッチ4は、中心線CL1を基準として非対称に配置されてもよい。このように配置されたパッチ4であっても、一対の識別部4C,4Cにより、使用者はパッチ4の位置を判別することができる。また、以下において「識別部4C,4C」を単に「識別部4C」と記載することがある。
【0037】
ここでは、パッチ4を一対の仮想線VL1,VL2よりも幅方向外側に延在させている。このような態様のパッチ4とすることで、使用者は、保管状態のおむつ1(
図3(c)参照)において、仮想線VL3,VL4による本体部100の折り返しを展開したとき(
図3(b)参照)に、肌面側からの平面視により識別部4C,4Cを視認できる。さらに、展開状態のおむつ1を非肌面側から見たときに識別部4C,4Cを視認できる。換言すれば、折畳状態のおむつ1を非肌面側から見た場合、デザイン部5A,5Bは視認可能なものの、識別部4C,4Cは視認不能である。折畳状態のおむつ1を肌面側から見た場合には、識別部4C,4Cは視認可能であるものの、デザイン部5A,5Bは視認不能である。そのため、折畳状態のおむつ1を肌面側から見る使用者や展開状態のおむつ1を非肌面側から見る使用者は、パッチ4の位置を判別することで、おむつ1の前後を推測できる。
したがって、使用者は着用者に対するおむつ1の位置決めを迅速に行うことができる。
そのほか、折畳状態のおむつ1を非肌面側から見たときには、識別部4C,4Cが視認不能であることから、折畳状態のおむつ1を非肌面側から見たときのデザイン部5A,5Bによる装飾性を確保可能である。
【0038】
識別部4Cを形成する方法は特に限定されない。例えば、識別部4Cはパッチ4に印刷加工を施すことで形成できる。なお、一対の識別部4C,4Cは、互いに同系の色彩を有してもよいし、互いに異なる色彩を有してもよい。
【0039】
なお、上述した用語の意味は以下のとおりである。
「識別部4C」とは、識別部4Cとその他の部分とを目視により区別可能な領域である。具体的には、識別部4Cは、おむつ1を展開した状態(
図2参照)において非肌面側から平面視したときに、パッチ4における他の部位のほか、前デザイン部5A及び本体部100と異なる色彩を有する。
ここで、「パッチ4における他の部位」とは、パッチ4における識別部4C,4C以外の部位をいい、例えば、重複部4Aや非重複部4Bが挙げられる。つまり、展開状態のおむつ1を非肌面側から平面視したとき、パッチ4における他の部位の色彩には、重複部4Aの色彩及び非重複部4Bの色彩が含まれる。なお「前デザイン部5Aの色彩」とは、前デザイン部5Aを平面視したときに、最も広面積を占める色彩のことをいう。
また、「本体部100の色彩」とは、非肌面側から本体部100を平面視したときに主に視認できる色彩(以下、「非肌面側の地色」と記載することがある。)である。具体的には、
図2に示す展開したおむつ1を非肌面側から平面視したときに、本体部100において最も広面積を占める色彩を、非肌面側の地色という。ここでは、全域に亘って実質的に同じ白色(第一色彩)の本体部100を例に挙げる。すなわち、本体部100の地色として白色を例示する。ただし、非肌面側に2色以上の色彩を有する本体部100では、この本体部100において最も広面積を占める色が地色となる。
例えば、展開状態のおむつ1を非肌面側から平面視したときに識別部4Cの全てが前デザイン部5Aと重複する場合には、識別部4Cは、重複部4Aの色彩及び前デザイン部5Aの色彩と異なる色彩を有する。前デザイン部5Aと識別部4Cとが一部重複する場合には、識別部4Cは、重複部4Aの色彩、前デザイン部5Aの色彩、及び、非肌面側の地色と異なる色彩を有する。前デザイン部5Aと識別部4Cとが重複しない場合には、識別部4Cは、非重複部4Bの色彩及び本体部100の非肌面側の地色と異なる色彩を有する。
【0040】
「同系の色彩」とは、実質的に同じ色彩を含む同系統の色彩、すなわち、色相が同じ又は近似する色彩を意味する。ここで、「実質的に同じ色彩」とは、明るさ、色相又は彩度の全てが略同じであることを意味する。換言すれば、「実質的に同じ色彩」とは、対比する色彩同士が完全に同一色彩でなくても、太陽光や通常の照明光の下で、対比する色彩同士を区別して視認することが困難な程度の同一性を有することである。
「異なる色彩」とは、明るさ、色相又は彩度のうち、少なくともいずれか一つが異なることを意味する。例えば、単に色相が異なるものばかりでなく、同じ色相であっても、彩度又は明度が異なるものは「異なる色彩」である。
【0041】
〈重複部〉
前デザイン部5Aに外装されるパッチ4において、重複部4Aの全光線透過率は65~99%であることが好ましい。重複部4Aの全光線透過率が上記範囲のパッチ4は、少なくとも重複部4Aが透明又は半透明となる。このような態様では、前デザイン部5Aとパッチ4との視覚的な混同を引き起こしやすく、パッチ4の位置の判別がより困難になる傾向がある。しかし、パッチ4が幅方向Wの両端部に識別部4C,4Cを有することで、使用者はパッチ4の位置を容易に判別できる。
また、重複部4Aの全光線透過率が上記範囲のパッチ4を用いると、前デザイン部5Aにパッチ4を外装しても、前デザイン部5Aの外観がパッチ4の存在に影響されにくく、前デザイン部5Aの視認性や見栄えに優れる。その結果、使用者のおむつ1に対する購買意欲を高めることができる。
ここで、「全光線透過率」とは、JIS K 7361-1(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第一部:シングルビーム法)に準拠した測定法により測定された値である。重複部4Aの全光線透過率は、パッチ4を構成する材料の選択(例えば、不織布を使用する場合にはその繊維径〔dtex(デシテックス)〕やその目付量、填料〔酸化チタン等〕の配合量)や、パッチ4の厚み寸法等により調整できる。
【0042】
上記範囲の全光線透過率を充足するパッチ4を構成する材料として不織布を用いる場合、その繊維径は0.5~1.2dtexが好ましく、また、その目付量は16g/m2以下が好ましい。
ここで、繊維径は、パッチ4の重複部4Aを、幅方向に略5等分し、略5等分された重複部4Aからそれぞれ1cm角の試験片をサンプリングし、顕微鏡で繊維の直径を各20点ずつ測定し、その平均値から算出できる。また、目付量は、パッチ4の重複部4Aから、縦20cm×横20cmの試験片を任意に5枚採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの重量に換算して算出できる。
【0043】
また、前デザイン部5Aの面積に対する重複部4Aの面積の割合は30~70%であることが好ましい。前デザイン部5Aの面積に対する重複部4Aの面積の割合を上記範囲とすることで、テープ6をパッチ4に固定する際の位置決めが容易になると共に、デザイン部5の視認性や見栄えに優れる。したがって、使用者は着用者におむつ1を装着させることが容易になり、また、使用者のおむつ1に対する購買意欲を向上させることができる。
【0044】
また、パッチ4が透明又は半透明な場合、重複部4Aは、前デザイン部5Aの色彩とは異なる色彩を有してもよい。前デザイン部5Aの色彩と重複部4Aの色彩とが異なることで、パッチ4の位置の判別がより容易になる。
【0045】
〈パッチとデザイン部の幅方向寸法の関係〉
また、
図2に示すように、パッチ4の幅方向寸法は、前デザイン部5Aの幅方向寸法よりも大きく、識別部4C,4Cは前デザイン部5Aから幅方向外側に離隔している。言い換えると、パッチ4は、重複部4Aの幅方向外側に前デザイン部5Aと重複しない非重複部4Bを有する。つまり、この態様のパッチ4は、重複部4A、非重複部4B及び識別部4Cを有する。
非重複部4Bの幅方向寸法は特に限定されないが、識別部4C,4Cと重複部4Aとを適度に離間させ、識別部4C,4Cの視認性を向上させる観点からは、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。このような態様のパッチ4によれば、使用者は、保管状態のおむつ1(
図3(c)参照)において、仮想線VL3,VL4による本体部100の折り返しを展開したとき(
図3(b)参照)に、肌面側からの平面視により識別部4C,4Cを視認できる。また、使用者は、非肌面側の地色との色差や非重複部4Bとの色差により識別部4C,4Cを視認しやすいため、パッチ4の位置を容易に把握できる。したがって、使用者は、着用者に対するおむつ1の前後を判別し、おむつ1の位置決めを迅速に行うことができる。
【0046】
例えば、識別部4C,4Cと非肌面側の地色との色差は、市販の測色器を用いて測色を行い、JIS Z 8729等に規定されるCIE1976(L*a*b*)色空間に基づいて数値化した値を比較することによって求めることができる。具体的には、測定対象たる2点(識別部4Cの色彩と非肌面側の地色)間のL*値の差がΔL*、a*値の差がΔa*、b*値の差がΔb*であるときに、色差ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2によって求められる。この色差ΔE*abが好ましくは1.5以上、より好ましくは3.0以上である場合に、使用者が目視により感知し得る程度に色彩が異なるといえる。言い換えれば、上記「異なる色彩」とは、色差が上記範囲であることを意味する。また、上記の「同系の色彩」とは、色差が好ましくは1.5未満であることを意味し、上記の「実質的に同じ色彩」とは、色差が好ましくは1.0未満であることを意味する。
なお、ここでいう「識別部4Cの色彩」とは、識別部4Cを平面視したときに、最も広面積を占める色彩のことをいう。
【0047】
〈フラップ〉
また、
図4に示すように、パッチ4は幅方向の両端部に一対のフラップ4D,4Dを有する。フラップ4D,4Dはパッチ4の両端部に形成された自由端である。なお、以下において「フラップ4D,4D」を単に「フラップ4D」と記載することがある。
図4では、フラップ4Dは、パッチ4において識別部4Cと共に、端部に設けられている。幅方向Wの両端部にフラップ4Dを有するパッチ4によれば、使用者は触覚でもパッチ4の位置を判別することが可能になる。
フラップ4Dの幅方向寸法W
4Dは特に限定されない。フラップ4Dの幅方向寸法W
4Dが小さすぎると触覚による判別が困難になる傾向がある。一方、フラップ4Dの幅方向寸法W
4Dが大きすぎると、おむつ1を仮想線VL1,VL2にて折り畳む際にフラップ4Dが装置に挟まる等の不具合を引き起こす原因になることがある。上記観点から、フラップ4Dの幅方向寸法W
4Dは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。なお、フラップ4Dの長手方向寸法は、パッチ4の長手方向寸法と略同じである。
【0048】
また、視覚及び触覚によるパッチ4の位置の判別をより容易にする観点からは、識別部4Cの幅方向寸法W4Cに対するフラップ4Dの幅方向寸法W4Dの割合(W4D/W4C)は、好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
【0049】
〈模様〉
また、パッチ4は模様を有していてもよい。非肌面側からの平面視において、パッチ4の模様が前デザイン部5Aや本体部100の有する模様と異なる場合には、模様によりパッチ4の位置を判別することができる。このような模様は、印刷加工やエンボス加工により形成できる。模様は、パッチ4の全体に形成してもよいし、一部に形成してもよい。例えば、識別部4C,4Cにのみ模様を形成すこともできる。パッチ4の位置の判別を容易にする観点からは、パッチ4の全体に模様を施すことが好ましい。
【0050】
〈ファスニングテープ〉
基材シート61及び/又は係止部材62(テープ6の少なくとも一部)は、一対の識別部4C,4Cと同系の色彩(第二同系色彩)を有することが好ましい。基材シート61及び/又は係止部材62と、識別部4Cとを同系の色彩とすることで、使用者は、色彩の似ている部材同士を止め着けることを視覚的に容易に判別できる。したがって、使用者は、識別部4C,4Cの間に存在するパッチ4にテープ6を迅速に固定し、適度なフィット感で着用者におむつ1を装着できる。
なお、基材シート61や係止部材62は単色であってもよいし、2色以上を有していてもよい。基材シート61や係止部材62が2色以上の色彩を有する場合には、平面視したときに最も広面積を占める色彩が、識別部4Cと同系の色彩であればよい。
【0051】
例えば、基材シート61は、係止部材62と異なる色彩を有することが好ましい。具体的には、基材シート61が、肌面側及び非肌面側から平面視したときに、本体部100と同系の色彩(第一色彩又は第一同系色彩)を有し、係止部材62の色彩と識別部4Cの色彩とが同系の色彩となることが好ましい。
基材シート61と本体部100とが実質的に同じ色彩を有する場合、使用者は、折り畳み状態のおむつ1(
図3(c)参照)から、仮想線VL3,VL4による本体部100の折り返しを展開したとき(
図3(b)参照)に、肌面側から平面視したときにテープ6の位置を判別しづらいことがある。このような態様であっても、上記構成を有するおむつ1によれば、パッチ4の位置とウエストギャザー23の位置とから、おむつ1の前後を判別できるため、使用者は着用者に対するおむつ1の位置決めを迅速に行うことができる。
【0052】
また、基材シート61の色彩は、本体部100の白色と異なる色彩であるとともに一対の識別部4C,4Cと同系の第二同系色彩であってもよい。この場合の係止部材62は、本体部100の白色と同系の色彩(第一色彩,第一同系色彩)であることが好ましい。すなわち、本体部100に対して、係止部材62を色彩の相違によって見分けるのが困難であるものの、基材シート61を色彩の相違によって見分けやすい構成が好ましい。
上記のように第二同系色彩の基材シート61によっても、おむつ1の前後を判別できるため、使用者は着用者に対するおむつ1の位置決めを迅速に行うことができる。
なお、白色と異なる色彩(いわば着色した色彩)の係止部材62は色の調整が困難であり、製造コストが高まるおそれがある。これに対し、本体部100の白色と同系色彩の係止部材62は色の調整が容易であるうえに、係止部材62と比較して色の調整が容易な基材シート61に着色することから、製造コストの上昇が抑制可能である。
そのほか、テープ6が全域に亘って白色(第一色彩)であってもよい。この場合には、上述したようにテープ6の色彩でおむつ1の前後を判別することはできないものの、識別部4Cの色彩によっておむつ1の前後判別する手段が確保されたうえで、テープ6の着色コストを抑えることができる。
【0053】
〈寸法〉
また、パッチ4やデザイン部5等の具体的寸法は以下のとおりである。
パッチ4の幅方向寸法は、通常100mm以上、好ましくは150mm以上であり、通常250mm以下、好ましくは200mm以下である。また、パッチ4の長手方向寸法は、通常20mm以上、好ましくは30mm以上であり、通常60mm以下、好ましくは50mm以下である。なお、
図2には、幅方向寸法が180mmであり、長手方向寸法が40mmのパッチ4を示す。
【0054】
識別部4Cの幅方向寸法W
4Cは、通常5mm以上、好ましくは10mm以上であり、通常25mm以下、好ましくは20mm以下である。また、識別部4Cの長手方向寸法は、通常20mm以上、好ましくは30mm以上であり、通常60mm以下、好ましくは50mm以下である。なお、
図2には、長手方向寸法がパッチ4の長手方向寸法と同じであって、パッチ4の端部から幅方向内側に15mmの領域に色彩の付された一対の識別部4C,4Cを示す。
【0055】
デザイン部5の幅方向寸法は、通常80mm以上、好ましくは100mm以上であり、通常200mm以下、好ましくは150mm以下である。また、デザイン部5の長手方向寸法は、通常80mm以上、好ましくは100mm以上であり、通常200mm以下、好ましくは150mm以下である。なお、
図2には、幅方向寸法及び長手方向寸法がそれぞれ120mmのデザイン部5A,5Bを示す。
【0056】
上記寸法のパッチ4及びデザイン部5を備えるおむつ1では、デザイン部5とパッチ4との視覚的な混同が特に生じやすい傾向にある。したがって、パッチ4の両端部に上記寸法の識別部4C,4Cを設けることで、このような混同を確実に防止し、使用者はパッチ4の位置を容易に判別できる。
【0057】
[2.作用及び効果]
本実施形態のおむつ1は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を奏する。
(1)本発明によれば、新規な吸収性物品が提供される。
(2)前身頃1A及び後身頃1Cのそれぞれに設けられたデザイン部5A,5Bによりパッチ4の位置の判別が困難な態様の吸収性物品1であっても、パッチ4の幅方向における両端部に識別部4C,4Cを設けることで、使用者はパッチ4の位置を確実に判別できる。また、ウエストギャザー23を後身頃1Cにのみ配置することで、使用者は、ウエストギャザー23の位置とパッチ4の位置とから吸収性物品1の前後関係を判別できる。したがって、本発明によれば、パッチ4の位置、及び着用者に対する吸収性物品1の前後の判別が容易であり、ファスニングテープ6をパッチ4に固定する際の位置決めがしやすい吸収性物品1が提供される。
【0058】
[3.その他]
上述した実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0059】
例えば、テープ6の配置箇所(前身頃1A及び後身頃1Cの一方)は、後身頃1Cに限定されず、前身頃1Aであってもよい。この場合には、パッチ4の配置箇所(前身頃1A及び後身頃1Cの他方)は後身頃1Cとなる。そして、上記実施形態においては、「前身頃1A」を「後身頃1C」と読み替えるとともに「後身頃1C」を「前身頃1A」と読み替えればよい。
また、ウエストギャザー23を構成する糸ゴム33の配置箇所は、後身頃1Cに替えて前身頃1Aであってもよい。例えば、糸ゴム33とパッチ4とが前身頃1Aに配置されると、糸ゴム33とともにパッチ4が幅方向Wに伸縮し、テープ6の止め着けが難しくなることがある。そのため、パッチ4を前身頃1Aに配置する場合には、糸ゴム33は後身頃1Cに配置することが好ましい。この場合、後身頃1Cには、糸ゴム33とともにテープ6が配置される。糸ゴム33とともにテープ6が後身頃1Cに配置される場合には、おむつ1の装着時にテープ6を幅方向Wに引っ張る際に糸ゴム33が伸縮するため、着用者に対するおむつ1のフィット感の調整がしやすい。
【符号の説明】
【0060】
1 おむつ(テープ型おむつ)
1A 前身頃
1B 股下部
1C 後身頃
10 吸収体
11 センターシート
12 バックシート
13 サイドシート
14 カバーシート
21 立体ギャザー
22 レッグギャザー
23 ウエストギャザー
31,32,33 糸ゴム(弾性部材)
4 パッチ
4A 重複部
4B 非重複部
4C 識別部
4D フラップ
5 デザイン部
6 止着部(ファスニングテープ,テープ)
61 基材シート
61A 基部
61B 延出部
62 係止部材
100 本体部