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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】建設機械のポンプ制御装置及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20220809BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E02F9/22 R
F04B49/06 321Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018179620
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051070
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(72)【発明者】
【氏名】鹿児島 昌之
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-181823(JP,A)
【文献】特開2013-124460(JP,A)
【文献】特開2010-223390(JP,A)
【文献】特開2001-271758(JP,A)
【文献】特開平04-043876(JP,A)
【文献】実開昭57-057290(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出量を変更できる可変容量型ポンプの吸収トルクを設定する吸収トルク設定手段と、
前記吸収トルクと前記可変容量型ポンプのポンプ圧とに基づいて、前記可変容量型ポンプの吐出量を制御するポンプ制御手段と、
前記吐出量を変更できない固定容量型ポンプの作動を検出する作動検出手段と、
前記作動検出手段により前記固定容量型ポンプの作動が検出されたことに応答して、前記吸収トルクの低減に用いられる第1トルク低減値を出力する第1出力部と、
エンジン目標回転数とエンジン実回転数との偏差に基づいて、前記吸収トルクの低減に用いられる第2トルク低減値を出力する第2出力部と、
前記第1トルク低減値と前記第2トルク低減値とに基づいて、前記可変容量型ポンプのポンプトルク低減量を決定する決定手段と、
を備え、
前記決定手段は、前記固定容量型ポンプの作動が検出されてからの経過時間が大きくなるにつれて、前記第1トルク低減値の重み付けを小さく、前記第2トルク低減値の重み付けを大きくすることを特徴とする、建設機械のポンプ制御装置。
【請求項2】
前記作動検出手段は、レバー操作量を検出するレバー操作検出センサを含み、
前記レバー操作量は、前記固定容量型ポンプを油圧源として駆動する駆動対象を操作するためのレバーの操作量であり、
前記作動検出手段は、前記レバー操作検出センサによって検出された前記レバー操作量に基づいて、前記固定容量型ポンプの作動を検出することを特徴とする請求項1に記載の建設機械のポンプ制御装置。
【請求項3】
前記第1トルク低減値は、前記レバー操作量が大きいほど大きくなることを特徴とする請求項2に記載の建設機械のポンプ制御装置。
【請求項4】
前記作動検出手段は、前記固定容量型ポンプのポンプ圧を検出するポンプ圧センサを含み、
前記第1トルク低減値は、前記ポンプ圧センサによって検出された前記ポンプ圧が大きいほど大きくなることを特徴とする請求項1に記載の建設機械のポンプ制御装置。
【請求項5】
下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記下部走行体に設けられ、ドーザシリンダによって駆動するドーザと、
吐出量を変更できる可変容量型ポンプと、
前記吐出量を変更できない固定容量型ポンプとして構成され、前記ドーザシリンダの油圧源であるドーザポンプと、
前記可変容量型ポンプの吸収トルクを設定する吸収トルク設定手段と、
前記吸収トルクと前記可変容量型ポンプのポンプ圧とに基づいて、前記可変容量型ポンプの吐出量を制御するポンプ制御手段と、
前記ドーザポンプの作動を検出する作動検出手段と、
前記作動検出手段により前記ドーザポンプの作動が検出されたことに応答して、前記吸収トルクを低減するための第1トルク低減値を出力する第1出力部と、
エンジン目標回転数とエンジン実回転数との偏差に基づいて、前記吸収トルクを低減するための第2トルク低減値を出力する第2出力部と、
前記第1トルク低減値と前記第2トルク低減値とに基づいて、前記可変容量型ポンプのポンプトルク低減量を決定する決定手段と、
を備え、
前記決定手段は、前記ドーザポンプの作動が検出されてからの経過時間が大きくなるにつれて、前記第1トルク低減値の重み付けを小さく、前記第2トルク低減値の重み付けを大きくすることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型ポンプと固定容量型ポンプとを含むポンプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ショベルにおいて、ポンプレギュレータによって吐出量を変更できる可変容量型ポンプと、当該吐出量を変更できない固定容量型ポンプとを併用するものが知られている。例えば、特許文献1では、可変容量型ポンプでアタッチメント動作等を行う油圧アクチュエータを駆動する一方、固定容量型ポンプでドーザシリンダを駆動する油圧ショベルが開示されている。
【0003】
このような油圧ショベルでは、固定容量型ポンプ(ドーザポンプ)を含む全ポンプの合計のポンプ圧に応じてトータルのポンプトルク(馬力)を一定に保つ制御が行われる。詳細には、全ポンプ圧からトータルのポンプトルクが算出され、算出されたポンプトルクがエンジンの許容トルクを超えないように可変容量型ポンプの吐出量が制御される。詳細には、ドーザ操作時において、トータルのポンプトルクが設定値を超えるおそれがある場合には、固定容量型ポンプのポンプ圧の上昇に応じて可変容量型ポンプのトルクを低減する減馬力制御が行われる。
【0004】
ところが、ドーザ操作時点と、上述の減馬力制御による吐出量変更完了時点とには時間的遅れが生じるため、ドーザポンプ圧が急上昇した場合には減馬力制御が間に合わず、オーバトルクによるエンストが発生する可能性がある。
【0005】
上記に鑑み、特許文献1では、ドーザポンプ(固定容量型ポンプ)のポンプ回路に可変リリーフ弁を設け、ドーザポンプの設定圧力を、ドーザシリンダの操作時に、予め設定された設定値まで予め設定された遅延時間をもって増加させるリリーフ圧漸増制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-98453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の記載の発明では、馬力制御を行うために、固定容量型ポンプ(ドーザポンプ)のポンプ回路に可変リリーフ弁(電磁リリーフバルブ)を追加で設ける必要があり、コストが増加するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、吐出量を変更できる可変容量型ポンプと吐出量を変更できない固定容量型ポンプとを備える建設機械において、より簡易な構成で減馬力制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、吐出量を変更できる可変容量型ポンプの吸収トルクを設定する吸収トルク設定手段と、前記吸収トルクと前記可変容量型ポンプのポンプ圧とに基づいて、前記可変容量型ポンプの吐出量を制御するポンプ制御手段と、前記吐出量を変更できない固定容量型ポンプの作動を検出する作動検出手段と、前記作動検出手段により前記固定容量型ポンプの作動が検出されたことに応答して、前記吸収トルクの低減に用いられる第1トルク低減値を出力する第1出力部と、エンジン目標回転数とエンジン実回転数との偏差に基づいて、前記吸収トルクの低減に用いられる第2トルク低減値を出力する第2出力部と、前記第1トルク低減値と前記第2トルク低減値とに基づいて、前記可変容量型ポンプのポンプトルク低減量を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記固定容量型ポンプの作動が検出されてからの経過時間が大きくなるにつれて、前記第1トルク低減値の重み付けを小さく、前記第2トルク低減値の重み付けを大きくすることを特徴とする、建設機械のポンプ制御装置を提供している。
【0010】
ここで、前記作動検出手段は、レバー操作量を検出するレバー操作検出センサを含み、前記レバー操作量は、前記固定容量型ポンプを油圧源として駆動する駆動対象を操作するためのレバーの操作量であり、前記作動検出手段は、前記レバー操作検出センサによって検出された前記レバー操作量に基づいて、前記固定容量型ポンプの作動を検出するのが好ましい。
【0011】
また、前記第1トルク低減値は、前記レバー操作の操作量が大きいほど大きくなるのが好ましい。
【0012】
更に、前記作動検出手段は、前記固定容量型ポンプのポンプ圧を検出するポンプ圧センサを含み、前記第1トルク低減値は、前記ポンプ圧センサによって検出された前記ポンプ圧が大きいほど大きくなるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体上に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記下部走行体に設けられ、ドーザシリンダによって駆動するドーザと、吐出量を変更できる可変容量型ポンプと、前記吐出量を変更できない固定容量型ポンプとして構成され、前記ドーザシリンダの油圧源であるドーザポンプと、前記可変容量型ポンプの吸収トルクを設定する吸収トルク設定手段と、前記吸収トルクと前記可変容量型ポンプのポンプ圧とに基づいて、前記可変容量型ポンプの吐出量を制御するポンプ制御手段と、前記ドーザポンプの作動を検出する作動検出手段と、前記作動検出手段により前記ドーザポンプの作動が検出されたことに応答して、前記吸収トルクを低減するための第1トルク低減値を出力する第1出力部と、エンジン目標回転数とエンジン実回転数との偏差に基づいて、前記吸収トルクを低減するための第2トルク低減値を出力する第2出力部と、前記第1トルク低減値と前記第2トルク低減値とに基づいて、前記可変容量型ポンプのポンプトルク低減量を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記ドーザポンプの作動が検出されてからの経過時間が大きくなるにつれて、前記第1トルク低減値の重み付けを小さく、前記第2トルク低減値の重み付けを大きくすることを特徴とする建設機械を更に提供している。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載のポンプ制御装置によれば、固定容量型ポンプの作動検出直後は第1トルク低減値の重み付けが大きく、第2トルク低減値の重み付けが小さくなるため、固定容量型ポンプに対する負荷の急激な立ち上がりに対応できる。その後、徐々に第1トルク低減値が小さく、第2トルク低減値の重み付けが大きくなっていくため、エンジン出力とポンプ負荷との双方を考慮した制御が可能である。そのため、吐出量を変更できる可変容量型ポンプと吐出量を変更できない固定容量型ポンプとを備える建設機械において、電磁リリーフバルブ等を追加することなく、より簡易な構成で減馬力制御を行うことが可能である。
【0015】
請求項2に記載の建設機械のポンプ制御装置によれば、レバー操作検出センサによって検出されるレバー操作量に基づいて固定容量型ポンプの作動が検出される。よって、固定容量型ポンプにポンプ圧センサを設け、当該ポンプ圧センサを用いて固定容量型ポンプの作動を検出する場合等に比べて、コストを低減することが可能である。
【0016】
請求項3に記載のポンプ制御装置によれば、第1トルク低減値は、レバー操作量が大きいほど大きくなるため、レバー操作量が小さく固定容量型ポンプの負荷も小さいと想定される場合に、可変容量型ポンプのポンプトルク低減量が過大にならずに済む。
【0017】
請求項4に記載のポンプ制御装置によれば、第1トルク低減値は、ポンプ圧センサで検出される固定容量型ポンプのポンプ圧が大きいほど大きくなるため、固定容量型ポンプの負荷が小さい場合に、可変容量型ポンプのポンプトルク低減量が過大にならずに済む。また、固定容量型ポンプのポンプ圧の実測値に基づき第1トルク低減値が出力されるため、レバー操作の操作量に応じて第1トルク低減値を出力する場合に比べて、当該第1トルク低減値をより正確に出力することも可能である。
【0018】
請求項5に記載の建設機械によれば、吐出量を変更できる可変容量型ポンプと吐出量を変更できない固定容量型ポンプであるドーザポンプとを備える建設機械において、電磁リリーフバルブ等を追加することなく、より簡易な構成で減馬力制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による建設機械(油圧ショベル)を示す概略側面図。
図2】第1実施形態に係る油圧ショベルのポンプ制御装置を示す油圧回路図。
図3】固定容量型ポンプの作動を検出してからの経過時間Tと式3の係数αとの関係を示すグラフ。
図4】同実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
図5】第2実施形態に係る油圧ショベルのポンプ制御装置を示す油圧回路図。
図6】レバー操作量Sとトルク低減値T3との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.第1実施形態>
本発明の第1実施形態による建設機械のポンプ制御装置について図1乃至図4に基づき説明する。ここでは、建設機械の一例として図1に示す油圧ショベル1を例示する。
【0021】
油圧ショベル1は、図1に示されるように、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体12と、上部旋回体12に装着される作業アタッチメント13とを備えて構成されている。
【0022】
下部走行体11には、ドーザ14が装着される。このドーザ14は、図示しないドーザシリンダによって昇降駆動され、接地状態で走行しながら地面を平らにする地均し作業や、土を押して運ぶ土運び作業等を行う。
【0023】
図2に示されるように、油圧ショベル1は、エンジン2を動力源として駆動する可変容量型ポンプ3,4と、同じくエンジン2を動力源として駆動する固定容量型ポンプ5とを備えている。
【0024】
可変容量型ポンプ3,4は、下部走行体11を旋回駆動する旋回モータ、及び作業アタッチメント13の各動作のための油圧アクチュエータの油圧源として設けられるポンプの一例である。
【0025】
可変容量型ポンプ3,4には、傾転(吐出流量)を変化させるためのポンプレギュレータ31,41が設けられている。可変容量型ポンプ3,4は、後述のポンプ制御部7からの傾転指令信号に応じてポンプレギュレータ31,41を介して傾転が制御される。
【0026】
また、可変容量型ポンプ3,4には、可変容量型ポンプ3,4のポンプ圧を検出するポンプ圧センサ33,43が設けられている。ポンプ圧センサ33,43により検出された各ポンプ圧は、ポンプ制御装置10のポンプ制御部7に入力される。
【0027】
固定容量型ポンプ5は、ドーザ14のドーザシリンダ(図示せず)の油圧源として設けられるドーザポンプの一例である。可変容量型ポンプ3,4とは異なり、固定容量型ポンプ5にはポンプレギュレータが設けられていない。そのため、固定容量型ポンプ5の吐出流量は、変更されることなく、常に一定である。
【0028】
上述した可変容量型ポンプ3,4及び固定容量型ポンプ5に関しては、それらの合計のポンプ圧(トータルポンプ圧とも称する)に応じてトータルの最大ポンプ馬力を一定に保つための馬力一定制御が行われる。具体的には、全ポンプ圧からトータルのポンプトルクを算出し、算出されたポンプトルクがエンジン2の許容トルクを超えないように可変容量型ポンプ3,4の吐出量を制御している。
【0029】
図2に示されるように、油圧ショベル1は、エンジン回転数検出部25と、レバー操作検出センサ9とを備えている。
【0030】
エンジン回転数検出部25は、エンジン2のエンジン回転数(詳細には、エンジン実回転数N)を検出し、後述の第2出力部82に出力する。
【0031】
レバー操作検出センサ9は、ドーザ14を操作するレバー(図示せず)のレバー操作量Sを検出し、後述の第1出力部81に出力する。なお、レバー操作検出センサ9は、本発明に係る作動検出手段の一例である。また、ドーザ14は、固定容量型ポンプ5を油圧源として駆動し、レバー(図示せず)によって操作されることから、本発明に係る駆動対象の一例である。
【0032】
続いて、可変容量型ポンプ3,4のポンプ圧を制御するポンプ制御装置10(図2の破線で囲んだ部分)について説明する。
【0033】
ポンプ制御装置10は、吸収トルク設定部6と、ポンプ制御部7と、第1出力部81と、第2出力部82と、トルク低減量決定部83とを備えて構成される。
【0034】
吸収トルク設定部6は、可変容量型ポンプ3,4の吸収トルク(ポンプトルク)を設定する処理部である。
【0035】
ポンプ制御部7は、吸収トルク設定部6から入力される吸収トルクと可変容量型ポンプ3,4の各ポンプ圧とに基づいて、可変容量型ポンプ3,4の各吐出量(傾転)を制御する処理部である。詳細には、ポンプ制御部7は、各傾転指令信号をポンプレギュレータ31,41に出力し、ポンプレギュレータ31,41を介して可変容量型ポンプ3,4の各吐出量を制御する。
【0036】
第1出力部81は、吸収トルク設定部6から出力される吸収トルクの低減に用いられる第1トルク低減値T3を出力する処理部である。
【0037】
具体的には、第1出力部81は、レバー操作検出センサ9から出力されたレバー操作量Sに基づき、ドーザ14のレバー操作が行われたことを固定容量型ポンプ5(ドーザポンプ)の作動として検出する。固定容量型ポンプ5の作動が検出されると、第1出力部81は、下記の式(1)を用いて第1トルク低減値T3を算出する。
【0038】
T3=PP3max×q3÷2π (1)
【0039】
式(1)において、PP3max(Mpa)は、固定容量型ポンプ5のリリーフ設定圧(最大値)である。q3(cc/rev)は、固定容量型ポンプ5の吐出量である。T3(N・m)は、式(1)によって算出される第1トルク低減値である。
【0040】
第1出力部81は、式(1)によって算出された第1トルク低減値T3をトルク低減量決定部83に出力する。
【0041】
第2出力部82は、吸収トルク設定部6から出力される吸収トルクを低減するための第2トルク低減値Tessを出力する処理部である。
【0042】
具体的には、第2出力部82は、エンジン目標回転数Ngrとエンジン実回転数Nとの偏差に基づく下記の式(2)を用いて第2トルク低減値Tessを出力する。
【0043】
ess=K×(Ngr-N)+K∫(Ngr-N)dt (2)
【0044】
式(1)において、Ngrは予め設定されたエンジン目標回転数であり、Nはエンジン回転数検出部25から出力されたエンジン実回転数である。KはPI制御における比例ゲイン、Kは同じくPI制御における積分ゲインである。Tess(N・m)は、式(2)によって算出される第2トルク低減値である。
【0045】
第2出力部82は、式(2)によって算出された第2トルク低減値Tessをトルク低減量決定部83に出力する。
【0046】
トルク低減量決定部83は、第1トルク低減値T3及び第2トルク低減値Tessに基づいて、可変容量型ポンプ3,4のポンプトルク低減量Tdを決定する処理部である。
【0047】
具体的には、トルク低減量決定部83は、固定容量型ポンプ5の作動が検出されてからの時間(以下、単に経過時間Tとも称する)に基づく下記の式(3)を用いてポンプトルク低減量Tdを決定する。
【0048】
Td=α×T3+(1-α)×Tess (3)
【0049】
式(3)において、αは、図3のグラフで示される特性、すなわち、経過時間Tが大きくなるにつれて小さくなるという特性を有する係数である。詳細には、係数αは、経過時間Tが0(T=0)の場合に「1」となり、その後、経過時間Tが大きくなるほど小さくなり、経過時間TがTnになった時点(T=Tn)で「0」になる。よって、式(3)によれば、経過時間Tが大きくなるほど、第1トルク低減値T3の重み付けが小さく、かつ、第2トルク低減値Tessの重み付けが大きくなるように、ポンプトルク低減量Tdが決定される。
【0050】
トルク低減量決定部83は、式(3)によって算出されたポンプトルク低減量Tdを出力する。詳細には、トルク低減量決定部83は、吸収トルク設定部6とポンプ制御部7との間に設けられた減算器にポンプトルク低減量Tdを出力する。当該減算器は、吸収トルク設定部6から出力された吸収トルクをポンプトルク低減量Tdに基づいて低減し、低減された低減吸収トルクをポンプ制御部7に出力する。
【0051】
図2に示されるように、トルク低減量決定部83には、レバー操作検出センサ9から出力されるレバー操作量Sが入力される。トルク低減量決定部83は、レバー操作量Sが入力されたことを固定容量型ポンプ5の作動として検出する。固定容量型ポンプ5の作動が検出されると、トルク低減量決定部83は、経過時間Tの計測を開始する。
【0052】
続いて、図4のフローチャートを参照しながら、本実施形態におけるポンプ制御装置10(トルク低減量決定部83)の動作について説明する。なお、図4のフローチャートの処理は一定のタイミングで繰り返し実行される。
【0053】
ステップS1において、トルク低減量決定部83は、固定容量型ポンプ5の作動が検出された否かを判定する。上述したように、本実施形態では、ドーザ14のレバー操作が固定容量型ポンプ5(ドーザポンプ)の作動として検出される。
【0054】
固定容量型ポンプ5の作動が検出されると(すなわち、ドーザ14のレバー操作が行われると)(S1:YES)、トルク低減量決定部83は、経過時間Tのカウントを開始する(ステップS2)。
【0055】
ステップS3において、トルク低減量決定部83は、経過時間Tに基づいて係数αを決定する。係数αを決定した後、トルク低減量決定部83は、上述の式(3)を用いてポンプトルク低減量Tdを算出する(ステップS4)。
【0056】
ステップ5では、固定容量型ポンプ5の作動(すなわち、ドーザ14のレバー操作)が終了したか否かが判定される。固定容量型ポンプ5の作動が終了したと判定されると(S5:YES)、図4のフローチャートの処理が終了する。一方、固定容量型ポンプ5の作動が終了していないと判定されると(S5:NO)、ステップS3に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0057】
他方、上述のステップS1において、固定容量型ポンプ5の作動が検出されない場合(すなわち、ドーザ14のレバー操作が行われていない場合)(S1:NO)、トルク低減量決定部83は、経過時間Tを初期化(T=0)し(ステップS6)、更に、ポンプトルク低減量Tdを初期化(Td=0)する(ステップS7)。
【0058】
上述した実施形態によるポンプ制御装置10によれば、固定容量型ポンプ5の作動検出直後は、第1トルク低減値T3の重み付けが大きく、第2トルク低減値Tessの重み付けが小さいため、固定容量型ポンプ5に対する負荷の急激な立ち上がりに対応できる。その後、徐々に第1トルク低減値T3が小さく、第2トルク低減値Tessの重み付けが大きくなっていくため、エンジン出力とポンプ負荷との双方を考慮した制御が可能である。したがって、吐出量を変更できる可変容量型ポンプ3,4と吐出量を変更できない固定容量型ポンプ5とを備える油圧ショベル1において、電磁リリーフバルブ等を追加することなく、より簡易な構成で減馬力制御を行うことが可能である。
【0059】
また、上述した実施形態によるポンプ制御装置10によれば、ドーザ14のレバー操作量Sに基づいて固定容量型ポンプ5の作動が検出される。よって、例えば、固定容量型ポンプ5にポンプ圧センサを別途設け、当該ポンプ圧センサを用いて固定容量型ポンプ5の作動を検出する場合に比べて、コストを低減することが可能である。
【0060】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について図5に基づき説明する。第2実施形態では、固定容量型ポンプ5の実際のポンプ圧(実測値)に基づいてトルク低減量を決定する態様を例示する。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に説明するものとし、既に説明した内容については適宜説明を省略する。
【0061】
図5に示されるように、第2実施形態では、レバー操作検出センサ9(図2)が設けられず、その代りとして、ポンプ圧センサ53が設けられる。ポンプ圧センサ53は、固定容量型ポンプ5のポンプ圧を検出するためのセンサであり、固定容量型ポンプ5のポンプ圧PP3を実測値として出力する。
【0062】
ポンプ圧センサ53から出力されるポンプ圧PP3は、第1出力部81と、トルク低減量決定部83とにそれぞれ入力される。
【0063】
第1出力部81は、ポンプ圧PP3に基づいて第1トルク低減値T3を算出する。具体的には、第1出力部81は、下記の式(4)を用いて第1トルク低減値T3を算出する。
【0064】
T3=PP3×q3÷2π (4)
【0065】
式(4)において、PP3(Mpa)は、ポンプ圧センサ53から出力された固定容量型ポンプ5のポンプ圧(実測値)である。q3(cc/rev)は、第1実施形態と同様に固定容量型ポンプの吐出量を示している。T3(N・m)は、トルク低減量決定部83によるポンプトルク低減量Tdの算出(式(3))に用いられる第1トルク低減値である。
【0066】
また、トルク低減量決定部83は、入力されたポンプ圧PP3に基づいて固定容量型ポンプ5の作動を検出し、経過時間Tのカウントを開始する。
【0067】
上記第1実施形態では、ポンプ圧センサ53が設けられていないため、上述した式(1)に示されるように、第1トルク低減値T3の算出において、固定容量型ポンプ5のリリーフ設定圧PP3max(最大値)が用いられている。そのため、実際には、固定容量型ポンプ5の負荷が小さい場合であっても、第1トルク低減値T3が大きく設定され、結果として、可変容量型ポンプ3,4のトルクが必要以上に低減される場合がある。
【0068】
これに対して、第2実施形態では、上述した式(4)に示されるように、第1トルク低減値T3の算出において、ポンプ圧センサ53から出力されるポンプ圧PP3(実測値)が用いられる。そのため、固定容量型ポンプ5の負荷が小さい場合に、第1トルク低減値T3、ひいては、可変容量型ポンプ3,4のポンプトルク低減量Tdが過大にならずに済む。また、固定容量型ポンプ5のポンプ圧PP3の実測値に基づき第1トルク低減値T3が出力される。よって、レバー操作の操作量の入力に伴って第1トルク低減値T3を出力する上記第1実施形態に比べて、当該第1トルク低減値T3をより正確に出力できる。
【0069】
<3.変形例>
本発明による建設機械のポンプ制御装置は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0070】
上述した実施形態では、第1トルク低減値T3を上述の式(1)を用いて算出する場合を例示したが、これに限定されず、図6に示されるレバー操作量Sに応じたグラフ(関数)に基づいて算出してもよい。図6に示されるグラフ(関数)では、レバー操作量Sが0からSnへ増加するのに伴って、第1トルク低減値T3も0から徐々に増加している。そして、レバー操作量SがSnになった時点で第1トルク低減値T3は最大値T3maxになる。その後、レバー操作量Sの増加に追従せず、第1トルク低減値T3は最大値T3maxを維持する。
【0071】
かかる変形例によれば、第1トルク低減値T3は、レバー操作量Sが大きいほど大きくなる可変値として出力される。そのため、レバー操作量Sが小さく固定容量型ポンプ5の負荷が小さいと想定される場合に、第1トルク低減値T3、ひいては、可変容量型ポンプ3,4のポンプトルク低減量Tdが過大にならずに済む。
【符号の説明】
【0072】
1 油圧ショベル、2 エンジン、3,4 可変容量型ポンプ、5 固定容量型ポンプ、
6 吸収トルク設定部、7 ポンプ制御部、9 レバー操作検出センサ、
10 ポンプ制御装置、11 下部走行体、12 上部旋回体、
13 作業アタッチメント、14 ドーザ、25 エンジン回転数検出部、
31,41 ポンプレギュレータ、33,43 ポンプ圧センサ、53 ポンプ圧センサ、
81 第1出力部、82 第2出力部、83 トルク低減量決定部、
エンジン実回転数、Ngr エンジン目標回転数、PP3 ポンプ圧、
PP3max リリーフ設定圧、S レバー操作量、T 経過時間、T3 トルク低減値、
T3max 最大値、Td ポンプトルク低減量、Tess トルク低減値、α 係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6