(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】後処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 37/00 20060101AFI20220809BHJP
B65H 9/14 20060101ALI20220809BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B65H37/00
B65H9/14
B65H9/00 J
B65H9/00 H
(21)【出願番号】P 2018179796
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100194582
【氏名又は名称】栗原 康浩
(72)【発明者】
【氏名】若林 裕之
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-069993(JP,A)
【文献】特開2015-036325(JP,A)
【文献】特開2015-124013(JP,A)
【文献】特表平09-510409(JP,A)
【文献】特開平05-258118(JP,A)
【文献】特開2012-206353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/00
B65H 9/14
B65H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段側から搬送される用紙に後処理を実行する後処理装置であって、
複数の曲がり補正の方式の何れか1つに従い、前記用紙に曲がり補正を実行する補正部と、
前記補正部により曲がり補正された前記用紙に前記後処理を実行する後処理部と、
前記後処理部により前記後処理が実行されて作成される作成物に応じた曲がり補正精度と、前記作成物の生産性と、に基づき、前記複数の曲がり補正の方式から何れか1つを選択する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記複数の曲がり補正の方式のうち、前記後処理部による前記後処理の実行に要する後処理時間と、前記補正部による前記用紙の曲がり補正の実行に要する補正時間との差異を低減させるものを選択する、
後処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記後処理時間が閾値時間以上である場合、前記複数の曲がり補正の方式のうち、CD整合方式を選択する、
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記後処理時間が閾値時間未満であり、且つ前記用紙の剛度が所定値未満の場合、前記複数の曲がり補正の方式のうち、ローラーレジスト方式を選択し、
前記後処理時間が前記閾値時間未満であり、且つ前記用紙の剛度が前記所定値以上の場合、前記複数の曲がり補正の方式のうち、ステアリング方式を選択する、
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記後処理時間が閾値時間以上であって、前記用紙が長尺紙である場合又は前記用紙の短辺側が先頭で前記用紙が前記後処理部に搬送される場合、CD整合方式を選択する、
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記作成物が冊子である場合、ステアリング方式を選択し、
前記作成物が名刺である場合、CD整合方式を選択する、
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項6】
前記後処理部の上流側に設けられ、前記用紙の搬送方向と直交方向に沿って配置された一対のステアリングローラー、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記用紙に曲がり補正を実行し、且つ前記用紙に印字された画像の曲がり量を調整する場合、ステアリング方式を選択するものであり、
前記ステアリング方式は、
前記用紙に印字された画像の曲がり量に応じて、前記一対のステアリングローラーのそれぞれの回転速度が調整される、
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記曲がり補正精度及び前記作成物の生産性のうち、優先度合いの高い方に応じて、前記複数の曲がり補正の方式から何れか1つを選択する、
請求項1~6の何れか一項に記載の後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置により画像が形成された用紙に後処理を施す後処理装置が利用されている。後処理装置のうち、例えば、1枚の用紙を複数に分割して断裁することで作成物を出力するものがある。このような後処理装置において、用紙を断裁する前に用紙の位置を整合することで用紙の曲がり補正をする場合、作成物の枚数に応じて異なる曲がり補正を選択するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、作成物の紙幅及び種類に応じて、レジストローラー及びステアリングローラーの何れか一方による用紙の曲がり補正を選択するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、後処理に応じて複数の曲がり補正のうちから異なる曲がり補正を選択するものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-039998号公報
【文献】特許第5445510号公報
【文献】特許第4846623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3に記載のような従来技術では、用紙の曲がり補正精度を向上させることはできるが、全体の生産性を考慮に入れているわけではない。よって、例えば、用紙の曲がり補正をする工程と、用紙の後処理をする工程との間で、待ち時間が何度も生じる虞がある。この結果、用紙の曲がり補正精度を向上させることができるが、全体の生産性は低下する虞がある。
【0005】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、用紙の曲がり補正精度を向上させつつ、全体の生産性の低下を抑制させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面である後処理装置は、前段側から搬送される用紙に後処理を実行する後処理装置であって、複数の曲がり補正の方式の何れか1つに従い、前記用紙に曲がり補正を実行する補正部と、前記補正部により曲がり補正された前記用紙に前記後処理を実行する後処理部と、前記後処理部により前記後処理が実行されて作成される作成物に応じた曲がり補正精度と、前記作成物の生産性と、に基づき、前記複数の曲がり補正の方式から何れか1つを選択する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の曲がり補正の方式のうち、前記後処理部による前記後処理の実行に要する後処理時間と、前記補正部による前記用紙の曲がり補正の実行に要する補正時間との差異を低減させるものを選択するものである。
【0007】
また、本開示の一側面である後処理装置において、前記制御部は、前記後処理時間が閾値時間以上である場合、前記複数の曲がり補正の方式のうち、CD整合方式を選択する、ことが好ましい。
【0008】
また、本開示の一側面である後処理装置において、前記制御部は、前記後処理時間が閾値時間未満であり、且つ前記用紙の剛度が所定値未満の場合、前記複数の曲がり補正の方式のうち、ローラーレジスト方式を選択し、前記後処理時間が前記閾値時間未満であり、且つ前記用紙の剛度が前記所定値以上の場合、前記複数の曲がり補正の方式のうち、ステアリング方式を選択する、ことが好ましい。
【0009】
また、本開示の一側面である後処理装置において、前記制御部は、前記後処理時間が閾値時間以上であって、前記用紙が長尺紙である場合又は前記用紙の短辺側が先頭で前記用紙が前記後処理部に搬送される場合、CD整合方式を選択する、ことが好ましい。
【0010】
また、本開示の一側面である後処理装置において、前記制御部は、前記作成物が冊子である場合、ステアリング方式を選択し、前記作成物が名刺である場合、CD整合方式を選択する、ことが好ましい。
【0011】
また、本開示の一側面である後処理装置において、前記後処理部の上流側に設けられ、前記用紙の搬送方向と直交方向に沿って配置された一対のステアリングローラー、をさらに備え、前記制御部は、前記用紙に曲がり補正を実行し、且つ前記用紙に印字された画像の曲がり量を調整する場合、ステアリング方式を選択するものであり、前記ステアリング方式は、前記用紙に印字された画像の曲がり量に応じて、前記一対のステアリングローラーのそれぞれの回転速度が調整される、ことが好ましい。
【0012】
また、本開示の一側面である後処理装置において、前記制御部は、前記曲がり補正精度及び前記作成物の生産性のうち、優先度合いの高い方に応じて、前記複数の曲がり補正の方式から何れか1つを選択する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一側面によれば、用紙の曲がり補正精度を向上させつつ、全体の生産性の低下を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施形態における画像形成システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態における画像形成システムの制御系の主要部を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態における作成物と、生産性及び曲がり補正精度との関係性の一例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態における曲がり補正の各方式の特徴を説明する図である。
【
図5】本開示の実施形態における後処理装置3の制御例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本開示の実施形態を説明するが、本開示は以下の実施形態に限られるものではない。
【0016】
図1は、本開示の実施形態における画像形成システムの全体構成例を示す図である。
図1に示すように、画像形成システムは、画像形成装置2の後段側に後処理装置3が接続された構成を備えている。後処理装置3は、後処理部71及び制御部300を備え、画像形成装置2から搬送される用紙Pに各種後処理を施す。後処理装置3の詳細については後述する。画像形成装置2は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像を形成する装置である。画像形成装置2は、YMCKの4色に対応する感光ドラムを中間転写ベルトの走行方向、すなわち鉛直方向に直列配置し、中間転写ベルトに一回の手順で各色トナー像を順次転写させる縦型タンデム方式が採用されている。すなわち、画像形成装置2は、感光ドラム上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルトに一次転写し、中間転写ベルト上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Pに二次転写することにより、画像を形成する。
【0017】
画像形成装置2は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、及び制御部200を備える。画像読取部10は、自動原稿給送装置11及び原稿画像走査装置12等を備える。自動原稿給送装置11は、ADF(Auto Document Feeder)と称されている。自動原稿給送装置11は、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送し、原稿画像走査装置12に送り出す。自動原稿給送装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿の画像を連続して読み取ることができる。なお、自動原稿給送装置11は、多数枚の原稿の画像を連続して読み取るとき、用紙反転機構により、それぞれの原稿の両面を読み取ることができる。原稿画像走査装置12は、自動原稿給送装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査する。原稿画像走査装置12は、光学的な走査による原稿からの反射光をCCDセンサーの受光面上に結像させることにより、原稿に形成されている原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づき、原稿画像の入力画像データを生成する。入力画像データは、画像処理部30に供給され、画像処理部30が予め設定された画像処理を実行する。
【0018】
操作表示部20は、例えば、タッチパネル付きの液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で実現され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部200から入力される表示制御信号に従い、各種操作画面、画像の状態又は各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー及びスタートキー等の各種操作キーを備えている。操作部22は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けることにより、操作信号を生成する。操作信号は、制御部200に出力される。
【0019】
画像処理部30は、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を入力画像データに行う回路を備えている。画像処理部30は、例えば、制御部200の制御下において、階調補正データが設定されている階調補正テーブルに基づき、入力画像データに階調補正を行う。画像処理部30は、階調補正の他に、色補正及びシェーディング補正等の各種補正処理及び圧縮処理等を入力画像データに行う。このような各種デジタル画像処理が行われた入力画像データに基づき、画像形成部40は各種処理を行う。画像形成部40は、入力画像データに基づき、Y成分、M成分、C成分、及びK成分の各有色トナーによる画像を形成する。画像形成部40は、感光ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、及び中間転写装置を備える。帯電装置のコロナ放電により、感光ドラムの表面は一様に帯電される。露光装置が各色成分の画像に対応するレーザー光を感光ドラムに照射することにより、感光ドラムの表面に各色成分の静電潜像が形成される。現像装置が感光ドラムの表面に各色成分のトナーを供給させることにより、静電潜像は可視化されてトナー像が形成される。トナー像は、中間転写装置により用紙Pに転写される。
【0020】
定着部60は、用紙Pに転写されたトナー像を加熱及び加圧することにより、用紙Pにトナー像を定着させる。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52及び搬送経路部53等を備えている。給紙部51は、用紙Pの坪量及びサイズ等に基づいて予め設定された種類毎に用紙Pが収容される。搬送経路部53は、給紙部51に収容されている用紙P又は表裏の何れか一方に画像が形成された用紙Pを搬送する。なお、排紙部52は、画像が形成された用紙Pを機外に排出する。
【0021】
後処理装置3は、後処理部71及び制御部300に加え、搬送路切替部72、ジャム検知センサー73A、排紙センサー73B1、排紙センサー73B2、排紙センサー73B3、排紙センサー73B4、曲がり検知センサー73C1、曲がり検知センサー73C2、位置決めセンサー73D、カードトレイ74、パージトレイ75、屑箱76、整合部77A、ステアリングローラー77B、レジストローラー77C、搬送路D1、排紙搬送路E1、排紙搬送路E2、排紙搬送路E3及び排紙搬送路E4を備えている。後処理部71の上流側には曲がり検知センサー73C1、曲がり検知センサー73C2、位置決めセンサー73D、整合部77A、ステアリングローラー77B、レジストローラー77C及び搬送路D1が設けられている。後処理部71の下流側には搬送路切替部72、ジャム検知センサー73A、排紙センサー73B1、排紙センサー73B2、排紙センサー73B3、排紙センサー73B4、排紙搬送路E1、排紙搬送路E2、排紙搬送路E3及び排紙搬送路E4が設けられている。後処理部71の上方にはパージトレイ75が設けられている。後処理部71の下方には屑箱76が設けられている。なお、排紙センサー73B1、排紙センサー73B2、排紙センサー73B3及び排紙センサー73B4を総称する場合、排紙センサー73Bと称する。
【0022】
搬送路D1には長尺紙搬送路D2が設けられている。長尺紙搬送路D2は、長尺紙を搬送する際にバッファとして機能する。長尺紙搬送路D2には整合部77Aが設けられている。整合部77Aは、用紙Pの搬送方向と直交する方向に互いに対向する一対のCD整合部材(不図示)と、用紙Pの搬送方向と直交する方向にCD整合部材を往復運動させるCD整合モーター及び駆動機構(何れも不図示)とを備えている。整合部77Aは、用紙Pの両側の縁にCD整合部材を突き当てて往復運動させることにより、用紙Pの両側の縁の位置を揃えるものである。なお、整合部77Aは、搬送路D1にも設けられている。
【0023】
曲がり検知センサー73C1は、用紙Pの幅方向に配置されている一対の透過型センサーから構成され、それぞれの透過型センサーにより用紙Pの先端2箇所の通過時間を検知する。曲がり検知センサー73C2についても曲がり検知センサー73C1と同様である。なお、曲がり検知センサー73C1及び曲がり検知センサー73C2を総称する場合、曲がり検知センサー73Cと称する。ステアリングローラー77Bは、後処理部71の上流側に設けられ、用紙Pの搬送方向と直交方向に沿って配置された一対のものである。具体的には、ステアリングローラー77Bは、用紙Pの幅方向に互いに対向する位置にそれぞれ設けられ、曲がり検知センサー73C1の検知結果に基づき、曲がり検知センサー73C1により検知された用紙Pの先端2箇所の通過時間の差異をなくすように、それぞれの回転量が同位相で駆動制御されて搬送速度差を生じさせることで、用紙Pの搬送方向に対する用紙Pの曲がりを調整する。なお、ステアリングローラー77Bは、曲がり検知センサー73C2の検知結果に基づき、用紙Pの搬送方向に対する用紙Pの曲がりをさらに調整する。
【0024】
レジストローラー77Cは、回転駆動が停止している状態で用紙Pの先端が突き当たることにより用紙Pの先端を揃えた後、用紙Pに上下方向の屈曲(ループ)を形成することで、用紙Pの搬送方向に対する用紙Pの曲がりを補正する。位置決めセンサー73Dは、後処理部71の上流側に設けられ、後処理部71に搬送される用紙Pを検知する。後処理部71は、位置決めセンサー73Dの検知結果に基づき、用紙Pを断裁するときの用紙Pの位置を決める。具体的には、画像形成装置2の排紙部52から搬送路D1に搬送される用紙Pには、成果物又は仕切り紙の画像が印刷されている。後処理部71は、成果物及び仕切り紙の画像を形成する画像形成装置2の後段側に配置され、用紙Pを複数に断裁し、成果物及び仕切り紙を形成する。つまり、制御部300は、後処理部71により、用紙Pの一部に形成される成果物と、用紙Pの他の一部に形成される仕切り紙とに、断裁させる。後処理部71は、後処理モジュール71A、後処理モジュール71B、後処理モジュール71C及び後処理モジュール71Dの少なくとも1つを含んでいる。後処理モジュール71A~71Dのそれぞれは、後処理装置3から着脱可能であり、配置順も適宜入替可能に構成されている。例えば、成果物に応じて、後処理モジュール71A~71Dの少なくとも1つを後処理装置3から取り外すことも可能である。
【0025】
後処理モジュール71Aは、用紙Pを搬送方向すなわち副走査方向に断裁するスリッターを備えている。後処理モジュール71Aにより、用紙Pの第1の余白として例えば天地の余白が断裁される。後処理モジュール71Aのスリッターは、天地の余白を断裁する場合には、天地スリッターとして機能する。後処理モジュール71Bは、例えば、後処理モジュール71Aにより断裁された用紙Pに筋入れを行う筋入れ部を備えていてもよい。なお、後処理モジュール71Bは、後処理モジュール71Aにより断裁された用紙Pにミシン目を形成するミシン目部を備えていてもよい。ただし、後処理モジュール71Bは、筋入れ又はミシン目のような加工を用紙Pにしない場合、搬送路D1に沿ってガイド板だけ設けてあればよい。後処理モジュール71Cは、用紙Pを搬送方向に断裁するスリッターを備えている。後処理モジュール71Cのスリッターが配置される位置は、後処理モジュール71Aのスリッターが配置される位置とは異なる。後処理モジュール71Cにより、用紙Pの第2の余白として例えば成果物間又は仕切り紙間の余白が断裁される。後処理モジュール71Cのスリッターは、成果物間又は仕切り紙間の余白を断裁する場合には、ドブ断ちスリッターとして機能する。後処理モジュール71Dは、後処理モジュール71Cにより断裁された用紙Pを搬送方向と直交する方向すなわち主走査方向に断裁するギロチンカッターを備えている。後処理モジュール71Dにより主走査方向に断裁された用紙Pは、成果物、仕切り紙又は切り屑として後続に搬送される。なお、用紙Pを搬送方向と平行に断裁することをFD(Feed Direction)断裁と呼び、用紙Pを搬送方向と直交する方向に断裁することをCD(Cross Direction)断裁と呼ぶ。FD断裁は、後処理モジュール71A,71Cにより行われ、CD断裁は、後処理モジュール71Dにより行われる。
【0026】
搬送路切替部72は、後処理部71を通過した用紙Pの搬送先により排紙搬送路E1~E4の何れかに切り替える。排紙搬送路E1は、カードトレイ74まで成果物又は仕切り紙を搬送する。排紙搬送路E2は、パージトレイ75まで成果物又は仕切り紙を搬送する。排紙搬送路E3は、屑箱76まで切り屑を搬送する。排紙搬送路E4は、後処理装置3の後段側に接続される別の処理装置まで成果物又は仕切り紙を搬送する。ジャム検知センサー73Aは、後処理モジュール71Dと搬送路切替部72との間に設けられ、後処理モジュール71Dから出る成果物又は仕切り紙を検知する。予め設定した時間を経過しても、ジャム検知センサー73Aが成果物又は仕切り紙を検知しない場合、制御部300は搬送路D1内でジャムが発生したと判定する。
【0027】
カードトレイ74は、搬送路切替部72により切り替えられた排紙搬送路E1の排紙先であり、成果物及び仕切り紙を収容可能なサイズに形成されていればよい。カードトレイ74は、排紙搬送路E1により搬送された成果物及び仕切り紙が積載可能である。制御部300は、成果物及び仕切り紙を排紙搬送路E1によりカードトレイ74まで搬送させる制御を行う。排紙搬送路E1には、排紙センサー73B1が設けられている。よって、制御部300は、排紙センサー73B1の検知結果に基づき、排紙搬送路E1を搬送される成果物又は仕切り紙がカードトレイ74まで確実に排紙されたか否かを検知可能である。
【0028】
パージトレイ75は、搬送路切替部72により切り替えられた排紙搬送路E2の排紙先であり、成果物及び仕切り紙の他に、成果物及び仕切り紙よりも大きいサイズに断裁されたものも積載可能である。制御部300は、成果物及び仕切り紙を排紙搬送路E2によりパージトレイ75まで搬送させる制御を行う。排紙搬送路E2には、排紙センサー73B2が設けられている。よって、制御部300は、排紙センサー73B2の検知結果に基づき、排紙搬送路E2を搬送される成果物又は仕切り紙がパージトレイ75まで確実に排紙されたか否かを検知可能である。
【0029】
屑箱76は、搬送路切替部72により切り替えられた排紙搬送路E3の排紙先である。屑箱76には、後処理部71により断裁された第1の余白、第2の余白又は成果物間の余白等の切り屑が収容される。制御部300は、後処理部71により断裁された各種切り屑を排紙搬送路E3により屑箱76まで搬送させる制御を行う。排紙搬送路E3には、排紙センサー73B3が設けられている。よって、制御部300は、排紙センサー73B3の検知結果に基づき、排紙搬送路E3を搬送される各種切り屑が屑箱76まで確実に排紙されたか否かを検知可能である。なお、後処理部71の真下に屑箱76が設けられている場合、断裁された切り屑が屑箱76に直接落とされるため、排紙搬送路E3が設けられず、排紙センサー73B3も不要である。
【0030】
排紙搬送路E4は、後処理装置3の後段側に処理装置が接続される場合、搬送路切替部72により切り替えられた排紙搬送路E4の排紙先である処理装置に成果物又は仕切り紙を搬送する。排紙搬送路E4には、排紙センサー73B4が設けられている。よって、制御部300は、排紙センサー73B4の検知結果に基づき、排紙搬送路E4を搬送される成果物又は仕切り紙が処理装置まで確実に排紙されたか否かを検知可能である。
【0031】
図2は、本開示の実施形態における画像形成システムの制御系の主要部を示す図である。
図2に示すように、画像形成装置2の制御部200は、CPU201、ROM202、RAM203、ストレージ204及び通信インターフェース205を備えている。なお、画像形成装置2内の自動原稿給送装置11、原稿画像走査装置12、操作表示部20、画像形成部40及び制御部200は、バスを介して接続されている。CPU201は、画像形成装置2内の自動原稿給送装置11、操作表示部20及び画像形成部40等の動作を制御するプロセッサーとして用いられる。例えば、CPU201は、操作表示部20を介して行われるユーザーの印刷指示に基づき、画像形成部40の画像形成処理を制御する。ROM202は、不揮発性メモリとして用いられ、CPU201が動作するために必要なプログラム又はデータ等を記憶している。RAM203は、揮発性メモリとして用いられ、CPU201が行う各処理に必要なデータを一時的に記憶する。ストレージ204は、例えばHDD(Hard Disk Drive)で構成され、CPU201が画像形成装置2を制御するためのプログラム、OS(Operating System)及びデータを記憶している。ストレージ204に記憶されているプログラム及びデータの一部は、ROM202にも記憶されている。ストレージ204は、CPU201により実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。なお、ストレージ204は、HDDに限定されず、例えば、SSD(Solid State Drive)又はブルーレイディスク(登録商標)等の記録媒体であってもよい。通信インターフェース205は、NIC(Network Interface Card)又はモデム等で構成され、後処理装置3及び不図示の外部端末等との接続を確立し、各種データの送受信を実行する。
【0032】
また、
図2に示すように、後処理装置3の制御部300は、CPU301、ROM302、RAM303、ストレージ304及び通信インターフェース305を備えている。なお、後処理装置3内の後処理部71、搬送路切替部72及び制御部300は、バスを介して接続されている。CPU301は、後処理装置3内の後処理部71及び搬送路切替部72等の動作を制御するプロセッサーとして用いられる。例えば、CPU301は、後処理部71による断裁処理及び断裁した用紙Pの排紙搬送路E1~E4の切替処理等を実行する機能を備えている。ROM302は、不揮発性メモリとして用いられ、CPU301が動作するために必要なプログラム又はデータ等を記憶している。RAM303は、揮発性メモリとして用いられ、CPU301が行う各処理に必要なデータを一時的に記憶する。ストレージ304は、例えばHDDで構成され、CPU301が後処理装置3を制御するためのプログラム、OS及びデータを記憶する。ストレージ304に記憶されるプログラム及びデータの一部は、ROM302にも記憶されている。ストレージ304は、CPU301により実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体として用いられる。なお、ストレージ304は、HDDに限定されず、例えば、SSD又はブルーレイディスク等の記録媒体であってもよい。通信インターフェース305は、NIC又はモデム等で構成され、画像形成装置2及び不図示の外部端末等との接続を確立し、各種データの送受信を実行する。なお、後処理装置3が画像形成装置2にインラインで設けられていれば、後処理装置3で実行される各種機能は、画像形成装置2のCPU201、ROM202、RAM203及びストレージ204を用いて実行されてもよい。よって、後処理装置3からCPU301、ROM302、RAM303及びストレージ304を除いた構成であってもよい。
【0033】
なお、
図1では図示を省略したが、後処理装置3は、側面規制部77Dを備えていてもよい。側面規制部77Dは、後処理部71の上流側であって、搬送路D1及び長尺紙搬送路D2に設けられるものである。側面規制部77Dは、側面規制板と、斜行ベルトと、吸引ダクトとを備えている(何れも不図示)。側面規制部77Dは、吸引ダクトにより斜行ベルトに用紙Pを吸着させ、斜行ベルトにより用紙Pの側端側を側面規制板に当接させながら用紙Pを斜め方向に送り出すことにより用紙Pの側端側の位置を一定に揃えるものである。また、整合部77A、ステアリングローラー77B、レジストローラー77C及び側面規制部77Dを総称する場合、補正部77と称する。
【0034】
図3は、本開示の実施形態における作成物と、生産性及び曲がり補正精度との関係性の一例を示す図である。
図3に示すように、作成物が、名刺、カード、ポスター、バナー及びメニューの少なくとも1つである場合、曲がり補正に要求される精度は高いが、生産性の要求は低い。生産性は低いが、曲がり補正精度が高い曲がり補正の方式は、CD整合方式である。一方、作成物が、ブック、カタログ、パンフレット、マニュアル、フライヤー、チラシ及び会議資料の少なくとも1つである場合、曲がり補正に要求される精度は低いが、生産性の要求は高い。曲がり補正精度は低いが、生産性が高い曲がり補正の方式は、ローラレジスト方式及びステアリング方式の少なくとも1つである。なお、CD整合方式は、上記で説明したように、整合部77Aにおいて、用紙Pの両側の縁の位置を揃える方式である。また、ローラレジスト方式は、上記で説明したように、レジストローラー77Cの回転駆動が停止している状態で用紙Pの先端が突き当たることにより用紙Pに上下方向の屈曲(ループ)を形成することで、用紙Pの搬送方向に対する用紙Pの曲がりを補正する方式である。また、ステアリング方式は、上記で説明したように、用紙Pの幅方向に互いに対向する位置にそれぞれ設けられているステアリングローラー77Bにおいて、曲がり検知センサー73Cにより検知された用紙Pの先端2箇所の通過時間の差異をなくすように、用紙Pの搬送方向に対する用紙Pの曲がりを調整する方式である。
【0035】
図4は、本開示の実施形態における曲がり補正の各方式の特徴を説明する図である。ローラーレジスト方式は、用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合、曲がり補正精度が良く、用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、曲がり補正精度が悪い。ローラーレジスト方式は、回転を停止しているレジストローラー77Cに用紙Pを物理的に突き当てるため、薄紙に有利であるが、坪量が135g/m
2以上の用紙Pであるとレジストローラー77Cで用紙Pがループしないため、曲がり補正の機能が低下する。ステアリング方式は、用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合、用紙Pのサイズが大又は小であれば曲がり補正精度が良いが、用紙Pが長尺紙であれば曲がり補正精度が悪い。ステアリング方式は、用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、用紙Pのサイズが大又は小であれば曲がり補正精度が優れているが、用紙Pが長尺紙であれば曲がり補正精度が悪い。ステアリング方式は、コシがある用紙Pに有利であり、曲がり量の調整が可能である。ステアリング方式は、曲がり検知センサー73Cの曲がり検知性能に依存するものであり、用紙Pが長尺紙である場合の対応は困難である。なお、ステアリング方式は、曲がり補正の補正時間が短く、且つ曲がり補正精度が中程度である。CD整合方式は、用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合、曲がり補正精度が良く、用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、用紙Pのサイズが小であれば曲がり補正精度が良く、用紙Pのサイズが大又は用紙Pが長尺紙であれば曲がり補正精度が優れている。CD整合方式は、コシがある用紙Pに有利であり、長辺で整合する用紙Pのサイズは曲がり補正精度に有利である。CD整合方式は、用紙Pの搬送を止めるので生産性は低い。なお、CD整合方式は、曲がり補正の補正時間が長く、且つ曲がり補正精度が高い。
【0036】
つまり、後処理装置3は、複数種類の曲がり補正の方式を実行可能なものであり、作成物の枚数、紙幅及び紙種のような補正対象の性質に応じて使い分けるものであるが、曲がり補正の方式のそれぞれは、曲がり補正に要する時間及び曲がり補正精度が異なるものである。よって、従来より、補正対象の性質に応じた使い分けは実行されているが、同じ補正対象の性質であっても、他の要因を考慮した最適な使い分けができていない。選択された曲がり補正の方式によっては、曲がり補正に要する時間がボトルネックとなり、全体の生産性を低下させる虞がある。
【0037】
そこで、複数種類の曲がり補正の方式を実行可能な後処理装置3において、それぞれの曲がり補正の方式による曲がり補正で得られる曲がり補正精度と、それぞれの曲がり補正の方式による曲がり補正に要する補正時間と、曲がり補正後に実行される後処理の実行に要する後処理時間との関係に応じて、最適な曲がり補正の方式を選択することで、許容範囲内に後処理位置精度が定まるような仕様要求を満たしつつ、全体の生産性を低下させないようにする。なお、後処理でまず要求されるのが、後処理部71に搬送される用紙Pが曲がっていないことである。つまり、用紙Pを後処理部71に搬送する前に、用紙Pの曲がり補正を実行するために、後処理部71の前工程である補正部77により曲がり補正精度を確保させる。よって、曲がり補正精度は、後処理位置精度の一部に含まれる。また、後処理は断裁等を含むので、用紙Pの位置を正確に求める必要がある。そこで、位置決めセンサー73Dの検知結果に基づき、後処理部71は後処理を実行する。
【0038】
換言すれば、前段側から搬送される用紙Pに後処理を実行する後処理装置3は、複数の曲がり補正の方式の何れか1つに従い、用紙Pに曲がり補正を実行する補正部77と、補正部77により曲がり補正された用紙Pに後処理を実行する後処理部71と、後処理部71により後処理が実行されて作成される作成物に応じた曲がり補正精度と、作成物の生産性と、に基づき、複数の曲がり補正の方式から何れか1つを選択する制御部300と、を備えている。制御部300は、複数の曲がり補正の方式のうち、後処理部71による後処理の実行に要する後処理時間と、補正部77による用紙Pの曲がり補正の実行に要する補正時間との差異を低減させるものを選択する。なお、作成物の生産性は、後処理時間と、補正時間と、に応じて変動するものである。
【0039】
具体的には、制御部300は、後処理時間が閾値時間以上である場合、複数の曲がり補正の方式のうち、CD整合方式を選択する。制御部300は、後処理時間が閾値時間未満であり、且つ用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合、複数の曲がり補正の方式のうち、ローラーレジスト方式を選択する。制御部300は、後処理時間が閾値時間未満であり、且つ用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、複数の曲がり補正の方式のうち、ステアリング方式を選択する。制御部300は、後処理時間が閾値時間以上であって、用紙Pが長尺紙である場合又は用紙Pの短辺側が先頭で用紙Pが後処理部71に搬送される場合、CD整合方式を選択する。制御部300は、作成物が冊子である場合、ステアリング方式を選択する。制御部300は、作成物が名刺である場合、CD整合方式を選択する。
【0040】
制御部300は、用紙Pに曲がり補正を実行し、且つ用紙Pに印字された画像の曲がり量を調整する場合、ステアリング方式を選択するものである。ステアリング方式は、用紙Pに印字された画像の曲がり量に応じて、一対のステアリングローラー77Bのそれぞれの回転速度が調整される。なお、制御部300は、曲がり補正精度及び作成物の生産性のうち、優先度合いの高い方に応じて、複数の曲がり補正の方式から何れか1つを選択する。
【0041】
図5は、本開示の実施形態における後処理装置3の制御例を説明するフローチャートである。ステップS11において、制御部300は、印刷ジョブが開始されたか否かを判定する。制御部300は、印刷ジョブが開始されたと判定する場合(ステップS11;Y)、ステップS12の処理に移行する。制御部300は、印刷ジョブが開始されていないと判定する場合(ステップS11;N)、ステップS11の処理を継続する。ステップS12において、制御部300は、用紙Pが搬送されてきたか否かを判定する。制御部300は、用紙Pが搬送されてきたと判定する場合(ステップS12;Y)、ステップS13の処理に移行する。制御部300は、用紙Pが搬送されてきていないと判定する場合(ステップS12;N)、ステップS12の処理を継続する。ステップS13において、制御部300は、後処理が実行されるか否かを判定する。制御部300は、後処理が実行されると判定する場合(ステップS13;Y)、ステップS14の処理に移行する。制御部300は、後処理が実行されないと判定する場合(ステップS13;N)、ステップS26の処理に移行し、ステップS26において、スルー搬送を実行する、すなわち、後処理を実行せずに用紙Pを搬送し、ステップS20の処理に移行する。
【0042】
ステップS14において、制御部300は、用紙Pが長尺紙であるか否かを判定する。制御部300は、用紙Pが長尺紙であると判定する場合(ステップS14;Y)、ステップS23の処理に移行する。ステップS23において、制御部300は、用紙Pの剛度が低いか否かを判定する。制御部300は、用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満と判定する場合(ステップS23;Y)、ステップS24の処理に移行する。制御部300は、用紙Pの剛度が低くない、すなわち、用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上と判定する場合(ステップS23;N)、ステップS22の処理に移行する。ステップS24において、制御部300は、用紙Pの生産性を優先するか否かを判定する。制御部300は、用紙Pの生産性を優先すると判定する場合(ステップS24;Y)、ステップS25の処理に移行し、ステップS25において、ローラーレジスト方式の曲がり補正を実行し、ステップS20の処理に移行する。制御部300は、用紙Pの生産性を優先しないと判定する場合(ステップS24;N)、ステップS22の処理に移行する。一方、ステップS14において、制御部300は、用紙Pが長尺紙でないと判定する場合(ステップS14;N)、ステップS15の処理に移行する。
【0043】
ステップS15において、制御部300は、曲がり量を調整させるか否かを判定する。制御部300は、曲がり量を調整させると判定する場合(ステップS15;Y)、ステップS19の処理に移行し、ステップS19において、ステアリング方式の曲がり補正を実行し、ステップS20の処理に移行する。制御部300は、曲がり量を調整させないと判定する場合(ステップS15;N)、ステップS16の処理に移行する。ステップS16において、制御部300は、印刷モードが名刺モードであるか否かを判定する。制御部300は、印刷モードが名刺モードであると判定する場合(ステップS16;Y)、ステップS21の処理に移行し、ステップS21において、用紙Pの短辺側が先頭で搬送されるか否かを判定する。制御部300は、用紙Pの短辺側が先頭で搬送されると判定する場合(ステップS21;Y),ステップS22の処理に移行し、ステップS22において、CD整合方式の曲がり補正を実行し、ステップS20の処理に移行する。制御部300は、用紙Pの短辺側が先頭で搬送されないと判定する場合(ステップS21;N)、ステップS19の処理に移行する。一方、ステップS16において、制御部300は、印刷モードが名刺モードでないと判定する場合(ステップS16;N)、ステップS17の処理に移行する。
【0044】
ステップS17において、制御部300は、後処理時間が閾値時間T[ms]以上であるか否かを判定する。閾値時間T[ms]は、具体的には、後処理の前工程であるCD整合方式に必要な時間以上が設定される。このような設定により、後処理時間が閾値時間T[ms]以上であれば、前の下流工程に要する後処理時間が長かったとしても、全体としての生産性を落とすことなく、次の上流工程に要する時間に多くの時間を割くことができるので、次の上流工程に相当するものとしてCD整合方式を選択することが可能となる。また、閾値時間T[ms]は、後処理が高速処理及び低速処理の何れか一方であるかの判定に用いられる指標でもある。例えば、冊子に含まれる表紙又は本身を後処理するのであれば、高速処理であり、且つ曲がり補正精度は中程度のものが要求される。一方、名刺の断裁のような後処理であれば、低速処理であり、且つ曲がり補正精度は高いものが要求される。制御部300は、後処理時間が閾値時間T[ms]以上であると判定する場合(ステップS17;Y)、ステップS21の処理に移行する。制御部300は、後処理時間が閾値時間T[ms]以上でないと判定する場合(ステップS17;N)、すなわち、後処理時間が閾値時間T[ms]未満であると判定する場合(ステップS17;N)、ステップS18の処理に移行する。
【0045】
ステップS18において、制御部300は、用紙Pの剛度が低いか否かを判定する。制御部300は、用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満と判定する場合(ステップS18;Y)、ステップS25の処理に移行する。制御部300は、用紙Pの剛度が低くない、すなわち、用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上と判定する場合(ステップS18;N)、ステップS19の処理に移行する。ステップS20において、制御部300は、全ての印刷ジョブが終了したか否かを判定する。制御部300は、全ての印刷ジョブが終了したと判定する場合(ステップS20;Y)、処理を終了する。制御部300は、全ての印刷ジョブが終了していないと判定する場合(ステップS20;N)、ステップS12の処理に戻る。
【0046】
以上の説明から、本実施形態によれば、複数の曲がり補正の方式のうち、後処理時間と、補正時間との差異を低減させるものが選択される。よって、用紙Pの曲がり補正をする工程と、用紙Pの後処理をする工程との間の待ち時間を減らすことができる。したがって、用紙Pの曲がり補正精度を向上させつつ、全体の生産性の低下を抑制させることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、後処理時間が閾値時間以上である場合、複数の曲がり補正の方式のうち、CD整合方式が選択される。CD整合方式は、補正時間が長いが、曲がり補正精度は優れている。1枚の用紙Pにつき、用紙Pの曲がり補正をする補正工程と、用紙Pの後処理をする後処理工程とが実行される状況下において、後処理時間が短い場合、補正時間を短いものにしなければ、前に搬送された用紙Pに対する下流工程である後処理工程と、次に搬送される用紙Pに対する上流工程である補正工程との間に待ち時間が生じ、結果として全体の生産性が低下する。一方、後処理時間が長い場合、補正時間を長いものにしても、前に搬送された用紙Pに対する下流工程である後処理工程と、次に搬送される用紙Pに対する上流工程である補正工程との間に待ち時間が生じない。よって、曲がり補正に時間をかけたとしても、全体の生産性が低下しない。なお、用紙Pの短辺側が先頭で用紙Pが後処理部71に搬送される場合、用紙Pの曲がりが目立つため、曲がり補正精度の優れたCD整合方式の方が好ましい。したがって、後処理時間が長く、且つ用紙Pの短辺側が先頭で用紙Pが後処理部71に搬送される場合、CD整合方式が選択されることで、全体の生産性を維持しつつ、高品位の作成物を作成することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、後処理時間が閾値時間未満であり、且つ用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合、ローラーレジスト方式が選択され、後処理時間が閾値時間未満であり、且つ用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、ステアリング方式が選択される。薄紙のように用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合、レジストローラー77Cに用紙Pを突き当てたときに用紙Pを屈曲させて用紙Pをループ状態にさせやすいため、ローラーレジスト方式が適している。一方、厚紙のように用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、レジストローラー77Cに用紙Pを突き当てたときに用紙Pが屈曲しにくいことから用紙Pをループ状態にさせるのは難しいため、ローラーレジスト方式は適さない。しかし、厚紙のように用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合、用紙Pにコシがあることから、一対のステアリングローラー77Bのそれぞれの搬送速度差で用紙Pを回転させやすいため、ステアリング方式が適している。
【0049】
また、本実施形態によれば、後処理時間が閾値時間以上であって、用紙Pが長尺紙である場合、CD整合方式が選択される。CD整合方式は、用紙Pの搬送を止めるので生産性は低いが、後処理時間が閾値時間以上であって、用紙Pの長辺で整合するサイズである場合、すなわち、用紙Pの短辺側が先頭で用紙Pが後処理部71に搬送される場合、曲がり補正精度が優れている。したがって、長尺紙又は用紙Pの短辺側が先頭で用紙Pが後処理部71に搬送される場合、CD整合方式が選択される。なお、CD整合方式が選択されるのは後処理時間が閾値時間以上の場合である。よって、全体の生産性は維持しつつ、一定の曲がり補正精度を確保することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、作成物が冊子である場合、ステアリング方式が選択される。具体的には、冊子に含まれる表紙及び本身を作成するような中綴じモードである場合であっても、用紙Pの曲がり補正精度が高い方が、高品位の作成物を作成することができる。しかし、用紙Pの曲がり補正精度が高くなるにつれ、全体の生産性は低下する。よって、高精度な用紙Pの曲がり補正精度が要求されないような作成物にまで、用紙Pの曲がり補正精度を高精度にすれば、全体の生産性の低下により、ユーザーに与えるデメリットが大きくなる虞がある。例えば、そもそも曲がりが判別されがたいような画像であれば、全体の生産性を落としてまで用紙Pの曲がり補正精度を上げる必要がない。よって、通常の冊子用の表紙及び本身に後処理を実行する場合、曲がり補正精度が中程度であるステアリング方式が選択されるのが好ましい。
【0051】
なお、冊子に含まれる用紙Pに筋付けを行う、又はミシン目加工を実行する場合のように後処理時間に多くの時間を要する場合、補正時間に割く時間を増やしたとしても、全体の生産性は低下しない。よって、補正時間に多くの時間を割くことができるため、CD整合方式であっても、全体の生産性は低下しない。つまり、前に搬送された用紙Pに対する下流工程である後処理工程に多くの時間を要するものであれば、次に搬送される用紙Pに対する上流工程である補正工程に多くの時間を割くことができる。したがって、全体の生産性を維持しつつ、高品位の作成物を作成することができる。
【0052】
また、作成物が名刺である場合、CD整合方式が選択される。具体的には、用紙Pの曲がり補正精度が低ければ、用紙Pの先頭で作成される名刺の画像位置と、用紙Pの後端で作成される名刺の画像位置とにずれが生じる虞がある。よって、名刺を作成する名刺モードである場合、曲がり補正精度の高い曲がり補正の方式が要求されるため、CD整合方式が選択される。つまり、名刺のように印刷された画像が、曲がり量を視認されやすいものである場合、曲がり補正精度を高精度にすることが要求されるため、CD整合方式が選択される。なお、CD整合方式は、多くの補正時間を要するため、全体の生産性の低下が懸念されるが、名刺は、用紙Pの断裁回数が多いため、後処理時間を長く要するものである。よって、補正時間に多くの時間を割くことができるため、CD整合方式であっても、全体の生産性は低下しない。したがって、全体の生産性を維持しつつ、高品位の作成物を作成することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、用紙Pに曲がり補正が実行され、且つ用紙Pに印字された画像の曲がり量が調整される場合、ステアリング方式が選択される。ステアリング方式は、用紙Pに印字された画像の曲がり量に応じて、一対のステアリングローラー77Bのそれぞれの回転速度が調整されるものである。よって、用紙Pに印字された画像の曲がり量を相殺することができる。したがって、用紙Pに印字された画像の向きを揃えた状態で下流側の後処理部71に用紙Pを搬送することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、曲がり補正精度及び作成物の生産性のうち、優先度合いの高い方に応じて、複数の曲がり補正の方式から何れか1つが選択される。例えば、少し生産性を落としても、曲がり補正精度を優先した設定がされている場合、曲がり補正精度が優先される。よって、例えば、70%のような一定の生産性で、且つ最適な曲がり補正精度が選択される。また、例えば、曲がり補正の方式を変更することで生産性が上がるか否かを演算し、且つ後処理部71において一定の曲がり補正精度が確保できる場合、曲がり補正の方式を変更することで、生産性を向上させることができる。このような演算は、制御部300が実行すればよい。
【0055】
以上、本開示に係る画像形成システムを実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態においては、画像形成システムが、画像形成装置2と、後処理装置3とを備えている一例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、画像形成システムは、画像形成装置2及び後処理装置3に加え、給紙装置、画像読取装置又は中継装置等をさらに備えてもよい。
【0056】
また、例えば、本実施形態に係る
図4の一例では、用紙Pの剛度に応じた曲がり補正精度について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、用紙Pの坪量又は用紙Pの紙厚であっても曲がり補正精度は同様である。つまり、用紙Pの剛度が低いすなわち用紙Pの剛度が所定値未満の場合は、用紙Pの坪量が小さい場合又は用紙Pの紙厚が薄い場合すなわち薄紙に相当し、用紙Pの剛度が高いすなわち用紙Pの剛度が所定値以上の場合は、用紙Pの坪量が大きい場合又は用紙Pの紙厚が厚い場合すなわち厚紙に相当する。また、用紙Pの坪量又は用紙Pの紙厚は、実際の制御パラメーターとしても使用可能である。
【0057】
また、例えば、本実施形態において、作成物の生産性は、後処理時間と、補正時間とに応じて変動するものである点について説明したが、特にこれに限定されるものではない。作成物の生産性は、さらに、用紙Pの搬送時間に応じて変動するものでもある。
【符号の説明】
【0058】
2 画像形成装置、10 画像読取部、11 自動原稿給送装置
12 原稿画像走査装置、20 操作表示部、21 表示部、22 操作部
30 画像処理部、40 画像形成部、50 用紙搬送部
51 給紙部、52 排紙部、53 搬送経路部、60 定着部
200 制御部、201 CPU、202 ROM、203 RAM
204 ストレージ、205 通信インターフェース
3 後処理装置、300 制御部、301 CPU、302 ROM
303 RAM、304 ストレージ、305 通信インターフェース
71 後処理部、71A,71B,71C,71D 後処理モジュール
72 搬送路切替部、73A ジャム検知センサー
73B,73B1,73B2,73B3,73B4 排紙センサー
73C,73C1,73C2 曲がり検知センサー、73D 位置決めセンサー
74 カードトレイ、75 パージトレイ、76 屑箱
77 補正部
77A 整合部、77B ステアリングローラー
77C レジストローラー、77D 側面規制部
D1 搬送路、D2 長尺紙搬送路、E1~E4 排紙搬送路
P 用紙、T 閾値時間