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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】2成分型硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20220809BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20220809BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20220809BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220809BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L71/00
C08L33/08
C08K5/098
C08K5/17
C09K3/10 G
C09K3/10 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018193955
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063316
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】望月 克信
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-022169(JP,A)
【文献】特開2005-281503(JP,A)
【文献】特開2008-050448(JP,A)
【文献】特開2017-088767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分と(B)成分を含む2成分型硬化性樹脂組成物であって、前記(A)成分として、加水分解性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体(A-1)及び加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)を含み、前記(B)成分として、2価の錫化合物(B-1)及びアミン化合物(B-2)を含む、2成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分として、2価の錫化合物(B-1)、アミン化合物(B-2)及び加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(B-3)を含む、請求項1に記載の2成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)の重量平均分子量が1500以上20000以下である請求項1又は2に記載の2成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記加水分解性シリル基を含有するオキシアルキレン重合体(A-1)100質量部に対して、前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)と前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(B-3)の合計量が、20質量部以上200質量部以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の2成分型硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温硬化可能な硬化性樹脂組成物に関するものであり、より詳しくは、2成分型硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室温硬化型の反応性基を有する重合体を含む硬化性組成物としては、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系及びアクリル系等の各種重合体を含む組成物が挙げられ、建築用途、電気・電子分野関連用途、自動車関連用途等における接着剤、シーリング材、塗料等として幅広く用いられている。例えば、変成シリコーン系重合体は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体をベースとする硬化性組成物であるが、作業性が良好で、破断伸びや破断強度などの機械的物性のバランスが良い材料であることから、接着剤やシーリング材のベースポリマーとして広く利用されている。
変成シリコーン系硬化性樹脂組成物は、通常、1成分型又は2成分型として提供される。1成分型の場合、使用前に混合作業等を行う必要がなく簡便である一方、保管時の安定性を保つために、水分管理を十分に行う必要がある。そのため、カートリッジ等の容器に充填する必要があり、一包装あたりに充填できる量にも制限があるため、包装材料コストが高くなる問題があった。また、水分管理が十分に行われた状態で施工するため、施工後、空気中の湿気で硬化が進行する際、深部硬化が遅くなる問題があった。
一方、2成分型の場合には、使用前に混合等の作業が必要になるものの、可使時間と硬化時間のバランスが取りやすく、深部の硬化も速やかに進行しやすいという特徴がある。
【0003】
特許文献1には、2成分型変成シリコーン系シーリング材において、非フタル酸系可塑剤、エポキシ樹脂及び2価の錫触媒を用いることにより、貯蔵安定性、機械物性及び接着性等に優れた硬化性組成物となることが記載されている。
しかしながら、可塑剤としてポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレン誘導体を使用しているため、耐候性の観点で十分とは言えない。
また、特許文献2及び3は、エポキシ樹脂、水等を用いることにより、深部硬化性に優れた硬化性組成物を提供する技術であるが、実質的に可塑剤を含有していないため、組成物の粘度が高く、施工時の作業性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特再公表WO00/056817号
【文献】特開2004-225020号公報
【文献】特再公表WO06/075482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低粘度であるため作業性に優れ、かつ、硬化物が機械物性および耐候性に優れた2成分型硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の分子量範囲にある(メタ)アクリル酸エステル共重合体を可塑剤として使用することにより、施工時の作業性と硬化物の耐候性が両立できることを見出した。
すなわち、本発明は当該知見に基づいて完成したものであり、本明細書によれば以下の手段を提供する。
【0007】
〔1〕(A)成分と(B)成分を含む2成分型硬化性樹脂組成物であって、前記(A)成分として、加水分解性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体(A-1)及び加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)を含み、前記(B)成分として、2価の錫化合物(B-1)及びアミン化合物(B-2)を含む、2成分型硬化性樹脂組成物。
〔2〕前記(B)成分として、2価の錫化合物(B-1)、アミン化合物(B-2)及び加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(B-3)を含む、〔1〕に記載の2成分型硬化性樹脂組成物。
〔3〕前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)の重量平均分子量が1500以上20000以下である〔1〕又は〔2〕に記載の2成分型硬化性樹脂組成物。
〔4〕前記加水分解性シリル基を含有するオキシアルキレン重合体(A-1)100質量部に対して、前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)と前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(B-3)の合計量が、20質量部以上150質量部以下である〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の2成分型硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の2成分型硬化性組成物は低粘度で作業性に優れ、かつ、硬化後は優れた機械物性及び高耐候性を有するので、2成分型のシーリング材や接着剤などに好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0010】
本発明における2成分型硬化性組成物は(A)成分と(B)成分を含み、(A)成分として加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A-1)及び加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)を、(B)成分として2価の錫化合物(B-1)及びアミン化合物(B-2)を必須成分とするものである。以下に、各成分の詳細について説明する。
【0011】
<(A-1)成分:加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体>
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体は下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むものであれば、特に限定されない。
-O-R2- (1)
(式中、R2は、2価の炭化水素基である。)
上記一般式(1)におけるR2としては、以下のものが例示される。
(CH2n (nは1~10の整数)
CH(CH3)CH2
CH(C25)CH2
C(CH32CH2
前記オキシアルキレン系重合体は、上記繰り返し単位を1種又は2種以上を組み合わせて含んでもよく、これらの中でも、作業性に優れる点で、CH(CH3)CH2が好ましい。
【0012】
加水分解性シリル基を含有するオキシアルキレン重合体に含まれる加水分解性シリル基は特に限定されず、例えば、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基、シラノール基等が挙げられるが、反応性を制御し易い点からアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基及びジメチルエトキシシリル基等が挙げられる。
【0013】
オキシアルキレン重合体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば対応するエポキシ化合物、ジオール又はトリオールを原料として、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、フォスファゼンを用いた重合法等が挙げられる。
また、上記オキシアルキレン重合体は、直鎖状重合体又は分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
オキシアルキレン重合体1分子に含まれる加水分解性シリル基の数の平均値は、硬化物の接着性及び引張特性等の性能の観点から、好ましくは1~4個の範囲であり、より好ましくは1.5~3個の範囲である。
上記オキシアルキレン系重合体に含まれる反応性シリル基の位置は、特に限定されるものではなく、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
また、上記オキシアルキレン系重合体は、直鎖状重合体及び分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0015】
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体の数平均分子量(Mn)は、機械物性の観点から、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。Mnは18,000以上であってもよく、22,000以上であってもよく、25,000以上であってもよい。Mnの上限値は硬化性組成物の塗工時の作業性(粘度)の観点から好ましくは60,000以下であり、より好ましくは50,000以下であり、さらに好ましくは40,000以下である。Mnの範囲は、上記の上限値及び下限値を組み合せて設定することができるが、例えば、5,000以上60,000以下であり、15,000以上60,000以下であってもよく、18,000以上50,000以下であってもよく、22,000以上50,000以下であってもよい。
【0016】
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体は市販品を使用してもよい。具体例としては、カネカ社製「MSポリマーS203」、「MSポリマーS303」、「MSポリマーS810」、「サイリルSAT200」、「サイリルSAT350」、「サイリルEST280」及び「サイリルSAT30」(いずれも商品名)、並びに、AGC社製「エクセスターES-S2410」、「エクセスターES-S2420」及び「エクセスターES-S3430」(いずれも商品名)が例示される。
【0017】
<(A-2)成分:加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体>
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を有する重合体であり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する単量体であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構成単量体に対し、好ましくは10~100質量%の範囲であり、より好ましくは30~100質量%の範囲であり、さらに好ましくは50~100質量%の範囲である。
【0018】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸トリアコンチル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸ヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸オクタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラコンチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸イソラウリル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソペンタデシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサデシル、(メタ)アクリル酸イソヘプタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸イソノナデシル、(メタ)アクリル酸イソエイコシル、(メタ)アクリル酸イソヘンイコシル、(メタ)アクリル酸イソベヘニル、(メタ)アクリル酸イソテトラコシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサコシル、(メタ)アクリル酸イソオクタコシル、(メタ)アクリル酸イソトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソテトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソオクタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソテトラコンチル等の直鎖状若しくは分岐状脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、硬化物の機械物性の観点から炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体の全構成単量体に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、上限値は100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく50質量%以下であってもよい。
【0019】
また、上記の中で、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用すると、オキシアルキレン重合体との良好な相溶性が確保され、機械物性及び耐候性が良好となる点で好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは10~20であり、より好ましくは12~20である。炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構成単量体に対し、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。なお、上限は100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく50質量%以下であってもよい。
【0020】
前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシヘキシル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ブトキシメチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシブチル及び(メタ)アクリル酸ブトキシヘキシル等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、硬化物の機械的物性の観点から炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、炭素数2~4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体の全構成単量体に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、上限は100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく50質量%以下であってもよい。
【0021】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、上記の単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよいが、加水分解性シリル基を含有する単量体は除く。
他の単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の官能基含有単量体;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有オレフィン類
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族単量体;
無水マレイン酸;マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸、並びに、これらのモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;
エチレン、プロピレン等のアルケン類;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられるが、これらに限らない。また、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
前記加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)によるポリスチレン換算分子量で、組成物の作業性の観点から、20000以下である必要がある。より好ましくは10000以下であり、さらに好ましくは5000以下である。また、硬化物の耐候性の観点から、1500以上であることが好ましく、より好ましくは2000以上であり、さらに好ましくは2500以上である。
【0023】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘度は、25℃において好ましくは500mPa・s以上であり、より好ましくは800mPa・s以上である。粘度は1,000mPa・s以上であってもよく、3,000mPa・s以上であってもよく、5,000mPa・s以上であってもよい。粘度の上限は、好ましくは100,000mPa・s以下であり、より好ましくは50,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは20,000mPa・s以下であり、一層好ましくは10,000mPa・s以下である。
粘度が500mPa・s以上であれば、垂直面に塗布した際の垂れが抑制されるために好ましく、100,000mPa・s以下にすることにより、硬化性組成物の作業性が良好になる。
粘度の範囲は、上記の上限値及び下限値を組み合せて設定することができるが、例えば、500mPa・s以上100,000mPa・s以下であり、800mPa・s以上50,000mPa・s以下であってもよく、1,000mPa・s以上10,000mPa・s以下であってもよい。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、通常のラジカル重合によって製造することができる。溶液重合、塊状重合及び分散重合のいずれの方法を採用してもよく、また、リビングラジカル重合法を利用してもよい。反応プロセスは、バッチ式、セミバッチ式及び連続重合のいずれの方法でもよい。これらの中でも、100~350℃の高温連続重合方法が好ましい。
【0025】
一般に、重合体中に均一に架橋性官能基が導入された場合、該重合体を含む硬化性組成物の硬化性、及び得られる硬化物の耐候性等の物性が良好となる。この点、反応器に撹拌槽型反応器を用いた場合、組成分布(架橋性官能基の分布)や分子量分布の比較的狭い(メタ)アクリル酸エステル重合体を得ることができるため好ましい。また、連続撹拌槽型反応器を用いるプロセスが組成分布及び分子量分布を狭くする点でより好ましい。
【0026】
高温連続重合法としては、特開昭57-502171号公報、特開昭59-6207号公報及び特開昭60-215007号公報等に開示された公知の方法に従えば良い。
例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。
また、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100質量部に対して0.001~2質量部であることが好ましい。圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。単量体混合物の滞留時間は、1~60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が十分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2~40分である。
【0027】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体を得るために用いる重合開始剤としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されない。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキシド及びt-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド及び4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)などのアゾ系化合物が挙げられる。
重合開始剤はこれらの内の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤として水素引き抜き能が高いものを使用した場合、得られる重合体の二重結合濃度が高くなる傾向がある。例えば、アゾ系化合物よりも有機過酸化物を使用した方が、二重結合濃度の高い重合体が得られる傾向がある。
重合開始剤の使用量は、重合開始剤及び単量体の種類、所望する分子量、重合条件等により適宜調整することができるが、一般的には、使用する単量体100質量部に対して0.001~10質量部である。同じ分子量の重合体を得る場合、重合開始剤の使用量が少ないほど、得られる重合体中の二重結合濃度は高くなる傾向がある。
【0028】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造に有機溶媒を用いる場合、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種または2種以上を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体をよく溶解しない溶剤では、反応器の壁にスケールが成長しやすく洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。また、例えばイソプロパノール等の連鎖移動能の高い有機溶媒を使用した場合、得られる重合体中の二重結合濃度は低くなる傾向がある。
溶媒の使用量は、全ビニル単量体100質量部に対して、80質量部以下とすることが好ましい。80質量部以下とすることにより、短時間で高い転化率が得られる。より好ましくは、1~50質量部である。また、オルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造には、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0030】
<(B-1)2価の錫化合物>
2価の錫化合物は、加水分解性シリル基の架橋のための硬化触媒として作用する。通常、2価及び4価の錫化合物が存在するが、4価の錫化合物の場合、安定であるため、施工及び養生後も触媒活性を保持したまま存在し続ける。その結果、経年で過剰な架橋反応が進行し硬化物が硬くなるため、硬化物の柔軟性が損なわれるという問題が生じる。
一方、2価の錫化合物の場合、経時的に酸化され触媒活性が低下していくため、過剰な架橋反応が起こらず、初期の柔軟性が長期に保持できる特徴がある。
2価の錫化合物の具体例としては、酢酸スズ(II)、プロピオン酸錫(II)、ブタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及びバーサチック酸錫(II)等が挙げられるが、これらの限定されるものではない。これらの中でも、触媒の活性及び樹脂への溶解性の観点から、2-エチルヘキサン酸錫(II)が好ましい。
【0031】
<(B-2)アミン化合物>
アミン化合物は、2価の錫化合物とともに、加水分解性シリル基の架橋反応を促進するために添加される。
アミン化合物の具体例としては、プロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ベンジルアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン及び1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、臭気が少ないこと及び樹脂への溶解性の観点から、ラウリルアミン及びステアリルアミンが好ましい。
【0032】
<(B-3)加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体>
(B-3)の加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体については、前記(A-2)と同じである。なお、本発明において、(B-3)は(A-2)と同一であっても、異なっていてもよい。
【0033】
<各成分の質量比>
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体(A-1)を100質量部とした場合に、加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A-2)及び加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B-3)の合計量が、20質量部以上150質量部以下であることが好ましい。20質量部以上であることにより、施工時の作業性が良好となり、150質量部以下であることにより、硬化物の耐候性が良好となる。好ましくは、25質量部以上100質量部であり、より好ましくは、30質量部以上70質量部以下である。
2価の錫化合物(B-1)の添加量は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体(A-1)を100質量部とした場合に、0.3~10質量部使用することが好ましい。0.3質量部以上であることにより、速やかに硬化し、10質量部以下であることにより、引張物性が良好となる。
アミン化合物(B-2)の添加量は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体(A-1)を100質量部とした場合に、0.1~10質量部であることが好ましい。0.1質量部以上であることにより、速やかに硬化し、10質量部以下であることにより、引張物性が良好となる。
【0034】
<A成分におけるその他の成分>
本発明におけるA成分には、上記以外に、充填剤、(A-2)以外の可塑剤、エポキシ樹脂、老化防止剤、タック防止剤及び硬化促進のための水等を添加することができる。
【0035】
充填材としては、平均粒径0.02~2.0μm程度の軽質炭酸カルシウム、平均粒径1.0~5.0μm程度の重質炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、合成ケイ酸、タルク、ゼオライト、マイカ、シリカ、焼成クレー、カオリン、ベントナイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラスバルーン、シリカバルーン及びポリメタクリル酸メチルバルーンなどが例示される。これら充填材により、硬化物の機械的な性質が改善され、強度や伸度を向上させることができる。
これらの中でも、物性改善の効果が高い、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び酸化チタンが好ましく、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとの混合物がより好ましい。充填剤の添加量は、(A)成分及び(B)成分の総量を100質量部とした場合、20~300質量部が好ましく、より好ましくは、50~200質量部である。上記のように軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合物とする場合には、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウムの質量割合が90/10~50/50の範囲であることが好ましい。
【0036】
可塑剤としては、液状ポリウレタン樹脂、ジカルボン酸とジオールとから得られたポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのエーテル化物あるいはエステル化物;スクロース等の糖類多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合した後、エーテル化又はエステル化して得られた糖類系ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤;ポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン系可塑剤;架橋性官能基を有さないポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
老化防止剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びシュウ酸アニリド系化合物などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、ヒンダードフェノール系などの酸化防止剤、熱安定剤、又はこれらの混合物である老化防止剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、BASF社製の商品名「チヌビン571」、「チヌビン1130」および「チヌビン327」が例示される。光安定剤としては同社製の商品名「チヌビン292」、「チヌビン144」及び「チヌビン123」、三共社製の商品名「サノール770」が例示される。
熱安定剤としては、BASF社製の商品名「イルガノックス1135」、「イルガノックス1520」及び「イルガノックス1330」が例示される。
紫外線吸収剤/光安定剤/熱安定剤の混合物であるBASF社製の商品名「チヌビンB75」を使用してもよい。
【0038】
タック防止剤としては、アクリル系オリゴマーである東亞合成社製の商品名「アロニックスM8030」、「M8100」及び「M309」、又は光重合開始剤との混合物、桐油、亜麻仁油などの飽和脂肪酸油、出光石油社製の商品名「R15HT」、日本曹達社製の商品名「PBB3000」、日本合成化学社製の商品名「ゴーセラック500B」などが例示される。
【0039】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールF型樹脂のグリシジルエーテル、グリシジル基含有アクリル樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂及び水添ビスフェノールA型樹脂のグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
<B成分におけるその他成分について>
本発明のB成分には、上記以外に、充填剤、(B-3)以外の可塑剤等を添加してもよい。また、A成分にエポキシ樹脂を添加した場合には、エポキシ樹脂の硬化剤を添加することもできる。
(B-3)以外の可塑剤としては、前記(A-2)以外の可塑剤と同じである。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、(B-2)に例示したアミン化合物に加えて、ポリアミン化合物、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0041】
本発明の2成分型硬化性組成物は、1成分型と比較して、次のような長所がある。
1成分型は、保管中に硬化が進するため、脱水状態で保管する必要がある。塗工直後は脱水状態にあり、表面から徐々に硬化が進行するため、深部の硬化に時間がかかり、その間の温度変化等により目地幅が変化して、硬化に不具合が生じる恐れがあるのに対し、2成分型は脱水状態で保管する必要がないので、深部の硬化が早いという長所がある。
また、2成分型は、保管中に硬化性樹脂と硬化剤(触媒)を共存させていないので、保管中に硬化する恐れが極めて少ない。
本発明の2成分型硬化性樹脂組成物は、A成分、B成分をそれぞれ混合し、別々に保管する。塗工直前に、A成分とB成分を所定の割合で混合し、ディスパー等の撹拌機で十分に混合した後、その混合物を塗工することができる。
【実施例
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
製造例、実施例及び比較例で得られた重合体の分析方法、並びに硬化性組成物から得られた硬化物の評価方法について以下に記載する。
【0043】
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0044】
<(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘度測定>
TVE-20H型粘度計(円錐/平板方式、東機産業社製)を用いて、下記の条件下でE型粘度を測定した。
○測定条件
コーン形状:角度1°34′、半径24mm(10000mPa・s未満)
角度3°、半径7.7mm(10000mPa・s以上)
温度:25℃±0.5℃
【0045】
<(メタ)アクリル酸エステル重合体に含まれる加水分解性シリル基の平均数>
加水分解性シリル基であるアルコキシシリル基の数(平均数)f(Si)は全構成単量体を100質量部とした場合の反応性シリル基を有する単量体の質量部から、下記式を用いて算出した。
f(Si)={シリル基単量体の質量部/(シリル基単量体の分子量×100/Mn)}
【0046】
<加水分解性シリル基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A-2)の製造>
(製造例1)
オイルジャケットを備えた容量1000mLの加圧式攪拌槽型反応器の温度を263℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という)を100部、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」という)を20部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)を20部、重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド(日油社製、商品名「パーブチルD」、以下、「DTBP」という)を2部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットの温度を制御することにより、反応温度を254~256℃に保持した。
単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して(メタ)アクリル酸エステル重合体A-2-1を得た。得られた重合体の性状を表1に示す。
【0047】
(製造例2~8及び比較製造例1)
原料供給組成および反応器内温を、表1のように変更する以外は、製造例1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体A-2-2~A-2-9を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
表1において、略号の意味は以下のとおりである。
BA:アクリル酸ブチル
HA:アクリル酸2-エチルヘキシル
TDA:アクリル酸テトラデシル
MMA:メタクリル酸メチル
TMS:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
DMS:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
IPA:イソプロピルアルコール
MEK:メチルエチルケトン
MOA:オルソ酢酸トリメチル
DTBP:ジ-t-ブチルパーオキシド(日油社製、商品名「パーブチルD」)
DTHP:ジ-t-ヘキシルパーオキシド(日油社製、商品名「パーヘキシルD」)
Mw:質量平均分子量
Mn:数平均分子量
【0050】
<硬化性樹脂組成物の調製、評価サンプル作成及び評価>
実施例1~実施例11、比較例1~比較例2
A成分として、市販品であるESS2420(AGC社製、商品名「エクセスターS2420」又はESS3430(AGC社製、商品名「エクセスターS3430」などを下記表2に示す量比で、プラネタリーミキサーを用いて、温度60℃、10Torrの条件で1時間混合することによりA成分を得た。
一方、別の容器で、B成分として、表2に示す量比で、透明になるまで攪拌混合してB成分を得た。
次いで、前記で得られたA成分とB成分を、自転公転式ミキサーにより、回転数2000rpmで、1分混合、30秒脱泡することにより、本発明の硬化性樹脂組成物を得た。
この組成物を、テフロン(登録商標)シート上で、2mm厚になるように塗布して、23℃、50%RHで、2週間養生し、硬化物を得た。
【0051】
<配合物の粘度測定>
表2から、B-1または硬化触媒を除いた状態で、上記と同じ混合作業を行い、直後に、粘度測定を行った。粘度の測定の条件は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘度測定と同様であり、回転数は、1rpmに固定した。
【0052】
<引張試験>
得られた2mm厚の硬化物より引張試験用ダンベル(JIS K 6251 3号型)を作成し、引張試験機(オートグラフAGS-J、島津製作所社製)を用いて、引張速度200mm/分の条件下での破断伸び及び破断強度を測定した。
【0053】
<耐候性試験>
得られた2mm厚の硬化物をメタルウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス社製「DAIPLA METAL WEATHER KU-R5NCI-A」)に入れ、促進耐候試験を行った。条件は照射63℃、70%RH、照度80mW/cm2とし、2時間に1回2分間のシャワーで試験を実施した。外観にクラック等の異常が生じ始めた時間を記録した。
【0054】
<耐熱性試験>
得られた2mm厚のシートを、100℃雰囲気で、1週間加熱し、取り出したのち、1日、23℃、50%RHで状態調節した。その後、上記引張試験と同様の条件で引張試験を行い、物性の変化を評価した。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
表2及び表3において、略号の意味は以下のとおりである。
ESS2420:AGC社製、商品名「エクセスタ-S2420」(直鎖状変成シリコーン)
ESS3430:AGC社製、商品名「エクセスターS3430」(分岐状変成シリコーン)
PPG:プロピレングリコール(分子量3000)
CCR:軽質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「白艶華CCR」)
スーパーSS:重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「スーパーSS」)
R820:酸化チタン(石原産業社製)
チヌビンB75:老化防止剤(BASF社製)
M-8100:多官能アクリレート(東亞合成社製、商品名「アロニックスM-8100」)
【0058】
表2および表3の結果から分かる様に、実施例1~11と比較例1を比較した場合、実施例は、比較例1に対して、破断強度が高い結果を示す。これは、可塑剤にシリル基を有することが、引張物性の低下を生じさせていることを示している。
実施例1~11と比較例2を比較した場合、実施例は、比較例2に対して、引張物性がほぼ同等である状態を維持したうえで、耐候性に優れるという結果を示す。
実施例3と比較例3については、2価の錫を用いた実施例は、4価の錫を用いた比較例3に対して、耐熱試験後の引張物性の変化が初期値に対して少ないため、2価の錫を用いた方が、耐熱性に優れる結果を示す。
実施例1~11の中での比較では、分子量が高いほど耐候性に優れるが、配合物粘度が高くなる傾向にある。一方で、引張物性については、顕著な変化はない結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の2成分型硬化性組成物は低粘度で作業性に優れ、かつ、硬化後は優れた機械物性及び高耐候性を有するので、2成分型のシーリング材や接着剤などに好適に用いられる。