(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】球状コアおよびゴルフボールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20220809BHJP
A63B 45/00 20060101ALI20220809BHJP
C08F 291/02 20060101ALI20220809BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220809BHJP
A63B 37/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08F2/00 B
A63B45/00 B
C08F291/02
C08F2/44 C
A63B37/00 534
A63B37/00 536
(21)【出願番号】P 2018204320
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】林 界
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】永倉 光
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-6313(JP,A)
【文献】特開2016-19620(JP,A)
【文献】特開昭63-54181(JP,A)
【文献】特開2008-126062(JP,A)
【文献】特開2001-137386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0029786(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0048974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 45/00
C08F 2/00
C08F 291/02
C08F 2/44
A63B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物をプレス温度:125℃~180℃、プレス圧力:1MPa~25MPa、プレス時間:15分~40分の条件で加圧することにより、前記コア用ゴム組成物を架橋して、球状コアを成型する工程を有することを特徴とする球状コアの製造方法。
【請求項2】
(d)前記テルペン系樹脂は、テルペン重合体、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・スチレン共重合体、テルペン・フェノール・スチレン共重合体、水素添加テルペン・フェノール共重合体、水素添加テルペン・スチレン共重合体、水素添加テルペン・フェノール・スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の球状コアの製造方法。
【請求項3】
前記テルペン系樹脂は、下記式(1)~(4)で表される構造を有する化合物から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の球状コアの製造方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
[式(1)~(4)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物の二価の残基を表す、m
1~m
4は、それぞれ独立して、1~30の自然数を表し、n
1~n
2は、それぞれ独立して1~20の自然数を表す。]
【請求項4】
前記コア用ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(d)テルペン系樹脂を3質量部~20質量部含有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載の球状コアの製造方法。
【請求項5】
前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、60℃~150℃である請求項1~4のいずれか一項に記載の球状コアの製造方法。
【請求項6】
前記(b)成分と前記(d)成分との配合比率((b)成分/(d)成分)が、質量比で、2.0~15.0である請求項1~5のいずれか一項に記載の球状コアの製造方法。
【請求項7】
前記基材ゴムとして、シス-1,4-結合を90質量%以上含有するハイシスポリブタジエンを使用する請求項1~6のいずれか一項に記載の球状コアの製造方法。
【請求項8】
前記コアの中心硬度(Ho)と、前記コアの表面硬度(Hs)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で20以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の球状コアの製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の球状コアの製造方法により得られた球状コアにカバーを形成するゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状コアおよびゴルフボールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのコアを形成する材料として、反発性が良い点から、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤を含有するゴム組成物が広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)石油樹脂を含有し、(b)共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合には、さらに(e)金属化合物を含有するゴム組成物から形成されているゴルフボールが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、反撥弾性(JIS K 630による)が40%以下で、0°~40℃の範囲において内部損失係数tanδの値が最大値0.3以上を示す粘弾性体によって構成された内芯であって、内芯の構成材料が、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ハイスチレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムまたはノルボルネン重合体に加硫剤、加硫促進剤、滑剤、可塑剤等の通常の添加剤、さらに多量の充填剤、軟化剤あるいは石油樹脂、テルペン樹脂等の樹脂類を配合したゴム組成物である内芯を有するゴルフボールが開示されている。
【0005】
特許文献3には、センタ、内側コア層、および外側コア層を含む少なくとも3つのコア層と、少なくとも1つのカバー層と、上記外側コア層および少なくとも上記カバー層の間にある、上記カバー層の水蒸気透過率より大きな水蒸気透過率を実現する少なくとも1つの水蒸気バリア層とを有し、上記センタ、上記内側コア層、および上記外側コア層は硬度勾配を付されていることを特徴とする多層ゴルフボールが開示されている。水蒸気バリア層には、テルペン樹脂、テルペン樹脂エステルなどを添加してよいことが記載されている(段落0031)。
【0006】
特許文献4には、コアと、中間層と、カバーとを含み、該中間層が、イオノマー樹脂と、少なくとも約50℃なる軟化点を持つロジン材料とを含む組成物から製造したものであることを特徴とする、ゴルフボールが開示されている。
【0007】
特許文献5には、コアおよびカバー層を有し、上記コアまたはカバー層の少なくとも1つが、少なくとも1のポリウレタンおよび少なくとも1の可塑剤を有する可塑化ポリウレタン配合物を有するゴルフボールが開示されている。
【0008】
特許文献6には、コアとカバーからなるゴルフボールにおいて、該カバーが、昇温速度4℃/分、周波数10Hz、初期歪み1.0mmの条件で測定される引張モードでの動的粘弾性の温度分散曲線において、-10℃の損失正接(tanδ)の値が0.15~0.70であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。カバー組成物は、アイオノマー樹脂単独または、アイオノマー樹脂を主体とし、これにゴム成分を有するエラストマーの1種または2種以上を混合したものに、粘着付与剤として、テルペン樹脂および/またはロジンエステル樹脂を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-019620号公報
【文献】特開昭63-54181号公報
【文献】特開2008-126062号公報
【文献】特開2006-320725号公報
【文献】特開2005-185836号公報
【文献】特開2001-137386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
コア用ゴム組成物を150℃~170℃程度の温度で、10分間~30分間程度加熱することにより得られる球状コアは、表面硬度と中心硬度に硬度差が生じる。これは、ゴム組成物の硬化反応に伴い球状コア内部で温度分布が生じてコア表面部分とコア中心部分で硬化反応に差が生じるためだと考えられている。表面硬度と中心硬度の硬度差がある球状コアは、ゴルフボールのスピン量を低下させる。低スピン量のゴルフボールは、ドライバーショットの飛距離が大きくなる。
【0011】
一方、表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアは、ゴルフボールの耐久性を向上する。表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアは、120℃~130℃程度の低温で、60分間~90分間加熱して成型する必要があった。すなわち、表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアを製造するには、生産時間が長くなるという問題があった。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアを製造する方法の生産効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の球状コアの製造方法は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物をプレス温度:125℃~180℃、プレス圧力:1MPa~25MPa、プレス時間:15分~40分の条件で加圧することにより、前記コア用組成物を架橋して、球状コアを成型する工程を有することを特徴とする。本発明者らは、(d)テルペン系樹脂をコア用ゴム組成物に配合することにより、表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアを短時間で製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアを短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の球状コアの製造方法は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物をプレス温度:125℃~180℃、プレス圧力:1MPa~25MPa、プレス時間:15分~40分の条件で加圧することにより、前記コア用ゴム組成物を架橋して、球状コアを成型する工程を有することを特徴とする。
【0016】
まず、本発明で使用するコア用ゴム組成物について説明する。
【0017】
[(a)基材ゴム]
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。
【0018】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
【0019】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0020】
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0021】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0022】
本発明では、(a)基材ゴムとして、ポリブタジエンを使用することが好ましく、シス-1,4-結合を90質量%以上含有するハイシスポリブタジエン(以下、単に「ハイシスポリブタジエン」と呼ばれることがある。)を使用することがより好ましい。
【0023】
[(b)共架橋剤]
前記コア用ゴム組成物に使用される(b)炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤としてゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。
【0024】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
【0025】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0026】
前記(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部未満では、コア用ゴム組成物から形成されるコアを適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、得られるゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部を超えると、コア用ゴム組成物から形成されるコアが硬くなりすぎて、得られるゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
【0027】
[(c)架橋開始剤]
前記コア用ゴム組成物に使用される(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0028】
前記(c)架橋開始剤の1分間半減期温度としては、100℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下であることがより好ましい。
【0029】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。架橋開始剤の含有量が0.2質量部未満では、コア用ゴム組成物から形成されるコアが柔らかくなりすぎて、得られるゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、コア用ゴム組成物から形成されるコアを適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減少する必要があり、得られるゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
【0030】
[(d)テルペン系樹脂]
本発明で使用するテルペン系樹脂は、テルペン化合物を構成成分とする重合体であれば、特に限定されない。前記テルペン系樹脂は、例えば、テルペン重合体、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・スチレン共重合体、テルペン・フェノール・スチレン共重合体、水素添加テルペン・フェノール共重合体、水素添加テルペン・スチレン共重合体、及び、水素添加テルペン・フェノール・スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0031】
前記テルペン重合体は、テルペン化合物を重合して得られるホモポリマーである。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物である。前記テルペン化合物としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。前記テルペン化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0032】
テルペン重合体は、例えば、前記テルペン化合物を重合して得られる。前記テルペン重合体としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、リモネン重合体、ジペンテン重合体、β-ピネン/リモネン重合体が挙げられる。
【0033】
テルペン・フェノール共重合体(「テルペンフェノール樹脂」と称する場合もある)は、例えば、前記テルペン化合物とフェノール系化合物との共重合体である。前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。テルペン・フェノール共重合体としては、テルペン化合物とフェノールとの共重合体が好ましい。
【0034】
前記テルペン・フェノール共重合体の酸価は、10mgKOH/g以上であることが好ましく、35mgKOH/g以上であることがより好ましく、60mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。また、前記テルペン・フェノール共重合体の酸価は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、250mgKOH/g以下であることがより好ましく、200mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、150mgKOH/g以下であることが特に好ましく、90mgKOH/g以下であることが最も好ましい。なお、本発明において、テルペン・フェノール共重合体の酸価とは、テルペン・フェノール共重合体1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0035】
テルペン・フェノール共重合体の水酸基価は、30mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましい。テルペン・フェノール共重合体の水酸基価は、150mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0036】
テルペン・スチレン共重合体は、例えば、前記テルペン化合物とスチレン系化合物との共重合体である。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。テルペン・スチレン共重合体としては、前記テルペン化合物とα-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0037】
テルペン・フェノール・スチレン共重合体は、例えば、前記テルペン化合物と前記フェノール系化合物と前記スチレン系化合物との共重合体である。テルペン・フェノール・スチレン共重合体としては、前記テルペン化合物とフェノールとα-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0038】
水素添加テルペン・フェノール共重合体は、前記テルペン・フェノール共重合体を水素添加して得られるものである。水素添加テルペン・スチレン共重合体は、前記テルペン・スチレン共重合体を水素添加して得られるものである。水素添加テルペン・フェノール・スチレン共重合体は、前記テルペン・フェノール・スチレン共重合体を水素添加して得られるものである。
【0039】
(d)前記テルペン系樹脂としては、下記式(1)~(4)で表される構造を有する化合物から選択される少なくとも1種であるものが好ましい。
【0040】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
[式(1)~(4)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物の二価の残基を表す、m
1~m
4は、それぞれ独立に1~30の自然数を表し、n
1~n
2は、それぞれ独立に1~20の自然数を表す。]
【0041】
前記式(1)~(4)で表される構造を有する化合物は、いずれも分子中にピネンに由来する構造を有する。
【0042】
式(1)で表される構造を有する化合物は、α-ピネンに由来する構造部分と、このα-ピネンに由来する構造部分に結合するR1とからなる繰り返し単位を有する。R1は、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物が有するベンゼン環から2個の水素が除去された二価の残基であることが好ましい。式(1)で表される構造を有する化合物としては、例えば、α-ピネンとフェノール系化合物および/またはスチレン系化合物との共重合体を挙げることができる。
【0043】
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0044】
式(1)中、m1は、α-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。m1は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0045】
式(1)中、n1は、α-ピネンに由来する構造部分と、このα-ピネンに由来する構造部分に結合するR1とからなる繰り返し単位の重合度を表し、1~20の自然数であることが好ましい。前記n1は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下である。
【0046】
式(2)で表される構造を有する化合物は、分子中にβ-ピネンに由来する構造部分と、この構造部分に結合するR2とからなる繰り返し単位を有する。式(2)で表される構造を有する化合物としては、例えば、β-ピネンとフェノール系化合物および/またはスチレン系化合物との共重合体を挙げることができる。R2は、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物が有するベンゼン環から2個の水素が除去された2価の残基である。
【0047】
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0048】
式(2)中、m2は、β-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。m2は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0049】
式(2)中、n2は、β-ピネンに由来する構造部分と、この構造部分に結合するR2とからなる繰り返し単位の重合度を表し、1~20の自然数であることが好ましい。前記n2は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下である。
【0050】
式(3)で表される構造を持つ化合物は、α-ピネンに由来する構造単位を有する重合体であり、α-ピネンに由来する構造単位のみを有する重合体であることがより好ましい。
【0051】
式(3)中、m3は、α-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。m3は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0052】
式(4)で表される構造を持つ化合物は、分子中にβ-ピネンに由来する構造単位を有するβ-ピネン重合体であり、β-ピネンに由来する構造単位のみを有する重合体であることがより好ましい。
【0053】
式(4)中、m4は、β-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。m4は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0054】
前記(d)テルペン系樹脂は、α-ピネン・フェノール共重合体、α-ピネン・α-メチルスチレン共重合体、α-ピネン・α-メチルスチレン・フェノール共重合体、β-ピネン・フェノール共重合体、β-ピネン・α-メチルスチレン共重合体、および、β-ピネン・α-メチルスチレン・フェノール共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。前記(d)テルペン系樹脂として、これらの共重合体を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、150℃以下が好ましく、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。軟化点が前記範囲にある(d)テルペン系樹脂を使用することにより、ゴム混練中の樹脂分散性が良くなるからである。なお、前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0056】
前記(d)テルペン系樹脂としては、市販品を使用でき、例えば、KRATON社製のSylvaresTP2019、SylvaresTP7042、SylvaresTR7115、SylvaresTR7125、Sylvatraxx6720;ヤスハラケミカル社製のYSレジンPX1150、YSレジンPX1250などが挙げられる。
【0057】
前記(d)テルペン系樹脂の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。(d)成分の含有量が3質量部未満では、(d)成分を添加した効果が小さくなり、ドライバーショットをした時の打球感向上効果が得られないことがある。一方、(d)成分の含有量が20質量部を超えると、得られるコアが全体的に柔らかくなりすぎて、反発性が低下することがある。
【0058】
前記(b)成分と前記(d)成分との配合比率((b)成分/(d)成分)は、質量比で、2.0以上が好ましく、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは2.8以上であり、15.0以下が好ましく、より好ましくは12.0以下、さらに好ましくは10.0以下、特に好ましくは8.0以下である。(b)成分と(d)成分との配合比率((b)成分/(d)成分)が前記範囲であれば、得られるゴルフボールのドライバーショットをした時の打球感がより良好となる。
【0059】
[(e)有機硫黄化合物]
前記コア用ゴム組成物は、さらに(e)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。(e)有機硫黄化合物を含有することにより、得られるコアの反発性が向上する。
【0060】
前記(e)有機硫黄化合物としては、チオール類(チオフェノール類、チオナフトール類)、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、および、チアゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物が好ましい。
【0061】
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,4-ジフルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,4-ジブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,4-ジヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
【0062】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2-チオナフトール、1-チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体的としては、例えば、1-チオナフトールの亜鉛塩、2-チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
【0063】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0064】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0065】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0066】
前記(e)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4-ジクロロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1-チオナフトール、2-チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0067】
前記(e)有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0068】
前記(e)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。(e)有機硫黄化合物の含有量が0.05質量部未満では、(e)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、(e)有機硫黄化合物の含有量が5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
【0069】
[(f)金属化合物]
前記コア用ゴム組成物は、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、さらに(f)金属化合物を含有することが好ましい。コア用ゴム組成物中で炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。なお、共架橋剤として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合においては、任意成分として、(f)金属化合物を用いてもよい。
【0070】
前記(f)金属化合物としては、コア用ゴム組成物中において(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(f)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記(f)金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。
【0071】
前記(f)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。また、前記(f)金属化合物の含有量は、所望とする(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の中和度に応じて、適宜調整すればよい。
【0072】
本発明に用いられるコア用ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0073】
コア用ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、コア全体の硬度を高めるものと考えられる。前記充填剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0074】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0075】
前記コア用ゴム組成物の調製は、例えば、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、(d)テルペン系樹脂を配合し、混練することにより行われる。コア用ゴム組成物には、必要に応じて、(e)有機硫黄化合物および/または(f)金属化合物を配合してもよい。混練の方法は、特に限定されず、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0076】
混錬時のコア用ゴム組成物の材料温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。混錬時間は、6分以上が好ましく、7分以上がより好ましく、12分以下が好ましく、10分以下がより好ましい。混錬を上記条件で行うことにより、配合材料の分散が均一になる。
【0077】
混練して得られたコア用ゴム組成物を、押出機により棒状に押し出し、所定の長さに切断して、予備成形体(「プラグ」とも呼ばれる)を作製する。また、コア用ゴム組成物を厚みのあるシート状に成形し、これを打ち抜いてプラグにしてもよい。プラグの大きさは、圧縮成形用金型のサイズに応じて適宜変更すればよい。得られたプラグは、例えば、お互いにくっつかないように防着剤液に浸漬し、乾燥後、約8~48時間熟成することが好ましい。次いで、プラグをコア成型用金型に投入し、プレス成型する。
【0078】
本発明の球状コアの製造方法では、コア用ゴム組成物の予備成形体を下記条件で加圧することにより、コア用ゴム組成物を架橋して、球状コアに成型する。
(1)プレス圧力は、1MPa以上が好ましく、3MPa以上がより好ましく、25MPa以下が好ましく、15MPa以下がより好ましい。
(2)プレス温度は、125℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。
(3)プレス時間は、15分以上好ましく、20分以上が好ましく、40分以下が好ましく、30分以下がより好ましい。
前記成形条件であれば、球状コアを形成するゴム組成物の架橋反応が効率よく進行する。すなわち、表面硬度と中心硬度の硬度差が小さい球状コアを短時間で得ることができるので、球状コアの生産効率が高くなる。
【0079】
前記成形工程の前に、コア用ゴム組成物の予備成形体をコア成形用金型に投入し、予備成形体を球状に成形する予備加熱工程を行ってもよい。予備加熱工程では、コア用ゴム組成物の架橋反応を抑制しつつ、予備成形体の形状を予め球状に塑性変更させることが好ましい。架橋反応が進行しすぎると、予備成形体の形状を球状に塑性変更させることが難しくなるからである。このような観点から、予備加熱工程は、以下の条件で行うことが好ましい。
(1)プレス圧力は、1MPa以上が好ましく、5MPa以下が好ましい。
(2)プレス温度は、125℃未満が好ましく、120℃以下がより好ましい。
(3)プレス時間は、3分以上好ましく、5分以下がより好ましい。
【0080】
本発明の製造方法により得られる球状コアは、表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で、60以上であることが好ましく、62以上であることがより好ましく、65以上であることがさらに好ましく、83以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、78以下であることがさらに好ましい。前記表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で60以上であれば、コアの反発性がより良好になる。また、前記コアの表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で83以下であれば、ドライバーショットをした時の打球感がより向上する。
【0081】
前記球状コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましい。コアの中心硬度(Ho)がショアC硬度で30以上であれば、軟らかくなりすぎず、反発性が良好となる。また、コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で70以下が好ましく、68以下であることがより好ましく、67以下であることがさらに好ましい。前記中心硬度(Ho)がショアC硬度で70以下であれば、硬くなり過ぎず、打球感が良好となる。
【0082】
前記球状コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)は、ショアC硬度で、-20以上であることが好ましく、-10以上であることがより好ましく、0以上であることがさらに好ましく、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)がショアC硬度で0以上であれば、反発性の良いゴルフボールが得られる。また、コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)がショアC硬度で20以下であれば、耐久性および打球感が向上したゴルフボールが得られる。
【0083】
本発明の製造方法により得られる球状コアの直径は、34.8mm以上であることが好ましく、36.8mm以上であることがより好ましく、38.8mm以上であることがさらに好ましく、42.2mm以下であることが好ましく、41.8mm以下であることがより好ましく、41.2mm以下であることがさらに好ましく、40.8mm以下であることが最も好ましい。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0084】
前記球状コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上であることが好ましく、2.3mm以上であることがより好ましく、2.5mm以上であることがさらに好ましく、5.0mm以下が好ましく、4.3mm以下であることがより好ましく、4.5mm以下であることがさらに好ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、5.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0085】
本発明には、本発明の製造方法により得られた球状コアにカバーを形成してゴルフボールを作製するゴルフボールの製造方法が含まれる。
【0086】
[カバー]
本発明のゴルフボールの製造方法において、カバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0087】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0088】
本発明のゴルフボールの製造方法で使用するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、熱可塑性スチレンエラストマーを併用することも好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0089】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0090】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0091】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましく、68以下がさらに好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が向上する。また、カバー用組成物のスラブ硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。複数のカバー層の場合は、各層を構成するカバー用組成物のスラブ硬度は、同一あるいは異なっても良い。
【0092】
本発明のゴルフボールの製造方法において、カバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0093】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0094】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa~15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃~250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒~5秒で注入し、10秒~60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0095】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0096】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.8mm以上、特に好ましくは1.0mm以上である。カバーの厚みが0.3mm未満では、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合がある。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0097】
前記カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0098】
[ゴルフボール]
本発明の製造方法により得られるゴルフボールの構造は、球状コアと、前記球状コアを被覆する一層以上のカバーとを有するものであれば、特に限定されない。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3とを有する。このカバーの表面には、多数のディンプル31が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。このゴルフボール1は、カバー3の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0099】
前記コアの形状は、球状であることが好ましい。また、前記コアの構造は、単層構造と多層構造のいずれもよいが、単層構造であることが好ましい。単層構造のコアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上するからである。また、カバーは、一層以上の構造であればよく、単層構造、あるいは、二層以上の多層構造を有していてもよい。本発明のゴルフボールとしては、例えば、コアと前記コアを被覆するように配設された単層のカバーとからなるツーピースゴルフボール;コアと前記コアを被覆するように配設された二層以上のカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)などを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
【0100】
本発明の製造方法により得られるゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0101】
本発明の製造方法により得られるゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.3mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.3mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0103】
[評価方法]
(1)圧縮変形量
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0104】
(2)コア硬度(ショアC硬度)
H.バーレイス社製自動硬度計デジテストIIを用いて、コアの表面部において測定したショアC硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、また、コアを半球状に切断し、切断面の中心の硬度を測定した。
【0105】
(3)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0106】
(4)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
◎:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
〇:衝撃があるがフィーリングが良い方である。
△:普通。
×:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
(5)耐久性
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを繰り返し打撃し、割れが生じるまでの打撃回数を測定した。なお、測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの打撃回数とした。なお、各ゴルフボールの打撃回数は、ゴルフボールNo.1の打撃回数を100として、指数化した値で示した。
【0107】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1~表3に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で所定の条件で加熱プレスすることにより直径40.0mmの球状コアを得た。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表1~表3で用いた材料は下記の通りである。
BR730:JSR社製ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=95質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製アクリル酸亜鉛
ジクミルパーオキサイド:東京化成工業社製
SylvaresTP2019(ピネン・フェノール共重合体、軟化点:125℃):KRATON社製
SylvaresTP7042(テルペン・フェノール共重合体、軟化点:148℃):KRATON社製
SylvaresTR7115(ポリテルペン、軟化点:116℃):KRATON社製
SylvaresTR7125(ポリテルペン、軟化点:124℃):KRATON社製
YSレジンPX1150N(β-ピネン重合体、軟化点:115±5℃):ヤスハラケミカル社製
YSレジンPX1250(ポリテルペン、軟化点:125±5℃):ヤスハラケミカル社製
PBDS:川口化学工業社製ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
【0112】
(2)カバーの作製およびゴルフボールの作製
表4に示した配合のカバー用材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。カバー用組成物の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~230℃に加熱された。得られたカバー用組成物を上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、球状コアと前記コアを被覆するカバーを有するゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールについて評価した結果を、表1~表3に併せて示した。
【0113】
【0114】
表4で用いた材料は以下の通りである。
ハイミラン1555:三井デュポンポリケミカル社製Na中和アイオノマー
ハイミラン1605:三井デュポンポリケミカル社製Na中和アイオノマー
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製Zn中和アイオノマーA-220:石原産業社製二酸化チタン
JF-90:城北化学社製光安定剤
【0115】
表1~表3に示すように、本発明によれば、表面硬度と中心硬度の硬度差の小さい球状コアの生産効率を高めることができる。
【0116】
ゴルフボールNo.1は、170℃で20分間加熱プレスして球状コアを成型した製造例であるが、打球感も悪く、耐久性も良くない。ゴルフボールNo.2は、125℃で100分間加熱プレスして球状コアを成型した製造例である。耐久性および打球感に優れるゴルフボールが得られているが成形時間が長く、生産効率が低い。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、ゴルフボールの製造方法として有用である。