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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20220809BHJP
【FI】
G01S15/931
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018211639
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076716
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】松浦 充保
(72)【発明者】
【氏名】野村 卓也
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-039016(JP,A)
【文献】特開2017-166880(JP,A)
【文献】特開昭61-271485(JP,A)
【文献】特開平2-296180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - 7/64
G01S 15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体(B)を検知するように構成された物体検知装置(1)であって、
探査波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(2)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記駆動信号生成部から前記送信部への前記駆動信号の出力を制御するように設けられた制御部(4)と、
を備え、
前記駆動信号生成部は、第一探査波に対応する第一駆動信号と、前記第一探査波とは識別可能に符号化状態が異なる第二探査波に対応する第二駆動信号とを生成し、
前記制御部は、前記第一探査波と前記第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で他方が送信され、且つ、今回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの先行時間間隔と、次回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの後行時間間隔とが異なるように、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを互いに異なるタイミングで前記駆動信号生成部から前記送信部に出力させる、
物体検知装置。
【請求項2】
前記駆動信号生成部は、前記第一探査波が所定の変調状態を有し且つ前記第二探査波における変調状態が前記第一探査波と異なるように、前記第一駆動信号および前記第二駆動信号を生成する、
請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの第一時間間隔と、前記第二探査波の送信タイミングからその直後の前記第一探査波の送信タイミングまでの第二時間間隔とが異なるように、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを前記駆動信号生成部から出力させる、
請求項1または2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一時間間隔と前記第二時間間隔との差が前記送信器における残響に起因する前記物体の検知不能時間以上となるように、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを前記駆動信号生成部から出力させる、
請求項3に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記先行時間間隔と前記後行時間間隔との差が前記送信器における残響に起因する前記物体の検知不能時間以上となるように、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを前記駆動信号生成部から出力させる、
請求項1~4のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記駆動信号生成部は、前記第一探査波と前記第二探査波とが異なる周波数変調状態を有するように、前記第一駆動信号および前記第二駆動信号を生成する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記駆動信号生成部は、前記第一探査波と前記第二探査波とが異なるチャープ符号化状態を有するように、前記第一駆動信号および前記第二駆動信号を生成する、
請求項6に記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記駆動信号生成部は、前記第一探査波と前記第二探査波とが異なる位相変調状態を有するように、前記第一駆動信号および前記第二駆動信号を生成する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項9】
前記駆動信号生成部は、前記第一探査波と前記第二探査波とが異なるオンオフ変調状態を有するように、前記第一駆動信号および前記第二駆動信号を生成する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項10】
前記送信部は、前記送信器としての送受信器により前記第一探査波および前記第二探査波を送信するとともに、これらの反射波を前記送受信器により受信することで前記物体との距離に応じた受信信号を生成するように構成された、
請求項1~9のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の物体を検知するように構成された物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、走行体用の距離測定装置を開示する。特許文献1に開示された距離測定装置は、走行する自動車から超音波パルス信号を発射し、検知物体からの反射信号を受信して、他の自動車を含む物体との間の距離を計測する。具体的には、特許文献1に開示された距離測定装置は、送信制御手段と、複数個の超音波センサとを備える。複数個の超音波センサは、それぞれ周波数が異なる超音波パルス信号を発信し、反射超音波パルス信号を受信する。送信制御手段は、特定される周期で、且つそれぞれ位相を異ならせて、複数の超音波センサからの超音波パルス信号を発射制御する。また、送信制御手段は、送信超音波パルスが検知物体で反射された超音波パルス信号の受信時から特定される時間の経過後に次の超音波パルス信号が送信されるように、検知物体との距離に対応して周期を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-96980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置において、近距離範囲および遠距離範囲の双方について物体検知周期を可及的に短くすることができるものを、より簡略な装置構成で提供することが求められている。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の物体検知装置(1)は、周囲の物体(B)を検知するように構成されている。
この物体検知装置は、
探査波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(2)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記駆動信号生成部から前記送信部への前記駆動信号の出力を制御するように設けられた制御部(4)と、
を備え、
前記駆動信号生成部は、第一探査波に対応する第一駆動信号と、前記第一探査波とは識別可能に符号化状態が異なる第二探査波に対応する第二駆動信号とを生成し、
前記制御部は、前記第一探査波と前記第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で他方が送信され、且つ、今回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの先行時間間隔と、次回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの後行時間間隔とが異なるように、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを互いに異なるタイミングで前記駆動信号生成部から前記送信部に出力させる。
【0006】
上記構成においては、前記駆動信号生成部は、前記第一探査波に対応する前記第一駆動信号と、前記第一探査波とは識別可能に符号化状態が異なる前記第二探査波に対応する前記第二駆動信号とを生成する。前記制御部は、前記第一探査波と前記第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で他方が送信され、且つ、今回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの先行時間間隔と、次回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの後行時間間隔とが異なるように、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを互いに異なるタイミングで前記駆動信号生成部から前記送信部に出力させる。前記送信部は、前記第一駆動信号が入力された場合は前記第一探査波を送信し、前記第二駆動信号が入力された場合は前記第二探査波を送信する。
【0007】
このように、上記構成においては、前記駆動信号生成部は、前記制御部の制御下で、前記第一駆動信号および前記第二駆動信号を互いに異なるタイミングで前記送信部に出力する。これにより、互いに識別可能に符号化状態が異なる前記第一探査波と前記第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で、他方が送信される。また、今回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの先行時間間隔と、次回の前記第一探査波の送信タイミングからその直後の前記第二探査波の送信タイミングまでの後行時間間隔とが異なるように、前記第一探査波および前記第二探査波が送信される。これにより、物体が検知できなくなる不検知帯の重複を良好に回避することが可能となる。したがって、近距離範囲および遠距離範囲の双方について物体検知周期を可及的に短くすることができる物体検知装置を、より簡略な装置構成で提供することが可能となる。
【0008】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る物体検知装置の概略構成を示すブロック図である。
図2A図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号における周波数特性の一例を示すグラフである。
図2B図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号における周波数特性の一例を示すグラフである。
図3図1に示された物体検知装置の一動作例を示すタイムチャートである。
図4図3に示されたタイムチャートに対応する概念図である。
図5図1に示された物体検知装置の他の一動作例を示すタイムチャートである。
図6図5に示されたタイムチャートに対応する概念図である。
図7図1に示された物体検知装置のさらに他の一動作例を示すタイムチャートである。
図8図7に示されたタイムチャートに対応する概念図である。
図9A図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の他の一例を示すグラフである。
図9B図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の他の一例を示すグラフである。
図10A図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例を示すグラフである。
図10B図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号のさらに他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0011】
(構成)
図1を参照すると、物体検知装置1は、不図示の車両、例えば自動車に搭載されていて、当該車両の周囲の物体Bを検知するように構成されている。物体検知装置1を搭載する車両を、以下「自車両」と称する。本実施形態においては、物体検知装置1は、いわゆる超音波センサとしての構成を有している。すなわち、物体検知装置1は、超音波である探査波を自車両の外部に向けて送信するとともに、物体Bによる探査波の反射波を受信することで、物体Bとの距離を取得するように構成されている。具体的には、物体検知装置1は、送受信部2と、駆動信号生成部3と、制御部4とを備えている。
【0012】
送受信部2は、送信部および受信部としての機能を有している。すなわち、送受信部2は、トランスデューサ21と、送信回路22と、受信回路23とを備えている。トランスデューサ21は、送信回路22および受信回路23と電気接続されている。
【0013】
トランスデューサ21は、探査波を外部に向けて送信する送信器としての機能と、反射波を受信する受信器としての機能とを有している。具体的には、トランスデューサ21は、圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子を内蔵した、超音波マイクロフォンとして構成されている。トランスデューサ21は、探査波を自車両の外部に送信可能および反射波を自車両の外部から受信可能なように、自車両の外表面に面する位置に配置されている。
【0014】
送信回路22は、入力された駆動信号に基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて探査波を発信させるように設けられている。具体的には、送信回路22は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路22は、駆動信号生成部3から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の処理を施し、これにより生成された交流電圧をトランスデューサ21に印加するように構成されている。
【0015】
受信回路23は、トランスデューサ21における超音波の受信状態に応じた受信信号を、制御部4に出力するように設けられている。具体的には、受信回路23は、増幅回路とアナログ/デジタル変換回路を有している。すなわち、受信回路23は、トランスデューサ21から入力された電圧を増幅した後に、アナログ/デジタル変換することで、受信した超音波の振幅に応じた受信信号を生成および出力するように構成されている。
【0016】
このように、送受信部2は、送受信器としてのトランスデューサ21により探査波を送信するとともに、反射波をトランスデューサ21により受信することで、物体Bとの距離に応じた受信信号を生成するように構成されている。
【0017】
本実施形態においては、送受信部2は、互いに符号化状態が異なる複数の探査波を送信可能に設けられている。また、1個の送受信部2は、1個のトランスデューサ21を有している。すなわち、送受信部2は、共通のトランスデューサ21から、互いに符号化状態が異なる複数の探査波を発信可能に構成されている。具体的には、送受信部2は、基本波に対する変調態様が互いに異なる複数の探査波を生成可能に構成されている。基本波とは、トランスデューサ21の共振周波数とほぼ同一あるいはその近辺の、一定周波数を有する、正弦波状の超音波である。トランスデューサ21の共振周波数を、以下単に「共振周波数」と称することがある。
【0018】
駆動信号生成部3は、送受信部2が送信部として機能する場合に、駆動信号を生成するように設けられている。駆動信号は、送受信部2を駆動してトランスデューサ21から探査波を送信するための信号である。
【0019】
駆動信号生成部3は、互いに符号化状態が異なる複数の探査波の各々に対応する、複数の駆動信号を生成するように構成されている。また、本実施形態においては、駆動信号生成部3は、複数の駆動信号を、同時ではなく選択的に、共通の送受信部2に向けて出力するようになっている。
【0020】
本実施形態においては、送受信部2は、互いに符号化状態が異なる二種類の探査波、すなわち、第一探査波および第二探査波を、互いに同時ではなく選択的に送信するように構成されている。これに対応して、駆動信号生成部3は、二種類の駆動信号、すなわち、第一探査波に対応する第一駆動信号と、第一探査波とは符号化状態が異なる第二探査波に対応する第二駆動信号とを生成して、互いに同時ではなく選択的に出力するようになっている。
【0021】
本実施形態においては、駆動信号生成部3は、第一探査波と第二探査波とが異なる変調状態を有するような、第一駆動信号および第二駆動信号を生成するように構成されている。図2Aおよび図2Bは、第一探査波と第二探査波とが異なる周波数変調状態を有する場合の、第一駆動信号および第二駆動信号の一例を示す。すなわち、図2Aは、第一駆動信号における周波数特性の一例を示す。図2Bは、第二駆動信号における周波数特性の一例を示す。図2Aおよび図2Bにおいて、横軸Tは時間、縦軸fは周波数、破線は共振周波数をそれぞれ示す。本例においては、第一探査波と第二探査波とは、異なるチャープ符号化状態を有している。すなわち、第一探査波は、アップチャープ変調を有している。一方、第二探査波は、ダウンチャープ変調を有している。これに対応して、図2Aに示されているように、第一駆動信号は、共振周波数を跨ぎつつ周波数が上昇するような周波数掃引パターンを有している。一方、第二駆動信号は、共振周波数を跨ぎつつ周波数が下降するような周波数掃引パターンを有している。
【0022】
制御部4は、駆動信号生成部3から送受信部2への駆動信号の出力を制御するとともに、送受信部2から受信した受信信号を処理するように設けられている。すなわち、制御部4は、駆動信号生成部3に制御信号を出力することで、送受信部2からの探査波の発信状態を制御するように構成されている。また、制御部4は、受信回路23の動作を制御しつつ受信回路23から受信信号を受領することで、物体Bの存在およびトランスデューサ21と物体Bとの距離を検知するように構成されている。
【0023】
制御部4は、駆動信号生成部3に複数種類の駆動信号をそれぞれ離散的且つ所定タイミングで送受信部2に出力させるべく、駆動信号生成部3を制御するように構成されている。具体的には、制御部4は、探査波が所定態様で送信されるように、第一駆動信号と第二駆動信号とを互いに異なるタイミングで駆動信号生成部3から送受信部2に出力させるようになっている。「所定態様」とは、第一探査波と第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で、他方が送信されるという態様である。
【0024】
(動作概要)
以下、本実施形態の構成の動作概要について、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(動作例1)
図3および図4は、第一探査波と第二探査波とを等間隔で交互に発信する動作例を示す。図3において、横軸Tは時間を示し、「TC」は送信制御を示し、「RC」は受信制御を示す。送信制御および受信制御において、「A」は第一駆動信号を示し、「B」は第二駆動信号を示す。
【0026】
計測時間Tと検知距離Lとの関係は、音速をcとすると、T=2・L/cで示される。計測時間Tは、探査波の送信周期にほぼ対応する。検知距離Lは、物体Bを検知可能な最遠距離に対応する。
【0027】
自車両と検知対象である物体Bとが相対移動している関係で、一旦物体Bを検知すると、計測時間Tを短縮して物体検知の頻度を増加させたいという要求がある。しかしながら、計測時間Tを短縮すると、遠距離に存在する他の障害物を検知することができなくなる。また、ノイズによって計測時間Tを誤って短縮してしまった場合、計測時間Tを遠距離範囲の検知用に復帰するまでの間、遠距離に存在する他の障害物を検知することができなくなる。このように、物体Bの検知精度と検知周期とを両立させることについては、技術的に大きな課題があった。
【0028】
この点、本実施形態においては、駆動信号生成部3は、第一探査波に対応する第一駆動信号と、第一探査波とは符号化状態が異なる第二探査波に対応する第二駆動信号とを生成する。制御部4は、第一探査波と第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で他方が送信されるように、第一駆動信号と第二駆動信号とを互いに異なるタイミングで駆動信号生成部3から送信部に出力させる。典型的には、第一駆動信号と第二駆動信号とは、信号の継続時間が同一で、出力開始タイミングが互いに異なる。送受信部2は、第一駆動信号が入力された場合は第一探査波を送信し、第二駆動信号が入力された場合は第二探査波を送信する。
【0029】
具体的には、図3に示されているように、本動作例においては、第一探査波が、計測時間TMA=40ms周期で送信される。これにより、検知距離LM1=約6.8mが確保される。同様に、第二探査波が、計測時間TMB=40ms周期で送信される。これにより、検知距離LM1=約6.8mが確保される。計測時間TMA,TMBは同一且つ一定である。一方、第一探査波と第二探査波とは、TINT=20msの時間間隔で交互に送信される。すなわち、TINTは、第一探査波の送信タイミングからその直後の第二探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。また、TINTは、第二探査波の送信タイミングからその直後の第一探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。「送信タイミング」は、典型的には、送信開始のタイミングを指す。このとき、物体検知周期は、時間的に隣接する異種の探査波送信の時間間隔TINT=20msと一致する。したがって、第一探査波のみの場合、あるいは、第二探査波のみの場合と比して、物体検知頻度は2倍となる。
【0030】
このように、本実施形態の構成においては、駆動信号生成部3は、制御部4の制御下で、第一駆動信号および第二駆動信号を互いに異なるタイミングで送信部に出力する。これにより、互いに符号化状態が異なる第一探査波と第二探査波とのうちの一方の送信間隔の途中で、他方が送信される。したがって、近距離範囲および遠距離範囲の双方について物体検知周期を可及的に短くすることができる物体検知装置1を、より簡略な装置構成で提供することが可能となる。
【0031】
本実施形態においては、送受信部2は、送信部および受信部としての機能を有している。すなわち、送受信部2は、送信器および送受信器であるトランスデューサ21を備えている。このため、送受信部2は、トランスデューサ21により第一探査波および第二探査波を送信するとともにこれらの反射波を受信することで、物体Bとの距離に応じた受信信号を生成する。
【0032】
上記の通り、本実施形態においては、複数の探査波の各々は、一定周波数を有する基本波に対する変調態様が互いに異なるように形成されている。このため、互いに識別可能な複数の探査波を発信可能な装置が、送信部および受信部を一体化し単一のトランスデューサ21を備える送受信部2を用いた簡略な構成で実現され得る。
【0033】
以下、図3に示された検知不能時間TUM、および、図4に示された不検知帯UMについて説明する。検知不能時間TUMは、トランスデューサ21における残響に起因して、物体Bの検知ができなくなる時間である。具体的には、検知不能時間TUMは、トランスデューサ21にて反射波を受信できなくなる期間である。不検知帯UMは、検知不能時間TUMが発生することにより物体Bが検知できなくなる領域である。
【0034】
図3を参照すると、時刻T11にて送受信制御が開始する。すると、まず、時刻T11にて、1回目の第一駆動信号が入力される。これにより、トランスデューサ21から第一探査波が送信される。また、1回目の第一探査波の送信に伴う第一探査波の受信制御A1は、時刻T11にて開始し、時刻T11から計測時間TMA後の時刻T13にて終了する。この1回目の第一探査波の受信制御A1の途中である時刻T12にて、1回目の第二駆動信号が入力される。これにより、トランスデューサ21から第二探査波が送信される。時刻T12は、1回目の第一探査波の送信開始時刻T11から20ms後である。
【0035】
もっとも、駆動信号の入力が終了しても、その後にトランスデューサ21にて残響が発生する。このため、駆動信号の入力開始から所定時間の検知不能時間TUMが発生する。図3の例では、駆動信号の信号長は1ms程度あるいは未満であり、検知不能時間TUMは2ms程度である。
【0036】
したがって、1回目の第一探査波の受信制御A1において、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T11から2msの期間、1回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMIが発生する。また、時刻T11から20ms後の時刻T12から2msの期間、1回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。
【0037】
このように、時刻T11から計測時間TMA=40msの間に、2回の検知不能時間TUMが発生する。これを図4に示されている検知範囲に対応させると、以下の通りとなる。すなわち、トランスデューサ21の直近の位置に、不検知帯UMが発生する。不検知帯UMは、検知不能時間TUMIに対応する。不検知帯UMの測距方向長さは約0.35mである。測距方向長さは、トランスデューサ21から探査波の発信方向に沿った長さである。また、トランスデューサ21から所定距離LM2離れた位置に、不検知帯UMが発生する。不検知帯UMは、検知不能時間TUMBに対応する。所定距離LM2はLM2=LM1/2=約3.4mである。不検知帯UMの幅LUM1すなわち測距方向長さは約0.35mである。
【0038】
同様に、1回目の第二探査波の送信に伴う第二探査波の受信制御B1は、時刻T12にて開始し、時刻T12から計測時間TMB後の時刻T14にて終了する。この1回目の第二探査波の受信制御B1の途中である時刻T13にて、2回目の第一駆動信号が入力される。これにより、トランスデューサ21から第一探査波が送信される。時刻T13は、1回目の第一探査波の送信開始時刻T11から40ms後であり、1回目の第二探査波の送信開始時刻T12から20ms後である。
【0039】
したがって、1回目の第二探査波の受信制御B1においても、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T12から2msの期間、1回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。また、時刻T12から20ms後の時刻T13から2msの期間、2回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAが発生する。
【0040】
このように、時刻T12から計測時間TMB=40msの間にも、2回の検知不能時間TUMが発生する。これを図4に示されている検知範囲に対応させると、以下の通りとなる。すなわち、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMは、検知不能時間TUMBに対応する。また、トランスデューサ21から所定距離LM2離れた不検知帯UMは、検知不能時間TUMAに対応する。第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAと、第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBとは、同一値である。
【0041】
同様に、2回目の第一探査波の受信制御A2においても、2回の検知不能時間TUMA,TUMBが発生する。第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAは、送受信制御の開始直後の検知不能時間TUMIと同一値である。トランスデューサ21の直近の不検知帯UMは、検知不能時間TUMAに対応する。また、トランスデューサ21から所定距離LM2離れた不検知帯UMは、検知不能時間TUMBに対応する。
【0042】
上記の通り、本動作例においては、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMとは別の不検知帯UMが、トランスデューサ21から一定距離にて発生する。通常、物体検知動作中は、自車両と物体Bとが相対移動している。このため、物体Bが不検知帯UMに長時間留まることは想定され難い。したがって、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMとは別の不検知帯UMの位置が一定であっても、自車両における障害物検知あるいは運転制御等に際しての特段の支障はない。
【0043】
しかしながら、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMとは別の不検知帯UMの位置が、時間経過に伴って変動することが好適な場面も生じ得る。以下、不検知帯UMの位置が時間経過に伴って変動する動作例について説明する。
【0044】
(動作例2)
図5および図6は、計測時間TMA,TMBは同一且つ一定で、第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2とが異なる例を示す。すなわち、本動作例において、制御部4は、第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2とが異なるように、第一駆動信号と第二駆動信号とを駆動信号生成部3から出力させる。第一時間間隔TINT1は、第一探査波の送信タイミングからその直後の第二探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。第二時間間隔TINT2は、第二探査波の送信タイミングからその直後の第一探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2とは、時間的に互いに隣接する。
【0045】
第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2とを異ならせることで、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMとは別の不検知帯UMの位置を、時間経過に伴って変動させることができる。これにより、不検知帯UMの発生に伴う物体検知上の不具合の発生が、良好に抑制され得る。
【0046】
図5および図6に示された例においては、第一時間間隔TINT1よりも第二時間間隔TINT2の方が長い。具体的には、本例においては、第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2との差ΔTは、検知不能時間TUMA,TUMBと同一値すなわち2msである。
【0047】
図5を参照すると、時刻T21にて送受信制御が開始する。すると、第一探査波が、計測時間TMA=40ms周期で送信される。また、第二探査波が、計測時間TMB=40ms周期で送信される。第一探査波と第二探査波とは、交互に発信される。
【0048】
1回目の第一探査波の受信制御A1において、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T21から2msの期間、1回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMIが発生する。また、時刻T21から20ms後の時刻T22から2msの期間、1回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。
【0049】
このように、時刻T21から計測時間TMA=40msの間に、2回の検知不能時間TUMが発生する。これを図6に示されている検知範囲に対応させると、以下の通りとなる。すなわち、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMは、検知不能時間TUMIに対応する。また、トランスデューサ21から所定距離LM2離れた不検知帯UMは、検知不能時間TUMBに対応する。
【0050】
また、1回目の第二探査波の受信制御B1においても、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T22から2msの期間、1回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。また、時刻T22から22ms後の時刻T23から2msの期間、2回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAが発生する。この検知不能時間TUMAは、1回目の第一探査波の受信制御A1の終了後に発生する。
【0051】
このように、時刻T22から計測時間TMB=40msの間にも、2回の検知不能時間TUMが発生する。これを図6に示されている検知範囲に対応させると、以下の通りとなる。すなわち、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMは、検知不能時間TUMBに対応する。また、検知不能時間TUMAに対応する不検知帯UM2は、トランスデューサ21から所定距離「LM2+LUM1」離れた位置に発生する。すなわち、不検知帯UM2は、不検知帯UMよりもLUM1離れた位置に発生する。不検知帯UMと不検知帯UM2とは、円弧状の境界線にて互いに接するものの、重複はしない。
【0052】
上記の通り、本動作例においては、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMから離れた位置にて、互いに重複しない不検知帯UMと不検知帯UM2とが、交互に発生する。これにより、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMから離れた位置の不検知帯UMを、良好に分散させることが可能となる。
【0053】
なお、第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2との差ΔTは、検知不能時間TUMと同一値でなくてもよい。すなわち、ΔTを検知不能時間TUM以上とすることが可能である。この場合、制御部4は、ΔTが検知不能時間TUM以上となるように、第一駆動信号と第二駆動信号とを駆動信号生成部3から出力させる。これにより、不検知帯UMと不検知帯UM2との重複を回避することが可能となる。
【0054】
(動作例3)
図7および図8は、時間的に隣接する異種の探査波送信の時間間隔TINTが、図5および図6の例よりもさらに細かく変化する態様を示す。本動作例においては、互いに異なる3種類の時間間隔TINTが、周期的に適用される。すなわち、互いに異なる第一時間間隔TINT1と第二時間間隔TINT2と第三時間間隔TINT3とが順に適用される。同様に、互いに異なる第四時間間隔TINT4と第五時間間隔TINT5と第六時間間隔TINT6とが順に適用される。TINT1=TINT4であり、TINT2=TINT5であり、TINT3=TINT6である。具体的には、TINTp=20ms,p=3n-2である。TINTq=22ms,q=3n-1である。TINTr=24ms,r=3nである。nは自然数である。なお、本動作例においても、計測時間TMA,TMBは同一且つ一定である。
【0055】
換言すれば、本動作例においては、時間間隔TINTXと時間間隔TINTYとが異なる。Xは奇数の自然数(すなわち1,3,5…)である。Yは偶数の自然数(すなわち2,4,6…)である。時間間隔TINTXは第一探査波の送信タイミングからその直後の第二探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。時間間隔TINTYは第二探査波の送信タイミングからその直後の第一探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。時間間隔TINTXと時間間隔TINTYとは、時間的に互いに隣接する。これは、図5および図6の例と同様である。
【0056】
一方、本動作例においては、時間的に互いに隣接する時間間隔TINTX同士が異なる。同様に、時間的に互いに隣接する時間間隔TINTY同士が異なる。すなわち、制御部4は、先行時間間隔と後行時間間隔とが異なるように、第一駆動信号と第二駆動信号とを駆動信号生成部3から出力させる。先行時間間隔は、今回の第一探査波の送信タイミングからその直後の第二探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。後行時間間隔は、次回の第一探査波の送信タイミングからその直後の第二探査波の送信タイミングまでの時間間隔である。
【0057】
先行時間間隔と後行時間間隔との差は、検知不能時間TUM以上である。すなわち、制御部4は、先行時間間隔と後行時間間隔との差が検知不能時間TUM以上となるように、第一駆動信号と第二駆動信号とを駆動信号生成部3から出力させる。具体的には、第一時間間隔TINT1よりも第三時間間隔TINT3の方が長く、両者の差は検知不能時間TUMの2倍の4msである。一方、第三時間間隔TINT3よりも第五時間間隔TINT5の方が短く、両者の差は検知不能時間TUMと同一値すなわち2msである。また、第五時間間隔TINT5よりも第七時間間隔TINT7の方が短く、両者の差は検知不能時間TUMと同一値すなわち2msである。なお、図示の簡略化のため、第七時間間隔TINT7=20msは図示が省略されている。
【0058】
同様に、第二時間間隔TINT2よりも第四時間間隔TINT4の方が短く、両者の差は検知不能時間TUMと同一値すなわち2msである。一方、第四時間間隔TINT4よりも第六時間間隔TINT6の方が長く、両者の差ΔTは検知不能時間TUMの2倍の4msである。さらに、第六時間間隔TINT6よりも第八時間間隔TINT8の方が短く、両者の差は検知不能時間TUMと同一値すなわち2msである。なお、図示の簡略化のため、第八時間間隔TINT8=22msは図示が省略されている。
【0059】
さらに、本動作例においては、時間的に互いに隣接する時間間隔TINTkと時間間隔TINTk+1との差ΔTが検知不能時間TUM以上である。kは自然数である。具体的には、第一時間間隔TINT1よりも第二時間間隔TINT2の方が長く、両者の差ΔTは検知不能時間TUMと同一値すなわち2msである。同様に、第二時間間隔TINT2よりも第三時間間隔TINT3の方が長く、両者の差ΔTは検知不能時間TUMと同一値すなわち2msである。一方、第三時間間隔TINT3よりも第四時間間隔TINT4の方が短く、両者の差ΔTは検知不能時間TUMの2倍の4msである。
【0060】
図7を参照すると、時刻T31にて送受信制御が開始する。すると、第一探査波が、計測時間TMA=40ms周期で送信される。また、第二探査波が、計測時間TMB=40ms周期で送信される。第一探査波と第二探査波とは、交互に発信される。
【0061】
1回目の第一探査波の受信制御A1において、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T31から2msの期間、1回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMIが発生する。また、時刻T31から20ms後の時刻T32から2msの期間、1回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。
【0062】
また、1回目の第二探査波の受信制御B1においても、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T32から2msの期間、1回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。また、時刻T32から22ms後の時刻T33から2msの期間、2回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAが発生する。この検知不能時間TUMAは、1回目の第一探査波の受信制御A1の終了後に発生する。さらに、時刻T33から24ms後の時刻T34から2msの期間、2回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。
【0063】
さらに、2回目の第一探査波の受信制御A2においても、2回の検知不能時間TUMが発生する。具体的には、まず、時刻T33から2msの期間、2回目の第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAが発生する。また、時刻T33から24ms後の時刻T34から2msの期間、2回目の第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBが発生する。
【0064】
これらを図8に示されている検知範囲に対応させると、以下の通りとなる。すなわち、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMは、検知不能時間TUMIに対応する。また、トランスデューサ21から所定距離LM2離れた不検知帯UMは、時刻T32における検知不能時間TUMBに対応する。また、時刻T33における検知不能時間TUMAに対応する不検知帯UM2は、トランスデューサ21から所定距離「LM2+LUM1」離れた位置に発生する。すなわち、不検知帯UM2は、不検知帯UMよりもLUM1離れた位置に発生する。不検知帯UMと不検知帯UM2とは、円弧状の境界線にて互いに接するものの、重複はしない。不検知帯UM2の幅LUM2は約0.35mであり、不検知帯UMの幅LUM1と同一である。
【0065】
さらに、時刻T34における検知不能時間TUMBに対応する不検知帯UM3は、トランスデューサ21から所定距離「LM2+LUM1+LUM2」離れた位置に発生する。すなわち、不検知帯UM3は、不検知帯UM2よりもLUM2離れた位置に発生する。不検知帯UM2と不検知帯UM3とは、円弧状の境界線にて互いに接するものの、重複はしない。不検知帯UM3の幅LUM3は約0.35mであり、不検知帯UMの幅LUM1および不検知帯UM2の幅LUM2と同一である。
【0066】
上記の通り、本動作例においては、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMから離れた位置にて、互いに重複しない不検知帯UM,UM2およびUM3が、順に発生する。これにより、トランスデューサ21の直近の不検知帯UMから離れた位置の不検知帯UMを、良好に分散させることが可能となる。
【0067】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0068】
物体検知装置1は、車載すなわち車両に搭載されるものに限定されない。すなわち、例えば、物体検知装置1は、船舶あるいは飛行体にも搭載され得る。
【0069】
物体検知装置1は、単一のトランスデューサ21によって超音波を送受信可能な構成に限定されない。すなわち、例えば、送信回路22に電気接続された送信用のトランスデューサ21と、受信回路23に電気接続された受信用のトランスデューサ21とが、並列に設けられていてもよい。このような送受別体型の構成では、送信用のトランスデューサ21で送信された音波が受信用のトランスデューサ21へ直接受信されるため、送受一体型の構成と同様に不検知帯が発生する。不検知帯の時間的な位置Tdelayは、送信用のトランスデューサ21と受信用のトランスデューサ21との間の距離をLGAPとしたとき、Tdelay=LGAP/cとなる。また、音波を送信するとき、大きな電力を使用するため、電源ラインに電圧変動、電流変動が発生する場合がある。この変動が、受信側にて増幅されて受信信号に現れることで、不検知帯が発生する場合もある。このように、送受別体型の構成であっても、不検知帯が発生するため、本発明は有効である。
【0070】
第一探査波と第二探査波とが異なるチャープ符号化状態を有する場合の、第一駆動信号および第二駆動信号の例は、図2Aおよび図2Bに示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、図2Aおよび図2Bに示された具体例における波形は、適宜変更され得る。
【0071】
また、第一探査波および第二探査波のうちの一方は、チャープ符号化されていなくてもよい。すなわち、例えば、第一探査波がアップチャープ変調またはダウンチャープ変調を有する一方で、第二探査波は一定周波数を有していてもよい。この場合の一定周波数は、典型的には、共振周波数と略一致する周波数、あるいは、共振周波数近辺の周波数である。共振周波数「近辺」の周波数は、例えば、共振周波数の基準値を中心とした所定の周波数範囲に含まれる。基準値は、所定の基準温度(例えば25℃)における共振周波数である。所定の周波数範囲は、基準温度から環境温度が所定程度変動することによる周波数変動範囲である。
【0072】
符号化は、チャープ符号化に限定されない。例えば、符号化は、位相変調を用いたものであってもよい。すなわち、駆動信号生成部3は、互いに異なる位相変調状態を有する複数の探査波を発振するための、複数の駆動信号を生成するように構成されていてもよい。
【0073】
図9Aおよび図9Bは、第一探査波と第二探査波とが異なる位相変調状態を有する場合の例を示す。本例においては、第一探査波は、位相変調されていない。一方、第二探査波は、位相変調されている。これに対応して、第一駆動信号は、図9Aに示されているように、位相変調部分を有していない。一方、第二駆動信号は、図9Bに示されているように、位相変調部分を有している。かかる構成においては、駆動信号生成部3は、第一探査波と第二探査波とが異なる位相変調状態を有するように、第一駆動信号および第二駆動信号を生成する。
【0074】
あるいは、符号化は、オンオフ変調を用いたものであってもよい。すなわち、駆動信号生成部3は、互いに異なるオンオフ変調状態を有する複数の探査波を発振するための、複数の駆動信号を生成するように構成されていてもよい。
【0075】
図10Aおよび図10Bは、第一探査波と第二探査波とが異なるオンオフ変調状態を有する場合の例を示す。かかる構成においては、駆動信号生成部3は、第一探査波と第二探査波とが異なるオンオフ変調状態を有するように、第一駆動信号および第二駆動信号を生成する。
【0076】
本例においては、第一探査波は、オンオフ変調されている。これに対応して、第一駆動信号は、図10Aに示されているように、第一探査波の発信開始時刻TS1から発信終了時刻TE1までの間に、共振周波数の励振が多数回オンオフされる。一方、第二探査波は、オンオフ変調されていない。これに対応して、第二駆動信号は、図10Bに示されているように、第二探査波の発信開始時刻TS2から発信終了時刻TE2までの間に、共振周波数の励振が連続して行われる。
【0077】
第一探査波の送信に伴う検知不能時間TUMAと、第二探査波の送信に伴う検知不能時間TUMBとは、異なっていてもよい。
【0078】
上記の各具体例においては、時間的に隣接する異種の探査波送信の時間間隔TINTは、計測時間TMの略半分であった。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、時間間隔TINTは、計測時間TMの略1/3であってもよい。
【0079】
あるいは、時間間隔TINTは、計測時間TMのG/Hでは表すことができない数値であってもよい。GおよびHは1~9の自然数である。具体的には、例えば、計測時間TM=40msである場合に、時間間隔TINT=13msであってもよい。この場合、3種類以上の探査波、および、これらの各々に対応する駆動信号が必要となる。
【0080】
制御部4および/または送受信部2の計算能力が低い構成においては、計測処理と信号処理とを同時に実行することができない。このため、このような構成においては、計測時間Tに加え、受信信号の処理のための時間である処理時間TProc等が必要となる。例えば、この処理時間TProcに対応する信号処理を第一探査波の計測時間TMA=40msの後に実施するとし、また、第二探査波の送信開始時刻を1回目の第一探査波の送信開始時刻T11から20ms後とした場合を想定する。この場合、第一探査波の計測処理を実行するため、第二探査波の計測時間TMBは20msで打ち切りとなる。この場合、20msに相当する0~3.4mの範囲の計測は2回の計測共実施され、計測時間20ms~40msに相当する3.4m~6.8mの計測は2回に1回実施されることになる。この構成においても、本発明は有効である。
【0081】
送信回路22、受信回路23等の各部の構成も、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、デジタル/アナログ変換回路は、送信回路22に代えて、駆動信号生成部3に設けられていてもよい。
【0082】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0083】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0084】
1 物体検知装置
2 送受信部
21 トランスデューサ
22 送信回路
23 受信回路
3 駆動信号生成部
4 制御部
B 物体
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B