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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】結合ピン着脱治具及び結合ピン着脱方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/82 20060101AFI20220809BHJP
   E02F 3/38 20060101ALI20220809BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20220809BHJP
   B66C 23/70 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B66C23/82 B
E02F3/38 B
E02F9/00 F
B66C23/70 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018229621
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090379
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】米田 有介
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-181789(JP,U)
【文献】特開2005-133507(JP,A)
【文献】特開2008-280798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00-23/94
E02F 3/38;
9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて対向する一対の第1板状部を有し、この一対の第1板状部に同軸の第1ピン穴が形成され、一方の上記第1板状部に上記第1ピン穴の周縁から対向方向外側に突出する環状の突出部が形成され、上記突出部の径方向に第1係止孔が形成された第1コネクターと、上記一対の第1板状部間に挿入され、上記第1ピン穴と同軸に配置される第2ピン穴が形成された第2板状部を有する第2コネクターとを着脱するために、上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に結合ピンを挿抜可能な結合ピン着脱治具であって、
上記突出部に外嵌可能に構成され、径方向に貫通する第2係止孔を有する環状の固定部と、
上記第1係止孔及び第2係止孔に係合可能な係合部材と、
上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴と同軸となり得るねじ穴が貫通して形成され、上記固定部とこの固定部の軸方向に間隔を空けて配置される保持部と、
上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴よりも下側で上記固定部及び保持部を連結すると共に、挿抜時に上記結合ピンを下方から支持可能な支持部と、
上記ねじ穴に螺合する押しボルトと
を備える結合ピン着脱治具。
【請求項2】
上記固定部に、その内周面から径方向内側に突出する係合突起が形成されており、この係合突起が、上記突出部の突出方向先端側から基端側に向けて形成される切欠きに係合可能に構成されている請求項1に記載の結合ピン着脱治具。
【請求項3】
上記第2係止孔及び係合突起が上記固定部の径方向の対向位置に配設される請求項2に記載の結合ピン着脱治具。
【請求項4】
上記支持部が、上記結合ピンの挿抜方向に延びる樋状である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の結合ピン着脱治具。
【請求項5】
上記支持部の内周縁が、上記固定部の内周縁よりも中心寄りに位置する請求項4に記載の結合ピン着脱治具。
【請求項6】
上記押しボルトの先端側に螺合され、上記押しボルトを結合ピンに一体化する押圧部材をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の結合ピン着脱治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の結合ピン着脱治具の上記固定部を第1コネクターの突出部に係合する工程と、
インパクトレンチを用いて上記押しボルトをねじ込み又はねじ戻すことにより上記結合ピンを上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に挿抜する工程と
を備える結合ピン着脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合ピン着脱治具及び結合ピン着脱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大型クレーンの上部旋回体の旋回フレームとブームとの接続や、クレーンアタッチメントの構成要素間の接続には、これらの部材を分離可能に接続できるようこれらの部材の重複部分に形成された結合穴に結合ピンを挿入する接続構造が広く採用されている。
【0003】
一般にこれら複数の部材間の接続には、間隔を空けて対向し、同軸の第1ピン穴が形成された一対の第1板状部を有する第1コネクターと、上記一対の第1板状部間に挿入され、第1ピン穴と同軸に配置される第2ピン穴が形成された第2板状部を有する第2コネクターとが用いられる。この第1コネクターと第2コネクターとの接続は、同軸に配置された一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に結合ピンを挿入することで行われる。
【0004】
このような第1コネクターと第2コネクターとの接続構造として、例えば一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に挿入される結合ピン(挿入ピン)と、この結合ピンを出没するための油圧シリンダーと、この結合ピンを突出方向に付勢するスプリングとを有する連結ピンを用いた構造が発案されている(特開2012-41148号公報参照)。
【0005】
上記公報に記載の連結ピンは、油圧シリンダーの伸縮によって結合ピンを出没可能に構成されており、結合ピンの突出状態をスプリングによって保持することで結合ピンを一対の第1ピン穴及び第2ピン穴内に維持可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-41148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報に記載の連結ピンは、油圧動力を用いており、結合ピンを挿抜するための油圧シリンダーが必要である。そのため、この連結ピンは重量が大きく、人手で取り扱うことは困難である。また、この連結ピンは、油圧タンク、ポンプ等の動力源が必要となるため、製造コストが高くなる。
【0008】
上記不都合に鑑みて、本発明は、低コストでかつ容易に結合ピンを挿抜可能な結合ピン着脱治具及び結合ピン着脱方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る結合ピン着脱治具は、間隔を空けて対向する一対の第1板状部を有し、この一対の第1板状部に同軸の第1ピン穴が形成され、一方の上記第1板状部に上記第1ピン穴の周縁から対向方向外側に突出する環状の突出部が形成され、上記突出部の径方向に第1係止孔が形成された第1コネクターと、上記一対の第1板状部間に挿入され、上記第1ピン穴と同軸に配置される第2ピン穴が形成された第2板状部を有する第2コネクターとを着脱するために、上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に結合ピンを挿抜可能な結合ピン着脱治具であって、上記突出部に外嵌可能に構成され、径方向に貫通する第2係止孔を有する環状の固定部と、上記第1係止孔及び第2係止孔に係合可能な係合部材と、上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴と同軸となり得るねじ穴が貫通して形成され、上記固定部とこの固定部の軸方向に間隔を空けて配置される保持部と、上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴よりも下側で上記固定部及び保持部を連結すると共に、挿抜時に上記結合ピンを下方から支持可能な支持部と、上記ねじ穴に螺合する押しボルトとを備える。
【0010】
当該結合ピン着脱治具は、第1コネクターの第1板状部に設けられる環状の突出部に環状の固定部を外嵌し、上記突出部に形成される第1係止孔及び上記固定部に形成される第2係止孔に係合部材を係合することで、上記第1コネクターに取り付けることができる。当該結合ピン着脱治具は、上記固定部と間隔を空けて配置される保持部に形成されるねじ穴に押しボルトを螺合し、この押しボルトをねじ込む方向に回転させることによって、結合ピンを一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に挿入することができる。また、当該結合ピン着脱治具は、上記押しボルトをねじ戻す方向に回転させることで、結合ピンを一対の第1ピン穴及び第2ピン穴から抜き出すことができる。つまり、当該結合ピン着脱治具は、油圧動力を用いず、押しボルトのねじ込み及びねじ戻し作業によって結合ピン単体を挿抜可能にするものである。従って、当該結合ピン着脱治具は、低コストでかつ容易に結合ピンを挿抜することができる。
【0011】
上記固定部に、その内周面から径方向内側に突出する係合突起が形成されており、この係合突起が、上記突出部の突出方向先端側から基端側に向けて形成される切欠きに係合可能に構成されるとよい。このように、上記固定部に、その内周面から径方向内側に突出する係合突起が形成されており、この係合突起が、上記突出部の突出方向先端側から基端側に向けて形成される切欠きに係合可能に構成されることによって、上記固定部を上記突出部に確実に固定することができる。
【0012】
上記第2係止孔及び係合突起が上記固定部の径方向の対向位置に配設されるとよい。このように、上記第2係止孔及び係合突起が上記固定部の径方向の対向位置に配設されることによって、上記固定部の突出部への固定がさらに確実となる。
【0013】
上記支持部が、上記結合ピンの挿抜方向に延びる樋状であるとよい。このように、上記支持部が上記結合ピンの挿抜方向に延びる樋状であることによって、上記結合ピンの挿抜時にこの結合ピンを上記支持部によってガイドすることができる。
【0014】
上記支持部の内周縁が、上記固定部の内周縁よりも中心寄りに位置するとよい。このように、上記支持部の内周縁が上記固定部の内周縁よりも中心寄りに位置することによって、上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴の周縁と上記支持部の内周縁との間の段差を小さくし、上記結合ピンを上記支持部によって容易かつ確実にガイドすることができる。
【0015】
当該結合ピン着脱治具は、上記押しボルトの先端側に螺合され、上記押しボルトを結合ピンに一体化する押圧部材をさらに備えるとよい。このように、上記押しボルトの先端側に螺合され、上記押しボルトを結合ピンに一体化する押圧部材をさらに備えることによって、上記押しボルトの軸回りに結合ピンが回転することを防ぎ、上記結合ピンを容易かつ確実に挿抜することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた本発明に係る結合ピン着脱方法は、当該結合ピン着脱治具の上記固定部を第1コネクターの突出部に係合する工程と、インパクトレンチを用いて上記押しボルトをねじ込み又はねじ戻すことにより上記結合ピンを上記一対の第1ピン穴及び第2ピン穴に挿抜する工程とを備える。
【0017】
当該結合ピン着脱方法は、上記構成を備える当該結合ピン着脱治具を用いることで、低コストでかつ容易に結合ピンを挿抜することができる。
【0018】
なお、本発明において、「下」とは、第1コネクターの突出部に結合ピン着脱治具を取り付けた状態における「下」を意味する。「樋状」とは、周方向の一部分を軸方向に沿って切り欠いた部分筒状を意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る結合ピン着脱治具及び結合ピン着脱方法は、低コストでかつ容易に結合ピンを挿抜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る結合ピン着脱治具の斜め上側から見た模式的斜視図である。
図2図1の結合ピン着脱治具を用いて結合ピンにより接続された接続構造の一例を示す模式図である。
図3図2の接続構造の接続部分を示す模式的拡大斜視図である。
図4図1の結合ピン着脱治具の本体をその斜め下側から見た模式的斜視図である。
図5図3の接続部分に図1の結合ピン着脱治具を取り付けた状態を示す模式的斜視図である。
図6図1の結合ピン着脱治具を用いて図5の接続部分から結合ピンを抜き出した状態を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0022】
[結合ピン着脱治具]
図1に、本発明の一実施形態に係る結合ピン着脱治具1を示す。
【0023】
当該結合ピン着脱治具1について説明するにあたり、当該結合ピン着脱治具1を用いて結合ピンにより接続された接続構造の一例として、図2及び図3に建設機械のブーム21と旋回フレーム22(上部旋回体に設けられる旋回フレーム)との接続構造を示す。なお、上記以外の接続構造としては、例えばタワークレーンのブームとジブとの接続構造等が挙げられる。
【0024】
図2及び図3の接続構造において、ブーム21の旋回フレーム22と接続される側の端部には第1コネクター21aが形成され、旋回フレーム22のブーム21との接続部には第2コネクター22aが形成されている。第1コネクター21a及び第2コネクター22aは、結合ピン3によって着脱可能に接続されている。
【0025】
第1コネクター21aは、間隔を空けて対向する一対の第1板状部31a,31bを有する。一対の第1板状部31a,31bには、同軸の第1ピン穴Hが形成され、一方の第1板状部31aに第1ピン穴Hの周縁から対向方向外側に突出する環状の突出部32が形成されている。突出部32は例えば円筒状である。突出部32の径方向には第1係止孔32aが形成されている。また、突出部32には、突出方向先端側から基端側に向けて切欠き32bが形成されている。第1係止孔32aと切欠き32bとは突出部32の径方向の対向位置に形成されている。
【0026】
第2コネクター22aは、第1コネクター21aの一対の第1板状部31a,31b間に挿入され、第1ピン穴Hと同軸に配置される第2ピン穴(不図示)が形成された第2板状部33を有する。
【0027】
一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴には、結合ピン3が挿入されている。結合ピン3は一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿入される軸部3aを有しており、この軸部3aの軸方向の一端の中心部には後述する押しボルト15の先端部と螺合可能な挿抜用ねじ穴3bが形成されている。第1コネクター21aの第1係止孔32a及び切欠き32bには、結合ピン3を径方向に貫通した固定ピンPの両端部が係止されており、接続構造からの結合ピン3の脱落が防止されている。
【0028】
当該結合ピン着脱治具1は、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に結合ピン3を挿抜可能に構成されている。図1及び図4に示すように、当該結合ピン着脱治具1は、突出部32に外嵌可能に構成され、径方向に貫通する第2係止孔11bを有する環状の固定部11と、第1係止孔32a及び第2係止孔11bに係合可能な係合部材12と、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴と同軸となり得るねじ穴13aが貫通して形成され、固定部11とこの固定部11の軸方向に間隔を空けて配置される保持部13と、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴よりも下側で固定部11及び保持部13を連結すると共に、挿抜時に結合ピン3を下方から支持可能な支持部14と、ねじ穴13aに螺合する押しボルト15とを備える。また、当該結合ピン着脱治具1は、押しボルト15の先端側に螺合され、押しボルト15を結合ピン3に一体化する押圧部材16を備える。固定部11、保持部13及び支持部14は一体的に形成されており(つまり、1つの部材として形成されており)、当該結合ピン着脱治具1の本体2を構成している。本体2は、例えば金属を主成分とする。この金属としては、例えばステンレス鋼、鉄鋼等が挙げられる。なお、「主成分」とは、質量換算で最も含有量の大きい成分をいう。当該結合ピン着脱治具1は、本体2が固定部11、保持部13及び支持部14から構成されるので、軽量化が容易であり、かつ比較的安価に製造することができる。
【0029】
当該結合ピン着脱治具1は、第1コネクター21aの第1係止孔32a及び切欠き32bから固定ピンPを抜き出した状態で突出部32に取り付けられる。当該結合ピン着脱治具1は、図5に示すように、固定部11を突出部32に外嵌することで突出部32に取り付けられる。
【0030】
(固定部)
固定部11は、突出部32に外嵌可能な環状の係合部11aを有する。係合部11aの内周面は突出部32の外周面に対応した形状とされる。本実施形態において係合部11aは円筒状である。第2係止孔11bは、係合部11aをその径方向に貫通している。具体的には、第2係止孔11bは、係合部11aの下端部を上下方向に貫通している。第2係止孔11bは、好ましくはねじ穴である。第2係止孔11bは、突出部32の第1係止孔32aと連通するよう、固定部11が突出部32に外嵌した状態で第1係止孔32aと重なり合う位置に形成されている。
【0031】
固定部11は、係合部11aの内周面から径方向内側に突出する係合突起11cを有する。図5に示すように、係合突起11cは、突出部32の突出方向先端側から基端側に向けて形成される切欠き32bに係合可能に構成されている。係合突起11c及び第2係止孔11bは、固定部11(より詳しくは係合部11a)の径方向の対向位置に配置されている。つまり、本実施形態において、係合突起11cは、係合部11aの内周面の上端部から下方に突出するよう構成されている。なお、「上」とは、第1コネクターの突出部に結合ピン着脱治具を取り付けた状態における「上」を意味する。
【0032】
係合突起11cは、長手方向が係合部11aの軸方向と平行な略直方体状である。係合突起11cの突出高さは、突出部32の厚さ以下である。
【0033】
(係合部材)
係合部材12は、第1係止孔32a及び第2係止孔11bに係合することで、固定部11を突出部32に固定する。係合部材12は、第1係止孔32a及び第2係止孔11bに挿入される軸部を有する。第2係止孔11bが上述のねじ穴である場合、係合部材12はボルトであることが好ましい。この構成によると、第2係止孔11bが係合部11aの下端部に形成される場合であっても、係合部材12を第2係止孔11bに螺合することで、係合部材12の脱落を容易かつ確実に防止することができる。
【0034】
当該結合ピン着脱治具1は、係合部材12の係合によって、固定部11を1点で突出部32に固定することができる。これにより、当該結合ピン着脱治具1は、固定部11の周方向及び軸方向の移動を規制することができる。さらに、当該結合ピン着脱治具1は、この係合部材12の係合に加え、係合突起11cが突出部32の切欠き32bに係合されるよう構成されている。これにより、当該結合ピン着脱治具1は、固定ピンPを係止するために設けた切欠き32bを利用して、固定部11の移動をより確実に防止し、この固定部を突出部に確実に固定することができる。
【0035】
加えて、当該結合ピン着脱治具1は、第2係止孔11b及び係合突起11cが係合部11aの径方向の対向位置、特に本体2が脱落する場合に支点及び作用点となりやすい上下方向に対向する位置、に配設されているので、固定部11の突出部32への固定がさらに確実となる。
【0036】
(保持部)
保持部13は、その面が固定部11の軸方向と垂直となる板部材であり、厚さ方向に貫通するねじ穴13aを有する。ねじ穴13aは、押しボルト15の基端側に螺合しつつ、この押しボルト15の先端部が結合ピン3の挿抜用ねじ穴3bに螺合できるよう固定部11の中心軸と同軸に形成されている。保持部13は、ねじ穴13aを正確な向きに形成できるよう十分な厚さを有することが好ましい。
【0037】
(支持部)
支持部14は、本体2が突出部32に取り付けられた状態で、結合ピン3の挿抜方向に延びる樋状である。支持部14の長手方向長さは、その内周面に結合ピン3を載置できるよう結合ピン3の軸方向長さより大きい。支持部14は、内周面上で長手方向に結合ピン3を摺動させつつ、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿抜させることができるよう構成されている。当該結合ピン着脱治具1は、支持部14が結合ピン3の挿抜方向に延びる樋状であることによって、結合ピン3の挿抜時に結合ピン3を長手方向に適切にガイドすることができる。
【0038】
図4に示すように、支持部14は、保持部13と接続される側の端部に水抜き用の貫通孔14aを有する。当該結合ピン着脱治具1は、使用状態において、自重や結合ピン3の重さ等に起因して保持部13側が下方に撓みやすい。この点において、当該結合ピン着脱治具1は、支持部14が保持部13と接続される側の端部に貫通孔14aを有することによって、支持部14上に溜まった水を貫通孔14aから容易に排出することができる。これにより、当該結合ピン着脱治具1は、本体2の腐食を容易に抑制することができる。
【0039】
支持部14の内周縁は、固定部11(より詳しくは係合部11a)の内周縁よりも中心寄りに位置することが好ましい。より詳しくは、支持部14の内周縁は、突出部32の内周縁より中心寄りにならない範囲内で、固定部11の内周縁よりも中心寄りに位置することが好ましい。この構成によると、当該結合ピン着脱治具1は、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴の周縁と支持部14の内周縁との間の段差を小さくし、結合ピン3を支持部14によって容易かつ確実にガイドすることができる。なお、当該結合ピン着脱治具1は、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴の周縁と支持部14の内周縁との間の段差を小さくする観点から、支持部14の内周縁は、突出部32の内周縁と少なくとも部分的に面一であることも好ましい。
【0040】
(押しボルト)
押しボルト15は、先端部が結合ピン3の挿抜用ねじ穴3bに螺合可能に構成されている。押しボルト15は、先端部が固定部11側に位置し、頭部が固定部11と反対側に位置するよう基端側(頭部側)でねじ穴13aに螺合している。
【0041】
押しボルト15の頭部の形状としては、工具によって押しボルト15を回転することができる形状であればよく、一般的な六角ボルトの頭部の形状及び寸法を採用することが好ましい。六角ボルト用の工具は比較的大径用のものが広く流通しており、特にインパクトレンチに用いることができるソケットが入手しやすい。また、押しボルト15の頭部は、インパクトレンチの角ドライブ(凸型差込部)が直接係合する角穴を有するものであってもよい。
【0042】
また、押しボルト15は、ねじ部の径よりも小さい呼び径の六角ボルト用の頭部の形状を有するものとしてもよい。逆にいうと、押しボルト15には、入手可能な工具の呼び径よりも大きな呼び径のねじ部を採用して、ねじ部の折れ曲がりを防止することができる。
【0043】
(押圧部材)
押圧部材16は、押しボルト15の先端側に螺合され、結合ピン3の挿抜時に結合ピン3を押圧する。押圧部材16は、押しボルト15の先端部を挿抜用ねじ穴3bに螺合した際に、結合ピン3の軸部3aの軸方向の一端に当接する。押圧部材16は、例えばナットである。押圧部材16は、結合ピン3の軸部3aの一端を押圧することで、結合ピン3を押しボルト15に回転不能に固定する。当該結合ピン着脱治具1は、押圧部材16で結合ピン3を押圧することで、結合ピン3及び押しボルト15を一体的に回転させることができる。当該結合ピン着脱治具1は、押圧部材16で結合ピン3を押圧することで、押しボルト15と独立して押しボルト15の軸回りに結合ピン3が回転することを防ぎ、挿抜時における押しボルト15の結合ピン3からの抜け落ちを容易かつ確実に防止することができる。
【0044】
[結合ピン着脱方法]
図6を参照して、当該結合ピン着脱治具1を用いた結合ピン3の着脱方法について説明する。当該結合ピン着脱方法は、当該結合ピン着脱治具1の固定部11を第1コネクター21aの突出部32に係合する工程(係合工程)と、インパクトレンチXを用いて押しボルト15をねじ込み又はねじ戻すことにより結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿抜する工程(挿抜工程)とを備える。
【0045】
一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に結合ピン3を挿入する場合には、押しボルト15の先端部を軸部3aの挿抜用ねじ穴3bに螺合した状態で結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴側に押し込む。一方、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴から結合ピン3を抜き出す場合には、押しボルト15の先端部を軸部3aの挿抜用ねじ穴3bに螺合した状態で結合ピン3を保持部13側に引き出す。
【0046】
(係合工程)
上記係合工程では、まず第1コネクター21aと第2コネクター22aとを一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴が同軸となるよう嵌合する。続いて、上記係合工程では、必要に応じて固定ピンPを取り外したうえ、第1コネクター21aの突出部32の切欠き32bに固定部11の係合突起11cが係合するよう突出部32に固定部11を外嵌する。さらに、上記係合工程では、この外嵌状態で、第1係止孔32a及び第2係止孔11bに係合部材12を係合する。
【0047】
(挿抜工程)
上記挿抜工程について、まず一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に結合ピン3を挿入する場合について説明する。上記挿抜工程では、まず結合ピン3を支持部14の内周面上に載置し、押しボルト15の先端部を結合ピン3の挿抜用ねじ穴3bに螺合する。次に、上記挿抜工程では、押圧部材16を螺進させて結合ピン3の軸部3aの軸方向の一端に当接させる。さらに、上記挿抜工程では、インパクトレンチXにより押しボルト15を回転させてねじ込み、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に向かって押し込むことによって、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿入する。
【0048】
一方、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴から結合ピン3を抜き出す場合、上記挿抜工程では、まず押しボルト15の先端部を結合ピン3の挿抜用ねじ穴3bに螺合する。次に、上記挿抜工程では、押圧部材16を螺進させて結合ピン3の軸部3aの軸方向の一端に当接させる。さらに、上記挿抜工程では、インパクトレンチXにより押しボルト15を回転させてねじ戻し、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴から抜き出す。
【0049】
<利点>
当該結合ピン着脱治具1は、第1コネクター21aの第1板状部31aに設けられる突出部32に固定部11を外嵌し、突出部32に形成される第1係止孔32a及び固定部11に形成される第2係止孔11bに係合部材12を係合することで、第1コネクター21aに取り付けることができる。当該結合ピン着脱治具1は、保持部13に形成されるねじ穴13aに押しボルト15を螺合し、この押しボルト15をねじ込む方向に回転させることによって、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿入することができる。また、当該結合ピン着脱治具1は、押しボルト15をねじ戻す方向に回転させることで、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴から抜き出すことができる。つまり、当該結合ピン着脱治具1は、油圧動力を用いず、押しボルト15のねじ込み及びねじ戻し作業によって結合ピン3単体を挿抜可能にするものである。従って、当該結合ピン着脱治具1は、低コストでかつ容易に結合ピンを挿抜することができる。
【0050】
当該結合ピン着脱治具1は、突出部32への着脱が容易であり、比較的小さいスペースで結合ピン3を容易に挿抜することができる。
【0051】
当該結合ピン着脱治具1は、支持部14の内周面上で支持部14の長手方向に結合ピン3を摺動させつつ、結合ピン3を一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿抜させることができる。そのため、当該結合ピン着脱治具1によると、一対の第1ピン穴H及び第2ピン穴に挿入された結合ピン3を治具と反対側に押し出すスペースがない場合でも、結合ピン3を容易かつ確実に引き出すことができる。また、一般に建設機械用の結合ピン3は、重さが20kg程度又はそれ以上であり非常に重い。しかしながら、当該結合ピン着脱治具1によると、結合ピン3を支持部の内周面上に保持することができるので、人手によって結合ピン3を安全に挿抜することができる。
【0052】
当該結合ピン着脱方法は、当該結合ピン着脱治具1を用いることで、低コストでかつ容易に結合ピン3を挿抜することができる。
【0053】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0054】
例えば上記支持部は水抜き用の貫通孔を有しなくてもよい。当該結合ピン着脱治具は、結合ピンの着脱時に一時的に第1コネクターに取り付けられるものである。そのため、当該結合ピン着脱治具は、上記貫通孔を有しない場合でも結合ピンの着脱作業後に第1コネクターから取り外すことで、支持部上に溜まった水を容易に排出することができる。
【0055】
当該結合ピン着脱治具は、結合ピンの挿入専用品と、結合ピンの抜出専用品とが別々に提供されてもよい。この場合、例えば結合ピン挿入専用の着脱治具は、押しボルトの先端部に押圧部材を有しないものであってもよい。また、結合ピン挿入専用の着脱治具は、押しボルトの先端に結合ピンの軸部の一端に当接する当接部材を有していてもよい。この当接部材は、押しボルトの軸回りに回転自在に設けられることが好ましい。当該結合ピン着脱治具は、この当接部材によって結合ピンを挿入方向に押し込むことができる。
【0056】
上記固定部は、必ずしも上記係合突起を有していなくてもよい。当該結合ピン着脱治具は、第1コネクターの突出部の形状に対応した形状に構成することが可能である。そのため、例えば上記突出部が、突出方向先端側から基端側に向けて形成される切欠きを有しない場合であれば、当該結合ピン着脱治具は、上述の係合部材のみによって上記突出部に固定することも可能である。さらに、上記突出部が上記切欠きを有する場合であっても、この切欠きが上記第1係止孔と対向位置に配設されていない場合であれば、当該結合ピン着脱治具の上記第2係止孔及び係合突起は固定部の径方向の対向位置に配設されなくてもよい。加えて、上記突出部が径方向外側に突出する突起を有する場合であれば、当該結合ピン着脱冶具は上記固定部にこの突起に係合可能な切欠きが形成されてもよい。
【0057】
上述のように、当該結合ピン着脱冶具は、係合部材の脱落を防止する観点からは、上記第2係止孔がねじ穴であり、かつ上記係合部材がボルトであることが好ましい。但し、例えば上記第2係止孔が係合部の上端部に形成される場合等、係合部材の脱落のおそれが低い場合であれば、上記第2係止孔がねじ穴である必要はなく、また上記係合部材がボルトである必要はない。
【0058】
上述のように、上記支持部は、結合ピンをガイドしやすい観点から樋状であることが好ましい。しかしながら、例えば結合ピンが保持でき、結合ピンをガイドしなくても結合ピンの挿抜をスムーズに行える場合であれば、上記支持部は、複数の棒状部材や平板状部材等であってもよい。また、上記支持部が結合ピンを適切にガイドできる場合や結合ピンをガイドしなくても結合ピンの挿抜をスムーズに行える場合であれば、上記支持部の内周縁は上記固定部の内周縁よりも中心寄りに位置していなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る結合ピン着脱治具及び結合ピン着脱方法は、複数に分割されたブーム同士を連結するなど、建設機械における大型の結合ピンの挿抜に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 結合ピン着脱治具
2 本体
3 結合ピン
3a 軸部
3b 挿抜用ねじ穴
11 固定部
11a 係合部
11b 第2係止孔
11c 係合突起
12 係合部材
13 保持部
13a ねじ穴
14 支持部
14a 貫通孔
15 押しボルト
16 押圧部材
21 ブーム
21a 第1コネクター
22 旋回フレーム
22a 第2コネクター
31a,31b 第1板状部
32 突出部
32a 第1係止孔
32b 切欠き
33 第2板状部
H 第1ピン穴
P 固定ピン
X インパクトレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6