(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】腕金用鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20220809BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20220809BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A01M29/32
H02G7/00
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2018235415
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-182410(JP,A)
【文献】特開平09-191815(JP,A)
【文献】登録実用新案第3064702(JP,U)
【文献】特開2000-106809(JP,A)
【文献】特開2002-051684(JP,A)
【文献】特開2012-019755(JP,A)
【文献】特開2017-041977(JP,A)
【文献】特開2020-074689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
H02G 1/00 - 1/10
H02G 7/00 - 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱に固定した腕金に設置できる回転ローラ形の腕金用鳥害防止具であって、
円筒状の回転ローラ本体、及び、この回転ローラ本体の両端部から同軸上に突出した回転軸を有する回転ローラと、
帯板状の基板、及び、前記基板の両端部に固定した一対の支持板を有し、これらの支持板が前記回転ローラを回転自在に支持した取り付け具と、
前記腕金をその側面側から導入自在に対向配置した一組の把持片、及び、これらの把持片の基端部同士を連結した連結片を有するC形の支持金具と、を備え、
前記回転ローラは、風力で前記回転ローラ本体を回転させる風力回転手段を有し、
前記基板は、その底面から穿設した長方形の案内溝を有し、
前記支持金具は、
一方の前記把持片から立設し、前記案内溝に嵌合して前記取り付け具を支持すると共に、前記取り付け具を前記腕金の長手方向に沿ってスライド自在に案内する矩形の案内レールと、
他方の前記把持片から突出し、間接活線工事用の絶縁操作棒で把持できる把持部と、を有している、腕金用鳥害防止具。
【請求項2】
前記案内溝は、
長手方向に沿った一方の内壁に形成したV溝と、
長手方向に沿った他方の内壁に形成した円弧溝と、を有し、
前記案内レールは、
一方の側面に形成し、前記V溝に嵌合する山型突条と、
他方の側面に形成し、前記円弧溝に嵌合する半円弧状突条と、を有している、請求項1記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項3】
前記支持金具は、
両端部を一方の前記把持片に回動自在に連結した回動軸と、
頭部を前記回動軸にT字状に接合したボルト部材と、
前記ボルト部材のねじ部と螺合できる一つ以上のナット部材と、を更に備え、
他方の前記把持片は、先端縁から切り欠き、前記ボルト部材を外周方向から導入できる切り欠き部を有し、
前記切り欠き部に前記ボルト部材を導入した状態から、前記ナット部材を他方の前記把持片に締結することで、前記支持金具を前記腕金に固定できる、請求項1又は2記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項4】
一方の前記把持片は、前記案内レールの下方に配置された四角錐台状の傾斜カバーを更に備えている、請求項1から3のいずれかに記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項5】
前記風力回転手段は、少なくとも一方の前記回転軸に取り付けた風車からなる、請求項1から4のいずれかに記載の腕金用鳥害防止具。
【請求項6】
前記風力回転手段は、前記回転ローラ本体の外周に螺旋状に取り付けたリボンスクリューからなる、請求項1から4のいずれかに記載の腕金用鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕金用鳥害防止具に関する。特に、絶縁操作棒を用いて、無停電状態で電気工事を実施できる間接活線工事に適した腕金用鳥害防止具であって、カラス又は鳩などの鳥類が電柱に固定した腕金に営巣することで発生する鳥害を防止する腕金用鳥害防止具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電柱は、四角パイプ状の腕金を略水平状態で装架している。腕金は、ピン碍子を介して、架空送電線を支持している。カラス又は鳩などの鳥類が電柱に固定した腕金に営巣すると、鳥類の糞が電気装柱物に付着するなどの鳥害が発生する心配がある。このため、複数の傘の骨組み状の鳥害防止具、いわゆる、アンブレラボーン形の鳥害防止具を腕金に立設することで、鳥類の飛来を防止する鳥害対策が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、回転ローラを支持部材により回転自在に支持することにより、飛来した鳥が回転ローラ上に止まった瞬間、回転ローラが回転し、鳥が回転ローラ上に止まることを阻止する鳥害対策も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-117269号公報
【文献】実開平7-43813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14は、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具の構成を示す側面図である。
図15は、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具を拡大した状態で示す正面図である。なお、本願の
図14と
図15は、特許文献1の
図1と
図2に相当している。
【0006】
図14又は
図15を参照すると、従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具8は、真直に延びる円筒状の主軸部材81と二つの円環状の分岐部材82を備えている。又、鳥害防止具8は、長さの異なる複数の枝棒83と二つの管状のスリーブ84を備えている。
【0007】
図14又は
図15を参照すると、分岐部材82は、主軸部材81を内部に挿入できる。枝棒83の基端部は、分岐部材82の外周に固定されている。そして、複数の枝棒83は、分岐部材82の遠心方向に放射状に配置されると共に、それらの先端部が分岐部材82から下り傾斜した状態で配置されている。
【0008】
図14又は
図15を参照すると、スリーブ84は、主軸部材81を内部に挿入している。主軸部材81の基端部と下段の分岐部材82の間に、一方のスリーブ84を介在させることで、主軸部材81の基端部から下段の分岐部材82までの高さを規定できる。又、上段の分岐部材82と下段の分岐部材82の間に、他方のスリーブ84を介在させることで、上段の分岐部材82と下段の分岐部材82の間隔を規定できる。更に、主軸部材81の先端部に石突81aを締結することで、鳥害防止具8の構成部材を一体化できる。
【0009】
図14又は
図15を参照すると、鳥害防止具8は、支持金具85を更に備えている。支持金具85は、L字状に屈曲した支持部材85aとL字状に屈曲したボルト部材85bを有している。又、支持金具85は、ナット部材85cと三角体状の押え部材85dを有している。
【0010】
図15を参照すると、支持部材85aは、主軸部材81の基端部を挿通できる挿通孔を一片の先端部側に開口している。主軸部材81の基端部を前記挿通孔に挿通し、ナット部材91nを主軸部材81の基端部に締結することで、支持部材85aの先端部に鳥害防止具8を固定できる。又、支持部材85aの一片の基端部側は、腕金Aの上面に載置されると共に、支持部材85aの他片は、腕金Aの側面に対向配置されている。
【0011】
図15を参照すると、ボルト部材85bは、その一端部が支持部材85aの一片に係止されている。又、ボルト部材85bは、雄ねじ部を他端部側に螺設している。支持部材85aの他片とボルト部材85bの一端部側が腕金Aの両側面に対向配置された状態では、ボルト部材85bの他端部側は、押え部材85dを貫通すると共に、支持部材85aの他片から突出している。そして、ボルト部材85bの雄ねじ部にナット部材85cを締結することで、支持金具85を介して、鳥害防止具8を腕金Aに支持できる。なお、押え部材85dは、その上面が腕金Aの下面に当接している。
【0012】
図15を参照すると、腕金Aは、電柱Pに片持ち支持されている。又、腕金Aは、略水平状態に配置されている。腕金Aには、三つのピン碍子Piを略等間隔で配置している。
図14を参照すると、一対の腕金A・Aは、電柱Pを挟んで略平行に配置されている。
【0013】
図14又は
図15を参照すると、特許文献1による鳥害防止具8は、隣接し合う一組のピン碍子Pi・Piの中央部に配置されると共に、対向する一対の腕金A・Aの中央部に配置されているので、複数の枝棒83の先端がピン碍子Piに接触することなく、複数の枝棒83が四つのピン碍子Piよりも内側の領域を覆うように放射状に配置され、鳥類の大きさに拘らず営巣を確実に防止することができる、としている。
【0014】
又、
図14又は
図15を参照すると、特許文献1による鳥害防止具8は、複数の枝棒83が鉛直方向に間隔をあけて複数設けることができるので、複数の枝棒83の配置密度を小さくして、飛来する鳥類による営巣をより確実に防止することができる、としている。
【0015】
しかし、
図14又は
図15を参照すると、特許文献1による鳥害防止具8は、カラスなどが木の枝又は針金形のハンガーを落下させると、複数の枝棒83に絡まる心配がある。そして、針金形のハンガーが高圧配電線に接触し、地絡事故を引き起こす心配がある。又、これらの木の枝又は針金形のハンガーが複数の枝棒83に絡まることで、容易に営巣される心配がある。木の枝又は針金形のハンガーが容易に絡まない、腕金用鳥害防止具が求められている。
【0016】
図16は、従来技術による回転ローラ形の鳥害防止具の構成を示す図であり、
図16(A)は、回転ローラ形の鳥害防止具の斜視図、
図16(B)は、
図16(A)の拡大縦断面図である。なお、本願の
図16(A)と
図16(B)は、特許文献2の
図1と
図2に相当している。
【0017】
図16(A)を参照すると、従来技術による回転ローラ形の鳥害防止具9は、円筒状の回転ローラ91と一対の支持部材92・92を備えている。一対の支持部材92・92は、回転ローラ91の両端部を回転自在に支持している。
【0018】
図16(A)を参照すると、支持部材92は、アングル部材92aと段付き丸棒92bで構成している。段付き丸棒92bは、大径部921と小径部922を有している。アングル部材92aは、その一片の端部が大径部921の外周に接合されている。又、アングル部材92aは、その他片を所望の場所に設置できる。
【0019】
図16(A)を参照すると、小径部922は、軸受部材93を介して、回転ローラ91の両端部に嵌入されている。これにより、鳥害防止具9は、回転ローラ91の両端部を回転自在に支持している。
【0020】
図16(B)を参照して、回転ローラ91に鳥が止まると、鳥の自重による力Fは、回転ローラ91の仮想の中心Qを通る鉛直線上に作用することは考えられず、回転ローラ91の鉛直線と所定の角度θを有して、回転ローラ91の接線方向に回転ローラ91を回転させる分力F1が働く。
【0021】
したがって、特許文献2による鳥害防止具9は、飛来した鳥にとっては、回転ローラ91に止まった瞬間に回転ローラ91が回転し、回転ローラ91上で休息などができず、回転ローラ91が、いわゆる「いやな場所」として認識し学習することになる。これにより、特許文献2による鳥害防止具9は、「いやな場所」として学習した鳥が飛来することなく、結果的に鳥を追い払うことができる、としている。
【0022】
特許文献2による鳥害防止具9を腕金に設置すれば、カラス又は鳩などの鳥類が腕金に営巣することで発生する鳥害を防止することを期待できる。しかし、電柱に固定した腕金は、屋外に設置されているので、鳥害防止具9を長期間放置しておくと、回転ローラ91が風雨に晒されて、回転ローラ91の回転が困難になるという問題がある。
【0023】
木の枝などが容易に絡まること無く、かつ、経年変化により、回転ローラの回転が困難にならないように、セルフメンテナンス(自己修復)できる回転ローラ形の腕金用鳥害防止具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0024】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、木の枝などが容易に絡まること無く、かつ、経年変化により、回転ローラの回転が困難にならないように、自己修復できる回転ローラ形の腕金用鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、回転ローラと、回転ローラを回転自在に支持する取り付け具と、間接活線工事用の絶縁操作棒で腕金に取り付けできる支持金具で腕金用鳥害防止具を構成し、回転ローラには、風力で回転ローラ本体を回転させる風力回転手段を設けることで、上記の課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな腕金用鳥害防止具を発明するに至った。
【0026】
(1)本発明による腕金用鳥害防止具は、電柱に固定した腕金に設置できる回転ローラ形の腕金用鳥害防止具であって、円筒状の回転ローラ本体、及び、この回転ローラ本体の両端部から同軸上に突出した回転軸を有する回転ローラと、帯板状の基板、及び、前記基板の両端部に固定した一対の支持板を有し、これらの支持板が前記回転ローラを回転自在に支持した取り付け具と、前記腕金をその側面側から導入自在に対向配置した一組の把持片、及び、これらの把持片の基端部同士を連結した連結片を有するC形の支持金具と、を備え、前記回転ローラは、風力で前記回転ローラ本体を回転させる風力回転手段を有し、前記基板は、その底面から穿設した長方形の案内溝を有し、前記支持金具は、一方の前記把持片から立設し、前記案内溝に嵌合して前記取り付け具を支持すると共に、前記取り付け具を前記腕金の長手方向に沿ってスライド自在に案内する矩形の案内レールと、他方の前記把持片から突出し、間接活線工事用の絶縁操作棒で把持できる把持部と、を有している。
【0027】
(2)前記案内溝は、長手方向に沿った一方の内壁に形成したV溝と、長手方向に沿った他方の内壁に形成した円弧溝と、を有し、前記案内レールは、一方の側面に形成し、前記V溝に嵌合する山型突条と、他方の側面に形成し、前記円弧溝に嵌合する半円弧状突条と、を有していることが好ましい。
【0028】
(3)前記支持金具は、両端部を一方の前記把持片に回動自在に連結した回動軸と、頭部を前記回動軸にT字状に接合したボルト部材と、前記ボルト部材のねじ部と螺合できる一つ以上のナット部材と、を更に備え、他方の前記把持片は、先端縁から切り欠き、前記ボルト部材を外周方向から導入できる切り欠き部を有し、前記切り欠き部に前記ボルト部材を導入した状態から、前記ナット部材を他方の前記把持片に締結することで、前記支持金具を前記腕金に固定できることが好ましい。
【0029】
(4)一方の前記把持片は、前記案内レールの下方に配置された四角錐台状の傾斜カバーを更に備えていることが好ましい。
【0030】
(5)前記風力回転手段は、少なくとも一方の前記回転軸に取り付けた風車からなってもよい。
【0031】
(6)前記風力回転手段は、前記回転ローラ本体の外周に螺旋状に取り付けたリボンスクリューからなってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明による腕金用鳥害防止具は、円筒状の回転ローラ本体を有する回転ローラと、回転ローラを回転自在に支持する取り付け具と、間接活線工事用の絶縁操作棒で腕金に取り付けできる支持金具と、を備え、回転ローラは、風力で回転ローラ本体を回転させる風力回転手段を設けているので、回転ローラ本体が風力で回転することで、木の枝などが容易に絡まること無く、かつ、経年変化により、回転ローラの回転が困難にならないように、自己修復できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す図であり、
図2(A)は、腕金用鳥害防止具の正面図、
図2(B)は、腕金用鳥害防止具の右側面図である。
【
図3】第1実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視図であり、回転ローラ及び取り付け具と支持金具を分離した状態図である。
【
図4】第1実施形態による腕金用鳥害防止具に備わる支持金具の構成を示す図であり、
図4(A)は、支持金具の正面図、
図4(B)は、支持金具の平面図、
図4(C)は、支持金具の右側面図、
図4(D)は、支持金具の左側面図、
図4(E)は、支持金具の下面図である。
【
図5】第1実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視分解組立図である。
【
図6】第1実施形態による腕金用鳥害防止具の使用状態を示す正面図であり、腕金用鳥害防止具を腕金に装着する前の状態図である。
【
図7】第1実施形態による腕金用鳥害防止具の使用状態を示す正面図であり、腕金用鳥害防止具を腕金に装着した状態図である。
【
図8】第1実施形態による腕金用鳥害防止具を取り付けようとする腕金の装柱図である。
【
図9】本発明の第2実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す図であり、
図10(A)は、腕金用鳥害防止具の正面図、
図10(B)は、腕金用鳥害防止具の右側面図である。
【
図11】第2実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を示す斜視図であり、回転ローラ及び取り付け具と支持金具を分離した状態図である。
【
図12】本発明による腕金用鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を示す正面図である。
【
図14】従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具の構成を示す側面図である。
【
図15】従来技術によるアンブレラボーン形の鳥害防止具を拡大した状態で示す正面図である。
【
図16】従来技術による回転ローラ形の鳥害防止具の構成を示す図であり、
図16(A)は、回転ローラ形の鳥害防止具の斜視図、
図16(B)は、
図16(A)の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0035】
本発明による腕金用鳥害防止具の構成を説明する前に、本発明による腕金用鳥害防止具を操作するための絶縁操作棒の構成を説明する。
【0036】
(絶縁操作棒の構成)
図12又は
図13を参照すると、絶縁操作棒5は、長尺の操作棒51と工具部52で構成している。又、絶縁操作棒5は、作動棒53を備えている。工具部52は、操作棒51の先端部に取り付けている。
【0037】
図12又は
図13を参照すると、工具部52は、開閉する一対の湾曲した把持腕5a・5bで構成している。そして、一方の把持腕5aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕5bは、一方の把持腕5aの基端部に設けた回動軸5cを中心に回動する可動腕となっている。
【0038】
図12を参照すると、作動棒53は、操作棒51に沿って保持されている。作動棒53の先端部は、他方の把持腕5bに回動自在に連結している。そして、作動棒53の基端部に設けた操作レバー54を操作すると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開閉できる。絶縁操作棒5は、操作棒51及び作動棒53の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0039】
図12を参照して、操作レバー54を握って、操作レバー54を操作棒51に近づけると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを閉じることができる。操作レバー54を解放すると、操作レバー54に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開くことができる。
図12又は
図13は、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bが最大に開いた状態を示している。
【0040】
図12又は
図13を参照して、一方の把持腕5aは、先細り状の把持爪51aを突出している。把持爪51aは、把持面50aを形成している。把持面50aは、回動軸5cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕5bは、先細り状の把持爪51bを突出している。把持爪51bは、把持面50bを形成している。把持面50bは、把持面50aと所定の開角を設けて配置されている。
図12又は
図13を参照して、操作レバー54を握ると、把持面50bを把持面50aに近づけることができる。
【0041】
図12又は
図13に示した絶縁操作棒5は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪51a・51bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0042】
[第1実施形態]
(腕金用鳥害防止具の構成)
(全体構成)
次に、本発明の第1実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を説明する。なお、従来技術で用いた符号と同じ符号を付した構成品は、その作用を同じにするので、以下、説明を省略することがある。
【0043】
図1から
図8を参照すると、本発明の第1実施形態による腕金用鳥害防止具(以下、鳥害防止具と略称する)10は、腕金Aに設置できる。腕金Aは、略水平状態で電柱Pに装架されている。又、腕金Aは、一端部側をアームタイAtで補強している(
図1又は
図8参照)。
【0044】
図1から
図8を参照して、鳥害防止具10を腕金Aに設置することで、鳥類などが飛来して腕金Aに営巣することを防止できる。
【0045】
図1から
図3を参照すると、鳥害防止具10は、回転ローラ1、取り付け具2、及び、C形の支持金具3を備えている。回転ローラ1は、円筒状の回転ローラ本体11と一対の回転軸12・12を有している。一対の回転軸12・12は、回転ローラ本体11の両端部から同軸上に突出している。回転ローラ本体11及び一対の回転軸12・12は、絶縁性を有する合成樹脂で一体に構成することが好ましい。
【0046】
図1から
図3を参照すると、取り付け具2は、帯板状の基板21と一対の支持板22・22を有している。一対の支持板22・22は、基板21の両端部に固定している。又、一対の支持板22・22は、軸受部材22bを介して(
図2又は
図3参照)、回転ローラ1を回転自在に支持している。
【0047】
図1から
図7を参照すると、支持金具3は、一組の把持片3a・3bと連結片3cを有している。一組の把持片3a・3bは、所定の間隔を設けて略平行に配置されている。一組の把持片3a・3bには、腕金Aをその側面側から導入できる。連結片3cは、一組の把持片3a・3bの基端部同士を連結している。
【0048】
図5を参照すると、基板21は、長方形の案内溝21dを有している。案内溝21dは、基板21の底面から穿設している。一方、支持金具3は、矩形の案内レール31を有している。案内レール31は、支柱3pを介して、一方の把持片3aから立設している。
【0049】
図4(A)又は
図5を参照すると、案内レール31は、案内溝21dに嵌合できる。案内レール31を案内溝21dに嵌合することで、取り付け具2を介して、回転ローラ1を支持できる。又、案内レール31を案内溝21dに嵌合することで、腕金Aの長手方向に沿って、回転ローラ1及び取り付け具2をスライド自在に案内できる。
【0050】
例えば、
図5を参照して、案内溝21dは、V溝21vと円弧溝21sで構成することができる。V溝21vは、案内溝21dの長手方向に沿った一方の内壁に形成している。又、円弧溝21sは、案内溝21dの長手方向に沿った他方の内壁に形成している。
【0051】
一方、
図5を参照すると、案内レール31は、V溝21vに嵌合する山型突条31mを一方の側面に形成している。又、案内レール31は、円弧溝21sに嵌合する半円弧状突条31sを他方の側面に形成している。案内溝21dの中央部で、V溝21vと円弧溝21sを相反する向きに開くことで、案内レール31を案内溝21dに導入できる。山型突条31mを先にV溝21vに導入し、半円弧状突条31sを後に円弧溝21sに導入することが好ましい。
【0052】
又、
図2から
図6を参照すると、支持金具3は、他方の把持片3bから突出した把持部32を有している。実体として、把持部32は、連結片3cの外面に溶接で接合した矩形板で構成している(
図4(D)参照)。把持部32は、間接活線工事用の絶縁操作棒5で把持できる(
図12又は
図13参照)。
【0053】
図1から
図8を参照すると、第1実施形態による鳥害防止具10は、回転ローラ1、帯板状の基板21と一対の支持板22・22で構成し、回転ローラ1を回転自在に支持した取り付け具2、及び、腕金Aに固定できるC形の支持金具3と、を備え、取り付け具2の基板21は、長方形の案内溝21dを有し、支持金具3は、案内溝21dに嵌合し、腕金Aの長手方向に沿って回転ローラ1及び取り付け具2をスライド自在に案内する案内レール31を有しているので、アームタイAtに干渉することなく、鳥害防止具10を腕金Aに設置できる(
図1又は
図8参照)。
【0054】
図1から
図3及び
図8を参照すると、回転ローラ1は、風力回転手段となる一対の風車13・13を更に備えている。風車13は、ボス13aと複数の羽根13bで構成している(
図2又は
図3参照)。ボス13aは、回転軸12の先端部に固定されている。複数の羽根13bは、ボス13aから放射状に延びている。風車13は、回転軸が水平状態に設置される水平軸風車となっている。風車13が風を受けると、回転ローラ本体11を回転できる。
【0055】
図1から
図8を参照すると、第1実施形態による鳥害防止具10は、円筒状の回転ローラ本体11を有する回転ローラ1と、回転ローラ1を回転自在に支持する取り付け具2と、間接活線工事用の絶縁操作棒5で腕金Aに取り付けできる支持金具3と、を備え、回転ローラ1は、風力で回転ローラ本体11を回転させる風力回転手段となる風車13を設けているので、回転ローラ本体11が風力で回転することで、木の枝などが容易に絡まること無く、かつ、経年変化により、回転ローラ1の回転が困難にならないように、自己修復できる。
【0056】
(支持金具の構成)
次に、実施形態による支持金具3の構成を説明する。
図1から
図7を参照すると、支持金具3は、回動軸33s、ボルト部材33、及び、一つ以上のナット部材Nを更に備えている。回動軸33sは、その両端部を一方の把持片3aに形成した折り曲げ片と回動自在に連結している。ボルト部材33は、その頭部を回動軸33sにT字状に接合している。ナット部材Nは、ボルト部材33のねじ部と螺合できる。
【0057】
図4(E)又は
図5を参照すると、他方の把持片3bは、先端縁から切り欠いた切り欠き部33dを有している。切り欠き部33dには、ボルト部材33を外周方向から導入できる。
【0058】
図4又は
図6を参照して、切り欠き部33dにボルト部材33を導入した状態から、ナット部材Nを他方の把持片3bに締結することで、支持金具3を腕金Aに固定できる。
【0059】
図3から
図7を参照すると、一方の把持片3aは、四角錐台状の傾斜カバー3dを上面に備えている。傾斜カバー3dは、案内レール31の下方に配置されている。一方の把持片3aと案内レール31の間に傾斜面を設けることで、木の枝などが容易に絡まることを抑制できる。
【0060】
(腕金用鳥害防止具の作用)
次に、第1実施形態による鳥害防止具10の操作手順を説明しながら、鳥害防止具10の作用及び効果を説明する。
【0061】
最初に、
図6を参照して、ボルト部材33を起立した状態で、一対の把持腕5a・5bで把持部32を把持する。次に、絶縁操作棒5を操作して、一組の把持片2a・2bの間に、腕金Aをその側面側から導入する。
【0062】
次に、
図7を参照して、ボルト部材33を時計方向に回動して、ボルト部材33の先端部側を切り欠き部33dに導入する(
図5参照)。次に、
図7を参照して、ボルト部材33にナット部材Nを締結することで、一組の把持片3a・3bで腕金Aを挟持できる。実施形態による支持金具3は、ボルト部材33が把持片3aに回動自在に連結しているので、操作が容易であるという長所がある。
【0063】
図1又は
図8を参照すると、電柱Pは、腕金Aの中央部を支持している。腕金Aの一端部側には、二個のピン碍子Pi・Piを配置している。一方のピン碍子Piは、腕金Aの一端部側の端部に配置されている。他方のピン碍子Piは、腕金Aの一端部側の電柱P寄りに配置されている。腕金Aの他端部側には、一個のピン碍子Piを端部に配置している。
【0064】
又、
図1又は
図8を参照すると、電柱Pは、傾斜したアームタイAtを配置している。アームタイAtは、その一端部が電柱Pに緊締したアームタイバンドBtに連結している。又、アームタイAtは、その他端部が腕金Aの他端部側の中央部に連結している。腕金AをアームタイAtで電柱Pに支持することで、腕金Aの傾斜を抑制できる。
【0065】
図1又は
図8を参照すると、第1実施形態による鳥害防止具10は、アームタイAtに干渉しないように、支持金具3を腕金Aに固定できる。そして、支持金具3に対して、取り付け具2をスライドすることで、ピン碍子Piに干渉することなく、鳥害防止具10を配置できる。
【0066】
図1から
図3を参照すると、第1実施形態による鳥害防止具10は、飛来した鳥にとっては、回転ローラ本体11に止まった瞬間に回転ローラ本体11が回転し、回転ローラ本体11上で休息などができない点は、従来技術の回転ローラ91と同じである(
図16参照)。
【0067】
しかし、
図1から
図3を参照すると、第1実施形態による鳥害防止具10に備わる回転ローラ1は、風力で回転ローラ本体11を回転させる風力回転手段となる風車13を有しているので、例えば、経年変化に起因する軸受部材22bのこじりを解消できる。又、風力で回転ローラ本体11を回転させることで、回転ローラ本体11上の木の枝を排除できる。
【0068】
[第2実施形態]
(腕金用鳥害防止具の構成)
(全体構成)
次に、本発明の第2実施形態による腕金用鳥害防止具の構成を説明する。なお、第1実施形態で用いた符号と同じ符号を付した構成品は、その作用を同じにするので、以下、説明を省略することがある。
【0069】
図9から
図11を参照すると、本発明の第2実施形態による腕金用鳥害防止具(以下、鳥害防止具と略称する)20は、腕金Aに設置できる。鳥害防止具20を腕金Aに設置することで、鳥類などが飛来して腕金Aに営巣することを防止できる。
【0070】
図9から
図11を参照すると、鳥害防止具20は、回転ローラ4、取り付け具6、及び、C形の支持金具3を備えている。回転ローラ4は、円筒状の回転ローラ本体41と一対の回転軸42・42を有している。一対の回転軸42・42は、回転ローラ本体41の両端部から同軸上に突出している。回転ローラ本体41及び一対の回転軸42・42は、絶縁性を有する合成樹脂で一体に構成することが好ましい。
【0071】
図9から
図11を参照すると、取り付け具6は、帯板状の基板61と一対の支持板62・62を有している。一対の支持板62・62は、基板61の両端部に固定している。又、一対の支持板62・62は、軸受部材62bを介して(
図10又は
図11参照)、回転ローラ4を回転自在に支持している。
【0072】
図1から
図3と
図9から
図11を対比すると、基板21と基板61は、実質的に同じものであるが、説明の便宜上、符号を変えて区別した。同様に、支持板22と支持板62は、実質的に同じものであるが、説明の便宜上、符号を変えて区別した。
【0073】
図11を参照すると、基板61は、長方形の案内溝61dを有している。案内溝61dは、基板61の底面から穿設している。一方、支持金具3は、矩形の案内レール31を有している。案内レール31は、支柱3pを介して、一方の把持片3aから立設している。
【0074】
図11を参照すると、案内レール31は、案内溝61dに嵌合できる。案内レール31を案内溝61dに嵌合することで、取り付け具6を介して、回転ローラ4を支持できる。又、案内レール31を案内溝61dに嵌合することで、腕金Aの長手方向に沿って、回転ローラ4及び取り付け具6をスライド自在に案内できる(
図9参照)。
【0075】
例えば、
図11を参照して、案内溝61dは、V溝61vと円弧溝61sで構成することができる。V溝61vは、案内溝61dの長手方向に沿った一方の内壁に形成している。又、円弧溝61sは、案内溝61dの長手方向に沿った他方の内壁に形成している。
【0076】
一方、
図11を参照すると、案内レール31は、V溝61vに嵌合する山型突条31mを一方の側面に形成している。又、案内レール31は、円弧溝61sに嵌合する半円弧状突条31sを他方の側面に形成している。案内溝61dの中央部で、V溝61vと円弧溝61sを相反する向きに開くことで、案内レール31を案内溝61dに導入できる。山型突条31mを先にV溝61vに導入し、半円弧状突条31sを後に円弧溝61sに導入することが好ましい。
【0077】
図9から
図11を参照すると、第2実施形態による鳥害防止具20は、回転ローラ4、帯板状の基板61と一対の支持板62・62で構成し、回転ローラ4を回転自在に支持した取り付け具6、及び、腕金Aに固定できるC形の支持金具3と、を備え、取り付け具6の基板61は、長方形の案内溝61dを有し、支持金具3は、案内溝61dに嵌合し、腕金Aの長手方向に沿って回転ローラ4及び取り付け具6をスライド自在に案内する案内レール31を有しているので、アームタイAtに干渉することなく、鳥害防止具20を腕金Aに設置できる(
図9参照)。
【0078】
図9から
図11を参照すると、回転ローラ4は、風力回転手段となるリボンスクリュー43を更に備えている。リボンスクリュー43は、回転ローラ本体41の外周に螺旋状に取り付けている。リボンスクリュー43が風を受けると、回転ローラ本体41を回転できる。
【0079】
図9から
図11を参照すると、第2実施形態による鳥害防止具20は、円筒状の回転ローラ本体41を有する回転ローラ4と、回転ローラ4を回転自在に支持する取り付け具6と、間接活線工事用の絶縁操作棒5で腕金Aに取り付けできる支持金具3と、を備え、回転ローラ4は、風力で回転ローラ本体41を回転させる風力回転手段となるリボンスクリュー43を外周に設けているので、回転ローラ本体41が風力で回転することで、木の枝などが容易に絡まること無く、かつ、経年変化により、回転ローラ4の回転が困難にならないように、自己修復できる。
【0080】
(腕金用鳥害防止具の作用)
次に、第2実施形態による鳥害防止具20の作用及び効果を説明する。
図9を参照すると、第2実施形態による鳥害防止具10は、アームタイAtに干渉しないように、支持金具3を腕金Aに固定できる。そして、支持金具3に対して、取り付け具6をスライドすることで、ピン碍子Piに干渉することなく、鳥害防止具20を配置できる。
【0081】
図9から
図11を参照すると、第2実施形態による鳥害防止具20は、飛来した鳥にとっては、回転ローラ本体41に止まった瞬間に回転ローラ本体41が回転し、回転ローラ本体41上で休息などができない点は、従来技術の回転ローラ91と同じである(
図16参照)。
【0082】
しかし、
図9から
図11を参照すると、第2実施形態による鳥害防止具20に備わる回転ローラ4は、風力で回転ローラ本体41を回転させる風力回転手段となるリボンスクリュー43を有しているので、例えば、経年変化に起因する軸受部材62bのこじりを解消できる。又、風力で回転ローラ本体41を回転させることで、回転ローラ本体41上の木の枝を排除できる。
【0083】
本発明による腕金用鳥害防止具は、以下の効果が期待できる。
(1)鳥が木の枝又は針金形のハンガーを落下させても、絡まる心配がなくなる。
(2)鳥が営巣することを確実に防止できる。
(3)腕金自体に鳥が止まることを防止できる。
【符号の説明】
【0084】
1 回転ローラ
2 取り付け具
3 支持金具
3a・3b 一組の把持片
2c 連結片
5 絶縁操作棒
10 鳥害防止具(腕金用鳥害防止具)
11 回転ローラ本体
12・12 一対の回転軸
13 風車(風力回転手段)
21 基板
21d 案内溝
22・22 一対の支持板
31 案内レール
32 把持部
A 腕金