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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/80 20060101AFI20220809BHJP
   B60B 27/02 20060101ALI20220809BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20220809BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F16C33/80
B60B27/02 N
B60B35/02 L
F16C19/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018244787
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106081
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133578(JP,A)
【文献】特開昭51-61925(JP,A)
【文献】特開2014-142054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00
F16C 33/00
F16J 15/00
B60B 27/00
B60B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道を有する外輪と、
外周面に内輪軌道を有するとともに回転フランジを有するハブと、
前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数の転動体と、
前記外輪の軸方向外側部に内嵌された外側シールリングと、径方向に伸長した環状の立板部を有し前記ハブに外嵌された摺接環と、を有する外側密封部材と、
前記回転フランジに対して車輪を固定するためのハブボルトと、を備え、
前記回転フランジは、前記ハブボルトが螺合される貫通孔である雌ねじ孔を有するものである、ハブユニット軸受であって、
前記外輪は、軸方向外端部の内周面に、軸方向外側に向かうほど内径が大きくなる方向に傾斜した傾斜面を有しており、
前記立板部は、軸方向外側面を前記外輪の軸方向外端面よりも軸方向内側に位置させているとともに、径方向外端縁を前記傾斜面に対して径方向及び軸方向に対向させており、
前記雌ねじ孔は、前記外側密封部材及び前記外輪の軸方向外端面と軸方向に重畳する位置に形成されており、
前記立板部の径方向外端縁と前記傾斜面との対向距離(A)は、前記ハブボルトの軸方向内端面と前記外輪の軸方向外端面との対向距離(B)よりも小さく、かつ、前記回転フランジの軸方向内側面と前記外輪の軸方向外端面との対向距離(C)よりも小さい、
ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記摺接環は、前記ハブに外嵌した嵌合筒部と、前記嵌合筒部の軸方向内端部から径方向内側に向けて折れ曲がった内向フランジ部とをさらに備えており、前記内向フランジ部の軸方向外側面を、前記ハブの外周面に形成された突き当て面に対して軸方向に当接させて軸方向位置を規制している、請求項1に記載したハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪及び制動用回転体を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受は、泥水が直接跳ねかかる環境で使用される。このため、このようなハブユニット軸受には、密封装置を組み込んで、雨水や泥などの異物が転動体を設置した空間に入り込むことを防止するとともに、封入したグリースが外部に漏洩することを防止している。
【0003】
従来構造のハブユニット軸受では、たとえば特開2005-155882号公報に記載されているように、転動体を設置した空間の軸方向外側開口を塞ぐために、複数本のシールリップを備えたシールリングを、外輪の軸方向外側部に内嵌することが行われている。そして、複数本のシールリップのうちで、軸方向外側に向けて伸長したシールリップ(泥水リップ)を、ハブを構成する回転フランジの軸方向内側面に摺接させ、軸方向内側に向けて伸長したシールリップ(グリースリップ)を、ハブの外周面に摺接させている。
【0004】
ただし、回転フランジの軸方向内側面には、特開2017-180599号公報などに開示されているように、研削による仕上加工に起因して、軸方向に凹んだ凹部と軸方向に突出した凸部とが径方向に関して交互に配置された対数螺旋状(渦巻き状)の研削筋目が形成されることが知られている。このため、シールリップの先端縁を回転フランジの軸方向内側面に直接接触させる構造を採用した場合には、シールリップの先端縁が回転フランジの軸方向内側面に押し付けられてシールトルクが上昇したり、シール鳴きと呼ばれる異音を発生させるなどの問題を生じる可能性がある。
【0005】
このような問題が生じることを防止するために、シールリップの先端縁を回転フランジの軸方向内側面に直接接触させない構造を採用することが考えられている。図4及び図5は、特開2012-61875号公報に記載された従来構造のハブユニット軸受を示している。
【0006】
ハブユニット軸受1は、使用状態で回転しない外輪2と、使用状態で回転するハブ3と、複数個の転動体4と、内側密封部材5と、外側密封部材6とを備えている。
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図4及び図5の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図4及び図5の右側である。
【0007】
外輪2は、内周面に複列の外輪軌道7a、7bを有するとともに、軸方向両側に隣接する部分よりも径方向外方に突出した静止フランジ8を有している。外輪2は、静止フランジ8をナックルなどの懸架装置に固定するため、使用状態で回転しない。
【0008】
ハブ3は、外輪2の内径側に外輪2と同軸に配置されており、ハブ輪9と内輪10とを組み合わせて構成されている。ハブ輪9は、内輪10を外嵌保持する軸部材であり、軸部11と、回転フランジ12とを有している。軸部11は、ハブ輪9の軸方向内側部から軸方向中間部にわたる範囲に設けられている。軸部11は、その軸方向内側部に内輪10を外嵌するための小径段部13を有しており、その軸方向中間部の外周面に外側列の内輪軌道14aを有している。回転フランジ12は、軸部11の軸方向外側に隣接するハブ輪9の軸方向外側部から径方向外方に伸長しており、略円輪形状を有している。回転フランジ12には、円周方向複数箇所に、円孔(丸穴)である取付孔15が形成されている。取付孔15には、スタッド16の軸方向中間部が圧入されている。車輪及び制動用回転体は、スタッド16の軸方向外側部に図示しないナットを螺合することで、回転フランジ12に対して結合固定される。内輪10は、ハブ輪9の小径段部13に外嵌されており、外周面に内側列の内輪軌道14bを有している。
【0009】
保持器17により転動自在に保持された転動体4は、複列の外輪軌道7a、7bと複列の内輪軌道14a、14bとの間に配置されている。また、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、かつ、複数の転動体4が設置された環状の空間18には、図示しないグリースを封入している。そして、空間18に封入したグリースが外部に漏洩することを防止するとともに、泥水などの異物が空間18に侵入することを防止するために、空間18の軸方向内側開口を内側密封部材5により塞ぎ、かつ、空間18の軸方向外側開口を外側密封部材6により塞いでいる。
【0010】
外側密封部材6は、組み合わせシールリングであり、外輪2の軸方向外側部に内嵌された外側シールリング19と、ハブ輪9の軸方向中間部に外嵌された金属製の摺接環20とを備えている。そして、外側シールリング19に備えられた複数本のシールリップ21a~21cの先端縁を、摺接環20の表面及びハブ輪9の表面に全周にわたり摺接させている。図示の例では、外側シールリング19は、軸方向外側に向けて伸長した泥水リップと呼ばれる2本のシールリップ21a、21bと、軸方向内側に向けて伸長したグリースリップと呼ばれる1本のシールリップ21cとを備えている。そして、泥水リップと呼ばれる2本のシールリップ21a、21bの先端縁を、摺接環20の表面に摺接させており、グリースリップと呼ばれる1本のシールリップ21cの先端縁を、ハブ輪9の外周面に摺接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-155882号公報
【文献】特開2017-180599号公報
【文献】特開2012-61875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、ハブユニット軸受は、懸架装置を構成するばねよりも路面側に設けられる、いわゆるバネ下荷重であるので、その軽量化により、乗り心地や走行安定性を中心とする走行性能の向上を図ることが可能になる。そこで近年、スタッドに螺合するナットの省略による軽量化を図れることから、回転フランジに形成した雌ねじ孔にハブボルトを螺合する形式のハブユニット軸受が、欧州を中心に普及している。
【0013】
回転フランジに形成した雌ねじ孔にハブボルトを螺合する構造の場合、高剛性、高負荷容量のために外側列の転動体のピッチ円直径を大きくしたハブユニット軸受では、雌ねじ孔と外側密封部材とが軸方向に重畳する可能性がある。この場合には、回転フランジの軸方向内側面に対してシールリップ(泥水リップ)の先端縁を直接摺接させることができないため、前記図4及び図5に示した構造のように、シールリップの先端縁を摺接環の表面に摺接させる構造を採用する必要がある。
【0014】
ただし、シールリップの先端縁を摺接環の表面に摺接させる構造を採用した場合にも、回転フランジに形成した雌ねじ孔にハブボルトを螺合する構造を採用した場合には、次のような問題を生じる可能性がある。以下、図6を参照して説明する。
図6に示すように、回転フランジ12に形成された雌ねじ孔22にハブボルト23を螺合する構造の場合、ハブボルト23の軸方向内端面(尾部)は、(A)に示したように、回転フランジ12の軸方向内側面よりも軸方向内側に位置(ハブボルト23の尾部が雌ねじ孔22から軸方向内側に突出)したり、あるいは、(B)に示したように、回転フランジ12の軸方向内側面よりも軸方向外側に位置(ハブボルト23の尾部を雌ねじ孔22の内部に収納)する場合がある。そして、いずれの場合にも、回転フランジ12が回転した際に、回転フランジ12の軸方向内側に存在する空間のうち、ハブボルト23と径方向位置が同じ部分で、空間の断面積が変化することに起因して回転気流の速度変化が生じる。この結果、ハブボルト23が外輪2の軸方向外端面の近傍を周方向に通過する際に、摺接環20の径方向外端縁と外輪2の内周面との間を軸方向に移動する気流(図6中の矢印参照)が増加し、外側密封部材6の内部に泥などの異物が溜まりやすくなる。
【0015】
本発明は、上述のような事情に鑑み、回転フランジに形成した雌ねじ孔にハブボルトを螺合する構造に関して、外側密封部材の密封性能の向上を図れる、ハブユニット軸受の構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数の転動体と、外側密封部材と、ハブボルトとを備えている。
前記外輪は、内周面に外輪軌道を有している。
前記ハブは、外周面に内輪軌道を有するとともに回転フランジを有している。
前記複数の転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置されている。
前記外側密封部材は、前記外輪の軸方向外側部に内嵌された外側シールリングと、径方向に伸長した環状の立板部を有し前記ハブに外嵌された摺接環とを有している。
前記ハブボルトは、前記回転フランジに対して車輪を固定するためのものである。
また、前記回転フランジは、前記ハブボルトが螺合される貫通孔である雌ねじ孔を有している。
【0017】
特に本発明のハブユニット軸受では、前記外輪を、軸方向外端部の内周面に、軸方向外側に向かうほど内径が大きくなる方向に傾斜した傾斜面を有するものとしている。
前記立板部の軸方向外側面を、前記外輪の軸方向外端面よりも軸方向内側に位置させるとともに、前記立板部の径方向外端縁を、前記傾斜面に対して径方向及び軸方向に対向させている。
前記雌ねじ孔を、前記外側密封部材及び前記外輪の軸方向外端面と軸方向に重畳する位置に形成している。
さらに、前記立板部の径方向外端縁と前記傾斜面との対向距離(A)を、前記ハブボルトの軸方向内端面と前記外輪の軸方向外端面との対向距離(B)よりも小さくし、かつ、前記回転フランジの軸方向内側面と前記外輪の軸方向外端面との対向距離(C)よりも小さくしている。
【0018】
本発明のハブユニット軸受では、前記摺接環を、前記ハブに外嵌した嵌合筒部と、前記嵌合筒部の軸方向内端部から径方向内側に向けて折れ曲がった内向フランジ部とをさらに備えたものとし、前記内向フランジ部の軸方向外側面を、前記ハブの外周面に形成された突き当て面に対して軸方向に当接させて軸方向位置を規制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転フランジに形成した雌ねじ孔にハブボルトを螺合する構造に関して、外側密封部材の密封性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかるハブユニット軸受の半部断面図である。
図2図2は、図1のA部に相当する部分の拡大図であり、(A)は、ハブボルトの軸方向内端面が回転フランジの軸方向内側面よりも軸方向内側に位置する場合を示しており、(B)は、ハブボルトの軸方向内端面が回転フランジの軸方向内側面よりも軸方向内側に位置する場合を示している。
図3図3は、実施の形態の第2例を示す、図1のA部に相当する部分の拡大図である。
図4図4は、ハブユニット軸受の従来構造の1例を示す断面図である。
図5図5は、図4のB部拡大図である。
図6図6は、回転フランジに形成した雌ねじ孔に螺合するハブボルトを利用して、車輪及び制動用回転体を固定する構造を採用した場合に生じる問題を説明するために示す断面図であり、(A)は、ハブボルトの軸方向内端面が回転フランジの軸方向内側面よりも軸方向内側に位置する場合を示しており、(B)は、ハブボルトの軸方向内端面が回転フランジの軸方向内側面よりも軸方向外側に位置する場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図2を用いて説明する。
本例のハブユニット軸受1aは、使用状態で回転しない外輪2aと、使用状態で車輪及びディスク、ドラムなどの制動用回転体とともに回転するハブ3aと、複数個の転動体4と、内側密封部材5aと、外側密封部材6aとを備えている。
なお、ハブユニット軸受1aに関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図1及び図2の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図1及び図2の右側である。
【0022】
外輪2aは、S53Cなどの中炭素鋼製で、略円筒形状を有している。外輪2aの軸方向中間部には、懸架装置のナックルに結合される静止フランジ8aを有している。外輪2aの内周面には、複列の外輪軌道7c、7dを有している。外輪2aの軸方向外端面24は、外輪2aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面である。外輪2aの軸方向外端部の内周面には、傾斜面25が設けられている。傾斜面25は、円すい面であり、軸方向外側に向かうほど内径が大きくなる方向に傾斜している。傾斜面25の軸方向外端部は、軸方向外端面24の径方向内端部につながっている。外輪2aの中心軸に対する傾斜面25の傾斜角度は、20度~30度程度であり、図示の例では30度である。外輪2aの内周面のうち、傾斜面25の軸方向内側に隣接する部分には、軸方向にわたり内径が変化しないシール固定面26が設けられている。なお、本例では、傾斜面を、母線形状が直線である円すい面とした場合を示したが、傾斜面は、母線形状が曲線である曲面でも良いし、面取りされた面(例えばC面取り、R面取り)でも良い。
【0023】
ハブ3aは、外輪2aの内径側に外輪2aと同軸に配置されており、S53Cなどの中炭素鋼製のハブ輪9aと、SUJ2などの高炭素クロム鋼製の内輪10aとを組み合わせて構成されている。ハブ3aの外周面には、複列の外輪軌道7c、7dと対向する部分に、複列の内輪軌道14c、14dが設けられている。
【0024】
ハブ輪9aは、内輪10aを外嵌保持する軸部材であり、軸部11aと、回転フランジ12aと、パイロット部27とを有している。また、本例のハブユニット軸受1aは、駆動輪用であるため、ハブ輪9aは、図示しない駆動軸部材を構成するスプライン軸をスプライン係合させるためのスプライン孔28を有している。スプライン孔28は、ハブ輪9aの径方向中心部を軸方向に貫通するように設けられている。ただし、本発明は、従動輪用のハブユニット軸受にも適用可能である。従動輪用のハブユニット軸受に適用する場合には、前記図4に示したように、ハブ輪として中実状のものを使用することができる。
【0025】
軸部11aは、ハブ輪9aの軸方向内側部から軸方向中間部にわたる範囲に設けられている。軸部11aは、その軸方向内側部に内輪10aを外嵌するための小径段部13aを有しており、その軸方向中間部の外周面に外側列の内輪軌道14cを有している。また、軸部11aの軸方向内端部には、径方向外方に折れ曲がったかしめ部29が形成されている。かしめ部29は、小径段部13aに外嵌した内輪10aの軸方向内側面を抑え付けている。
【0026】
回転フランジ12aは、軸部11aの軸方向外側に隣接するハブ輪9aの軸方向外側部から径方向外方に伸長しており、略円輪形状を有している。回転フランジ12aは、径方向中間部の周方向等間隔となる複数箇所(例えば4個所又は5箇所)に、貫通孔である雌ねじ孔22を有している。雌ねじ孔22のそれぞれの中心軸O22は、ハブ3aの中心軸Oと平行に配置されている。そして本例では、雌ねじ孔22のピッチ円直径を、外輪2aの軸方向外端面24の外径とほぼ同じとしている。また、すべての雌ねじ孔22に内径側から接する仮想円の直径d22を、外輪2aのシール固定面26の内径d26よりも小さくしている(d22<d26)。このため、雌ねじ孔22は、外輪2aの軸方向外端面24と軸方向に重畳する位置に形成されているとともに、後述するようにシール固定面26の内径側に配置される外側密封部材6aと軸方向に重畳する位置に形成されている。また、回転フランジ12aの軸方向内側面は、外輪2aの軸方向外端面24と平行に配置されている。このため、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との間の軸方向距離である対向距離(C)は、径方向及び周方向にわたり一定である。
【0027】
雌ねじ孔22のそれぞれには、外周面に雄ねじ部を有するハブボルト23が螺合される。本例のハブユニット軸受1aは、特開2012-61875号公報に記載された構造とは異なり、ナットを利用せず、雌ねじ孔22に直接螺合するハブボルト23を利用して、車輪を構成するホイール及び制動用回転体を、回転フランジ12aの軸方向外側に固定する。パイロット部27は、車輪及び制動用回転体をがたつきのない隙間嵌めで外嵌するためのもので、回転フランジ12aの径方向中間部から軸方向外方に突出するように設けられており、略円筒形状を有している。
【0028】
内輪10aは、円環形状を有しており、軸部11aの軸方向内側部に設けられた小径段部13aに締り嵌めで外嵌されている。また、内輪10aの軸方向外端面は、軸部11aの外周面に形成された段差面30に突き当てられており、内輪10aの軸方向内端面は、かしめ部29により抑え付けられている。内輪10aは、外周面に内側列の内輪軌道14dを有している。
【0029】
保持器17により転動自在に保持された転動体4は、複列の外輪軌道7c、7dと複列の内輪軌道14c、14dとの間に配置されている。また、外輪2aの内周面とハブ3aの外周面との間に存在し、かつ、複数の転動体4が設置された環状の空間18aには、図示しないグリースを封入している。そして、空間18aに封入したグリースが外部に漏洩することを防止するとともに、泥水などの異物が空間18aに侵入することを防止するために、空間18aの軸方向内側開口を内側密封部材5aにより塞ぎ、かつ、空間18aの軸方向外側開口を外側密封部材6aにより塞いでいる。
【0030】
内側密封部材5aは、組み合わせシールリングであり、外輪2aの軸方向内端部に内嵌固定された内側シールリング31と、内輪10aに外嵌固定された金属板製の内側スリンガ32とを備えている。そして、内側シールリング31に備えられた複数本(図示の例では4本)のシールリップ33a~33dの先端縁を、内側スリンガ32の表面に摺接又は近接対向させている。
【0031】
外側密封部材6aは、組み合わせシールリングであり、外側シールリング19aと、摺接環(外側スリンガ)20aとを備えている。
【0032】
外側シールリング19aは、外輪2aの軸方向外側部に内嵌固定されている。具体的には、外側シールリング19aは、外輪2aのシール固定面26に内嵌固定されている。また、外側シールリング19aは、外側芯金34と、該外側芯金34に固定された外側シール部35とを有している。
【0033】
外側芯金34は、冷間圧延鋼板などの金属板にプレス加工を施して造られており、略L字形の断面形状を有し、全体が円環状である。外側芯金34は、外輪2aのシール固定面26に内嵌固定された筒状の固定部36と、該固定部36の軸方向外側部から径方向内方に向けて折れ曲がった内向鍔状の折れ曲がり部37とを備えている。固定部36は、軸方向内半部に円筒状部36aを有しており、軸方向外半部に円すい筒状部36bを有している。折れ曲がり部37は、クランク形の断面形状を有している。
【0034】
外側シール部35は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などの弾性材製で、外側芯金34の表面に全周にわたり固定されている。外側シール部35は、加硫成形型を用いて加硫成形されており、円すい筒状部36bの外周面を全周にわたり覆い、折れ曲がり部37の軸方向外側面及び径方向内端部を全周にわたり覆っている。
【0035】
外側シール部35は、複数本(図示の例では3本)のシールリップ38a~38cを有している。図示の例では、外側シール部35は、軸方向外側に向けて伸長した泥水リップと呼ばれる2本のシールリップ38a、38bと、軸方向内側に向けて伸長したグリースリップと呼ばれる1本のシールリップ38cとを備えている。泥水リップと呼ばれる2本のシールリップ38a、38bのうち、径方向外側に配置されたシールリップ38aは、外側シール部35の径方向中間部に設けられ、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に傾斜している。また、径方向内側に配置されたシールリップ38bは、外側シール部35の径方向内端部に設けられており、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向にわずかに傾斜している。グリースリップと呼ばれるシールリップ38cは、外側シール部35の径方向内端部に設けられており、軸方向内側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜している。なお、図1及び図2には、シールリップ38a~38cの自由状態における形状を示している。
【0036】
摺接環20aは、SUS304やSUS430などのステンレス鋼板又は防錆処理が施された冷間圧延鋼板などの金属板にプレス加工を施して造られており、略L字形の断面形状を有し、全体が円環状である。摺接環20aは、軸部11aの軸方向外端部に外嵌固定されている。摺接環20aは、軸部11aに締り嵌めで外嵌固定される円筒状の嵌合筒部39と、嵌合筒部39の軸方向外端部から径方向外側かつ軸方向外側に向けて円弧状に折れ曲がった湾曲部40と、湾曲部40の径方向外端部から径方向外方に向けて伸長した環状の立板部41とを備えている。
【0037】
立板部41は、摺接環20aが固定されたハブ輪9aの中心軸に直交する方向に伸長している。立板部41の外径D41は、外輪2aのシール固定面26の内径d26及びすべての雌ねじ孔22に内径側から接する仮想円の直径d22よりも大きい(D41>d26>d22)。したがって、立板部41の径方向外側部は、雌ねじ孔22及びハブボルト23と軸方向に重畳している。本例では、軸部11aに対する摺接環20aの軸方向に関する嵌合位置を、組立時の圧入位置により規制することで、立板部41を外輪2aの傾斜面25と径方向に重畳する位置に配置している。そして、立板部41の軸方向外側面42を、外輪2aの軸方向外端面24よりも軸方向内側に位置させるとともに、立板部41の径方向外端縁を、外輪2aの傾斜面25に対して微小隙間を介して径方向及び軸方向に対向させている。傾斜面25は、軸方向外側に向かうほど内径が大きくなるように傾斜しているため、立板部41の径方向外端縁から傾斜面25までの距離は、立板部41の径方向外端縁の軸方向内側の角部(陵部)Xにて最小となる。このため、立板部41の径方向外端縁と傾斜面25との対向距離(A)は、立板部41の角部Xから傾斜面25までの、傾斜面25の法線方向の距離となる。
【0038】
嵌合筒部39の外周面、湾曲部40の外周面(軸方向内側面)及び立板部41の軸方向内側面は、それぞれ滑らかな面となっている。そして、泥水リップと呼ばれる2本のシールリップ38a、38bのうち、径方向外側に配置されたシールリップ38aの先端縁を、立板部41の軸方向内側面に摺接させており、径方向内側に配置されたシールリップ38bの先端縁を、湾曲部40の外周面に摺接させている。また、グリースリップと呼ばれるシールリップ38cの先端縁を、嵌合筒部39の外周面に摺接させている。
【0039】
本例では、摺接環20aを構成する湾曲部40の内周面(軸方向外側面)を、円環状のガスケット44により全周にわたり覆っている。ガスケット44は、弾性材製で、略台形状の断面形状を有している。ガスケット44の軸方向外側面44aは、摺接環20aを構成する立板部41の軸方向外側面42と同一面上に位置している。ガスケット44の内周面は、軸方向外側に配置された傾斜面部44bと、軸方向内側に配置された円筒面部44cとを有している。傾斜面部44bは、軸方向内側に向かうほど内径が小さくなる方向に傾斜している。円筒面部44cは、軸方向にわたり内径が一定であり、自由状態で、摺接環20aを構成する嵌合筒部39の内径よりも小さい内径を有している。このため、嵌合筒部39を軸部11aに外嵌した際に、ガスケット44の軸方向内側部は、軸部11aの外周面に対して締め代を持って接触する。これにより、摺接環20aと軸部11aとの嵌合部に泥水などの異物が侵入することを防止している。なお、図1及び図2には、ガスケット44の自由状態での形状を示している。
【0040】
上述したような本例のハブユニット軸受1aでは、車輪を構成するホイール及び制動用回転体を固定するために、ホイール及び制動用回転体にそれぞれ設けられた通孔を挿通したハブボルト23を、回転フランジ12aの雌ねじ孔22に軸方向外側から螺合する。この場合、ハブボルト23の軸方向寸法(全長)によっては、ハブボルト23の軸方向内端面(尾部)は、回転フランジ12aの軸方向内側面と同一平面上には存在せずに、図2の(A)に示したように、回転フランジ12aの軸方向内側面よりも軸方向内側に位置する(出っ張る)か、あるいは、図2の(B)に示したように、回転フランジ12aの軸方向内側面よりも軸方向外側に位置する(引っ込む)。なお、いずれの場合にも、ハブボルト23の軸方向内端面は、外輪2aの軸方向外端面24と略平行に配置されるため、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との間の軸方向距離である対向距離(B)は、径方向及び周方向にわたり一定になる。
【0041】
図2の(A)に示したように、ハブボルト23の軸方向内端面が、回転フランジ12aの軸方向内側面よりも軸方向内側に位置する場合には、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(B)は、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(C)よりも小さくなる(B<C)。
【0042】
これに対し、図2の(B)に示すように、ハブボルト23の軸方向内端面が、回転フランジ12aの軸方向内側面よりも軸方向外側に位置する場合には、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(B)は、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(C)よりも大きくなる(B>C)。
【0043】
そこで本例は、ハブボルト23の軸方向内端面が、回転フランジ12aの軸方向内側面と同一平面上に存在しないことに起因して、回転フランジ12aの回転時に、回転フランジ12aの軸方向内側に存在する空間のうちハブボルト23と径方向位置が同じ部分に、回転気流の速度変化が生じ、外側密封部材6aの内部に異物が溜まりやすくなることを防止するために、立板部41の径方向外端縁と傾斜面25との対向距離(A)を小さく設定している。具体的には、立板部41の径方向外端縁と傾斜面25との対向距離(A)を、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(B)よりも小さくし、かつ、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(C)よりも小さくしている(A<B、A<C)。つまり、図2の(A)に示したように、対向距離(B)が対向距離(C)よりも小さい場合には、対向距離(A)を対向距離(B)よりも小さくし、図2の(B)に示したように、対向距離(B)が対向距離(C)よりも大きい場合には、対向距離(A)を対向距離(C)よりも小さくする。別の言い方をすれば、対向距離(A)を、3種類の対向距離の中で1番小さくする。
【0044】
以上のような本例のハブユニット軸受1aによれば、回転フランジ12aに形成した雌ねじ孔22にハブボルト23を螺合する構造に関して、外側密封部材6aの密封性能の向上を図ることができる。
すなわち、本例では、摺接環20aを構成する立板部41の軸方向外側面42を、外輪2aの軸方向外端面24よりも軸方向内側に位置させている。このため、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との間部分を通じて径方向内側に侵入した異物が、外側密封部材6aの内部に進入することを抑制できる。具体的には、異物の多くを、立板部41の軸方向外側に存在する空間に位置させることができる。また、立板部41の軸方向外側に存在する空間に侵入した異物は、ハブ3aの回転に伴う遠心力や重力を利用して外部に排出することができる。
【0045】
また、摺接環20aを構成する立板部41の軸方向外側面42を、外輪2aの軸方向外端面24よりも軸方向内側に位置させている。このため、外輪2aの軸方向外端面24からハブボルト23の軸方向内端面までの軸方向距離(対向距離B)よりも、立板部41の軸方向外側面42からハブボルト23の軸方向内端面までの軸方向距離を大きくできるとともに、外輪2aの軸方向外端面24から回転フランジ12aの軸方向内側面までの軸方向距離(対向距離C)よりも、立板部41の軸方向外側面42から回転フランジ12aの軸方向内側面までの軸方向距離よりを大きくできる。したがって、回転フランジ12aの回転時に、外輪2aの軸方向外端面24の軸方向外側に存在する空間に生じる圧力変化よりも、立板部41の径方向外側部の軸方向外側に存在する空間に生じる圧力変化を小さくすることができる。これにより、外輪2aの軸方向外端面24の軸方向外側に存在する空間から押し出された気流を、径方向内側に移動させやすくできるため、立板部41の径方向外端縁と傾斜面25との間を軸方向に移動する気流(図6の矢印を参照)を少なくできる。
【0046】
さらに、外輪2aの軸方向外端部の内周面に、径方向外側に向かうほど内径が大きくなる傾斜面25を設けている。このため、外輪2aの軸方向外端面24からハブボルト23の軸方向内端面までの軸方向距離(対向距離B)よりも、傾斜面25からハブボルト23の軸方向内端面までの軸方向距離を大きくできるとともに、外輪2aの軸方向外端面24から回転フランジ12aの軸方向内側面までの軸方向距離(対向距離C)よりも、傾斜面25から回転フランジ12aの軸方向内側面までの軸方向距離を大きくできる。したがって、回転フランジ12aの回転時に、外輪2aの軸方向外端面24の軸方向外側に存在する空間に生じる圧力変化よりも、傾斜面25の軸方向外側に存在する空間に生じる圧力変化を小さくすることができる。このため、立板部41の径方向外端縁と傾斜面25との間を軸方向に移動する気流を少なくできる。
【0047】
しかも、立板部41の径方向外端縁と傾斜面25との対向距離(A)を、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(B)よりも小さくし、かつ、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との対向距離(C)よりも小さくしている。このため、立板部41の径方向外端縁の軸方向内側の角部Xと傾斜面25との間部分に生じる気流が、図2の(A)の場合には、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との間部分に生じる気流よりも速くなり、図2の(B)の場合には、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との間部分に生じる気流よりも速くなる。したがって、立板部41の角部Xと傾斜面25との間の空間の圧力が、図2の(A)の場合には、ハブボルト23の軸方向内端面と外輪2aの軸方向外端面24との間の空間の圧力よりも低下し、図2の(B)の場合には、回転フランジ12aの軸方向内側面と外輪2aの軸方向外端面24との間の空間の圧力よりも低下する。この結果、摺接環20aの径方向外側を軸方向内側に向けて移動しようとする異物を、立板部41の角部Xと傾斜面25との間の空間に留めておくができ、異物がシールリップ38aにまで到達することを抑制できる。また、立板部41の角部Xと傾斜面25との間の空間に留められた異物は、ハブ3aの回転速度が低下した場合やハブ3aの回転が停止した場合に、傾斜面25のうちで鉛直方向下側に位置する部分を伝って外部に直ちに排出される。したがって、外側密封部材6aの密封性能の向上を図ることができる。
【0048】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図3を用いて説明する。
本例では、外側密封部材6bの構造を、実施の形態の第1例の構造から変更している。具体的には、摺接環20bを構成する嵌合筒部39の軸方向内端部に、径方向内側に向けて略直角に折れ曲がった略円輪状の内向フランジ部45を設けている。そして、摺接環20bを軸部11bの軸方向外端部に外嵌固定した状態で、内向フランジ部45の軸方向外側面を、軸部11bの外周面に形成した、ハブ3aの中心軸O図1参照)に直交する仮想平面上に存在する平坦面状の突き当て面46に対して軸方向に当接させて、摺接環20bの軸方向位置を規制している。
【0049】
また、外側シールリング19aの外側シール部35を構成する複数本のシールリップ38a~38cのうち、グリースリップと呼ばれるシールリップ38cの周囲に、円環状のガータスプリング47を外嵌している。そして、ガータスプリング47が発揮する弾力により、シールリップ38cの先端縁を嵌合筒部39の外周面に向けて押し付けている。また、ガータスプリング47の脱落を防止するために、シールリップ38cの先端部(軸方向内端部)に、径方向外側に向けて略垂直に折れ曲がった外向フランジ部48を設けている。
【0050】
以上のような本例の構造では、摺接環20bを軸部11bに外嵌する際に、押圧治具により、内向フランジ部45の軸方向内側面を押圧することができ、摺接面となる立板部41の軸方向内側面を押圧しなくて済む。このため、立板部41の軸方向内側面に傷などの損傷が生じることを防止できるとともに、立板部41が軸方向に変形することを防止できる。したがって、外側密封部材6bのさらなる密封性能の向上を図れる。また、摺接環20bの圧入位置を、内向フランジ部45の軸方向外側面を突き当て面46に対して軸方向に当接させることで規制できるため、摺接環20bの圧入位置精度を向上することができ、この面からも外側密封部材6bの密封性能の向上を図れる。
【0051】
また、シールリップ38cの周囲にガータスプリング47を外嵌し、シールリップ38cの先端縁を嵌合筒部39の外周面に向けて押し付けているため、シールリップ38cの先端部と嵌合筒部39の外周面との接触部を通じてグリース漏れが生じることを有効に防止できる。空間18a内に封入されたグリースは、転動体4が公転することで生じるポンピング作用により軸方向に押し出されるため、外側列の転動体4の近傍に配置されたシールリップ38cには、軸方向内側からグリースが押し付けられる傾向になる。本例では、ガータスプリング47を利用して、嵌合筒部39の外周面に対するシールリップ38cの先端縁の摺接圧(リップ圧)を高めることができるため、グリースが漏れ出すことを有効に防止できる。また、シールリップ38cの先端部に径方向外側に向けて折れ曲った外向フランジ部48を設けているため、グリースの軸方向外側への移動を阻止し、グリースの還流を促すことができる。また、外向フランジ部48の内周面を嵌合筒部39の外周面に対して近接対向させることで、当該部分にラビリンスシールを形成することもできるため、グリース漏れをより有効に防止することができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同じである。
【0052】
本発明は、駆動輪用に限らず、従動輪用のハブユニット軸受に適用することができる。また、外側密封部材を構成する外側シールリング及び摺接環の構造は、実施の形態の各例に示した構造に限定されず、従来から知られた各種構造を採用することができる。内側密封部材の構造についても、実施の形態の各例に示した構造に限定されず、従来から知られた各種構造を採用すことができる。転動体としては、玉に限らず、円すいころや円筒ころを使用することもできる。また、実施の形態の各例は、適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、1a ハブユニット軸受
2、2a 外輪
3、3a ハブ
4 転動体
5、5a 内側密封部材
6、6a、6b 外側密封部材
7a、7b、7c、7d 外輪軌道
8、8a 静止フランジ
9、9a ハブ輪
10、10a 内輪
11、11a、11b 軸部
12、12a 回転フランジ
13、13a 小径段部
14a、14b、14c、14d 内輪軌道
15 取付孔
16 スタッド
17 保持器
18、18a 空間
19、19a 外側シールリング
20、20a、20b 摺接環
21a~21c シールリップ
22 雌ねじ孔
23 ハブボルト
24 軸方向外端面
25 傾斜面
26 シール固定面
27 パイロット部
28 スプライン孔
29 かしめ部
30 段差面
31 内側シールリング
32 内側スリンガ
33a~33d シールリップ
34 外側芯金
35 外側シール部
36 固定部
36a 円筒状部
36b 円すい筒状部
37 折れ曲がり部
38a~38c シールリップ
39 嵌合筒部
40 湾曲部
41 立板部
42 軸方向外側面
44 ガスケット
44a 軸方向外側面
44b 傾斜面部
44c 円筒面部
45 内向フランジ部
46 突き当て面
47 ガータスプリング
48 外向フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6