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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220809BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
C08J5/06 CEX
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018526449
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2017024908
(87)【国際公開番号】W WO2018008736
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2016136201
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】酒井 紅
(72)【発明者】
【氏名】伏見 速雄
(72)【発明者】
【氏名】砂川 寛一
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528239(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033026(WO,A1)
【文献】特開2013-227536(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073652(WO,A1)
【文献】特開2017-052840(JP,A)
【文献】特表2016-532020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/24
B29B 11/16,15/08-15/14
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ由来の繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂と、を含むシートであって、
前記シートの引張強度が67.5MPa以上であり、厚さ30μmでの黄色度が5.0以下であり、微細繊維状セルロースの含有量が、シートの全質量に対して40質量%以上であり、前記繊維状セルロースが、リン酸基又はリン酸基由来の置換基を有し、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が500以上1700以下であり、ポリビニルアルコールのけん化度が85mol%以上100mol%以下である、
シート。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が、前記シートの全質量に対して9質量%以上である請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、変性ポリビニルアルコール系樹脂である請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
架橋剤及び架橋剤由来の官能基から選択される少なくともいずれかをさらに含有する請求項1~のいずれか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに関する。具体的には、本発明は、微細繊維状セルロースを含むシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
【0003】
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。また、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂を含む複合シートが開発されている。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合シートにおいては、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。
【0004】
特許文献1には、セルロースナノファイバーと、ポリビニルアルコール系重合体を含む複合体が開示されている。特許文献2には、ポリビニルアルコール樹脂に対して数平均繊維径が2~150nmであるセルロース繊維を添加した製膜原液をキャスト製膜する工程を含むポリビニルアルコールフィルムの製造方法が開示されている。特許文献1及び2では、セルロースの水酸基の一部がカルボキシル基及びアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基に酸化することが記載されている。
また、特許文献3には、繊維径が1000nm以下の微細繊維を含有する分散液を基材上に塗工する塗工工程と、基材上に塗工した微細繊維を含有する分散液を乾燥することによって微細繊維含有シートを形成する乾燥工程を含む微細繊維含有シートの製造方法が開示されている。ここでは、分散液中に親水性高分子を添加し得る旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-242063号公報
【文献】特開2015-157955号公報
【文献】国際公開WO2014/196357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微細繊維状セルロース含有シートと樹脂を含む複合シートにおいては、屈曲時に割れが発生しないことが望ましい。そこで、本発明者らは、屈曲時の割れの発生が抑制されたシートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、パルプ由来の繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂とを含むシートの引張強度を15MPa以上とすることにより、屈曲時の割れの発生が抑制されたシートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] パルプ由来の繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂と、を含むシートであって、シートの引張強度が15MPa以上であるシート。
[2] 繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基由来の置換基を有する[1]に記載のシート。
[3] ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が、シートの全質量に対して20質量%以上である[1]又は[2]に記載のシート。
[4] ポリビニルアルコール系樹脂は、変性ポリビニルアルコール系樹脂である[1]~[3]のいずれかに記載のシート。
[5] 架橋剤及び架橋剤由来の官能基から選択される少なくともいずれかをさらに含有する[1]~[4]のいずれかに記載のシート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、屈曲時の割れの発生が抑制された微細繊維状セルロース含有シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
図2図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
図3図3は、シートの耐屈曲性の評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(シート)
本発明は、パルプ由来の繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂と、を含むシートに関する。本発明のシートの引張強度は15MPa以上である。本発明のシートは、パルプ由来の繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(以下、微細繊維状セルロースともいう)を含むシートであるため、微細繊維状セルロース含有シートと呼ぶこともできる。本発明のシートは、上記構成を有するシートであるため、屈曲時の割れの発生が抑制されている。すなわち、本発明のシートは、耐屈曲性に優れたシートである。
【0013】
本発明のシートの引張強度は15MPa以上であればよく、20MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましく、40MPa以上であることがさらに好ましく、50MPa以上であることがよりさらに好ましく、60MPa以上であることが特に好ましく、70MPa以上であることがより特に好ましく、80MPa以上であることが最も好ましい。また、シートの引張強度の上限値に特に制限はないが、例えば、500MPa以下とすることができる。本発明では、引張強度を上記範囲とすることにより、優れた耐屈曲性を発揮することができる。本発明は、微細繊維状セルロース含有シートにおいて耐屈曲性を高めることに成功したものであり、このような効果がシートの引張強度を調整することによって発揮され得ることを見出したものである。
ここで、シートの引張強度は、JIS P 8113に準拠し、引張試験機テンシロン(エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した値である。引張強度を測定する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したものを測定用の試験片とし、23℃、相対湿度50%の条件下で測定を行う。
【0014】
本発明においては、シートに含有させるポリビニルアルコール系樹脂の含有量や、けん化度、平均重合度を適切に制御し、さらに、微細繊維状セルロースの含有量との配合量のバランスをとることにより、シートの引張強度を上記範囲内とすることができる。
そして、引張強度を一定値以上に制御することによって、耐屈曲性に優れたシートを得ることができる。
【0015】
本発明のシートの引張弾性率は3.5GPa以上であればよく、4.0GPa以上であることが好ましく、4.5GPa以上であることがより好ましく、5.0GPa以上であることがさらに好ましい。また、シートの引張弾性率の上限値に特に制限はないが、例えば、50GPa以下とすることができる。このように、本発明のシートは優れた引張強度を有している。
ここで、シートの引張弾性率は、JIS P 8113に準拠し、引張試験機テンシロン(エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した値である。引張弾性率を測定する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したものを測定用の試験片とし、23℃、相対湿度50%の条件下で測定を行う。本発明においては、シートに含有させる樹脂種をポリビニルアルコール系樹脂とし、さらに、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量や微細繊維状セルロースの含有量を適切に制御し、バランスをとることにより、シートの引張弾性率を上記範囲内とすることができる。
【0016】
本発明のシートの黄色度は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。ここで、シートの黄色度は、シートの形成工程で得られたシートの黄色度であり、後述する加熱乾燥工程を経る前のシートの黄色度である。シートの黄色度は、JIS K 7373に準拠して測定した値である。測定機器としては、例えば、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を挙げることができる。
【0017】
本発明のシートを200℃で4時間真空乾燥した後の黄色度は、55以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましく、30以下であることがよりさらに好ましく、25以下であることが特に好ましく、20以下であることが最も好ましい。200℃で4時間真空乾燥した後のシートの黄色度も上記と同様にJIS K 7373に準拠して測定した値である。
【0018】
上述したように、加熱乾燥工程を経る前のシートの黄色度をYI1とし、200℃で4時間真空乾燥した後のシートの黄色度をYI2とした場合、YI2-YI1の値(ΔYI)は55以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましく、30以下であることがよりさらに好ましく、25以下であることが特に好ましく、20以下であることが最も好ましい。本発明においては、I2-YI1の値(ΔYI)を上記範囲内とすることにより、シートの黄変を抑制することができ、特に加熱乾燥による黄変を効果的に抑制することができる。本発明では、微細繊維状セルロースにリン酸基又はリン酸基由来の置換基を導入し、シートに含有させる樹脂種をポリビニルアルコール系樹脂とすること等によりΔYIの値を上記範囲に調整しやすくなる傾向が見られる。
【0019】
本発明のシートの全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、91%以上であることがさらに好ましい。また、シートのヘーズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。シートのヘーズは0%であってもよい。本発明では、透明性の高いシートが得られる点にも特徴がある。ここで、シートの全光線透過率はJIS K 7361に準拠して、ヘーズはJIS K 7136に準拠して、それぞれヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて測定される値である。本発明では、微細繊維状セルロースにリン酸基又はリン酸基由来の置換基を導入し、シートに含有させる樹脂種をポリビニルアルコール系樹脂とすること等により、シートの全光線透過率及びヘーズの値を上記範囲に調整しやすくなる傾向が見られる。
【0020】
本発明のシートの厚みは特に限定されるものではないが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。またシートの厚みの上限値は、特に限定されないが、たとえば1000μm以下とすることができる。なお、シートの厚みは、触針式厚さ計(マール社製、ミリトロン1202D)で測定することができる。
【0021】
本発明のシートの坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることがさらに好ましい。また、シートの坪量は、100g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以下であることがより好ましい。ここで、シートの坪量は、JIS P 8124に準拠し、算出することができる。
【0022】
(繊維状セルロース)
本発明のシートは、パルプ由来の繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む。微細繊維状セルロースは、イオン性官能基を有する繊維であることが好ましく、この場合イオン性官能基は、アニオン性官能基(以下、アニオン基ともいう)であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。なお、本明細書においては、リン酸基を有する繊維状セルロースは、リン酸化微細繊維状セルロースと呼ぶこともある。
【0023】
微細繊維状セルロースの含有量は、シートの全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。また、微細繊維状セルロースの含有量は95質量%以下であることが好ましい。
【0024】
シートにおける微細繊維状セルロースの含有量の下限は、特に限定されないが、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量に対して、0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましく、1/9倍以上、0.2倍以上、0.25倍以上、0.3倍以上、0.4倍以上、3/7倍以上、0.5倍以上、2/3倍以上、40/54倍以上、1倍以上,又は59.9/40.1倍以上でもよい。
シートにおける微細繊維状セルロースの含有量の上限は、特に限定されないが、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量に対して、20倍以下が好ましく、15倍以下がより好ましく、10倍以下がさらに好ましく、90.9/9.1倍以下、5倍以下、80/18倍以下、4倍以下、又は59.9/40.1倍以下でもよい。
【0025】
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量に対する微細繊維状セルロースの含有量が多い場合には、シートの弾性率が高くなる傾向がある。弾性率が高いシートの製造を意図する場合には、シートにおける微細繊維状セルロースの含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量に対して1倍~20倍が好ましく、2倍~20倍がさらに好ましく、4倍~20倍がさらに一層好ましく、4倍~10倍が特に好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量に対する微細繊維状セルロースの含有量が少ない場合には、シートの黄色度変化(ΔYI)が低くなる傾向がある。黄色度変化(ΔYI)が低いシートの製造を意図する場合には、シートにおける微細繊維状セルロースの含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量に対して0.05倍~1倍が好ましく、0.1倍~1倍がより好ましい。
【0026】
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いる。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有するシートは高強度が得られる傾向がある。
【0027】
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
【0028】
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
【0029】
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
【0030】
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
【0031】
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
【0032】
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
【0033】
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有することが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には-PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
【0034】
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
【化1】
【0035】
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);α及びα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
【0036】
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
【0037】
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
【0038】
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
【0039】
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0040】
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
【0041】
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
【0042】
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。また、繊維原料に対するリン原子の添加量を100質量%以下とすることにより、リン酸化効率を高めつつも使用する化合物Aのコストを抑制することができる。
【0043】
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1-フェニル尿素、1-ベンジル尿素、1-メチル尿素、1-エチル尿素などが挙げられる。
【0044】
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
【0045】
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
【0046】
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
【0047】
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
【0048】
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
【0049】
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
【0050】
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1mmol/g以上3.65mmol/g以下であることが好ましく、0.14mmol/g以上3.5mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以上3.2mmol/g以下がさらに好ましく、0.4mmol/g以上3.0mmol/g以下が特に好ましく、最も好ましくは0.6mmol/g以上2.5mmol/g以下である。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細化が容易でありながらも、微細繊維状セルロース同士の水素結合も残すことが可能で、シートにおいて良好な強度発現が期待できる。
【0051】
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
【0052】
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
【0053】
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
【0054】
<カルボキシル基の導入>
本発明においては、微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、たとえば繊維原料にTEMPO酸化処理などの酸化処理を施すことや、カルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって処理することで、カルボキシル基を導入することができる。
【0055】
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0056】
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
【0057】
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
【0059】
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性官能基導入工程と、後述する解繊処理工程の間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、官能基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
【0060】
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、官能基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済み官能基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
【0062】
<解繊処理>
イオン性官能基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0063】
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、またはt-ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
【0064】
微細繊維状セルロースは、解繊処理により得られた微細繊維状セルロース含有スラリーを、一度濃縮及び/又は乾燥させた後に、再度解繊処理を行って得てもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、及びWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、微細繊維状セルロース含有スラリーをシート化することで濃縮、乾燥し、該シートに解繊処理を行い、再度微細繊維状セルロース含有スラリーを得ることもできる。
【0065】
微細繊維状セルローススラリーを濃縮及び/又は乾燥させた後に、再度解繊(粉砕)処理をする際に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
【0066】
(ポリビニルアルコール系樹脂)
本発明のシートは、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)を含む。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されないが、50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることがより好ましく、70mol%以上であることがより一層好ましく、80mol%以上であることがよりさらに好ましく、85mol%以上であることがさらに一層好ましく、90mol%以上であることが特に層好ましく、95mol%以上であることが最も好ましい。
また、ポリビニルアルコールのけん化度は100mol%であってもよいが、99mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、JIS K 6726に準じて測定することができる。
【0067】
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、シートの全質量に対して9質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがよりさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることがより特に好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、92質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、45質量%以下であることが特に好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、たとえばIR測定などを用いて測定することが可能である。
【0068】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は特に限定されないが、300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は20000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましく、2200以下であることが特に好ましく、1700以下が最も好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度を上記範囲内とすることにより、シートの製造工程で得られる微細繊維状セルロースとポリビニルアルコール系樹脂を含むスラリーの粘度を適切に制御しやすくなる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準じて測定することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、重合度が低く、かつけん化度が高いこと(例えば、平均重合度1700以下、かつけん化度90mol%以上)が好ましい態様の一例である。
【0069】
ポリビニルアルコール系樹脂は、未変性ポリビニルアルコール系樹脂であってもよく、変性ポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂として、未変性ポリビニルアルコール系樹脂と変性ポリビニルアルコール系樹脂の両方を組み合わせたものを用いてもよい。ここで、変性ポリビニルアルコール系樹脂は、未変性ポリビニルアルコール系樹脂に水酸基及び酢酸基以外の官能基を導入したポリマーである。変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変成ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール等を挙げることができる。中でも、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールは好ましく用いられる。変性ポリビニルアルコール系樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。変性ポリビニルアルコール系樹脂はシートの製造工程において、その一部が自己架橋構造を形成する場合がある。変性ポリビニルアルコール系樹脂が自己架橋構造を形成することによりシートの強度を向上させることもできる。
【0070】
ポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも一部は架橋し、架橋ポリビニルアルコールを形成していることが好ましい。特に変性ポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも一部が架橋し、架橋ポリビニルアルコールを形成していることが好ましい。この場合、変性ポリビニルアルコール系樹脂に導入された官能基(水酸基及び酢酸基を除く)の間に架橋構造が形成される。架橋構造を形成する架橋剤としては、後述する架橋剤を用いることができる。このような架橋構造は、NMR等の分析を行うことで検出することができる。
【0071】
本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量や、けん化度、平均重合度を適切に制御し、バランスをとることにより、上述のように引張強度を向上させることができる。そして、このように引張強度を一定値以上に制御することによって、耐屈曲性に優れたシートを得ることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂の樹脂種を適宜選択することによってもシートの引張強度を高めることができる。
【0072】
(架橋剤)
本発明のシートは、架橋剤及び架橋剤由来の官能基から選択される少なくともいずれかをさらに含有することが好ましい。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂を架橋する架橋剤であることが好ましい。このように架橋剤及び/又は架橋剤由来の官能基を含有することにより、引張強度と引張弾性率のバランスに優れたシートが得られやすくなる。
本発明のシートが架橋剤由来の官能基を含む場合、シートの製造時に添加した架橋剤がポリビニルアルコール系樹脂を架橋し、その架橋構造の一部が架橋剤由来の官能基として検出されることとなる。架橋剤及び/又は架橋剤由来の官能基の検出は、例えば、NMR測定やIR測定、MSのフラグメント解析、UV解析などを用いて分析することができる。
【0073】
架橋剤としては、例えば、クロム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ホウ素化合物等の無機系架橋剤や、グリオキザール、グリオキシル酸及びその金属塩、尿素樹脂、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、N-メチロール系化合物、アクリロイル系化合物、活性ハロゲン系化合物、エチレンイミノ系化合物等の有機系架橋剤や、金属、金属錯塩を挙げることができる。中でも本発明では、ヒドラジン系化合物を用いることが好ましい。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂を架橋する架橋剤であることが好ましいが、このような架橋剤は微細繊維状セルロースを架橋してもよく、微細繊維状セルロースとポリビニルアルコール系樹脂を架橋してもよい。
【0074】
ヒドラジン系化合物としては、例えば安息香酸ヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、n-酪酸ヒドラジド、イソ酪酸ヒドラジド、n-吉草酸ヒドラジド、イソ吉草酸ヒドラジド、ピバリン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられる。これらヒドラジン系化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジドが好ましく、水への溶解性や安全性を考慮するとアジピン酸ジヒドラジドがより好ましい。
【0075】
例えば、架橋ポリビニルアルコールが、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールを架橋することで得られるものである場合であって、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドが用いられる場合、アジピン酸ジヒドラジドの両末端アミノ基がそれぞれ、アセトアセチル基中のカルボニル基とエナミン反応することで架橋構造が形成される。本発明では、目的に応じて架橋剤と変性ポリビニルアルコールを選択することで種々の架橋ポリビニルアルコールを形成することができる。
【0076】
架橋剤の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂の全質量に対して、0.05質量%以上30質量%以下であることが好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲内とすることにより、架橋ポリビニルアルコールの含有量を適切な範囲とすることが容易となる。
【0077】
また、架橋剤及び/又は架橋剤由来の官能基を含む場合において、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、シートの全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましい。また、架橋剤及び/又は架橋剤由来の官能基を含む場合において、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤及び架橋剤由来の官能基の合計含有量は、NMR測定やMSのフラグメント解析、IR測定、UV解析などを用いて算出することができる。
【0078】
(任意成分)
本発明のシートには、上述した成分以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、たとえば、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、安定剤、界面活性剤等を挙げることができる。また、任意成分としては、例えば、親水性高分子(上記ポリビニルアルコール系樹脂やセルロース繊維は除く)や有機イオン等が挙げられる。
【0079】
また、本発明のシートには、ポリビニルアルコール系樹脂の他に、熱可塑性樹脂エマルジョン、熱硬化性樹脂エマルジョン、光硬化性樹脂エマルジョン等が添加されてもよい。熱可塑性樹脂エマルジョン、熱硬化性樹脂エマルジョン、光硬化性樹脂エマルジョンの具体例としては、特開2009-299043号公報に記載のものが挙げられる。
【0080】
(シートの製造方法)
シートの製造工程は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂とを含むスラリーを得る工程と、このスラリーを基材上に塗工する工程、又は、スラリーを抄紙する工程を含む。中でも、シートの製造工程は、微細繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂とを含むスラリー(以下、単にスラリーということもある)を基材上に塗工する工程を含むことが好ましい。また、微細繊維状セルロースは、リン酸化微細繊維状セルロースであることが好ましい。
【0081】
スラリーを得る工程では、スラリーに含まれる微細繊維状セルロース100質量部に対して、ポリビニルアルコール系樹脂を5質量部以上添加することが好ましく、10質量部以上添加することがより好ましく、15質量部以上添加することがさらに好ましく、20質量部以上添加することが特に好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の添加量は、200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の添加量を上記範囲内とすることにより、シートの耐屈曲性を向上させやすくなる。
【0082】
スラリーを得る工程では、ポリビニルアルコール系樹脂は、水に溶解した状態で添加することが好ましい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂を5質量%以上50質量%以下の濃度で含む水溶液と、微細繊維状セルロース含有スラリーを混合することが好ましい。
【0083】
<塗工工程>
塗工工程は、微細繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂とを含むスラリーを基材上に塗工し、これを乾燥して形成されたシートを基材から剥離することによりシートを得る工程である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。
【0084】
塗工工程で用いる基材の質は、特に限定されないが、スラリーに対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板又は金属板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛板、銅板、鉄板等の金属板及び、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を用いることができる。
【0085】
塗工工程において、スラリーの粘度が低く、基材上で展開してしまう場合、所定の厚み、坪量のシートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠の質は特に限定されないが、乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂板または金属板を成形したものが好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル板、ポリエチレンテレフタレート板、塩化ビニル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニリデン板等の樹脂板や、アルミ板、亜鉛板、銅板、鉄板等の金属板及び、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレス板、真ちゅう板等を成形したものを用いることができる。
【0086】
スラリーを塗工する塗工機としては、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましい。
【0087】
塗工温度は特に限定されないが、20℃以上45℃以下であることが好ましく、25℃以上40℃以下であることがより好ましく、27℃以上35℃以下であることがさらに好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、スラリーを容易に塗工でき、上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
【0088】
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が10g/m2以上100g/m2以下、好ましくは20g/m2以上60g/m2以下になるようにスラリーを塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、強度に優れたシートが得られる。
【0089】
塗工工程は、基材上に塗工したスラリーを乾燥させる工程を含むことが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0090】
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、20℃以上150℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及び微細繊維状セルロースが熱によって変色することを抑制できる。
【0091】
<抄紙工程>
シートの製造工程は、微細繊維状セルロースと、ポリビニルアルコール系樹脂とを含むスラリーを抄紙する工程を含んでもよい。抄紙工程で抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
【0092】
抄紙工程では、スラリーをワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得る。スラリーを濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維状セルロースやポリビニルアルコール系樹脂は通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0093】
スラリーからシートを製造する方法としては、特に限定されないが、例えばWO2011/013567に記載の製造装置を用いる方法等が挙げられる。この製造装置は、微細繊維状セルロースを含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させて繊維シートを生成する乾燥セクションとを備えている。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
【0094】
採用できる脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
【0095】
(積層体)
本発明は、シートにさらに他の層を積層した構造を有する積層体に関するものであってもよい。このような他の層は、シートの両表面上に設けられていてもよいが、シートの一方の面上にのみ設けられていてもよい。シートの少なくとも一方の面上に積層される他の層としては、例えば、樹脂層や無機層を挙げることができる。
【0096】
積層体の具体例としては、例えば、シートの少なくとも一方の面上に樹脂層が直接積層された積層体や、シートの少なくとも一方の面上に無機層が直接積層された積層体、樹脂層、シート、無機層がこの順で積層された積層体、シート、樹脂層、無機層がこの順で積層された積層体、シート、無機層、樹脂層がこの順で積層された積層体を挙げることができる。積層体の層構成は上記に限定されるものではなく、用途に応じて種々の態様とすることができる。
【0097】
<樹脂層>
樹脂層は、天然樹脂や合成樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、樹脂層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
【0098】
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
【0099】
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。なお、アクリル樹脂は、ポリアクリロニトリル及びポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0100】
樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの具体的なポリカーボネート系樹脂は公知であり、例えば特開2010-023275号公報に記載されたポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
【0101】
樹脂層を構成する樹脂は1種を単独で用いてもよく、複数の樹脂成分が共重合または、グラフト重合してなる共重合体を用いてもよい。また、複数の樹脂成分を物理的なプロセスで混合したブレンド材料として用いてもよい。
【0102】
シートと樹脂層の間には、接着層が設けられていてもよく、また接着層が設けられておらず、シートと樹脂層が直接密着をしていてもよい。シートと樹脂層の間に接着層が設けられる場合は、接着層を構成する接着剤として、例えば、アクリル系樹脂を挙げることができる。また、アクリル系樹脂以外の接着剤としては、例えば、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
【0103】
シートと樹脂層の間に接着層が設けられていない場合は、樹脂層が密着助剤を有してもよく、また、樹脂層の表面に親水化処理等の表面処理を行ってもよい。
密着助剤としては、例えば、イソシアネート基、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基及びシラノール基から選択される少なくとも1種を含む化合物や、有機ケイ素化合物が挙げられる。中でも、密着助剤はイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)及び有機ケイ素化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、例えば、シランカップリング剤縮合物や、シランカップリング剤を挙げることができる。
なお、親水化処理以外の表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ放電処理、UV照射処理、電子線照射処理、火炎処理等を挙げることができる。
【0104】
<無機層>
無機層を構成する物質としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン;これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、もしくは酸化炭化窒化物;またはこれらの混合物が挙げられる。高い防湿性が安定に維持できるとの観点からは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、またはこれらの混合物が好ましい。
【0105】
無機層の形成方法は、特に限定されない。一般に、薄膜を形成する方法は大別して、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)と物理成膜法(Physical Vapor Deposition、PVD)とがあるが、いずれの方法を採用してもよい。CVD法としては、具体的には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat-CVD)等が挙げられる。PVD法としては、具体的には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
【0106】
また、無機層の形成方法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition、ALD)を採用することもできる。ALD法は、形成しようとする膜を構成する各元素の原料ガスを、層を形成する面に交互に供給することにより、原子層単位で薄膜を形成する方法である。成膜速度が遅いという欠点はあるが、プラズマCVD法以上に、複雑な形状の面でもきれいに覆うことができ、欠陥の少ない薄膜を成膜することが可能であるという利点がある。また、ALD法には、膜厚をナノオーダーで制御することができ、広い面を覆うことが比較的容易である等の利点がある。さらにALD法は、プラズマを用いることにより、反応速度の向上、低温プロセス化、未反応ガスの減少が期待できる。
【0107】
(用途)
本発明のシートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。さらに、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材などの他、シートそのものを補強材として使う用途にも適している。
【実施例
【0108】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0109】
〔実施例1〕
<リン酸基導入セルロース繊維の作製>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状 離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプ100質量部(絶乾質量)に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、リン酸変性セルロース繊維を得た。次いで、リン酸基を導入したセルロースに5000mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上13以下になるまで少しずつ添加して、パルプ分散液を得た。その後、このパルプ分散液を脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。得られたリン酸変性セルロース繊維は、リン酸基の導入量が0.98mmol/gであった。また、得られたリン酸変性セルロース繊維の繊維幅は、4~20nm程度であった。
【0110】
<機械処理>
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、固形分濃度が1.0質量%のパルプ懸濁液にした。このパルプ懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて5回処理し、微細繊維状セルロース懸濁液を得た。
【0111】
<ポリビニルアルコールの溶解>
イオン交換水に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、ポバール105、重合度:500、けん化度:98~99mol%)を20質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。
【0112】
<シート化>
微細繊維状セルロース懸濁液にポリビニルアルコール溶液を添加し、微細繊維状セルロース100質量部に対し、ポリビニルアルコールが10質量部になるように調製した。次いで、固形分濃度が0.6質量%となるよう濃度調整を行った。シートの仕上がり坪量が45g/m2になるように懸濁液を計量して、市販のアクリル板上に展開し、70℃の乾燥機で24時間乾燥した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の板を配置した。以上の手順により、シートが得られ、その厚みは30μmであった。
【0113】
〔実施例2〕
ポリビニルアルコールの添加量が25質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
【0114】
〔実施例3〕
ポリビニルアルコールの添加量が67質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
【0115】
〔実施例4〕
ポリビニルアルコールの添加量が100質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
【0116】
〔実施例5〕
イオン交換水に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、ポバール117、重合度:1700、けん化度:98~99mol%)を10質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。このポリビニルアルコール溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
【0117】
〔実施例6〕
ポリビニルアルコールの添加量が25質量部となるように調製した以外は、実施例5と同様にしてシートを得た。
【0118】
〔実施例7〕
ポリビニルアルコールの添加量が67質量部となるように調製した以外は、実施例5と同様にしてシートを得た。
【0119】
〔実施例8〕
イオン交換水に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、ポバール217、重合度:1700、けん化度:87~89mol%)を20質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。このポリビニルアルコール溶液を用いた以外は、実施例3と同様にしてシートを得た。
【0120】
〔実施例9〕
ポリビニルアルコールの添加量が100質量部となるように調製した以外は、実施例8と同様にしてシートを得た。
【0121】
〔実施例10〕
イオン交換水に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、ポバール124、重合度:2400、けん化度:98~99mol%)を5質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。このポリビニルアルコール溶液を用いた以外は、実施例3と同様にしてシートを得た。
【0122】
〔実施例11〕
イオン交換水に、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール(日本合成社製、ゴーセネックスZ200、重合度:1200、けん化度:99mol%以上)を10質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。このアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール溶液を、微細繊維状セルロース100質量部に対し、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールが25質量部となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
【0123】
〔実施例12〕
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの添加量が100質量部となるように調製した以外は、実施例11と同様にしてシートを得た。
【0124】
〔実施例13〕
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの添加量が22.5質量部となるように調製し、さらに架橋剤(日本化成(株)製、アジピン酸ジヒドラジド、濃度:35%)をアジピン酸ジヒドラジドの添加量が2.5質量部となるように添加した以外は、実施例12と同様にしてシートを得た。
【0125】
〔実施例14〕
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの添加量が80質量部となるように調製し、さらに架橋剤をアジピン酸ジヒドラジドの添加量が20質量部となるように変更した以外は、実施例13と同様にしてシートを得た。
【0126】
〔実施例15〕
イオン交換水に、カルボニル変性ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、DポリマーDF20)を10質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。このカルボニル変性ポリビニルアルコール溶液を用いた以外は、実施例14と同様にしてシートを得た。
【0127】
〔実施例16〕
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプとTEMPO1.6質量部と、臭化ナトリウム10質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が3.5mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上11以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、パルプにカルボキシル基を導入した。このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、カルボキシル基変性セルロース繊維を得た。得られたカルボキシル基変性セルロース繊維は、カルボキシル基の導入量が1.01mmol/gであった。これを原料として用いた以外は、実施例4と同様にしてシートを得た。
【0128】
〔比較例1〕
ポリビニルアルコールが100質量部となるように調製した以外は、実施例5と同様にしてシートを得た。
【0129】
〔比較例2〕
ポリビニルアルコールが100質量部となるように調製した以外は、実施例10と同様にしてシートを得た。
【0130】
〔評価〕
<方法>
実施例及び比較例で作製したシートについて以下の評価方法に従って評価を実施した。
【0131】
(1)セルロース表面の置換基量測定(滴定法)
リン酸基の導入量は、セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024:コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
カルボキシル基導入量は、図2(カルボキシル基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
【0132】
(2)シートの全光線透過率
JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて全光線透過率を測定した。
【0133】
(3)シートのヘーズ
JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いてヘーズを測定した。
【0134】
(4)加熱前後の黄色度
JIS K 7373に準拠し、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いてシート加熱前後の黄色度を測定した。なお、加熱後の黄色度は、200℃で4時間真空乾燥したシートの黄色度とした。また、黄色度の変化量としてΔYIを下記の式より算出した。
ΔYI=(加熱後の黄色度)-(加熱前の黄色度)
【0135】
(5)シートの引張物性
JIS P 8113に準拠し、引張試験機テンシロン(エー・アンド・デイ社製)を用いて引張弾性率及び引張強度を測定した。なお、引張弾性率及び引張強度を測定する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したものを試験片として用いた。
【0136】
(6)耐屈曲性
5cm角のシートを図3に示したように屈曲させ、図3におけるθが0°となるまで屈曲した際に割れないものは○、それ以外は×として評価した。なお、耐屈曲性を評価する際には、23℃、相対湿度50%で24時間調湿したものを試験片として用いた。
【0137】
【表1】
【0138】
実施例で得られたシートは耐屈曲性に優れており、屈曲時の割れの発生が抑制されていた。
【符号の説明】
【0139】
10 シート
図1
図2
図3