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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220809BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220809BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H02J3/38 160
H02J3/46
H02J7/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019022823
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020137130
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鶴丸 大介
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備と蓄電池設備とを含み、前記発電設備と前記蓄電池設備とからの出力を合成した合成電力を電力系統との連系点に出力するように構築された電力設備と、
現在時刻が予め定められた電力変動制限開始時刻に至る時点で前記発電設備の発電量が予め定めた事前発電抑制値を上回らないように前記発電設備の発電量を調整する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、
前記電力変動制限開始時刻よりも早い時刻として予め定められた基準時刻に現在時刻が至った場合に、前記合成電力が前記事前発電抑制値よりも大きいときには、前記発電設備の発電量を前記事前発電抑制値へと徐々に近づけるように構築され、
前記基準時刻から前記電力変動制限開始時刻までの期間に前記合成電力の変化率が予め定められた所定変化率を超えない範囲で前記発電設備の発電量を前記事前発電抑制値へと徐々に近づけるように構築され、
前記発電設備の発電量が、前記所定変化率に従った前記合成電力を上回っているときは、前記蓄電池設備に充電させ、前記発電設備の発電量が、前記所定変化率に従った前記合成電力を下回っているときは、前記蓄電池設備から放電させるように構築された
電力システム。
【請求項2】
前記基準時刻から前記電力変動制限開始時刻までの期間に前記合成電力の変化率が予め定められた所定変化率を超えない範囲で前記発電設備の発電量を前記事前発電抑制値へと徐々に近づけるように、前記基準時刻が前記電力変動制限開始時刻よりも予め定めた時間だけ遡った時刻に定められた請求項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムに関し、特に系統連系を行う電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許第6304392号公報に記載されているように、自然エネルギーで発電する発電設備と、蓄電池設備とを組み合わせた電力システムが知られている。自然エネルギーを利用した発電設備は、季節や天候等の自然的要因によって発電電力が左右されやすいために安定した電力供給を行えないという短所がある。この短所を補うために、蓄電池設備を組み合わせた電力システムが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6304392号公報
【文献】特許第5896096号公報
【文献】特許第5887260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電力システムが、電力系統との系統連系に用いられている。以下、自然エネルギーを用いた発電設備の発電電力と蓄電池設備の入出力電力とを合成したものを、「合成電力」とも称する。合成電力は、「電力システム全体としてみた合計の出力電力」に相当している。
【0005】
系統連系型の電力システムには、系統連系を行うための一定の要件が課されている。例えば第一要件として、前述した合成電力の変化率が予め指定された指定変化率範囲内に収まらなければならないという制約がある。この第一の要件を満たすために、発電設備の発電量および蓄電池設備の充放電を制御することで、合成電力の変化率を調整するという方法がある。この方法はいわば「短周期対策」と呼べるものである。
【0006】
例えば第二要件として、電力変動制限時間帯が定められている。電力変動制限時間帯は、電力システムから出力される合成電力の変化に制限が設けられる時間帯である。電力変動制限時間帯として、例えば、朝7時から朝10時までの間は電力システムから出力される合成電力が減少しないように発電を行わなければならない、などの制限が課される。電力変動制限時間帯には、合成電力の「増加」のみを禁止するものと、合成電力の「減少」のみを禁止するものと、合成電力の増加と減少の両方つまり一切の「変動」を禁止するものとがある。
【0007】
自然エネルギーを用いた発電設備は、天候に応じて発電電力が変動する。合成電力の減少あるいは変動が禁止された電力変動制限時間帯に、発電設備の発電量が低下すると、そのまま何らの対策もされなければ合成電力が低下してしまう。そこで、この発電量低下を蓄電池設備からの電力の出力つまり蓄電池の放電により補うことで、合成電力の変化を抑制し電力変動制限時間帯の要求を満たす方法がある。この方法はいわば「長周期対策」と呼べるものである。
【0008】
前述した第一要件と第二要件とを満たす観点からは、予備電力を蓄電池に蓄えさせておく必要がある。蓄えるべき予備電力は、発電量低下の際にその発電量低下を補うだけの電力出力を可能とするほどの電力量である。具体的には、蓄えるべき予備電力は、上述した短周期対策用の予備電力と長周期対策用の予備電力との合計となる。
【0009】
蓄電池に蓄えるべき予備電力はなるべく少ないほうが好ましい。その一方で、蓄電池に蓄える予備電力を抑制したとしても、電力変動制限時間帯に蓄電池の放電電力が不足することは防止しなければならない。
【0010】
本出願は、上述のような課題を解決するためになされたもので、電力変動制限が実施されるときに蓄電池の放電電力が不足することを抑制するように改良された電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願にかかる電力システムは、
発電設備と蓄電池設備とを含み、前記発電設備と前記蓄電池設備とからの出力を合成した合成電力を電力系統との連系点に出力するように構築された電力設備と、
現在時刻が予め定められた電力変動制限開始時刻に到達するときに前記発電設備の発電量が予め定めた事前発電抑制値を上回らないように前記発電設備の発電量を調整する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、
前記電力変動制限開始時刻よりも早い時刻として予め定められた基準時刻に現在時刻が至った場合に、前記合成電力が前記事前発電抑制値よりも大きいときには、前記発電設備の発電量を前記事前発電抑制値へと徐々に近づけるように構築され、
前記基準時刻から前記電力変動制限開始時刻までの期間に前記合成電力の変化率が予め定められた所定変化率を超えない範囲で前記発電設備の発電量を前記事前発電抑制値へと徐々に近づけるように構築され、
前記発電設備の発電量が、前記所定変化率に従った前記合成電力を上回っているときは、前記蓄電池設備に充電させ、前記発電設備の発電量が、前記所定変化率に従った前記合成電力を下回っているときは、前記蓄電池設備から放電させるように構築される。
【発明の効果】
【0012】
上記電力システムによれば、電力変動制限時間帯への突入に備えて、事前に発電量の抑制を実施することができる。事前に発電量を抑制しておくことで、電力変動制限が開始される時点での合成電力を抑制することができる。これにより電力変動制限に必要な予備電力を抑制することができるので、蓄電池の放電電力不足が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】系統連系における短周期対策を説明するための図である。
図2】系統連系における長周期対策を説明するための図である。
図3】系統連系における長周期対策を説明するための図である。
図4】系統連系における長周期対策における蓄電池設備の充電動作を説明するための図である。
図5】系統連系における長周期対策における蓄電池設備の放電動作を説明するための図である。
図6】実施の形態にかかる電力システムを示す構成図である。
図7】比較例にかかる放電電力不足を説明するための図である。
図8】実施の形態にかかる電力システムの事前発電抑制制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図6は、実施の形態にかかる電力システム1を示す構成図である。電力システム1は、自然エネルギーで発電する発電設備の一例である風力発電設備10と蓄電池設備20とを含む電力設備3と、風力発電設備10と蓄電池設備20とを制御するメインサイトコントローラ50(以下、「MSC50」とも称す)と、を備える。電力設備3は、合成電力Psumを電力系統2との連系点に出力するように構築されている。合成電力Psumは、風力発電設備10が出力する発電電力Pgenと、蓄電池設備20で入出力される蓄電池充放電電力Pbatの出力を合成したものである。
【0015】
図1は、系統連系における短周期対策を説明するための図である。図2および図3は、系統連系における長周期対策を説明するための図である。風力発電設備10の連系量が限界に達すると、風力発電設備10の短周期および長周期での出力変動に対して出力調整が追いつかなくなるため、以下に示す出力変動緩和対策が実施される。
【0016】
まず、短周期の出力変動緩和対策の一例は、全ての時間において、発電所合成電力の変化速度を「発電所定格出力の1%以下/分」とするものである。
【0017】
一方、長周期の出力変動緩和対策は例えば下記のように定められる。以下の指定時間帯において、発電所合成電力(以下、合成電力Psumとも称す)の変動方向が制御される。第一制限時間帯Tz1は7:00~10:00の時間帯に定められており、この期間には発電所合成電力を減少させてはならない。第二制限時間帯Tz2は11:30~13:30の時間帯に定められており、この期間には発電所合成電力を増減させてはならない。
【0018】
第三制限時間帯Tz3は16:00~19:00の時間帯に定められており、この期間には発電所合成電力を減少させてはならない。第四制限時間帯Tz4は20:00~23:00の時間帯に定められており、この期間には発電所合成電力を増加させてはならない。
【0019】
図3において、符号P1~P5は、複数の制限時間帯(Tz1,Tz2,Tz4)との関係で発電電力Pgenと合成電力Psumとの差分を埋めるために電力設備3で実施される電力制御動作を説明している。P2に示すように発電量の減少分が蓄電池設備20からの放電で賄われる。P3に示すように出力抑制値以上の発電があった場合には、P3aのようにオーバー分が蓄電池設備20に充電されたり、P3bのようにSOCが規定値以上の場合は風力発電設備10の発電が制限されたりする。
【0020】
P1に示すように、電力増加があったときの余剰増加分が蓄電池設備20に充電される。P4に示すように、蓄電池設備20のSOCが高すぎる場合には、風力発電設備10の発電量が制限される。P5に示すように、SOCが高くならないように風力発電設備10の発電量が制限される。
【0021】
図4は、系統連系における長周期対策における蓄電池設備20の充電動作を説明するための図である。合成電力目標値(上限)以上の発電があった場合には、合成電力Psumが合成電力目標値(上限)になるように余剰電力が蓄電池設備20に充電される。
【0022】
図5は、系統連系における長周期対策における蓄電池設備20の放電動作を説明するための図である。合成電力目標値(下限)以下の発電があった場合には、合成電力Psumが合成電力目標値(下限)になるように不足電力が蓄電池設備20の放電によって賄われる。
【0023】
引き続き、図6を用いて実施の形態にかかる電力システム1の構成及び動作を説明する。電力設備3は、主変圧器40と、第一計器用変成器41と、変流器42と、発電所合成電力計測器43と、を備えている。
【0024】
風力発電設備10は、複数の発電設備11と、風車コントローラ12と、第一合成変流器13と、発電計測器14と、第二計器用変成器30と、を備えている。複数の発電設備11それぞれは、風力発電機と、風力発電機に接続された第一電力変換装置と、を備えている。第一電力変換装置は、風力発電機からの交流を直流に変換する第一変換回路と、変換された直流からさらに交流をつくりだす第二変換回路と、を含んでいる。
【0025】
蓄電池設備20は、複数の蓄電池電力システム21と、バッテリマネジメントユニット(BMU)24と、蓄電池システムコントローラ25と、第二合成変流器22と、蓄電池充放電電力計測器23と、を備えている。第二計器用変成器30は、風力発電設備10と蓄電池設備20とで兼用されている。
【0026】
複数の蓄電池電力システム21それぞれは、蓄電池と、この蓄電池に接続された第二電力変換装置と、を含んでいる。第二電力変換装置は、交直電力変換を行うことで蓄電池に対して充電(つまり電力入力)または放電(つまり電力出力)を行う。
【0027】
MSC50は、充放電制御部51と、発電抑制制御部55と、を備えている。MSC50には、中央給電指令所から伝達されるオンライン発電抑制設定値Sctrと、発電所合成電力計測器43で計測された合成電力Psumの計測値と、発電計測器14で計測された発電電力Pgenの計測値と、蓄電池充放電電力計測器23で計測された充放電電力Pbatの計測値と、が入力されている。
【0028】
充放電制御部51は、充放電指令値演算部52を備えている。発電抑制制御部55は、発電抑制指令値演算部56と、リミット指令値演算部57とを備えている。発電抑制指令値演算部56は、オンライン発電抑制設定値Sctrに基づいて発電抑制指令値Slim0を演算する。
【0029】
リミット指令値演算部57は、発電抑制指令値Slim0に基づいて第一リミット指令値Slim1を演算する。風車コントローラ12は、第一リミット指令値Slim1に基づいて第二リミット指令値Slim2を演算する。それぞれの発電設備11は、第二リミット指令値Slim2に従って発電量を抑制する。
【0030】
BMU24は、それぞれの蓄電池電力システム21に含まれる蓄電池のSOC(State of Charge:蓄電池残量)を取得して、蓄電池システムコントローラ25に伝達する。蓄電池システムコントローラ25は、BMU24から伝達されたSOCを、MSC50の充放電制御部51に伝達する。
【0031】
充放電制御部51は、上記伝達されたSOCに基づいて、充放電指令値Scd0を演算して蓄電池システムコントローラ25に伝達する。蓄電池システムコントローラ25は、充放電指令値Scd0に基づいて、複数の蓄電池電力システム21それぞれに対する個別充放電指令値Scdpを算出する。個別充放電指令値Scdpは蓄電池電力システム21に含まれる第二電力変換装置に伝達され、第二電力変換装置は個別充放電指令値Scdpに従って蓄電池の充電または放電を実施するように作動する。
【0032】
MSC50は、現在時刻Tと、予め定められた電力変動制限開始時刻Tstartと電力変動制限開始時刻に対応付けて予め定められた電力変動制限終了時刻Tendと、現在時刻Tにおける合成電力Psumなどの情報に基づいて、電力変動制限を遵守するために各種の演算処理を行う。なお、電力変動制限開始時刻Tstartと電力変動制限終了時刻Tendとの組は、図2および図3で説明したように制限時間帯Tz1~Tz4で決定される。
【0033】
(事前発電抑制制御の動作)
以下、図7および図8を用いて、実施の形態にかかる事前発電抑制制御の内容を説明する。事前発電抑制制御は、主に図6のシステム構成における発電抑制制御部55において実施される制御である。
【0034】
図7は、比較例にかかる放電電力不足を説明するための図である。図7には、充電電力量Pbatinと、発電電力Pgenと、合成電力Psumと、蓄電池最大電力Pbatmxと、放電電力量Pbatoutとがそれぞれ例示されている。
【0035】
図7の比較例では、蓄電池設備20の蓄電池最大電力Pbatmxを上回る第一合成電力Psum1で、電力システム1の運転が電力変動制限時間帯Tz1へと突入している。電力変動制限時間帯Tz1の期間内では、電力の減少をしてはならない。従って、電力変動制限時間帯Tz1の期間内では、図7に示すように発電電力Pgenが急低下したとしても、合成電力Psumを第一合成電力Psum1に保つ必要がある。しかし放電電力量Pbatoutが不足すると合成電力Psumを保持できなくなり、図7に示すように放電電力不足による基準逸脱が発生してしまう問題がある。
【0036】
図8は、実施の形態にかかる電力システム1の事前発電抑制制御を説明するための図である。図8には破線で合成電力Psumが記載され、実線で発電出力Pgenが記載されている。例えば基準時刻Tprestartの前後を見ると把握されるように、発電出力Pgenが合成電力Psumを上回っている領域が充電電力量Pbatinに相当しており、発電出力Pgenが合成電力Psumを下回っている領域が放電電力量Pbatoutに相当している。
【0037】
実施の形態では、発電抑制制御部55が「事前発電抑制制御」を実施することで、図8に示すように事前発電抑制値Pspで電力システムの運転が電力変動制限時間帯Tz1へと突入する。その結果、図7の第一合成電力Psum1よりも低くされた事前発電抑制値Pspで電力変動制限時間帯Tz1の電力制御が行われるので、合成電力Psumを維持するための放電電力量Pbatoutが少なくても済む利点がある。従って放電電力不足を回避することができる。
【0038】
事前発電抑制制御とは、現在時刻が電力変動制限開始時刻Tstartに至る時点で風力発電設備10の発電量Pgenが事前発電抑制値Pspを上回らないように、風力発電設備10の発電量Pgenを調整する制御である。実施の形態にかかる事前発電抑制制御によれば、図8に示すように合成電力Psumも事前発電抑制値Pspを上回らないように抑制される。
【0039】
事前発電抑制値Pspは、電力システム1の定格出力100%を下回る値に予め設定されている。例えば、事前発電抑制値Pspは、定格出力の90%、80%、70%、あるいは60%などの値に予め設定されてもよい。
【0040】
なお、図8では一例として事前発電抑制値Pspが蓄電池設備20の蓄電池最大電力Pbatmxと同じ大きさに設定されている。変形例として、事前発電抑制値Pspが蓄電池最大電力Pbatmxと異なる値に設定されてもよい。
【0041】
なお、実施の形態にかかる事前発電抑制制御が実施されることにより、図8に図示した「事前発電抑制電力量」の分だけ発電が抑制されることとなる。
【0042】
図6に示した実施の形態のシステム構成との関係を述べる。実施の形態では、予め定められたタイミングで事前発電抑制値Pspが前述した発電抑制指令値Slim0に代入されることで事前発電抑制制御が実現されてもよい。予め定められたタイミングとは、予め定めた基準時刻Tprestartに現在時刻が至ったタイミングとしてもよい。
【0043】
基準時刻Tprestartは、電力変動制限開始時刻Tstartから予め定めた時間長だけ遡った時刻である。予め定めた時間長は、任意の時間長に設定することができる。一例を挙げると、基準時刻Tprestartは、電力変動制限開始時刻Tstartよりも一時間前、二時間前、あるいはそれ以上の数時間前の時刻に定められてもよい。これにより、発電量の抑制を緩やかに進行させることができるので、発電量の急変を避けることができる。
【0044】
実施の形態においては、事前発電抑制値Pspが発電抑制指令値Slim0に代入されると、その事前発電抑制値Pspの値に基づいて第一リミット指令値Slim1と第二リミット指令値Slim2とがそれぞれ更新される。複数の発電設備11それぞれが第二リミット指令値Slim2に従って制御されることで、合成電力Psumが事前発電抑制値Pspを上回らないように風力発電設備10の発電量が抑制される。
【0045】
発電抑制制御部55は、合成電力Psumが事前発電抑制値Pspよりも大きいときに風力発電設備10の発電量Pgenを事前発電抑制値Pspへと徐々に近づけるように構築されてもよい。例えば、電力変動制限開始時刻Tstartの2時間前に第一抑制量(例えば定格の80%など)まで発電量が抑制されるようにしてもよく、例えば電力変動制限開始時刻Tstartの1時間前には第二抑制量(例えば定格の70%など)まで発電量が抑制されるようにしてもよい。例えば一時間などの所定時間間隔で複数段階の事前発電抑制値Pspが可変設定されてもよく、これにより風力発電設備10の発電量Pgenを事前発電抑制値Pspへと少しずつ近づけることができる。
【0046】
基準時刻Tprestartは、電力変動制限開始時刻Tstartよりも予め定めた時間だけ遡った時刻に定められる。基準時刻Tprestartを電力変動制限開始時刻Tstartよりも十分に早い時刻に定めることで、前述した短周期の出力変動緩和対策を履行しつつ事前発電抑制制御を実施することができる。つまり、基準時刻Tprestartから電力変動制限開始時刻Tstartまでの期間に、合成電力Psumの変化率が所定変化率n(一例としてn=1%/分)を超えない範囲で合成電力Psumを事前発電抑制値Pspへと近づけるように、風力発電設備10の発電量Pgenを徐々に減らすことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電力システム、2 電力系統、3 電力設備、10 風力発電設備、11 発電設備、12 風車コントローラ、13 第一合成変流器、14 発電計測器、20 蓄電池設備、21 蓄電池電力システム、22 第二合成変流器、23 蓄電池充放電電力計測器、24 BMU(バッテリマネジメントユニット)、25 蓄電池システムコントローラ、30 第二計器用変成器、40 主変圧器、41 第一計器用変成器、42 変流器、43 発電所合成電力計測器、50 メインサイトコントローラ(MSC)、51 充放電制御部、52 充放電指令値演算部、55 発電抑制制御部、56 発電抑制指令値演算部、57 リミット指令値演算部、n 指定変化率、P 発電所定格出力、Pbat 蓄電池充放電電力、Pgen 発電電力、Psum 合成電力、Psum1 第一合成電力、Psp 事前発電抑制値、Scd0 充放電指令値、Scdp 個別充放電指令値、Sctr オンライン発電抑制設定値、Slim0 発電抑制指令値、Slim1 第一リミット指令値、Slim2 第二リミット指令値、T 現在時刻、T 所定期間、Tend 電力変動制限終了時刻、Tstart 開始時刻(電力変動制限開始時刻)、Tz1 第一制限時間帯(電力変動制限時間帯)、Tz2 第二制限時間帯(電力変動制限時間帯)、Tz3 第三制限時間帯(電力変動制限時間帯)、Tz4 第四制限時間帯(電力変動制限時間帯)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8