(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G01N35/02 E
(21)【出願番号】P 2019023497
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】辻田 公二
(72)【発明者】
【氏名】岩間 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】堀越 勝恵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】糸長 誠
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-068670(JP,A)
【文献】特開2015-127691(JP,A)
【文献】特開2014-070900(JP,A)
【文献】特開2001-289864(JP,A)
【文献】特開2005-030769(JP,A)
【文献】特開平9-297144(JP,A)
【文献】特開2013-190277(JP,A)
【文献】特開2011-058902(JP,A)
【文献】特開2013-064754(JP,A)
【文献】国際公開第01/000324(WO,A1)
【文献】特開2020-122735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と内周面とを含む穴形状を有するウェルが形成されている分析用ユニットが装着されるステージと、
前記ウェル内へ溶液を吐出する吐出ノズルと前記ウェル内へ吐出された前記溶液を吸引する吸引ノズルとを有する複数のノズルユニットと、
前記複数のノズルユニットが固定されているノズルヘッドと、
前記溶液を前記吐出ノズルから前記ウェル内へ吐出させ、前記ウェル内へ吐出された前記溶液を前記吸引ノズルにより吸引させ、前記ステージを所定の角度単位で回転させる制御部と、
を備え、
前記複数のノズルユニットは、それぞれが有する前記吸引ノズルが前記ウェルに対して互いに異なる位置に配置されるように、前記ノズルヘッドに固定され、
前記制御部は、前記ウェル内へ吐出された前記溶液が前記吸引ノズルにより吸引された後に、前記分析用ユニットが装着されている前記ステージを前記所定の角度だけ回転させ、前記複数のノズルユニットのうち、前記所定の角度だけ回転させた位置に対応する吸引ノズルにより前記溶液の残留物を吸引させる、
洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ステージと前記ノズルヘッドとが接近するように少なくともいずれかを移動させ、
前記ノズルヘッドは、前記ステージと前記ノズルヘッドとが接近した状態において、前記吸引ノズルの先端が前記ウェルの前記底面及び前記内周面の近傍に位置するように、前記ノズルユニットが固定されている、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記穴形状を有する複数のウェルが、前記分析用ユニットの中心に対して同一円周上に等間隔で配置され、
前記所定の角度は、前記複数のウェルのうち隣接する2つウェルが成す角度の整数倍である、
請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズルユニットのそれぞれは、複数の吸引ノズルを有し、前記複数の吸引ノズルは、隣接するノズルユニットが有する複数の吸引ノズルのいずれとも前記ウェルに対して互いに異なる位置に配置されるように、前記ノズルヘッドに固定されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
制御部が、吐出ノズルから、分析用ユニットに形成されて底面と内周面とを含む穴形状を有するウェル内へ溶液を吐出し、
前記制御部が、前記ウェル内へ吐出された前記溶液を吸引ノズルにより吸引し、
前記制御部が、前記分析用ユニットが装着されているステージを所定の角度だけ回転させ、前記吐出ノズルと前記吸引ノズルとを有する複数のノズルユニットのうち、前記所定の角度だけ回転させた位置に対応する吸引ノズルにより前記溶液の残留物を吸引させる、
洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見及び治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。特許文献1には、複数のウェルを有する分析用ユニットを用いて、分析用基板上に抗体を固定し、この抗体に検出対象物質を特異的に結合させ、この検出対象物質に微粒子を特異的に結合させ、この微粒子をカウントすることにより、検出対象物質を定量する分析方法が記載されている。
【0003】
ウェル内に抗体を含む緩衝液を注入してインキュベートさせることにより、分析用基板上に抗体を固定することができる。抗体を含む緩衝液を吸引ノズルで吸引し、さらにウェル内を洗浄液で洗浄する。洗浄液を吸引ノズルで吸引してウェル内の洗浄液を除去した後、検出対象物質を含む試料液をウェル内に注入してインキュベートさせる。これにより、検出対象物質と抗体とを特異的に結合させることができる。
【0004】
検出対象物質を含む試料液を吸引ノズルで吸引し、さらにウェル内を洗浄液で洗浄する。洗浄液を吸引ノズルで吸引してウェル内の洗浄液を除去した後、微粒子を含む緩衝液を注入してインキュベートさせる。これにより、微粒子と検出対象物質とを特異的に結合させることができる。
【0005】
微粒子を含む緩衝液を吸引ノズルで吸引し、さらにウェル内を洗浄液で洗浄する。洗浄液を吸引ノズルで吸引してウェル内の洗浄液を除去する。上記のプロセスにより、検出対象物質が微粒子と抗体とによってサンドイッチ捕獲された分析用基板を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェルを洗浄した後に、吸引しきれなかった洗浄液が残留物(吸引残り)として存在する場合がある。残留物は、ウェルの底面と内周面との境界部またはその近傍に生じ易い。残留物が生じると、特異反応を阻害するなど検出感度に悪影響を及ぼすとともに、ウェル内を乾燥させるための時間が必要となるため、作業が長時間化する要因となる。緩衝液または試料液についても、洗浄液と同様に残留物が生じる場合がある。洗浄液、緩衝液、及び、試料液を総称して溶液とする。
【0008】
本発明は、ウェル内における溶液の残留物の位置に限定されることなく、溶液の残留物を効率よく除去することができる洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、底面と内周面とを含む穴形状を有するウェルが形成されている分析用ユニットが装着されるステージと、前記ウェル内へ溶液を吐出する吐出ノズルと前記ウェル内へ吐出された前記溶液を吸引する吸引ノズルとを有する複数のノズルユニットと、前記複数のノズルユニットが固定されているノズルヘッドと、前記溶液を前記吐出ノズルから前記ウェル内へ吐出させ、前記ウェル内へ吐出された前記溶液を前記吸引ノズルにより吸引させ、前記ステージを所定の角度単位で回転させる制御部とを備え、前記複数のノズルユニットは、それぞれが有する前記吸引ノズルが前記ウェルに対して互いに異なる位置に配置されるように、前記ノズルヘッドに固定され、前記制御部は、前記ウェル内へ吐出された前記溶液が前記吸引ノズルにより吸引された後に、前記分析用ユニットが装着されている前記ステージを前記所定の角度だけ回転させ、前記複数のノズルユニットのうち、前記所定の角度だけ回転させた位置に対応する吸引ノズルにより前記溶液の残留物を吸引させる洗浄装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、制御部が、吐出ノズルから、分析用ユニットに形成されて底面と内周面とを含む穴形状を有するウェル内へ溶液を吐出し、前記制御部が、前記ウェル内へ吐出された前記溶液を吸引ノズルにより吸引し、前記制御部が、前記分析用ユニットが装着されているステージを所定の角度だけ回転させ、前記吐出ノズルと前記吸引ノズルとを有する複数のノズルユニットのうち、前記所定の角度だけ回転させた位置に対応する吸引ノズルにより前記溶液の残留物を吸引させる洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄装置及び洗浄方法によれば、ウェル内における溶液の残留物の位置に限定されることなく、溶液の残留物を精度よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】分析用ユニットの構成例を示す平面図である。
【
図2A】
図1のA-Aで切断した分析用ユニットの断面図である。
【
図2B】カートリッジを分析用基板より取り外した状態を示す断面図である。
【
図3】
図1のB-Bで切断したウェルを示す拡大斜視図である。
【
図4】第1実施形態の洗浄装置の一例を示す構成図である。
【
図5】分析用ユニットにおけるウェルと吐出ノズルと吸引ノズルとの相対位置の一例を示す平面図である。
【
図6】ウェルと複数の吸引ノズルとの相対位置の一例を示す平面図である。
【
図7】第1及び第2実施形態の洗浄方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】ウェル内に洗浄液の残留物が生じた状態の一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態の洗浄装置の一例を示す構成図である。
【
図10】分析用ユニットにおけるウェルと吐出ノズルと吸引ノズルとの相対位置の一例を示す平面図である。
【
図11】ウェルと複数の吸引ノズルとの相対位置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[分析用ユニット]
図1、
図2A、
図2B、及び
図3を用いて、一実施形態の分析用ユニットを説明する。
図1は一実施形態の分析用ユニットをカートリッジ側から見た状態を示している。
図2Aは
図1のA-Aで切断した分析用ユニットの断面を示している。
図2Bはカートリッジを分析用基板より取り外した状態を示している。
図3は
図1のウェルをB-Bで切断した状態を部分的に拡大して示している。
【0014】
図1に示すように、分析用ユニット100は、分析用基板110とカートリッジ120とを備える。分析用基板110は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。
【0015】
分析用基板110は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂またはシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。なお、分析用基板110は、上記の光ディスクに限定されるものではなく、他の形態または所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0016】
図1、
図2A、または
図2Bに示すように、分析用基板110は、中心孔111と切欠き部112とを有する。中心孔111は分析用基板110の中心部に形成されている。切欠き部112は分析用基板110の外周部に形成されている。切欠き部112は、分析用基板110の回転方向における基準位置を識別するための基準位置識別部である。
【0017】
図3に示すように、分析用基板110の表面には、凹部113と凸部114とが半径方向に交互に配置されたトラック領域115が形成されている。凹部113と凸部114とは、分析用基板110の内周部から外周部に向かってスパイラル状または同心円状に形成されている。凹部113は光ディスクのグルーブに相当する。凸部114は光ディスクのランドに相当する。光ディスクのトラックピッチに相当する分析用基板110のトラックピッチは例えば320nmである。
【0018】
図1、
図2A、または
図2Bに示すように、カートリッジ120は、周方向に複数の円筒状の貫通孔121が形成されている。複数の貫通孔121は、それぞれの中心が同一円周上に位置するように等間隔に形成されている。カートリッジ120は、中心部に形成された凸部122と、外周部に形成された凸部123とを有する。
【0019】
オペレータは、カートリッジ120を分析用基板110に取り付ける場合、凸部122を分析用基板110の中心孔111に挿入し、凸部123を切欠き部112に挿入する。これにより、カートリッジ120と分析用基板110とは互いに位置決めされる。
【0020】
図2Aまたは
図3に示すように、分析用ユニット100は、カートリッジ120の貫通孔121と分析用基板110の表面(トラック領域115)とによって形成される複数のウェル130を有する。ウェル130は、底面B130と内周面P130と開口部A130によって構成された穴形状を有する。分析用基板110の表面はウェル130の底面B130を構成している。貫通孔121の内側の面である内周面はウェル130の内周面P130を構成している。
【0021】
開口部A130は、カートリッジ120において底面B130とは反対側の面に形成されている。ウェル130は試料液、緩衝液、及び、洗浄液等の溶液を溜めるための容器である。なお、
図1では、一例として16個のウェル130を示しているが、ウェル130の数はこれに限定されるものではない。
【0022】
図2Bに示すように、カートリッジ120を分析用基板110から分離することができる。検出対象物質を標識する微粒子の検出及び計測は、カートリッジ120が分離された分析用基板110単体で行われる。
【0023】
[第1実施形態]
図4を用いて、第1実施形態の洗浄装置を説明する。
図4は第1実施形態の洗浄装置1の構成例を示している。洗浄装置1は、ステージ2と、ステージ駆動部3と、洗浄ユニット10と、制御部30とを備える。洗浄ユニット10は、吐出ノズル11と、吸引ノズル12と、ノズルヘッド13と、洗浄液吐出駆動部14と、洗浄液吸引駆動部15と、洗浄液用容器16と、廃液用容器17とを有する。
【0024】
吐出ノズル11及び吸引ノズル12は、ノズルヘッド13に固定されている。吐出ノズル11及び吸引ノズル12は、1組のノズルユニット18を構成する。
図1に示すように分析用ユニット100が16個のウェル130を有する場合、ノズルヘッド13には、各ウェル130に対応して16組のノズルユニット18が固定されている。
【0025】
制御部30は、ステージ制御部31と、吐出制御部32と、吸引制御部33とを有する。制御部30として、コンピュータ機器またはCPU(central processing unit)を用いてもよい。分析用ユニット100は、ウェル130とノズルユニット18とが位置決めされてステージ2に装着される。
【0026】
ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、ステージ2をノズルヘッド13に接近させたり離隔させたりすることができる。分析用ユニット100がステージ2に装着されている状態において、ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、分析用ユニット100をノズルヘッド13に接近させたり離隔させたりすることができる。ノズルヘッド13には、ステージ2とノズルヘッド13とが互いに接近した状態において、吸引ノズル12の先端が、ウェル130の底面B130と内周面P130との境界部の近傍に位置するように、ノズルユニット18が固定されている。
【0027】
ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、ステージ2を所定の角度単位で第1の回転方向へ回転させたり、第1の回転方向とは逆向きの第2の回転方向へ回転させたりすることができる。即ち、ステージ制御部31は、ステージ2に装着されている分析用ユニット100を所定の角度単位で第1及び第2の回転方向へ回転させることができる。第1の回転方向は例えば時計回りの方向であり、第2の回転方向は例えば反時計回りの方向である。ステージ2及び分析用ユニット100の回転角度については後述する。
【0028】
洗浄装置1はヘッド駆動部4を備えていてもよく、制御部30はヘッド制御部34を有していてもよい。ヘッド制御部34は、ヘッド駆動部4を制御することにより、ノズルヘッド13をステージ2に接近させたり離隔させたりすることができる。この場合、ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、ステージ2及びステージ2に装着されている分析用ユニット100を所定の角度単位で第1の回転方向へ回転させたり、第2の回転方向へ回転させたりする。
【0029】
洗浄液用容器16は洗浄液CSを溜めるための容器である。洗浄液CSとして純水を用いてもよい。吐出制御部32は、洗浄液吐出駆動部14を制御することにより、洗浄液用容器16に溜められている洗浄液CSをノズルヘッド13へ供給する。分析用ユニット100とノズルヘッド13とが互いに接近している状態において、洗浄液CSは、吐出ノズル11からウェル130内へ吐出される。
【0030】
吸引制御部33は、洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、ウェル130内に吐出された洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引する。ウェル130内から吸引された洗浄液CSは、廃液用容器17に溜められる。即ち、廃液用容器17は廃液WLを溜めるための容器である。洗浄液吐出駆動部14及び洗浄液吸引駆動部15としてポンプを用いてもよい。
【0031】
図5に示すように、複数のウェル130は、それぞれの中心が分析用ユニット100の中心C100に対して同一円周上に等間隔に配置されている。
図5には、例えば16個のウェル130が配置されている。分析用ユニット100の中心C100とステージ2の回転中心C2とノズルヘッド13の中心C13とは一致している。なお、16個のウェル130を区別するため、時計回りに、ウェル130a~ウェル130rとする。
【0032】
吐出ノズル11及び吸引ノズル12はウェル130に対応して配置されている。即ち、ノズルヘッド13には16個のウェル130に対応して16組のノズルユニット18が配置されている。16個の吸引ノズル12を区別するため、時計回りに、吸引ノズル12a~吸引ノズル12rとする。
【0033】
分析用ユニット100において、例えば16個のウェル130が同一円周上に等間隔に配置されている場合、ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、分析用ユニット100が装着されているステージ2を、例えば22.5度ごとに第1の回転方向へ回転させたり、第2の回転方向へ回転させたりする。ここで22.5度とは、全周360度をウェルの個数である16で除算した角度である。即ち、回転する角度の単位は、360度をウェルの個数で除算した角度である。
【0034】
ステージ2が第1の回転方向へ22.5度だけ回転すると、例えばウェル130aは、
図5に示すウェル130bの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12aに対応する位置から吸引ノズル12bに対応する位置へ移動する。ステージ2がさらに第1の回転方向へ22.5度だけ回転すると、ウェル130aは、
図5に示すウェル130bの位置からウェル130cの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12bに対応する位置から吸引ノズル12cに対応する位置へ移動する。
【0035】
ステージ2が第2の回転方向へ22.5度だけ回転すると、例えばウェル130aは、
図5に示すウェル130rの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12aに対応する位置から吸引ノズル12rに対応する位置へ移動する。ステージ2がさらに第2の回転方向へ22.5度だけ回転すると、ウェル130aは、
図5に示すウェル130rの位置からウェル130qの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12rに対応する位置から吸引ノズル12qに対応する位置へ移動する。
【0036】
図6は、分析用ユニット100が装着されているステージ2が第1または第2の回転方向へ22.5度単位で15回だけ回転した場合のウェル130(130a)と16組のノズルユニット18のそれぞれの吸引ノズル12(12a~12r)との相対位置を示している。複数の吸引ノズル12(12a~12r)は、1つのウェル130に対して互いに異なる位置に配置されている。具体的には、複数の吸引ノズル12(12a~12r)は、ウェル130の内周面P130の近傍に位置し、かつ、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置されるように、ノズルヘッド13に固定されている。
【0037】
図7に示すフローチャート、及び
図8を用いて、第1実施形態の洗浄方法の一例(具体的にはウェル130の洗浄方法の一例)を説明する。ステージ2には分析用ユニット100が装着されている。洗浄液用容器16には洗浄液CSが溜められている。なお、括弧内の記載は、ヘッド制御部34がヘッド駆動部4を制御することにより、ノズルヘッド13をステージ2に接近させたり離隔させたりする場合を示している。
【0038】
図7において、ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステップS11にて、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)へ接近させる。これにより、ノズルユニット18は、ウェル130内へ挿入される。ステージ2とノズルヘッド13とが互いに接近した状態では、吸引ノズル12の先端は、ウェル130の底面B130と内周面P130との境界部の近傍に位置する。
【0039】
吐出制御部32は、ステップS12にて、洗浄液吐出駆動部14を制御することにより、洗浄液用容器16に溜められている洗浄液CSを、吐出ノズル11からウェル130内へ吐出させる。吸引制御部33は、洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、ウェル130内に吐出された洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引する。これにより、ウェル130は、洗浄液CSによって洗浄される。
【0040】
吐出ノズル11の先端は、ウェル130の底面B130に対して、吸引ノズル12の先端よりも高い位置に配置されていることが望ましい。吐出ノズル11の先端の位置を高くすることにより、ウェル130を洗浄することによって汚れた洗浄液CS(廃液WL)が吐出ノズル11の先端に付着することを防止または低減させることができる。
【0041】
ウェル130の洗浄において、吐出制御部32及び吸引制御部33は、吐出ノズル11から洗浄液CSを吐出しながら、吸引ノズル12で洗浄液CSを吸引する洗浄処理を所定の時間だけ実行してもよいし、吐出ノズル11から洗浄液CSを吐出した後、ウェル130内に溜まった洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引する洗浄処理を所定の回数だけ実行してもよい。また、これらの洗浄処理を組み合わせてもよい。吐出制御部32及び吸引制御部33は、ステップS2における洗浄処理を所定の回数だけ繰り返し実行してもよい。
【0042】
ウェル130の洗浄が終了した後、吐出制御部32及び吸引制御部33は、洗浄液吐出駆動部14及び洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、洗浄液CSの吐出を停止させた後、洗浄液CSの吸引を停止させる。ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステップS13にて、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)から離隔させる。
【0043】
図8に示すように、ステップS12においてウェル130内の洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引した後(洗浄後)、ウェル130内に、液玉と称される洗浄液CSの残留物RS(吸引残り)が生じる場合がある。ウェル130内に残留物RSが存在すると、特異反応を阻害するなど検出感度に悪影響を及ぼすとともに、ウェル130内を乾燥させる時間が長くなるため、作業効率を悪化させる要因となる。残留物RSは、通常、ウェル130の底面B130と内周面P130との境界部に生じやすく、内周面P130の周方向においては不規則に生じる。
【0044】
ステージ制御部31は、ステップS14にて、ステージ2が所定の方向(例えば第1の回転方向)へ所定の回数(例えば15回)だけ回転したか否かを判定する。ステップS14においてステージ2が所定の方向へ所定の回数だけ回転していない(NO)と判定された場合、ステージ制御部31は、ステップS15にて、ステージ駆動部3を制御することにより、ステージ2を、分析用ユニット100が装着されている状態で所定の角度(例えば22.5度)だけ所定の方向へ回転させる。
【0045】
ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステップS16にて、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)へ接近させる。
【0046】
吸引制御部33は、ステップS17にて、洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、ウェル130内において吸引ノズル12に対応する位置またはその近傍の領域を吸引ノズル12で吸引する。ウェル130内において吸引ノズル12に対応する位置またはその近傍の領域に残留物RSが存在している場合、残留物RSは吸引ノズル12によって吸引される。洗浄装置1は、処理をステップS14へ戻す。ステップS14においてステージ2が所定の方向へ所定の回数だけ回転した(YES)と判定された場合、洗浄装置1は、洗浄処理を終了する。
【0047】
第1実施形態の洗浄装置1及び洗浄方法では、例えば
図6に示すように、複数の吸引ノズル12(12a~12r)が、ウェル130の内周面P130の近傍に位置し、かつ、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置されるように、ノズルヘッド13に固定されている。洗浄液CSの残留物RSがウェル130の内周面P130の周方向において不規則に存在していても、ステージ2が所定の方向へ所定の角度(例えば22.5度)だけ回転するごとに、吸引ノズル12で洗浄液CSの残留物RSを吸引することにより、残留物RSを精度よく吸引することができる。従って、第1実施形態の洗浄装置1及び洗浄方法によれば、ウェル130を洗浄した後に生じるウェル130内の洗浄液CSの残留物RSを複数の吸引ノズル12により精度よく除去することができる。
【0048】
[第2実施形態]
図9を用いて、第2実施形態の洗浄装置を説明する。
図9は第2実施形態の洗浄装置201の構成例を示している。説明をわかりやすくするために、第1実施形態の洗浄装置1と同じ構成部には同じ符号を付す。
【0049】
洗浄装置201は、ステージ2と、ステージ駆動部3と、洗浄ユニット210と、制御部30とを備える。洗浄ユニット210は、吐出ノズル11と、吸引ノズル12と、ノズルヘッド13と、洗浄液吐出駆動部14と、洗浄液吸引駆動部15と、洗浄液用容器16と、廃液用容器17とを有する。
【0050】
吐出ノズル11及び吸引ノズル12は、ノズルヘッド13に固定されている。1個の吐出ノズル11と2個の吸引ノズル12とにより、1組のノズルユニット218が構成される。
図1に示すように分析用ユニット100が16個のウェル130を有する場合、ノズルヘッド13には、各ウェル130に対応して16組のノズルユニット218が固定されている。
【0051】
制御部30は、ステージ制御部31と、吐出制御部32と、吸引制御部33とを有する。分析用ユニット100は、ウェル130とノズルユニット218とが位置決めされてステージ2に装着される。洗浄装置201はヘッド駆動部4を備えていてもよく、制御部30はヘッド制御部34を有していてもよい。
【0052】
吐出制御部32は、洗浄液吐出駆動部14を制御することにより、洗浄液用容器16に溜められている洗浄液CSをノズルヘッド13へ供給する。分析用ユニット100とノズルヘッド13とが互いに接近している状態において、洗浄液CSは、吐出ノズル11からウェル130内へ吐出される。
【0053】
吸引制御部33は、洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、ウェル130内に吐出された洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引する。ウェル130内から吸引された洗浄液CSは、廃液用容器17に溜められる。
【0054】
図10に示すように、複数のウェル130は、それぞれの中心が分析用ユニット100の中心C100に対して同一円周上に等間隔に配置されている。
図10には、例えば16個のウェル130が配置されている。分析用ユニット100の中心C100とステージ2の回転中心C2とノズルヘッド13の中心C13とは一致している。なお、16個のウェル130を区別するため、時計回りに、ウェル130a~ウェル130rとする。
【0055】
1個の吐出ノズル11と2個の吸引ノズル12とはウェル130に対応して配置されている。即ち、ノズルヘッド13には16組のノズルユニット218が16個のウェル130に対応して配置されている。16組の吸引ノズル12を区別するため、時計回りに、吸引ノズル12a~吸引ノズル12rとする。
【0056】
分析用ユニット100において、例えば16個のウェル130が同一円周上に等間隔に配置されている場合、ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、分析用ユニット100が装着されているステージ2を、例えば22.5度単位で第1の回転方向へ回転させたり、第2の回転方向へ回転させたりする。
【0057】
ステージ2が第1の回転方向へ22.5度だけ回転すると、例えばウェル130aは、
図10に示すウェル130bの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12aに対応する位置から吸引ノズル12bに対応する位置へ移動する。ステージ2がさらに第1の回転方向へ22.5度だけ回転すると、ウェル130aは、
図10に示すウェル130bの位置からウェル130cの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12bに対応する位置から吸引ノズル12cに対応する位置へ移動する。
【0058】
ステージ2が第2の回転方向へ22.5度だけ回転すると、例えばウェル130aは、
図10に示すウェル130rの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12aに対応する位置から吸引ノズル12rに対応する位置へ移動する。ステージ2がさらに第2の回転方向へ22.5度だけ回転すると、ウェル130aは、
図10に示すウェル130rの位置からウェル130qの位置へ移動する。即ち、ウェル130aは、吸引ノズル12rに対応する位置から吸引ノズル12qに対応する位置へ移動する。
【0059】
図11は、1つのウェル130に対する複数の吸引ノズル12の相対位置を示している。例えば、ウェル130aに着目すると、
図11に示すウェル130aは、
図10に示すウェル130aを、ウェル130aの中心を回転中心として反時計回りに90度だけ回転させた状態に相当する。なお、説明をわかりやすくするために、
図11には吸引ノズル12のみを示している。
【0060】
吸引ノズル12a~12dは、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置され、第1の吸引ノズルセットを構成する。吸引ノズル12e~12hは、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置され、第2の吸引ノズルセットを構成する。吸引ノズル12i~12mは、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置され、第3の吸引ノズルセットを構成する。吸引ノズル12n~12rは、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置され、第4の吸引ノズルセットを構成する。即ち、ノズルヘッド13には4つの吸引ノズルセットが固定され、さらに隣接するノズルユニット218が有するそれぞれの吸引ノズル12は、ウェル130に対して互いに異なる位置に配置されるように固定されている。
【0061】
例えばウェル130aに着目すると、ステージ2が第1の回転方向へ22.5度だけ回転することにより、2つの吸引ノズル12bは、2つの吸引ノズル12aに対して、ウェル130aの中心を回転中心として反時計回りに45度だけ回転させた位置に配置されることになる。さらに、ステージ2が第1の回転方向へ22.5度だけ回転することにより、2つの吸引ノズル12cは、2つの吸引ノズル12aに対して、ウェル130aの中心を回転中心として反時計回りに90度だけ回転させた位置に配置されることになる。さらに、ステージ2が第1の回転方向へ22.5度だけ回転することにより、2つの吸引ノズル12dは、2つの吸引ノズル12aに対して、ウェル130aの中心を回転中心として反時計回りに135度だけ回転させた位置に配置されることになる。
【0062】
即ち、分析用ユニット100が装着されているステージ2を第1の回転方向へ22.5度単位で3回だけ回転させることにより、
図11に示すように、ウェル130aは吸引ノズル12a~12dにより8箇所で吸引されることになる。従って、全てのウェル130は、対応する吸引ノズルセットにより、それぞれ8箇所で吸引されることになる。
【0063】
図7に示すフローチャート、及び
図8を用いて、第2実施形態の洗浄方法の一例(具体的にはウェル130の洗浄方法の一例)を説明する。ステージ2には分析用ユニット100が装着されている。洗浄液用容器16には洗浄液CSが溜められている。なお、括弧内の記載は、ヘッド制御部34がヘッド駆動部4を制御することにより、ノズルヘッド13をステージ2に接近させたり離隔させたりする場合を示している。
【0064】
図7において、ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステップS21にて、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)へ接近させる。これにより、ノズルユニット218は、ウェル130内へ挿入される。ステージ2とノズルヘッド13とが互いに接近した状態では、吸引ノズル12の先端は、ウェル130の底面B130と内周面P130との境界部の近傍に位置する。
【0065】
吐出制御部32は、ステップS22にて、洗浄液吐出駆動部14を制御することにより、洗浄液用容器16に溜められている洗浄液CSを、吐出ノズル11からウェル130内へ吐出させる。吸引制御部33は、洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、ウェル130内に吐出された洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引する。これにより、ウェル130は、洗浄液CSによって洗浄される。
【0066】
吐出ノズル11の先端は、ウェル130の底面B130に対して、吸引ノズル12の先端よりも高い位置に配置されていることが望ましい。吐出ノズル11の先端の位置を高くすることにより、ウェル130を洗浄することによって汚れた洗浄液CS(廃液WL)が吐出ノズル11の先端に付着することを防止または低減させることができる。
【0067】
ウェル130の洗浄において、吐出制御部32及び吸引制御部33は、吐出ノズル11から洗浄液CSを吐出しながら、吸引ノズル12で洗浄液CSを吸引する洗浄処理を所定の時間だけ実行してもよいし、吐出ノズル11から洗浄液CSを吐出した後、ウェル130内に溜まった洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引する洗浄処理を所定の回数だけ実行してもよい。また、これらの洗浄処理を組み合わせてもよい。吐出制御部32及び吸引制御部33は、ステップS22における洗浄処理を所定の回数だけ繰り返し実行してもよい。
【0068】
ウェル130の洗浄が終了した後、吐出制御部32及び吸引制御部33は、洗浄液吐出駆動部14及び洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、洗浄液CSの吐出を停止させた後、洗浄液CSの吸引を停止させる。ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステップS23にて、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)から離隔させる。ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)から離隔させた後に、吸引制御部33が洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、洗浄液CSの吸引を停止させてもよい。
【0069】
図8に示すように、ステップS22においてウェル130内の洗浄液CSを吸引ノズル12で吸引した後(洗浄後)、ウェル130内に、液玉と称される洗浄液CSの残留物RS(吸引残り)が生じる場合がある。ウェル130内に残留物RSが存在すると、特異反応を阻害するなど検出感度に影響を及ぼすとともに、ウェル130内を乾燥させる時間が長くなるため、作業効率を悪化させる要因となる。残留物RSは、ウェル130の底面B130と内周面P130との境界部に生じやすく、内周面P130の周方向においては不規則に生じる。
【0070】
ステージ制御部31は、ステップS24にて、ステージ2が所定の方向(例えば第1の回転方向)へ所定の回数(例えば3回)だけ回転したか否かを判定する。ステップS24においてステージ2が所定の方向へ所定の回数だけ回転していない(NO)と判定された場合、ステージ制御部31は、ステップS25にて、ステージ駆動部3を制御することにより、ステージ2を、分析用ユニット100が装着されている状態で所定の角度(例えば22.5度)だけ所定の方向へ回転させる。
【0071】
ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステップS26にて、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)へ接近させる。
【0072】
吸引制御部33は、ステップS27にて、洗浄液吸引駆動部15を制御することにより、ウェル130内において吸引ノズル12に対応する位置またはその近傍の領域を吸引ノズル12で吸引する。ウェル130内において吸引ノズル12に対応する位置またはその近傍の領域に残留物RSが存在している場合、残留物RSは吸引ノズル12によって吸引される。洗浄装置201は、処理をステップS24へ戻す。ステップS24においてステージ2が所定の方向へ所定の回数だけ回転した(YES)と判定された場合、洗浄装置201は、洗浄処理を終了する。
【0073】
第2実施形態の洗浄装置201及び洗浄方法では、例えば
図11に示すように、複数の吸引ノズル12(12a~12r)が、ウェル130の内周面P130の近傍に位置するようにノズルヘッド13に固定されている。複数の吸引ノズル12(12a~12d、12e~12h、12i~12m、及び12n~12r)は、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置されている。
【0074】
洗浄液CSの残留物RSがウェル130の内周面P130の周方向において不規則に存在していても、ステージ2が所定の方向へ所定の角度(例えば22.5度)だけ回転するごとに、吸引ノズル12で洗浄液CSの残留物RSを吸引することにより、残留物RSを精度よく吸引することができる。従って、第2実施形態の洗浄装置201及び洗浄方法によれば、ウェル130を洗浄した後に生じるウェル130内の洗浄液CSの残留物RSを複数の吸引ノズル12により精度よく除去することができる。
【0075】
第1実施形態の洗浄装置1及び洗浄方法では、例えば
図6に示すようにウェル130内の16箇所を吸引ノズル12で吸引することになる。吸引箇所が多いほど残留物RSを吸引する確度が向上する。第2実施形態の洗浄装置201及び洗浄方法では、例えば
図11に示すようにウェル130内の8箇所を、複数(例えば2個)の吸引ノズル12で吸引することになる。第2実施形態の洗浄装置201及び洗浄方法は、第1実施形態の洗浄装置1及び洗浄方法と比較して、少ない吸引回数で残留物RSを吸引するため、吸引による作業時間を短縮することができる。吸引箇所、吸引ノズル12、及び吸引回数は、ウェル130内の洗浄液CSの残留物RSを精度よく吸引できる条件に適宜設定されるものである。
【0076】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0077】
第1実施形態では、ステージ2を22.5度単位で15回だけ回転させ、16回の吸引作業を行っている。例えばステージ2を45度単位で7回だけ回転させ、8回の吸引作業を行ってもよいし、ステージ2を90度単位で3回だけ回転させ、4回の吸引作業を行ってもよい。即ち、ステージ2を回転させる角度は、複数のウェル130のうちの互いに隣接する2つのウェル130が成す角度の整数倍であればよい。2つのウェル130が成す角度とは、一方のウェル130(第1のウェル)の中心とステージ2の回転中心とを通る中心線(第1の中心線)と、他方のウェル130(第2のウェル)の中心とステージ2の回転中心とを通る中心線(第2の中心線)とが成す角度である。
【0078】
吸引ノズル12a~12rは、
図5及び
図10に示す配置に限定されるものではなく、ウェル130の内周面P130の近傍に位置し、かつ、内周面P130の周方向に対して互いに異なる位置に配置されていればよい。
【0079】
洗浄装置1及び201は、ステップS12及びS22において、吐出ノズル11から洗浄液CSをウェル130内へ吐出させた後、ステージ2とノズルヘッド13とを離隔させ、ステージ2を第1の回転方向と第2の回転方向とに交互に回転させてもよい。
【0080】
具体的には、吐出制御部32は、洗浄液吐出駆動部14を制御することにより、洗浄液用容器16に溜められている洗浄液CSを、吐出ノズル11からウェル130内へ吐出させる。ステージ制御部31(ヘッド制御部34)は、ステージ駆動部3(ヘッド駆動部4)を制御することにより、ステージ2(ノズルヘッド13)をノズルヘッド13(ステージ2)から離隔させる。ステージ制御部31は、ステージ駆動部3を制御することにより、ステージ2を第1の回転方向と第2の回転方向とに交互に所定の回数または所定の時間だけ回転させる。これにより、分析用ユニット100は振盪されるため、ウェル130に対する洗浄効果を向上させることができる。
【0081】
複数のノズルユニット18を用いてウェル130を複数回洗浄してもよい。具体例として、ウェル130を複数回洗浄する洗浄方法の一例を説明する。洗浄装置1または201は、ウェル130aを吐出ノズル11及び吸引ノズル12aを用いて洗浄(第1の洗浄)する。洗浄装置1または201は分析用ユニット100を回転させ、ウェル130aを吐出ノズル11及び吸引ノズル12bを用いて洗浄(第2の洗浄)する。さらに、洗浄装置1または201は分析用ユニット100を回転させ、ウェル130aを吐出ノズル11及び吸引ノズル12cを用いて洗浄(第3の洗浄)する。
【0082】
ウェル130と吐出ノズル11及び吸引ノズル12との相対位置が固定されている状態でウェル130を複数回洗浄すると、吐出ノズル11及び吸引ノズル12の先端の領域、即ち洗浄液CSが吐出されたり吸引されたりする領域で、分析用基板110上に捕獲された検出対象物質、微粒子、及び抗体が、洗浄液CSによって剥がれる場合がある。検出対象物質、微粒子、及び抗体の剥がれは、検出対象物質の検出精度を悪化させる要因となる。
【0083】
複数のノズルユニット18を用いてウェル130を複数回洗浄する場合、第1及び第2実施形態の洗浄装置1及び201、及び洗浄方法によれば、ウェル130と吐出ノズル11及び吸引ノズル12との相対位置を洗浄ごとに異ならせることができる。従って、ウェル130と吐出ノズル11及び吸引ノズル12との相対位置が固定されている状態でウェル130を複数回洗浄する場合と比較して、検出対象物質、微粒子、及び抗体の剥がれを防止または低減させることができるため、検出対象物質の検出精度の悪化を抑制することができる。
【0084】
第1及び第2実施形態では、洗浄液の吸引について説明したが、本発明は、抗体または微粒子を含む緩衝液、及び、検出対象物質を含む、または含んでいる可能性を有する試料液の吸引についても適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,201 洗浄装置
2 ステージ
11 吐出ノズル
12,12a~12r 吸引ノズル
13 ノズルヘッド
18,218 ノズルユニット
30 制御部
100 分析用ユニット
130,130a~130r ウェル
CS 洗浄液
RS 残留物