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  • 特許-廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法 図1
  • 特許-廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法 図2
  • 特許-廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法 図3
  • 特許-廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/44 20060101AFI20220809BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F23G5/44 B ZAB
F23G5/00 109
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019053444
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153601
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】薄木 太一
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-91534(JP,A)
【文献】特開2002-349823(JP,A)
【文献】実公昭7-13739(JP,Y1)
【文献】特開昭56-117927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパ底部の受床に投入された廃棄物を給塵装置のプッシャによって押し出し、受床の前端から火格子上に落下させる廃棄物焼却炉において、
前記受床の前端又はその近傍に、廃棄物が通過可能な複数の開口を形成する構造体を設け、
前記プッシャによって押し出された廃棄物を前記構造体の前記複数の開口を通過させて分断し、前記火格子上に落下させる廃棄物焼却炉。
【請求項2】
前記構造体は、格子状であることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物焼却炉。
【請求項3】
前記構造体は、上下方向に延びるスリット状の前記開口を形成する縦材を備えることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物焼却炉。
【請求項4】
ホッパ底部の受床に投入された廃棄物を給塵装置のプッシャによって押し出し、受床の前端から火格子上に落下させる廃棄物焼却方法において、
前記受床の前端又はその近傍に、廃棄物が通過可能な複数の開口を形成する構造体を設け、
前記プッシャによって押し出された廃棄物を前記構造体の前記複数の開口を通過させて分断し、前記火格子上に落下させる廃棄物焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(a)に示すように、従来の廃棄物焼却炉1(特許文献1参照)には、廃棄物Wを投入するためのホッパ2が設けられる。ホッパ2の底部には、給塵装置3が設けられる。給塵装置3は、廃棄物Wを押し出すプッシャ3aと、プッシャ3aを炉本体4に向かって進退させる駆動装置3bと、を備える。ホッパ2に投入された廃棄物Wは、プッシャ3aの往復運動によって炉本体4に送り出される。廃棄物Wが受床5の前端の落差壁6からせり出すと、やがて廃棄物Wはその自重によって火格子7上に落下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-302018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄物焼却炉1の継続的な安定燃焼には、廃棄物Wの定量供給が重要である。すなわち、一定量の廃棄物Wを一定速度で供給するのが理想である。しかしながら、廃棄物Wはその性状が不均一である。例えば、水分を多く含んだ廃棄物Wは、ホッパ2内で圧密され、固着して塊状となっている。このような廃棄物Wを給塵装置3によって送り出すと、塊状の廃棄物Wが受床5の前端の落差壁6の前方にせり出す棚吊り現象が発生する。廃棄物W同士が強固に固着すると、落差壁6からせり出した廃棄物Wが落差壁6の上部に残る廃棄物Wによって支えられるようになるからである。この棚吊り現象が発生すると、図4(b)に示すように、一度に大量の廃棄物Wが火格子7上に落下する。したがって、廃棄物Wの定量供給性が阻害され、燃焼不安定化を招くこととなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、廃棄物の定量供給性を向上させることができる廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ホッパ底部の受床に投入された廃棄物を給塵装置のプッシャによって押し出し、受床の前端から火格子上に落下させる廃棄物焼却炉において、前記受床の前端又はその近傍に、廃棄物が通過可能な複数の開口を形成する構造体を設け、前記プッシャによって押し出された廃棄物を前記構造体の前記複数の開口を通過させて分断し、前記火格子上に落下させる廃棄物焼却炉である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構造体が強固に固着した塊状の廃棄物を強制的に分断するので、棚吊り現象が発生して一度に大量の塊状の廃棄物が火格子上に落下するのを防止できる。このため、廃棄物の定量供給性を向上させることができ、燃焼を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の廃棄物焼却炉の縦断面図である。
図2】受床上に設けられる構造体の斜視図である。
図3】他の例の構造体の斜視図である。
図4】従来の廃棄物焼却炉の縦断面図である(図4(a)は棚吊り現象が発生している状態を示し、図4(b)は一度に大量の廃棄物が火格子上に落下した状態を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の廃棄物焼却炉を詳細に説明する。ただし、本発明の廃棄物焼却炉は種々の形態で具体化することができ、明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の廃棄物焼却炉10の縦断面図を示す。本実施形態の廃棄物焼却炉10は、内部に主燃焼室12及び二次燃焼室13を形成する炉本体11と、廃棄物Wが投入されるホッパ14と、ホッパ14の底部に設けられ、廃棄物Wを炉本体11へ送り出す給塵装置22と、炉本体11内での廃棄物Wの燃焼により生ずる排ガスを排出する排気部15と、廃棄物Wの燃焼後に残る未燃分を灰分として排出する灰分排出部16と、を有する。
【0011】
主燃焼室12の下部には、火格子19が設けられる。火格子19には、その下方の風箱(図示せず)に接続された送気管20により一次燃焼用空気が送入される。送気管20には、圧送ブロワ21が接続される。一次燃焼用空気は、火格子19を経由して炉本体11へ供給される。火格子19上の廃棄物Wは、火格子19の動作により前方へ送られながら、乾燥、燃焼、後燃焼され、後燃焼後の灰分は、灰分排出部16から排出される。
【0012】
主燃焼室12の燃焼ガス下流側には、二次燃焼室13が設けられる。二次燃焼室13では、未燃ガスが二次燃焼され、二次燃焼後の排ガスは排気部15から排出される。
【0013】
ホッパ14の上端の投入口に投入された廃棄物Wは、ホッパ14底部の受床17上に落下して堆積する。給塵装置22は、受床17上に設けられるプッシャ22aと、プッシャ22aを炉本体11に向かって進退させる駆動装置22bと、を備える。廃棄物Wは、プッシャ22aの往復運動によって、炉本体11の主燃焼室12に送り出される。受床17の前端には、受床17と火格子19との間に段差を形成する落差壁18が設けられる。
【0014】
受床17の前端の落差壁18の上部には、構造体24が設けられる。プッシャ22aの前端位置は、構造体24の手前にある。構造体24は、プッシャ22aによって押し出された廃棄物Wを分断して、火格子19上に落下させる。
【0015】
図2は、受床17上に設けられる構造体24の斜視図を示す。17は受床、18は落差壁、22aはプッシャ、19aは可動火格子、19bは固定火格子である。可動火格子19aと固定火格子19bは、火格子19を構成する。
【0016】
構造体24は、格子状であり、互いに交差する縦材24aと横材24bと、を備える。縦材24aは、上下方向に延びる。横材24bは、水平方向に延びる。縦材24aと横材24bとによって、複数の開口25が縦横に形成される。構造体24の下端は、受床17に固定される。構造体24の上端は、ホッパ14若しくは炉本体11によって形成される天井面26に固定される。なお、縦材24aと横材24bの本数は限定されるものではなく、複数本でも1本でもよい。構造体24を十字状にしてもよい。また、落差壁18周辺は1000℃近くの高温になるため、構造体24には、その温度に耐えうるだけの材料が求められる。これに耐えうる材料として、例えば、機械構造用炭素鋼鋼材であるS30Cを用いるとよい。
【0017】
プッシャ22aによって押し出された廃棄物W(図1参照)は、構造体24に押し付けられる。構造体24に押し付けられた廃棄物Wは、構造体24の複数の開口25を通過する際に分断される。構造体24の開口25を通過した廃棄物Wは、火格子19上に落下する。このように、本実施形態によれば、構造体24が強固に固着した廃棄物Wを強制的に分断するので、棚吊り現象が発生して一度に大量の廃棄物Wが火格子19上に落下するのを防止できる。
【0018】
なお、上記実施形態では、構造体24を受床17の前端の落差壁18の上部に配置しているが、受床17の前端の近傍に配置することもできる。構造体24を通過した廃棄物Wが火格子19上に落下すればよいからである。
【0019】
図3は、他の例の構造体27を示す。この例では、構造体27が上下方向に延びるスリット状の開口28を形成する縦材27a,27bを備える。縦材27a,27bは、上下方向に延びる。縦材27a,27bの断面形状は、限定されるものではなく、円形、四角形、三角形等にすることができる。構造体27の下端は、受床17に固定される。構造体27の上端は、ホッパ14若しくは炉本体11によって形成される天井面26に固定される。縦材27a,27bの両脇、すなわち縦材27aと縦材27bとの間、並びに縦材27a,27bと壁面との間にスリット状の開口28が形成される。なお、縦材27a,27bの本数は限定されるものではなく、複数本でも1本でもよい。
【0020】
この例でも、構造体27に押し付けられた廃棄物Wが、構造体27の複数の開口28を通過する際に分断される。構造体27の開口28を通過して落差壁18からせり出した廃棄物Wは、火格子19上に落下する。このため、棚吊り現象が発生して一度に大量の廃棄物Wが火格子上に落下するのを防止できる。
【符号の説明】
【0021】
10…廃棄物焼却炉
14…ホッパ
17…受床
19…火格子
22…給塵装置
22a…プッシャ
24…構造体
25…開口
27…構造体
28…開口
W…廃棄物
図1
図2
図3
図4