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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ピストン式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/12 20060101AFI20220809BHJP
   F04B 27/16 20060101ALI20220809BHJP
   F04B 39/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F04B27/12 P
F04B27/16
F04B39/10 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019054603
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2019183835
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2018068573
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】西井 圭
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】金井 明信
(72)【発明者】
【氏名】井上 宜典
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-119631(JP,A)
【文献】特開平05-306680(JP,A)
【文献】特開2009-024558(JP,A)
【文献】特開2017-096128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/12
F04B 27/16
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内に回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記各シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて前記駆動軸の軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力制御する制御弁とを備え、
前記シリンダブロックには、前記シリンダボアに連通する第1連通路が形成され、
前記移動体には、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通する第2連通路が形成され、
前記移動体の前記軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記移動体によって前記第1連通路と前記第2連通路とが連通され、
前記駆動軸を前記第1連通路に露出させることにより、前記駆動軸によって前記第1連通路と前記第2連通路とが非連通とされることを特徴とするピストン式圧縮機。
【請求項2】
前記駆動軸は、圧縮行程中又は吐出行程中の前記圧縮室に連通する前記第1連通路と対向する本体部と、前記軸心を挟んで前記本体部の反対側に形成され、前記移動体を案内しつつ前記軸孔に開く案内窓とを有し、
前記移動体は、前記案内窓内で前記軸心方向に移動可能に設けられている請求項1記載のピストン式圧縮機。
【請求項3】
前記移動体は、前記本体部とともに前記軸孔と整合する形成面と、前記形成面から凹設された前記第2連通路とを有している請求項2記載のピストン式圧縮機。
【請求項4】
複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内に回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記各シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて前記駆動軸の軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力を制御する制御弁とを備え、
前記シリンダブロックには、前記シリンダボアに連通する第1連通路が形成され、
前記移動体には、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通する第2連通路が形成され、
前記移動体の前記軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記駆動軸は、圧縮行程中又は吐出行程中の前記圧縮室に連通する前記第1連通路と対向する本体部を含み、
前記移動体は、前記軸心を挟んで前記本体部の反対側から前記軸孔内に露出する形成面を含み、
前記移動体によって前記第1連通路と前記第2連通路とが連通され、
前記本体部が前記第1連通路と対向することによって前記第1連通路と前記第2連通路とが非連通とされることを特徴とするピストン式圧縮機。
【請求項5】
前記第2連通路は、前記移動体の外周面に形成されている請求項1又は4記載のピストン式圧縮機。
【請求項6】
前記移動体は、前記本体部と組み合わさることで円筒体を構成する請求項4記載のピストン式圧縮機。
【請求項7】
前記ピストンが上死点から下死点に向かって移動することで前記圧縮室は吸入行程となり、
前記ピストンが前記下死点から前記上死点に向かって移動することで前記圧縮室は圧縮行程又は吐出行程となり、
前記本体部が、前記圧縮行程又は前記吐出行程にある前記圧縮室に連通する前記第1連通路に対向して、前記第1連通路と前記第2連通路とを非連通とし、
前記形成面が、前記移動体の移動に伴い前記吸入行程にある前記圧縮室に連通する前記第1連通路に対向して、前記第1連通路と前記第2連通路とを非連通とすることで、前記吸入行程にある前記圧縮室に吸入される冷媒の流量を少なくする請求項4記載のピストン式圧縮機。
【請求項8】
前記駆動軸は、前記軸心を挟んで前記本体部の反対側に形成され、前記移動体を案内しつつ前記軸孔に開く案内窓を有し、
前記移動体は、前記案内窓内で前記軸心方向に移動可能に設けられ、
前記駆動軸は、前記移動体と当接して前記移動体の前記軸心方向の移動量を規制する規制面を有し、
前記規制面は、前記案内窓に設けられている請求項4記載のピストン式圧縮機。
【請求項9】
前記駆動軸は、前記軸心を挟んで前記本体部の反対側に形成され、前記移動体を案内しつつ前記軸孔に開く案内窓を有し、
前記移動体は、前記案内窓内で前記軸心方向に移動可能に設けられ、
前記本体部は、前記案内窓に面して前記軸心方向に延びる案内面を有し、
前記移動体は、前記案内面に案内される被案内面を有している請求項4記載のピストン式圧縮機。
【請求項10】
前記第2連通路は、前記移動体の前記軸心方向の位置に応じて、前記駆動軸の1回転当たりで前記第1連通路と連通する前記軸心周りの連通角度が変化する請求項1又は4記載のピストン式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストン式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のピストン式圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジングと、駆動軸と、固定斜板と、複数のピストンと、吐出弁と、制御弁と、移動体とを備えている。
【0003】
ハウジングは、シリンダブロックを有している。シリンダブロックには、複数のシリンダボアが形成されている他、シリンダボアに連通する第1連通路が形成されている。また、ハウジングには、吐出室と、斜板室と、軸孔と、制御圧室とが形成されている。斜板室には圧縮機の外部から冷媒が吸入される。また、斜板室は軸孔と連通している。
【0004】
駆動軸は、軸孔内で回転可能に支承されている。固定斜板は、駆動軸の回転によって斜板室内で回転可能である。固定斜板は、駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である。ピストンは、シリンダボア内に圧縮室を形成し、固定斜板に連結される。圧縮室と吐出室との間には、圧縮室内の冷媒を吐出室に吐出させるリード弁式の吐出弁が設けられている。制御弁は、冷媒の圧力を制御して制御圧力とする。
【0005】
移動体は、駆動軸の外周面に設けられており、軸孔内に配置されている。これにより、移動体は、吸入室と制御圧室とを区画している。移動体は、軸孔内で駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて駆動軸の軸心方向に駆動軸に対して移動可能となっている。移動体の外周面には、第2連通路が形成されている。
【0006】
この圧縮機では、駆動軸が回転し、固定斜板が回転することで、ピストンがシリンダボア内を上死点と下死点との間で往復動する。ここで、ピストンが上死点から下死点に向かって移動することで、圧縮室は吸入行程となる。そして、この際に第1連通路と第2連通路とが連通することで、圧縮室に冷媒が吸入される。一方、第1連通路と第2連通路とが非連通となり、ピストンが下死点から上死点に向かって移動することにより、圧縮室は吸入した冷媒を圧縮する圧縮行程となり、さらには、圧縮した冷媒を吐出室に吐出する吐出行程となる。そして、この圧縮機は、移動体の軸心方向の位置に応じて、駆動軸の1回転当たりで第1連通路と第2連通路とが連通する軸心周りの連通角度を変化させることが可能となっている。これにより、圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量を変化させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-306680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種の圧縮機では、圧縮行程中や吐出行程中の圧縮室に連通する第1連通路を通じ、圧縮室内で圧縮された高圧の冷媒による荷重(以下、圧縮荷重という。)が移動体に作用する。これにより、上記従来の圧縮機では、移動体が軸孔内で軸心方向に交差する方向に押圧されることで、移動体は軸孔の内壁に押し付けられる状態となる。このため、軸心方向に移動する際の移動体と軸孔との摩擦力が大きくなる。これにより、移動体が軸心方向に好適に移動し難くなることから、制御性が低下する。
【0009】
そこで、より大きな推力によって移動体を軸心方向に移動させるために、移動体を大型化することが考えられる。しかし、この場合には、移動体の大型化に応じて軸孔等も大型化させる必要があることから、結果として圧縮機が大型化する。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現可能なピストン式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のピストン式圧縮機は、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内に回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記各シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて前記駆動軸の軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力制御する制御弁とを備え、
前記シリンダブロックには、前記シリンダボアに連通する第1連通路が形成され、
前記移動体には、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通する第2連通路が形成され、
前記移動体の前記軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記移動体によって前記第1連通路と前記第2連通路とが連通され、
前記駆動軸を前記第1連通路に露出させることにより、前記駆動軸によって前記第1連通路と前記第2連通路とが非連通とされることを特徴とする。
【0012】
本発明のピストン式圧縮機では、ピストンが上死点から下死点に向かって移動することで圧縮室は吸入行程となる。この際、移動体によって第1連通路と第2連通路とが連通されることで、圧縮室に冷媒が吸入される。そして、駆動軸によって第1連通路と第2連通路とが非連通となり、ピストンが下死点から上死点に向かって移動することにより、圧縮室は圧縮行程又は吐出行程となる。これにより、駆動軸には、第1連通路を通じて圧縮荷重が作用する一方、移動体には、圧縮荷重が作用し難くなる。このため、この圧縮機では、移動体が軸心方向に移動し易い。また、この圧縮機では、大きな推力を得るために移動体を必要以上に大型化させなくても足りる。
【0013】
したがって、本発明のピストン式圧縮機は、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現できる。
【0014】
駆動軸は、圧縮行程中又は吐出行程中の圧縮室に連通する第1連通路と対向する本体部と、軸心を挟んで本体部の反対側に形成され、移動体を案内しつつ軸孔に開く案内窓とを有し得る。そして、移動体は、案内窓内で軸心方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0015】
この場合には、本体部に対して圧縮荷重が作用する。また、移動体は、案内窓に設けられることにより、軸孔内に露出する。これにより、移動体は吸入行程中の圧縮室に連通する第1連通路と対向する。このため、この圧縮機では、第2連通路から吸入行程中の圧縮室に好適に冷媒を吸入させることが可能となる。
【0016】
また、この場合、移動体は、本体部とともに軸孔と整合する形成面と、形成面から凹設された第2連通路とを有していることが好ましい。これにより、駆動軸及び移動体が軸孔内で好適に回転可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のピストン式圧縮機は、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例のピストン式圧縮機に係り、最大流量時における断面図である。
図2図2は、実施例のピストン式圧縮機に係り、最少流量時における断面図である。
図3図3は、実施例のピストン式圧縮機に係り、駆動軸を示す要部拡大断面図である。
図4図4は、実施例のピストン式圧縮機に係り、図3のA-A断面を示す要部拡大断面図である。
図5図5は、実施例のピストン式圧縮機に係り、最大流量時における駆動軸及び移動体等を示す要部拡大断面図である。
図6図6は、実施例のピストン式圧縮機に係り、最少流量時における駆動軸及び移動体等を示す要部拡大断面図である。
図7図7は、実施例のピストン式圧縮機に係り、図5のB-B断面を示す要部拡大断面図である。
図8図8は、実施例のピストン式圧縮機に係り、図6のC-C断面を示す要部拡大断面図である。
図9図9は、実施例のピストン式圧縮機に係り、駆動軸が1回転する際の圧縮室内の圧力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例の圧縮機は、片頭ピストン式圧縮機である。この圧縮機は、車両に搭載されており、空調装置の冷凍回路を構成している。
【0020】
図1及び図2に示すように、実施例の圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、固定斜板5と、複数のピストン7と、弁形成プレート9と、移動体10と、制御弁13と、吸入機構15とを備えている。弁形成プレート9は、本発明の「吐出弁」の一例である。
【0021】
ハウジング1は、フロントハウジング17と、リヤハウジング19と、シリンダブロック21とを有している。本実施例では、フロントハウジング17が位置する側を圧縮機の前方側とし、リヤハウジング19が位置する側を圧縮機の後方側として、圧縮機の前後方向を規定している。また、図1及び図2の紙面の上方を圧縮機の上方側とし、紙面の下方を圧縮機の下方側として、圧縮機の上下方向を規定している。そして、図3以降では、図1及び図2に対応させて前後方向及び上下方向を表示する。なお、実施例における前後方向等は一例であり、本発明の圧縮機は、搭載される車両等に対応して、その姿勢が適宜変更される。
【0022】
フロントハウジング17には、径方向に延びる前壁17aと、前壁17aと一体をなして、前壁17aから軸心O方向で後方に延びる周壁17bとを有しており、略円筒状をなしている。前壁17aには、第1ボス部171と、第2ボス部172と、第1軸孔173とが形成されている。第1ボス部171は駆動軸3の軸心O方向で前方に向かって突出している。第1ボス部171内には軸封装置25が設けられている。第2ボス部172は後述する斜板室31内において、軸心O方向で後方に向かって突出している。第1軸孔173は、軸心O方向で前壁17aを貫通している。周壁17bには、吸入口174が形成されている。吸入口174は、配管を介して蒸発器と接続している。
【0023】
リヤハウジング19には、制御圧室27と、吐出室29と、吐出口29aとが形成されている。制御圧室27は、リヤハウジング19の中心側に位置している。吐出室29は環状に形成されており、制御圧室27の外周側に位置している。吐出口29aは、吐出室29と連通しており、リヤハウジング19の径方向に延びてリヤハウジング19の外部に開いている。吐出口29aは、配管を介して凝縮器と接続している。なお、配管、蒸発器及び凝縮器の図示は省略する。
【0024】
シリンダブロック21は、フロントハウジング17とリヤハウジング19との間に位置している。図7及び図8に示すように、シリンダブロック21には、シリンダボア21a~21fが形成されている。各シリンダボア21a~21fは、それぞれ周方向に等角度間隔で配置されている。図1及び図2に示すように、各シリンダボア21a~21fは、それぞれ軸心O方向に延びている。なお、シリンダボア21a~21fの個数は適宜設計可能である。
【0025】
シリンダブロック21は、フロントハウジング17と接合されることにより、フロントハウジング17の前壁17a及び周壁17bとの間に斜板室31を形成している。斜板室31は、吸入口174と連通している。これにより、斜板室31内には、吸入口174を通じて蒸発器を経た低圧の冷媒ガスが吸入される。
【0026】
また、図5及び図6に示すように、シリンダブロック21には、第2軸孔23が形成されている。第1軸孔173及び第2軸孔23は、本発明の「軸孔」の一例である。第2軸孔23は、シリンダブロック21の中心側に位置しており、シリンダブロック21を軸心O方向に貫通している。第2軸孔23の後方側は、シリンダブロック21が弁形成プレート9を介してリヤハウジング19と接合されることにより、制御圧室27内に位置する。これにより、第2軸孔23は制御圧室27と連通している。
【0027】
また、図7及び図8に示すように、シリンダブロック21には、第1連通路22a~22fが形成されている。第1連通路22a~22fの一端側はシリンダボア21a~21fとそれぞれ連通している。各第1連通路22a~22fは、それぞれシリンダブロック21の径方向に延びている。これにより、各第1連通路22a~22fの他端側は、第2軸孔23と連通している。
【0028】
弁形成プレート9は、リヤハウジング19とシリンダブロック21との間に設けられている。この弁形成プレート9を介して、リヤハウジング19とシリンダブロック21とが接合されている。
【0029】
弁形成プレート9は、バルブプレート91と、吐出弁プレート92と、リテーナプレート93とで構成されている。バルブプレート91には、シリンダボア21a~21fに連通する6つの吐出孔910が形成されている。各シリンダボア21a~21fは、各吐出孔910を通じて吐出室29と連通する。
【0030】
吐出弁プレート92は、バルブプレート91の後面に設けられている。吐出弁プレート92には、弾性変形によって各吐出孔910を開閉可能な6つの吐出リード92aが設けられている。リテーナプレート93は、吐出弁プレート92の後面に設けられている。リテーナプレート93は、吐出リード弁92aの最大開度を規制する。
【0031】
駆動軸3は、鉄鋼製であり、高圧の冷媒ガスの圧縮荷重に対する剛性を有している。駆動軸3は、軸心O方向でハウジング1の前方側から後方側に向かって延びている。駆動軸3は、ねじ部3aと、第1径部3bと、第2径部3cとを有している。ねじ部3aは、駆動軸3の前端に位置している。このねじ部3aを介して駆動軸3は、図示しないプーリや電磁クラッチ等と連結されている。第1径部3bは、ねじ部3aの後端と連続しており、軸心O方向に延びている。
【0032】
第2径部3cは、第1径部3bの後端と連続しており、軸心O方向に延びている。第2径部3cは、第2軸孔23とほぼ同径をなす円筒状に形成されており、第1径部3bよりも大径となっている。図3及び図4に示すように、第2径部3cには、案内窓3dが形成されている。案内窓3dは、第2径部3cを周方向に半周に亘って形成されており、軸心O方向に延びている。ここで、図7及び図8に示すように、案内窓3dは、第2径部3cにおいて、第1連通路22a~22fのうち、吸入行程中の圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する側に形成されている。一方、第2径部3cにおいて、軸心Oを挟んで案内窓3dの反対側に位置する部分は、本体部3eとされている。つまり、本体部3eは、第2径部3cにおいて、第1連通路22a~22fのうち、圧縮行程中及び吐出行程中の圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する側に形成されている。図4に示すように、本体部3eは、案内窓3dに対向して軸心O方向に延びる半円形の樋形状を成している。
【0033】
また、図3に示すように、第2径部3cにおいて、案内窓3dに後向きに面する部分は、第1規制面301とされており、案内窓3dに前向きに面する部分は、第2規制面302とされている。また、第2径部3cにおいて、第1当接面301と第2当接面302との間に位置し、案内窓3dに面して軸心O方向に延びる部分、すなわち、本体部3eの端面は、案内面303とされている。
【0034】
図1及び図2に示すように、駆動軸3には、第1径路30aと軸路30bとが形成されている。第1径路30aは、第1径部3b内に形成されており、径方向に延びて第1径部3bの外周面に開いている。軸路30bは、第1軸路311、第2軸路312及び第3軸路313によって構成されている。第1軸路311は、第1径部3b内から第2径部3c内に亘って形成されている。第1軸路311は、軸心O方向に延びており、前端側で第1径路30aと連通している。
【0035】
図3に示すように、第2軸路312は第2径部3c内に形成されている。第2軸路312は、軸心O方向に延びており、前端側で第1軸路311と連通している。第2軸路312は、第1軸路311よりも大径に形成されている。これにより、第1軸路311と第2軸路312との間には第1段部314が形成されている。第3軸路313は第2径部3c内に形成されている。第3軸路313は、軸心O方向に延びており、前端側で第2軸路312と連通しており、後端が第2径部3cの後端、すなわち駆動軸3の後端に開いている。また、第3軸路313は、案内窓3dと連通している。これにより、第3軸路313は、案内窓3dと連通する箇所において、第2径部3cの外部と連通している。第3軸路313は、第2軸路312よりも大径に形成されている。これにより、第2軸路312と第3軸路313との間には第2段部315が形成されている。
【0036】
図1及び図2に示すように、駆動軸3は、第1径部3bを第1軸孔173に支承させるとともに、第2径部3cを第2軸孔23に支承させることにより、ハウジング1に回転可能に挿通されている。より具体的には、本実施例では、駆動軸3は、図7及び図8に示すR1方向に回転する。
【0037】
また、図5及び図6に示すように、第2径部3cの後端は、第2軸孔23内から突出してしており、制御圧室27内に延びている。これにより、軸路30bは、後端で制御圧室27と繋がっている。
【0038】
また、図1及び図2に示すように、第1ボス部171内では、軸封装置25に駆動軸3が挿通される。これにより、軸封装置25は、ハウジング1の内部とハウジング1の外部との間を封止する。
【0039】
固定斜板5は、駆動軸3の第1径部3bに圧入されており、斜板室31内に配置されている。これにより、固定斜板5は、駆動軸3が回転することにより、斜板室31内で駆動軸3とともに回転可能となっている。ここで、固定斜板5は、駆動軸3に垂直な平面に対する傾斜角度が一定となっている。また、斜板室31内において、第2ボス部172と固定斜板5との間には、スラスト軸受35が設けられている。
【0040】
また、固定斜板5には、径方向に延びて斜板室31内に開く導入路5aが形成されている。導入路5aは、第1径路30aと連通している。これにより、軸路30bは、導入路5a及び第1径路30aを通じて斜板室31とも繋がっている。
【0041】
各ピストン7は、各シリンダボア21a~21f内にそれぞれ収容されている。各ピストン7と、弁形成プレート9とにより、図7及び図8に示すように、シリンダボア21a~21f内に圧縮室45a~45fがそれぞれ形成されている。なお、図7及び図8では、説明を容易にするため各ピストン7の図示を省略している。
【0042】
図1及び図2に示すように、各ピストン7には、係合部7aが形成されている。各係合部7a内には、半球状のシュー8a、8bがそれぞれ設けられている。これらのシュー8a、8bによって、各ピストン7は固定斜板5に連結されている。これにより、シュー8a、8bは、固定斜板5の回転を各ピストン7の往復動に変換する変換機構と機能する。このため、各ピストン7は、それぞれシリンダボア21a~21f内をピストン7の上死点とピストン7の下死点との間で往復動することが可能となっている。以下では、各ピストン7の上死点及びピストン7の下死点について、それぞれ上死点及び下死点と記載する。
【0043】
図5及び図6に示すように、移動体10は、第1移動体11と第2移動体12とで構成されている。第1移動体11は、第2径部3cの案内窓3d内に設けられている。これにより、第1移動体11は、第2軸孔23内で駆動軸3と一体回転可能となっている。第1移動体11には、軸心O方向に延びる第1接続路110が形成されている。第1移動体11は軸心O方向に延びる円筒状をなしている。より具体的には、図7及び図8に示すように、第1移動体11は、形成面11aと摺動面11bと被案内面11cとを有している。形成面11aは、第2径部3cと同径をなす半円形状に形成されている。摺動面11bは、軸心Oを挟んで形成面11aの反対側に位置しており、第3軸路313と同径をなす半円形状に形成されている。被案内面11cは、形成面11aと摺動面11bとの間に形成されている。
【0044】
第1移動体11が案内窓3d内に設けられることにより、形成面11aは、軸心Oを挟んで本体部3eの反対側に位置して、第2軸孔23内に露出する。ここで、形成面11aは第2径部3cと同径をなす半円形状であることから、形成面11aは、本体部3eと組み合わさることで第2軸孔23とほぼ同径をなす円筒体を構成する。これにより、形成面11aは、第2径部3cが第2軸孔23内に配置されることにより、本体部3eとともに第2軸孔23と整合する。
【0045】
また、第1移動体11が案内窓3d内に設けられることにより、摺動面11bは第3軸路313内に配置される。そして、被案内面11cは、案内面303と当接する。これにより、第2径部3cは、第3軸路313及び案内面303を通じて第1移動体11を支持している。また、第1移動体11が案内窓3d内に設けられることにより、図5及び図6に示すように、軸路30b内において、第1移動体11の前面、すなわち、移動体10の前面には、第1、2軸路311、312を通じて吸入圧力が作用する。なお、吸入圧力については後述する。
【0046】
第1移動体11には、第1収容凹部111と第2収容凹部112とが形成されている。第1収容凹部111は、第1移動体11の前面から後方に向かって凹設されている。第2収容凹部112は、第1移動体11の後面から前方に向かって凹設されている。第1収容凹部111及び第2収容凹部112は、それぞれ第1接続路110と連通している。
【0047】
また、第1移動体11の軸心O方向の長さは、案内窓3dの軸心O方向の長さの比べて短く形成されている。このため、第1移動体11では、被案内面11cが案内面303に案内されつつ、摺動部11bが第3軸路313内を摺動することにより、第2軸孔23内において、案内窓3d内を軸心O方向に移動可能となっている。つまり、第1移動体11は、駆動軸3に対して軸心O方向に移動可能となっている。図5に示すように、第1移動体11は案内窓3d内を軸心O方向で最も前方に移動することにより、第1規制面301と当接する。これにより、第1移動体11の前方への移動量が規制される。また、図6に示すように、第1移動体11は案内窓3d内を軸心O方向で最も後方に移動することにより、第2規制面302と当接する。これにより、第1移動体11の後方への移動量が規制される。
【0048】
また、軸路30b内において、第1段部314と、第1収容凹部111との間には、コイルばね37が設けられている。コイルばね37は、第1移動体11、ひいては移動体10を案内窓3dの後方に向けて付勢している。
【0049】
また、第1移動体11では、形成面11aに第2連通路41が形成されている。第2連通路41は、第2径路41aと本体通路41bとからなる。第2径路41aは、形成面11aの径方向に延びており、第2収容凹部112と連通している。
【0050】
本体通路41bは、形成面11aに凹設されており、第2径路41aと連通している。より具体的には、図1及び図2に示すように、本体通路41bは、形成面11aにおいて第1移動体11の前後方向の略中央から後端まで延びるように形成されている。本体通路41bは、前端から後端に向かうにつれて、次第に外周面11aの周方向に大きく形成されている。つまり、形成面11aの周方向に小さく形成された第1部位411が本体通路41bの前端側に位置しており、形成面11aの周方向に大きく形成された第2部位412が本体通路41bの後端側に位置している。なお、本体通路41bの形状は適宜設計可能である。また、図5図8では、説明を容易にするため、本体通路41bの形状等を簡略化して図示している。
【0051】
図7及び図8に示すように、第2連通路41では、駆動軸3がR1方向に回転し、第1移動体11が案内窓3d内においてR1方向に回転することにより、本体通路41bが各第1連通路22a~22fと間欠的に連通する。そして、本体通路41bは、第1移動体11の案内窓3d内における位置に応じて、駆動軸3の1回転当たりで各第1連通路22a~22fと連通する軸心O周りの連通角度が変化する。以下、駆動軸3の1回転当たりで各第1連通路22a~22fと本体通路41bとが連通する軸心O周りの連通角度を単に連通角度と記載する。なお、図1及び図2では、説明のため、第1移動体11を含めた移動体10について、図5図8で示す位置よりも軸心O周りにずらした状態で図示している。
【0052】
図5及び図6に示すように、第2移動体12は第3軸路313内に設けられている。第2移動体12は、大径部12aと、小径部12bと、第2接続路12cと、第3径路12dとを有している。大径部12aは、第3軸路313とほぼ同径に形成されており、第2移動体12の後方に位置している。小径部12bは、大径部12aと一体をなしており、大径部12aから前方に向って延びている。小径部12bは、大径部12aよりも小径であり、第2収容凹部112に圧入されている。これにより、第2移動体12は第1移動体11に固定されて第1移動体11の後方に配置され、第1移動体11とともに回転可能となっている。また、第2移動体12は、第1移動体11が案内窓3d内を軸心O方向に移動することにより、第3軸路313内を軸心O方向に移動可能となっている。なお、第3軸路313内において、大径部12aと第2径部3cとをスプライン結合させても良い。
【0053】
第2接続路12cは、第2移動体12の内部を軸心O方向に延びており、第1接続路110と連通している。第3径路12dは、第2接続路12cと連通して第2移動体12の内部を径方向に延びており、大径部12a及び小径部12bの外周面に開いている。これにより、第3径路12dは、第2径路41aと連通している。
【0054】
第2移動体12は、第3軸路313内に設けられることにより、後面に制御圧力が作用する。これにより、第1移動体11の後面には、第2移動体12を通じて制御圧力が作用する。なお、制御圧力については後述する。
【0055】
図1及び図2に示すように、制御弁13は、リヤハウジング19に設けられている。また、リヤハウジング19及びシリンダブロック21に亘って、検知通路13aが形成されている。さらに、リヤハウジング19には、第1給気通路13b及び第2給気通路13cが形成されている。検知通路13aは、斜板室31と制御弁13とに接続している。第1給気通路13bは、吐出室29と制御弁13とに接続している。第2給気通路13cは、制御圧室27と制御弁13とに接続している。制御圧室27には、第1、2給気通路13b、13c及び制御弁13を通じて、吐出室29内の冷媒ガスの一部が導入される。また、制御圧室27は、図示しない抽気通路によって斜板室31と接続している。これにより、制御圧室27の冷媒ガスは、抽気通路によって、斜板室31に導出される。制御弁13は、検知通路13aを通じて斜板室31内の冷媒ガスの圧力である吸入圧力を感知することにより、弁開度を調整する。これにより、制御弁13は、第1、2給気通路13b、13cを経て、吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を調整する。具体的には、制御弁13は、弁開度を大きくすることにより、第1、2給気通路13b、13cを経て吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を増大させる。一方、制御弁13は、弁開度を小さくすることにより、第1、2給気通路13b、13cを経て吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を減少させる。こうして、制御弁13は、制御圧室27から斜板室31に導出される冷媒ガスの流量に対して、吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を変化させることで、制御圧室27の冷媒ガスの圧力である制御圧力を制御する。
【0056】
吸入機構15は、導入路5aと、第1径路30aと、軸路30bと、第1、2接続路110、12cと、第3径路12dと、第2連通路41とで構成されている。吸入機構15は、第2連通路41を通じて斜板室31の冷媒ガスを各圧縮室45a~45f内に吸入させる。具体的には、斜板室31の冷媒ガスは、導入路5aから、第1径路30a、軸路30b及び第1、2接続路110、12cを経て、第3径路12dに至る。そして、第3径路12dに至った冷媒ガスは、第2径路41aから本体通路41bに至る。これにより、吸入機構15は、本体通路41bを通じて各第1連通路22a~22fから各圧縮室45a~45f内に冷媒ガスを吸入させる。
【0057】
以上のように構成された圧縮機では、駆動軸3が回転することにより、斜板室31内で固定斜板5が回転する。これにより、各ピストン7が各シリンダボア21a~21f内を上死点と下死点との間で往復動することで、各圧縮室45a~45fでは、斜板室31から冷媒ガスを吸入する吸入行程と、吸入された冷媒ガスを圧縮する圧縮行程と、圧縮された冷媒ガスを吐出する吐出行程とが繰り返し行われることとなる。吐出行程において、冷媒ガスは弁形成プレート9によって吐出室29に吐出される。その後、吐出室29内の冷媒ガスは、吐出口29aを経て凝縮器に吐出される。
【0058】
この圧縮機では、図9に示すように、駆動軸3が0°から各圧縮室45a~45f内の圧力が最も高くなる駆動軸3の回転角度であるX1°まで回転する間に圧縮行程が行われる。そして、駆動軸3がX1°から180°まで回転する間に吐出行程が行われ、駆動軸3が180°から360°まで回転する間に吸入行程が行われる。つまり、駆動軸3が0°からX1°を経て、180°まで回転する間は、各ピストン7は下死点から上死点に向かって移動し、各圧縮室45a~45fは第2連通路41と非連通となる。一方、駆動軸3が180°から360°まで回転する間は、各ピストン7は上死点から下死点に向かって移動し、各圧縮室45a~45fは第2連通路41と連通し得る。
【0059】
ここで、図7及び図8では、圧縮室45aは、ピストン7が上死点から下死点に向かって移動する初期段階にあり、吸入行程の初期段階にあると規定する。これにより、圧縮室45bは、ピストン7が上死点から下死点に向かって移動する中期段階となり、吸入行程の中期段階となる。そして、圧縮室45cは、ピストン7が上死点から下死点に向かって移動する後期段階となり、吸入行程の後期段階となる。このように吸入行程にある圧縮室45a~45cは、第1連通路22a~22cを通じて第2連通路41と連通することにより、吸入機構15によって冷媒ガスが吸入される。
【0060】
一方、圧縮室45d~45fのうち、圧縮室45dは、ピストン7が下死点から上死点に向かって移動する初期段階となり、圧縮行程の初期段階となる。また、圧縮室45eは、ピストン7が下死点から上死点に向かって移動する中期段階となり、圧縮行程の中期段階となる。そして、圧縮室45fは、ピストン7が下死点から上死点に向かって移動する後期段階となり、圧縮行程の後期段階となる。圧縮室45fは、後期段階の圧縮行程の後、吐出行程になることで、圧縮室45fから吐出室29に圧縮された冷媒ガスを吐出する。
【0061】
そして、この圧縮機では、第1移動体11が案内窓3dに設けられることにより、第1移動体11の形成面11aは、第2軸孔23内において、第1連通路22a~22fのうち、吸入行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。これにより、第1移動体11、ひいては移動体10は、第1連通路22a~22fと第2連通路41とを連通させる。
【0062】
一方、第2径部3cの本体部3eは、軸心Oを挟んで案内窓3dの反対側に位置する。このため、本体部3eは、第2軸孔23内において、第1連通路22a~22fのうち、圧縮行程及び吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。これにより、本体部3e、ひいては駆動軸3は、第1連通路22a~22fと第2連通路41とを非連通とする。
【0063】
そして、この圧縮機では、第1移動体11を案内窓3d内で軸心O方向に移動させることにより、駆動軸3の1回転当たりで各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変更することができる。
【0064】
具体的には、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を増大させる場合には、制御弁13が弁開度を大きくすることで、吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を増大させる。こうして、制御弁13は、制御圧室27の制御圧力を増大させる。これにより制御圧力と吸入圧力との差圧である可変差圧が大きくなる。
【0065】
このため、移動体10では、第2移動体12が図6に示す位置から第3軸路313内を軸心O方向で前方に移動し始める。これにより、コイルばね37の付勢力に抗して、第1移動体11は案内窓3d内を軸心O方向で前方に移動し始める。これにより、本体通路41bは、各第1連通路22a~22fに対して前方に相対移動する。このため、本体通路41bでは、形成面11aの周方向に大きく形成された部分において、各第1連通路22a~22fと連通する状態となる。こうして、この圧縮機では、連通角度が徐々に大きくなる。
【0066】
そして、可変差圧が最大となることにより、図5に示すように、移動体10では、第1移動体11が案内窓3d内を最も前方に移動した状態となり、第1規制面301と当接する。これにより、本体通路41bでは、第2部位412において各第1連通路22a~22fと連通する状態となる。こうして、この圧縮機では、連通角度が最大となる。
【0067】
このように、連通角度が最大となることにより、図7に示すように、第1移動体11が回転することで、本体通路41bは、吸入行程の初期段階にある圧縮室45aと連通する。さらに、本体通路41bは、第1連通路22b、22cを通じて、吸入行程の中期段階や後期段階にある圧縮室45b、45cとも連通する。この際、本体部3eにより、第1連通路22d~22eと本体通路41bとは非連通となる。このように、連通角度が最大となることにより、各圧縮室45a~45fには、吸入行程の初期段階から後期段階までの間に吸入機構15によって冷媒ガスが吸入される。このため、各圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量が最も多くなる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大となる。
【0068】
一方、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を減少させる場合には、制御弁13が弁開度を小さくすることで、吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を減少させる。こうして、制御弁13は、制御圧室27の制御圧力を減少させる。これにより、可変差圧が小さくなる。
【0069】
このため、コイルばね37の付勢力によって、移動体10では、第1移動体11が図5に示す状態から案内窓3d内を軸心O方向で後方に移動し始める。これにより、本体通路41bは、各第1連通路22a~22fに対して後方に相対移動する。これにより、本体通路41bでは、形成面11aの周方向に小さく形成された部分において、各第1連通路22a~22fと連通する状態となる。このため、連通角度が徐々に小さくなる。また、第1移動体11の移動に伴って、第2移動体12は第3軸路313内を軸心O方向で後方に移動し始める。
【0070】
そして、可変差圧が最小となることにより、図6に示すように、第1移動体11は案内窓3d内を最も後方に移動した状態となり、第2規制面302と当接する。これにより、本体通路41bでは、第1部位411において各第1連通路22a~22fと連通する状態となる。こうして、この圧縮機では、連通角度が最小となる。
【0071】
このように、連通角度が最小となることにより、図8に示すように、第1移動体11が回転することで、本体通路41bは、第1連通路22aとだけ連通する。つまり、本体通路41bは、吸入行程の初期段階にある圧縮室45aとだけ連通する。この際、吸入行程の中期段階にある圧縮室45bに連通する第1連通路22bと、吸入行程の後期段階にある圧縮室45cに連通する第1連通路22cとには、本体通路41bを除いた形成面11aが対向する。このため、第1連通路22b、22cと本体通路41bとは非連通となる。また、この際も、本体部3eにより、第1連通路22d~22eと本体通路41bとは非連通となる。このように、連通角度が最小となることにより、各圧縮室45a~45fには、吸入行程の初期段階の間のみ吸入機構15によって冷媒ガスが吸入される。このため、各圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量が最も少なくなる。こうして、この圧縮機では、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少となる。
【0072】
この圧縮機では、圧縮行程中又は吐出行程中の圧縮室45a~45fと連通する第1連通路22a~22fを通じて、圧縮行程で圧縮された高圧の冷媒ガスの一部が第2軸孔23に向かって流通する。この点、この圧縮機では、上記のように、第2径部3cの本体部3eが軸孔23内において、圧縮行程中又は吐出行程中の圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。つまり、図7及び図8では、圧縮室45d~45fが圧縮行程となり、駆動軸3がさらに回転すると圧縮室45fが吐出行程となることから、本体部3eは、第2軸孔23内で第1連通路22e~22fと対向する。このため、本体部3eには、第1連通路22e~22fを通じて圧縮荷重が作用することになる。一方、第1移動体11の形成面11aは、軸心Oを挟んで本体部3eの反対側に位置するため、圧縮行程中の圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fとは対向することがない。また、第2移動体12は、第2径部3c内に位置している。これらのため、移動体10には、圧縮荷重がほぼ作用することがない。ここで、駆動軸3が鉄鋼製であることから、本体部3e、ひいては第2径部3cは、たとえ圧縮荷重が作用することで軸心O方向に交差する方向に押圧されても、移動体10を好適に支持することが可能となっている。
【0073】
これらにより、この圧縮機では、第1移動体11が案内窓3d内を軸心O方向に移動し易くなっている。これにより、この圧縮機では、駆動軸3の1回転当たりで各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を好適に変化させることが可能となっている。また、この圧縮機では、大きな推力を得るために移動体10を大型化させる必要もない。
【0074】
したがって、実施例の圧縮機は、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現できる。
【0075】
特に、この圧縮機では、案内窓3dに第1移動体11が設けられることにより、形成面11a及び第2連通路41が第2軸孔23内に露出する。これにより、形成面11a及び第2連通路41は、第2軸孔23内において、吸入行程中の圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。また、駆動軸3が回転する際の遠心力が第1移動体11に作用することにより、第1移動体11は、第2軸孔23内で第2径部3cの径外方向に移動する。これにより、第2軸孔23内において、形成面11aと第1連通路22a~22fとの隙間が小さくなる。このため、冷媒ガスを第2連通路41から第1連通路22a~22fに供給する際の漏れが少なくなり、吸入行程中の圧縮室45a~45f内に好適に冷媒ガスを吸入させることが可能となっている。
【0076】
また、案内窓3dに第1移動体11が設けられることにより、形成面11aが本体部3eとともに軸孔23と整合しているため、第2径部3c及び第1移動体11が第2軸孔23内で好適に回転可能となっている。
【0077】
さらに、この圧縮機では、第1、2給気通路13b、13cを経て吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を制御弁13によって変化させる入れ側制御を行っている。このため、制御圧室27を迅速に高圧にすることができ、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を速やかに増大させることができる。
【0078】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0079】
例えば、実施例の圧縮機を両頭ピストン式圧縮機として構成しても良い。
【0080】
また、第1移動体11において、形成面11aの一部又は全部が吐出行程中の圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する構成となっていても良い。この構成であっても、圧縮荷重の全てが第1移動体11に作用することにはならず、第1移動体11の軸心O方向の移動が妨げられ難い。
【0081】
さらに、第1移動体11が案内窓3d内を軸心O方向で後方に移動することにより、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が増大する構成としても良い。
【0082】
また、連通角度が最小であるときに、各圧縮室45a~45fに対して、吸入行程の後期段階の間のみ吸入機構15によって冷媒ガスが吸入される構成としても良い。
【0083】
さらに、連通角度が大きくなることによって、駆動軸3の1回転当たりで各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が増大し、連通角度が小さくなることによって、駆動軸3の1回転当たりで各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が減少する構成としても良い。
【0084】
さらに、実施例の圧縮機では、斜板室31が吸入室を兼ねているが、これに限らず、ハウジング1内に吸入室を別個に形成しても良い。
【0085】
また、実施例の圧縮機では、リヤハウジング19に制御圧室27が形成されているが、これに限らず、制御圧室27をリヤハウジング19及びシリンダブロック21の双方に設ける構成としても良い。また、制御圧室27を駆動軸3内に設ける構成としても良い。
【0086】
さらに、各シュー8a、8bに換えて、固定斜板5の後面側にスラスト軸受を介して揺動板を支持するとともに、揺動板と各ピストン7とをコンロッドによって連接するワッブル型の変換機構を採用しても良い。
【0087】
また、実施例の圧縮機では、第1移動体11の案内窓3d内における位置、すなわち、移動体10の軸心O方向の位置に応じて、連通角度が変化することにより、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させている。しかし、これに限らず、移動体10の軸心O方向の位置に応じて、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通面積が変化することにより、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させる構成としても良い。
【0088】
さらに、実施例の圧縮機において、外部から制御弁13への電流のONとOFFとを切り替えて制御圧力を制御する外部制御を行っても良く、外部からの電流に依らずに制御圧力を制御する内部制御を行っても良い。ここで、外部制御を行う場合であって、制御弁13への電流をOFFにすることによって、制御弁13が弁開度を小さくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が小さくなり、制御圧室27の制御圧力を低くできる。このため、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
【0089】
また、実施例の圧縮機において、抽気通路を経て制御圧室27から斜板室31に導出する冷媒ガスの流量を制御弁13によって変化させる抜き側制御を行ってもよい。この場合には、各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させるに当たって使用する吐出室29内の冷媒ガスの量を少なくできることから、圧縮機の効率を上げることができる。また、この場合、制御弁13への電流をOFFにすることによって弁開度を大きくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が大きくなり、制御圧室27の制御圧力を低くできる。このため、各圧縮室45から吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
【0090】
さらに、実施例の圧縮機において、制御弁13に換えて、抽気通路と給気通路との両者で開度を調整可能な三方弁を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…ハウジング
3…駆動軸
3d…案内窓
3e…本体部
5…固定斜板
7…ピストン
9…弁形成プレート(吐出弁)
10…移動体
11a…形成面
13…制御弁
15…吸入機構
21…シリンダブロック
21a~21f…シリンダボア
22a~22f…第1連通路
23…第2軸孔(軸孔)
29…吐出室
31…斜板室
41…第2連通路
45a~45f…圧縮室
173…第1軸孔(軸孔)
O…軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9