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  • 特許-シート取付け用ブラケット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】シート取付け用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/015 20060101AFI20220809BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20220809BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220809BHJP
【FI】
B60N2/015
B60N2/005
B60N2/90
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019067595
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164069
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 賢人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 彰子
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-039178(JP,A)
【文献】実開平06-022058(JP,U)
【文献】登録実用新案第3113546(JP,U)
【文献】実開平03-019777(JP,U)
【文献】特開2013-103528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/015
B60N 2/005
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルにシートを取付けるためのシート取付け用ブラケットであって、
前記車両の車幅方向に延在するブラケット本体と、
前記ブラケット本体における前記車幅方向の異なる位置に形成され、前記フロアパネルにボルトを介して前記ブラケット本体を固定する複数の第1ボルト固定面と、
前記ブラケット本体における前記車幅方向の異なる位置に形成され、前記ブラケット本体ボルト介して前記シートのフレームの前部を固定する複数の第2ボルト固定面と、を有し、
前記複数の第1ボルト固定面及び前記複数の第2ボルト固定面は、互いに少なくとも車幅方向にオフセットした関係にあり、
前記複数の第1ボルト固定面の傾斜角はそれぞれ同じであるとともに、前記複数の第2ボルト固定面の傾斜角はそれぞれ同じであり、
前記複数の第2ボルト固定面はそれぞれ、車両の前方へいくほど下方に傾斜しており
前記複数の第2ボルト固定面の前記下方への傾斜角は、前記複数の第1ボルト固定面の前記下方への傾斜角よりも大きい、
シート取付け用ブラケット。
【請求項2】
前記複数の第1ボルト固定と前記複数の第2ボルト固定の前記車幅方向のオフセット量は、車両の前後方向のオフセット量よりも大きい、
請求項1に記載のシート取付け用ブラケット。
【請求項3】
前記複数の第2ボルト固定は、前記複数の第1ボルト固定よりも車両の前方にオフセットしている、
請求項1または2に記載のシート取付け用ブラケット。
【請求項4】
前記複数の第1ボルト固定面は前記ブラケット本体の凹面に形成されており、前記複数の第2ボルト固定面は前記ブラケット本体の凸面に形成されている、
請求項1からのいずれか一項に記載のシート取付け用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアパネルにシートを取り付けるためのブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、フロアパネルへブラケットを介してシートを取り付けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-103528号公報
【文献】特開2012-111363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロアパネルへのブラケットの連結、及び、ブラケットへのシートの連結は、各部材に穿設された挿通孔にボルトを挿通し締結することにより実現される。このボルトの締結は、電動ドライバーやエアーインパクトレンチなどの工具を用いて行われる。
【0005】
ところで、シート形状が異なると、シートをフロアに取り付けるための工具がアプローチできない場合がある。つまり、同一車型でも、オプションなどにより取り付けるシートが違う場合があり、このような場合に、工具のアプローチが困難になることがある。
【0006】
その対策としては、フロアパネルの形状を変えることでボルトによる固定点をずらすことが考えられる。しかしながら、シートの形状が変更されたからといって、同じ車型においてフロアパネルの形状を変更することは好ましくない。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、同一の車型においてシート形状が変更されても、フロアパネルの形状を変更せずに済む、シート取付け用ブラケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート取付け用ブラケットの一つの態様は、
車両のフロアパネルにシートを取付けるためのシート取付け用ブラケットであって、
少なくとも、前記フロアパネルに前記ブラケットを固定する第1の固定点を有する第1の固定面と、前記ブラケットに前記シートを固定する第2の固定点を有する第2の固定面と、を有し、
前記第1及び第2の固定点は、互いに少なくとも車幅方向にオフセットした関係にあり、
前記第2の固定面は、車両の前方方向に傾斜している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同一の車型においてシート形状が変更されても、フロアパネルの形状を変更せずに済む、シート取付け用ブラケットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態のシート取付け用ブラケットの使用例を示す斜視図
図2】ブラケットを拡大して示した斜視図
図3図3Aは第1の固定面を第1の固定点の位置で車両の前後方向の面で切った断面図であり、図3Bは第2の固定面を第2の固定点の位置で車両の前後方向の面で切った断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態のシート取付け用ブラケット(以下、「ブラケット」と略記する)100の使用例を示す斜視図である。ブラケット100は、(1)他仕様のシートとフロアを共通化すること、(2)組付け作業性を改善すること、などを目的として設けられる。
【0013】
本実施の形態の例では、シート20の前部はブラケット100を介してフロアパネルに固定され、シート20の後部は詳述しないが固定ピン11などの別の固定部を介してフロアパネルに固定される。
【0014】
ブラケット100はボルト31によってフロアパネル10に固定される。なお、実際上、ボルト31は、取付け強度を高めるために、フロアパネル10の裏側のクロスメンバー(図示せず)まで到達している。シート20はボルト32によってブラケット100に固定される。先ず、図1に示したようにフロアパネル10にボルト31によってブラケット100が固定され、次に、ブラケット100にボルト32によってシート20が固定される。因みに、シート20の底部にはブラケット100の方向に突き出たフレーム21が形成されており、ブラケット100へのシート20の取付けは、フレーム21にボルト32を挿通させることで行われる。
【0015】
図2は、ブラケット100を拡大して示した斜視図である。
【0016】
ブラケット100は、フロアパネル10にブラケット100を固定する第1の固定点P1を有する第1の固定面101と、ブラケット100にシート20を固定する第2の固定点P2を有する第2の固定面102と、を有する。実際上、第1の固定点P1とはボルト31による締結位置であり、第2の固定点P2とはボルト32による締結位置である。ブラケット100のみに着目して言えば、第1の固定点P1とはボルト31が挿通される挿通孔(図示せず)と言うことができ、第2の固定点P2とはボルト32が挿通される挿通孔103(図1)と言うことができる。
【0017】
第1の固定点P1と第2の固定点P2は、車幅方向に長さL1だけオフセットした関係にある。また、第1の固定点P1と第2の固定点P2は、車両の前後方向に長さL2だけオフセットした関係にある。ここで、車幅方向のオフセットの長さL1は、前後方向のオフセットの長さL2よりも長くされている。
【0018】
図3Aは、第1の固定面101を、第1の固定点P1の位置P1で、車両の前後方向の面で切った断面図である。図3Bは、第2の固定面102を、第2の固定点P2の位置P2で、車両の前後方向の面で切った断面図である。
【0019】
図3A及び図3Bから分かるように、第2の固定面102の車両の前方方向への傾斜角θ2は、第1の固定面101の車両の前方方向への傾斜角θ1よりも大きくされている。
【0020】
以上の構成において、もしもシート20のサイズなどの形状が変更された場合には、ブラケット100のサイズなどを変更すればよいので、フロアパネル10の形状を変更する必要はない。
【0021】
1つのブラケット100に第1の固定点と第2の固定点を配設するためには、第1の固定点と第2の固定点はオフセットしている必要があるが、本実施の形態では、オフセットのさせ方が工夫されている。
【0022】
車両の挙動を考えた場合、車両の車幅方向よりも前後方向に大きな加速度が頻繁に生じる可能性が高い。第1の固定点P1と第2の固定点P2のオフセットが大きいほど大きなモーメントが作用するので、ブラケット100及びフロアパネル10が破損しやすくなる。これを考慮して、本実施の形態では、車幅方向のオフセットの長さL1を、前後方向のオフセットの長さL2よりも長くしている。因みに、前後方向のオフセットの長さL2は0でもよい。つまり、第1及び第2の固定点P1、P2は、互いに車幅方向にのみオフセットした関係にあってもよい。
【0023】
ただし、本実施の形態では、第2の固定点P2を、第1の固定点P1よりも車両の前方にオフセットさせていることにより、第2の固定点P2への工具のアプローチがより容易になるといった効果が得られる。
【0024】
第2の固定面102が、車両の前方方向に傾斜しているので、工具のアプローチが容易となる。つまり、図1に示したように、フロアパネル10にブラケット100が固定された後に、ブラケット100にボルト32によってシート20が固定されるので、ボルト32を締結する際に、電動ドライバーやエアーインパクトレンチなどの工具がシート20の先端と干渉してボルト32への工具のアプローチが困難になるおそれがあるが、本実施の形態では、第2の固定面102が車両の前方方向に傾斜しているので、シート20の先端と工具とが干渉せずにボルト32に工具をアプローチさせることができる。これにより、シート20の取付け作業が容易となる。
【0025】
また、特に、本実施の形態では、第2の固定面102の車両の前方方向への傾斜角θ2が、第1の固定面101の車両の前方方向への傾斜角θ1よりも大きくされているので、強度にも優れかつ工具のアプローチも容易なブラケット100を実現できる。つまり、1つに、本実施の形態では、フロアパネル10からの力とシート20からの力を、異なる方向に傾斜した固定面101、102で受けるので、同一方向に傾斜した固定面で受けるよりもブラケット100が破損し難くなる。また1つに、傾斜角θ2が大きいので、工具をシート20の先端に干渉しない、より寝かせた方向からアプローチさせることができるようになる。
【0026】
さらに、第1の固定面101はブラケット100の凹面に形成されており、第2の固定面102はブラケット100の凸面に形成されていることにより、ブラケット100の剛性が高まり、ブラケット100がより破損し難くなる。
【0027】
因みに、ブラケット100を車両前方に伸ばすことにより、取付け角度を同一にしたまま工具のアプローチを可能にすることも考えられるが、その場合、第1の固定点P1と第2固定点P2が離れてしまい、強度が下がる。本実施の形態では、第1の固定点P1と第2の固定点P2の角度を変えることによって、第1の固定点P1と第2の固定点P2の距離を短くし、強度を確保している、と言うこともできる。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ブラケット100は、少なくとも、フロアパネル10にブラケット100を固定する第1の固定点P1を有する第1の固定面101と、ブラケット100にシート20を固定する第2の固定点P2を有する第2の固定面102と、を有し、第1及び第2の固定点P1、P2は、互いに少なくとも車幅方向にオフセットした関係にあり、第2の固定面102は、車両の前方方向に傾斜している。
【0029】
これにより、同一の車型においてシート20の形状が変更されても、フロアパネル10の形状を変更せずに済み、かつ取付け強度を確保でき、かつ工具のアプローチが容易であるブラケット100を実現できる。
【0030】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、車両のフロアパネルにシートを取付ける際に用いるシート取付け用ブラケットとして好適である。
【符号の説明】
【0032】
10 フロアパネル
20 シート
31、32 ボルト
100 ブラケット
101 第1の固定面
102 第2の固定面
103 挿通孔
P1 第1の固定点
P2 第2の固定点
図1
図2
図3