(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】化粧料のソフトフォーカス効果を評価する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20220809BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20220809BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20220809BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220809BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N21/47 B
A61Q1/12
A61Q1/02
A61Q1/00
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2019171351
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 将幸
(72)【発明者】
【氏名】宮内 大
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211103(JP,A)
【文献】特開2016-040264(JP,A)
【文献】特開2003-212721(JP,A)
【文献】特開2011-105673(JP,A)
【文献】特開2008-056646(JP,A)
【文献】特開2004-292624(JP,A)
【文献】特表2013-539023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190332(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0015580(KR,A)
【文献】中村 直生,外2名,粉体の光学的研究とシワ隠し効果,日本化粧品技術者会誌,1987年,第21巻,第2号,pp. 119-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
A61K 8/00 - A61K 8/99
A61Q 1/00 - A61Q 90/00
C08F 2/00 - C08F 2/60
C09D 1/00 - C09D 10/00
C09D 101/00 - C09D 201/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料のソフトフォーカス効果を評価する評価方法であって、前記化粧料を変角光度計によって測定
し、投光角度を-X°にした場合、下記式(1)
{L(X-5)°+L(X+5)°}/{2L(5)°} (1)
で表される、受光角度5°の輝度値に対する、受光角度(X-5)°における輝度値と受光角度(X+5)°における輝度値との平均値に基づき、ソフトフォーカス効果を評価する評価方法。
【請求項2】
X°が40~50°から選択される請求項
1記載の評価方法。
【請求項3】
粉体を含有する化粧料から、ソフトフォーカス効果の高いメークアップ化粧料を選択する方法であって、請求項
1又は
2記載の評価方法において、官能評価との相関性をとることにより、上記式(1)の好適な数値範囲を決定し、その数値範囲を示す化粧料を選択する方法。
【請求項4】
粉体が球状粉体である請求項
3記載の化粧料を選択する方法。
【請求項5】
着色顔料を含有するメークアップ化粧料から、ソフトフォーカス効果の高いメークアップ化粧料を選択する方法であって、請求項
1記載の評価方法において、X°が45°の場合、上記式(1)の数値が1.0以上2.5未満であるメークアップ化粧料を選択する方法。
【請求項6】
着色顔料を含有しない凹凸補正化粧料から、ソフトフォーカス効果の高い凹凸補正化粧料を選択する方法であって、請求項
1記載の評価方法において、X°が45°の場合、上記式(1)の数値が1.0以上50未満である凹凸補正化粧料を選択する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料のソフトフォーカス効果を評価する方法に関する。
【0002】
肌を美しく見せるために、様々な要因により形成された皮膚上しわや毛穴等の大小の凹凸を平滑にして目立たなくする化粧料が開発されている。これらの凹凸を補正するソフトフォーカス効果を評価するために、ヘーズメーターを用いる方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、ヘーズメーターは透過光が不十分な着色された化粧料の評価は困難である。また、粉体の反射光強度比を角度ごとに求めて評価する方法や特定の角度の強度を測定して評価する方法が知られている(特許文献2,3)。しかしながら、一定量の粉体を測定対象物に秤量することが困難な場合があるため測定値のばらつきが懸念され、化粧料に配合される様々な油剤との組み合わせによって生じる粉体との屈折率差や吸油量に関して加味されておらず、化粧料配合時の効果と乖離がある場合がある。化粧料塗布膜は、成分蒸散に依る厚みの変化や、化粧料の皮溝への落ち込み等で、表面状態が変化するため、肌上での化粧料の光散乱効果を機器測定で再現させる事が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-67946号公報
【文献】特開2010-241785号公報
【文献】特開2018-95737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、目視での官能評価と相関性があり、簡便な方法で化粧料のソフトフォーカス効果を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれらの課題を解決するために鋭意検討した結果、化粧料を変角光度計によって測定することにより、目視での官能評価と相関性があり、簡便な方法で化粧料のソフトフォーカス効果を評価することができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は、下記評価方法及び化粧料を選択する方法を提供する。
1.化粧料のソフトフォーカス効果を評価する評価方法であって、前記化粧料を変角光度計によって測定することを特徴とする評価方法。
2.投光角度を-X°にした場合、受光角度X°の輝度値(L(X)°)に基づき、ソフトフォーカス効果を評価する1記載の評価方法。
3.投光角度を-X°にした場合、下記式(1)
{L(X-5)°+L(X+5)°}/{2L(5)°} (1)
で表される、受光角度5°の輝度値に対する、受光角度(X-5)°における輝度値と受光角度(X+5)°における輝度値との平均値に基づき、ソフトフォーカス効果を評価する1記載の評価方法。
4.X°が40~50°から選択される2又は3記載の評価方法。
5.粉体を含有する化粧料から、ソフトフォーカス効果の高いメークアップ化粧料を選択する方法であって、3又は4記載の評価方法において、官能評価との相関性をとることにより、上記式(1)の好適な数値範囲を決定し、その数値範囲を示す化粧料を選択する方法。
6.粉体が球状粉体である5記載の化粧料を選択する方法。
7.着色顔料を含有するメークアップ化粧料から、ソフトフォーカス効果の高いメークアップ化粧料を選択する方法であって、3記載の評価方法において、X°が45°の場合、上記式(1)の数値が1.0以上2.5未満であるメークアップ化粧料を選択する方法。
8.着色顔料を含有しない凹凸補正化粧料から、ソフトフォーカス効果の高い凹凸補正化粧料を選択する方法であって、3記載の評価方法において、X°が45°の場合、上記式(1)の数値が1.0以上50未満である凹凸補正化粧料を選択する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目視での官能評価と相関性があり、簡便な方法で化粧料のソフトフォーカス効果を評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、成分名を化粧品表示名称で記載する場合がある。
[評価方法]
本発明による化粧料のソフトフォーカス効果を評価する評価方法は、化粧料を変角光度計によって測定するものである。変角光度計とは、角度によって変化する評価対象の反射率測定をする機器である。光源は分光であってもなくてもよく、受光範囲は2次元でも3次元でもよいが、測定の簡便性の点から、分光がなく二次元のタイプが好ましい。
【0009】
投光角度は試料の垂直に対して0°~-60°のいずれかで投光し測定する。受光角度は特に限定されないが、例えば-85°~85°までの受光強度(輝度値)を測定して、極座標にて円の広がりで評価する方法や、任意角度の輝度値での評価、任意角度の輝度値に対する任意角度の輝度値での評価等が挙げられる。任意角度とは、単独であっても一定角度範囲の合計輝度値や平均輝度値であってもよい。例えば、投光角度を-X°にした場合、受光角度X°の輝度値(L(X)°)に基づき、ソフトフォーカス効果を評価することができる。
【0010】
輝度値は投光角度や強度、標準合わせにより変動するため、任意角度の輝度値に対する任意角度の輝度値で評価することが好ましい。
例えば、投光角度を-X°にした場合、下記式(1)
{L(X-5)°+L(X+5)°}/{2L(5)°} (1)
で表される、受光角度5°の輝度値に対する、受光角度(X-5)°における輝度値と受光角度(X+5)°における輝度値との平均値(平均比)に基づき、ソフトフォーカス効果を評価する方法が挙げられる。X°が40~50°から選択されることが好ましく、測定間誤差低減の点から、43~47°がより好ましく、45°がさらに好ましい。具体的には、Xが45°の場合、投光角度-45°の時における、5°の方向で測定した輝度値に対する、40°及び50°の方向で測定した輝度値の平均値(平均比)である。
【0011】
上記式(1)では、どのような化粧料でもソフトフォーカス効果を測定することができるが、例えば、屈折率が高く、散乱が起きる着色顔料の配合の有無によっても、ソフトフォーカス効果が最適である上記(1)で得られる数値は異なる。官能評価との相関性をとることにより、好適な数値範囲を決定することができる。
【0012】
ソフトフォーカス効果とは、肌の形態トラブルを隠し自然な仕上がりとなる効果のことである。例えば、メークアップ化粧料は、着色顔料を含有する化粧料であり、ファンデーション等肌を着色して肌状態を隠ぺいする化粧料である。目視での官能評価においては、メークアップ化粧料の場合、「メークアップ後の仕上がりの自然さ」で、かつ「粉浮きのなさ」を評価する。「メークアップ後の仕上がりが自然である」及び「粉浮きがない」の両方を満たして、ソフトフォーカス効果が得られ、どちらか一方ではソフトフォーカス効果は不十分である。凹凸補正化粧料とは、着色顔料を配合しない化粧料であり、コンシーラー等肌をぼかすことにより、皺や毛穴を目立ちにくくする化粧料である。凹凸補正化粧料の場合は、「しわや毛穴を自然にぼかしているか」を評価する。なお、フレネルの式より、X°の値により好ましい範囲は異なり、式(1)において、X°によって優れたソフトフォーカス効果範囲は変動するが、官能評価との相関性をとることにより、好適な数値範囲を決定することができる。
【0013】
メークアップ化粧料のソフトフォーカス効果を評価する場合、化粧料をガラス板上に塗布して測定し、X°が45°で測定した場合のソフトフォーカス効果が高い範囲としては、上記式(1)の数値が、1.0以上2.5未満が好ましく、1.1以上2.0未満がより好ましく、1.2以上1.8未満がさらに好ましい。1.0未満の場合は粉っぽい仕上がりとなり、2.5以上の場合は仕上がりが不自然な場合がある。
【0014】
凹凸補正化粧料のソフトフォーカス効果を評価する場合、化粧料をガラス板上に塗布して測定し、X°が45°で測定した場合のソフトフォーカス効果が高い範囲としては、上記式(1)の数値が、1.0以上50未満が好ましく、1.0以上40未満がより好ましく、1.0以上30未満がさらに好ましい。1.0未満の場合は粉っぽい仕上がりとなり、50を超える場合は凹凸補正効果が不十分な場合がある。
【0015】
本発明の評価対象は化粧料であり、一定量又は一定膜厚を塗布して測定する。塗布対象は特に限定されないが、ガラス、人工皮膚、PMMA板、ゴムシート、シャーレ、肌等が挙げられ、塗布のしやすさや表面の平滑性、均一性の点でガラスが好ましい。さらに透明性が高く輝度値が低すぎる化粧料の場合、裏側に白色板や黒板、人工皮膚、鏡、布、紙等を置くことで輝度値を調整することが可能となる。式(1)において、塗布対象の表面状態により、優れたソフトフォーカス効果範囲は変動するが、官能評価との相関性をとることにより、好適な数値範囲を決定することができる。
【0016】
本発明の化粧料の塗布対象への塗布方法は特に限定されない。例えば、指、ヘラ、ナイフ、バーコーター、アプリケーター等で塗布することが挙げられるが、測定間誤差を少なくするためバーコーターやアプリケーターを用いて一定膜厚を塗布することが好ましい。膜厚は特に限定されないが、膜厚が薄すぎる場合は化粧料中に含まれる顔料等の筋ができて、塗布面がむらになってしまう場合があり好ましくない。具体的にはアプリケーターを用いて50~500μmに塗布することが好ましく、100~200μmがさらに好ましい。アプリケーターの形状は特に限定されず、球状、4面式、ブレードタイプ等適宜選択が可能である。
【0017】
本発明の化粧料が揮発成分を配合する場合、肌への塗布後の状態に近づけるため、塗布後の化粧料を乾燥させることが好ましい。揮発性成分とは通常化粧料に用いられる沸点が250℃以下の成分であり、例えば、水、エタノール、シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチコン(1.5CS,2CS)、トリシロキサン、イソドデカン等が挙げられる。
【0018】
本発明の化粧料のソフトフォーカス効果を評価する評価方法は、特に化粧料中の配合成分と粉体の相互作用により発現されるソフトフォーカス効果を評価する方法として好適である。粉体としては、球状粉体が挙げられる。
【0019】
[粉体]
化粧料には各種粉体が配合される場合があり、それら粉体がソフトフォーカス等の仕上がりに影響を及ぼす。粉体としては球状粉体、着色顔料(球状粉体を含む場合もある)、球状粉体以外の体質顔料等が挙げられる。粉体の配合量は特に限定されず、0~100質量%から適宜選定されるが、0~50質量%が好ましく、配合する場合は1~50質量%が好ましい。
【0020】
[球状粉体]
球状粉体とは形状が球体で、球に近似した直径である粉体をいい、表面に凹凸がある球状粉体であってもよく、具体的には球状粉体の長径/短径の比が、1.5以下のものであり、1.2以下のものがより好ましく、1.1以下のものがさらに好ましい。さらに、これら球状粉体に、この球状粉体と異なる球状粉体を被覆した複合球状粉体であってもよい。粉体の形状は粉体を光学顕微鏡や電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。粉体の平均粒径は特に限定されないが、化粧品に配合した場合のさらさら感、なめらかさの点から、コールターカウンター法による体積平均粒径(累積D50(メディアン径))が0.1~100μmが好ましく、0.5~40μmがより好ましく、1~15μmがさらに好ましい。球状粉体は光が屈折するため、これらを配合した化粧料は特にソフトフォーカス効果の検証が求められる。本発明の評価方法は球状粉体を配合する化粧料に関しての評価が特に好ましい。
【0021】
球状粉体としては、球状であれば特に限定されず、例えば、シリコーンパウダー、シリカ、アクリルパウダー、ナイロンパウダー、ウレタンパウダー、ポリエチレンパウダー、セルロースパウダー、スターチパウダー等が挙げられる。これらの球状粉体は二重相や多孔質となっていてもよく、親水性、親油性どちらでもよく、表面処理を施してもよい。
【0022】
シリコーンパウダーとしては、架橋型シリコーン粉末(即ち、ジオルガノシロキサン単位の繰返し連鎖が架橋した構造を有するオルガノポリシロキサンからなる、いわゆるシリコーンゴムパウダー)、シリコーン樹脂粒子(三次元網状構造のポリオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子)等が挙げられ、具体例としては、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサン等の名称で知られている。これらは粉体として、又はシリコーンオイルを含む膨潤物として市販され、例えば、KMP-598,590,591,592,KSG-016F等(いずれも信越化学工業(株)製)の商品名で市販されている。
【0023】
球状粉体としては、使用感や化粧料への分散性が向上する点から、複合球状粉体が好ましい。中でも、べたつきの防止等の感触の向上効果や、しわ・毛穴等の形態補正効果の点から、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉体が好ましい。高吸油性のシリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉体(シリコーン複合球状粉体)の具体例としては、化粧品表示名称で定義される、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリシリコーン-22、ポリシリコーン-1クロスポリマー等が挙げられる。これらは、KSP-100,101,102,105,300,411,441等(いずれも信越化学工業(株)製)の商品名で市販されている。
【0024】
[着色顔料]
着色顔料は、一般にメークアップ化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。例えば亜鉛華、酸化チタン、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、オキシ塩化ビスマス、チタン-マイカ系パール顔料等の無機顔料;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、黄色205号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色404号、緑色3号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料;クロロフィル、β-カロチン等の天然色素;染料等が挙げられる。着色顔料は未処理でも一般的に化粧品に使用される公知の表面処理でも特に限定はされない。例えば、無機系処理としてはシリカ被覆、アルミナ被覆、水酸化アルミニウム被覆等が挙げられ、有機系処理としては、カプリリルシラン(信越化学工業製:AES-3083)等のシラン類又はシリル化剤、ジメチルシリコーン(信越化学工業製:KF-96Aシリーズ)、メチルハイドロジェン型ポリシロキサン(信越化学工業製:KF-99P,KF-9901等)、シリコーン分岐型シリコーン処理剤(信越化学工業製:KF-9908,KF-9909等)等のシリコーンオイル、ワックス類、パラフィン類、ペルフルオロアルキルリン酸塩等の有機フッ素化合物、界面活性剤、N-アシルグルタミン酸等のアミノ酸、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸マグネシウム等の金属石鹸等が挙げられる。これらの中でも、疎水化処理をしている方が耐汗性や油剤への分散性の点で好ましい。これらの表面処理は1種又は2種以上を目的に応じて組合せてもよく、無機/無機、有機/有機、無機/有機等いずれの組み合わせでもよい。処理顔料の市販品としてはKTP-09W,Y,R,B(いずれも信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0025】
着色顔料の配合量は、例えばメークアップ化粧料の場合、通常、化粧料全体の0.1~20質量%であり、0.05~50質量%とすることもできる。
【0026】
[球状粉体以外の体質顔料]
球状粉体以外の体質顔料は、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、タルク、マイカ、カオリン、不定形シリカ、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの粉体は未処理でも一般的に化粧品に使用される公知の表面処理でも特に限定はされない。
【0027】
[化粧料]
測定される化粧料には、その他の成分として、通常の化粧料に使用される種々の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、(1)シリコーン架橋物、(2)上記以外の粉体、(3)界面活性剤、(4)皮膜剤、(5)水性成分、(6)油剤、(7)その他の添加剤等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、これらの成分及びその含有量は、化粧料の種類等に応じて適宜選択使用される。
【0028】
測定される化粧料は特に限定されるものではないが、例えば、美容液、乳液、クリーム、ヘアケア、ファンデーション、化粧下地、コンシーラー、チークカラー、口紅、アイシャドー、アイライナー、ボディーメーキャップ、デオドラント剤等、種々の製品の測定に用いることができる。化粧料の性状としては、液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、ムース状、スフレ状、粘土状、パウダー状等の種々の性状を選択することができる。中でも、ソフトフォーカス効果が求められるメークアップ化粧料、凹凸補正化粧料の評価に好適である。
【0029】
本発明の化粧料組成物は、乳化組成物、非水系組成物、水系組成物のいずれでもよく、メークアップ化粧料の評価の場合は、W/O型エマルジョン、凹凸補正化粧料の評価の場合はW/O型エマルジョン、非水系組成物が好ましい。いずれの場合でも良好な評価が得られる。なお、本発明において「非水系組成物」とは、水を実質的に配合しない油性組成物、「水系組成物」とは、油を実質的に配合しない水性組成物をいう。
【0030】
[メークアップ化粧料を選択する方法]
着色顔料を含有するメークアップ化粧料から、ソフトフォーカス効果の高いメークアップ化粧料を選択する方法であって、上記評価方法において、上記式(1)の数値が1.0以上2.5未満であるメークアップ化粧料を選択する方法が挙げられる。測定の好適な範囲、好適な数値等は上記記載の通りである。
【0031】
[凹凸補正化粧料を選択する方法]
着色顔料を含有しない凹凸補正化粧料から、ソフトフォーカス効果の高いメークアップ化粧料を選択する方法であって、上記評価方法において、上記式(1)の数値が1.0以上50未満である凹凸補正化粧料を選択する方法が挙げられる。測定の好適な範囲、好適な数値等は上記記載の通りである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%である。配合量は、記載の配合製品の配合量である。
【0033】
下記表に示す処方の油中水型化粧料を下記方法で調製し、下記特性評価を行った。
<化粧料の調製:処方例1~12>
1:B成分をロールにて分散後、A成分と均一に混合した。
2:1にCを加えて乳化して、リキッドファンデーション(メークアップ化粧料)を得た。
<化粧料の調製:処方例13~17>
1:A成分を均一に混合し、非水系コンシーラー(凹凸補正化粧料)を得た。
【0034】
(i)特性評価
下記化粧料組成物について、ソフトフォーカス効果の評価及び官能評価を行った。評価項目は化粧料塗布後の、仕上がり(メークアップ化粧料の自然さ)及び粉感(粉浮きのなさ)、ならびに凹凸補正効果(しわや毛穴をぼかしているか)について、表1に示される評価基準より評価した。結果を10名の平均値に基づき、下記判定基準に従って判定した。結果を表中に併記する。
【0035】
【表1】
<判定基準>
◎:平均点が4.5点以上
○:平均点が3.5点以上4.5点未満
△:平均点が2.5点以上3.5点未満
×:平均点が1.5点以上2.5点未満
××:平均点が1.5点未満
【0036】
[実施例1]
(ii)ソフトフォーカス効果の評価条件1
表2に示す化粧料をガラス板上にアプリケーターを用いて150μmでの膜厚で塗布し、50℃にて乾燥後、変角光度計(GC5000L:日本電色製)を用いて投光45°にて測定を行い、下記式(2)の数値を表2に併記する。
{L(40)°+L(50)°}/{2L(5)°} (2)
【0037】
式(2)の数値に基づき、下記判定基準に従って判定した。結果を表中に併記する。
<ファンデーションの評価基準>
1.2以上1.8未満:◎
1.1以上1.2未満、1.8以上2.0未満:〇
1.0以上1.1未満、2.0以上2.5未満:△
0.9以上1.0未満、2.5以上3.5未満:×
0.9未満、3.5以上:××
<コンシーラーの評価基準>
1.0以上30未満:◎
30以上40未満:〇
40以上50未満:△
50以上500未満:×
500以上:××
【0038】
【表2】
(注1)KSG-210(信越化学工業(株)製)
(注2)KSG-15(信越化学工業(株)製)
(注3)KF-6028(信越化学工業(株)製)
(注4)KSP-101(信越化学工業(株)製)
(注5)KSP-441(信越化学工業(株)製)
(注6)KSP-300(信越化学工業(株)製)
(注7)KMP-591(信越化学工業(株)製)
(注8)KP-578(信越化学工業(株)製)
(注9)KTP-09W(信越化学工業(株)製)
(注10)KTP-09R,Y,B(信越化学工業(株)製)
【0039】
【表3】
(注1)KSG-210(信越化学工業(株)製)
(注2)KSG-15(信越化学工業(株)製)
(注3)KF-6028(信越化学工業(株)製)
(注4)KSP-101(信越化学工業(株)製)
(注5)KSP-441(信越化学工業(株)製)
(注6)KSP-300(信越化学工業(株)製)
(注7)KMP-591(信越化学工業(株)製)
(注8)KP-578(信越化学工業(株)製)
(注9)KTP-09W(信越化学工業(株)製)
(注10)KTP-09R,Y,B(信越化学工業(株)製)
【0040】
上記表2,3の結果より、本発明の評価方法は、官能評価における「メークアップ後の仕上がりが自然である」及び「粉浮きがない」の両方を満たす「ソフトフォーカス効果」と、相関性が高いことが分かった。
【0041】
【表4】
(注1)KSG-16(信越化学工業(株)製)
(注2)KSP-101(信越化学工業(株)製)
(注3)KSP-441(信越化学工業(株)製)
(注4)KSP-300(信越化学工業(株)製)
(注5)KMP-592(信越化学工業(株)製)
(注6)KSP-591(信越化学工業(株)製)
【0042】
上記表4の結果より、本発明の評価方法は、官能評価における「凹凸補正効果」を満たす「ソフトフォーカス効果」と、相関性が高いことが分かった。
【0043】
本発明の評価方法を用いれば、化粧料中の様々な配合成分との相互作用により発現されるソフトフォーカス効果において、官能評価と相関性の高い結果が得られることが分かった。さらに、化粧料中の配合成分のわずかな変化による評価の違いを簡便に評価することが可能となり、当該処方に適する球状粉体の種類や配合量を適宜判定することが可能となる。
【0044】
[実施例2]
ソフトフォーカス効果の評価条件2
実施例1で評価した表2に記載される処方例1,2の化粧料を人工皮膚上にアプリケーターを用いて100μmでの膜厚で塗布し、変角光度計(GC5000L:日本電色製)を用いて投光45°にて測定を行い、上記式(2)の数値を算出した。
評価条件2における処方例1の式(2)の数値:3.03
評価条件2における処方例2の式(2)の数値:1.62
評価条件2による評価において、官能評価と相関性があることが確認できた。
この評価方法によれば、式(2)の数値は、1.0以上2.5未満が好ましく、1.4~2.0の範囲がより好ましく、1.5~1.9の範囲がさらに好ましい。