(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】感光性絶縁ペーストおよび電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220809BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220809BHJP
C08F 265/02 20060101ALI20220809BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220809BHJP
C03C 8/20 20060101ALI20220809BHJP
C03C 8/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027
C08F265/02
C08F2/44 Z
C03C8/20
C03C8/16
(21)【出願番号】P 2019179450
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】田邉 新平
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-202323(JP,A)
【文献】特開2002-162735(JP,A)
【文献】国際公開第2003/038524(WO,A1)
【文献】特開2008-037719(JP,A)
【文献】特開2000-075502(JP,A)
【文献】特開2000-243137(JP,A)
【文献】特開平05-283272(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016480(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101226332(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0017483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
C08F 265/02
C08F 2/44
C03C 8/20
C03C 8/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフリット、第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、アルカリ可溶ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤および溶剤を含み、
前記第1の無機フィラーの屈折率が1.7以上であり、
前記第2の無機フィラーの屈折率が1.55以下であ
り、
前記ガラスフリットの含有量をAとし、前記第1の無機フィラーの含有量をBとし、前記第2の無機フィラー含有量をCとしたときのそれぞれの組成比率が、A+B+C=100、B:5vol%以上20vol%以下、かつ、C:(25-B)vol%以上(40-B)vol%以下の条件を満たすことを特徴とする、感光性絶縁ペースト。
【請求項2】
前記ガラスフリットの軟化点は700℃以上900℃未満であり、前記第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーの融点は、950℃以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の感光性絶縁ペースト。
【請求項3】
前記第1の無機フィラーは、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアから選ばれる少なくとも1種である、請求項1
または請求項
2に記載の感光性絶縁ペースト。
【請求項4】
前記第2の無機フィラーは、クオーツまたは結晶化ガラスから選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし請求項
3のいずれかに記載の感光性絶縁ペースト。
【請求項5】
複数の内部電極層と、積層方向において、前記内部電極層間に配置された絶縁層と、を有する積層体を備える電子部品であって、
前記積層方向と平行な前記積層体の両側面と前記内部電極層との間においてサイドギャップ部が位置しており、
前記サイドギャップ部は、ガラスと、第1の無機フィラーと、第2の無機フィラーとを含み、
前記サイドギャップ部の平均厚みが5μm以上30μm以下であり、
第1の無機フィラーの屈折率が1.7以上であり、
第2の無機フィラーの屈折率が1.55以下であ
り、
前記サイドギャップ部における所定の断面において、前記ガラスの面積をAとし、前記第1の無機フィラーの面積をBとし、前記第2の無機フィラーの面積をCとしたとき、面積比率は、A+B+C=100、かつ、B:5%以上20%以下、C:(25-B)%以上(40-B)%以下の条件を満たすことを特徴とする、電子部品。
【請求項6】
前記サイドギャップ部の空隙率は5%以下であることを特徴とする、請求項
5に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性絶縁ペーストおよび電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の使用される感光性ペーストとして、特開2012-246176号公報(特許文献1)が開示されている。この感光性ペーストは、焼成後の緻密性や耐薬品性を向上させるために特定の組成を有するガラス粉末を使用することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この感光性ペーストを電子部品の絶縁層に使用した場合、焼成後の絶縁層においても光透過性が高くなり、内部電極層と電子部品表面の厚みが薄いと、電子部品表面まで内部電極層が透けて見えてしまい、電子部品の外観検査時に電子部品外部に付着した異物と内部電極との見分けがつきにくく、電子部品の生産性が低下する。また、無機フィラーを含まないために、電子部品に生じたクラックの伸展を抑制できないことから、クラックが発生しやすい問題がある。
【0005】
一方、感光性ペースト中に遮光性無機フィラーを混合し、焼成後の光透過性を抑制する方法が考えられるが、感光性ペーストのフォトリソパターニング時にも光透過性を阻害してしまい、高い解像性を得ることができなくなる問題がある。その他、電子部品表面まで内部電極層が透けて見えるのを抑制するために、電子部品のサイドギャップ部における厚みを厚くすることで対応することが考えられるが、サイドギャップ部の厚みを厚くすると、電子部品の設計自由度を損ねてしまうために、小型、高性能化が困難となる問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、焼成前の解像性が高く、焼成後の光透過抑制とクラック抑制を両立可能な感光性絶縁ペーストおよびそれを用いた電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる感光性絶縁ペーストは、ガラスフリット、第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、アルカリ可溶ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤および溶剤を含み、第1の無機フィラーの屈折率が1.7以上であり、第2の無機フィラーの屈折率が1.55以下であり、前記ガラスフリットの含有量をAとし、前記第1の無機フィラーの含有量をBとし、前記第2の無機フィラー含有量をCとしたときのそれぞれの組成比率が、A+B+C=100、B:5vol%以上20vol%以下、かつ、C:(25-B)vol%以上(40-B)vol%以下の条件を満たすことを特徴とする、感光性絶縁ペーストである。
また、この発明にかかる電子部品は、複数の内部電極層と、積層方向において、内部電極層間に配置された絶縁層と、を有する積層体を備える電子部品であって、積層方向と平行な積層体の両側面と内部電極層との間においてサイドギャップ部が位置しており、サイドギャップ部は、ガラスと、第1の無機フィラーと、第2の無機フィラーとを含み、前記サイドギャップ部の平均厚みが5μm以上30μm以下であり、第1の無機フィラーの屈折率が1.7以上であり、第2の無機フィラーの屈折率が1.55以下であり、
前記サイドギャップ部における所定の断面において、前記ガラスの面積をAとし、前記第1の無機フィラーの面積をBとし、前記第2の無機フィラーの面積をCとしたとき、面積比率は、A+B+C=100、かつ、B:5%以上20%以下、C:(25-B)%以上(40-B)%以下の条件を満たすことを特徴とする、電子部品である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、焼成前の解像性が高く、焼成後の光透過抑制とクラック抑制を両立可能な感光性絶縁ペーストおよびそれを用いた電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるコイル電子部品の外観斜視図である。
【
図2】
図1に示すコイル電子部品の線II-II断面図である。
【
図3】
図1に示すコイル電子部品の線III-III断面図である。
【
図4】クラック発生荷重の評価方法を示す説明図である。
【
図5】(a)は、空隙率が5%より大きい絶縁層の状態を示し、(b)は、空隙率が5%以下の絶縁層の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.感光性絶縁ペースト
本発明の実施の形態にかかる感光性絶縁ペーストは、ガラスフリット、第1の無機フィラー(着色用無機フィラー)、第2の無機フィラー(透明無機フィラー)、アルカリ可溶ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、および溶剤を含む。なお、必要に応じて、有機染料が含まれる。
【0011】
ガラスフリットはホウケイ酸ガラス(軟化点760℃)を用いることができる。また、ガラスフリットは、ホウケイ酸ガラス以外に、例えば、SiO2、B2O3、K2O、Li2O、CaO、ZnO、Bi2O3、および/またはAl2O3などを含むガラス、例えば、SiO2-B2O3-K2O系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO-ZnO系ガラス、およびBi2O3-B2O3-SiO2-Al2O3系ガラスであってもよい。これらの無機成分は、2種以上を組み合わせてもよい。ガラスフリットの軟化点は、700℃以上900℃未満であることが好ましい。
また、ガラスフリットの屈折率は、1.55以下であることが好ましく、第2の無機フィラーの屈折率と同等であることがより好ましい。
【0012】
第1の無機フィラー(着色用無機フィラー)は、屈折率が1.7以上のフィラーである。また、第1の無機フィラーは、軟化点が950℃以上であることが好ましい。第1の無機フィラーは、アルミナが好適に用いられる。第1の無機フィラーとしては、アルミナの他に、チタニア、ジルコニアおよびセリアなどを用いることができる。
【0013】
第2の無機フィラー(透明無機フィラー)は、屈折率が1.55以下である。また、第2の無機フィラーは、軟化点が950℃以上であることが好ましい。第2の無機フィラーは、クオーツが好適に用いられる。なお、クオーツの結晶化度は特に問わない。しかしながら、結晶化ガラスを透明無機フィラーとして用いてもよい。
なお、第1の無機フィラーや第2の無機フィラーの屈折率は、波長589.3nmの光(ナトリウムのD線)に対する屈折率の値である。
【0014】
第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーのそれぞれの平均粒径は、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、それぞれの平均粒径が0.3μm以上、3.0μm以下である。それぞれの無機フィラーの平均粒径が0.1μmより小さいと、ペーストの分散が困難になる。一方、それぞれの無機フィラーの粒径が平均5.0μmより大きいと、この感光性絶縁ペーストを電子部品の絶縁層の形成に用いた場合、その絶縁層の平滑性や溝形状がいびつになり好ましくない。
【0015】
アルカリ可溶ポリマーは、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系重合体を含む。側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含む前記樹脂は、例えば、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物を共重合させることにより製造することができる。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの無水物等が挙げられる。一方、エチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、フマル酸モノエチル等のフマル酸エステル等が挙げられる。
【0016】
また、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、以下のような形態の不飽和結合を導入したものを用いてもよい。
(1)アクリル系共重合体の側鎖のカルボキシル基に、これと反応可能な、例えばエポキシ基等の官能基を有するアクリル系モノマーを付加する。
(2)側鎖のカルボキシル基の代わりにエポキシ基が導入されてなる前記アクリル系共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、さらに飽和または不飽和多価カルボン酸無水物を導入する。
また、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、重量平均分子量(Mw)が50000以下、かつ酸価が30以上150以下のものが好ましい。
【0017】
感光性モノマーは、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを用いていることができる。なお、感光性モノマーは、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート以外にも、ヘキサンジオールトリアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、1、3-ブタンジオールジアクリレート、1、4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを用いることができる。また、上記化合物の分子内のアクリレートの一部もしくは全てをメタクリレートに変えたものを用いることができる。
【0018】
感光性絶縁ペーストにおいて、ガラスフリットAと第1の無機フィラーBと第2の無機フィラーCとの組成比率は、A+B+C=100、B:5vol%以上20vol%以下、かつ、C:(25-B)vol%以上(40-B)vol%であることが好ましい。
【0019】
光重合開始剤は、たとえば、アセトフェノン系化合物を用いることができる。
【0020】
溶剤としては、たとえば、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノールを用いることができる。
【0021】
さらに、必要に応じて含まれる有機染料は、アゾ系化合物を用いることができる。なお、有機染料は、フォトリソパターニングのためにこの感光性絶縁ペーストを使用する場合に、UV透過率を微調整するためのUV吸収剤である。
【0022】
2.感光性絶縁ペーストの製造方法
続いて、感光性絶縁ペーストの作製方法について、説明する。
【0023】
感光性絶縁ペーストは、ガラスフリット、第1の無機フィラー(着色用無機フィラー)、第2の無機フィラー(透明無機フィラー)、アルカリ可溶ポリマー、光重合開始剤、溶剤および有機染料を配合し、これを3本ロールで十分に混合して製造される。
【0024】
ガラスフリットはホウケイ酸ガラス(軟化点760℃)を用いることができる。また、ガラスフリットは、ホウケイ酸ガラス以外に、例えば、SiO2、B2O3、K2O、Li2O、CaO、ZnO、Bi2O3、および/またはAl2O3などを含むガラス、例えば、SiO2-B2O3-K2O系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO-ZnO系ガラス、およびBi2O3-B2O3-SiO2-Al2O3系ガラスであってもよい。これらの無機成分は、2種以上を組み合わせてもよい。ガラスフリットの軟化点は、700℃以上900℃未満であることが好ましい。
【0025】
第1の無機フィラー(着色用無機フィラー)は、屈折率が1.7以上のフィラーである。また、第1の無機フィラーは、軟化点が950℃以上であることが好ましい。第1の無機フィラーは、アルミナが好適に用いられる。第1の無機フィラーとしては、アルミナの他に、チタニア、ジルコニアおよびセリアなどを用いることができる。
【0026】
第2の無機フィラー(透明無機フィラー)は、屈折率が1.55以下である。また、第2の無機フィラーは、軟化点が950℃以上であることが好ましい。第2の無機フィラーは、クオーツが好適に用いられる。なお、クオーツの結晶化度は特に問わない。しかしながら、結晶化ガラスを透明無機フィラーとして用いてもよい。
【0027】
第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーのそれぞれの平均粒径は、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、それぞれの平均粒径が0.3μm以上、3.0μm以下である。
【0028】
アルカリ可溶ポリマーは、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系重合体を含む。側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含む前記樹脂は、例えば、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物を共重合させることにより製造することができる。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの無水物等が挙げられる。一方、エチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、フマル酸モノエチル等のフマル酸エステル等が挙げられる。
【0029】
また、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、以下のような形態の不飽和結合を導入したものを用いてもよい。
(1)アクリル系共重合体の側鎖のカルボキシル基に、これと反応可能な、例えばエポキシ基等の官能基を有するアクリル系モノマーを付加する。
(2)側鎖のカルボキシル基の代わりにエポキシ基が導入されてなる前記アクリル系共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、さらに飽和または不飽和多価カルボン酸無水物を導入する。
また、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、重量平均分子量(Mw)が50000以下、かつ酸価が30以上150以下のものが好ましい。
【0030】
感光性モノマーは、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを用いていることができる。なお、感光性モノマーは、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート以外にも、ヘキサンジオールトリアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、1、3-ブタンジオールジアクリレート、1、4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを用いることができる。また、上記化合物の分子内のアクリレートの一部もしくは全てをメタクリレートに変えたものを用いることができる。
【0031】
感光性絶縁ペーストにおいて、ガラスフリットAと第1の無機フィラーBと第2の無機フィラーCとの組成比率は、A+B+C=100、B:5vol%以上20vol%以下、かつ、C:(25-B)vol%以上(40-B)vol%であることが好ましい。
【0032】
光重合開始剤は、たとえば、アセトフェノン系化合物を用いることができる。
【0033】
溶剤としては、たとえば、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノールを用いることができる。
【0034】
さらに、必要に応じて含まれる有機染料は、アゾ系化合物を用いることができる。なお、有機染料は、フォトリソパターニングのためにこの感光性絶縁ペーストを使用する場合に、UV透過率を微調整するためのUV吸収剤である。
【0035】
この発明にかかる感光性絶縁ペーストは、ガラスフリット、第1の無機フィラー(着色用無機フィラー)、第2の無機フィラー(透明無機フィラー)、アルカリ可溶ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、および溶剤を含み、第1の無機フィラーの屈折率が1.7以上であり、第2の無機フィラーの屈折率が1.55以下であるので、この感光性絶縁ペーストを電子部品の絶縁層に使用したとき、それぞれの無機フィラーの含有量を調整することで、絶縁層の光透過率を調整することができる。
【0036】
また、この発明にかかる感光性絶縁ペーストは、ガラスフリットの含有量をAとし、前記第1の無機フィラーの含有量をBとし、前記第2の無機フィラー含有量をCとしたときのそれぞれの組成比率が、A+B+C=100、B:5vol%以上20vol%以下、かつ、C:(25-B)vol%以上(40-B)vol%以下の条件を満たすと、この感光性絶縁ペーストを電子部品の絶縁層に使用したとき、焼成前は高い光透過性を備え、焼成後は光透過性を抑えたうえで、絶縁層における焼結が十分に進むため、セラミック材料としての機械的強度を発現することができる。
【0037】
さらに、この発明にかかる感光性絶縁ペーストに含まれるガラスフリットの軟化点が700℃以上900℃未満であり、第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーの融点が950℃以上とすると、この感光性絶縁ペーストを電子部品の絶縁層に使用したとき、ガラスフリットの融点が焼成温度域以下であるため、ガラスセラミックスの焼結に必要な溶融が起こり、それぞれの無機フィラーは焼成温度域で溶融しないために、それぞれの無機フィラーとしての機能を発現させることができることから、絶縁層における空隙率を5%以下の焼結性を担保できる適切な焼成温度が850℃以上950℃以下となり、同時に焼結させるコイル導体層(内部電極層)の抵抗を下げることができる。
【0038】
3.コイル電子部品
次に、上述した感光性絶縁ペーストを用いて製造される電子部品の一例として、コイル電子部品について説明する。
図1は、コイル電子部品の実施の形態を示す外観斜視図である。
図2は、
図1に示すコイル電子部品の線II-II断面図である。
図3は、
図1に示すコイル電子部品の線III-III断面図である。
【0039】
図1ないし
図3に示すように、コイル電子部品10は、積層体12と、積層体12の内部に設けられた螺旋状のコイル20と、積層体12に設けられコイル20に電気的に接続された外部電極30とを有する。
【0040】
コイル電子部品10は、外部電極30を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。コイル電子部品10は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、コイル電子部品10の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0041】
積層体12は、複数の絶縁層14を積層して構成される。積層体12は、略直方体状に形成されている。積層体12表面は、第1端面12aと、第1端面12aに対向する第2端面12bと、第1端面12aと第2端面12bの間に接続された第1主面12cと、第1主面1cに対向する第2主面12dと、第1端面12aと第2端面12bの間に接続され、第1主面12cと垂直に交わる第1側面12eと、第1側面12eに対向する第2側面12fとを有する。第1端面12a、第2端面12b、第1側面12eおよび第2側面12fは、絶縁層14の積層方向Aに平行な面となる。ここで、本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。なお、積層体12は、焼成などによって、複数の絶縁層14同士の界面が明確となっていない場合がある。
【0042】
積層体12の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、例えばx軸寸法は0.1mm以上1.0mm以下、y軸寸法は0.2mm以上1.6mm以下、z軸寸法は0.1mm以上1.0mm以下である。
【0043】
絶縁層14は、ガラスと第1の無機フィラーと第2の無機フィラーとを含む。
【0044】
ガラスは、ホウケイ酸ガラス(軟化点760℃)を用いることができる。また、ガラスは、ホウケイ酸ガラス以外に、例えば、SiO2、B2O3、K2O、Li2O、CaO、ZnO、Bi2O3、および/またはAl2O3などを含むガラス、例えば、SiO2-B2O3-K2O系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO-ZnO系ガラス、およびBi2O3-B2O3-SiO2-Al2O3系ガラスであってもよい。これらの無機成分は、2種以上を組み合わせてもよい。また、積層体12を850℃以上950℃以下で焼成するにあたり、ガラスの軟化点が700℃以上900℃未満であることが好ましい。
また、ガラスの屈折率は1.55以下であることが好ましく、第2の無機フィラーの屈折率と同等であることがより好ましい。
【0045】
第1の無機フィラー(着色用無機フィラー)は、屈折率が1.7以上のフィラーである。また、第1の無機フィラーは、軟化点が950℃以上であることが好ましい。第1の無機フィラーは、アルミナが好適に用いられる。第1の無機フィラーとしては、アルミナの他に、チタニア、ジルコニアおよびセリアなどを用いることができる。
【0046】
第2の無機フィラー(透明無機フィラー)は、屈折率が1.55以下である。また、第2の無機フィラーは、軟化点が950℃以上であることが好ましい。第2の無機フィラーは、クオーツが好適に用いられる。なお、クオーツの結晶化度は特に問わない。しかしながら、結晶化ガラスを透明無機フィラーとして用いてもよい。
【0047】
なお、絶縁層14に含まれるガラスAと第1の無機フィラーBと第2の無機フィラーCの面積比率は、A+B+C=100、かつ、B:5%以上20%以下、C:(25-B)%以上(40-B)%であることが好ましい。
この面積比率は、コイル電子部品10に対して、WT断面を1/2L(y軸方向の中央部)まで研磨することにより断面を露出させ、EDXやSEMを用いて、ガラス、第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーのそれぞれを特定した上で、測定領域の情報を元に、それらの面積比率を算出することができる。
なお、本実施の形態において、上記面積比率は体積比率とほぼ等しい。
【0048】
また、積層体12の空隙率は、5%以下であることが好ましい。
この空隙率は、コイル電子部品10に対して、y軸方向の中央部まで研磨することにより断面を露出させ、SEMを用いて断面を観察した画像を明るさで2値化処理することで、焼結した積層体部分と、残留している空隙部分とが特定される。そして、積層体全体に対する空隙の面積の割合を空隙率として算出することができる。
【0049】
外部電極30は、第1の外部電極30aと第2の外部電極30bとを有する。
【0050】
第1の外部電極30aは、積層体12の第1端面12aの表面に配置される。このとき、第1の外部電極30aは、積層体12の第1端面12aから延伸して第1主面12c、第2主面12d、第1側面12eおよび第2側面12fのそれぞれの一部分を覆うように形成される。第1の外部電極30aには、z軸方向の第1主面12c側に位置する引出電極22aが接続される。
【0051】
第2の外部電極30bは、積層体12の第2端面12bの表面に配置される。このとき、第2の外部電極30bは、積層体12の第1端面12aから延伸して第1主面12c、第2主面12d、第1側面12eおよび第2側面12fのそれぞれの一部分を覆うように形成される。第2の外部電極30bには、z軸方向の第2主面12d側に位置する引出電極32bが接続される。
【0052】
したがって、外部電極30は、巻線パターンを構成するコイル20の両端に接続される。
【0053】
本実施形態では、絶縁層14およびコイル20の積層方向がz軸に一致し、外部電極30の表面がx軸およびy軸に平行になる。なお、x軸、y軸およびz軸は、相互に垂直である。
図1に示すコイル電子部品10では、コイル20の巻回軸方向が、z軸に略一致する。
【0054】
第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bは、例えば、AgまたはCuなどの導電性材料、及び、ガラス粒子から構成される。
【0055】
コイル20は、例えば、第1、第2の外部電極30a,30bと同様の導電性材料及びガラス粒子から構成される。コイル20は、絶縁層14の積層方向Aに沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル20において、第1主面12c側に位置する引出電極22aは、第1の外部電極30aに接続され、コイル20において、第2主面12d側に位置する引出電極22bは、第2の外部電極30bに接続されている。
【0056】
コイル20は、軸方向Oからみて、略長円形に形成されているが、この形状に限定されない。コイル20の形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、その他の多角形などであってもよい。コイル20の軸方向Oとは、コイル20が巻き回された螺旋の中心軸に平行な方向を指す。コイル20の軸方向Oと絶縁層11の積層方向Aとは、同一方向を指す。
【0057】
コイル20は、絶縁層14上に巻回された複数の内部電極層としてコイル導体層24を含む。積層方向Aに隣り合うコイル導体層24は、絶縁層14を厚み方向に貫通するビア導体層26を介して、電気的に直列に接続される。このように、複数のコイル導体層24は、互いに電気的に直列に接続されながら、螺旋を構成している。具体的には、コイル20は、互いに電気的に直列に接続され、巻回数が1周未満の複数のコイル導体層24が積層された構成を有し、コイル20はヘリカル形状である。
【0058】
図3に示すように、積層体12は、コイル導体層24のx軸方向の一端と第1側面12eとの間に、サイドギャップ部16aを含む。また、積層体12は、コイル導体層24のx軸方向の他方端と第2側面12fとの間に位置するように、サイドギャップ部16bを含む。このサイドギャップ部16a、16bのx軸方向の平均厚みは、5μm以上30μm以下である。
【0059】
コイル電子部品10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、例えば、x軸方向の寸法(W寸法)は0.1mm以上1.0mm以下、y軸方向の寸法(L寸法)は0.2mm以上1.6mm以下、z軸方向の寸法(T寸法)は0.1mm以上1.0mm以下である。
【0060】
4.コイル電子部品の製造方法
次に、上述したコイル電子部品10の製造方法について説明する。
【0061】
まず、感光性絶縁ペーストと感光性導電ペーストとを準備する。感光性絶縁ペーストは、ガラスフリットと第1の無機フィラーと第2の無機フィラーとを含む。感光性絶縁ペーストは、上述した製造方法により製造することで準備することができる。
【0062】
続いて、絶縁ペーストを塗布して外側絶縁層を形成する。外側絶縁層に感光性絶縁ペーストを塗布して第1絶縁層を形成する。絶縁ペーストは、例えば、スクリーン印刷により塗布される。
【0063】
この外側絶縁層を形成するための絶縁ペーストは、感光性絶縁ペーストと同一の組成でもよいが、以下に記載する組成による絶縁ペーストでもよい。
(a)有機バインダー(材料:アクリル系重合体)
(b)溶剤(材料:1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノール)
(c)無機フィラー(材料:アルミナ)
(d)ガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)
なお、有機バインダーについて、外側絶縁層は、パターンニングを行わない層であるので、アルカリ可溶ポリマーでなくてもよいが、当然、アルカリ可溶ポリマーでもよい。また、無機フィラーは、感光性絶縁ペーストに使用する無機フィラーとコファイアできるものが好ましい。
【0064】
次に、上述のようにして形成した、外側絶縁層上に、感光性導電ペーストをスクリーン印刷、乾燥した後、選択的に露光、現像して1層目の導体層(コイルパターン)を形成する。
【0065】
続いて、形成した1層目の導体層(コイルパターン)と、その周囲に感光性絶縁ペーストをスクリーン印刷(全面印刷)し、1層目の感光性絶縁ペースト層(絶縁層)を形成する。
それから、この感光性絶縁ペーストを選択的に露光、現像して、所定の位置にビアホールを形成する。
【0066】
その後、スクリーン印刷により感光性導電ペーストを全面印刷し、乾燥する。続いて、選択的に露光、現像を行って、2層目の導体層(コイルパターン)を形成する。
さらに、導体層と、その周囲に、感光性絶縁ペーストを印刷、ビアホールの形成を行って2層目の絶縁層を形成する。
【0067】
上記と同様の方法を繰り返して、所定の層数になるまで、所定の位置にビアホールを備えた感光性絶縁ペースト層(絶縁層)とコイルパターン(導体層)とを形成する。
【0068】
続いて、さらに、感光性絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布することを繰り返して、外部絶縁層を形成する。この外部絶縁層は、コイル導体層部よりも外側に位置する外層用絶縁層である。
【0069】
以上の工程を経て、マザー積層体を得る。
【0070】
続いて、ダイシング等によりマザー積層体を複数の未焼成の積層体にカットする。
【0071】
そして、未焼成の積層体を850℃以上950℃以下で焼成し、積層体12を得る。
【0072】
その後、必要に応じて積層体12に対してバレル加工やめっき加工を施す。
【0073】
続いて、外部電極30が形成される。すなわち、積層体12の表面に第1端面12aから露出している引出電極22aの露出部分にガラス成分と金属とを含む外部電極用の導電性ペーストがディッピングなどの方法により塗布されて焼き付けられて、第1の外部電極30aが形成される。また、同様に、第2の外部電極30bは、積層体12の第2端面12bから露出している引出電極22bの露出部分にガラス成分と金属とを含む外部電極用導電性ペーストがディッピングなどの方法により外部電極用の導電性ペーストが塗布されて焼き付けられ、第2の外部電極30bが形成される。
なお、コイル導体層24(内部電極層)と外部電極30と同時に焼成してもよい。
【0074】
以上の工程を経てコイル電子部品10が製造される。
【0075】
図1に示すコイル電子部品10によれば、このコイル電子部品10のサイドギャップ部16a、16bの平均厚みが、5μm以上30μm以下であると、その電子部品内部にコイル導体層24(内部電極層)を比較的広く配置させることができるとともに、機械的強度を維持することができる。したがって、コイル電子部品10の特性であるQ値を向上させることができる。
【0076】
また、
図1に示すコイル電子部品10によれば、空隙率が5%以下とすると、コイル電子部品10の機械的強度をより向上させることができる。
【0077】
さらに、
図1に示すコイル電子部品10によれば、屈折率の大きい第1の無機フィラー(アルミナ)の含有量が5vol%以上20vol%以下の範囲で含有され、第1の無機フィラーと第2の無機フィラーとの合計の含有量が25vol%以上40vol%以下の条件を満たすと、この感光性絶縁ペーストを電子部品の絶縁層に使用したとき、焼成前は高い光透過性を備えるので、高い解像性を満たすことができ、加えて、焼成後は光透過性を抑えるので、焼成後におけるコイル電子部品の表面における内部電極層上の部分と、サイドギャップ部における部分との色との同一性を維持することができる。また、絶縁層における焼結が十分に進むため、セラミック材料としての機械的強度を発現することができる。
【0078】
5.実験例
次に、上述した本発明にかかる感光性絶縁ペーストの効果を確認するために、感光性絶縁ペーストを用いてコイル電子部品を製造し、コイル電子部品に対する外観の評価、クラック発生荷重評価、コイル電子部品内部の緻密性の評価、および解像性(アスペクト比)を測定する実験を行った。
【0079】
(1)サンプルの仕様
本実験に用いたサンプルの仕様は、以下のとおりである。
・コイル電子部品の寸法(設計値)は、L寸法は0.4mmとし、W寸法は0.2mmとし、T寸法は、0.2mmとした。
・絶縁層の組成:ガラス(ガラスフリット)、第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーは、表1に記載される組成比率とした。なお、ガラス(ガラスフリット)はホウケイ酸ガラスとし、第1の無機フィラーはアルミナとし、第2の無機フィラーはクオーツとした。
・サイドギャップの寸法:17.5μm。破壊物理解析(DPA)によりサンプルの断面を露出させ、マイクロスコープによりサイドギャップ部の測定を行った。なお、サンプル数は5個とした。
・無機フィラーの屈折率:第1の無機フィラー:1.8
第2の無機フィラー:1.5
【0080】
なお、感光性絶縁ペーストは、下記の原料を配合し、これを3本ロールで十分に混合して製造した。
すなわち、感光性絶縁ペーストの原料は、
(a)ガラスフリット(ホウケイ酸ガラス)、
(b)第1の無機フィラー(アルミナ)および第2の無機フィラー(クオーツ)、
(c)アルカリ可溶ポリマー(側鎖にカルボキシル基を有するアクリル系重合体)、
(d)感光性モノマー(多官能アクリレート:ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート)、
(e)光重合開始剤(アセトフェノン系化合物)、
(f)溶剤(1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノール)、および
(g)有機染料(アゾ系化合物)、
である。
【0081】
また、ガラスフリットの平均粒径は1.0μmとし、第1の無機フィラーの平均粒径は0.5μmとし、第2の無機フィラーの平均粒径は1.0μmとした。
【0082】
(2)無機フィラーの屈折率の測定方法
屈折率の測定方法は、組成分析方法を用いた。サンプルの断面としてWT断面を1/2Lまで研磨してその断面を露出させ、EDXを用いて、ガラス部分、第1の無機フィラー部分、第2の無機フィラー部分の組成分析を実施した。この結果から組成比率が判明し、屈折率を類推した。
【0083】
(3)コイル電子部品表面の色の観察
サンプルであるコイル電子部品の表面における色をマイクロスコープにより観察を行った。具体的には、コイル電子部品の表面におけるコイル導体層(内部電極層)上の部分と、サイドギャップ部における部分との色の同一性を目視により観察を行った。コイル電子部品表面において、コイル電子部品の表面における内部電極層上の部分に内部電極層の色が透けて見えることで、コイル電子部品の表面における内部電極層上の部分と、サイドギャップ部における部分との色とが異なって見える場合は、×とし、それ以外を○と評価した。
【0084】
(4)クラック発生荷重の評価
図4に示すように、アルミナ基板50に各サンプル(コイル電子部品10)を側面が下になるように接着剤52で固定した。接着剤52は、瞬間接着剤を用いた。そして、サンプルが接着されたアルミナ基板50をナノインデンターの評価ステージに固定し、各サンプルにおいて、1箇所ずつ圧子54を押し当てた際の試験荷重(p)-変位(h)プロットを取得した。得られた試験荷重(p)-変位(h)データから荷重増加時の接触合成(S=dp/dh)を算出し、接触剛性(S)-試験荷重(p)のプロットを作成した。作成したプロットで接触剛性の低下の見られるピークのうち、最も低い荷重別にあるピークがチップに初めて入ったクラックと判断し、そのときの荷重を「クラック発生荷重」と定義した。なお、クラック発生荷重は、30N以上を良好とし、74N以上をさらに良好と判定した。
ナノインデンターの装置および測定条件は、以下のとおりである。
・設備:ナノインデンター ENT-1100a(エリオニクス社製)
・試験荷重:100gf
・ステップインターバル:20msec
【0085】
(5)解像性(アスペクト比)の評価方法
スクリーン印刷でペーストを20μmの厚みで印刷し、セーフティーオーブンで乾燥後、種々の寸法の開口部を有するフォトマスクを介して露光処理し、アルカリ水溶液で現像を行うことで配線パターンを形成した。残渣やパターンの欠落なく作製できたパターンの幅と厚みを測長し、アスペクト比(厚み/幅)を算出した。
【0086】
(6)積層体内部の緻密性の評価
サンプルの断面としてWT断面を1/2Lまで研磨してその断面を露出させる。そして、SEMを用いて断面を観察した画像を、明るさで2値化処理することで、焼結した積層体部分と、未焼結により残留している空隙の面積を算出した。そして、積層体全体に対する空隙の面積の割合を空隙率とした。なお、空隙率は、5%以上10%以下の範囲を良好と判定して「○」で示し、5%以下をさらに良好と判定して「◎」で示した。
図5(a)は、空隙率が5%より大きい絶縁層の状態を示し、
図5(b)は、空隙率が5%以下の絶縁層の状態を示す。
【0087】
各試料番号におけるサンプルの「コイル電子部品表面の色の観察」、「クラック発生荷重の評価」、「解像性(アスペクト比)」および「積層体内部の緻密性」のそれぞれの評価結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
(7)評価結果
コイル電子部品表面の色を観察した結果、表1に示すように、試料番号7のサンプルは、屈折率の大きい第1の無機フィラー(アルミナ)の含有量が少ないため、コイル導体層(内部電極層)が透けたが、サイドギャップ部の厚みが30μmでは、色の同一性、光透過抑制が認められた。
一方、試料番号1ないし試料番号6、試料番号8および試料番号9のサンプルでは、屈折率の大きい第1の無機フィラー(アルミナ)の含有量が5vol%以上24vol%以下の範囲で含有されていることから、コイル電子部品の表面におけるコイル導体層(内部電極層)上の部分と、サイドギャップ部における部分との色の同一性が認められた。
このように、第1の無機フィラーと第2の無機フィラーとの含有量を調整することで、焼成後の絶縁層の光透過率を調整することができることが示唆された。
【0090】
クラック発生荷重を評価した結果では、表1に示すように、試料番号7のサンプルは、第1の無機フィラー(アルミナ)の含有量が少ないが、第2の無機フィラーの含有量が多いことより、性能上必要とされる強度のコイル電子部品の得られうることが認められた。また、試料番号8のサンプルは、第1の無機フィラー(アルミナ)と第2の無機フィラー(クオーツ)の合計の含有量が多すぎるため、ガラスフリットの含有量が少なくなり、焼結しにくい組成であるが、性能上必要とされる強度のコイル電子部品の得られうることが認められた。さらに、試料番号9のサンプルは、第1の無機フィラー(アルミナ)と第2の無機フィラー(クオーツ)の合計の含有量が少ないため、ガラスフリットの含有量が多いことから焼結はできるが、無機フィラーの成分が少なく、クラックの進展を最小限に妨げることができ、性能上必要とされる強度のコイル電子部品の得られうることが認められた。
一方、試料番号1ないし試料番号6のサンプルは、屈折率の大きい第1の無機フィラー(アルミナ)の含有量が5vol%以上24vol%以下の範囲で含有され、第1の無機フィラー(アルミナ)と第2の無機フィラー(クオーツ)との合計の含有量が25vol%以上40vol%以下であるので、より良好な強度を有するコイル電子部品の得られうることが認められた。
【0091】
解像性(アスペクト比)の評価の結果では、表1に示すように、試料番号1ないし試料番号9のサンプルは、第1の無機フィラー(アルミナ)および第2の無機フィラー(クオーツ)の含有量が適宜の範囲で含有されているため、0.5以上のアスペクト比を有する配線パターンが得られることが認められた。
試料番号1ないし試料番号5、試料番号7ないし試料番号9のサンプルは、第1の無機フィラー(アルミナ)の含有量が少ないため、より好ましい、1.0以上のアスペクト比を有する配線パターンが得られることが認められた。
【0092】
積層体内部の緻密性の評価の結果では、表1に示すように、試料番号1ないし試料番号9のいずれにおいても、良好な緻密性が認められた。
【0093】
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【0094】
たとえば、前記実施の形態では、コイルは、巻回数が1周未満の複数のコイル導体層が積層された構成であったが、コイル導体層の巻回数は1周以上であってもよい。つまり、コイル導体層は、平面スパイラル形状であってもよい。
【0095】
また、前記実施の形態では、コイルの巻回軸方向が、z軸に略一致する方向であったが、コイルの巻回軸方向が第1主面と平行でもよい。
【0096】
さらに、前記実施の形態では、外部電極は、両端面から両主面および両側面に延伸して配置されているが、これに限るものではなく、第1の外部電極が、第1端面から第2主面へと延伸され、第1の端面と第2の主面のそれぞれ一部を覆うように形成されていてもよく、第2の外部電極が、第2端面から第2主面へと延伸され、第2の端面と第2の主面のそれぞれ一部を覆うように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10 コイル電子部品
12 積層体
12a 第1端面
12b 第2端面
12c 第1主面
12d 第2主面
12e 第1側面
12f 第2側面
14 絶縁層
16a、16b サイドギャップ部
20 コイル
22a、22b 引出電極
24 コイル導体層
26 ビア導体層
30 外部電極
30a 第1の外部電極
30b 第2の外部電極
50 アルミナ基板
52 接着剤
54 圧子
A 積層方向
O 軸方向