(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20220809BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F04B43/02 B
F04B43/02 F
F04B43/04 B
(21)【出願番号】P 2019179611
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 友徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸拓
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528981(JP,A)
【文献】特開2019-039436(JP,A)
【文献】特開2013-053611(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面とを有する第1主板と、
第3主面と第4主面と、前記第3主面側と前記第4主面側と連通する第1開口とを有し、前記第3主面が前記第1主面に対向して配置された第2主板と、
前記第2主板の前記第3主面の外縁に接続する環状の側壁部材と、
前記第1主板に配置され、前記第1主板を振動させる駆動体と、
前記第1主板の外周端よりも外側に配置された第1枠体と、
前記第1主板と前記第1枠体とを連結する第1連結部と、
1の前記第1連結部とこれに隣接する前記第1連結部との間に形成され、前記第1主面側と前記第2主面側とを連通する第2開口と、
前記第1枠体の外周端よりも外側に配置された第2枠体と、
前記第2主板と前記第2枠体とを前記側壁部材によって接続することで形成される、前記第1開口と前記第2開口とに連通するポンプ室と、
前記第1枠体と前記第2枠体と
に接続し、前記第1枠体の外周に沿って、複数の開口部によって互いに間隔を空けて配置された第2連結部と、
を備える、流体制御装置。
【請求項2】
第1主面と第2主面とを有する第1主板と、
第3主面、第4主面、および、前記第3主面側と前記第4主面側と連通する第1開口を有し、前記第3主面が前記第1主面に対向して配置され、外縁
に前記第3主面側
へ突出する
突出部を備えた、第2主板と、
前記第1主板に配置され、前記第1主板を振動させる駆動体と、
前記第1主板の外周端よりも外側に配置された第1枠体と、
前記第1主板と前記第1枠体とを連結する第1連結部と、
1の前記第1連結部とこれに隣接する前記第1連結部との間に形成され、前記第1主面側と前記第2主面側とを連通する第2開口と、
前記第1枠体の外周端よりも外側に配置された第2枠体と、
前記第2主板の前記外縁の突出部を前記第2枠体に接続することで形成される、前記第1開口と前記第2開口とに連通するポンプ室と、
前記第1枠体と前記第2枠体と
に接続し、前記第1枠体の外周に沿って、複数の開口部によって互いに間隔を空けて配置された第2連結部と、
を備える、流体制御装置。
【請求項3】
前記第1主板は、円板である、
請求項1または請求項2に記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記第1枠体の外周形状は、円形である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記第2開口は、前記第1主板を囲む円周上に配置されている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記第2連結部は、前記第1連結部および前記第1枠体よりも弾性率の低い、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項7】
前記第2連結部は、前記第1枠体の外周に沿って間隔を空けて配置された、3個以上の梁を備える、
請求項6に記載の流体制御装置。
【請求項8】
前記第1主板、前記第1連結部、前記第1枠体、前記第2連結部、および、前記第2枠体は、一体形成されている、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項9】
前記第1主板と、前記第1連結部と、前記第1枠体とは、一体に形成され、
該一体に形成された部分と、前記第2連結部と、前記第2枠体とは、別体に形成されている、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項10】
前記第2開口の前記第1主面側の開口面積と、前記第2開口の前記第2主面側の開口面積とは、異なる、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項11】
前記第1主板と前記第2主板との間に配置され、前記第1開口と前記第2開口との連通状態、非連通状態を切り替える第1弁体、
前記第1開口の前記第4主面側に配置され、前記第1開口を介した前記ポンプ室の内外の連通状態、非連通状態を切り替える第2弁体、
の少なくとも一方を備える、
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項12】
前記第1開口は、前記第2主板および前記第1主板を平面視して、前記第1主板の振動の腹に重なる位置に配置されている、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板の振動で得られる圧力の変化を利用した流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電体を利用して、流体を搬送する流体制御装置が、特許文献1に示すように、各種考案されている。
【0003】
特許文献1に示すポンプ装置は、内部空間を有する筐体を備える。また、ポンプ装置は、振動板、圧電素子、および、弾性支持部を備える。振動板は、内部空間に配置され、圧電素子は、振動板に装着されている。弾性支持部は、振動板の外周部に接続するとともに、筐体の内壁面に接続する。この構造によって、振動板は、筐体に対して、振動可能に保持される。
【0004】
圧電素子は、駆動振動によって歪み、この歪みによって、振動板は、ベンディング振動を生じる。このベンディング振動によって、内部空間に、圧力の変化が生じて、流体を一方向に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のポンプ装置(流体制御装置)では、振動板の振動の一部が、ポンプ室内の圧力分布に負の影響を与えることがある(後述の
図4(B)参照)。
【0007】
このため、従来のポンプ装置は、高い流量特性を得難い。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高い流量特性を得られる流体制御装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の流体制御装置は、第1主板、第2主板、側壁部材、駆動体、第1枠体、第1連結部、第2開口、第2枠体、ポンプ室、および、第2連結部を備える。第1主板は、第1主面と第2主面とを有する。第2主板は、第3主面と第4主面と、第3主面側と第4主面側と連通する第1開口とを有し、第3主面が第1主面に対向して配置されている。側壁部材は、第2主板の第3主面の外縁に接続する環状である。駆動体は、第1主板に配置され、第1主板を振動させる。第1枠体は、第1主板の外周端よりも外側に配置されている。第1連結部は、第1主板と第1枠体とを連結する。第2開口は、1の第1連結部とこれに隣接する第1連結部との間に形成され、第1主面側と第2主面側とを連通する。第2枠体は、第1枠体の外周端よりも外側に配置されている。ポンプ室は、第2主板と第2枠体とを側壁部材によって接続することで形成され、第1開口と第2開口とに連通する。第2連結部は、第1枠体と第2枠体とを弾性的に支持する。
【0010】
この構成では、第1主板の振動の外端が第1枠体の外周端になり、第1枠体よりも内側に第2開口が配置される。これにより、第1主板の振動の節は、第2開口の位置と略同じ位置に生じる。したがって、第1主板の振動の形状と、第1主板と第2主板とに挟まれるポンプ室の圧力分布の形状とは、略一致する。このため、振動が圧力変動に負の影響を与えることは、抑制される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、高い流量特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る流体制御装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る流体制御装置の第1主板を含む平板の平面図である。
【
図4】
図4(A)は、第1の実施形態に係る流体制御装置の圧力分布と振動形状との関係を示す図であり、
図4(B)は、従来の流体制御装置の圧力分布と振動形状との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)は、第3の実施形態に係る流体制御装置の開口形状を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7(A)、
図7(B)は、第4の実施形態に係る流体制御装置の開口形状を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態に係る流体制御装置における第1主板を含む平板の平面図である。
【
図9】
図9は、第6の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第6の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、第7の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第8の実施形態に係る流体制御装置における第1主板を含む平板の平面図である。
【
図13】
図13は、第9の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【
図14】
図14は、流体制御装置の振動部の振動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る流体制御装置の分解斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
図3は、第1の実施形態に係る流体制御装置の第1主板を含む平板の平面図である。なお、以下の各実施形態に示す各図においては、説明を分かり易くするために、それぞれの構成要素の形状を部分的または全体として誇張して記載している。また、図面を読み易くするために、一意的に推定できる構成要素については、部分的に符号を省略している。
【0014】
(流体制御装置10の構成)
図1、
図2に示すように、流体制御装置10は、第1主板20、第1枠体21、第2枠体22、第1連結部23、第2連結部24、圧電素子30、第2主板40、側壁部材50を備える。圧電素子30が、本発明の「駆動体」に対応する。
【0015】
図1、
図3に示すように、第1主板20は、平面視した形状が円形の平板である。第1主板20は、円形の第1主面201と第2主面202とを有する。第1主面201と第2主面202とは、互いに対向する。第1主板20は、例えば金属等からなる。第1主板20は、後述の圧電素子30の歪みによって、ベンディング振動を起こすものであればよい。ベンディング振動とは、後述の
図4に示すように、第1主板20を側面視して、第1主面201および第2主面202が波状に変位する振動である。
【0016】
第1枠体21は、平板であり、第1枠体21を平面視した形状は、外周形状が円形の円環形である。第1枠体21は、第1主板20の外周端よりも外側に配置されている。
【0017】
第1連結部23は、第1主板20と第1枠体21との間に配置されている。第1連結部23は、第1主板20の中心点を中心とする円周上に、間隔を空けて配置されている。第1連結部23は、第1主板20の外周端と第1枠体21の内周端とに接続する。
【0018】
第2枠体22は、平面視した形状が円環形の平板である。第2枠体22は、第1枠体21の外周端よりも外側に配置されている。
【0019】
第2連結部24は、梁形状である。第2連結部24は、第1枠体21と第2枠体22との間に配置されている。第2連結部24は、第1枠体21の外周端と第2枠体22の内周端とに接続する。第2連結部24は、複数である。複数の第2連結部24は、第1枠体21の外周に沿って、間隔を空けて配置されている。なお、第2連結部24の個数は、3個以上であればよく、複数の第2連結部24は、外周に沿って等間隔に配置するとよい。また、第1枠体21と第2枠体22との間において、第2連結部24が配置されていない箇所は、開口240である。
【0020】
第1連結部23には、複数の開口230が形成されている。開口230が、本発明の「第2開口」に対応する。複数の開口230は、第1連結部23における第1主面201側と第2主面202側とを連通する。複数の開口230は、平面視して円形、すなわち、筒状の貫通孔である。複数の開口230は、第1主板20の外周に沿った円上に配置されている。複数の開口230は、互いに隣接する第1連結部23の間に形成されている。複数の開口230は、等間隔で配置されることが好ましい。
【0021】
このような構成において、梁の形状、個数、複数の開口230の個数を適宜設定することによって、第2連結部24の弾性率は、第1連結部23の弾性率よりも低い。すなわち、第2連結部24の梁は、変形し易く、第1連結部23は、変形し難い。
【0022】
このような構成によって、第1主板20、第1連結部23、および、第1枠体21からなる平板部(振動部)は、第2連結部24によって、第2枠体22に対して振動可能に保持される。
【0023】
なお、第1主板20、第1枠体21、第2枠体22、第1連結部23、および、第2連結部24は、一体形成されているとよい。すなわち、一体形成されていなくてもよい。一体形成されていることによって、第1主板20、第1枠体21、第2枠体22、第1連結部23、および、第2連結部24からなる部分の形成は、容易になる。
【0024】
圧電素子30は、円板の圧電体と駆動用の電極とを備える。駆動用の電極は、円板の圧電体における両主面に形成されている。
【0025】
圧電素子30は、第1主板20の第2主面202に配置される。この際、平面視において、圧電素子30の中心と第1主板20の中心とは、略一致している。圧電素子30は、駆動用の電極に駆動信号が印加されることで歪む。この歪みによって、上述のように、第1主板20、第1連結部23、および、第1枠体21からなる平板部(振動部)は、振動する。
【0026】
第2主板40は、平面視した形状が円形の平板である。第2主板40は、ベンディング振動が殆ど生じない材料、厚み等からなることが好ましい。第2主板40の外形形状は、第1主板20、第1枠体21、第2枠体22、第1連結部23、および、第2連結部24からなる部分の外形形状を含む大きさである。第2主板40は、円形の第3主面401と第4主面402とを有する。第3主面401と第4主面402とは、互いに対向する。
【0027】
第2主板40は、開口400を備える。開口400が、本発明の「第1開口」に対応する。開口400は、第1主板20の第3主面401側と第4主面402側とを連通する筒状の貫通孔である。開口400は、第2主板40の中心に重なる位置に配置される。
【0028】
第2主板40は、第1主板20に対して、互いの主面が平行になるように配置される。この際、第2主板40の第3主面401と第1主板20の第1主面201とは、対向する。また、第2主板40を平面視した中心と、第1主板20を平面視した中心とは、略一致している。
【0029】
側壁部材50は、環状の柱体である。側壁部材50は、ベンディング振動が殆ど生じない材料、厚み等からなることが好ましい。なお、側壁部材50は、第2枠体22または第2主板40と別体でもよく、一体形成されていてもよい。
【0030】
側壁部材50は、第2枠体22と第2主板40との間に配置される。側壁部材50の高さ方向の一方端は、第2枠体22の第1主面201側の面に接続する。側壁部材50の高さ方向の他方端は、第2主板40の第3主面401に接続する。
【0031】
この構成によって、流体制御装置10は、第1主板20、第1枠体21、第2枠体22、第1連結部23、および、第2連結部24からなる平板と、第2主板40と、側壁部材50とによって囲まれる空間を備える。この空間が、流体制御装置10のポンプ室100となる。ポンプ室100は、第1開口400、および、第2開口230に連通している。言い換えれば、ポンプ室100は、第1開口400、および、第2開口230を介して、流体制御装置10の外部空間に連通している。なお、ポンプ室100は、開口240を介しても外部空間にも連通しているが、この箇所においては、外部空間に連通していなくてもよい。
【0032】
このような構成において、流体制御装置10は、次に示すような原理によって、流体を搬送する。
図4(A)は、第1の実施形態に係る流体制御装置の圧力分布と振動形状との関係を示す図である。また、
図4(B)は、従来の流体制御装置の圧力分布と振動形状との関係を示す図である。なお、
図4(B)では、説明を容易にするため、1次振動の状態を示すが、2次振動以上であっても、同様の現象が生じる。
【0033】
本実施形態の流体制御装置10では、圧電素子30に、所定周波数の駆動信号(駆動電圧)が印加されると、
図4(A)に示すように、圧電素子30が、所定周波数で歪む。これにより、
図4(A)に示すように、第1主板20、第1連結部23、および、第1枠体21からなる平板部(以下、これらの部分を総じて説明する場合、振動部と称する。)は、共振する。なお、
図4(A)では、2次振動で共振する状態を示している。
【0034】
この振動は、
図4(A)に示すように、複数の開口230(第1連結部23の位置)を節とする圧力分布が、ポンプ室100に生じる。そして、この圧力分布によって、例えば、流体制御装置10は、複数の開口230から流体をポンプ室100内に流入させ、ポンプ室100内において流体を搬送し、開口400から流体をポンプ室100外に吐出する。
【0035】
ここで、流体制御装置10の構成では、振動部の中心は、振動の腹となり、振動部の外側に向けて、2個の振動の節ND1、ND2が生じる。そして、振動部の外周端は、第2連結部24によって、振動可能に保持されているので、自由端となる。このため、
図4(A)に示すように、振動部の外側の節ND2の位置を、第1連結部23の位置、すなわち、開口230の位置の付近にすることができる。
【0036】
また、上述のように、ポンプ室100の圧力の変動は、複数の開口230(第1連結部23の位置)が節となり、この節を含むポンプ室100内の節は、振動の次数によって決まる。したがって、この圧力分布は、
図4(A)に示すように、振動部の中心に重なる位置に、圧力変動の腹を有し、振動部の振動と同様に、2個の圧力変動の節を有する。
【0037】
流体制御装置10の構成では、開口230が流体制御装置10の外部に連通している。このため、圧力変動の外側の節は、開口230の位置に略一致する。
【0038】
したがって、
図4(A)に示すように、振動の形状と圧力分布の形状とは、ほぼ同じになる。すなわち、開口230よりも第1主板20の中心側(節ND2よりも中心側)において、振動の形状(振動部の変位)と圧力分布の変位の方向が同じである。
【0039】
これにより、流体制御装置10は、振動による圧力分布への悪影響を抑制できる。この結果、流体制御装置10は、高い流量特性を実現できる。
【0040】
一方、
図4(B)に示すように、従来の流体制御装置10Pは、複数の開口230および第1連結部23を有さず、第1主板20Pは、第2連結部24によって、第2枠体22に、振動可能に支持される。この場合、第1主板20Pの外周端、すなわち、第2連結部24が接続する位置であり、開口240が有する位置は、振動の節にはならない。そして、例えば、
図4(B)に示すタイミングの場合、第1主板20Pの振動は、中心付近では、振動していない基準位置DFよりもポンプ室100側への変位DP(+)となり、開口240付近では、基準位置DFよりもポンプ室100と反対側への変位DP(-)となる。
【0041】
ここで、従来の流体制御装置10Pでは、この開口240によって、ポンプ室100は、第1主板20P側の外部に連通する。したがって、開口240の位置において、圧力はP(0)=0となり、
図4(B)に示すタイミングの場合、開口240よりも中心側において、正圧P(+)となる。すなわち、負圧P(-)となる箇所はない。
【0042】
このように、従来の流体制御装置10Pでは、開口240の付近では、圧力分布が正圧P(+)であるにも係わらず、第1主板20Pの変位はポンプ室100側と反対側となる。このため、従来の流体制御装置10Pでは、開口240の近傍において、振動の形状が圧力分布に対して、負の影響を与える。この結果、従来の流体制御装置10Pは、高い流量特性を実現できない。
【0043】
一方、本願の流体制御装置10は、このような振動の形状が圧力分布に対して負の影響を与える箇所がないので、高い流量特性を実現できる。
【0044】
また、この構成では、第1主板20が円板である。これにより、流体制御装置10は、振動のエネルギー損失を低減できる。
【0045】
また、この構成では、複数の開口230が、第1主板20の全周に亘って配置されている。これにより、振動エネルギーの分布が全方位に均一になり、流体制御装置10は、高い流量特性を実現できる。
【0046】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【0047】
図5に示すように、第2の実施形態に係る流体制御装置10Aは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、第2連結部24に代えて、第2連結部24Aを備える点において異なる。流体制御装置10Aの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0048】
第2連結部24Aは、第1枠体21および第2枠体22と別体で形成されている。第2連結部24Aは、円環形の弾性体によって実現される。例えば、第2連結部24Aの材料は、シリコーンゴム等である。なお、第2連結部24Aの形状および材料は、第2連結部24Aの弾性率が第1連結部23の弾性率よりも低ければよい。第2連結部24Aは、第1枠体21および第2枠体22に接合している。
【0049】
この構成であっても、流体制御装置10Aは、流体制御装置10と同様に、高い流量特性を実現できる。なお、この構成では、第2連結部24Aは、開口を有さなくてもよい。第2連結部24Aに開口を有さない場合、ポンプ室100の密閉性が向上し、よりよい。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図6(A)、
図6(B)は、第3の実施形態に係る流体制御装置の開口形状を示す拡大断面図である。
【0051】
図6(A)、
図6(B)に示すように、第3の実施形態に係る流体制御装置10B、10Cは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、それぞれ、開口230B、開口230Cの形状において異なる。流体制御装置10B、10Cのその他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0052】
図6(A)、
図6(B)に示すように、流体制御装置10Bの開口230B、流体制御装置10Cの開口230Cは、第1主面201側の開口面積と第2主面202側の開口面積とが異なる。
【0053】
具体的には、
図6(A)に示すように、流体制御装置10Bは、開口230Bを有する。開口230Bは、第1部分231Bと第2部分232Bとを有する。第1部分231Bは、第1主面201側に開口し、第2部分232Bは、第2主面202側に開口する。第1部分231Bと第2部分232Bとは、連通する。第2部分232Bの開口面積は、第1部分231Bの開口面積よりも大きい。これにより、第2部分232Bの開口面積は、流体制御装置10の開口230の開口面積より大きくすることができる。したがって、流体制御装置10Bは、上述の作用効果を奏しながら、開口230Bにおける流路抵抗を小さくできる。
【0054】
図6(B)に示すように、流体制御装置10Cは、開口230Cを有する。開口230Cは、第1部分231Cと第2部分232Cとを有する。第1部分231Cは、第1主面201側に開口し、第2部分232Cは、第2主面202側に開口する。第1部分231Cと第2部分232Cとは、連通する。第1部分231Cの開口面積は、第2部分232Cの開口面積よりも大きい。これにより、例えば、第1部分231Cの開口面積は、流体制御装置10の開口230の開口面積より大きくすることができる。したがって、流体制御装置10Cは、上述の作用効果を奏しながら、開口230Cにおける流路抵抗を小さくできる。
【0055】
このような構成によって、流体制御装置10B、10Cは、さらに高い流量特性を実現できる。
【0056】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図7(A)、
図7(B)は、第4の実施形態に係る流体制御装置の開口形状を示す拡大断面図である。
【0057】
図7(A)、
図7(B)に示すように、第4の実施形態に係る流体制御装置10D、10Eは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、それぞれ、開口230D、開口230Eの形状において異なる。流体制御装置10D、10Eのその他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0058】
図7(A)、
図7(B)に示すように、流体制御装置10Dの開口230D、流体制御装置10Eの開口230Eは、第1主面201側の開口面積と第2主面202側の開口面積とが異なる。
【0059】
具体的には、
図7(A)に示すように、流体制御装置10Dの開口230Dは、側面視してテーパ形状を有し、第2主面202側の開口面積は、第1主面201側の開口面積よりも大きい。これにより、第2主面202側の開口面積は、流体制御装置10の開口230の開口面積より大きくすることができる。したがって、流体制御装置10Dは、上述の作用効果を奏しながら、開口230Dにおける流路抵抗を小さくできる。
【0060】
図7(B)に示すように、流体制御装置10Eの開口230Eは、側面視してテーパ形状を有し、第1主面201側の開口面積は、第2主面202側の開口面積よりも大きい。これにより、第1主面201側の開口面積は、流体制御装置10の開口230の開口面積より大きくすることができる。したがって、流体制御装置10Eは、上述の作用効果を奏しながら、開口230Eにおける流路抵抗を小さくできる。
【0061】
このような構成によって、流体制御装置10D、10Eは、さらに高い流量特性を実現できる。
【0062】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図8は、第5の実施形態に係る流体制御装置における第1主板を含む平板の平面図である。
【0063】
図8に示すように、第5の実施形態に係る流体制御装置10Fは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、第1連結部23Fの形状において異なる。流体制御装置10Fの他の形状は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所は省略する。
【0064】
流体制御装置10Fは、第1連結部23Fの厚みは、第1主板20の厚みおよび第1枠体21の厚みよりも小さい。すなわち、第1連結部23Fは、第1主板20および第1枠体21に対して、円環形の溝状である。
【0065】
このような構成であっても、流体制御装置10Fは、複数の開口230の形成部における流路抵抗を小さくできる。したがって、流体制御装置10Fは、さらに高い流量特性を実現できる。
【0066】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図9は、第6の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【0067】
図9に示すように、第6の実施形態に係る流体制御装置10Gは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、複数の弁体を備える点で異なる。流体制御装置10Gの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0068】
流体制御装置10Gは、フィルム61、固定部材62、第3主板71、外周支持部材72、および、平膜80を、さらに備える。
【0069】
フィルム61は、円環形である。フィルム61は、可撓性を有する材料からなり、外力に応じて湾曲する。固定部材62は、円環形であり、接着部材である。フィルム61は、固定部材62によって、第1主板20の第1主面201に固定される。より具体的には、開口230から流体を流入し、開口400から吐出する場合、
図9に示すように、固定部材62は、フィルム61の外周側の部分を固定し、フィルム61の内周側の部分を固定しない。一方、開口400から流体を流入し、開口230から吐出する場合、固定部材62は、フィルム61の内周側の部分を固定し、フィルム61の外周側の部分を固定しない。この構成によって、流体がポンプ室100内に流入する方向に応じて、開口230と開口240との間の連通状態と非連通状態とが切り替えられ、本願の「第1弁体」が実現される。
【0070】
第3主板71は、第2主板40の第4主面402側に、第2主板40に対して間隔を空けて配置されている。第3主板71は、第2主板40に対向している。外周支持部材72は、円環形であり、第2主板40と第3主板71とに接続する。これにより、第2主板40、第3主板71、および、外周支持部材72によって囲まれる空間700が形成される。第3主板71には、開口710が形成されている。開口710は、第3主板71を厚み方向に貫通する孔である。開口710は、開口400と重ならない位置に配置されている。
【0071】
平膜80は、空間700に収容可能な形状である。平膜80の厚みは、空間700の高さよりも小さい。平膜80には、開口810が形成されている。開口810は、開口710に重なる位置に配置されている。この構成によって、流体が開口400内に流入する方向に応じて、ポンプ室100と流体制御装置10Gの外部との間の連通状態と非連通状態とが切り替えられ、本願の「第2弁体」が実現される。
【0072】
このような構成でも、流体制御装置10Gは、流体制御装置10と同様に、高い流量特性を実現できる。さらに、流体制御装置10Gは、高い整流効果を実現できる。
【0073】
なお、第1弁体と第2弁体は、両方を形成してもよいが、一方だけであってもよい。
【0074】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図11は、第7の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【0075】
図11に示すように、第7の実施形態に係る流体制御装置10Hは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、複数の開口400Hを有する点で異なる。流体制御装置10Hの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0076】
流体制御装置10Hは、複数の開口400Hを有する。複数の開口400Hは、第2主板40の中心と、該中心に対して所定半径の円上に配置される。この際、
図11に示すように、複数の開口400Hは、圧力分布の腹、言い換えれば、振動の腹に重なる位置に配置されることが好ましい。
【0077】
このような構成でも、流体制御装置10Hは、流体制御装置10と同様に、高い流量特性を実現できる。さらに、流体制御装置10Hは、より高い流量を実現できる。
【0078】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図12は、第8の実施形態に係る流体制御装置における第1主板を含む平板の平面図である。
【0079】
図12に示すように、第8の実施形態に係る流体制御装置10Iは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、平面視した形状において異なる。流体制御装置10Iの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0080】
流体制御装置10Iでは、第1主板20Iは、平面視して正方形である。第1枠体21I、および、第2枠体22Iは、それぞれ、平面視して、矩形の環状である。
【0081】
第1連結部23Iは、第1主板20Iおよび第1枠体21Iの各辺に接続する。第2連結部24Iは、第1枠体21Iと第2枠体22Iの各辺に接続する。
【0082】
このような構成でも、流体制御装置10Hは、流体制御装置10と同様に、高い流量特性を実現できる。なお、第1主板20I、第1枠体21I、および、第2枠体22Iは、は、正方形(矩形)以外の多角形であってもよく、楕円、長円であってもよいが、円形に近い方が好ましい。また、第1主板20I、第1枠体21I、および、第2枠体22Iは、それぞれの形状が異なっていてもよい。
【0083】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。
図13は、第9の実施形態に係る流体制御装置の構成を示す断面図である。
【0084】
図13に示すように、第9の実施形態に係る流体制御装置10Jは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、第2主板40Jが突出部41Jを備えている点で、異なる。流体制御装置10Jの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0085】
流体制御装置10Jは、第2主板40Jを備える。第2主板40Jは、外縁に、環状の突出部41Jを備える。突出部41Jは、第2主板40Jにおける第3主面401側が、第3主面401から外方に突出する形状である。突出部41Jは、第2主板40Jの平板部と一体形成されている。第2主板40Jは、突出部41Jを備える側(第3主面401側)を第1主板20側にして、設置される。そして、突出部41Jは、第2枠体22に当接している。この構造によって、ポンプ室100は形成される。
【0086】
このような構成であっても、流体制御装置10Jは、流体制御装置10と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
なお、上述の説明では、2次振動を生じる場合を示したが、他の次数の振動であってもよい。
図14は、流体制御装置の振動部の振動状態を示す図である。
図14に示すように、振動部の振動は、2次振動であってもよく、1次振動であってもよい。振動は、3次振動であってもよいが、振幅の大きな範囲が小さくなるので、2次振動以下であることが好ましい。これにより、流体制御装置は、より高い流量特性を実現できる。
【0088】
また、上述の説明では、開口230の形状(平面視形状)を円形とする態様を示した。しかしながら、開口230の形状は、多角形、楕円、長円等であってもよい。また、開口230は、第1主板の外周に沿って延びる帯状であってもよい。
【0089】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組合せが可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0090】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I、10J:流体制御装置
20、20I:第1主板
21、21I:第1枠体
22、22I:第2枠体
23、23F、23I:第1連結部
24、24A、24I:第2連結部
30:圧電素子
40、40J:第2主板
41J:突出部
50:側壁部材
61:フィルム
62:固定部材
71:第3主板
72:外周支持部材
80:平膜
100:ポンプ室
201:第1主面
202:第2主面
230、230B、230C、230D、230E:開口
231B、231C:第1部分
232B、232C:第2部分
240:開口
400、400H:開口
401:第3主面
402:第4主面
700:空間
710:開口
810:開口