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特許7120209煙検知システム、煙検知方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】煙検知システム、煙検知方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20220809BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220809BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G08B17/10 D
G06T7/00 350B
G08B25/00 510M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019233207
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103345
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 知哉
【審査官】西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-126287(JP,A)
【文献】特開2019-092972(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079400(WO,A1)
【文献】特開2007-065711(JP,A)
【文献】特開平04-167199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T7/00-7/90
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて、前記廃棄物と混在する燃焼物から発せられる燃焼煙を検知する煙検知システムであって、
廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部による判定結果に応じた報知を行う報知部と、
を備え、
前記判定部は、学習済みモデルに、前記撮像部にて撮像された画像を入力し、前記学習済みモデルから出力された、前記燃焼煙の画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって前記判定を行い、
前記学習済みモデルは、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像であって、燃焼煙の画像部分が存在する画像と燃焼煙の画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、前記教師画像のそれぞれに燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルであり、
前記判定部は、前記確度パラメータが第一範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在しないと判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲とは異なる第二範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在する可能性が有ると判定するが埃の画像部分である可能性もあるとして或る待機時間だけ処理を待機し、前記確度パラメータが前記第一範囲および前記第二範囲とは異なる第三範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在すると判定する
煙検知システム。
【請求項2】
前記報知部は、前記確度パラメータが前記第二範囲である場合に、第一警告情報を報知し、前記確度パラメータが前記第三範囲である場合に、前記第一警告情報よりも警告レベルが高い第二警告情報を報知する
請求項に記載の煙検知システム。
【請求項3】
ハードウエアを有するプロセッサが、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて前記廃棄物と混在する燃焼物から発せられる燃焼煙を検知する煙検知方法であって、
廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像を取得してメモリに記憶させる取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した画像を前記メモリから読み出して学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから出力された前記燃焼煙の画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって、前記画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じた報知をさせる報知ステップと、
を含み、
前記学習済みモデルは、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像であって、燃焼煙の画像部分が存在する画像と燃焼煙の画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、前記教師画像のそれぞれに燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルであり、
前記判定ステップでは、前記確度パラメータが第一範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在しないと判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲とは異なる第二範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在する可能性が有ると判定するが埃の画像部分である可能性もあるとして或る待機時間だけ処理を待機し、前記確度パラメータが前記第一範囲および前記第二範囲とは異なる第三範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在すると判定する
煙検知方法。
【請求項4】
前記報知ステップでは、前記確度パラメータが前記第二範囲である場合に、第一警告情報を報知し、前記確度パラメータが前記第三範囲である場合に、前記第一警告情報よりも警告レベルが高い第二警告情報を報知する
請求項に記載の煙検知方法。
【請求項5】
ハードウエアを有するプロセッサに、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて前記廃棄物と混在する燃焼物から発せられる燃焼煙を検知するステップを実行させるプログラムであって、
前記ステップは、
可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得した画像を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから出力された前記燃焼煙の画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって、前記画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じた報知をさせる報知ステップと、
を含み、
前記学習済みモデルは、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像であって、燃焼煙の画像部分が存在する画像と燃焼煙の画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、前記教師画像のそれぞれに燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルであり、
前記判定ステップでは、前記確度パラメータが第一範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在しないと判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲とは異なる第二範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在する可能性が有ると判定するが埃の画像部分である可能性もあるとして或る待機時間だけ処理を待機し、前記確度パラメータが前記第一範囲および前記第二範囲とは異なる第三範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在すると判定する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物貯留ピットにおいて燃焼物から発せられる燃焼煙を検知する煙検知システム、煙検知方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物中間処理場に設けられる、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて、貯留状態の可燃物に燃焼物が混入する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-84426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
とりわけ、大型の廃棄物を前処理のために破砕してから廃棄物貯留ピットに搬送して貯留させる場合、破砕の際に廃棄物の一部を構成する金属と破砕機の金属からなる破砕部とが接触して火花が発生し、それによって廃棄物の一部が燃焼し、燃焼した状態のまま搬送されて貯留される場合がある。特に、廃棄物にリチウムイオン電池が混在している場合には、廃棄物を攪拌するバケットによってリチウムイオン電池が衝撃を受けて燃焼する場合などもある。このような燃焼物は、当初は燻った状態であっても、貯留された状態では周囲に多数の可燃物があることから、周囲の可燃物とともに発火し、火が急速に燃え広がるおそれがある。
【0005】
ところで、火災の判断のために煙を検知する方法として、撮像した画像にエッジ処理を施して稜線を抽出し、稜線の直線成分の時系列変化から煙による特徴的な時系列変化を検知する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に記載の技術は、撮像画像から稜線を抽出して、その直線成分の時系列変化から煙の特徴的な時系列変化を検知している。そのため、特許文献1に記載の技術を、廃棄物貯留ピットのように、空気の乱流が生じにくく、かつ廃棄物が攪拌される場所に適用した場合、例えば埃などを燃焼物から発せられる煙と誤検知する可能性があった。したがって、廃棄物貯留ピットにおいて、燃焼物から発せられる煙を早期にかつ正確に検知する技術が求められている。なお、本明細書では、燃焼物から発せられる煙を燃焼煙と記載する場合がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、廃棄物貯留ピットにおける燃焼煙を早期にかつ正確に検知することができる煙検知システム、煙検知方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて、前記廃棄物と混在する燃焼物から発せられる燃焼煙を検知する煙検知システムであって、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う判定部と、前記判定部による判定結果に応じた報知を行う報知部と、を備え、前記判定部は、学習済みモデルに、前記撮像部にて撮像された画像を入力し、前記学習済みモデルから出力された、前記燃焼煙の画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって前記判定を行い、前記学習済みモデルは、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像であって、燃焼煙の画像部分が存在する画像と燃焼煙の画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、前記教師画像のそれぞれに燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルである。
【0009】
本発明の一態様において、前記判定部は、前記確度パラメータが第一範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在しないと判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲とは異なる第二範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在する可能性が有ると判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲および前記第二範囲とは異なる第三範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在すると判定してもよい。
【0010】
本発明の一態様において、前記報知部は、前記確度パラメータが前記第二範囲である場合に、第一警告情報を報知し、前記確度パラメータが前記第三範囲である場合に、前記第一警告情報よりも警告レベルが高い第二警告情報を報知してもよい。
【0011】
本発明の一態様は、ハードウエアを有するプロセッサが、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて前記廃棄物と混在する燃焼物から発せられる燃焼煙を検知する煙検知方法であって、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像を取得してメモリに記憶させる取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得した画像を前記メモリから読み出して学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから出力された前記燃焼煙の画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって、前記画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う判定ステップと、前記判定ステップにおける前記判定結果に応じた報知をさせる報知ステップと、を含み、前記学習済みモデルは、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像であって、燃焼煙の画像部分が存在する画像と燃焼煙の画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、前記教師画像のそれぞれに燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルである。
【0012】
本発明の一態様において、前記判定ステップでは、前記確度パラメータが第一範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在しないと判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲とは異なる第二範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在する可能性が有ると判定し、前記確度パラメータが前記第一範囲および前記第二範囲とは異なる第三範囲である場合に、前記燃焼煙の画像部分が存在すると判定してもよい。
【0013】
本発明の一態様において、前記報知ステップでは、前記確度パラメータが前記第二範囲である場合に、第一警告情報を報知し、前記確度パラメータが前記第三範囲である場合に、前記第一警告情報よりも警告レベルが高い第二警告情報を報知してもよい。
【0014】
本発明の一態様は、ハードウエアを有するプロセッサに、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおいて前記廃棄物と混在する燃焼物から発せられる燃焼煙を検知するステップを実行させるプログラムであって、前記ステップは、可燃性の廃棄物が貯留される廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得した画像を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから出力された前記燃焼煙の画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって、前記画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う判定ステップと、前記判定ステップにおける前記判定結果に応じた報知をさせる報知ステップと、を含み、前記学習済みモデルは、廃棄物貯留ピットにおける貯留状態の廃棄物の上面の画像であって、燃焼煙の画像部分が存在する画像と燃焼煙の画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、前記教師画像のそれぞれに燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可燃物貯留ピットにおける燃焼煙を早期にかつ正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態による煙検知システムが設けられた廃棄物中間処理場の一部の模式図である。
図2図2は、制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、煙検知方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0018】
図1は、実施形態による煙検知システム10が設けられた廃棄物中間処理場100の一部の模式図である。廃棄物中間処理場100は、廃棄物貯留ピット部110と、焼却炉部120とを備える。
【0019】
<廃棄物貯留ピット部の構成>
廃棄物貯留ピット部110は、出入口111と、プラットフォーム112と、廃棄物貯留ピット113と、天井114と、クレーン機構115と、押込送風機130と、炉冷却送風機131とを備える。押込送風機130及び炉冷却送風機131は後述する焼却炉部120の焼却炉122の内部に送風する送風機である。なお、押込送風機130はFDF(Forced Draft Fan)とも呼ばれる。炉冷却送風機131はCDF(Cooling Draft Fan)とも呼ばれる。
【0020】
出入口111は、可燃性の廃棄物を収集し搬送する廃棄物収集車Vが出入りする。プラットフォーム112は、廃棄物収集車Vが搬送した廃棄物を廃棄物貯留ピット113に投入する際に停車する領域である。
【0021】
廃棄物貯留ピット113は、底部113aと、底部113aから底部113aと略直交するように立設し、互いに対向する側壁113b、113cと、側壁113b、113c、底部113aと略直交するように底部113aから立設し、互いに対向する2つの不図示の側壁とで囲まれた領域として設けられている。側壁113bには出入口111およびプラットフォーム112が設けられている。側壁113cは、側壁113bに対して焼却炉部120側に位置する焼却炉部120側との隔壁である。側壁113cの上部には、押込送風機130及び炉冷却送風機131の吸気口113caが備わっている。廃棄物貯留ピット113には廃棄物Gが貯留されている。符号G1は貯留状態の廃棄物Gの上面である。
【0022】
天井114は、底部113aと対向して設けられている。また、天井114の近傍において、廃棄物貯留ピット部110は焼却炉部120と連通しており、気体は吸気口113caから押込送風機130及び炉冷却送風機131により吸気され、焼却炉部120に備わった排気口132及び133により排気され、焼却炉部120側に吸気される。これにより、廃棄物貯留ピット113は負圧に保たれ、臭気が出入口111から外部に漏れることが防止される。また、矢印A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7は、廃棄物貯留ピット部110における空気の流れを示す。空気の流れは、出入口111から流入する流れ、廃棄物貯留ピット113の底部113aへ進む流れ、出入口111から側壁113bに沿って天井114に立ち上る流れ、上面G1から側壁113cに沿って天井114に立ち上る流れ、天井114に沿って進んで焼却炉部120に流入する流れ、吸気口113caに流入する流れなどがある。
【0023】
クレーン機構115は、天井114の近傍に設けられている。クレーン機構115は、ガーダ115aと、トロリ115bと、ロープ115cと、バケット115dとを備える。
【0024】
ガーダ115aは、天井114の近傍に架け渡されている。トロリ115bは、ガーダ115aを横行可能かつロープ115cの巻き上げ、巻き下ろしが可能に構成されている。ロープ115cは、例えばバケット115dを支持するための支持ロープとバケット115dを開閉するための開閉ロープとを含んで構成されている。バケット115dは複数の爪を備えており、開閉ロープによる爪の開閉によって廃棄物を掴んだり離したりすることができる。なお、バケット115dは油圧式などの開閉ロープを用いない構成でもよい。
【0025】
クレーン機構115は、バケット115dによる廃棄物Gの攪拌や廃棄物Gの焼却炉部120への搬送に使用される。廃棄物Gの攪拌とは、或る場所に存在する廃棄物Gの一部をバケット115dにより掴んで他の場所に移動させる作業である。攪拌によって、廃棄物Gが複数の異なる廃棄物を含んでいる場合に同じ種類の廃棄物が偏在する状態をより均一な状態とすることができる。廃棄物Gの攪拌や廃棄物Gの搬送に伴って、廃棄物Gの上面G1の上方に埃Dが舞い上がる場合がある。バケット115dは、攪拌等のために頻繁に移動しており、舞い上がった埃Dは、攪拌のために生じる乱流によってかき乱される。
【0026】
また、廃棄物Gと混在する燃焼物Bが火元として存在する場合、燃焼物Bが燻っており発火していない状態や火が周囲に燃え広がっていない状態の場合、燃焼物Bから発せられる燃焼煙Sは空気の流れに沿って比較的真っ直ぐに立ち上る。特に、燃焼物Bが廃棄物Gの中に埋まっている場合は、燃焼物Bを覆っている廃棄物の間から燃焼煙Sが立ち上るので、攪拌のために生じる乱流の影響を受けにくくなって比較的真っ直ぐに立ち上る。
【0027】
<焼却炉部の構成>
焼却炉部120は、投入ホッパ121と、焼却炉122と、開口部123とを備える。投入ホッパ121は、クレーン機構115のバケット115dが掴んで搬送した廃棄物が投入される部分である。焼却炉122は廃棄物を焼却する部分である。開口部123は焼却炉122内の気体等が排出される部分であり、例えばボイラに接続されている。
【0028】
<煙検知システムの構成>
煙検知システム10は、カメラ部11と制御装置12とを備える。カメラ部11は、廃棄物貯留ピット部110に設置されている。
【0029】
カメラ部11は、撮像部の一例であり、廃棄物貯留ピット113における貯留状態の廃棄物Gの上面G1の画像を連続してまたは所定のフレームレートで撮像するカメラを含む。カメラ部11は、上面G1の全てにわたって全体の画像を撮像できるように設置されていることが好ましい。また、上面G1の全てにわたって全体の画像を撮像するためには、カメラ部11は1台のカメラを含んでいてもよいし、複数台のカメラを含んでいてもよい。カメラ部11が複数のカメラを含む場合は、複数のカメラのそれぞれは互いに離間した場所に設けられていてもよい。図示されたカメラ部11の位置はカメラの台数に関わらず、カメラの配置を限定するものではない。カメラ部11は、通信機能を備えており、撮像した画像のデータを制御装置12に送信する。カメラ部11は、例えばデジタル方式のカメラやアナログ方式のカメラを含む。デジタル方式のカメラは例えばネットワークカメラ、またはIP(Internet Protocol)カメラである。アナログ方式のカメラには、例えばA/Dコンバータが設けられており、撮像した画像を所定のフレームレートのデジタルデータとして制御装置12に送信する。フレームレートは例えば60fpsであるが、特に限定はされない。
【0030】
カメラ部11は、例えば、専用線、インターネットなどの公衆通信網、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、および携帯電話などの電話通信網や公衆回線、VPN(Virtual Private Network)などの一または複数の組み合わせからなるネットワーク(図示せず)を介して、制御装置12と通信可能に接続されている。
【0031】
図2は、制御装置12の構成を示すブロック図である。制御装置12は、判定部12a、表示部12b、通信部12cおよび記憶部(メモリ)12dを備える。
【0032】
制御装置12は、具体的に、ハードウエアとして、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(メインメモリ)を備える。判定部12aは、後述するように制御装置12のハードウエアがプログラムを実行することによって機能的に実現される。表示部12bは、所定の情報を外部に報知可能に構成されており、例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)を用いた薄型ディスプレイとスピーカとを備える。通信部12cは、カメラ部11と通信可能に構成されており、例えばLANインターフェースボードや無線通信回路を備える。記憶部12dは、RAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、メインメモリが記憶部12dに含まれていてもよい。また、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、もしくはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部12dを構成してもよい。
【0033】
記憶部12dには、制御装置12の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System :OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、判定部12aを実現するためのプログラムも含まれる。
【0034】
具体的に、記憶部12dは、カメラ部11にて撮像された画像のデータを一時的または持続的に記憶することができる。また、記憶部12dは、カメラ部11にて撮像された画像のデータを映像データとして記憶することができる。記憶部12dには、学習済みモデル12d1が格納されている。なお、記憶部12dは種々のネットワークを介して通信可能な他のサーバに設けてもよい。
【0035】
上述した各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0036】
制御装置12は、記憶部12dに記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。すなわち、制御装置12によるプログラムの実行によって、ハードウエアと協働して制御装置12の機能が実行される。
【0037】
ここで、記憶部12dに記憶されているプログラムである学習済みモデル12d1の生成方法について説明する。学習済みモデル12d1は、機械学習によって予め生成されたものである。機械学習は、例えば、深層学習(ディープラーニング)であり、例えば畳み込みニューラルネットワークのような、ニューラルネットワークを用いたものでよい。この時、教師データとして、廃棄物貯留ピット113における貯留状態の廃棄物の上面G1の画像であって、燃焼煙Sの画像部分が存在する画像と燃焼煙Sの画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、教師画像のそれぞれに燃焼煙Sの画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを用いる。
【0038】
具体的には、入出力データセットにおいて、燃焼煙Sの画像部分が存在する画像には燃焼煙Sの画像部分が存在するという判定結果がラベル付けされており、燃焼煙Sの画像部分が存在しない画像には燃焼煙Sの画像部分が存在しないという判定結果がラベル付けされている。このような教師画像としては、カメラ部11にて撮像された画像のデータを水増し処理した画像も利用できる。
【0039】
なお、上述したように、バケット115dは攪拌等のために頻繁に移動しており、埃Dが舞い上がるので、いずれの教師画像にも移動するバケット115dや埃Dの画像部分が存在し得る。バケット115dや埃Dの画像部分は燃焼煙Sの検出にとってはノイズとなり得るものである。
【0040】
このように生成された学習済みモデル12d1は、カメラ部11にて撮像された画像を入力すると、その画像における燃焼煙Sの画像部分の存在の確度を示す確度パラメータを出力する。確度パラメータは、例えば0から1までの値を取り、0の場合は燃焼煙Sの画像部分の存在確率が0%であり、1の場合は燃焼煙画像部分の存在確率が100%である。
【0041】
そこで、制御装置12において、判定部12aは、学習済みモデル12d1に、カメラ部11にて撮像された画像を入力し、学習済みモデル12d1から出力された確度パラメータによって、画像に燃焼煙の画像部分が存在するか否かの判定を行う。
【0042】
例えば、判定部12aは、確度パラメータが第一範囲である場合に、燃焼煙Sの画像部分が存在しないと判定する。確度パラメータが第一範囲とは異なる第二範囲である場合に、燃焼煙Sの画像部分が存在する可能性が有ると判定する。確度パラメータが第一範囲および第二範囲とは異なる第三範囲である場合に、燃焼煙Sの画像部分が存在すると判定する。例えば、確度パラメータが0から1までの値を取る場合は、第一範囲は0以上0.2未満であり、第二範囲は0.2以上0.8未満であり、第三範囲は0.8以上1以下である。ただし、第一範囲、第二範囲、第三範囲はこれらの値に限定されず、適宜設定が可能である。第一範囲、第二範囲、第三範囲は例えば記憶部12dに記憶されている。
【0043】
また、制御装置12において、表示部12bは、プログラムが実行されることによって、判定部12aによる判定結果に応じた報知を行う。すなわち、表示部12bは報知部の一例である。報知は例えば画像の表示や音声の出力により行われる。ここで、表示される画像とは文字、記号、図形の画像でもよい。
【0044】
例えば、表示部12bは、確度パラメータが第二範囲である場合に、第一警告情報を画像や音声で報知し、確度パラメータが第三範囲である場合に、第二警告情報を画像や音声で報知する。第一警告情報は、煙の検知の確度が比較的低い状態で報知されるものであり、例えばオペレータに注意喚起を行うための第一段階目の警報であり、軽警報とも呼ばれる。第二警告情報は、煙の検知の確度が比較的高い状態で報知されるものであり、例えばオペレータに、より警告レベルが高い警告を行うための第二段階目の警報であり、重警報とも呼ばれる。
【0045】
つぎに、制御装置12において実行される煙検知方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
まず、ステップS101において、カメラ部11から送信された画像を通信部12cが受信し、その画像が記憶部12dに記憶されることによって、廃棄物貯留ピット113における貯留状態の廃棄物Gの上面G1の画像を取得する取得ステップが実行される。
【0047】
つづいて、ステップS102において、取得ステップで取得された画像が記憶部12dから読み出されて学習済みモデル12d1に入力され、学習済みモデル12d1が確度パラメータを出力する。判定部12aは、確度パラメータによって、取得した画像に燃焼煙Sの画像部分が存在するか否かの判定を行う、判定ステップを実行する。
【0048】
確度パラメータが第一範囲である場合(ステップS102、第一範囲)、判定部12aは、燃焼煙Sの画像部分が存在しないと判定し、フローはステップS101に戻り、次の画像が取得される。一方、確度パラメータが第二範囲である場合(ステップS102、第二範囲)、判定部12aは、燃焼煙Sの画像部分が存在する可能性が有ると判定し、フローはステップS103に進む。
【0049】
ステップS103において、待機ステップが実行され、制御装置12は、或る待機時間だけ処理を待機する待機モードとなる。この待機モードとは、確度パラメータが第二範囲であり、燃焼煙Sの画像部分が存在する可能性が有るが、埃Dの画像部分である可能性もある場合に実行される。表示部12bは、第一警告情報を報知する。その後、フローはステップS104に進む。
【0050】
ステップS104において、報知ステップが実行される。すなわち、表示部12bは、第一警告情報を報知する。
【0051】
なお、本発明者らが得た知見によれば、埃Dは乱流に乱されて舞い上がるが、時間が経過した後には、埃Dの舞い上がりが収まるという性質がある。一方、燃焼煙Sは比較的真っ直ぐに立ち上がり、かつ時間的に継続して立ち上がる。この埃Dと燃焼煙Sとでの性質の差異があるために、第一警告情報を報知する状況では待機モードが実行される。待機時間は例えば0.5秒から2秒の範囲であるが、これには限定されない。
【0052】
ステップS104の実行後、フローはステップS101に戻り、次の画像が取得される。その後、ステップS102において、確度パラメータが第三範囲である場合(ステップS102、第二範囲)、判定部12aは、燃焼煙Sの画像部分が存在すると判定し、フローはステップS105に進む。
【0053】
ステップS105において、待機ステップが実行され、制御装置12は、或る待機時間だけ処理を待機する待機モードとなる。この待機モードにおける待機時間は、例えば0.5秒から2秒の範囲であるが、これには限定されない。また、ステップS103の待機時間とステップS105の待機時間とは同じでなくてもよく、各々が別々に適宜設定されてもよい。その後、フローはステップS106、S107、S108に進む。
【0054】
ステップS106において、報知ステップが実行される。すなわち、表示部12bは、第二警告情報を報知する。ステップS107において、記憶部12dは、カメラ部11から送信された画像を連続的な映像として録画する。火が燃え広がって火災になると、燃焼煙が廃棄物貯留ピット113に充満して火元が確認できないおそれがある。そこで、第二警告情報の報知と同時期に録画を開始し、燃焼煙Sの発生位置を記録することで、火元の特定が容易となり、その後の消火活動に利用して迅速な消火を実施できる。ステップS108において、通信部12cは、第二警告情報を制御装置12の外部に出力する。通信部12cは、第二警告情報を、例えば廃棄物中間処理場100の動作の全体を管理する管理センタの管理装置に出力する。管理装置は、管理センタの警報盤に第二警告情報を例えば表示する。このような管理センタには、オペレータが常駐しており、燃焼煙の早期の発見に適する。その後、フローは終了する。
【0055】
上述の実施形態に係る煙検知システム10および検知方法では、判定部12aが、学習済みモデル12d1に、カメラ部11にて撮像された画像を入力し、学習済みモデル12d1から出力された、燃焼煙Sの画像部分の存在の確度を示す確度パラメータによって判定を行う。また、学習済みモデル12d1は、廃棄物貯留ピット113における貯留状態の廃棄物Gの上面G1の画像であって、燃焼煙Sの画像部分が存在する画像と燃焼煙Sの画像部分が存在しない画像とを含む教師画像を入力データ、教師画像のそれぞれに燃焼煙Sの画像部分が存在するか否かの判定結果を出力パラメータとする入出力データセットを教師データとして、機械学習によって予め生成された学習済みモデルである。これにより、廃棄物貯留ピット113における燃焼煙を早期にかつ正確に検知することができる。
【0056】
また、判定部12aは、確度パラメータが第一範囲である場合に、燃焼煙Sの画像部分が存在しないと判定し、確度パラメータが第二範囲である場合に、燃焼煙のS画像部分が存在する可能性が有ると判定し、確度パラメータが第三範囲である場合に、燃焼煙の画像部分が存在すると判定する。これにより、舞い上がる埃Dや、頻繁に移動するバケット115dが、燃焼煙Sとともに撮像される廃棄物貯留ピット113の環境下においても、画像の状態に応じた適正な判定を行うことができる。
【0057】
また、表示部12bは、確度パラメータが第二範囲である場合に、第一警告情報を報知し、確度パラメータが第三範囲である場合に、第二警告情報を報知する。これにより、画像の状態に応じた適正な報知を行うことができる。特に、燃焼煙Sの画像部分が存在する可能性が有ると判定されたが、その画像が埃Dである可能性も有る段階において、オペレータに注意喚起を行うことができる。
【0058】
以上、実施形態について具体的に説明したが、実施形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0059】
例えば、確度パラメータが第一範囲であるか第二範囲または第三範囲であるかの判定に用いられる学習済みモデルと、確度パラメータが第一範囲または第二範囲であるか第三範囲であるかの判定に用いられる学習済みモデルとが、別の学習済みモデルでもよい。
【0060】
例えば、図3では、待機モードの実行後、次の画像が取得されるが、次の画像を取得後かつ判定前に待機モードが実行されてもよい。
【0061】
例えば、制御装置12は、記憶部12dに学習済みモデル12d1が格納されているが、学習済みモデル12d1を、公衆回路網などのネットワークを介して制御装置12と通信可能なサーバの記憶部に格納しておくことも可能である。この場合、カメラ部11が撮像した画像は、ネットワークを介してサーバに送信されて記憶部に記憶される。その後、サーバの制御部は、学習済みモデル12d1に画像を入力させ、出力された確度パラメータを制御装置12に送信する。
【0062】
例えば、上述した実施形態においては、機械学習の一例としてニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)を用いたが、それ以外の方法に基づく機械学習を行ってもよい。例えば、サポートベクターマシン、決定木、単純ベイズ、k近傍法など、他の教師あり学習を用いてもよい。また、教師あり学習に代えて半教師あり学習を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 煙検知システム
11 カメラ部
12 制御装置
12a 判定部
12b 表示部
12c 通信部
12d 記憶部
12d1 学習済みモデル
100 廃棄物中間処理場
110 廃棄物貯留ピット部
111 出入口
112 プラットフォーム
113 廃棄物貯留ピット
113a 底部
113b、113c 側壁
113ca 吸気口
114 天井
115 クレーン機構
115a ガーダ
115b トロリ
115c ロープ
115d バケット
120 焼却炉部
121 投入ホッパ
122 焼却炉
123 開口部
130 押込送風機
131 炉冷却送風機
132、133 排気口
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7 矢印
B 燃焼物
D 埃
G 廃棄物
G1 上面
S 燃焼煙
V 廃棄物収集車
図1
図2
図3