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特許7120218アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩、及び、それらの化合物又はそれらの塩の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩、及び、それらの化合物又はそれらの塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/24 20060101AFI20220809BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C07D233/24 CSP
C08G59/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019509713
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011728
(87)【国際公開番号】W WO2018181001
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2017071059
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】神原 豊
(72)【発明者】
【氏名】中野 絵美
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500783(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04024259(DE,A1)
【文献】米国特許第02505247(US,A)
【文献】国際公開第2015/019777(WO,A1)
【文献】特開平01-146871(JP,A)
【文献】特開平01-287160(JP,A)
【文献】特開平10-045736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275446(US,A1)
【文献】RN 2022733-34-0,RN 1872798-00-9,RN 1856802-34-0,Database REGISTRY,2016年11月,Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 12 April 2018
【文献】編者 社団法人 日本化学会,実験化学講座20 有機合成II -アルコール・アミン-,第4版,1992年,p279-282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、下記式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩。
【化1】
【化2】
【請求項2】
下記式(6)で表わされるシアノベンジルアミン化合物又はその塩と、下記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩と、を反応させて、下記式(1)で表される化合物又はその塩を得る反応工程を含む、
下記式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法。
【化3】
上記式(1)で表される化合物又はその塩は、下記式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、下記式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩であり、
【化4】
【化5】
上記式(1)で表される化合物又はその塩が前記式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩である場合、前記式(6)で表わされるシアノベンジルアミン化合物又はその塩は、m-シアノベンジルアミン又はその塩で、かつ、前記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩は、エチレンジアミン若しくはその塩であり、
上記式(1)で表される化合物又はその塩が前記式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩である場合、前記式(6)で表わされるシアノベンジルアミン化合物又はその塩は、3-メチル-4-アミノメチルベンゾニトリル又はその塩で、かつ、前記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩は、エチレンジアミン若しくはその塩である。
【請求項3】
触媒及び溶媒の存在下、下記式(8)で表わされるシアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩を、水素還元して、下記式(1)で表わされる化合物又はその塩を得る還元工程を含む、
下記式(1)で表わされる化合物又はその塩の製造方法。
【化6】
上記式(1)で表される化合物又はその塩は、下記式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、下記式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩であり、
【化7】
【化8】
上記式(1)で表される化合物又はその塩が式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩である場合、前記式(8)で表わされるシアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩は、m-シアノフェニルイミダゾリン若しくはその塩であり、
前記式(1)で表される化合物又はその塩が式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩である場合、前記式(8)で表わされるシアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩は、3-メチル-4-シアノフェニルイミダゾリン若しくはその塩である。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物又はその塩を含有する、
エポキシ樹脂硬化剤。
【請求項5】
エポキシ樹脂と、
請求項に記載のエポキシ樹脂硬化剤と、
を含有するエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩、及び、それらの化合物又はそれらの塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェニルイミダゾリン化合物及びフェニルテトラヒドロピリミジン化合物は、生理活性や薬理活性を有することから、医薬品のビルディングブロックとして有用である。他にもポリマーの原料或いは添加剤として有用である。また、フェニルイミダゾリンは、エポキシ樹脂の硬化剤、硬化促進剤として知られており、組成物原料として重要な化合物のひとつである。かかる化合物の例として、特許文献1には、イミダゾリン環を有するジアミノ-s-トリアジン化合物が記載されており、非特許文献1には、イミダゾリン環を有する2-フェニルイミダゾールが記載されており、非特許文献2には、シアノフェニルイミダゾリン及びシアノフェニルテトラピリミジンの製造方法が記載されている。一方、アミノメチル基を有するアミノメチルベンゼン化合物のひとつであるメタキシレンジアミン(MXDA)は、ポリアミドやポリウレタンの原料として使用される他、特にエポキシ樹脂の硬化剤として広く知られており、組成物原料として重要な化合物のひとつである。非特許文献1にはかかるアミノメチル基を有するメタキシレンジアミンがエポキシ樹脂の硬化剤として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-10871号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】総説エポキシ樹脂,基礎編I,123頁乃至125頁及び148頁,エポキシ樹脂技術協会
【文献】SYNTHESIS,Vol.45, p.p.2525-2532, 2013
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物又はその塩、及び、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物又はその塩は知られていない。これらの化合物又はこれらの塩は、ポリマー原料、医薬中間体、中でもエポキシ樹脂の硬化剤として有機合成化学上重要な化合物となることが期待される。
【0006】
そこで、本発明は、新規な、アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩、及び、それらの化合物又はそれらの塩の工業的に有利な製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、シアノベンジルアミン化合物又はその塩と、エチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩との反応、或いは、シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩の水素還元により、アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下記式(1)で表される化合物又はその塩。
【0009】
【化1】
【0010】
上記式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素、又は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1~2の整数である。
【0011】
〔2〕
前記式(1)で表される又はその塩が、下記式(2)で表されるp-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩、下記式(3)で表されるm-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジン若しくはその塩、下記式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、下記式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン若しくはその塩である、
〔1〕に記載の化合物又はその塩。
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
〔3〕
下記式(6)で表わされるシアノベンジルアミン化合物又はその塩と、下記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩と、を反応させて、下記式(1)で表される化合物又はその塩を得る反応工程を含む、
下記式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法。
【0017】
【化6】
【0018】
上記式(1)、式(6)、及び式(7)中、R及びRは、各々独立に、水素、又は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1~2の整数である。
【0019】
〔4〕
触媒及び溶媒の存在下、下記式(8)で表わされるシアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩を、水素還元して、下記式(1)で表わされる化合物又はその塩を得る還元工程を含む、
下記式(1)で表わされる化合物又はその塩の製造方法。
【0020】
【化7】
【0021】
上記式(1)及び式(8)中、R及びRは、各々独立に、水素、又は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1~2の整数である。
【0022】
〔5〕
〔1〕又は〔2〕に記載の化合物又はその塩を含有する、
エポキシ樹脂硬化剤。
【0023】
〔6〕
エポキシ樹脂と、
〔5〕記載のエポキシ樹脂硬化剤と、
を含有するエポキシ樹脂組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、新規な、アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、フェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩、及び、それらの化合物又はそれらの塩の工業的に有利な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】p-アミノメチルフェニルイミダゾリンのH-NMRチャート
図2】p-アミノメチルフェニルイミダゾリンの13C-NMRチャート
図3】p-アミノメチルフェニルイミダゾリンのIRチャート
図4】p-アミノメチルフェニルイミダゾリンのGC-MSのEI+チャート
図5】m-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジンのH-NMRチャート
図6】m-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジンの13C-NMRチャート
図7】m-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジンのIRチャート
図8】m-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジンGC-MSのEI+チャート
図9】m-アミノメチルフェニルイミダゾリンのH-NMRチャート
図10】m-アミノメチルフェニルイミダゾリンの13C-NMRチャート
図11】m-アミノメチルフェニルイミダゾリンのIRチャート
図12】m-アミノメチルフェニルイミダゾリンのGC-MSのEI+チャート
図13】3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリンのH-NMRチャート
図14】3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリンの13C-NMRチャート
図15】3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリンのIRチャート
図16】3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリンのGC-MSのEI+チャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0027】
〔アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩〕
本実施形態のアミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物、又は、フェニルテトラヒドロピリミジン化合物は、下記式(1)で表わされる。
【0028】
【化8】
【0029】
上記式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素、又は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1~2の整数である。
【0030】
上記式(1)中、R及びRで表される炭素数1~10のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のプロピル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、直鎖若しくは分岐のペンチル基、直鎖若しくは分岐のヘキシル基、直鎖若しくは分岐のヘプチル基、直鎖若しくは分岐のオクチル基、直鎖若しくは分岐のノニル基、直鎖若しくは分岐のデシル基、又は、環状のシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
上記式(1)中、R及びRで表される炭素数1~10のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、又は、直鎖若しくは分岐のプロポキシ基、直鎖若しくは分岐のブトキシ基又は環状のシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
上記式(1)中、R及びRで表される炭素数6~10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0033】
上記式(1)中、R及びRで表される炭素数6~10のアリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0034】
上記式(1)中、R及びRで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子又は臭素原子等が挙げられる。
【0035】
本実施形態の上記式(1)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表されるp-アミノメチルフェニルイミダゾリン、下記式(3)で表されるm-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジン、下記式(4)で表されるm-アミノメチルフェニルイミダゾリン、又は、下記式(5)で表される3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
上記式(1)で表される化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、上記式(1)で表される化合物と、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。この中でも、好ましくは、上記式(1)で表される化合物と、塩酸、炭酸、酢酸のいずれかとの塩である。
【0041】
〔アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩の製造方法〕
本実施形態の上記式(1)で表される化合物又はその塩は、下記式(6)で表わされるシアノベンジルアミン化合物又はその塩と、下記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩と、を反応させて、上記式(1)で表される化合物又はその塩を得る反応工程を有する製造方法1、又は、触媒及び溶媒の存在下、後述する下記式(8)で表わされるシアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物又はその塩を、水素還元して、上記式(1)で表わされる化合物又はその塩を得る還元工程を有する製造方法2により製造することができる。
【0042】
〔製造方法1〕
〔反応工程〕
反応工程は、下記式(6)で表わされるシアノベンジルアミン化合物又はその塩と、下記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩と、を反応させて、下記式(1)で表される化合物又はその塩を得る工程である。シアノベンジルアミン化合物又はその塩と、エチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩との反応は下記反応式で表わされる。
【0043】
【化13】
【0044】
上記式(1)、式(6)、及び式(7)中、R及びRは、各々独立に、水素、又は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1~2の整数である。
【0045】
(シアノベンジルアミン化合物又はその塩)
上記式(6)中、R及びRで表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のプロピル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、直鎖若しくは分岐のペンチル基、直鎖若しくは分岐のヘキシル基、直鎖若しくは分岐のヘプチル基、直鎖若しくは分岐のオクチル基、直鎖若しくは分岐のノニル基、直鎖若しくは分岐のデシル基、又は、環状のシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0046】
上記式(6)中、R及びRで表される炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、直鎖若しくは分岐のプロポキシ基、直鎖若しくは分岐のブトキシ基又は環状のシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
上記式(6)中、R及びRで表される炭素数6~10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0048】
上記式(6)中、R及びRで表される炭素数6~10のアリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0049】
上記式(6)中、R及びRで表されるハロゲン原子としては塩素原子、フッ素原子又は臭素原子等が挙げられる。また、シアノベンジルアミン化合物又はその塩のアミノ基を塩酸等の酸により中和した塩も反応工程において使用できる。
【0050】
上記式(6)で表されるシアノベンジルアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、o-シアノベンジルアミン、m-シアノベンジルアミン、p-シアノベンジルアミン、3,5-ビス(アミノメチル)ベンゾニトリル、2,5-ビス(アミノメチル)ベンゾニトリル、2,4-ビス(アミノメチル)ベンゾニトリルが挙げられる。
【0051】
上記式(6)で表されるシアノベンジルアミン化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、シアノベンジルアミン化合物と、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。この中でも、好ましくは、シアノベンジルアミン化合物と、塩酸、炭酸、及び酢酸のいずれかとの塩である。
【0052】
(エチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩)
上記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物、又は、プロパンジアミン化合物としては、炭素に置換基があってもなくても良く、例えばn=1の例としては、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-ブタンジアミン、3,4-ブタンジアミン、又はこれらの塩が挙げられるが、好ましくはエチレンジアミンである。n=2の例としては、1,3-プロパンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、2,4-ペンタンジアミン、又はこれらの塩が挙げられるが、好ましくは1,3-プロパンジアミンである。
【0053】
上記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物の塩、又は、プロパンジアミン化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。この中でも、好ましくは、塩酸、炭酸、及び酢酸のいずれかとの塩である。
【0054】
上記式(7)で表されるエチレンジアミン化合物又はその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩の使用量は反応条件により適宜選択できるが、上記式(6)で表されるシアノベンジルアミン化合物又はその塩1モルに対して好ましくは0.05~50モルであり、より好ましくは0.1~10モルであり、更に好ましくは0.2~5モルである。
【0055】
(触媒)
シアノベンジルアミン化合物又はその塩と、エチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩との反応では触媒を用いてもよい。用いる触媒としては、特に限定されないが、例えば、単体の硫黄や硫黄化合物、銅、亜鉛、鉄、コバルト、マンガン、アルミニウム、スズ、水銀、クロム、カドミウム等の金属化合物が挙げられ、中でも銅、亜鉛、コバルト化合物が好適に用いられる。
【0056】
銅、亜鉛、コバルト化合物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸化物、硫化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硝酸塩及びギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸塩が挙げられる。この中でも、安価で入手が容易であることから、酢酸銅が好ましい。
【0057】
触媒の使用量は、特に限定されないが、シアノベンジルアミン化合物又はその塩1質量部に対して、好ましくは0.00010~100質量部であり、より好ましくは0.0010~10質量部であり、更に好ましくは0.0050~50質量部である。触媒の使用量が0.00010質量部以上であることにより、反応がより効率的に進行する傾向にある。触媒の使用量が100質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0058】
(溶媒)
シアノベンジルアミン化合物又はその塩と、エチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩との反応では溶媒を用いてもよい。用いる溶媒としては、特に限定されないが、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンジルアミン、キシレンジアミン等のアミン類が挙げられ、これらの2種以上を混合して使用することもできる。これらの中でも、アンモニアの分離が良く還流温度の高いキシレン類が好ましい。
【0059】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、原料であるシアノベンジルアミン化合物又はその塩と、エチレンジアミン化合物若しくはその塩、又は、プロパンジアミン化合物若しくはその塩との合計量に対して、好ましくは0.010~1000質量部であり、より好ましくは0.1~100質量部であり、更に好ましくは1.0~50質量部である。溶媒の使用量が0.010質量部以上であることにより、反応がより効率的に進行する傾向にある。溶媒の使用量が1000質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0060】
反応の雰囲気は、特に限定されないが、例えば、反応系内で安定な窒素や希ガス雰囲気が挙げられる。
【0061】
反応形式は、回分式でも流通連続式でも任意に選択することができる。回分式の場合の原料の添加順序も任意に選択することができる。
【0062】
反応液からの上記式(1)で表される化合物又はその塩の回収は、常法、例えば蒸留、再結晶、抽出等により容易に行うことができる。この中でも、特に蒸留分離が簡便で好ましい。
【0063】
反応圧力は、特に限定されないが、減圧や常圧での還流条件や密閉容器で溶媒の自圧条件で好適に実施できる。
【0064】
反応温度は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、好ましくは20~300℃であり、より好ましくは50~250℃であり、更に好ましくは70~200℃である。
【0065】
反応時間は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、回分式の場合、好ましくは1分~100時間であり、より好ましくは5分~50時間であり、更に好ましくは10分~10時間である。
【0066】
〔製造方法2〕
〔還元工程〕
還元工程は、触媒及び溶媒の存在下、下記式(8)で表わされるシアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩を、水素還元して、下記式(1)で表わされるアミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、フェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩を得る工程である。
【0067】
シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩の水素還元の反応は下記のとおりである。水素還元方法は、特に限定されないが、例えば、原料(シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩)と、触媒と、溶媒と、水素と、を反応器に仕込み反応させることにより実施することができる。
【0068】
【化14】
【0069】
上記式(1)及び式(8)中、R及びRは、各々独立に、水素、又は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基を示し、nは1~2の整数である。
【0070】
(シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩)
【0071】
上記式(8)中、R及びRで表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のプロピル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、直鎖若しくは分岐のペンチル基、直鎖若しくは分岐のヘキシル基、直鎖若しくは分岐のヘプチル基、直鎖若しくは分岐のオクチル基、直鎖若しくは分岐のノニル基、直鎖若しくは分岐のデシル基、又は、環状のシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0072】
上記式(8)中、R及びRで表される炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、直鎖若しくは分岐のプロポキシ基、直鎖若しくは分岐のブトキシ基又は環状のシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0073】
上記式(8)中、R及びRで表される炭素数6~10のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又はベンジル基等が挙げられる。
【0074】
上記式(8)中、R及びRで表される炭素数6~10のアリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0075】
上記式(8)中、R及びRで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0076】
上記式(8)で表されるシアノフェニルイミダゾリン化合物、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物としては、特に限定されないが、例えば、o-シアノフェニルイミダゾリン、m-シアノフェニルイミダゾリン、p-シアノフェニルイミダゾリン、o-シアノフェニルテトラヒドロピリミジン、m-シアノフェニルテトラヒドロピリミジン、p-シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物が挙げられる。
【0077】
上記式(8)で表されるシアノフェニルイミダゾリン化合物の塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、シアノフェニルイミダゾリン化合物、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物と、無機酸及び/又は有機酸との塩が挙げられる。この中でも、好ましくは、シアノフェニルイミダゾリン化合物、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物と、塩酸、炭酸、及び酢酸のいずれかとの塩である。
【0078】
(触媒)
水素還元に使用する触媒としては、水素還元活性があるものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケル、コバルト、パラジウム、及び白金等の貴金属を、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びマグネシア等の担体に高分散で担持させた触媒;ニッケル又はコバルトと、アルミと、の合金をアルカリで展開して得られるスポンジメタル触媒が挙げられる。これらの中でも、ニッケルスポンジメタル触媒は比較的安価で活性が高く好ましい。触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0079】
これらの触媒は、粉状若しくは粒状において懸濁床反応器で使用しても、又は、ペレット状若しくは破砕した状態において固定床反応器で使用してもよい。
【0080】
触媒の使用量は限定されないが、シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩1質量部に対して、好ましくは0.00010~1000質量部であり、より好ましくは0.0010~10質量部であり、更に好ましくは0.010~1.0質量部である。触媒の使用量が0.00010質量部以上であることにより、反応がより効率的に進行する傾向にある。また、触媒の使用量が1000質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0081】
(溶媒)
水素還元に使用する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;アンモニア等;ベンジルアミン、キシレンジアミン等のアミン類が挙げられる。これらの中でも、原料、生成物の溶解度の高いメチルセルソルブ(2-メトキシエタノール)が特に好ましい。溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0082】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩1質量部に対して、好ましくは0.10~1000質量部であり、より好ましくは1.0~100質量部であり、更に好ましくは5.0~50質量部である。溶媒の使用量が0.10質量部以上であることにより、原料、生成物がより溶解しやすく、反応がより効率的に進行する傾向にある。溶媒の使用量が1000質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0083】
これらの溶媒中に選択率を上げる目的でアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン化合物等の塩基性化合物を添加することもできる。これらの中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが添加効果と経済性の点から好ましい。塩基性化合物は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0084】
塩基性化合物の使用量は、特に限定されないが、シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩1質量部に対して、好ましくは0.00010~100質量部であり、より好ましくは0.001~10質量部であり、更に好ましくは0.0050~5質量部である。塩基性化合物の使用量が0.00010質量部以上であることにより反応がより効率的に進行する傾向にある。塩基性化合物の使用量が100質量部以下であることにより、経済的により有利となる傾向にある。
【0085】
(水素)
水素還元に用いる水素の使用量は、特に限定されないが、通常シアノフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、シアノフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩に対して大過剰で用いられる。また、反応条件において安定な窒素や希ガス等で水素を希釈して用いることもできる。
【0086】
反応形式は回分式でも流通連続式でも任意に選択する事ができる。回分式の場合の原料の添加順序も任意に選択することができる。
【0087】
反応液からのアミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン若しくはその塩、又は、フェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩の回収は、常法、例えば蒸留、再結晶、抽出等により容易に行うことができる。
【0088】
反応圧力は、特に限定されないが、好ましくは0~100MPaであり、より好ましくは1~50MPaであり、更に好ましくは2~10MPaである。
【0089】
反応温度は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは10~150℃であり、更に好ましくは20~100℃である。
【0090】
反応時間は、原料仕込み比、反応条件により適宜調整できるが、回分式の場合、好ましくは1~5000分であり、より好ましくは5~1000分であり、更に好ましくは10~500分である。
【0091】
〔アミノメチル基を有するフェニルイミダゾリン化合物若しくはその塩、又は、アミノメチル基を有するフェニルテトラヒドロピリミジン化合物若しくはその塩の用途〕
本実施形態による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、ポリマー原料、医薬中間体として使用されるが、特にエポキシ樹脂の硬化剤として有用である。
【0092】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の硬化剤としての上述した本実施形態の上記式(1)で表される化合物又はその塩と、を含有するエポキシ樹脂組成物である。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の硬化剤としての上述した本実施形態の上記式(1)で表される化合物又はその塩の含有量は特に制限されず、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、上記式(1)で表される化合物又はその塩中に含まれるエポキシ基と反応するアミノ基の水素モル数が好ましくは0.01~100モル比であり、より好ましくは0.05~50モル比であり、更に好ましくは0.1~10モル比である。この含有量がかかる範囲内であることにより、エポキシ樹脂の硬化性がより向上され、硬化物の耐熱性をより向上させることができるとともに、樹脂組成物の塗膜乾燥特性を向上させることもできる。
【実施例
【0094】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0095】
原料としては、市販の試薬(和光純薬工業株式会社製、東京化成工業株式会社製、シグマーアルドリッチ社製、Ark Pharm社製)を用いた。また、各成分はNMR(重DMSO溶媒、重メタノール溶媒)、IR、GC-MSスペクトルにより同定した。さらに、反応溶液の分析は、内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。なお、収率はモル%で表す。
【0096】
〔合成例1(4-シアノベンジルアミンの合成)〕
200mL三角フラスコに、4-シアノベンジルアミンハイドロクロライド12.8g、純水73.1g、水酸化ナトリウム3.1gを入れ、固体を析出させた。酢酸エチルを用いて抽出し、エバポレーターで溶媒を留去することにより、4-シアノベンジルアミンを収率74%で得た。
【0097】
〔合成例2(m-シアノフェニルイミダゾリンの合成)〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた200mL三口フラスコに、イソフタロニトリル10.4g、エチレンジアミン6.0g、酢酸銅1.5g、メタキシレン49.2gを仕込み、常圧、攪拌下134℃で9時間加熱還流した。その後、放冷して析出した結晶をろ過し、少量のメタキシレンで洗浄した後、真空乾燥をすることにより、m-シアノフェニルイミダゾリンを収率60%で得た。
【0098】
〔合成例3(3-メチル-4-シアノフェニルイミダゾリンの合成)〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた100mL三口フラスコに、2-メチルテレフタロニトリル5.0g、エチレンジアミン2.8g、酢酸銅0.7g、メタキシレン25.2gを仕込み、常圧、攪拌下134℃で19時間加熱還流した。その後、放冷して、析出した固体をテトラヒドロフランに溶解させ、ろ過により触媒を分離した。さらに、エバポレーターで溶媒を濃縮後、クーゲルロールで単蒸留することにより、3-メチル-4-シアノフェニルイミダゾリンを収率76%で得た。
【0099】
〔実施例1(p-アミノメチルフェニルイミダゾリン)〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた100mL三口フラスコに、合成例1で得られた4-シアノベンジルアミン5.0g、エチレンジアミン3.0g、酢酸銅0.7g、メタキシレン25.0gを仕込み、常圧、攪拌下134℃で5.7時間加熱還流した。その後、酢酸エチルにより目的成分を抽出し、エバポレーターで溶媒を濃縮後、クーゲルロールで単蒸留して黄色固体0.3gを得た。該黄色固体がp-アミノメチルフェニルイミダゾリンであることをH及び13C-NMRチャート(図1,2)、IRチャート(図3)、GC-MSのEI+チャート(図4)によって確認した。反応液から触媒と不溶物をろ過により分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、p-アミノメチルフェニルイミダゾリンの収率は49%であった。
【0100】
同定において特定されたNMRチャート及びIRチャートにおけるピーク等は以下のとおりであった。
・NMR(d4-Methanol):H δ7.38~7.74、4H(ベンゼン環)、3.8、2H(-CH-Ph)、3.72、4H(イミダゾリン環の-CH-CH-)、13C δ166(イミダゾリン環のC)、127~146(ベンゼン環)、49.0(イミダゾリン環の-CH-CH-)、45.1(NH-CH-Ph)ppm
・IR(ATR法):ν3174、2924、2855、1599、1465、1269、979、820、625cm-1
【0101】
〔実施例2(m-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジン)〕
温度計さや管、還流冷却器を備えた100mL三口フラスコに、3-シアノベンジルアミン5.0g、1,3-プロパンジアミン3.7g、酢酸銅0.7g、メタキシレン25.0gを仕込み、常圧、攪拌下134℃で4.5時間加熱還流した。その後、放冷して析出した固体をテトラヒドロフランに溶解させ、ろ過により触媒を分離した。更にエバポレーターで溶媒を濃縮後、クーゲルロールで単蒸留して黄色固体1.6gを得た。該黄色固体がm-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジンであることをH及び13C-NMRチャート(図5,6)、IRチャート(図7)、GC-MSのEI+チャート(図8)によって確認した。反応液から触媒と不溶物をろ過により分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、m-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジンの収率は78%であった。
【0102】
同定において特定されたNMRチャート及びIRチャートにおけるピーク等は以下のとおりであった。
・NMR(d4-Methanol):H δ7.33~7.57、4H(ベンゼン環)、3.77、2H(-CH-Ph)、3.41-3.43、4H(テトラヒドロピリミジン環の-CH-(CH)-CH-)、1.83、2H(テトラヒドロピリミジン環の-(CH)-CH-(CH)-)、13C δ159(テトラヒドロピリミジン環のC)、126~144(ベンゼン環)、46.6(テトラヒドロピリミジン環の-CH-(CH)-CH-)、42.8(NH-CH-Ph)、21.5(テトラヒドロピリミジン環の-(CH)-CH-(CH)-)ppm
・IR(ATR法):ν3169、2924、2849、1619、1529、1365、1307、800、775、699cm-1
【0103】
〔実施例3(m-アミノメチルフェニルイミダゾリン)〕
温度計さや管、圧力計を備えたステンレス製、内容積100mLの耐圧容器に、合成例2で得られたm-シアノフェニルイミダゾリン3.0g、水酸化ナトリウム0.1g、市販スポンジニッケル触媒(日興リカ社製;R-200)0.5g、及び溶媒2-メトキシエタノール30gを仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し50℃で1.5時間保持した。冷却、落圧後、反応液からろ過により触媒を分離し、更にエバポレーターで溶媒を濃縮後、クーゲルロールで単蒸留して黄色透明の液体2.1gを得た。該黄色液体がm-アミノメチルフェニルイミダゾリンであることをH及び13C-NMRチャート(図9,10)、IRチャート(図11)、GC-MSのEI+チャート(図12)によって確認した。反応液から触媒と不溶物をろ過により分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、m-アミノメチルフェニルイミダゾリンの収率は80%であった。
【0104】
同定において特定されたNMRチャート及びIRチャートにおけるピーク等は以下のとおりであった。
・NMR(d6-DMSO):H δ7.29~7.78、4H(ベンゼン環)、3.72、2H(-CH-Ph)、3.56、4H(イミダゾリン環の-CH-CH-)、13C δ164(イミダゾリン環のC)、125~144(ベンゼン環)、49.5(イミダゾリン環の-CH-CH-)、46.1(NH-CH-Ph)ppm
・IR(ATR法):ν3170、2924、2854、1572、1464、1273、982、793、698cm-1
【0105】
〔実施例4(3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン)〕
温度計さや管、圧力計を備えたステンレス製、内容積200mLの耐圧容器に、合成例3で得られた3-メチル-4-シアノフェニルイミダゾリン3.0g、市販スポンジニッケル触媒(Grace社製;Raney6800)0.5g、及び溶媒2-メトキシエタノール50.0gを仕込み、反応器内を窒素置換後、水素で5MPaに加圧密閉した。攪拌しながら容器を加熱し50~70℃で5.4時間保持した。その後、冷却、落圧後、反応液から触媒と不溶物をろ過により分離し、更にエバポレーターで溶媒を濃縮して黄色液体を得た。該黄色液体が3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリンであることをH及び13C-NMRチャート(図13,14)、IRチャート(図15)、GC-MSのEI+チャート(図16)によって確認した。反応液から触媒と不溶物をろ過により分離した溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリンの収率は76%であった。
【0106】
同定において特定されたNMRチャート及びIRチャートにおけるピーク等は以下のとおりであった。
・IR(ATR法):ν3163、2927、2862、1601、1450、1271、980、981、833、724cm-1
・NMR(d4-Methanol):H δ7.30~7.54、3H(ベンゼン環)、3.75、2H(-CH-Ph)、3.66、4H(イミダゾリン環の-CH-CH-)、2.29、3H(ベンゼン環のメチル)、13C δ167(イミダゾリン環のC)、126~145(ベンゼン環)、50.4(イミダゾリン環の-CH-CH-)、43.8(NH-CH-Ph)、18.9(ベンゼン環のメチル)ppm
【0107】
〔実施例5〕
エポキシ樹脂(三菱化学製;JER828)0.32gに実施例1で得られたp-アミノメチルフェニルイミダゾリン0.11gを添加し、撹拌混合したのち23℃、湿度50%の恒温槽で24時間硬化させ、淡黄色透明の半硬化樹脂を得た。半硬化樹脂をDSCにより完全硬化させ(昇温速度10℃/分、測定温度50~300℃、窒素雰囲気)、さらにもう一度同条件でDSC分析してガラス転移温度を求めた結果、98℃であった。結果を表1に示す。これより、本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であることが確認された。
【0108】
〔実施例6〕
エポキシ樹脂(三菱化学製;JER828)0.31gに実施例2で得られたm-アミノメチルフェニルテトラヒドロピリミジン0.11gを添加し、撹拌混合したのち23℃、湿度50%の恒温槽で24時間硬化させ、黄色透明の半硬化樹脂を得た。半硬化樹脂をDSCにより完全硬化させ(昇温速度10℃/分、測定温度50~300℃、窒素雰囲気)、さらにもう一度同条件でDSC分析してガラス転移温度を求めた結果、94℃であった。結果を表1に示す。これより、本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であることが確認された。
【0109】
〔実施例7〕
エポキシ樹脂(三菱化学製;JER828)3.7gに実施例3で得られたm-アミノメチルフェニルイミダゾリン1.15gを添加し、撹拌混合したのち23℃、湿度50%の恒温槽で24時間硬化させ、淡黄色透明の半硬化樹脂を得た。半硬化樹脂をDSCにより完全硬化させ(昇温速度10℃/分、測定温度50~300℃、窒素雰囲気)、さらにもう一度同条件でDSC分析してガラス転移温度を求めた結果、120℃であった。結果を表1に示す。これより、本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であることが確認された。
【0110】
得られたエポキシ樹脂組成物について、以下の方法にて塗膜乾燥評価を行った。撹拌混合したエポキシ樹脂をガラス板(25mm×300mm×2mm)に76μmのアプリケーターを用いて塗装し、23℃、50%RHの条件下でRC型塗料乾燥時間測定器(TP技研社製)を用いて塗膜の指触乾燥(塗膜に針の跡ができた時間)、半乾燥(針の跡が下層のガラス板にあたらなくなった時間)を測定した。塗膜乾燥試験の結果、指触乾燥時間は1時間24分、半乾燥時間は9時間半であった。
【0111】
〔実施例8〕
エポキシ樹脂(三菱化学製;JER828)0.36gに実施例4で得られた3-メチル-4-アミノメチルフェニルイミダゾリン0.12gを添加し、撹拌混合したのち23℃、湿度50%の恒温槽で24時間硬化させ、黄色透明の半硬化樹脂を得た。半硬化樹脂をDSCにより完全硬化させ(昇温速度10℃/分、測定温度50~300℃、窒素雰囲気)、さらにもう一度同条件でDSC分析してガラス転移温度を求めた結果、115℃であった。結果を表1に示す。これより、本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であることが確認された。
【0112】
【表1】
【0113】
〔比較例1〕
エポキシ樹脂(三菱化学製;JER828)1.28gに2-フェニルイミダゾリン1.02g(和光純薬工業株式会社製)を添加し、撹拌混合したのち23℃、湿度50%の恒温槽で24時間保持後、混合物の表面を薬さじで押圧すると、変形とべたつきが認められた。なお、実施例5乃至8で得られた半硬化樹脂の表面を薬さじで同様に押圧したところ、変形やべたつきなどは認められなかったことから、比較例1の本条件では、混合物が硬化しないことが確認された。この結果からも、本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であることが判明した。
【0114】
以上の実施例より、新規化合物である本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、エポキシ樹脂硬化剤として使用できることが確認された。このことから、本発明は熱硬化性樹脂及びその組成物の製造上重要であり、その意義は大きいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明による上記式(1)で表される化合物又はその塩は、ポリマー原料や添加剤、医薬中間体、エポキシ樹脂の硬化剤、塗料、接着剤等として産業上の利用可能性を有する。なお、本出願は、2017年3月31日に出願された日本特許出願番号2017-71059に基づくものであり、ここにその記載内容を援用する。
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