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特許7120240樹脂シート及びこれを製造するための硬化型組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】樹脂シート及びこれを製造するための硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220809BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08J5/18
C08F220/28
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019539503
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2018031625
(87)【国際公開番号】W WO2019044786
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017164392
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神村 浩之
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213596(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098856(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/002270(WO,A1)
【文献】特開2011-021114(JP,A)
【文献】特開平04-088031(JP,A)
【文献】特開2015-163684(JP,A)
【文献】特開2016-121293(JP,A)
【文献】特開2015-063655(JP,A)
【文献】特開2016-117797(JP,A)
【文献】特開2016-124899(JP,A)
【文献】特開2016-204483(JP,A)
【文献】特開2016-107523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
C08J 7/04-7/06
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B29C 39/00-39/44
B29C 43/00-43/58
B29D 7/00-7/01
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化型組成物の硬化物からなる樹脂シートであって、
曲げ試験における曲げ弾性率が2.5GPa以上、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50cm以上、及び鉛筆硬度が3H以上であり、前記硬化型組成物が、
(A)成分:開環カプロラクトン単位を有し、エチレン性不飽和基を有する化合物と、
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物と、
(C)成分:ラジカル重合開始剤と、を含む組成物であって、
組成物中の前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含むものである
樹脂シート。
【請求項2】
さらに、厚さ1mmでの全光線透過率が90%以上である請求項1記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記硬化型組成物が、組成物中の硬化性化合物の合計量に対して開環カプロラクトン構造単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含むものである請求項1又は請求項2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記(A)成分が、開環カプロラクトン単位を有し、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項5】
前記(B)成分が、(B-1)成分:(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記(B-1)成分が、(B-1-1)成分:炭素数4~20の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含む請求項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
前記(B-1-1)成分が、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上である請求項に記載の樹脂シート。
【請求項8】
前記(B-1)成分が、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む請求項~請求項のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項9】
前記(A)成分及び前記(B)成分の中に含まれるエチレン性不飽和基の合計量100モル%中に、メタクリロイル基を20~60モル%含む請求項~請求項のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項10】
前記(A)成分及び前記(B)成分が、ウレタン結合を有する化合物を含まない請求項~請求項のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項11】
前記(C)成分が、(C1)成分:熱ラジカル重合開始剤を含む請求項~請求項10のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項12】
前記(C)成分が、(C2)成分:光ラジカル重合開始剤を含む請求項~請求項11のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項13】
(A)成分:開環カプロラクトン単位を有し、エチレン性不飽和基を有する化合物と、
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物と、
(C)成分:ラジカル重合開始剤と、を含む組成物であって、
組成物中の前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含み、
前記(B)成分が、(B-1)成分:(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含み、
さらに前記(B-1)成分が、(B-1-1)成分:炭素数4~20の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含むものである、
樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項14】
前記(A)成分が、開環カプロラクトン単位を有し、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含む請求項13に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項15】
前記(B-1-1)成分が、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上である請求項13又は請求項14に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項16】
前記(B-1)成分が、(B-1-2)成分:3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む請求項13~請求項15のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項17】
前記(A)成分及び前記(B)成分の中に含まれるエチレン性不飽和基の合計量100モル%中に、メタクリロイル基を20~60モル%含む請求項13~請求項16のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項18】
前記(A)成分及び前記(B)成分が、ウレタン結合を有する化合物を含まない請求項13~請求項17のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項19】
前記(C)成分が、(C1)成分:熱ラジカル重合開始剤を含む請求項13~請求項18のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項20】
前記(C)成分が、(C2)成分:光ラジカル重合開始剤を含む請求項13~請求項19のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項21】
硬化物が、曲げ試験における曲げ弾性率が2.5~10GPa、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50~500cm、及び鉛筆硬度が3H~10Hである請求項13~請求項20のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
【請求項22】
基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、請求項19に記載の組成物を流し込んだ後、加熱する樹脂シートの製造方法。
【請求項23】
基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、請求項20に記載の組成物を流し込んだ後、いずれかの基材側から活性エネルギー線を照射する樹脂シートの製造方法。
【請求項24】
活性エネルギー線を照射した後、加熱する請求項23記載の樹脂シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート及びこれを製造するための硬化型組成物に関し、当該樹脂シートは液晶ディスプレイ(LCD)及び有機EL等の光学用に好ましく使用でき、タッチパネル透明導電膜形成用の樹脂シートにより好ましく使用することができ、これら技術分野に属する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、又、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
又、本明細書において、各種物性の範囲を示すX~Yの表記、及び各成分の割合を示すX~Y等の表記は、X以上Y以下を意味する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末、及びカーナビゲーションシステム等のモバイル機器に、タッチパネル一体型液晶表示装置又はタッチパネル一体型有機EL表示装置が多く適用されるようになっている。
従来、タッチパネルの透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」という)の薄膜を形成した導電性ガラスがよく知られているが、基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣る。そのため、用途によって、可撓性、加工性、及び耐衝撃性に優れ、軽量であるなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートシート(ガラス転移温度約120℃)を基材とした透明導電性シートが使用されている。
【0003】
一方、タッチパネルの薄型軽量化、透過率の向上、部材のコストダウンに貢献することが期待される点から、カバーガラスにITO等のタッチセンサを直接形成するカバー一体型タッチパネル、いわゆるOGS(One Glass Solution)が一部採用されている。しかしながら、OGSタイプはカバーガラスが割れてしまうとタッチパネルを操作できなくなってしまう問題を有する。
【0004】
そこで、耐衝撃性に優れるカバーの材料として、樹脂シートにITO等のタッチセンサを直接形成する、いわゆるOPS(One Plastic Solution)が提案されている。
OPSに用いられる樹脂は、センサー基板としての性能加え、表示デバイスの保護と外観保持の性能も要求される。そのため、表示デバイスを保護できる程度の曲げ弾性率と耐擦傷性、及び耐衝撃性が必要となる。
【0005】
しかしながら、従来カバー樹脂として使用されてきたアクリル樹脂は、耐衝撃性が不足し破損しやすく、又、ポリカーボネート樹脂は、表面硬度が不足するため容易に傷付き易く、透明性を失ってしまうという問題を有していた。
アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂の耐擦傷性や耐衝撃性を向上させる方法としては、これらの樹脂表面に耐擦傷性等に優れるコーティング層を形成するという、いわゆるハードコート処理する方法が提案されている(特許文献1及び2)。
【0006】
一方、近年携帯端末などのディスプレイ関連のカバー樹脂は、ユーザーの趣向の多様化により様々な形状が要求され、2次元のシート形状だけなく、滑らかな曲面等を有する3次元形状の加工も要求されている。
しかしながら、予め3次元形状に成形した樹脂へのハードコート処理は、ディッピングやスプレー塗装が必要となり、平滑なハードコート層を形成するのが困難で意匠性が低下する。又、予めハードコート処理を施した樹脂シートを、切削したり研磨して3次元加工する方法では、研磨及び切削した箇所のハードコート層が失われるため、カバー樹脂の耐衝撃性や耐擦傷性が低下してしまう。特に、ポリカーボネート樹脂は、回転式くり抜き機による加工では、熱により溶解してしまうため、加工が困難なものであった。
【0007】
前記課題を解決する樹脂シートとして、多官能(メタ)アクリレートを含む光硬化性組成物の硬化物から製造された、ガラス転移温度200℃以上及び曲げ弾性率が3.0GPa以上の樹脂シートが提案されている(特許文献3)。
しかしながら、当該樹脂シートは高弾性率を有するものの、耐衝撃性が不十分なため、カバー樹脂として使用することは困難である。
加えて、特許文献1においては、脂環骨格を有するビスメタクリレート及びメルカプト化合物を含む光硬化型組成物が使用されており、メルカプト化合物を配合することで硬化物に適度な靱性を付与しているものの、組成物の可使時間(ポットライフ)が短くなってしまうという問題があり、表面硬度や耐擦傷性も低下するという問題もあった。
【0008】
以上のように、OPS用樹脂として満足な物性を持つ樹脂シートはこれまでに見出されておらず、とりわけ硬度、強靭性及び耐衝撃性の両立は困難であり、加工性も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-030307号公報
【文献】特開2015-123721号公報
【文献】特開2015-063655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、OPS用樹脂として使用可能な曲げ特性等の機械的特性、耐衝撃性及び硬度に優れ、加工性にも優れる樹脂シート、並びに当該物性を有する樹脂シートを製造可能な硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の曲げ弾性率、耐衝撃性及び硬度を有する樹脂シートが有効であることを見出した。
さらに、本発明者は、前記物性を有する樹脂シートを製造するための硬化型組成物として、エチレン性不飽和化合物を含み、さらに当該化合物が組成物中に開環カプロラクトン単位を特定割合で含む組成物が、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、
硬化型組成物の硬化物からなる樹脂シートであって、
曲げ試験における曲げ弾性率が2.5GPa以上、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50cm以上、及び鉛筆硬度が3H以上であり、前記硬化型組成物が、
(A)成分:開環カプロラクトン単位を有し、エチレン性不飽和基を有する化合物と、
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物と、
(C)成分:ラジカル重合開始剤と、を含む組成物であって、
組成物中の前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含むものである
る樹脂シートに関する。
樹脂シートとしては、さらに、厚さ1mmでの全光線透過率が90%以上であるものが好ましい。
【0013】
化型組成物としては、組成物中の硬化性化合物の合計量に対して開環カプロラクトン構造単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含むものが好ましい。
【0014】
化型組成物前記した通り、前記(A)~(C)成分を含む組成物であって、組成物中の(A)及び(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含む組成物の硬化物からなる樹脂シートである
【0015】
(A)成分としては、開環カプロラクトン単位を有し、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含むものが好ましい。
【0016】
(B)成分としては、(B-1)(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含むものが好ましい。
又、(B-1)成分としては、(B-1-1)炭素数4~20の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含むものが好ましく、さらに前記(B-1-1)成分が、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上であるものが好ましい。
又、(B-1)成分としては、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むものが好ましい。
【0017】
硬化型組成物としては、(A)及び(B)成分の中に含まれるエチレン性不飽和基の合計量100モル%中に、メタクリロイル基を20~60モル%含むものが好ましい。
又、(A)及び(B)成分が、ウレタン結合を有する化合物を含まないものが好ましい。
【0018】
(C)成分としては、(C1)熱ラジカル重合開始剤又は/及び(C2)光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0019】
本発明は、前記(A)~(C)成分を含む組成物であって、組成物中の(A)及び(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含み、
前記(B)成分が、(B-1)成分:(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含み、
さらに前記(B-1)成分が、(B-1-1)成分:炭素数4~20の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含むものである、
む樹脂シート製造用硬化型組成物にも関する。
【0020】
(A)成分としては、開環カプロラクトン単位を有し、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含むものが好ましい。
【0021】
(B-1-1)成分としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
又、(B-1)成分としては、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むものが好ましい。
【0022】
組成物としては、(A)及び(B)成分の中に含まれるエチレン性不飽和基の合計量100モル%中に、メタクリロイル基を20~60モル%含むものが好ましい。
又、(A)及び(B)成分が、ウレタン結合を有する化合物を含まないものが好ましい。
【0023】
(C)成分としては、(C1)熱ラジカル重合開始剤又は/及び(C2)光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0024】
組成物としては、その硬化物が、曲げ試験における曲げ弾性率が2.5GPa以上、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50cm以上、及び鉛筆硬度が3H以上であるものが好ましい。
【0025】
前記した組成物を使用した樹脂シートの製造方法としては、基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、組成物を流し込んだ後、加熱する製造方法が好ましい。
又、基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、組成物を流し込んだ後、いずれかの基材側から活性エネルギー線を照射する製造方法が好ましい。
この場合、活性エネルギー線を照射した後、加熱することもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の樹脂シートによれば、曲げ特性等の機械的特性、耐衝撃性及び硬度に優れ、加工性にも優れ、OPS用樹脂に好ましく使用できる。
又、本発明の組成物によれば、得られる硬化物が、前記した曲げ特性等の機械的特性、耐衝撃性及び硬度に優れ、加工性にも優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の組成物を使用して樹脂シートを製造する際に使用する成形型の1例を示す図である。
図2図2は、本発明の樹脂シートの形状について2つの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.樹脂シート
本発明は、曲げ試験における曲げ弾性率が2.5GPa以上、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50cm以上、及び鉛筆硬度が3H以上である樹脂シートに関する。
【0029】
1-1.樹脂シートの物性
本発明の樹脂シートは、曲げ試験における曲げ弾性率が2.5GPa以上とし、好ましくは3.0GPa以上であり、より好ましくは2.5~10GPaであり、特に好ましくは3.0~10GPaである。当該弾性率を有する樹脂シートは、剛性に優れるものとなる。
尚、本発明における曲げ試験における弾性率とは、支点間距離30mm、曲げ速度0.2mm/分で行った曲げ試験において、歪み0.1%と1%の応力から計算した値を意味する。
【0030】
本発明の樹脂シートは、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50cm以上とし、60cm以上であるものが好ましく、50~500cmがより好ましく、60~500cmが特に好ましい。
尚、本発明における落錘試験とは、JIS K7211-1に準拠して測定した結果を意味する。
【0031】
本発明の樹脂シートは、鉛筆硬度が3H以上とし、4H以上であるものが好ましく、3H~10Hがより好ましく、4H~10Hが特に好ましい。
尚、本発明における鉛筆硬度とは、JIS K-5600に準じた方法で測定された値を意味する。
【0032】
又、樹脂シートを光学用途に使用する場合において、全光線透過率としては、90%以上が好ましく、より好ましくは91%以上であり、特に好ましくは90~100%であり、さらに好ましくは91~100%である。
尚、本発明において、全光線透過率とは、JIS K7375に準拠し、厚さ1mmの試験体を測定した結果を意味する。
【0033】
樹脂シートとしては、加工性を有するものが好ましい。加工性としては、具体的には切削加工性及び研磨性を有するものが好ましい。切削加工性としては、より具体的には、回転式くり抜き機(NCルーター)により加工できるものが好ましい。
前記した通り、従来のアクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂はハードコート処理により、本発明と同様の鉛筆硬度を有するものとなるが、近年スマホなどで採用されている端部の曲面に切削や研磨加工をするとハードコート層を失い、加工部の耐擦傷性や耐衝撃性が失われてしまう。
【0034】
樹脂シートの膜厚としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。
特にOPS等のガラス代替用途に使用する場合、100μm~5mmが好ましく、より好ましくは200μm~3mmであり、特に好ましくは300μm~2mmである。
【0035】
樹脂シートとしては、耐熱性を有するものが好ましい。耐熱性は、樹脂シートを使用してITO等の透明電極を製造する場合等に要求される物性であり、ガラス基板上で成膜した場合と同程度の低シート抵抗値及び高透過率を達成するために、150℃以上の高温での真空成膜が要求される。成膜中に弾性率が不足すると、樹脂シートそのものが歪み、所望の形状での成膜品が得られない。又、成膜中に樹脂シートの透明性の低下あるいは黄変等の外観変化が大きいと透明電極基板として使用できない。
樹脂シートの耐熱性としては、200℃での弾性率が0.1GPa以上であることが好ましく、より好ましくは1.0GPa以上であり、特に好ましくは1.0~5GPaである。
200℃の弾性率を0.1GPa以上とすることにより、ガラス基板上で成膜と同等の低抵抗となる均質なITO透明電極膜を得ることができ、真空成膜工程中での基板となる樹脂シートの変形を抑制し、成膜後の外観が良好であるのみならず、成膜後のITO膜厚及び電気抵抗の不均一性が生じることなく大きな面積の樹脂シートの成膜を行うことができ、生産性が向上する。
尚、本発明における弾性率とは、周波数1Hz、昇温温度2℃/分、引張モードで測定した動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率を示す。
【0036】
1-2.樹脂シートの形状
本発明における樹脂シートとしては、種々の形状及び構造のシートが使用できる。
樹脂シートの形状の例としては、正方形や長方形の平面板状体(以下、単に「板状体」という)、板状体の4頂点が丸みを有する形状、板状体の2辺の側面が曲線状に湾曲した形状〔例えば、図2の(a)〕、及び板状体の4辺の側面が曲線状に湾曲した形状〔例えば、図2の(b)〕等が挙げられる。
【0037】
1-3.樹脂シートの製造方法
本発明における樹脂シートは、種々の成形方法で製造することができる。
具体例としては、熱可塑性樹脂を使用した押出し成形、射出成型、真空成型、圧縮成形及び注型成形等が挙げられ、硬化型組成物を使用した圧縮成形及び注型成形等が挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂シートは、種々の形状を有する樹脂シートを好ましく製造できるという理由で、硬化型組成物の硬化物から得られる樹脂シートが好ましい。
硬化型組成物は、硬化性化合物を含む組成物であり、硬化性化合物としては、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物、多官能イソシアネート及び多価アルコール等が挙げられる。
硬化性化合物としては、開環カプロラクトン構造を有する化合物が好ましい。開環カプロラクトン構造を有する化合物の割合としては、組成物中の硬化性化合物の合計量に対して、開環カプロラクトン構造単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合が好ましい。
硬化型組成物の例としては、ラジカル重合性化合物とラジカル重合性開始剤を含む組成物、カチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤を含む組成物、アニオン重合性化合物とアニオン重合開始剤を含む組成物、多官能イソシアネート類と多価アルコール等の重付加重合性の組成物等が挙げられる。
ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。
ラジカル重合性開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニルエーテル等が挙げられる。
カチオン重合開始剤における光カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩等が挙げられる。
アニオン重合性化合物としては、α―シアノアクリレート類、メチレンマロネート類、エポキシ化合物、及びε―カプロラクトン等が挙げられる。
アニオン重合開始剤における光アニオン重合開始剤としては、クロムアミンチオシアネート、白金アセチルアセトネート、ペンタカルボニル金属錯体、シッフ塩基、フェロセン、メタロセン及びアルキルアルミニウムポルフィリン等が挙げられる。
【0039】
本発明において、樹脂シートを製造するための硬化型組成物としては、ラジカル重合性化合物とラジカル重合性開始剤を含む組成物が好ましい。
さらに、当該硬化型組成物としては、下記(A)~(C)成分を含む組成物であって、組成物中の(A)及び(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含む組成物がより好ましい。
(A)成分:開環カプロラクトン単位を有し、エチレン性不飽和基を有する化合物
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
(C)成分:ラジカル重合開始剤
以下、(A)~(C)成分を含む硬化型組成物について説明する。
【0040】
2.樹脂シート製造用硬化型組成物
樹脂シートを製造する硬化型組成物としては、下記(A)~(C)成分を含む組成物であって、組成物中の(A)及び(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含む組成物が好ましい。
(A)成分:開環カプロラクトン単位を有し、エチレン性不飽和基を有する化合物
(B)成分:(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
(C)成分:重合開始剤
以下、(A)~(C)成分、その他の成分及び組成物の詳細について説明する。
【0041】
2-1.(A)成分
(A)成分は、開環カプロラクトン単位を有し、エチレン性不飽和基を有する化合物である。
(A)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0042】
(A)成分としては、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物がより好ましい。
当該化合物の例としては、ポリオールにε-カプロラクトン付加させた化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化した、ポリオールε-カプロラクトン付加物のポリ(メタ)アクリレート、及びポリオールアルキレンオキサイド付加物にε-カプロラクトン付加させた化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化した、ポリオールアルキレンオキサイド付加物に対するε-カプロラクトン付加物のポリ(メタ)アクリレートが好ましい。
当該化合物におけるポリオールの具体例としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ノナンジオール及びネオペンチルグリコール等の脂肪族骨格を有するポリオール;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(1-メチルブチレングリコール)等のポリアルキレングリコール;
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール;
ジメチロールトリシクロデカン、シクロヘキサンジメタノール及びスピログリコール等の脂環式骨格を有するジオール;
グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、及びジペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール;並びに
イソシアヌレート等が挙げられる。
尚、上記においてアルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0043】
(A)成分のより具体的な例としては、ペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物に対するε-カプロラクトン付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ここでアルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられ、エチレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数としては、1分子中に1~3モルが好ましい。
又、ε-カプロラクトンの付加モル数としては、1分子中に1~7モルが好ましい。
【0044】
(A)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、又は2種以上併用しても良い。
【0045】
(A)成分は市販されており、例えば、下記製品等が挙げられる。
・イソシアヌル酸エチレンオキサイド3モル付加物に対するε-カプロラクトン1モル付加物のトリアクリレート:新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等が挙げられる。
・イソシアヌル酸エチレンオキサイド3モル付加物に対するε-カプロラクトン3モル付加物のトリアクリレート:東亞合成(株)製アロニックスM-327
・ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のポリ(メタ)アクリレート:日本火薬(株)製KYARAD DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60(ジペンタエリスリトールにε-カプロラクトンを、それぞれ2モル、3モル、6モル付加させた化合物を原料とする化合物)
・ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン2モル付加物のジ(メタ)アクリレート:日本火薬(株)製KYARAD HX-220
・ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン4モル付加物のジ(メタ)アクリレート:日本火薬(株)製KYARAD HX-620
【0046】
(A)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を20~60重量%が好ましく、より好ましくは30~55重量%である。
(A)成分の含有割合を20重量%以上とすることで、破断歪み及び50%衝撃破壊高さが高く、樹脂シートを強靭することができ、60重量%以下とするこことで鉛筆硬度等の表面硬度や耐擦傷性が高いものとすることができる。
【0047】
2-2.(B)成分
(B)成分は、(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(B)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
(B)成分としては、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物〔以下、「多官能不飽和化合物」という〕及びエチレン性不飽和基を1個有する化合物〔以下、「(B-2)成分」という〕等が挙げられる。
以下、それぞれの化合物について具体的に説明する。
【0048】
2-2-1.多官能不飽和化合物
多官能不飽和化合物としては、(B-1)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「(B-1)成分」という〕が好ましい。
(B-1)成分としては、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の芳香族骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(1-メチルブチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びスピログリコールジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(B-1)成分の他の例としては、グリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールの多官能(メタ)アクリレート;
グリセロールアルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のジ、トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物の多官能(メタ)アクリレート;並びに
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌレート環を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
尚、上記においてアルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0049】
(B-1)成分としては、上記以外にもウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレー及びポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ウレタン結合を有し2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であるウレタン(メタ)アクリレートが好ましく使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物、並びに有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物等が挙げられる。
【0051】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルジオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。ここで、ポリエステルジオールとしては、ジオールとジカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。
【0052】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物である。エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル及びハイドロキノンジグリシジルエーテル等のベンゼン骨格を有するジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のビスフェノール型ジグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;並びにo-フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
【0054】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル;並びにヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0055】
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがあり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
◆好ましい(B-1)成分
(B-1)成分としては、2官能(メタ)アクリレートである、アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレート及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びイソシアヌレート環を有する多官能(メタ)アクリレートから選択される1種以上の化合物を含むものが好ましい。
【0057】
アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートの好ましい例としては、炭素数4~20の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレート〔以下、「(B-1-1)成分」という〕が好ましい。
(B-1-1)成分は、炭素数4~20の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートである。本発明においてアルキレン基とは、アルカンから水素原子を2個除いた2価の置換基を意味する。
これらジ(メタ)アクリレートは、炭素数が3以下の直鎖状又は分岐状アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートに対して、硬化物の硬度や耐擦傷性に優れたものとなり、炭素数が21以上の化合物に対して、硬化物の剛性や耐熱性に優れたものとなる。
(B-1)成分における炭素数4~20の2価の直鎖状アルキレン基としては、両末端に結合を有する、1,4-ブチレン基、1,6-ヘキシレン基及び1,9-ノニレン基が好ましい。
当該化合物の具体例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0058】
(B-1-1)成分における炭素数4~20の2価の分岐状アルキレン基としては、両末端に結合を有する、ネオペンチレン基(2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基)、2-メチル-1,3-プロピレン基、重合度5以下のイソブチレン基が好ましい。
当該化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、最も好ましく用いられる。
【0059】
(B-1-1)成分としては、これら化合物の中でも、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
(B-1-1)成分としては、これら化合物の中でも、さらに、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0060】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、ポリオキシアルキレン基を構成する炭素数の合計が4~20であるジ(メタ)アクリレートが好ましい。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリ(1-メチルブチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、これら化合物の中でも、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、これら化合物の中でも、さらに、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0062】
2-2-2.(B-2)成分
(B-2)成分(エチレン性不飽和基を1個有する化合物)としては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
【0063】
単官能(メタ)アクリレートは、1個の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物であり、具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、о-フェニルフェノールエチレンオキサイド(EO)変性(EO1~4モル変性)(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(EO1~4モル変性)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、及びо-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
単官能(メタ)アクリレートとしては、種々の官能基を有する化合物であっても良い。
当該官能基としては、カルボキシル基、カルバメート基及び不飽和結合に置換基を有するマレイミド基等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸のマイケル付加型多量体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水フタル酸の付加物、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
水酸基を有する化合物の例としては、水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
カルバメート基を有する(メタ)アクリレートの例としては、オキサゾリドン基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、その具体例としては、2-(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)エチルアクリレート等を挙げることができる。
【0067】
不飽和結合に置換地を有するマレイミド基を有する(メタ)アクリレートの例としては、ヘキサヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヘキサヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。テトラヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレートの例としては、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0068】
(B-2)成分における単官能(メタ)アクリレート以外の例としては、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物及びN-ビニル化合物等のラジカル重合性ビニル化合物等が挙げられる。
【0069】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、アルキルスチレン及びハロゲン化スチレン等を挙げられる。
アルキルスチレンの具体例としては、メチルスチレン、エチルスチレン及びプロピルスチレン等が挙げられる。
ハロゲン化スチレンの具体例としては、フルオロスチレン、クロロスチレン及びブロモスチレン等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、前記した化合物の中でもスチレンが好ましい。
【0070】
マレイミド化合物としては、N-フェニルマレイミド、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びN-ポリエチレングリーコールメチルエーテルマレイミド等が挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリルアミド系化合物の具体例としては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキルアクリルアミド;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキルアクリルアミド;
N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;並びに(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0072】
アミド基を有する化合物の例としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0073】
2-2-3.好ましい態様
(B)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、又は2種以上併用しても良い。
(B)成分としては、多官能不飽和化合物を含むものが好ましく、さらに、(B-1)成分を(B)成分中に30重量%以上含むものが好ましく、より好ましくは30~100重量%である。
(B)成分としては、前記した(B-1-1)成分を含むものが好ましく、さらに(B-1-1)成分としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
この場合、(B-1-1)成分の含有割合としては、(B)成分の合計量100重量%中に、(B-1-1)成分を30~70重量%が好ましい。
又、(B)成分が、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むものが好ましい。
この場合、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有割合としては、(B)成分の合計量100重量%中に、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を30~70重量%が好ましい。
【0074】
2-2-4.含有割合
(B)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(B)成分を40~80重量%が好ましく、より好ましくは45~75重量%である。
(B)成分の含有割合を40重量%以上とすることで、鉛筆硬度等の表面硬度や耐擦傷性に優れるものとすることができ、80重量%以下とすることで破断歪み及び50%衝撃破壊高さに優れ、樹脂シートを強靭にすることができる。
さらに、(B-1-1)成分の好ましい含有割合としては、(B)成分合計量100重量%中に、30~70重量%である。
単官能不飽和化合物の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、単官能不飽和化合物を0~40重量%が好ましく、より好ましくは0~20重量%である。
単官能不飽和化合物の含有割合が、40重量%以下とすることで、未反応成分が硬化後の樹脂シート内に残留するため樹脂シートを可塑化し曲げ弾性率が低下してしまうことを防止することができる。
【0075】
2-3.(C)成分
(C)成分は、ラジカル重合開始剤である。
組成物を熱硬化型組成物として使用する場合には、熱重合開始剤(C-1)〔以下、「(C-1)成分」という〕を配合し、組成物を活性エネルギー線硬化型組成物として使用する場合には、光重合開始剤(C-2)〔以下、「(C-2)成分」という〕を配合する。
以下、(C-1)及び(C-2)成分について説明する。
【0076】
2-3-1.(C-1)成分
組成物を熱硬化型組成物として使用する場合には、(C-1)成分(熱重合開始剤)を配合することができる。
(C-1)成分としては、種々の化合物を使用することができ、有機過酸化物及びアゾ系開始剤が好ましい。さらに、これらの中でも、有機過酸化物が、重合開始剤効率に優れ、重合開始剤分解物由来のアウトガスを低減することができ、さらに組成物が耐衝撃性に優れるものとなるためより好ましい。
【0077】
有機過酸化物の具体例としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジラウロイルパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジーメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0078】
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタン、及びアゾジ-t-ブタン等が挙げられる。
【0079】
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応をすることも可能である。
【0080】
(C-1)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、(C-1)成分を0.1~5重量部が好ましい。
(C-1)成分の割合を0.1重量部以上とすることで、樹脂シート全体を均一に硬化させることができ、5重量部以下とすることで残存する低分子量の重合開始剤分解物を由来とするアウトガスを低減することができる。
【0081】
2-3-2.(C-2)成分
(C-2)成分は、光重合開始剤である。
(C-2)成分は、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いた場合に配合する成分である。電子線を使用する場合には、必ずしも配合する必要はないが、硬化性を改善させるため必要に応じて少量配合することもできる。
【0082】
(C-2)成分の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-1-(メチルビニル)]フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチループロピオニル)ベンジル]-フェニル]-2-メチルプロパンー1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)ブタン-1-オン、アデカオプトマーN-1414〔(株)ADEKA製〕、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル]オキシ-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフルオロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)及び1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;並びに9-フェニルアクリジン及び1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
【0083】
(C-2)成分としては、前記以外にも分子量が350以上の光重合開始剤を使用することも可能である。分子量350以上の光重合開始剤は、光照射後の分解物により得られる樹脂シートが着色を生じることがなく、さらに透明導電性フィルムの製造に使用する場合、分解物が透明導電体層の真空成膜時のアウトガスも発生しないため、短時間で高真空に到達することができ、導電体層の膜質が低下して低抵抗化しにくくなってしまうことを防止することができる。
【0084】
(C-2)成分の具体例としては、ヒドロキシケトンのポリマー等が挙げられ、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。当該化合物は、(A)及び(B)成分との相溶性に優れる点でも好ましい。
【0085】
【化1】
【0086】
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はアルキル基を表し、nは2~5の整数を表す。尚、nは、上記単位の繰り返し数を意味する。
2はアルキル基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0087】
式(1)で表される化合物の具体例としては、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン等が挙げられる。
当該化合物は市販されており、例えば、ESACURE KIP 150(Lamberti社製)が知られている。ESACURE KIP 150は、上記式(1)表される化合物において、R1は水素原子又はメチル基、R2はメチル基、nは2~3の数、かつ[(204.3×n+16.0)又は(204.3×n+30.1)]の分子量を有する化合物である。
【0088】
前記以外の化合物としては、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル及びオキシフェニル酢酸等を挙げることができる。
当該化合物は市販されており、イルガキュア754(BASF社製)が知られている。イルガキュア754は、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物である。
【0089】
(C-2)成分の配合割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、より好ましくは0.1~5重量部である。
配合割合を0.01重量部以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10重量部以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
又、(C-1)と(C-2)成分を併用し、光硬化させた後にさらに反応率を向上させる目的で熱硬化を行うこともできる。
【0090】
2-4.組成物の製造方法及び物性
本発明は、前記(A)~(C)成分を含む組成物であって、組成物中の(A)及び(B)成分の合計量に対して開環カプロラクトン単位を0.5~3.0モル/Lとなる割合で含む樹脂シート製造用硬化型組成物に関する。
開環カプロラクトン単位が0.5モル/Lに満たない場合は、耐衝撃性が低下し40g、R5mmの錘を用いた落錘試験における50%破壊高さが50cm以下なってしまい、3.0モル/Lを超えると、樹脂の弾性率が2.5GPa以下となり、OPSに求められるディスプレイ保護するための剛性が不足する。開環カプロラクトン単位としては、0.5~3.0モル/Lが好ましい。
尚、組成物中の(A)及び(B)成分の合計量に対する開環カプロラクトン単位とは、組成物合計体積1Lに対するε-カプロラクトンが開環した構造のモルを意味する。
より具体的には、開環カプロラクトン単位のモル濃度は、組成物に含まれる(A)成分の含有割合と(A)成分1モル中の開環カプロラクトン単位のモル数から、組成物に含まれる開環カプロラクトン単位のモル数を計算し、この値を組成物の体積で除した値(モル/L)である。組成物の体積は、組成物の比重から計算する。
組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、例えば、(A)、(B)及び(C)成分、必要に応じてその他の成分を撹拌混合して製造することができる。
【0091】
組成物の粘度は目的に応じて適宜設定すれば良く、50~10,000mPa・sが好ましい。
尚、本発明において粘度とは、E型粘度計(コーンプレート型粘度計)を使用して25℃で測定した値を意味する。
【0092】
本発明の組成物は、熱硬化型組成物及び活性エネルギー線硬化型組成物として使用することができる。
【0093】
本発明における硬化性成分である前記(A)及び(B)成分としては、前記した化合物を適宜組み合わせて使用することができるが、特に、熱硬化型組成物の場合は、ウレタン結合を有する化合物を含まないことが好ましい。ウレタン結合を有する化合物、例えばウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物は、硬化物が着色を生じてしまう。
【0094】
本発明の組成物は、(A)及び(B)成分の中に含まれるエチレン性不飽和基の合計量100モル%中に、メタクリロイル基を20~60モル%含むことが好ましく、より好ましくは30~60モル%である。
メタクリロイル基の割合を20モル%以上とすることで硬化後の樹脂シートの歪を小さくすることができ、60モル%以下とすることで耐熱試験前後の着色を抑制することができる。
本発明におけるメタクリロイル基の割合とは、(A)及び(B)成分中の全メタクリロイル基のモル数を全エチレン性不飽和基のモル数で除し、100を掛けたモル%を意味する。尚、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、市販品において、(メタ)アクリロイル基の個数が異なる化合物の混合物である場合が多いため、(メタ)アクリロイル基の割合が不正確である場合がある。この場合は、ヨウ素価等で事前に原料化合物の(メタ)
アクリロイル基当量を測定しておき、この値に基づき計算する。
【0095】
2-5.その他の成分
本発明の組成物は、前記(A)、(B)及び(C)成分を含むものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他の成分としては、具体的には、有機溶剤、可塑剤、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤、2個以上のメルカプト基を有する化合物〔以下、「多官能メルカプタン」という〕、並びにイソシアネート化合物等を挙げることができる。
以下、これらの成分について説明する。尚、後記する成分は、1種のみ使用しても良く、又2種以上を併用しても良い。
【0096】
2-5-1.有機溶剤
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、有機溶剤を配合することができる。但し、得られる樹脂シートを透明導電性フィルム用途に使用する場合は、有機溶剤を含まないものが好ましい。
【0097】
有機溶剤の具体例としては、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-イソペンチルオキシエタノール、2-ヘキシルオキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、ビス(2-エトキシエチル)エーテル及びビス(2-ブトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;並びに
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、及びγ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
【0098】
有機溶剤の割合としては、適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に90重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下である。
【0099】
2-5-2.可塑剤
硬化物に柔軟性を付与し、脆さを改善する目的で、可塑剤を添加することができる。
可塑剤の具体例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸ジアルキルエステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、リン酸トリクレシル等のリン酸エステル、ポリプロピレングリコール等の液状ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、及び3-メチルペンタンジオールアジペート等の液状ポリエステルポリオール等が挙げられる。又、数平均分子量10,000以下の軟質アクリル系ポリマー等を挙げることができる。
【0100】
これら可塑剤の配合割合としては、適宜設定すれば良いが、(A)成分の合計100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以下である。
30重量部以下にすることにより、強度や耐熱性に優れるものとすることができる。
【0101】
2-5-3.重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、保存安定性を向上させために、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することができる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、(A)成分の合計量100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、より好ましくは0.5重量部以下である。
【0102】
2-5-4.耐光性向上剤
本発明の組成物には、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐光性向上剤を添加しても良い。
紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4-ジヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
光安定性剤としては、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0103】
耐光性向上剤の配合割合は、(A)成分の合計量100重量部に対して、0~5重量部であることが好ましく、より好ましくは0~1重量部である。
【0104】
2-5-5.多官能メルカプタン
多官能メルカプタンは、組成物硬化物の硬化収縮を防止する目的や強靭性を付与する目的で、必要に応じて配合することができる。
多官能メルカプタンとしては、2個以上のメルカプト基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
【0105】
例えば、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等が挙げられる。
【0106】
多官能メルカプタンの割合としては、(A)成分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下が特に好ましい。この割合を20重量部以下にすることで、得られる硬化物の耐熱性や剛性の低下を防止することができる。
【0107】
2-5-6.イソシアネート化合物
ポリビニルアルコール等の難接着性基材を用いる場合、基材との密着性を向上する手段としてイソシアネート化合物を添加することができる。
【0108】
1個のエチレン性不飽和基と1個のイソシアネート基を有する化合物としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート等が挙げられ、これら2つの基がオキシアルキレン骨格で連結されている化合物の例として、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキルイソシアネート、並びにこれら2つの基が芳香族炭化水素骨格で連結されている化合物の例として、2-(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネート等が挙げられる。
【0109】
2個のエチレン性不飽和基を有すると1個のイソシアネート基を有する化合物としては、これら2つの基が分岐状飽和炭化水素骨格で連結されている化合物の例として、1,1-ビス〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕エチルイソシアネート等が挙げられる。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、フタレンジイソシアネート、ジメチルジフェニルジイソシアネート、ジアニリンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等が挙げられ、さらには、これらイソシアネート化合物をトリメチロールプロパンなどの多官能アルコールに付加したアダクト系イソシアネート化合物や、これらイソシアネート化合物のイソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、アロファネート型化合物等が挙げられ、さらには公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0110】
2-5-7.前記以外のその他の成分
本発明の組成物には、前記したその他の成分以外にも、離型剤、フィラー及び溶解性重合体等を配合することができる。
離型剤は、得られる樹脂シートを基材からの離型を容易にする目的で配合する。離型剤としては、基材から離型でき、配合液および硬化物が濁らなければ、各種界面活性剤が使用できる。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸等のアニオン界面活性剤、アルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤、アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤さらには、フッ素やケイ素を含む界面活性剤等が挙げられる。
フィラーは、得られる樹脂シートの機械物性を向上させる目的で配合する。フィラーとしては、無機化合物及び有機化合物のいずれも使用できる。無機化合物としては、シリカ及びアルミナ等が挙げられる。有機化合物としては重合体を使用することができる。フィラーとしては、本発明の組成物から得られる樹脂シートが光学用途として使用される場合には、光学物性を低下させないものが好ましい。
溶解性重合体は、得られる樹脂シートの機械物性を向上させる目的で配合する。溶解性重合体とは、組成物に溶解する重合体を意味する。本発明では、組成物に溶解しない重合体をフィラーと称して区別する。
これらその他の化合物の配合割合としては、(A)成分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
【0111】
2-5-8.硬化物物性
本発明の組成物の硬化物は、前記した樹脂シートの物性を満たすものが好ましい。
即ち、曲げ試験における曲げ弾性率が2.5GPa以上、40gかつ先端半径が5mmの錘を用いた落錘試験での50%破壊高さが50cm以上、及び鉛筆硬度が3H以上であり、さらに好ましい物性も前記した範囲である。
【0112】
又、樹脂シートを光学用途に使用する場合において、全光線透過率としては、90%以上が好ましく、より好ましくは91%以上である。
尚、耐衝撃性を有する樹脂シートとしては、相分離等を用いる例があるが、透明性が低下するものであった。これに対して、本発明の組成物から得られる樹脂シートは、透明性にも優れる。
【0113】
本発明の組成物から得られる樹脂シートは、加工性に優れるものとなる。加工性としては、具体的には切削加工性及び研磨性を有するものが好ましい。切削加工性としては、より具体的には、回転式くり抜き機(NCルーター)により加工できる。
前記した通り、従来のアクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂はハードコート処理により、本発明と同様の鉛筆硬度を有するものとなるが、近年スマホなどで採用されている端部の曲面に切削や研磨加工をするとハードコート層を失い、加工部の耐擦傷性や耐衝撃性が失われてしまうが、本発明の組成物から得られる樹脂シートはこのような問題がない。
【0114】
3.樹脂シートの製造方法
本発明の組成物を使用する樹脂シートの製造方法としては、種々の方法を採用することができる。
尚、本発明に係る樹脂シートの技術分野においては、比較的膜厚の厚い場合をシートと称し、比較的膜厚の薄い場合をフィルムと称する場合が多い。
前記した通り、本発明において「樹脂シート」とは、樹脂シート又は樹脂フィルムを意味する。
【0115】
具体的には、組成物として熱硬化型組成物を使用する場合は、例えば下記4つの製造方法が挙げられる。
1)製法1-1
基材に組成物を塗工し、加熱して組成物を硬化させる方法
2)製法1-2
基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後、加熱して組成物を硬化させ方法
3)製法1-3
空間部を有する基材に組成物を流し込み、加熱して組成物を硬化させる方法
4)製法1-4
空間部を有する基材に組成物を流し込み別の基材と貼り合せた後、加熱して組成物を硬化させる方法
本発明の組成物から得られる樹脂シートをガラス代替用途で使用する場合においては、上記製法1-4が好ましい。
本発明の組成物から得られる樹脂シートを偏光子保護フィルムで使用する場合においては、上記製法1-1及び1-2が好ましい。
【0116】
組成物として活性エネルギー線硬化型組成物を使用する場合は、例えば下記4つの製造方法が挙げられる。
5)製法2-1
基材に組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させる方法
6)製法2-2
基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後、活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させる方法
7)製法2-3
空間部を有する基材に組成物を流し込み、活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させる方法
8)製法2-4
空間を有する基材に組成物を流し込み別の基材と貼り合せた後、活性エネルギー線を照射して組成物を硬化させる方法
これら製造方法の場合、活性エネルギー線を照射した後に加熱することもできる。
本発明の組成物から得られる樹脂シートをガラス代替用途で使用する場合においては、上記製法2-4が好ましい。
本発明の組成物から得られる樹脂シートを偏光子保護フィルムで使用する場合においては、上記製法2-1及び2-2が好ましい。
【0117】
重合方式としては、バッチ式及び連続式のいずれも採用することができる。
連続式の例としては、組成物を塗工又は流し込み基材として、ベルト状の基材を連続供給する方法等が挙げられる。
連続式の別の例としては、上記以外にも連続キャスト法と称される方法が挙げられる。即ち、連続した鏡面ステンレスのベルトをキャタピラ状に上下に2枚並べ、そのベルトとベルトの間に組成物を流し入れ、ゆっくりとベルトを動かしながら連続的にベルトとベルトの間で重合を行い、樹脂シートを製造方法等が挙げられる。
ガラス代替用途においては、バッチ式が好ましい。
【0118】
3-1.基材
基材としては、剥離可能な基材及び離型性を有しない基材(以下、「非離型性基材」という)のいずれも使用することができる。
剥離可能な基材としては、金属、ガラス、離型処理されたポリマーフィルム及び剥離性を有する表面未処理ポリマーフィルム(以下、まとめて「離型材」という)等が挙げられる。
硬化物の離型を容易にする目的で、基材表面を離形処理することもできる。離形処理としては、例えばシリコーン等を用いて基材表面に塗工又は処理すればよい。
離型処理されたポリマーフィルム及び剥離性を有する表面未処理ポリマーフィルムとしては、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理シクロオレフィンポリマーフィルム及び表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0119】
本発明の組成物から得られる樹脂シートに対して、低いヘイズにしたり表面平滑性を付与するためには、表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.15μm以下の基材を使用することが好ましく、0.001~0.100μmの基材がより好ましい。さらに、ヘイズとしては3.0%以下が好ましい。
【0120】
当該基材の具体例としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレートフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルム、OPPフィルム(配向ポリプロピレン)、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
尚、本発明において表面粗さRaとは、フィルムの表面の凹凸を測定し、平均の粗さを計算したものを意味する。
【0121】
非離型性基材としては、前記以外の各種プラスチックが挙げられ、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物を偏光子保護材として利用する場合、ヨウ素や染料を含浸後延伸したポリビニルアルコール膜、即ち偏光子フィルムが基材となる。
硬化性組成物の重合物である樹脂シートまたはフィルムを基材から剥離させることなく、基材と硬化層が一体化した状態で実用に供する用途の場合、両層の接着性を向上する目的で、コロナ放電処理を始めとする物理的・化学的処理を基材表面の施すことができる。
【0122】
空間部を有する基材としては、凹部を有する基材が挙げられる。型枠材に目的の膜厚とする所定の形状の穴を空け、凹部を形成したものが挙げられる。
この場合、凹部を有する基材に組成物を流し込んだ後、当該凹部を有する基材の上に、別の基材を重ねることもできる。
空間部を有する基材の他の例としては、型枠材上に、硬化物が目的の膜厚となるように堰(スペーサー)を設けたもの(以下、「成形型」という)等も挙げられる。この場合も、堰の上に、別の基材を重ねることもできる。
前記した通り、本発明における樹脂シートの形状としては、種々の形状のものが採用でき、使用する成形型の形状を変更することにより、形状の異なる樹脂シートを製造することができる。
【0123】
成形型の例として、図1を挙げ説明する。
図1の(a1-1)及び(a1-2)は、2枚の基材〔図1:(a1-1)の(1)及び(a1-2)の(1)’〕、2枚の離型性に優れる基材〔図1:(a1-1)の(2)及び(a1-2)の(2)’〕及び1枚の堰を設けるための基材〔図1:(a1-1)の(3)〕から構成される成形型の例である。
図1の(a2)は、2枚の基材〔図1:(a2)の(1)及び(1)’〕、及び1枚の堰を設けるための基材〔図1:(a2)の(3)〕から構成される成形型の例である。
【0124】
堰を設けるための基材としては、図1に示す通り、上部に組成物を注入するための空孔部〔図1:(a1-1)の(3-1)〕を有する形状のもの〔図1:(a1-1)の(3)〕及び空孔部を有しない形状のもの〔図1:(a1-1)の(3)'〕等が挙げられ、上部に組成物を注入するための空孔部を有する形状のものが好ましい。当該堰を設けるための基材としては、種々の材料が使用でき、シリコーンゴム等を挙げることができる。
【0125】
図1の(a1-1)及び(a1-2)の具体例としては、基材として2枚のガラス、2枚の離型処理されたフィルム及び1枚の堰を設けるための基材から構成される成形型が挙げられる。
ガラス〔図1:(a1-1)の(1)〕の上に、離型処理されたフィルム〔図1:(a1-1)の(2)〕を重ね、その上に堰を設けるための基材〔図1:(a1-1)の(3)〕を重ね堰(スペーサー)とする。さらにその上に、離型処理されたフィルム〔図1:(a1-2)の(2)’〕を重ね、その上にガラス〔図1:(a1-2)の(1)’〕を重ね成形型とする。
【0126】
図1の(a2)の具体例としては、基材〔図1:(a2)の(1)及び(1)’〕として、離型処理されたガラスや金属を使用する場合であり、硬化物の離型性に優れるため、図1の(a1-1)や(a1-2)における2枚の離型処理されたフィルムは不要である。
又、組成物の硬化物自体が離型性に優れる場合には、基材〔図1:(a2)の(1)及び(1)’〕として、ガラスを使用することもできる。組成物の硬化物自体が離型性に優れる例としては、組成物に離型剤を配合した例が挙げられる。
【0127】
図1の成形型は、平面板状の樹脂シートを製造するための型の例であり、図1の成形型の構造を変更することにより種々の形状の樹脂シートを製造することができる。
例えば、図1の成形型において湾曲させた構造の型を使用することで湾曲状の樹脂シートを製造することができ、図1の成形型において4辺が湾曲したR形状の型を使用することで、4辺が湾曲したR形状の樹脂シートを製造することができる。
【0128】
3-2.組成物の事前処理
本発明の組成物の塗工又は注入に当たって、組成物としては、得られる樹脂シートを、異物の混入防止や空隙等の欠陥の発生を防止したり、光学物性の優れたものとするため、原料成分を撹拌・混合した後、精製したものを使用することが好ましい。
組成物の精製方法としては、組成物をろ過する方法が簡便であり好ましい。ろ過の方法としては、加圧ろ過等が挙げられる。
ろ過精度は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。ろ過精度は小さいほど好ましい。フィルターが目詰まりを抑制し、フィルターの交換頻度を抑制し、生産性の観点から、下限は0.1μmが好ましい。
【0129】
樹脂シートの製造に当たっては、硬化物中に気泡を含むことを防止するため、各成分を配合した後に脱泡処理することが好ましい。脱泡処理の方法としては、静置、真空減圧、遠心分離、サイクロン(自転・公転ミキサー)、気液分離膜、超音波、圧力振動及び多軸押出機による脱泡等が挙げられる。
【0130】
3-3.塗工又は注入
基材に組成物を塗工する場合の塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
空間部を有する基材に組成物を注入する場合は、組成物を注射器等の注入機器や注入装置に入れ注入する方法等が挙げられる。
【0131】
この場合の膜厚としては、前記した樹脂シートの目的とする膜厚に応じて適宜設定すれば良い。
特にガラス代替用途、好ましくはOPS用途に使用する場合、100μm~5mmが好ましく、より好ましくは200μm~3mmであり、特に好ましくは300μm~2mmである。
偏光子保護層として使用する場合、10μm~2mmが好ましく、より好ましくは20μm~200μmである。
【0132】
3-4.加熱
組成物として熱硬化型組成物を使用する場合の加熱方法としては、熱及びオイル等の熱媒浴に浸漬する方法、熱プレスを用いる方法、並びに温調式恒温槽内に保持する方法等が挙げられる。
加熱する場合の加熱温度等の条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。加熱温度としては40~250℃が好ましい。加熱時間は使用する組成物、及び目的とする樹脂シート等に応じて適宜設定すれば良く、3時間以上が挙げられる。加熱時間の上限は、経済性を考慮し24時間以下が好ましい。
【0133】
又、目的に応じて加熱温度を変更することもできる。例えば、分解温度の異なる熱重合開始剤を使用した場合等が挙げられる。具体的な温度としては、例えば、40~80℃程度の比較的低温で数時間重合した後、100℃以上の比較的高温で数時間重合する方法等が挙げられる。
【0134】
3-5.活性エネルギー線照射
組成物として活性エネルギー線硬化型組成物を使用する場合の活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線及びX線等が挙げられ、硬化物を膜厚とすることができる点で紫外線及び可視光線が好ましい。紫外線照射装置としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライトランプ、UV無電極ランプ、LED等が挙げられる。
活性エネルギー線照射における、線量や照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
【0135】
この場合、活性エネルギー線を照射した後に加熱することができる。当該加熱の方法としては後記と同様の方法が挙げられる。加熱処理によって分子鎖再配列による安定化、重合反応の進行、凍結したラジカルのカップリング反応などが起き、耐熱性や光学的性質の向上が期待できる。
加熱温度は50~250℃が好ましく、100~200℃が更に好ましい。加熱温度が低いと加熱処理の効果が低く、高すぎると架橋反応等によって強靭性が低下する恐れがある。加熱時間は1時間~1日が好ましく、2~10時間が更に好ましい。加熱時間が短いと加熱処理の効果が低く、長すぎると架橋反応等によって強靭性が低下する恐れがある。
【0136】
又、活性エネルギー線硬化と熱硬化を併用することで、種々の形状の樹脂シートを製造することができる。
具体例としては、まず、組成物に活性エネルギー線照射して完全に硬化させることなく、力を加えることで変形する程度の可塑性を有する平面板状の樹脂シート(以下、「半硬化シート」という)を製造する。
半硬化シートを使用し、機械的な手段で曲げたり、特定形状を有する型枠等にはめ込み変形させ、目的の形状に成型する。
目的の形状に成型した半硬化シートを加熱し、完全に硬化させる。
【0137】
4.樹脂シートの用途
本発明の樹脂シートは、特に光学シートとして好ましく使用することができる。
本発明の組成物から形成される光学シートは、種々の光学用途に使用できるものである。より具体的には、液晶ディスプレイ用偏光板の偏光子保護フィルム、有機EL用円偏板の保護フィルム、プリズムシート用支持フィルム及び導光フィルム等の液晶表示装置やタッチパネル一体型液晶表示装置に使用されるシート、各種機能性フィルム(例えば、ハードコートシート、加飾シート、透明導電性シート)及び表面形状を付したシート(例えば、モスアイ型反射防止シートや太陽電池用テクスチャー構造付きシート)のベースシート、太陽電池等屋外用の耐光性(耐候性)シート、LED照明又は有機EL照明用フィルム、フレキシブルエレクトロニクス用透明耐熱シート、監視カメラの防曇などを目的とした透明ヒーター、携帯電話等の筐体、自動車のインスツルメントパネルカバー、サンルーフ、ミラーのカバー、フォトマスク、ウエアラブル表示素子等の用途が挙げられる。
【0138】
本発明の樹脂シートからなる光学シートは、耐熱性に優れるため、透明導電性シートの製造に好ましく使用することができる。この用途で使用する組成物としては、透明導電性体層の真空成膜時のアウトガス発生を抑制できる点で、有機溶剤を含まない無溶剤型組成物が好ましい。
さらに、本発明の光学シートは、厚膜であっても耐熱性に優れるうえ可撓性を有しかつ高強度であるため、OPS用の透明導電性シート基材として使用することもでき、この場合、膜厚が0.5mm以上1.5mm以下の光学シートをより好ましく使用することができる。
【0139】
透明導電性シートの製造方法は、常法に従えば良い。
透明導電体層を形成する金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、インジウム-スズ複合酸化物、スズ-アンチモン複合酸化物、亜鉛-アルミニウム複合酸化物、インジウム-亜鉛複合酸化物、チタン-ニオブ複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム-スズ複合酸化物、インジウム-亜鉛複合酸化物が好ましい。
透明導電体層を形成する方法としては、常法に従えば良く、本発明の光学シートを使用して、前記金属酸化物を使用して真空成膜装置を使用してスパッタ法により形成する方法等が挙げられる。
より具体的には、前記金属酸化物をターゲット材料とし、脱水及び脱ガスを行った後、排気して真空にし、光学シートを所定の温度とした後、スパッタ装置を使用して光学シート上に透明導電体層を形成する方法等が挙げられる。
【実施例
【0140】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
又、以下において「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
【0141】
1.実施例1~同4、比較例1~同4
1)紫外線硬化型組成物の製造
下記表1及び表2に示す(A)、(B)及び(C)成分を、下記表1及び表2に示す割合で配合し、撹拌及び混合した後、真空下にて脱泡した。
尚、後記においては、(A)成分における開環カプロラクトン単位(ε-カプロラクトンが開環した構造)の組成物中のモル濃度を「CL単位」と表し、エチレン性不飽和基の合計量100モル%中のメタクリロイル基の割合を、「メタクリル比率」と表す。
CL単位のモル濃度は、組成物に含まれる(A)成分の含有割合と(A)成分1モル中の開環カプロラクトン単位のモル数から、組成物に含まれる開環カプロラクトン単位のモル数を計算し、この値を組成物体積で除した値(mol/L)とした。組成物体積は、組成物重量を組成物の比重で除した値を使用した。
【0142】
CL単位の具体的な計算方法を、実施例1に基づき説明する。
実施例1では、下記DPCA-30を30g配合している。
DPCA-30:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン3モル付加物のポリ(メタ)アクリレート(分子量:921)
DPCA-30は、分子1mol中に開環カプロラクトン単位を3mol有する。
実施例1は、組成物総重量100.5gで、比重1.1であり、下式によりCL単位を計算した。
他の組成物についてもCL単位を同様に計算した。
〔[30(g)/921(g/mol)]×3〕/〔100.5(g)/1.1(g/cm3)/1000(cm3/L)〕=1.07(mol/L)
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
尚、表1及び表2における略号は、下記を意味する。
(A)成分
・DPCA-30:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン3モル付加物のポリ(メタ)アクリレート(分子量:921)、日本火薬(株)製KAYARAD DPCA-30
・DPCA-60:ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン6モル付加物のポリ(メタ)アクリレート(分子量:1263)、日本火薬(株)製KAYARAD DPCA-60
・M-327:イソシアヌル酸エチレンオキサイド3モル付加物に対するε-カプロラクトン3モル付加物のトリアクリレート(分子量757)、東亞合成(株)製アロニックスM-327
(B)成分
・NDDA:1,9-ノナンジオールジアクリレート(分子量268)、大阪有機化学工業(株)製ビスコート#260
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(分子量226)、大阪有機化学工業(株)製ビスコート#230
・NPG-MA:ネオペンチルグリコールジメタクリレート(分子量240)、新中村化学工業(株)製NPG
・TMP-MA:トリメチロールプロパントリメタクリレート(分子量338)、共栄社化学(株)製ライトエステルTMP
・M-309:トリメチロールプロパントリアクリレートの混合物(分子量290)、東亞合成(株)アロニックスM-305
・St:スチレン(分子量104)、NSスチレンモノマー(株)製
・M-225:ポリプロピレングリコール(繰り返し単位:約7)ジアクリレート(分子量533)、東亞合成(株)アロニックスM-225
・M-321:トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート(分子量645)、東亞合成(株)アロニックスM-321
・OT-1000:ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの付加反応物(1分子中に6個のアクリロイル基を有するウレタンアダクト)とペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物〔62:38(重量比)〕(平均分子量608)、東亞合成(株)製アロニックスOT-1000
(C)成分
・DC:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(分子量164)〔BASFジャパン(株)製ダロキュアー1173〕
【0146】
2)樹脂シートの製造
樹脂シートを製造するための成形型として、図1の(a2)に示す成形型を使用した。
2枚のガラス板〔80mm×80mm、厚さ3mm〕及び1枚のシリコーン板(厚さ1.0mm)を使用した。尚、ガラス板は、シリコーン系化合物により離型処理を行ったものを使用した。
ガラス板〔図1の(a2):(1)〕の上に、シリコーン板〔図1の(a2):(3)〕を重ね堰(スペーサー)とした。さらにその上にガラス板〔図1の(a2):(1)'〕を重ね成形型とした。
成形型のシリコーン板の空孔部〔図1の(a2):(3-1)〕から、上記で得られた組成物を、注射器により注液した。
得られた成形型に対して、ガラス板側の一方の面からアイグラフィックス(株)製紫外線照射装置(高圧水銀灯)を用いて、照度130mW/cm2(UV-A、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCK)として、コンベア速度5m/minで20回露光した。この際、1回の露光毎に照射面を反転させた。
放冷後、成形型からガラスを外し、得られた硬化物を150℃で16時間加熱し樹脂シートを得た。
【0147】
3)評価方法
得られた樹脂シートについて、下記の方法に従い、曲げ弾性率、落錘試験、鉛筆硬度、全光線透過率及び加工性を評価した。それらの結果を表1及び表2に示す。
【0148】
(1)曲げ弾性率
80mm×80mm、厚さ1mmの樹脂シートから、長さ40(mm)×幅10(mm)の試験片5個を切り出し、インストロン5566A(支点間距離30mm、0.2mm/秒、25℃、50%RH)で3点曲げ試験を実施した。試験片5個の平均値を曲げ弾性率(GPa)とした。
又、降伏がみられ応力最大となる歪みの1.2倍以上の歪で破壊した場合は、破壊形態を延性破壊、それ以下の場合は脆性破壊とした。
【0149】
(2)落錘試験(50%衝撃破壊高さ)
得られた樹脂シートから、長さ60(mm)×幅60(mm)の試験片を切り出し、JIS K7211-1に準拠し、得られた樹脂シートを直径50mmの金属製のリング上に配置し、先端径5mmとなる重さ40gの円錐状の錘を所定の高さから樹脂成形体中央部に落下させ、破壊する確率が50%以上となる高さを記録した。各高さでの試験数は10とした。
【0150】
(3)鉛筆硬度
JIS K-5600に準拠し、得られた樹脂シートの表面の硬度を測定した。
【0151】
(4)全光線透過率
JIS K7375に準拠し、厚さ1mmの樹脂シートの全光線透過率を測定した。
【0152】
(5)加工性
得られた樹脂シートをNCルーター〔日本精密機械工作(株)製HSM3500A〕を用いて1万回転で、130mm×92mmに加工した後の板の外観を確認した。得られた結果を、以下の3水準で評価した。
A:ヒビや割れがない。
B:加工箇所近傍に1mm以下のヒビがある。
C:シート全体の破損あるいは加工箇所近傍に1mm以上のヒビがある。
【0153】
2.実施例5~同8
1)熱硬化型組成物の製造
実施例1~同4の紫外線硬化型組成物において、光重合開始剤のDC0.5部をt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート〔日油(株)製パーブチルO〕0.5部に置き換えた以外は同様の方法で熱硬化型組成物を製造した。
【0154】
2)樹脂シートの製造
樹脂シートを製造するための成形型として、図1の(a2)に示す成形型を使用した。
2枚のガラス板〔80mm×80mm、厚さ3mm〕及び1枚のシリコーン板(厚さ1.0mm)を使用した。尚、ガラス板は、シリコーン系化合物により離型処理を行ったものを使用した。
ガラス板〔図1の(a2):(1)〕の上に、シリコーン板〔図1の(a2):(3)〕を重ね堰(スペーサー)とした。さらにその上にガラス板〔図1の(a2):(1)'〕を重ね成形型とした。
【0155】
成形型のシリコーン板の空孔部〔図1の(a2):(3-1)〕から、上記で得られた組成物を、注射器により注液した。
成形型を乾燥炉に設置し、60℃で0.5時間加熱後、6時間かけて120℃(昇温割合:10℃/時間)まで昇温して、組成物を硬化させた。
室温まで冷却後、成形型からガラスを外して脱型し、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートを使用し、前記と同様の方法に従い、曲げ弾性率、落錘試験、鉛筆硬度、全光線透過率及び加工性を評価した。それらの結果は、前記実施例1~同4と同様の結果であった。
【0156】
3.比較例5及び同6
1)市販の樹脂シートの評価
市販のポリメチルメタクレート〔三菱レイヨン(株)製アクリライトL。以下、「PMMA」という〕及びポリカーボネート〔三菱ガス化学(株)製ユーピロンNF-2000。以下、「PC」という〕を使用して、前記と同様の方法に従い、曲げ弾性率、落錘試験、鉛筆硬度、全光線透過率及び加工性を評価した。それらの結果を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
4.総括
実施例1~同4の組成物は、得られる樹脂シートが、曲げ弾性率、落錘試験、硬度、全光線透過率及び加工性のいずれにも優れるものであった。
これに対して、(A)成分を含まない開環カプロラクトン単位が0.5モル/Lに満たない比較例1~同4の組成物は、得られる樹脂シートが、曲げ弾性率及び硬度は問題なかったものの、いずれも落錘試験(耐衝撃性)が低下してしまうものであった。特に、比較例1の組成物から得られる樹脂シートは、加工性を有しないものであった。
又、市販のPMMAに関する比較例5では、落錘試験の結果が低下してしまうものであった。又、市販のPCに関する比較例6では、硬度が低下し、さらに加工性を有しないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の樹脂シートは、種々の用途に使用することができ、光学シートとして好ましく使用することができる。当該光学シートは、透明導電性シートの製造に好ましく使用することができ、タッチパネル用透明導電性シートの製造により好ましく使用することができる。
図1
図2