(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/04 20060101AFI20220809BHJP
H01H 50/44 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
H01H50/04 T
H01H50/44 N
(21)【出願番号】P 2020117148
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩治
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210018(JP,A)
【文献】実開昭58-166135(JP,U)
【文献】特開2004-247126(JP,A)
【文献】特開昭61-259427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁継電器であって、
通電時に電磁力を発生する電磁コイル(14)と、
前記電磁コイルに電気的に接続された一対のコイル端子(15、16)と、
前記一対のコイル端子に電気的に接続されるチップ素子(30)と、を備え、
前記一対のコイル端子それぞれは、前記チップ素子と接触する載置部(154、164)、前記載置部に立設された爪部(155、165)を有し、
前記チップ素子は、前記チップ素子に接するように塑性変形された前記爪部によって前記一対のコイル端子に固定される電磁継電器。
【請求項2】
前記チップ素子は、前記爪部と前記載置部とで挟持されている請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記チップ素子は、基板(31)の一面に抵抗体(32)が設けられた角型のチップ抵抗器であり、前記基板のうち前記抵抗体が設けられた一面側が前記載置部と相対するように前記爪部と前記載置部とで挟持されている請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記一対のコイル端子を保持する樹脂製のベース(10)を備え、
前記チップ素子は、前記ベースから離間した状態で前記一対のコイル端子に固定されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記一対のコイル端子それぞれの前記爪部は、前記チップ素子を挟んで互いに対向するように設けられ、
前記ベースは、前記一対のコイル端子それぞれの前記載置部の少なくとも一部が挿入される一対の挿入溝(10d、10f)が形成されており、
前記一対のコイル端子それぞれの前記載置部は、前記一対のコイル端子が互いに離れる方向に押圧されるように、前記一対の挿入溝に挿入されている請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記一対のコイル端子は、前記ベースに保持された保持部、前記保持部と前記載置部とを繋ぐ中間部(153、163)を有し、
前記中間部の長さは、前記保持部から前記爪部までの直線距離よりも大きくなっている請求項4または5に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記一対のコイル端子は、前記載置部および前記爪部が錫でメッキされ、
前記チップ素子は、前記一対のコイル端子との接触部分が錫でメッキされている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記チップ素子は、前記爪部によって前記一対のコイル端子に固定された状態で前記一対のコイル端子に半田付けされている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器として、チップダイオードやチップ抵抗器等のチップ素子をリードフレームによって固定するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、円筒形状の抵抗素子が脱着可能に接続部品に保持されているものもある(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-48525号公報
【文献】特開昭61-259427号公報
【文献】実開昭57-87448号公報
【文献】実開平2-113252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2の如く、リードフレームによってチップ素子を固定する構造とすると、部品点数の増加が避けられない。また、特許文献3、4の如く、接続部品によってチップ素子を脱着可能に保持する構造とすると、チップ抵抗の接続部品の複雑化が避けられない。部品点数の増加、チップ素子の接続部品の複雑化は、製造コストの増加を招く要因となることから望ましくない。
【0005】
本開示は、部品点数を抑えつつ、簡素な構造でチップ素子を固定可能な電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電磁継電器であって、通電時に電磁力を発生する電磁コイル(14)と、電磁コイルに電気的に接続された一対のコイル端子(15、16)と、一対のコイル端子に電気的に接続されるチップ素子(30)と、を備える。一対のコイル端子それぞれは、チップ素子と接触する載置部(154、164)、載置部に立設された爪部(155、165)を有する。チップ素子は、チップ素子に接するように塑性変形された爪部によって一対のコイル端子に固定される。
【0007】
これによると、既存の部品である一対のコイル端子に設けた爪部によって一対のコイル端子に対してチップ素子を固定する構造になる。加えて、爪部を塑性変形させることでチップ素子を固定すれば、チップ素子を脱着可能とする接続構造に比べて、簡素な構造でチップ素子を固定することができる。
【0008】
したがって、本開示によれば、部品点数を抑えつつ、簡素な構造でチップ抵抗を固定可能な電磁継電器を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、チップ素子が爪部と載置部とで挟持されている。このように、載置部と爪部とでチップ素子を挟持する構造とすれば、チップ素子が一対のコイル端子に対して強固に固定されるので、チップ素子の接続の信頼性を確保することができる。
【0010】
また、載置部と爪部とでチップ素子を挟持する構造は、載置部に近づく方向(例えば、上下方向)に治具を変位させる際に爪部を塑性変形させることによって実現可能である。すなわち、載置部と爪部とでチップ素子を挟持する構造は、設備コストが少なく、且つ、加工時間が短いカシメ加工によって実現することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、チップ素子は、基板(31)の一面に抵抗体(32)が設けられた角型のチップ抵抗器であり、基板のうち抵抗体が設けられた一面側が載置部と相対するように爪部と載置部とで挟持されている。
【0012】
ここで、爪部を塑性変形させてチップ素子を固定する際には、チップ素子のうち爪部が相対する面に押圧力が加わる。この押圧力が抵抗体に作用すると、抵抗体の抵抗値に影響が出ることから好ましくない。
【0013】
これに対して、基板のうち抵抗体が設けられた一面側が載置部と相対するようにチップ素子が配置されていれば、チップ素子を固定する押圧力が抵抗体に作用し難くなる。このため、チップ素子を保護しつつ、載置部と爪部とでチップ素子を強固に固定することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、一対のコイル端子を保持する樹脂製のベース(10)を備える。チップ素子は、ベースから離間した状態で一対のコイル端子に固定されている。このように、チップ素子をベースから離間した状態で固定する構造とすれば、チップ素子の発熱によるベースの溶損を防止できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、一対のコイル端子それぞれの爪部は、チップ素子を挟んで互いに対向するように設けられている。ベースは、一対のコイル端子それぞれの載置部の少なくとも一部が挿入される一対の挿入溝(10d、10f)が形成されている。一対のコイル端子それぞれの載置部は、一対のコイル端子が互いに離れる方向に押圧されるように、一対の挿入溝に挿入されている。
【0016】
このような構造によれば、樹脂のクリープ現象によってベースにおける一対の挿入溝の間の部位が収縮すると、一対のコイル端子に作用する押圧力が減少し、一対のコイル端子それぞれの載置部が互いに近付く方向に変位する。この際、一対のコイル端子それぞれの爪部の間隔が狭まるので、爪部によるチップ素子の固定状態を維持させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、一対のコイル端子は、ベースに保持された保持部、保持部と載置部とを繋ぐ中間部(153、163)を有する。中間部の長さは、保持部から爪部までの直線距離よりも大きくなっている。これによると、一対のコイル端子の保持部に何らかの力が作用しても、その力が爪部にまで伝わり難くなる。このことは、チップ素子の接続の信頼性を確保に寄与する。
【0018】
請求項7に記載の発明は、一対のコイル端子の載置部および爪部が錫でメッキされ、チップ素子のうち一対のコイル端子との接触部分が錫でメッキされている。これによると、チップ素子と一対のコイル端子とが錫のメッキを介して接続されるので、チップ素子の接続の信頼性を確保することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、チップ素子は、爪部によって一対のコイル端子に固定された状態で一対のコイル端子に半田付けされている。これによると、チップレジスタが各爪部によって適正な位置および姿勢に規定された状態で半田付けすることができるので、チップ素子の接続の信頼性を向上させることができる。
【0020】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の電磁継電器の全体構成を示す模式的な断面図である。
【
図2】各コイル端子およびチップレジスタが取り付けられたベースの模式的な上面図である。
【
図7】各コイル端子の載置部にチップレジスタを載せた状態を説明するための説明図である。
【
図8】各コイル端子の爪部でチップレジスタを固定した状態を説明するための説明図である。
【
図9】チップレジスタの固定構造を説明するための説明図である。
【
図10】第2実施形態の電磁継電器におけるチップレジスタの固定構造を説明するための説明図である。
【
図11】チップレジスタの半田付けを説明するための説明図である。
【
図12】第3実施形態の電磁継電器において、各コイル端子の載置部にチップレジスタを載せた状態を説明するための説明図である。
【
図13】第3実施形態の電磁継電器において、各コイル端子の爪部でチップレジスタを固定した状態を説明するための説明図である。
【
図14】第3実施形態の変形例となる電磁継電器において、各コイル端子の載置部にチップレジスタを載せた状態を説明するための説明図である。
【
図15】第3実施形態の変形例となる電磁継電器において、各コイル端子の爪部でチップレジスタを固定した状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。
図1は、本実施形態の電磁継電器1の全体構成を示す模式的な断面図である。電磁継電器1は、例えば、車載用のプラグインリレーに用いられる。
【0024】
図1に示すように、電磁継電器1は、ベース10およびケース11を備える。電磁継電器1は、ベース10およびケース11によって外殻となる筐体が構成される。ベース10は、樹脂製の板形状の部材である。ケース11は、樹脂製の有底筒形状の部材であって、ベース10に対して嵌合可能に構成されている。
【0025】
電磁継電器1は、固定接点保持部材12、固定接点13、可動板バネ20、可動接点21、電磁コイル14等を収容する収容空間10aがベース10およびケース11によって形成されている。
【0026】
ベース10には、L字形状のメーク端子121が圧入によって固定されている。メーク端子121は、導電性を有する金属製の部材である。メーク端子121は、一端側が収容空間10aに位置し、他端側が外部空間に位置するように、ベース10を貫通している。メーク端子121の他端側は、図示しない外部ハーネスが接続される。
【0027】
メーク端子121の一端側は、固定接点保持部材12が固定されている。固定接点保持部材12は、導電性を有する金属製の部材である。固定接点保持部材12は、導電性を有する金属製の固定接点13が固定されている。固定接点13は、固定接点保持部材12の一面に突出するように配置されている。
【0028】
電磁コイル14は、鍔付き円筒形状のスプール141と、スプール141の円筒部分の外周に巻かれたコイルワイヤ142とを有する。コイルワイヤ142には、ベース10を貫通する第1コイル端子15および第2コイル端子16を介して電力が供給されるようになっている。第1コイル端子15および第2コイル端子16の詳細は後述する。
【0029】
ヨーク17は、電磁コイル14により誘起された磁束の磁路を形成する部材である。ヨーク17は、金属製の磁性体であり、U字形状に曲げられている。
【0030】
ヨーク17は、収容空間10aに位置する本体部171、本体部171に連なる2本の脚部172、脚部172に連なるとともに外部空間に突き出るコモン端子173を有する。2本の脚部172は、ベース10に形成される空気通路101に圧入されている。ヨーク17は、2本の脚部172が空気通路101に圧入されることでベース10に固定される。
【0031】
スプール141の円筒部分の内側には、固定鉄心18が配置されている。固定鉄心18は、金属製の磁性体であり、ヨーク17に固定されている。電磁コイル14は、ヨーク17と固定鉄心18とで挟持されている。
【0032】
固定鉄心18とベース10との間には、可動鉄片19が配置されている。可動鉄片19は、金属製の磁性体である。可動鉄片19は、電磁コイル14への通電時に固定鉄心18側に吸引される。
【0033】
可動鉄片19は、略L字形状に曲折された薄板の可動板バネ20を介してヨーク17に連結されている。可動板バネ20は、導電性を有する金属製の可動接点21が固定されている。可動接点21は、固定接点13と対向するように配置されている。可動接点21は、固定接点13側に向けて突き出るように可動板バネ20に固定されている。可動接点21は、可動板バネ20を介してヨーク17のコモン端子173と電気的に接続されている。可動板バネ20は、可動鉄片19が固定鉄心18から離れる向きの弾性力を可動鉄片19に作用させる。換言すれば、可動板バネ20は、可動接点21が固定接点13から離れる向きの弾性力を可動鉄片19に作用させる。
【0034】
上記構成になる電磁継電器1は、電磁コイル14に通電されると、その電磁力により可動鉄片19が固定鉄心18側に吸引され、可動接点21が固定接点13に当接して電気回路が閉じられる。一方、電磁コイル14への通電が遮断されると、可動板バネ20の弾性力により可動接点21が固定接点13から離され、電気回路が開かれる。
【0035】
次に、第1コイル端子15および第2コイル端子16の詳細について
図2~
図5を参照しつつ説明する。第1コイル端子15および第2コイル端子16は、電磁コイル14に電気的に接続されたL字形状のコイル端子である。第1コイル端子15および第2コイル端子16は、導電性を有する金属製の部材である。本実施形態では、第1コイル端子15および第2コイル端子16が一対のコイル端子を構成している。
【0036】
図2、
図3、
図4に示すように、第1コイル端子15および第2コイル端子16は、一端側が収容空間10aに位置し、他端側が外部空間に位置するように、ベース10を貫通している。
【0037】
第1コイル端子15は、外部空間側に位置する第1外側端部151、ベース10に保持される第1保持部152、および収容空間10a側に位置する第1内側端部153を有している。
【0038】
第1外側端部151は、図示しないコネクタ端子に接続される部位である。第1外側端部151は、外部空間側に向けて突き出ている。本実施形態の第1外側端部151は、ベース10の外表面10bに対して略直交する方向に延びている。
【0039】
第1保持部152は、第1コイル端子15のうちベース10を貫通する部位であり、第1外側端部151の根元部分に連なっている。第1保持部152には、第1コイル端子15をベース10に圧入固定させるための凸部152aが形成されている。
【0040】
第1内側端部153は、電磁コイル14に接続される部位である。第1内側端部153は、ベース10の内表面10cに沿って延びている。第1内側端部153は、一端側が第1保持部152に接続され、他端側に後述のチップレジスタ30を載置する第1載置部154が形成されている。第1内側端部153は、第1保持部152と第1載置部154とを繋ぐ中間部を構成する。
【0041】
第1内側端部153は、ベース10の内表面10cに形成された第1挿入溝10dに挿入されている。第1挿入溝10dは、第1内側端部153の略全体を挿入可能なように第1内側端部153の外形状に対応する溝形状を有している。
【0042】
図2に示すように、第1内側端部153は、Z字形状に曲がっている。第1内側端部153は、同じ方向に延びる第1根元部153aおよび第1先端部153bと、第1根元部153aおよび第1先端部153bと交差する方向に延びるとともに第1根元部153aおよび第1先端部153bを接続する第1接続部153cとを有する。具体的には、第1内側端部153は、第1根元部153aおよび第1先端部153bが互いに平行となり、且つ、第1根元部153aおよび第1先端部153bが第1接続部153cと直交する位置関係になっている。本実施形態の第1内側端部153は、第1根元部153aに比べて第1先端部153bの方が第2コイル端子16に近づくように、第1接続部153cが第2コイル端子16に向かって延びている。
【0043】
第1内側端部153の長さL1は、第1根元部153a、第1先端部153b、および第1接続部153cそれぞれの長さを足し合わせた長さとなる。これにより、第1内側端部153の長さL1は、第1保持部152から第1載置部154に設けられた爪部155までの直線距離LD1よりも大きくなっている。
【0044】
第1コイル端子15には、第1内側端部153の第1先端部153bに、チップレジスタ30と接触する第1載置部154および第1載置部154に立設された第1爪部155が設けられている。
【0045】
第1載置部154は、第1内側端部153に連なる部位であって、第1挿入溝10dから外側に向けて突き出ている。第1載置部154は、第1挿入溝10dから突き出る部位にチップレジスタ30を載せる第1載置面154aが形成されている。この載置面154aは、チップレジスタ30を安定して載せることが可能なように平坦になっている。
【0046】
第1載置部154は、第1挿入溝10dの内側面と対向する部位に第1突起部154bが設けられている。第1載置部154は、第1突起部154bが設けられていることで、第1載置部154の幅が第1挿入溝10dの溝幅よりも大きくなっている。これにより、第1載置部154を第1挿入溝10dに挿入すると、第1載置部154は、
図5に示すように、第1突起部154bが第1挿入溝10dの内側面と接することで、各コイル端子15、16が互いに離れる方向Fa1に押圧される。第1挿入溝10dの内側面には、第1突起部154bを係止させる第1係止溝10eが形成されている。
【0047】
第1爪部155は、第1載置面154aの外側に立設されている。第1爪部155は、チップレジスタ30を固定するための部位である。第1爪部155は、チップレジスタ30の外形状に沿って塑性変形されている。
【0048】
第2コイル端子16は、第1コイル端子15と概ね同様に構成されている。第2コイル端子16は、外部空間側に位置する第2外側端部161、ベース10に保持される第2保持部162、および収容空間10a側に位置する第2内側端部163を有している。
【0049】
第2外側端部161は、第1外側端部151と同様に、図示しないコネクタ端子に接続される部位である。第2外側端部161は、第1外側端部151と同様に、ベース10の外表面10bに対して略直交する方向に延びている。
【0050】
第2保持部162は、第2コイル端子16のうちベース10を貫通する部位であり、第2外側端部161の根元部分に連なっている。第2保持部162には、第1保持部152と同様に、第2コイル端子16をベース10に圧入固定させるための凸部162aが形成されている。
【0051】
第2内側端部163は、電磁コイル14に接続される部位である。第2内側端部163は、ベース10の内表面10cに沿って延びている。第2内側端部163は、一端側が第2保持部162に接続され、他端側に後述のチップレジスタ30を載置する第2載置部164が形成されている。第2内側端部163は、第2保持部162と第2載置部164とを繋ぐ中間部を構成する。
【0052】
第2内側端部163は、ベース10の内表面10cに形成された第2挿入溝10fに挿入されている。第2挿入溝10fは、第2内側端部163の略全体を挿入可能なように第2内側端部163の外形状に対応する溝形状を有している。
【0053】
第2内側端部163は、第1内側端部153と同様に、Z字形状に曲がっている。第2内側端部163は、同じ方向に延びる第2根元部163aおよび第2先端部163bと、第2根元部163aおよび第2先端部163bと交差する方向に延びるとともに第2根元部163aおよび第2先端部163bを接続する第2接続部163cとを有する。第2内側端部163は、第2根元部163aに比べて第2先端部163bの方が第1コイル端子15に近づくように、第2接続部163cが第1コイル端子15に向かって延びている。第2内側端部163の長さL2は、第2保持部162から第2載置部164に設けられた第2爪部165までの直線距離LD2よりも大きくなっている。
【0054】
第2コイル端子16には、第2内側端部163の第2先端部163bに、チップレジスタ30と接触する第2載置部164および第2載置部164に立設された第2爪部165が設けられている。
【0055】
第2載置部164は、第1載置部154と同様に、チップレジスタ30を載せる第2載置面164aが形成されるとともに、第2挿入溝10fの内側面と対向する部位に第2突起部164bが設けられている。第2載置部164は、第2突起部164bが設けられていることで、第2載置部164の幅が第2挿入溝10fの溝幅よりも大きくなっている。これにより、第2載置部164を第2挿入溝10fに挿入すると、第2載置部164は、
図5に示すように、各コイル端子15、16が互いに離れる方向Fa2に押圧される。第2挿入溝10fの内側面には、第2突起部164bを係止させる第2係止溝10gが形成されている。
【0056】
第2爪部165は、第2載置面164aの外側に立設されている。第2爪部165は、チップレジスタ30を固定するための部位である。第2爪部165は、チップレジスタ30の外形状に沿って塑性変形されている。
【0057】
チップレジスタ30は、電磁コイル14の逆起電圧を吸収するためのチップ素子である。チップレジスタ30は、各コイル端子15、16を介して電磁コイル14に並列に接続されている。
【0058】
図6、
図7、
図8に示すように、チップレジスタ30は、基板31の一面に抵抗体32が設けられた角型のチップ抵抗器で構成されている。チップレジスタ30は、セラミック製の基板31、基板31の一面に形成された抵抗体32、一対の電極33、34、抵抗体32を保護する保護膜35、チップ側メッキ部36を有している。
【0059】
一対の電極33、34は、抵抗体32の両端に設けられている。一対の電極33、34は、各コイル端子15、16との接触部分であって、錫でメッキされている。すなわち、一対の電極33、34は、錫から成るチップ側メッキ部36によって覆われている。
【0060】
このように構成されるチップレジスタ30は、
図7に示すように、基板31のうち抵抗体32が設けられた一面側が各載置部154、164と相対する姿勢で各載置面154a、164aに載せられる。この状態で、各爪部155、165がチップレジスタ30の外形状に沿って塑性変形させると、チップレジスタ30は、
図8に示すように、各爪部155、165と各載置部154、164とで挟持される。
【0061】
各爪部155、165の曲げ加工は、
図9に示すように、各爪部155、165の曲げ形状に対応して湾曲する押圧面51を有するカシメ治具50を用いて行う。具体的には、曲げ加工では、カシメ治具50を各爪部155、165に近づく方向に変位させ、押圧面51で各爪部155、165を押圧することで各爪部155、165を塑性変形させた後、カシメ治具50を各爪部155、165から離れる方向に変位させる。
【0062】
このような曲げ加工によって、チップレジスタ30は、
図8に示すように、各載置部154、164側からの押圧力Fbおよび各爪部155、165からの押圧力Fcが作用する。これにより、チップレジスタ30は、各爪部155、165と各載置部154、164とで挟持される。このような曲げ加工は、カシメ治具50を所定の一方向に変位させることだけで完了するので、簡素な設備によって短時間で実施可能である。
【0063】
各爪部155、165は、曲げ加工によって、チップレジスタ30における各爪部155、165が接する表面に対して傾斜した姿勢になる。このため、各爪部155、165からの押圧力Fcは、チップレジスタ30における各爪部155、165が接する表面の法線方向に対して45°程度傾いた方向に作用する。
【0064】
ここで、チップレジスタ30は、ベース10から離間した状態で各コイル端子15、16に固定されている。本実施形態の各載置部154、164は、ベース10の内表面10cとチップレジスタ30との間に空隙が形成されるように、各載置面154a、164aがベース10の内表面10cよりも高い位置に設定されている。
【0065】
また、各コイル端子15、16は、少なくとも各載置部154、164および各爪部155、165の表面が錫でメッキされている。すなわち、少なくとも各載置部154、164および各爪部155、165は、黄銅等の金属材料で構成される基材Bが基材Bよりも酸化し難い錫のメッキMによって覆われている。
【0066】
以上説明した電磁継電器1は、チップレジスタ30がチップレジスタ30に接するように塑性変形された各爪部155、165によって各コイル端子15、16に固定されている。これによると、既存の部品である各コイル端子15、16に設けた各爪部155、165によって各コイル端子15、16に対してチップレジスタ30を固定する構造になる。加えて、各爪部155、165を塑性変形させることでチップレジスタ30を固定すれば、チップレジスタ30を脱着可能とする接続構造に比べて、簡素な構造でチップレジスタ30を恒久的に固定することができる。
【0067】
具体的には、チップレジスタ30は、各爪部155、165と各載置部154、164とで挟持されている。これによれば、チップレジスタ30が各コイル端子15、16に対して強固に固定されるので、チップレジスタ30の接続の信頼性を確保することができる。
【0068】
また、各載置部154、164と各爪部155、165とでチップレジスタ30を挟持する構造は、各載置部154、164に近づく方向(例えば、上下方向)にカシメ治具50を変位させる際に各爪部155、165を塑性変形させることによって実現可能である。すなわち、各載置部154、164と各爪部155、165とでチップレジスタ30を挟持する構造は、設備コストが少なく、且つ、加工時間が短いカシメ加工によって実現することができる。
【0069】
また、チップレジスタ30は、角型のチップ抵抗器であり、基板31のうち抵抗体32が設けられた一面側が各載置部154、164と相対するように各爪部155、165と各載置部154、164とで挟持されている。これによれば、チップレジスタ30を固定する押圧力が抵抗体32に作用し難くなるので、チップレジスタ30を保護しつつ、各載置部154、164と各爪部155、165とでチップレジスタ30を強固に固定することができる。
【0070】
さらに、チップレジスタ30は、ベース10から離間した状態で各コイル端子15、16に固定されている。このように、チップレジスタ30をベース10から離間した状態で固定する構造とすれば、チップレジスタ30の抵抗体32の発熱によるベース10の溶損を防止できる。
【0071】
ここで、各載置部154、164は、各コイル端子15、16が互いに離れる方向に押圧されるように、ベース10に形成された各挿入溝10d、10fに挿入されている。このような構造によれば、樹脂のクリープ現象によってベース10における各挿入溝10d、10fの間の溝間部位10hが収縮すると、各コイル端子15、16に作用する押圧力が減少し、各載置部154、164が互いに近付く方向に変位する。この際、各爪部155、165の間隔が狭まるので、各爪部155、165によるチップレジスタ30の固定状態を維持させることができる。
【0072】
また、各コイル端子15、16は、各内側端部153、163の長さL1、L2が、各保持部152、162から各爪部155、165までの直線距離LD1、LD2よりも大きくなっている。これによると、各保持部152、162に何らかの力が作用しても、その力が各爪部155、165にまで伝わり難くなる。このことは、チップレジスタ30の接続の信頼性を確保に寄与する。なお、各保持部152、162には、例えば、各コイル端子15、16をコネクタへの挿抜時に様々な方向から力が作用する。
【0073】
さらに、電磁継電器1は、各コイル端子15、16の各載置部154、164および各爪部155、165が錫でメッキされ、チップレジスタ30の各コイル端子15、16との接触部分が錫でメッキされている。これによると、チップレジスタ30と各コイル端子15、16とが錫のメッキを介して接続されるので、チップレジスタ30の接続の信頼性を確保することができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図10、
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0075】
本実施形態の電磁継電器1は、チップレジスタ30が各爪部155、165によって各コイル端子15、16に固定された状態で各コイル端子15、16に半田付けされている。具体的には、チップレジスタ30は、
図10に示すように、一対の電極33、34を囲む半田Sによって各コイル端子15、16に接合されている。半田Sは、半田ペーストや糸半田等が使用される。
【0076】
半田付けは、レーザ半田付け工法によって実施可能である。半田付けは、
図11に示すように、チップレジスタ30の一対の電極33、34を囲む半田Sをレーザ光による局所リフローよって同時に加熱することが望ましい。サークルタイムの短縮化、およびチップレジスタ30の姿勢を安定化させることができるからである。また、半田付けを実施する際には、加熱温度を徐々に上げることが望ましい。半田S、フラックスの飛散を抑制できるからである。
【0077】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の電磁継電器1は、第1実施形態の共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0078】
本実施形態の電磁継電器1は、チップレジスタ30が各爪部155、165によって各コイル端子15、16に固定された状態で各コイル端子15、16に半田付けされている。これによると、チップレジスタ30が各爪部155、165によって適正な位置および姿勢に規定された状態で半田付けすることができるので、チップレジスタ30の接続の信頼性を向上させることができる。
【0079】
特に、電磁継電器1は、各コイル端子15、16の各載置部154、164および各爪部155、165が錫でメッキされ、チップレジスタ30の各コイル端子15、16との接触部分が錫でメッキされている。このため、半田Sの濡れ性が良くなるので、チップレジスタ30の接続の信頼性を充分に確保することができる。
【0080】
(第2実施形態の変形例)
半田付けは、レーザ半田付け工法に限らず、例えば、ハロゲンランプを使用した光ビーム工法によって実施されていてもよい。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図12、
図13を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0082】
第1実施形態で説明した電磁継電器1は、各爪部155、165からの押圧力Fcが、チップレジスタ30表面の法線方向に45°程度傾いた方向に作用する。このような構造では、例えば、ベース10のうち、各挿入溝10d、10fの間に位置する溝間部位10hが幅方向に拡がるように変形すると、チップレジスタ30の保持力が低下してしまう。
【0083】
これらを加味し、各コイル端子15、16は、各爪部155、165からの押圧力Fcが、チップレジスタ30における各爪部155、165が接する表面の法線方向に作用するように構成されている。
【0084】
具体的には、各コイル端子15、16は、
図12に示すように、各爪部155、165に対して、内側面にV字形状のノッチ156、166が形成されている。ノッチ156、166は、各爪部155、165の内側面のうち、チップレジスタ30の上面と同等の位置またはチップレジスタ30の上面よりも高い位置に形成されている。なお、各爪部155、165の内側面は、各爪部155、165において互いに対向する側面である。
【0085】
そして、チップレジスタ30は、
図13に示すように、ノッチ156、166を起点に90°以上曲折するように塑性変形された各爪部155、165によって各コイル端子15、16に固定されている。
【0086】
このように構成される電磁継電器1は、各爪部155、165からの押圧力Fcが、チップレジスタ30における各爪部155、165が接する表面の法線方向に作用する。このため、例えば、ベース10の溝間部位10hが幅方向に拡がるように変形しても、チップレジスタ30の保持力の低下を抑制することができる。
【0087】
(第3実施形態の変形例)
各爪部155、165は、
図14に示すように、ノッチ156、166よりも先端側が根元側に比べて幅(すなわち、厚み)が大きくなっていてもよい。これによると、
図15に示すように、ノッチ156、166を起点に45°程度曲折するように塑性変形された各爪部155、165によってチップレジスタ30を各コイル端子15、16に固定することができる。このような構造によっても、各爪部155、165からの押圧力Fcが、チップレジスタ30における各爪部155、165が接する表面の法線方向に作用する。このため、ベース10の溝間部位10hが幅方向に拡がるように変形しても、チップレジスタ30の保持力の低下を抑制することができる。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0089】
上述の実施形態では、チップレジスタ30が、各爪部155、165と各載置部154、164とで挟持されているものを例示したが、これに限らず、例えば、各爪部155、165だけで固定されていてもよい。
【0090】
上述の実施形態では、抵抗体32が設けられた一面側が各載置部154、164に相対する姿勢でチップレジスタ30を各コイル端子15、16に固定したものを例示したが、電磁継電器1は、これに限定されない。電磁継電器1は、例えば、抵抗体32が設けられた一面側が各爪部155、165に相対する姿勢でチップレジスタ30が各コイル端子15、16に固定されていてもよい。
【0091】
上述の実施形態では、チップレジスタ30がベース10から離間した状態で各コイル端子15、16に固定されているものを例示したが、これに限らず、チップレジスタ30がベース10に接触していてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、チップレジスタ30が各コイル端子15、16に固定されるものを例示したが、これに限らず、チップレジスタ30以外のチップ素子(例えば、チップダイオード)が、各コイル端子15、16に固定されていてもよい。
【0093】
上述の実施形態では、各コイル端子15、16が互いに離れる方向に押圧されるように各載置部154、164が各挿入溝10d、10fに挿入されているものを例示したが、各コイル端子15、16は、これに限定されない。各コイル端子15、16は、隙間がある状態で各載置部154、164が各挿入溝10d、10fに挿入されていてもよい。
【0094】
上述の実施形態では、各内側端部153、163の長さが、各保持部152、162から各爪部155、165までの直線距離よりも大きくなっているものを例示したが、各コイル端子15、16は、これに限定されない。各コイル端子15、16は、各内側端部153、163の長さが、各保持部152、162から各爪部155、165までの直線距離と同等になっていてもよい。
【0095】
上述の実施形態では、各コイル端子15、16およびチップレジスタ30の接触部分が錫でメッキされているものを例示したが、電磁継電器1は、これに限定されない。電磁継電器1は、各コイル端子15、16およびチップレジスタ30の接触部分が錫以外の金属でメッキされていたり、メッキ処理がなされてなかったりしてもよい。
【0096】
上述の実施形態では、本開示の電磁継電器1を車載用のプラグインリレーに用いる旨を説明したが、電磁継電器1は、これに限定されず、車載用のプラグインリレー以外の他のリレーに用いられていてもよい。
【0097】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0098】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0099】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0100】
1 電磁継電器
14 電磁コイル
15 第1コイル端子
154 第1載置部
155 第1爪部
16 第2コイル端子
164 第2載置部
165 第2爪部
30 チップレジスタ(チップ素子)