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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】調光シート及び調光シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1343 20060101AFI20220809BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220809BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/13 505
G02F1/1333 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191232
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080200
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2021-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】大西 隆志
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0023522(KR,A)
【文献】特開平05-173159(JP,A)
【文献】中国実用新案第210666261(CN,U)
【文献】国際公開第2010/100807(WO,A1)
【文献】特開2017-009995(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1343
G02F 1/13
G02F 1/1333
G02F 1/155
G02F 1/1676
G02F 1/169
G02F 1/17
G02F 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明電極層と、
第2透明電極層と、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、空隙を有する透明高分子、前記空隙を埋める液晶組成物、及びスペーサを含む調光層と、
前記第1透明電極層に対して前記調光層とは反対側に位置する第1透明支持層であって前記第1透明電極層を支持する支持面を備えた前記第1透明支持層と、
前記第2透明電極層に対して前記調光層とは反対側に位置する第2透明支持層と、を備え、
前記第1透明電極層は、第1電極要素と第2電極要素とを含み、
前記第1電極要素と前記第2電極要素とは、前記支持面に沿って並ぶ別々の層状体であり、かつ、前記支持面に沿って延びる溝によって相互に電気的に絶縁され、
前記溝の深さ方向は、前記第1透明電極層の厚さ方向であり、
前記溝は、前記第1透明電極層の前記調光層側の面に開口部を備えるとともに、前記第1透明電極層の厚さよりも大きく且つ前記第1透明電極層の厚さ及び前記第1透明支持層の厚さの和よりも小さい深さを有し、
前記溝は、前記調光層内に分散した前記スペーサの直径よりも小さい幅を有し、
前記溝の少なくとも一部であって前記第1透明電極層内に延在する部分及び前記第1透明支持層内に延在する部分に、前記調光層を構成する調光材の一部が充填された
調光シート。
【請求項2】
前記溝への前記調光材の充填率が80%以上である
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記溝は前記第2電極要素を囲む閉じた枠線状の形状を有する
請求項1又は2に記載の調光シート。
【請求項4】
第1透明支持層及び前記第1透明支持層に支持された第1透明電極層を含む積層体に、前記第1透明電極層側から、前記第1透明電極層及び前記第1透明支持層に切り込みを入れて、前記第1透明電極層の厚さよりも大きく、且つ前記第1透明電極層の厚さ及び前記第1透明支持層の厚さの和よりも小さい深さを有する溝を形成し、前記第1透明電極層内に前記溝によって形成された第1電極要素と第2電極要素とを形成する工程と、
前記溝が形成された前記積層体と、第2透明支持層及び前記第2透明支持層に支持された第2透明電極層を含む積層体との間に、空隙を有する透明高分子、前記空隙を埋める液晶組成物及びスペーサを含む調光層を設ける工程と、を有し、
前記第1電極要素と前記第2電極要素とを形成する工程では、前記調光層内に分散する前記スペーサの直径よりも小さい幅を有する前記溝を形成し、
前記調光層を設ける工程では、1対の前記積層体の間に前記調光層を挟んだ状態で圧力を加えることによって、前記溝の少なくとも一部であって前記第1透明電極層内に延在する部分及び前記第1透明支持層内に延在する部分に、前記調光層を構成する調光材の一部を充填する
調光シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過率の可変な調光シート及び調光シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備えている。一対の透明電極層間には、駆動電圧が印加される。透明電極層間の電位差に応じて液晶分子の配向状態が変わることにより、調光シートの光透過率が変わる。例えば、液晶分子の長軸方向が調光層の厚さ方向に沿う状態であるとき、調光シートは無色透明であり、調光シートの光透過率は高い。また、液晶分子の長軸方向が調光層の厚さ方向と交差する状態であるとき、調光層内で光が散乱し、調光シートの光透過率は低い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-45135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光シートは、例えば、建物の窓ガラス、パーティション等の建材、又は車両の窓ガラス等に貼り付けられて、空間を仕切る部材の一部として利用される。近年では調光シートの付加価値を高めるため、調光シートの意匠性が着目されている。調光シートにおける意匠性の向上は、調光シートの適用範囲を大きく拡張させ得ると共に、調光される空間に新たな需要を創出し得る。このため、意匠性を高めた調光シートの開発が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する調光シートは、第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置する調光層と、前記第1透明電極層に対して前記調光層とは反対側に位置する第1透明支持層であって前記第1透明電極層を支持する支持面を備えた前記第1透明支持層と、前記第2透明電極層に対して前記調光層とは反対側に位置する第2透明支持層と、を備え、前記第1透明電極層は、第1電極要素と第2電極要素とを含み、前記第1電極要素と前記第2電極要素とは、前記支持面に沿って並ぶ別々の層状体であり、かつ、前記支持面に沿って延びる溝によって相互に電気的に絶縁され、前記溝の深さ方向は、前記第1透明電極層の厚さ方向であり、前記溝は、前記第1透明電極層を貫通し前記第1透明支持層を貫通しない深さを有する。
【0006】
上記構成によれば、第1電極要素と第2電極要素との一方のみに電圧信号を印加する、あるいは、第1電極要素と第2電極要素とに互いに異なる電圧信号を印加することによって、調光シートにおける第1電極要素が位置する領域と第2電極要素が位置する領域との光透過率を変えることができる。したがって、第1電極要素と第2電極要素との両方に電圧信号を印加せず、これらの電極要素の位置する領域の光透過率に差がない状態と、上述のように各電極要素の位置する領域の光透過率に差がある状態との切替が可能となるため、調光シートの意匠性の向上が可能である。そして、溝は、第1透明電極層を貫通し第1透明電極層を貫通しない深さを有するため、第1透明支持層の中で支持面とは反対側の面では溝による光の散乱が抑えられる。結果として、少なくとも上記の反対側の面と対向する位置から調光シートを第1透明電極層側からみたときに溝を目立たなくすることができる。このため、調光シートの美観を向上することができる。
【0007】
上記調光シートについて、前記溝は、前記第1透明電極層の前記調光層側の面に開口部を備え、前記溝の少なくとも一部には前記調光層を構成する調光材の一部が充填されることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、溝の少なくとも一部に調光材の一部が充填されることにより、調光シートを第1透明支持層側又は第2透明支持層側から見たときに、溝を視認しにくくすることができる。
【0009】
上記調光シートについて、前記溝への前記調光材の充填率が80%以上であることが好ましい。
上記構成によれば、溝への調光材の充填率を80%以上とすることにより、溝をより視認しにくくすることができる。
【0010】
上記調光シートについて、前記調光層にはスペーサが設けられ、前記溝の幅は、前記スペーサの直径よりも小さいことが好ましい。
上記構成によれば、溝にスペーサが入り込むことを抑制することができる。このため、溝への調光層の充填が、溝に入ったスペーサにより妨げられにくい。
【0011】
上記調光シートについて、前記溝は、前記第1透明電極層の前記調光層側の面に開口部を備え、前記溝の前記開口部の周りに存在するバリの高さが、前記調光層の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1透明電極層に形成されたバリの先端が、調光層を介して第2透明電極層に接触するのを防ぐことができる。このため、第1透明電極層及び第2透明電極層の間で短絡が発生することを抑制することができる。
【0013】
上記調光シートについて、前記溝は前記第2電極要素を囲む閉じた枠線状の形状を有することが好ましい。
上記構成によれば、閉じた形状を有する溝によって第2電極要素を区画することができる。つまり、閉じた枠線状であれば第2電極要素を区画することができるため、第2電極要素のレイアウトの制約を少なくすることができる。
【0014】
上記課題を解決する調光シートの製造方法は、第1透明支持層及び前記第1透明支持層に支持された第1透明電極層とを含む積層体に、前記第1透明電極層側から、前記透明電極層及び前記透明支持層に切り込みを入れて、前記第1透明電極層を貫通し前記第1透明支持層を貫通しない深さを有する溝を形成し、前記第1透明電極層内に前記溝によって形成された第1電極要素と第2電極要素とを形成する工程と、前記溝が形成された前記積層体と、第2透明支持層及び前記第2透明支持層に支持された第2透明電極層とを含む積層体との間に調光層を設ける工程と、を有する。
【0015】
上記構成によれば、第1電極要素と第2電極要素との一方のみに電圧信号を印加する、あるいは、第1電極要素と第2電極要素とに互いに異なる電圧信号を印加することによって、調光シートにおける第1電極要素が位置する領域と第2電極要素が位置する領域との光透過率を変える調光シートを製造することができる。したがって、第1電極要素と第2電極要素との両方に電圧信号を印加せず、これらの電極要素の位置する領域の光透過率に差がない状態と、上述のように各電極要素の位置する領域の光透過率に差がある状態との切替が可能となるため、調光シートの意匠性の向上が可能である。そして、溝は、第1透明電極層側から切り込みを入れることによって形成するため、例えば、溝を、第1透明電極層のエッチング等により除去する工程を含む方法で形成するよりも簡便に形成することができる。また、溝は、第1透明電極層を貫通し第1透明電極層を貫通しない深さを有するため、調光シートを第1透明電極層側からみたときに溝を目立たなくすることができる。このため、調光シートの美観を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、調光シートの意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態におけるノーマル型の調光シートの正面図。
図2】同実施形態の調光シートの断面図。
図3】同実施形態の調光シートの断面図。
図4】同実施形態の調光シートの断面構造の拡大図。
図5】同実施形態の調光シートの断面構造を示すSEM写真。
図6】同実施形態の調光シートの製造方法に含まれる一工程を説明する模式図。
図7】同実施形態における非駆動状態の調光シートの正面図。
図8】変形例における駆動状態の調光シートの正面図。
図9】変形例における調光シートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図6を参照して、調光シート及び調光シート製造方法の一実施形態を説明する。本実施形態の調光シート10は、調光シート10に電圧信号が印加されていないときに駆動対象とする領域の入射光を散乱させて透光性を低下させ、調光シート10に電圧信号が印加されたときに透光性を上昇させるノーマルタイプである。
【0019】
[調光シートの構成]
図1が示すように、調光シート10は、第1面11Fと、第1面11Fとは反対側の面である第2面11Rとを有する。調光シート10は、駆動領域20と、非駆動領域21とを有する。
【0020】
駆動領域20は、調光シート10の駆動時に電圧信号が印加される電極要素である駆動電極要素30が位置する領域である。駆動電極要素30への電圧信号の印加状態に応じて、駆動領域20の光透過率は変わる。駆動電極要素30は、第1電極要素の一例である。
【0021】
非駆動領域21は、浮遊領域22と、浮遊領域22を囲む境界領域23とを含む。浮遊領域22は、調光シート10の駆動時に電圧信号が印加されない電極要素である浮遊電極要素31が位置する領域である。浮遊電極要素31は、第2電極要素の一例である。境界領域23は、駆動領域20と浮遊領域22との間に位置し、浮遊領域22を囲む閉じた枠線状を有する。境界領域23には、電極要素は位置しない。なお、図面においては、理解を容易にするために境界領域23の幅を誇張して示している。非駆動領域21の光透過率は、調光シート10の駆動時と非駆動時とで変化しない。
【0022】
非駆動領域21は、調光シート10に図柄を表示させる。図柄は、例えば、文字、数字、記号、図形、絵柄、模様等の1つ又はそれらの組み合わせである。なお、図1が示す調光シート10は、1つの星型の図形を示しているが、互いに離れた複数の非駆動領域21を有していてもよい。つまり、調光シート10は、閉じた領域を形成する境界領域23を複数備えていてもよい。
【0023】
接続領域24は、駆動領域20に電圧信号を印加するための領域であり、外部配線25が接続される。接続領域24と駆動領域20とは互いに隣り合う。接続領域24が設けられる位置は特に限定されない。接続領域24は、例えば、調光シート10の隅部に位置する。
【0024】
図2は、図1におけるII-II線に沿った断面図であり、すなわち、駆動領域20及び接続領域24での調光シート10の断面構造を示す。なお、図2における各層の厚さの比は、説明のため便宜的に示すものであり、図2に示す厚さの比に限定されない。
【0025】
図2が示すように、調光シート10は、調光層11、第1透明電極層12A、第2透明電極層12B、第1透明支持層13A、及び、第2透明支持層13Bを有する。調光層11は、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとに挟まれている。第1透明支持層13Aは、第1透明電極層12Aに対して調光層11と反対側の支持面130で第1透明電極層12Aを支持し、第2透明支持層13Bは、第2透明電極層12Bに対して調光層11と反対側で第2透明電極層12Bを支持する。なお、調光層11は、単層構造でもよいし多層構造でもよい。多層構造の調光層11は、調光機能を有する機能層と、機能層と第1透明電極層12Aとの間、機能層と第2透明電極層12Bとの間の密着性を高める薄層とを備えていてもよい。
【0026】
さらに、調光シート10は、保護層44を備えている。保護層44は、第1透明支持層13Aに対して第1透明電極層12Aと反対側に位置する。保護層44は、図示しない粘着層を介して第1透明支持層13Aに固定されている。
【0027】
調光シート10の第1面11Fは、保護層44における第1透明支持層13Aに向かい合う面とは反対側の面である。調光シート10の第2面11Rは、第2透明支持層13Bにおける第2透明電極層12Bに向かい合う面とは反対側の面である。第2面11Rは、図示しない粘着層を介して、ガラスや樹脂等からなる透明板に貼り付けられる。透明板は、例えば、住宅、店舗、駅、空港等の各種の建物が備える窓ガラス、オフィスに設置されたパーティション、店舗に設置されたショーウインドウ、車両や航空機等の移動体が備える窓ガラスやウインドシールドである。透明板の表面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0028】
接続領域24は、第1透明電極層12Aに電圧信号を印加するための外部配線25が接続される第1接続領域24Aと、第2透明電極層12Bに電圧信号を印加するための外部配線25が接続される第2接続領域24Bとを含む。
【0029】
第1接続領域24Aは、調光層11、第2透明電極層12B、及び第2透明支持層13Bが無く、第1透明電極層12Aが露出した領域である。第1接続領域24Aにおいて露出した第1透明電極層12Aに、第1端子部50Aが接続されている。すなわち、駆動領域20から第1接続領域24Aへは、駆動電極要素30が延びており、第1接続領域24Aでは、駆動電極要素30に第1端子部50Aが接続されている。
【0030】
第2接続領域24Bは、調光層11、第1透明電極層12A、及び第1透明支持層13A、及び保護層44が無く、第2透明電極層12Bが露出した領域である。第2接続領域24Bにおいて露出した第2透明電極層12Bに、第2端子部50Bが接続されている。すなわち、駆動領域20から第2接続領域24Bへは、駆動電極要素30が延びており、第2接続領域24Bでは、駆動電極要素30に第2端子部50Bが接続されている。
【0031】
第1端子部50Aと第2端子部50Bとの各々からは外部配線25が延び、これらの外部配線25は、制御部50に接続されている。制御部50は、第1端子部50Aを通じて、第1透明電極層12Aの駆動電極要素30に電圧信号を印加し、第2端子部50Bを通じて、第2透明電極層12Bに電圧信号を印加する。これにより、制御部50は、駆動領域20における第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間の電位差を制御する。第2透明電極層12Bは、例えば、グランド電位に制御される。調光シート10と制御部50とから、調光装置が構成される。
【0032】
調光層11は、透明高分子層と液晶組成物とを備えている。透明高分子層は、液晶組成物が充填される空隙を有している。液晶組成物は、透明高分子層が有する空隙に充填されている。液晶組成物は液晶分子を含む。液晶組成物の材料は公知のものを用いることができる。液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、及び、ジオキサン系から構成される群から選択されるいずれかである。なお、調光層11が単層構造である場合、調光層11は透明高分子層と液晶組成物とを備える機能層のみからなる。
【0033】
液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、及び、カプセル型のいずれかである。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した透明な高分子ネットワークを備え、相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子ネットワークは、透明高分子層の一例である。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を透明高分子層のなかに備え、高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を透明高分子層のなかに保持する。なお、液晶組成物は、上述した液晶分子以外に、透明高分子層を形成するためのモノマー、及び、二色性色素などを含んでもよい。
【0034】
第1透明電極層12A、及び第2透明電極層12Bの各々は、導電性を有し、可視領域の光に対して透明である。第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bの材料は公知のものを用いることができる。第1透明電極層12A、第2透明電極層12Bを形成するための材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)等である。
【0035】
第1透明支持層13A及び第2透明支持層13Bの各々は、可視領域の光に対して透明な基材である。第1透明支持層13A及び第2透明支持層13Bの材料は公知のものを用いることができる。第1透明支持層13A及び第2透明支持層13Bを形成するための材料の一例は、合成樹脂、または、無機化合物であってよい。合成樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等である。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等である。ポリアクリレートは、例えば、ポリメチルメタクリレート等である。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等である。
【0036】
第1端子部50A、及び、第2端子部50Bの各々は、例えば、導電性接着層と、配線基板とを備える。導電性接着層は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)、等方性導電フィルム(ICF:Isotropic Conductive Film)、等方性導電ペースト(ICP:Isotropic Conductive Paste)等から形成される。配線基板は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。
【0037】
あるいは、第1端子部50A、及び、第2端子部50Bの各々は、導電性テープ等の導電性材料と外部配線25とがはんだ付け等によって接合された構造を有していてもよい。
駆動領域20において、調光層11は、2つの透明電極層12A、12Bの間において生じる電圧の変化を受けて、液晶分子の配向を変える。液晶分子における配向の変化は、調光層11に入る可視光の散乱度合い、吸収度合い、及び、透過度合いを変える。具体的には、駆動領域20の第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bに電圧信号が印加されていないとき、液晶分子の長軸方向の向きは不規則である。そのため、調光層11に入射した光の散乱度合いは大きくなり、駆動領域20は濁って見える。すなわち、調光層11に電圧信号が印加されていないとき、駆動領域20は不透明である。一方、透明電極層12A、12Bに電圧信号が印加され、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間に所定値以上の電位差が生じると、液晶分子が配向され、液晶分子の長軸方向が透明電極層12A,12B間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光層11を光が透過しやすくなり、駆動領域20は透明となる。
【0038】
図3は、図1におけるIII-III線に沿った断面図であり、境界領域23と、境界領域23を挟む駆動領域20及び浮遊領域22での調光シート10の断面構造を示す。
図3が示すように、調光層11は、複数のスペーサ15を備える。スペーサ15は、第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bの間の距離をほぼ一定に保つ。また、第1透明電極層12Aにおいて、駆動領域20には、駆動電極要素30が位置し、浮遊領域22には、浮遊電極要素31が位置する。言い換えれば、駆動電極要素30と浮遊電極要素31とは、第1透明支持層13Aの支持面130に沿って並ぶ別々の層状体である。
【0039】
駆動電極要素30と浮遊電極要素31とは、溝120によって分離されている。溝120の深さ方向は、第1透明電極層12Aの厚さ方向である。本実施形態において、溝120は、第1透明電極層12Aの調光層11側に開口部122を有し、第1透明電極層12Aを貫通し、第1透明支持層13Aの厚さ方向の途中まで延びている。溝120で分離されることによって、駆動電極要素30と浮遊電極要素31とは互いに絶縁されている。この溝120の位置する領域が、境界領域23である。
【0040】
図4は、図3の溝120及びその周辺の断面構造を拡大した図である。第1透明支持層13Aの厚さT1及び第1透明電極層12Aの厚さT2の和である厚さT3は、20μm以上200μm以下である。第1透明電極層12Aの厚さT2は数十nmである。また、調光層11の厚さは、0.5μm以上460μm以下である。調光シート10全体の厚さは、45μm以上500μm以下である。なお、第2透明支持層13Bの厚さは第1透明支持層13Aの厚さと同一であってもよいし異なっていてもよい。同様に、第2透明電極層12Bの厚さは、第1透明電極層12Aの厚さと同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0041】
溝120の深さを「D1」とするとき、溝120の深さは、「T2<D1<T3」を満たす。上述したように、溝120は、第1透明電極層12Aを貫通する一方、第1透明支持層13Aを貫通しない深さを有している。
【0042】
溝120の幅W1は、スペーサ15の直径φ1よりも小さい(幅W1<直径φ1)。なお、スペーサ15の粒径にばらつきがある場合、スペーサ15の直径φ1は、最も小さい粒径のスペーサ15の直径φ1である。スペーサ15の直径φ1が溝120の幅W1よりも大きいため、スペーサ15は溝120に入りにくい。
【0043】
図5は、溝120を含む断面構造のSEM写真である。写真の中央に示す溝120は調光層11側で開口しているため、溝120には、調光層11の透明高分子層と液晶組成物からなる調光材110が充填されている。溝120に調光材110が充填されない場合、第1透明支持層13Aを透過して溝120の内側に入射した光は、溝120の側面に反射する。この場合には、調光シート10の外側からみて溝120が目立つ。一方、第1透明支持層13Aを構成する材料の屈折率は空気の屈折率に比べ調光材110の屈折率に近いため、本実施形態のように溝120に調光材110が充填されると、溝120の側面における反射率が小さくなり、調光シート10の外側からみて溝120が視認されにくくなる。また、溝120に僅かな空隙121(図4参照)が残っていても、溝120の容積の多くが調光材110によって充填されていれば溝120は目立たなくなる。溝120を外部から視認されにくくする効果を得るためには、溝120の容積に対する調光材110の充填率が80%以上であることが好ましい。
【0044】
また、上述したように溝120の幅W1は、スペーサ15の直径φ1よりも小さいため、スペーサ15が溝120へ入り込むことで溝120への調光材110の充填を妨げないようにすることができる。さらに、調光層11の厚さが0.5μm以上であることにより、80%以上の充填率で調光材110が充填されやすい。その理由は未だ明らかではないが、調光層11の厚さを大きくすることで、開口部122周辺に十分な量の調光材110が確保されるため、調光層11を第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bで挟んで所定の圧力を加えたときに調光材110が溝120に充填されやすくなるためと考えられる。
【0045】
さらに、第1透明電極層12Aは、溝120の開口部122の周辺に形成されたバリ123を有する。バリ123は、第1透明電極層12Aに溝120を形成する際に生じるものであり、開口部122の周辺から調光層11側に突出している。溝120を形成する際は、バリ123の高さH1が調光層11の厚さT4よりも低くなるように調整する(H1<T4)。バリ123の高さH1が調光層11の厚さT4を超えると、第1透明電極層12Aが、調光層11を介して第2透明電極層12Bに接触してしまい、第1透明電極層12A及び第2透明電極層12B間で短絡が生じる。また、バリ123の高さH1を、調光層11の厚さT4の0.8倍以下としてもよい。このようにすると、調光シート10が曲面に貼り付けられたり、調光シート10が意図せずに押圧されたりした場合等に、第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bの距離が縮んだとしても、第1透明電極層12Aと第2透明電極層12Bとの間の短絡を十分に抑えることができる。なお、溝120の深さD1は、第1透明電極層12Aの調光層11側の面から、第1透明電極層12Aの厚さ方向に延びる長さであり、バリ123の高さを含まない。
【0046】
[調光シートの製造方法]
次に図6を参照して、調光シート10の製造方法について説明する。
まず、第1透明電極層12A及び第1透明支持層13Aを備えたフィルム51A及び第2透明電極層12B及び第2透明支持層13Bを備えたフィルム51Bを準備する。このうち、第1透明電極層12A及び第1透明支持層13Aを備えたフィルム51Aに対し、第1透明電極層12A側からカッティングプロッターを用いて溝120を形成する。カッティングプロッターに接続された制御装置は、予め入力された図柄に沿ってカッティングプロッターを動作させ溝120を形成する。
【0047】
なお、カッティングプロッター以外の装置を用いて溝120を形成してもよい。例えば、カッティングプロッター以外の刃物や、レーザー切断装置、第1透明電極層12Aに溝120を形成してもよい。レーザー切断装置としては、例えばCOレーザーを備えたレーザーカッター等を用いることができる。
【0048】
次に、ジビニルベンゼン等を主材料とするスペーサ15と、スペーサ15を分散させるための分散媒とを含む液状体を、それらのフィルム51A,51Bのうち第1透明電極層12A側及び第2透明電極層12B側の面に塗布する。さらに、スペーサ15を散布したフィルムを加熱し、分散媒を除去する。このとき、いずれか一方のフィルムのみにスペーサ15を散布するようにしてもよい。
【0049】
そして、溝120が形成されたフィルム51Aの第1透明電極層12Aと、溝120が形成されていないフィルム51Bの第2透明電極層12Bに、透明高分子材料及び液晶組成物を含む調光材を塗布する。このとき、図6に示すように、溝120に調光材が充填されなくてもよい。さらに、それらのフィルム51A,51Bに対し、窒素雰囲気下で紫外線照射を行って調光層11A,11Bを形成する。こうして得られた1対のフィルムを積層し、所定の大きさの圧力をかけながら貼合する。これにより、溝120に調光材が充填される。
【0050】
調光シート10は、上流側のロールから搬送したフィルムに対して各種の工程を行い下流側のロールに巻き取るロールツーロール方式、所定の大きさに切断したフィルムに対して各種の工程を行う枚葉式の製造工程のいずれであってもよい。いずれの場合も、溝120を形成する工程は、第1透明電極層12A及び第1透明支持層13Aからなるフィルム、第2透明電極層12B及び第2透明支持層13Bからなるフィルムを、調光層11を介して貼り付ける前に行われる。
【0051】
次に、所定の大きさの調光シート10の第2面11Rの隅部に切り込みを入れ、第2透明支持層13B及び第2透明電極層12Bを剥離する。さらに、調光層11を除去し、第1透明電極層12Aを露出させて接続領域24を形成する。同様にして、第1面11Fの隅部にも、接続領域24を形成する。そして、第1端子部50A及び第2端子部50Bを形成して、外部配線25を接続領域24に接続する。さらに接続領域24をエポキシ樹脂等により封止する。また、第1透明支持層13Aに保護層44を貼り合わせる工程は、1対のフィルムを貼り合わせた後に行われてもよい。
このように第1透明電極層12A及び第1透明支持層13Aに切り込みを入れて溝120を形成することで、例えばパターニングに要するレジストマスクの形成、露光、現像、エッチング、レジストマスクの除去、および、洗浄といった工程を含む製造方法に比べ、溝120を簡便に形成することができる。
【0052】
[作用]
次に図7を参照して、本実施形態の作用について説明する。図7は、調光シート10の非駆動時、すなわち、第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bに電圧信号が印加されていないときの調光シート10の透明度合いを模式的に示す。調光シート10の非駆動時において、駆動領域20と非駆動領域21とは、いずれも不透明である。それゆえ、調光シートの10の全面が、例えば白っぽく濁って見え、非駆動領域21が構成する文字や絵柄等の像は視認されない。
【0053】
また、溝120は、第1透明電極層12Aを貫通し第1透明支持層13Aを貫通しない深さを有するため、調光シート10の第1面11F及び第2面11Rのいずれからみても溝120が目立たない。加えて、溝120に調光材が充填されることにより、溝120をさらに視認されにくくすることができる。これにより、図柄を表示するときの調光シート10の美観が高められる。
【0054】
図1が示すように、調光シート10の駆動時には、駆動領域20が透明になる一方、非駆動領域21は、不透明である。それゆえ、非駆動領域21のみが、例えば白っぽく、濁って見え、非駆動領域21が構成する文字や絵柄等の図柄の像が視認可能となる。
【0055】
このように、本実施形態の調光シート10によれば、調光シート10の面内に、光透過率の互いに異なる領域が形成され、かつ、これらの領域の光透過率の差は、調光シート10の駆動時にのみ現れる。したがって、調光シート10の駆動時には、非駆動領域21が構成する文字や絵柄等の像が視認されることで、調光シート10が配設されている空間の装飾が可能であり、さらに、調光シート10の駆動と非駆動との切り換えによって、上記像の出現の有無を切り換えることができるため、空間の装飾状態を動的に変化させることができる。それゆえ、調光シート10の意匠性の向上が可能である。
【0056】
以上説明したように、上記実施形態によれば以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)駆動電極要素30と浮遊電極要素31との一方のみに電圧信号を印加する、あるいは、駆動電極要素30と浮遊電極要素31とに互いに異なる電圧信号を印加することによって、調光シート10における駆動電極要素30が位置する領域と浮遊電極要素31が位置する領域との光透過率を変えることができる。したがって、駆動電極要素30と浮遊電極要素31との両方に電圧信号を印加せず、これらの電極要素の位置する領域の光透過率に差がない状態と、上述のように各電極要素の位置する領域の光透過率に差がある状態との切替が可能となるため、調光シート10の意匠性の向上が可能である。そして、溝120は、第1透明電極層12Aを貫通し第1透明電極層12Aを貫通しない深さを有するため、調光シート10を第1透明電極層12A側からみたときに溝120を目立たなくすることができる。このため、調光シート10の美観を向上することができる。さらに、例えば、溝120を、第1透明電極層12Aのエッチング等により除去する工程を含む方法で形成するよりも簡便に形成することができる。
【0057】
(2)溝120の少なくとも一部に調光層11の一部が充填されることにより、調光シート10を第1透明支持層13A側又は第2透明支持層13B側から見たときに、溝120を視認しにくくすることができる。
【0058】
(3)溝120への調光材の充填率を80%以上とすることにより、溝120をより視認しにくくすることができる。
(4)溝120の開口部122の内径をスペーサ15の直径よりも小さくすることにより、溝120部にスペーサ15が入り込むことを抑制することができる。このため、溝120への調光層11の充填が、溝120部に入ったスペーサ15により妨げられにくい。
【0059】
(5)溝120の開口部122の周りに存在するバリ123の高さが、調光層11の厚さよりも小さいため、第1透明電極層12Aに形成されたバリ123の先端が、調光層11を介して第2透明電極層12Bに接触するのを防ぐことができる。このため、第1透明電極層12A及び第2透明電極層12Bの間で短絡が発生することを抑制することができる。
【0060】
(6)溝120は浮遊電極要素31を囲む閉じた枠線状の形状を有する。よって、閉じた枠線状であれば浮遊電極要素31を区画することができるため、浮遊電極要素31のレイアウトの制約を少なくすることができる。
【0061】
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。また、以下の各変形例は、組み合わせて実施してもよい。
【0062】
・上記実施形態では、溝120は、浮遊電極要素31を囲む閉じた枠線状の形状を有するものとした。これに代えて若しくは加えて、溝120は、第1透明支持層13Aの支持面130に沿って延びていれば、浮遊電極要素31を囲む閉じた枠線状を有していなくてもよい。例えば、図8が示すように、第1面11Fと対向する位置から見て、境界領域23及び溝120は、調光シート10の端部100に位置する始点から、浮遊領域22及び浮遊電極要素31の外周を通り、調光シート10の端部100に位置する終点まで延びていてもよい。この場合、浮遊領域22及び浮遊電極要素31の端部は、調光シート10の端部100に位置する。なお、図8では矩形状の調光シート10のうち図8中下側の辺を端部100としているが、境界領域23及び溝120の始点及び終点となる端部100は、上側の辺、左辺、及び右辺のいずれであってもよく、各辺のいずれか複数であってもよい。
【0063】
・上記実施形態では、調光シート10はノーマルタイプとしたが、電圧信号が印加されていないときに入射光を透過させて透光性を上昇させ、電圧信号が印加されたときに入射光を散乱させて透光性を低下させるリバースタイプのものとしてもよい。
【0064】
図9はリバースタイプの調光シート10の一例を示す。図9が示すように、リバースタイプの調光シート10の調光層11は、多層構造であり、透明高分子層と液晶組成物とを備える機能層111と、第1配向層112、及び、第2配向層113を備える。第1配向層112及び第2配向層113は、調光層11を構成する。第1配向層112は、調光層11と第1透明電極層12Aとの間に位置し、これらの層と接する。第2配向層113は、調光層11と第2透明電極層12Bとの間に位置し、これらの層と接する。
【0065】
第1配向層112、及び、第2配向層113の各々は、例えば、垂直配向膜、あるいは、水平配向膜である。垂直配向膜は、調光層11の厚さ方向に沿って、液晶分子の長軸方向を配向させる。水平配向膜は、調光層11の厚さ方向と略直交する方向に沿って、液晶分子の長軸方向を配向させる。このように、第1配向層112及び第2配向層113は、調光層11が含む複数の液晶分子における配向を規制する。
【0066】
第1配向層112、及び、第2配向層113の各々を形成するための材料は、有機化合物、無機化合物、及び、これらの混合物である。有機化合物は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等である。無機化合物は、例えば、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等である。なお、第1配向層112及び第2配向層113を形成するための材料は、シリコンであってもよい。シリコンは、無機性の部分と有機性の部分とを有する化合物である。
【0067】
溝120は、第1配向層112のうち調光層11側に開口部122を有し、第1配向層112及び第1透明電極層12Aを貫通し、第1透明電極層12Aは貫通しない。つまり、溝120の深さは、第1配向層112の厚さ、第1透明電極層12Aの厚さ及び第1透明支持層13Aの厚さの和よりも小さい。溝120には調光層11の一部が充填される。
【0068】
調光シート10が第1配向層112及び第2配向層113を備える場合、駆動領域20において、透明電極層12A、12Bに電圧信号が印加されていないとき、液晶分子の長軸方向の向きは調光層11の厚さ方向に沿った向きとなる。したがって、駆動領域20は透明である。一方、駆動領域20において、透明電極層12A、12Bに電圧信号が印加されているとき、液晶分子の長軸方向の向きは調光層11の厚さ方向と交差する向きとなる。したがって、駆動領域20は濁って見え、不透明となる。調光シート10が第1配向層112及び第2配向層113を備える場合、浮遊領域22及び境界領域23では、液晶分子の長軸方向の向きが常に調光層11の厚さ方向に沿った向きとなるため、非駆動領域21は、常に透明である。
【0069】
それゆえ、調光シート10の非駆動時において、駆動領域20と非駆動領域21とは、いずれも透明であり、非駆動領域21が構成する文字や絵柄等の像は視認されない。一方、調光シート10の駆動時には、駆動領域20が不透明になる一方、非駆動領域21は、透明であるため、非駆動領域21が構成する文字や絵柄等の像が視認可能となる。
【0070】
このように、調光シート10が第1配向層112及び第2配向層113を備える場合であっても、調光シート10の面内に、光透過率の互いに異なる領域が形成され、かつ、これらの領域の光透過率の差は、調光シート10の駆動時にのみ現れる。したがって、調光シート10の意匠性の向上が可能である。
【0071】
また、上記の態様では、溝120は第1配向層112を貫通するものしたが、第1透明電極層12A及び第1透明支持層13Aからなる積層体に溝120を形成した後、第1配向層112を形成するようにしてもよい。この場合には、溝120の底面及び側面に沿うように第1配向層112が形成される。このようにしても溝120を外側からみて目立ち難くすることができる。
【0072】
・上記実施形態では、第1電極要素である駆動電極要素30に電圧信号が印加され、第2電極要素である浮遊電極要素31には電圧信号が印加されない。これに代えて、第1電極要素と第2電極要素とに別々に電圧信号が印加されてもよい。この場合、第2電極要素の端部には、第2電極要素に電圧信号を印加するための配線が接続される。第1電極要素に接続される端子部と、第2電極要素に接続される端子部とは、電圧信号ごとの別々の端子部である。上述のように、第2電極要素が調光シート10の端部に位置する形態であれば、第2電極要素への配線の接続が容易である。
【0073】
例えば、第1電極要素の位置する第1領域は、第1電極要素への電圧信号の印加状態の切り換えによって、透明と不透明とに切り替えられる。そして、第2電極要素の位置する第2領域は、第2電極要素への電圧信号の印加状態の切り換えによって、第1領域とは独立して、透明と不透明とに切り替えられる。こうした構成によれば、第1領域と第2領域とが共に不透明な状態、第1領域が不透明で第2領域が透明な状態、第1領域が透明で第2領域が不透明な状態、第1領域と第2領域とが共に不透明な状態、の4つの状態の切り替えが可能である。したがって、調光シート10による空間の装飾状態をより多様に変化させることができるため、調光シート10の意匠性の更なる向上が可能である。
【0074】
・第1領域と第2領域との少なくとも一方の光透過率が、透明と不透明との間に対応する光透過率に制御されてもよい。液晶組成物を含む調光層11を備える調光シート10においては、透明電極層12A、12B間の電位差が所定の範囲内である場合に、電位差の変化に伴って調光シート10の光透過率が徐々に変化する。そのため、第1領域あるいは第2領域において、透明電極層12A、12B間の電位差を、当該領域が透明となる電位差と当該領域が不透明となる電位差との間の値に制御することによって、当該領域を透明と不透明との間の光透過率を有する半透明に制御することができる。
【0075】
具体的には、例えば、第1領域は、第1電極要素への電圧信号の印加状態の切り換えによって、透明と不透明とに切り替えられ、第2領域は、第2電極要素への電圧信号の印加状態の切り換えによって、半透明と不透明とに切り替えられる。第1領域が透明であるときには、第2領域は半透明に制御される。こうした構成によれば、第1領域と第2領域とが共に不透明な状態と、第1領域が不透明で第2領域が半透明な状態との切り替えが可能である。これによっても、調光シート10の意匠性の向上が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…調光シート
12A…第1透明電極層
12B…第2透明電極層
13A…第1透明支持層
13B…第2透明支持層
15…スペーサ
30…第1電極要素としての駆動電極要素
31…第2電極要素としての浮遊電極要素
120…溝
122…開口部
123…バリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9