(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】サンプル温調機能を備えた装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G01N35/00 B
(21)【出願番号】P 2020525085
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2018023088
(87)【国際公開番号】W WO2019244198
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸治
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-344432(JP,A)
【文献】特開2015-010857(JP,A)
【文献】特開2017-053561(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162680(WO,A1)
【文献】特開2017-003477(JP,A)
【文献】実開昭62-111554(JP,U)
【文献】中国特許第102213965(CN,B)
【文献】特開2005-257552(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147696(WO,A1)
【文献】特開平09-276715(JP,A)
【文献】中国特許第106546034(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを保持するサンプルプレートを搭載するための搭載領域をもつサンプルラックと、
前記サンプルラックを内部に収容して前記サンプルラックに搭載されたサンプルプレートの温調を行なうための温調空間を内部に有するとともに、前記サンプルラックを挿入させて前記内部空間へ導くための開口であるラック挿入口を一側面に有する筐体と、
前記温調空間内の空気を吸気するための
吸気部、前記吸気部から吸気された空気を冷却又は加熱するための温調素子、及び前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を吹出すための吹出し口を有する空気温調部と、を備え、
前記サンプルラックが前記筐体の前記ラック挿入口から挿入されて前記温調空間内に収容されたときに、前記サンプルラックの前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間に高さ方向の幅が前記吹出し口よりも小さい通気路が形成され、
前記空気温調部は、前記吹出し口から吹き出される空気を、前記温調空間内に収容された前記サンプルラックの一端側から前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間に形成された前記通気路に直接的に導入するように構成され、
前記通気路に導入された空気が前記通気路を通って前記サンプルラックの前記搭載領域の一端から他端まで流れるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記空気温調部は、前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を前記通気路へ導くためのフードを前記吹出し口に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
サンプルを保持するサンプルプレートを搭載するための搭載領域をもつサンプルラックと、
前記サンプルラックを内部に収容して前記サンプルラックに搭載されたサンプルプレートの温調を行なうための温調空間を内部に有するとともに、前記サンプルラックを挿入させて前記内部空間へ導くための開口であるラック挿入口を一側面に有する筐体と、
前記温調空間内の空気を吸気するための
吸気部、前記吸気部から吸気された空気を冷却又は加熱するための温調素子、及び前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を吹出すための吹出し口を有する空気温調部と、を備え、
前記サンプルラックが前記筐体の前記ラック挿入口から挿入されて前記温調空間内に収容されたときに、前記サンプルラックの前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間に空気が流れる通気路が形成され、
前記空気温調部は、前記吹出し口から吹き出される空気を、前記温調空間内に収容された前記サンプルラックの一端側から前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間に形成された前記通気路に直接的に導入するように構成され、
前記通気路に導入された空気が前記通気路を通って前記サンプルラックの前記搭載領域の一端から他端まで流れるように構成されており、
前記空気温調部は、前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を前記通気路へ導くためのフードを前記吹出し口に備えており、
前記サンプルラックは前記一端に導風板を有し、
前記温調空間内に収容された前記サンプルラックの導風板と前記フードとが当接することによって、前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を前記通気路へ導くための経路が形成されるように構成されている、装置。
【請求項4】
サンプルを保持するサンプルプレートを搭載するための搭載領域をもつサンプルラックと、
前記サンプルラックを内部に収容して前記サンプルラックに搭載されたサンプルプレートの温調を行なうための温調空間と、
前記温調空間内の空気を吸気するための
吸気部、前記吸気部から吸気された空気を冷却又は加熱するための温調素子、及び前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を吹出すための吹出し口を有する空気温調部と、を備え、
前記サンプルラックが前記温調空間内に収容されている状態において、前記サンプルラックの前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間に空気が流れる通気路が形成され、
前記空気温調部の前記吹出し口から吹き出された空気が、前記温調空間内に収容された前記サンプルラックの前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間の前記通気路に直接的に導入され、前記通気路を通って前記サンプルラックの前記搭載領域の一端から他端まで流れるように構成され、
前記サンプルラックの前記搭載領域には、当該搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間の前記通気路を流れる空気を当該搭載領域に搭載されているサンプルプレートに接触させるための開口が設けられている、装置。
【請求項5】
前記サンプルラックの前記搭載領域における前記開口の面積割合は、前記一端側の領域よりも前記他端側の領域のほうが大きくなっている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記サンプルラックは、前記搭載領域の前記一端側の領域と前記他端側の領域にそれぞれ個別のサンプルプレートを搭載することができるものであり、
前記一端側の領域における前記開口の面積割合は、前記サンプルプレートが設置されていなくても前記通気路が実質的に形成される大きさに設定されている、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は液体クロマトグラフ用のオートサンプラである、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフなどの分析装置に用いられ、サンプルを保持するサンプルプレートの冷却又は加熱を行ないながら温調するサンプル温調機能を備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフのオートサンプラには、分析対象のサンプルの変質等を防止するために、サンプルを収容したサンプルプレートを冷却又は加熱して一定温度に調節する機能を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
サンプルの温調方式には、ペルチェ素子やヒータなどの温調素子が取り付けられた金属プレート上にサンプルを装填したサンプルプレートを配置して容器を直接的に冷却又は加熱する直接温調方式(特許文献1参照。)と、サンプルプレートを外気とは熱的に分離された空間(以下、温調空間という。)内に配置し、その温調空間内の空気をペルチェ素子などの温調素子によって冷却又は加熱する空気温調方式と、がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直接温調方式は、サンプルプレートを直接的に冷却又は加熱するため、温調の応答速度が良好であるという利点がある一方で、サンプルプレートの全面を均一に温調することが難しいという問題がある。空気温調方式は、温調の応答速度が直接温調方式よりも劣る反面、サンプルプレートの配置されている温調空間内を全体的に冷却又は加熱することにより、直接温調方式に比べてサンプルプレートを均一に温調することができる。
【0006】
しかし、温調空間内を全体的に温調しようとすると、温調空間の内部と外部で熱交換を行なう面積が広くなるため、多量の断熱材を使用して温調空間を外気と遮断する必要がある。また、本来的には温調の不要な温調空間内の構造物まで温調することになるため、温調対象の熱容量が大きくなり、サンプルの温調に要する時間が長くなったり、過度に高い温調能力をもった温調素子が必要になったりするなど、効率が悪いという問題がある。さらには、装置サイズの拡大化や装置コストの増大にも繋がる。
【0007】
そこで、本発明は、サンプルを保持するサンプルプレートの温調を均一かつ高効率に行なうことができる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る装置は、サンプルを保持するサンプルプレートを搭載するための搭載領域をもつサンプルラックと、前記サンプルラックを内部に収容して前記サンプルラックに搭載されたサンプルプレートの温調を行なうための温調空間と、前記温調空間内の空気を吸気するための吸気口、前記吸気部から吸気された空気を冷却又は加熱するための温調素子、及び前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を吹出すための吹出し口を有する空気温調部と、を備えている。当該装置はさらに、前記サンプルラックが前記温調空間内に収容されている状態において、前記サンプルラックの前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間に空気を流すための通気路が形成され、前記空気温調部の前記吹出し口から吹き出された空気が、前記温調空間内に収容された前記サンプルラックの前記搭載領域の底面と前記温調空間の床面との間の前記通気路に直接的に導入され、前記通気路を通って前記搭載領域の一端から他端まで流れるように構成されている。
【0009】
ここで、空気温調部の吹出し口から吹き出された空気がサンプルラックの搭載領域の底面と温調空間の床面との間の通気路に「直接的に」導入されるとは、空気温調部において温調素子により冷却又は加熱された空気が、他の構造物と熱交換をほとんど行なうことなく、すなわち、その温度をほとんど変化させることなく、サンプルラックの搭載領域の底面と温調空間の床面との間の通気路に導入されることを意味する。この構造により、空気温調部において温調された空気がサンプルラックの搭載領域に搭載されたサンプルプレートと集中的に熱交換を行なうので、サンプルプレートの温調を均一かつ高効率に行なうことができる。サンプルに無関係な構造物に対しては温調された空気によって積極的に熱交換を行なう必要がないので、温調空間全体を均一に温調する場合に比べて温調素子の温調能力を低減することができ、コストの低減や省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
好ましい実施形態では、前記空気温調部が、前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を前記通気路へ導くためのフードを前記吹出し口に備えている。
【0011】
さらに好ましい実施形態では、前記サンプルラックは前記一端に導風板を有し、前記温調空間内に収容された前記サンプルラックの導風板と前記フードとが当接することによって、前記温調素子によって冷却又は加熱された空気を前記通気路へ導くための経路が形成されるように構成されている。
【0012】
ところで、温調用の空気とサンプルラックに搭載されているサンプルプレートとの間の熱交換を積極的に行なわせる観点でいえば、サンプルラックが熱伝導率の高いアルミニウムなどの金属材料で構成されているほうがよい。しかし、サンプルラックがそのような金属材料で構成されていると、サンプルプレートの冷却温調を行なう場合に、サンプルラックに結露が発生しやすくなる。
【0013】
そこで、温調された空気と直接的に接するサンプルラックの搭載領域を樹脂で構成し、前記サンプルラックの前記搭載領域に、前記通気路を流れる空気を当該搭載領域に搭載されているサンプルプレートに接触させるための開口を設けてもよい。そうすれば、サンプルラックでの結露の発生を抑制しながら、温調用の空気とサンプルプレートとの間で積極的に熱交換を行なわせることができる。
【0014】
ところで、サンプルラックと温調空間の床面との間に形成された通気路をサンプルラックの搭載領域の一端から他端へ流れる温調用の空気は、サンプルラックの一端側から順に熱交換を行なっていくため、サンプルラックの他端側へ行くにしたがってサンプルプレートとの間の熱交換効率が悪くなる。そのため、サンプルラックの搭載領域に開口を設ける場合、サンプルラックの搭載領域における開口の割合を一端側の領域と他端側の領域とで同等にすると、一端側の領域と他端側の領域とで温度差ができることが考えられる。そこで、サンプルラックの搭載領域における開口の面積割合は、空気温調部の吹出し口に近い一端側の領域よりも空気温調部の吹出し口から遠い他端側の領域のほうが大きくなっていることが好ましい。そうすれば、サンプルラックの搭載領域の一端側の領域と他端側の領域とで温調用の空気とサンプルプレートとの間の熱交換効率を均一化することができる。
【0015】
また、サンプルラックとして、搭載領域の一端側の領域と他端側の領域に別々のサンプルプレートを搭載することができるものを用いることができる。そのようなサンプルラックを用いているにも拘わらず一部のサンプルプレートしか使用しない場合には、サンプルラックの一端側の領域又は他端側の領域にサンプルプレートが搭載されないことになる。温調用の空気とサンプルプレートとの間の熱交換効率を向上させるためには、搭載領域における開口面積の割合を大きくするのが効果的であるが、搭載領域の一端側の領域にサンプルプレートが搭載されない場合、その領域に大きな開口が形成されていると、その開口から温調用の空気が抜けてしまい、他端側の領域にまで温調用の空気が辿り着かず、搭載されているサンプルプレートの温調を効果的に行なうことができなくなる。
【0016】
そこで、前記サンプルラックの搭載領域の前記一端側の領域における前記開口の面積割合は、前記一端側の領域に前記サンプルプレートが設置されていなくても前記通気路が実質的に形成される大きさに設定されていることが好ましい。そうすれば、前記一端側の領域にサンプルプレートが搭載されない場合でも、温調用の空気が流れる通気路が実質的に形成されているので、他端側の領域にまで温調用の空気が辿り着くことができ、他端側の領域に搭載されたサンプルプレートの温調を効果的に行なうことができる。
【0017】
本発明は、液体クロマトグラフ用のオートサンプラに適用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る装置では、サンプルラックが温調空間内に収容されている状態において、空気温調部の吹出し口から吹き出された空気が、温調空間内に収容されたサンプルラックの搭載領域の底面と温調空間の床面との間の通気路に直接的に導入され、通気路を通ってサンプルラックの搭載領域の一端から他端まで流れるように構成されているので、温調用の空気がサンプルラックに搭載されたサンプルプレートと集中的に熱交換を行なうようになり、サンプルプレートの温調を均一かつ高効率に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】サンプル温調機能を備えた装置の一実施例を示す概略断面構成図である。
【
図2】同実施例においてサンプルラックが引き出されたときの温調空間内の空気の流れを説明するための断面図である。
【
図3】サンプルプレートの搭載されていないサンプルラックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る装置の一実施例について説明する。
【0021】
図1に示されているように、装置1は、筐体2の内部に温調空間4を備えている。温調空間4は板金6によって画され、その板金6の外周面が空気温調部16の設けられている背面側(
図1において右側)を除いて、例えばポリエチレン樹脂発泡材などからなる断熱層8によって覆われている。
【0022】
サンプルを保持したサンプルプレート10は、サンプルラック12に搭載された状態で温調空間4の底部に設置される。なお、サンプルプレート10は、サンプルを収容した複数のバイアルを保持するものであってもよいし、サンプルを収容する複数のウエルが上面に設けられたものであってもよい。筐体2の一側面である正面側(
図1において左側)に、サンプルラック12を一端側から挿入して温調空間4内に収容するための開口であるラック挿入口14が設けられている。
【0023】
サンプルラック12の他端にはサンプルラック12を保持するための取っ手部12aが設けられている。取っ手部12aの筐体2と対向する面(図において右側の面)の周縁部にパッキンが取り付けられており、サンプルラック12が一端側から温調空間内4へ挿入されたときに取っ手部12aのパッキンがラック挿入口14の縁と当接し、ラック挿入口14の密閉性が保たれるようになっている。
【0024】
サンプルラック12はサンプルプレート10を搭載するための搭載領域12dを備えている。この実施例では、サンプルラック12の搭載領域12dの一端側の領域、中央の領域、他端側の領域のそれぞれにサンプルプレート10を搭載することができるようになっている。サンプルラック12は、搭載領域12dの底面と温調空間4の床面との間に空気が流れる通気路32が形成されるように、搭載領域12dを形成する板材と温調空間4の床面との間に隙間をもって温調空間4内に収容される。
【0025】
サンプルラック12の一端部に導風板12bが設けられている。導風板12bは、例えばサンプルラック12の一端から鉛直上方へ延びるように設けられている。導風板12bは、後述するフード24とともに冷却された空気を通気路32へ導くためのものである。サンプルラック12の搭載領域12dよりも他端側に、通気路32を流れる空気を上方へ抜けさせるための開口12cが設けられている。
【0026】
筐体2の背面側に空気温調部16が設けられている。空気温調部16は、温調素子であるペルチェ素子18、ファン20、吸気部22、フード24、吹出し口23、上昇ガイド26、熱交換フィン28及び30を備えている。空気温調部16は、温調空間4内の空気を吸気部22から吸気し、吸気した空気をペルチェ素子18で冷却又は加熱して吹出し口23から吹き出すように構成されている。
【0027】
ペルチェ素子18は、一方の伝熱面が温調空間4の内側、他方の伝熱面が温調空間4の外側に配置されるように設けられており、熱交換フィン30はペルチェ素子18の一方の伝熱面に取り付けられ、熱交換フィン28はペルチェ素子18の他方の伝熱面に取り付けられている。ファン20は温調空間4内の下部において筐体2の正面側へ向けて吹出し口から空気を送風するように設けられている。吸気部22は、温調空間4内の吸気部近傍に設けられた吸気用の開口である。
【0028】
空気温調部16の吹出し口23に、フード24と上昇ガイド26が設けられている。フード24は、温調空間4内に収容されたサンプルラック12の導風板12bとともに、ファン20によって送風される温調用の空気をサンプルラック12の下面と温調空間4の床面との間の通気路32へ導くように設けられている。上昇ガイド26は、サンプルラック12が温調空間から引き出された際に、ファン20によって送風される空気を温調空間4内の上部へ導くように設けられている。
【0029】
サンプルラック12が温調空間4内に収容されているときは、導風板12bとフード24によって上方へ向かう空気の流れが遮断されるので、上昇ガイド26は機能しない。そのため、サンプルラック12が温調空間4内に収容されている状態では、
図1において矢印で示されているように、吸気部22から吸気されてペルチェ素子18により冷却又は加熱された空気は、通気路32を流れてサンプルラック12の開口部12cから上方へ抜け、再び吸気部22から吸気されるという循環経路をとる。
【0030】
一方で、
図2に示されているように、サンプルラック12が温調空間4から引き出されたときは上昇ガイド26が機能する。ファン20によって送風される空気は上昇ガイド26によって温調空間4内の上部へ上昇し、再び吸気部22から吸気されるという循環経路をとる。これにより、ラック挿入口14の付近における空気の流れが小さくなり、ラック挿入口14を介した空気の流出入が抑制される。
【0031】
また、この実施例では、サンプルラック12の搭載領域12dを構成する板材が樹脂で構成されている。そのため、
図3に示されているように、サンプルラック12の搭載領域12dには、通気路32を流れる温調用の空気を搭載領域12dに搭載されているサンプルプレート10に接触させるための開口12eが設けられており、温調用の空気とサンプルプレート10とが直接的に熱交換を行なうようになっている。
【0032】
搭載領域12dの一端側の領域、中央の領域、他端側の領域のそれぞれにおいて開口12eの占める面積割合が異なっており、搭載領域12dの一端側の領域で最もその割合が小さく、他端側の領域で最もその割合が大きくなっている。搭載領域12dの一端側の領域、中央の領域、他端側の領域のそれぞれにおける開口12の面積割合は、通気路32を流れる温調用の空気とサンプルプレート10との熱交換効率が搭載領域12dの一端側から他端側の各領域において略均一になるように設計されている。
【0033】
また、搭載領域12dの一端側の領域や中央の領域の開口12eの大きさは、これらの領域にサンプルプレート10が搭載されていなくても実質的に通気路32が形成される大きさ、すなわち、これらの領域にサンプルプレート10が搭載されていなくても温調用の空気の大部分が開口12eから逃げずに搭載領域12dの他端側へ到達するような大きさに設計されている。これにより、サンプルラック12の搭載領域12dの一部の領域にのみサンプルプレート10が搭載されている場合でも、その搭載位置に関わらず同様にサンプルプレート10の温調を行なうことができる。
【0034】
なお、上記実施例では、サンプルラック12の搭載領域に3つのサンプルプレート10を搭載することができるようになっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つ以下又は4つ以上のサンプルプレート10を搭載することができるようになっていてもよい。
【0035】
また、
図3では、サンプルラック12の搭載領域12dの開口eが、サンプルラック12の長手方向に平行なスリット状になっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、いかなる形状であってもよい。
【0036】
また、上記実施例の装置1は、例えば液体クロマトグラフ用オートサンプラによって実現される。装置1がオートサンプラである場合には、サンプルプレート10によって保持されたサンプルを吸入するためのニードルやシリンジポンプ、ニードルを移動させるための駆動機構なども温調空間4内に設けられる。
【符号の説明】
【0037】
1 装置
2 筐体
4 温調空間
6 板金
8 断熱層
10 サンプルラック
12 サンプルプレート
12a 取っ手部
12b 導風板
12c,12e 開口
12d 搭載領域
14 ラック挿入部
16 空気温調部
18 ペルチェ素子
20 ファン
22 吸気部
23 吹出し口
24 フード
26 上昇ガイド
28,30 熱交換フィン
32 通気路