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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電池用電極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20220809BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220809BHJP
   H01M 4/02 20060101ALN20220809BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20220809BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/02 Z
H01M4/13
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020525482
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022407
(87)【国際公開番号】W WO2019239988
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018111371
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】及川 真紀子
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-305598(JP,A)
【文献】特開2004-127799(JP,A)
【文献】特開2014-093258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M4/86-4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用電極の製造方法であって、
(i)電極材層が集電体の両面に塗工される両面塗工領域と、該両面塗工領域と相互に隣り合う該電極材層が該集電体の一方の主面に塗工される片面塗工領域とを備える前記電極の前駆体を形成する工程、および
(ii)前記電極の前記前駆体を加圧する工程
を含み、
前記電極の前記前駆体を加圧するに先立って、前記両面塗工領域と前記片面塗工領域との境界部分に位置する前記集電体を局所的に熱処理に付し、前記熱処理の実施により、前記境界部分に位置する前記集電体を局所的に軟化させる、製造方法。
【請求項2】
前記熱処理の実施により、該熱処理を実施しない場合と比べて、前記境界部分に位置する前記集電体の湾曲領域を大きくする、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記電極の前記前駆体の加圧を、該前駆体を挟み込むように位置付けられた一対のプレスロールを用いて実施し、
前記熱処理の実施により、該熱処理を実施しない場合と比べて、前記境界部分に位置する前記集電体と直接向かい合う前記プレスロールとの間に形成される空間領域の寸法を相対的に小さくする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理の実施により、前記境界部分以外の部分に位置する前記集電体のヤング率と比べて、該境界部分に位置する該集電体のヤング率を低減させる、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記境界部分に位置する前記集電体のヤング率を、該境界部分以外の部分に位置する該集電体のヤング率の50%分以上低減させる、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理を、前記境界部分に位置する前記集電体および前記電極材層に対して非接触の前記熱処理とする、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記非接触の前記熱処理を、高周波誘導加熱装置を用いて実施する、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記高周波誘導加熱装置が前記境界部分に位置する前記集電体と相互に対向する際に、該高周波誘導加熱装置を駆動させる、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記電極の前記前駆体の加圧後において、前記境界部分に位置する前記電極材層の体積密度(A)の該境界部分以外の部分に位置する該電極材層の体積密度(B)に対する比率(A/B)を、0.9以上1.0以下とする、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記電極の前記前駆体の加圧後において、前記境界部分に位置する前記電極材層の低体積密度領域の寸法を、前記熱処理を実施しない場合と比べて相対的に減じる、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、スマートフォンをはじめとする電子機器等に対して、電池、特に充放電可能な二次電池の需要が一層高まっている。当該電池は、電極(正極および負極)と電解液とが筐体内に供されている構造を採る。
【0003】
ここで、電池用電極は、少なくとも(i)集電体(金属箔)の主面に電極材層を塗布して、電極の前駆体を形成する工程と、(ii)プレスロール装置等を用いて一対のプレスロール間に電極の前駆体を一方向に移動させながら電極の前駆体を加圧する工程とを経て製造され得る。
【0004】
かかるプレスロール装置につき、特許文献1には圧電駆動素子を用いて1対のプレスロールの回転軸間距離を調整する旨が開示されている。当該回転軸間距離を調整可能な1対のプレスロールは、例えば下記の形態を有する電極の前駆体を加圧するために用いることができる。
【0005】
具体的には、電極材層20’が集電体10’の一方の主面に塗工される片面塗工領域と、当該片面塗工領域と相互に隣り合う電極材層20’、30’が集電体10’の両面に塗工される両面塗工領域と備える電極100’の前駆体にて、回転軸間距離を調整可能な1対のプレスロール40’を用いることができる。当該電極100’の前駆体では、両面塗工領域における集電体10’と集電体10’の両側主面に供された電極材層20’、30’の全厚が、片面塗工領域における集電体10’と集電体10’の片側主面に供された電極材層20’の全厚よりも大きくなる(図4A図4E参照)。
【0006】
そのため、上記の形態を有する電極100’の前駆体において、回転軸間距離を調整可能な1対のプレスロール40’を用いれば、片面塗工領域における全厚と両面塗工領域における全厚に応じて回転軸間距離を調整できることに起因して、各塗工領域に対してそれぞれ所定の加圧を実施し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-089556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、片面塗工領域と当該片面塗工領域と相互に隣り合う両面塗工領域と備える電極の前駆体100’を加圧する場合、本願発明者らは、以下の技術的問題が生じ得ることを見出した。
【0009】
具体的には、一対のプレスロール40’を用いて片面塗工領域と両面塗工領域とを加圧する場合において、両面塗工領域と片面塗工領域の境界部分70’に位置する片面塗工領域の加圧状態と、当該境界部分70’以外の部分に位置する片面(又は両面)塗工領域の加圧状態とが異なり得る。この事は、両面塗工領域の端部に位置する電極材層30’の存在により、当該境界部分70’に位置する片面塗工領域の集電体10’にプレスロール40’を接触させることが容易ではないことに起因する(図4A図4E参照)。そのため、相互に対向する一対のプレスロール40’によって、当該境界部分70’に位置する片面塗工領域の集電体10’と電極材層20’とを好適に加圧することができない虞がある。その結果、当該境界部分70’に位置する片面塗工領域の電極材層20’の体積密度が、境界部分70’以外の部分に位置する電極材層20’,30’の体積密度よりも相対的に低くなってしまう虞がある。すなわち、当該境界部分70’に位置する片面塗工領域の電極材層20’が低体積密度領域23’となり得る(図1上部参照)。
【0010】
例えば、電池がリチウムイオン二次電池である場合、低体積密度領域23’では電極材層の体積密度が局所的に低いため、それに起因してリチウムの析出状態が他の領域におけるリチウムの析出状態と異なってしまう。又、低体積密度領域23’の存在は、容量劣化やサイクル特性の劣化の要因となり得る。また、かかる低体積密度領域23’を含み得る電極100’、具体的には正極および負極を、セパレータを介して相互に積層して電極構造体を得る際、低体積密度領域23’の存在に起因して、電極構造体の特性ばらつき発生の原因となる虞がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、電極が片面塗工領域と当該片面塗工領域と相互に隣り合う両面塗工領域と備える場合において、片面塗工領域と両面塗工領域との境界部分に位置する片面塗工領域の電極材層の低体積密度領域の範囲を減少させることが可能な電極、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
電池用電極であって、
集電体と集電体の両面に電極材層が塗工された両面塗工領域と、該両面塗工領域と相互に隣り合う該集電体と該集電体の片面に該電極材層が塗工された片面塗工領域とを備え、
前記両面塗工領域と前記片面塗工領域との境界部分に位置する前記集電体のヤング率が、該境界部分以外の部分に位置する該集電体のヤング率と比べて相対的に低減されている、電極が提供される。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
電池用電極の製造方法であって、
(i)電極材層が集電体の両面に塗工される両面塗工領域と、該両面塗工領域と相互に隣り合う該電極材層が該集電体の一方の主面に塗工される片面塗工領域とを備える前記電極の前駆体を形成する工程、および
(ii)前記電極の前記前駆体を加圧する工程
を含み、
前記電極の前記前駆体を加圧するに先立って、前記両面塗工領域と前記片面塗工領域との境界部分に位置する前記集電体を局所的に熱処理に付す、製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、電池用電極が片面塗工領域と当該片面塗工領域と相互に隣り合う両面塗工領域と備える場合において、片面塗工領域と両面塗工領域との境界部分に位置する片面塗工領域の電極材層の低体積密度領域の範囲を好適に減少させることが可能である。なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、従来の電極の前駆体の加圧態様と本発明の一実施形態に係る電極の前駆体の加圧態様とを比較した模式断面図である。
図2図2は、高周波誘導加熱装置を用いて境界部分に位置する集電体を熱処理する態様の模式図である。
図3図3は、実施例1、2と比較例(従来例)とを比べたグラフである。
図4A図4Aは、本願の技術的課題を示す模式図である。
図4B図4Bは、両面塗工領域と片面塗工領域の境界部分以外の部分に位置する片面塗工領域を加圧する態様を示す模式断面図である。
図4C図4Cは、図4Bの態様から所定時間経過後における両面塗工領域と片面塗工領域の境界部分以外の部分に位置する片面塗工領域を加圧する態様を示す模式断面図である。
図4D図4Dは、図4Cの態様から所定時間経過後における両面塗工領域と片面塗工領域の境界部分に位置する片面塗工領域を加圧する態様を示す模式断面図である。
図4E図4Eは、図4Dの態様から所定時間経過後における両面塗工領域を加圧する態様を示す模式断面図である。
図5図5は、二次電池の模式的な断面図である。
図6図6は、二次電池における捲回電極構造体の模式的な一部断面図である。
図7図7は、ラミネートフィルム型の角型のリチウムイオン二次電池の模式的な分解斜視図である。
図8A図8Aは、図7に示したものとは別態様のラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池の模式的な分解斜視図である。
図8B図8Bは、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池における電極構造体の図7および図8Aの矢印A-Aに沿った模式断面図である。
図9図9は、積層構造体を備えたリチウムイオン二次電池の適用例(電池パック:単電池)の模式的な分解斜視図である。
図10A図10Aは、積層構造体を備えたリチウムイオン二次電池の適用例(電動車両)の構成を表すブロック図である。
図10B図10Bは、積層構造体を備えたリチウムイオン二次電池の適用例(電力貯蔵システム)の構成を表すブロック図である。
図10C図10Cは、積層構造体を備えたリチウムイオン二次電池の適用例(電動工具)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電池用電極およびその製造方法について説明する。
【0017】
(本発明の電池用電極の製造方法)
まず、本発明の一実施形態に係る電池用電極の製造方法について説明する(図1下段参照)。
【0018】
上述のように、本願発明者らは、電極が片面塗工領域と当該片面塗工領域と相互に隣り合う両面塗工領域と備える場合において、片面塗工領域と両面塗工領域との境界部分に位置する片面塗工領域の電極材層の体積密度の低下という技術的課題に着目した。具体的には、本願発明者らは、当該電極材層の体積密度の低下の直接の要因が「両面塗工領域の端部に位置する電極材層の存在により、当該境界部分に位置する片面塗工領域の集電体にプレスロールを好適に接触させることが容易ではない」という技術的課題に着目した。その結果、かかる技術的課題を好適に解決するために、本願発明者らは、以下の技術的思想に基づく電池の製造方法を案出するに至った。
【0019】
本発明の電池用電極の製造方法は、「電極100の前駆体を加圧するに先立って、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置する集電体10を局所的に熱処理に付す」という技術的思想に基づく。本発明の技術的思想に従うならば、当該境界部分70に位置する集電体10の局所的な熱処理のタイミングは、集電体10の主面に電極材層20を塗工した後(すなわち上記電極100の前駆体を形成した後)であってもよく、又は集電体10の主面に電極材層20を塗工する前であってもよい。なお、後者の態様では、集電体10の主面に電極材層20が塗工される前の状態において、集電体10は存在する一方、電極材層は非存在の状態となり得る。そのため、後者の態様では、効率的な熱処理の観点から、境界部分70となる箇所を予め把握した上で境界部分70に位置する集電体10に局所的な熱処理を行うことが好ましい。なお、本明細書でいう「境界部分」とは、両面塗工領域から片面塗工領域へと遷移する部分、又は片面塗工領域から両面塗工領域へと遷移する部分を指す。本明細書でいう「熱処理」とは、広義には熱エネルギーを集電体に供する処理を指す。本明細書でいう「熱処理」とは、狭義には熱エネルギーを集電体に供して集電体の内部のひずみを取り除き軟化させることによって、展延性を向上させるための処理を指す。かかる観点から、当該「熱処理」は「焼鈍し処理」又は「アニーリング処理」とも称され得る。本明細書でいう「電極の前駆体」とは、電極材層が集電体の両面に塗工される両面塗工領域と、当該両面塗工領域と相互に隣り合う電極材層が集電体の一方の主面に塗工される片面塗工領域とを備えるものを指す。
【0020】
かかる技術的思想によれば、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置し、かつ熱処理に付される集電体10の局所部分は、熱エネルギーが当該部分に供されることに起因して軟化され得る。そのため、当該熱処理の実施により、境界部分70以外の部分に位置する集電体10のヤング率と比べて、境界部分70に位置する集電体10のヤング率を低減させ得る。特に、境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10の上側には電極材層20が位置しているため、その電極材層20の自重が作用し得る。そのため、境界部分70に位置する熱処理に付された片面塗工領域内の集電体10は、下方方向へとなだらかに湾曲し得る。
【0021】
これにより、後刻に一対のプレスロール40を用いて電極100の前駆体を加圧する際にて、当該境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10とプレスロール40が接触可能な範囲を、従来の熱処理を実施しない場合と比べて増加させることが可能となる。なお、境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10とプレスロール40が接触可能な範囲を好適に増加させる観点から、境界部分70に位置する集電体10のヤング率を、境界部分70以外の部分に位置する集電体のヤング率の50%分以上低減させることが好ましい。
【0022】
その結果、相互に対向する一対のプレスロール40によって、当該境界部分70に位置する片面塗工領域の集電体10と電極材層20とを好適に加圧可能な範囲を拡大させることが可能となる。従って、当該境界部分70に位置する片面塗工領域の電極材層20の低体積密度領域23の範囲を減少させることが可能となる。換言すれば、当該境界部分70に位置する片面塗工領域の電極材層20の高体積密度の範囲を増やすことが可能となる。
【0023】
これにより、境界部分70に位置する塗工領域の電極材層の体積密度と、境界部分以外の部分に位置する電極材層の体積密度との差を小さくすることができる。具体的には、境界部分に位置する電極材層の体積密度(A)の境界部分以外の部分に位置する電極材層の体積密度(B)に対する比率(A/B)を、0.9以上1.0以下とし得る。従って、電極が片面塗工領域と当該片面塗工領域と相互に隣り合う両面塗工領域と備える場合においても、低体積密度領域23の範囲が減じられた電極材層を全体として好適に形成することが可能となる。その結果、当該電極は電池の構成要素として好適に機能することができ得る。
【0024】
上述のように、全体として電極材層の低体積密度領域の範囲を減少させることが可能となるため、それに起因して電池がリチウムイオン二次電池である場合、境界部分におけるリチウムの析出状態が境界部分以外の他の部分におけるリチウムの析出状態と異なり得ることを好適に抑制することが可能となる。又、全体として低体積密度領域の範囲を減少させることが可能となるため、それに起因して容量劣化やサイクル特性の劣化を低下させることも可能となる。また、電極の構成要素である電極材層の低体積密度領域の範囲を減少させることが可能となるため、それに起因して、電極(正極および負極)を、セパレータを介して相互に積層して電極構造体を得る際、電極構造体の特性ばらつき発生も好適に抑制することが可能となる。
【0025】
一実施形態では、本発明の電極の製造方法は、下記態様を採ることが好ましい。
【0026】
一態様では、上記の境界部分70に位置する集電体10および電極材層20、30に対して非接触の熱処理とすることが好ましい。
【0027】
本発明の製造方法では、境界部分以外の部分に位置する集電体と比べて、境界部分に位置する集電体の形状を変形し易くする観点から、境界部分に位置する集電体に対して熱処理を実施する。ここで、電極の構成要素である集電体および電極材層は、電池特性に影響し得るものである。そのため、例えば境界部分に位置する片面塗工領域の集電体および電極材層に対して加熱装置を直接接触させながら加熱させると、集電体および電極材層が直接接触に起因して破断する虞がある。
【0028】
そこで、直接接触ではなく非接触の熱処理を、上記の境界部分に位置する集電体および電極材層に対して行うことが好ましい。一例としては、非接触の熱処理を、高周波誘導加熱装置80を用いて実施することが好ましい。高周波誘導加熱装置80とは、例えば交流電源に接続されたコイル状部材の中に被加熱体を位置付けると、交流電流により被加熱体の表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で被加熱体の表面を発熱させる装置である。かかる装置を用いると、交流電源に接続されたコイル状部材の中に集電体10(および電極材層)を位置付けると、交流電流により集電体10(および電極材層)の表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で集電体(および電極材層)の表面を発熱させることが可能となる。
【0029】
なお、高周波誘導加熱装置80が境界部分70に位置する集電体10と相互に対向する際に、高周波誘導加熱装置を駆動させることが好ましい。両面塗工領域と片面塗工領域の境界部分70は、一定の間隔をおいて形成され得るものである。そのため、高周波誘導加熱装置を用いて、連続して電極の前駆体を加熱する必要性がない。従って、電極の前駆体が一方向に移動する際、高周波誘導加熱装置(特にコイル状部材)が境界部分の集電体を加熱するためにプレスロールよりも前段の所定箇所に位置付けられている場合にて、当該高周波誘導加熱装置のコイル状部材と境界部分に位置する集電体とが相互に対向する際に、当該装置を駆動させることが好ましい。これにより、高周波誘導加熱装置80を必要時のみ使用することができると共に、境界部分70以外の集電体等の加熱を好適に回避することができる。
【0030】
(本発明の電池用電極)
以下、本発明の一実施形態に係る電池用電極について説明する。
【0031】
本発明の電池用電極100は、上記の本発明の製造方法を経て得られ得る。特に、本発明の電池用電極は、以下の特徴を有し得る。具体的には、上記のとおり、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置し、かつ熱処理に付される集電体10の局所部分は、熱エネルギーが当該部分に供されることに起因して軟化され得る。そのため、熱処理を実施しない場合と比べて、当該境界部分70に位置する集電体10の形状は変形し易い状態となる。一態様では、境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10とプレスロール40が接触可能な範囲を好適に増加させる観点から、境界部分70に位置する集電体10のヤング率は、境界部分70以外の部分に位置する集電体10のヤング率と比べて50%分以上低減される。そして、一旦変形した境界部分70に位置する集電体の性質および形状は加圧処理後においても元には戻らないようになっている。つまり、この事は、加圧処理後に得られる本発明の電池用電極においても、境界部分70の集電体10のヤング率が当該境界部分70以外の部分に位置する集電体10のヤング率と比べて相対的に低減されていることを意味する。
【0032】
上記のとおり、本発明では、相互に対向する一対のプレスロール40によって、当該境界部分70に位置する片面塗工領域の集電体10と電極材層20とを好適に加圧可能な範囲を拡大させることが可能となる。従って、加圧後に得られる本発明の電極において、境界部分70に位置する片面塗工領域の電極材層20の低体積密度領域23の範囲を減少させることが可能となる。一態様では、境界部分70に熱処理を実施しない場合と比べて、境界部分70に位置する片面塗工領域の電極材層の低体積密度領域23の範囲を半減以下させることが可能である。これにより、境界部分70に位置する塗工領域の電極材層20の体積密度と、境界部分70以外の部分に位置する電極材層20の体積密度との差を小さくすることができる。具体的には、境界部分に位置する電極材層の体積密度(A)の境界部分以外の部分に位置する電極材層の体積密度(B)に対する比率(A/B)を、0.9以上1.0以下とし得る。以上の事から、電極が片面塗工領域と当該片面塗工領域と相互に隣り合う両面塗工領域と備える場合においても、全体として、低体積密度領域23の範囲が減じられた電極材層を好適に形成することが可能となる。
【0033】
なお、以下、本発明の電池をリチウムイオン二次電池として用いる場合の構成要素を確認的に説明する。
【0034】
リチウムイオン二次電池にあっては、充電時、例えば、正極材料(正極活物質)からリチウムイオンが放出され、非水系電解液を介して負極活物質に吸蔵される。また、放電時、例えば、負極活物質からリチウムイオンが放出され、非水系電解液を介して正極材料(正極活物質)に吸蔵される。
【0035】
リチウムイオン二次電池を構成する部材は、電極構造体収納部材(電池缶)に格納されている。リチウムイオン二次電池を構成する部材として、正極、負極、電解質及びセパレータを挙げることができる。正極は、例えば、正極集電体、正極材層から構成される。負極は、例えば、負極集電体、及び負極材層から構成される。また、正極集電体には正極リード部が取り付けられ、負極集電体には負極リード部が取り付けられている。
【0036】
正極を構成する正極集電体の主面には、正極活物質を含む正極材層が形成されている。正極集電体を構成する材料として、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の導電材料を例示することができる。正極活物質として、リチウムを吸蔵・放出可能である正極材料を含んでいる。正極材層は、正極結着剤や正極導電剤等を更に含んでいてもよい。正極材料としてリチウム含有化合物を挙げることができ、高いエネルギー密度が得られるといった観点からは、リチウム含有複合酸化物、リチウム含有リン酸化合物を用いることが好ましい。リチウム含有複合酸化物は、リチウム、及び、1又は2以上の元素(以下、『他元素』と呼ぶ。但し、リチウムを除く)を構成元素として含む酸化物であり、層状岩塩型の結晶構造又はスピネル型の結晶構造を有している。また、リチウム含有リン酸化合物は、リチウム、及び、1又は2以上の元素(他元素)を構成元素として含むリン酸化合物であり、オリビン型の結晶構造を有している。
【0037】
負極を構成する負極集電体の主面には、負極活物質を含む負極材層が形成されている。負極集電体を構成する材料として、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の導電材料を挙げることができる。負極活物質として、リチウムを吸蔵・放出可能である負極材料を含んでいる。負極材層は、負極結着剤や負極導電剤等を更に含んでいてもよい。負極結着剤及び負極導電剤は、正極結着剤及び正極導電剤と同様とすることができる。
【0038】
正極、セパレータ及び負極によって構成される電極構造体は、正極、セパレータ、負極及びセパレータが捲回された状態であってもよいし、正極、セパレータ、負極及びセパレータがスタックされた状態であってもよい。電極構造体は、捲回された状態で電極構造体収納部材に収納されている形態とすることができる。又、電極構造体は、スタックされた状態で電極構造体収納部材に収納されている形態とすることができる。これらの場合、電極構造体収納部材の外形形状は、円筒型又は角型(平板型)である形態とすることができる。リチウムイオン二次電池の形態として、コイン型、ボタン型、円盤型、平板型、角型、円筒型、ラミネート型(ラミネートフィルム型)を挙げることができる。
【0039】
円筒型の二次電池を構成する電極構造体収納部材(電池缶)の材料として、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等、あるいは、これらの合金、ステンレス鋼(SUS)等を挙げることができる。電池缶には、二次電池の充放電に伴う電気化学的な腐食を防止するために、例えばニッケル等のメッキが施されていることが好ましい。ラミネート型(ラミネートフィルム型)の二次電池における外装部材は、プラスチック材料層(融着層)、金属層及びプラスチック材料層(表面保護層)の積層構造を有する形態、即ち、ラミネートフィルムである形態とすることが好ましい。ラミネートフィルム型の二次電池とする場合、例えば、融着層同士が電極構造体を介して対向するように外装部材を折り畳んだ後、融着層の外周縁部同士を融着する。但し、外装部材は、2枚のラミネートフィルムが接着剤等を介して貼り合わされたものでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、これらの重合体等のオレフィン樹脂のフィルムから成る。金属層は、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、ニッケル箔等から成る。表面保護層は、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等から成る。中でも、外装部材は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。但し、外装部材は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレン等の高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。
【0040】
以下、電池がリチウムイオン二次電池から構成される場合において、リチウムイオン二次電池を構成する正極部材、負極部材、正極合剤層、正極活物質、負極合剤層、負極活物質、結着剤、導電剤、セパレータ、非水系電解液について説明する。
【0041】
正極部材において、正極集電体の両面には、正極活物質を含む正極合剤層が形成されている。即ち、正極合剤層は、正極活物質として、リチウムを吸蔵・放出可能である正極材料を含んでいる。正極合剤層は、更に、正極結着剤や正極導電剤等を含んでいてもよい。正極集電体を構成する材料として、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等、又は、これらの何れかを含む合金や、ステンレス鋼等の導電材料を例示することができる。正極集電体あるいは後述する負極集電体の形態として、箔状材料を例示することができる。
【0042】
正極材料としてリチウム含有化合物を挙げることができ、高いエネルギー密度が得られるといった観点からは、リチウム含有複合酸化物、リチウム含有リン酸化合物を用いることが好ましい。リチウム含有複合酸化物は、リチウム、及び、1又は2以上の元素(以下、『他元素』と呼ぶ。但し、リチウムを除く)を構成元素として含む酸化物であり、層状岩塩型の結晶構造又はスピネル型の結晶構造を有している。また、リチウム含有リン酸化合物は、リチウム、及び、1又は2以上の元素(他元素)を構成元素として含むリン酸化合物であり、オリビン型の結晶構造を有している。
【0043】
正極材料を構成する好ましい材料であるリチウム含有複合酸化物、リチウム含有リン酸化合物の詳細は、以下のとおりである。尚、リチウム含有複合酸化物やリチウム含有リン酸化合物を構成する他元素として、特に限定されないが、長周期型周期表における2族~15族に属する元素のいずれか1種類又は2種類以上を挙げることができ、高い電圧が得られるといった観点からは、ニッケル〈Ni〉、コバルト〈Co〉、マンガン〈Mn〉、鉄〈Fe〉を用いることが好ましい。
【0044】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物として、具体的には、式(B)、式(C)、式(D)で表される化合物を例示することができる。
【0045】
LiaMn1-b-cNib11 c2-de (B)
【0046】
ここで、M11は、コバルト〈Co〉、マグネシウム〈Mg〉、アルミニウム〈Al〉、ホウ素〈B〉、チタン〈Ti〉、バナジウム〈V〉、クロム〈Cr〉、鉄〈Fe〉、銅〈Cu〉、亜鉛〈Zn〉、ジルコニウム〈Zr〉、モリブデン〈Mo〉、スズ〈Sn〉、カルシウム〈Ca〉、ストロンチウム〈Sr〉及びタングステン〈W〉から成る群から選択された少なくとも1種類の元素であり、a,b,c,d,eの値は、
0.8≦a≦1.2
0<b<0.5
0≦c≦0.5
b+c<1
-0.1≦d≦0.2
0≦e≦0.1
を満足する。但し、組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。 LiaNi1-b12 b2-cd (C)
【0047】
ここで、M12は、コバルト〈Co〉、マンガン〈Mn〉、マグネシウム〈Mg〉、アルミニウム〈Al〉、ホウ素〈B〉、チタン〈Ti〉、バナジウム〈V〉、クロム〈Cr〉、鉄〈Fe〉、銅〈Cu〉、亜鉛〈Zn〉、モリブデン〈Mo〉、スズ〈Sn〉、カルシウム〈Ca〉、ストロンチウム〈Sr〉及びタングステン〈W〉から成る群から選択された少なくとも1種類の元素であり、a,b,c,dの値は、
0.8 ≦a≦1.2
0.005≦b≦0.5
-0.1 ≦c≦0.2
0≦d≦0.1
を満足する。但し、組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。
LiaCo1-b13 b2-cd (D)
【0048】
ここで、M13は、ニッケル〈Ni〉、マンガン〈Mn〉、マグネシウム〈Mg〉、アルミニウム〈Al〉、ホウ素〈B〉、チタン〈Ti〉、バナジウム〈V〉、クロム〈Cr〉、鉄〈Fe〉、銅〈Cu〉、亜鉛〈Zn〉、モリブデン〈Mo〉、スズ〈Sn〉、カルシウム〈Ca〉、ストロンチウム〈Sr〉及びタングステン〈W〉から成る群から選択された少なくとも1種類の元素であり、a,b,c,dの値は、
0.8≦a≦1.2
0≦b<0.5
-0.1≦c≦0.2
0≦d≦0.1
を満足する。但し、組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。
【0049】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物として、具体的には、LiNiO2、LiCoO2、LiCo0.98Al0.01Mg0.012、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.8Co0.15Al0.052、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、Li1.2Mn0.52Co0.175Ni0.12、Li1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.130.852を例示することができる。また、LiNiMnO系材料として、具体的には、LiNi0.5Mn1.504を例示することができる。
【0050】
例えば、正極活物質としてLi1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.130.852を得る場合、先ず、硫酸ニッケル(NiSO4)と、硫酸コバルト(CoSO4)と、硫酸マンガン(MnSO4)とを混合する。そして、混合物を水に分散させて、水溶液を調製する。次いで、水溶液を十分に攪拌しながら、水溶液に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、共沈物(マンガン・ニッケル・コバルト複合共沈水酸化物)を得る。その後、共沈物を水洗してから乾燥させ、次いで、共沈物に水酸化リチウム一水和塩を添加して、前駆体を得る。そして、大気中において前駆体を焼成(800゜C×10時間)することで、上記の正極活物質を得ることができる。
【0051】
例えば、正極活物質としてLiNi0.5Mn1.504を得る場合、先ず、炭酸リチウム(Li2CO3)と、酸化マンガン(MnO2)と、酸化ニッケル(NiO)とを秤量して、ボールミルを用いて秤量物を混合する。この場合、主要元素の混合比(モル比)をNi:Mn=25:75とする。次いで、大気中において混合物を焼成(800゜C×10時間)した後、冷却する。次に、ボールミルを用いて焼成物を再混合した後、大気中において焼成物を再焼成(700゜C×10時間)することで、上記の正極活物質を得ることができる。
【0052】
また、スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物として、式(E)で表される化合物を例示することができる。
LiaMn2-b14 bcd (E)
【0053】
ここで、M14は、コバルト〈Co〉、ニッケル〈Ni〉、マグネシウム〈Mg〉、アルミニウム〈Al〉、ホウ素〈B〉、チタン〈Ti〉、バナジウム〈V〉、クロム〈Cr〉、鉄〈Fe〉、銅〈Cu〉、亜鉛〈Zn〉、モリブデン〈Mo〉、スズ〈Sn〉、カルシウム〈Ca〉、ストロンチウム〈Sr〉及びタングステン〈W〉から成る群から選択された少なくとも1種類の元素であり、a,b,c,dの値は、
0.9≦a≦1.1
0≦b≦0.6
3.7≦c≦4.1
0≦d≦0.1
を満足する。但し、組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物として、具体的には、LiMn24を例示することができる。
【0054】
更には、オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物として、式(F)で表される化合物を例示することができる。
Lia15PO4 (F)
【0055】
ここで、M15は、コバルト〈Co〉、マンガン〈Mn〉、鉄〈Fe〉、ニッケル〈Ni〉、マグネシウム〈Mg〉、アルミニウム〈Al〉、ホウ素〈B〉、チタン〈Ti〉、バナジウム〈V〉、ニオブ〈Nb〉、銅〈Cu〉、亜鉛〈Zn〉、モリブデン〈Mo〉、カルシウム〈Ca〉、ストロンチウム〈Sr〉、タングステン〈W〉及びジルコニウム〈Zr〉から成る群から選択された少なくとも1種類の元素であり、aの値は、
0.9≦a≦1.1
を満足する。但し、組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物として、具体的には、LiFePO4、LiMnPO4、LiFe0.5Mn0.5PO4、LiFe0.3Mn0.7PO4を例示することができる。
【0056】
あるいは又、リチウム含有複合酸化物として、式(G)で表される化合物を例示することができる。
(Li2MnO3x(LiMnO21-x (G)
ここで、xの値は、
0≦x≦1
を満足する。但し、組成は充放電状態に応じて異なり、xは完全放電状態の値である。
【0057】
正極には、その他、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、二酸化マンガンといった酸化物;二硫化チタン、硫化モリブデンといった二硫化物;セレン化ニオブといったカルコゲン化物;硫黄、ポリアニリン、ポリチオフェンといった導電性高分子が含まれていてもよい。
【0058】
負極部材において、負極集電体の両面には負極合剤層が形成されている。負極集電体を構成する材料として、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等、又は、これらの何れかを含む合金や、ステンレス鋼等の導電材料を例示することができる。負極集電体の表面は、所謂アンカー効果に基づき負極集電体に対する負極合剤層の密着性を向上させるといった観点から、粗面化されていることが好ましい。この場合、少なくとも負極合剤層を形成すべき負極集電体の領域の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法として、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法を挙げることができる。電解処理とは、電解槽中において電解法を用いて負極集電体の表面に微粒子を形成することで負極集電体の表面に凹凸を設ける方法である。あるいは又、負極部材をリチウム箔やリチウムシート、リチウム板から構成することもできる。負極合剤層は、負極活物質として、リチウムを吸蔵・放出可能である負極材料を含んでいる。負極合剤層は、更に、負極結着剤や負極導電剤等を含んでいてもよい。負極結着剤及び負極導電剤は、正極結着剤及び正極導電剤と同様とすることができる。
【0059】
負極活物質を構成する材料として、例えば、炭素材料を挙げることができる。炭素材料は、リチウムの吸蔵・放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られる。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極合剤質の導電性が向上する。炭素材料として、例えば、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、黒鉛(グラファイト)、結晶構造が発達した高結晶性炭素材料を挙げることができる。但し、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は0.37nm以上であることが好ましいし、黒鉛における(002)面の面間隔は0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料として、例えば、熱分解炭素類;ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスといったコークス類;黒鉛類;ガラス状炭素繊維;フェノール樹脂、フラン樹脂等の高分子化合物を適当な温度で焼成(炭素化)することで得ることができる有機高分子化合物焼成体;炭素繊維;活性炭;カーボンブラック類;ポリアセチレン等のポリマー等を挙げることができる。また、炭素材料として、その他、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素を挙げることもできるし、非晶質炭素とすることもできる。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状、鱗片状のいずれであってもよい。
【0060】
あるいは又、負極活物質を構成する材料として、例えば、金属元素、半金属元素のいずれかを、1種類又は2種類以上、構成元素として含む材料(以下、『金属系材料』と呼ぶ)を挙げることができ、これによって、高いエネルギー密度を得ることができる。金属系材料は、単体、合金、化合物のいずれであってもよいし、これらの2種類以上から構成された材料でもよいし、これらの1種類又は2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料であってもよい。合金には、2種類以上の金属元素から成る材料の他、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。金属系材料の組織として、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、及び、これらの2種類以上の共存物を挙げることができる。
【0061】
金属元素、半金属元素として、例えば、リチウムと合金を形成可能である金属元素、半金属元素を挙げることができる。具体的には、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)を例示することができるが、中でも、ケイ素(Si)やスズ(Sn)が、リチウムを吸蔵・放出する能力が優れており、著しく高いエネルギー密度が得られるといった観点から、好ましい。
【0062】
ケイ素を構成元素として含む材料として、ケイ素の単体、ケイ素合金、ケイ素化合物を挙げることができるし、これらの2種類以上から構成された材料であってもよいし、これらの1種類又は2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料であってもよい。スズを構成元素として含む材料として、スズの単体、スズ合金、スズ化合物を挙げることができるし、これらの2種類以上から構成された材料であってもよいし、これらの1種類又は2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料であってもよい。単体とは、あくまで一般的な意味合いでの単体を意味しており、微量の不純物を含んでいてもよく、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
【0063】
ケイ素合金あるいはケイ素化合物を構成するケイ素以外の元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)を挙げることができるし、炭素(C)、酸素(O)を挙げることもできる。
【0064】
ケイ素合金あるいはケイ素化合物として、具体的には、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si34、Si22O、SiOv(0<v≦2、好ましくは、0.2<v<1.4)、LiSiOを例示することができる。
【0065】
スズ合金あるいはスズ化合物を構成するスズ以外の元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)を挙げることができるし、炭素(C)、酸素(O)を挙げることもできる。スズ合金あるいはスズ化合物として、具体的には、SnOw(0<w≦2)、SnSiO3、LiSnO、Mg2Snを例示することができる。特に、スズを構成元素として含む材料は、例えば、スズ(第1構成元素)と共に第2構成元素及び第3構成元素を含む材料(以下、『Sn含有材料』と呼ぶ)であることが好ましい。第2構成元素として、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、セシウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)を挙げることができるし、第3構成元素として、例えば、ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、リン(P)を挙げることができる。Sn含有材料が第2構成元素及び第3構成元素を含んでいると、高い電池容量及び優れたサイクル特性等が得られる。
【0066】
中でも、Sn含有材料は、スズ(Sn)、コバルト(Co)及び炭素(C)を構成元素として含む材料(『SnCoC含有材料』と呼ぶ)であることが好ましい。SnCoC含有材料にあっては、例えば、炭素の含有量が9.9質量%乃至29.7質量%、スズ及びコバルトの含有量の割合{Co/(Sn+Co)}が20質量%乃至70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。SnCoC含有材料は、スズ、コバルト及び炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性又は非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であるため、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1度/分とした場合、1度以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵・放出されると共に、非水系電解液との反応性が低減するからである。SnCoC含有材料は、低結晶性又は非晶質の相に加えて、各構成元素の単体又は一部が含まれている相を含んでいる場合もある。
【0067】
X線回折により得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合、例えば、低結晶性又は非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20度乃至50度の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記の各構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化又は非晶質化しているものと考えられる。
【0068】
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が金属元素又は半金属元素と結合していることが好ましい。スズ等の凝集、結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、軟X線源としてAl-Kα線又はMg-Kα線等を用いたX線光電子分光法(XPS)を用いて確認可能である。炭素の少なくとも一部が金属元素又は半金属元素等と結合している場合、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。尚、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるように、エネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとして、そのピークをエネルギー基準とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られる。そのため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析して、両者のピークを分離すればよい。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0069】
SnCoC含有材料は、構成元素がスズ、コバルト及び炭素だけである材料(SnCoC)に限られない。SnCoC含有材料は、例えば、スズ、コバルト及び炭素に加えて、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)等のいずれか1種類又は2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
【0070】
SnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄及び炭素を構成元素として含む材料(以下、『SnCoFeC含有材料』と呼ぶ)も好ましい材料である。SnCoFeC含有材料の組成は任意である。一例を挙げると、鉄の含有量を少なめに設定する場合、炭素の含有量が9.9質量%乃至29.7質量%、鉄の含有量が0.3質量%乃至5.9質量%、スズ及びコバルトの含有量の割合{Co/(Sn+Co)}が30質量%乃至70質量%である。また、鉄の含有量を多めに設定する場合、炭素の含有量が11.9質量%乃至29.7質量%、スズ、コバルト及び鉄の含有量の割合{(Co+Fe)/(Sn+Co+Fe)}が26.4質量%乃至48.5質量%、コバルト及び鉄の含有量の割合{Co/(Co+Fe)}が9.9質量%乃至79.5質量%である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。SnCoFeC含有材料の物性(半値幅等)は、上記のSnCoC含有材料の物性と同様である。
【0071】
あるいは又、その他、負極活物質を構成する材料として、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデンといった金属酸化物;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールといった高分子化合物を挙げることができる。
【0072】
中でも、負極活物質を構成する材料は、以下の理由により、炭素材料及び金属系材料の双方を含んでいることが好ましい。即ち、金属系材料、特に、ケイ素及びスズの少なくとも一方を構成元素として含む材料は、理論容量が高いという利点を有する反面、充放電時において激しく膨張・収縮し易い。一方、炭素材料は、理論容量が低い反面、充放電時において膨張・収縮し難いという利点を有する。よって、炭素材料及び金属系材料の双方を用いることで、高い理論容量(云い換えれば、電池容量)を得つつ、充放電時の膨張・収縮が抑制される。
【0073】
正極合剤層や負極合剤層は、例えば、塗布法に基づき形成することができる。即ち、粒子(粉末)状の正極活物質あるいは負極活物質を正極結着剤や負極結着剤等と混合した後、混合物を有機溶剤等の溶媒に分散させ、正極集電体や負極集電体に塗布する方法(例えば、前述したダイ及びバックロールを供えた塗布装置を用いた塗布法)に基づき形成することができる。但し、塗布法はこのような方法に限定するものではなく、更には、塗布法に限定するものでもなく、例えば、負極活物質を成型することで負極部材を得ることができるし、正極活物質を成型することで正極部材を得ることができる。成型には、例えば、プレス機を用いればよい。あるいは又、気相法、液相法、溶射法、焼成法(焼結法)に基づき形成することができる。気相法とは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法といったPVD法(物理的気相成長法)や、プラズマCVD法を含む各種CVD法(化学的気相成長法)である。液相法として、電解メッキ法や無電解メッキ法を挙げることができる。溶射法とは、溶融状態又は半溶融状態の正極活物質あるいは負極活物質を正極集電体あるいは負極集電体に噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法を用いて溶媒に分散された混合物を負極集電体に塗布した後、負極結着剤等の融点よりも高い温度で熱処理する方法であり、雰囲気焼成法、反応焼成法、ホットプレス焼成法を挙げることができる。
【0074】
正極結着剤及び負極結着剤として、具体的には、スチレンブタジエンゴム(SBR)といったスチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエンといった合成ゴム;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂やこれらのフッ素系樹脂の共重合体、変性物;ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂;ポリアクリロニトリル(PAN)やポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;カルボキシメチルセルロース(CMC)といった高分子材料等を例示することができるし、これら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種類を例示することもできる。ポリフッ化ビニリデンの共重合体として、より具体的には、例えばポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体を挙げることができる。また、正極結着剤及び負極結着剤として導電性高分子を用いてもよい。導電性高分子として、例えば、置換又は無置換のポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及び、これらから選ばれた1種類又は2種類から成る(共)重合体等を用いることができる。
【0075】
正極導電剤及び負極導電剤として、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、気相成長カーボンファイバー(Vapor Growth Carbon Fiber:VGCF)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の炭素材料を挙げることができるし、これらのうちの1種類又は2種類以上を混合して用いることができる。カーボンナノチューブとして、例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)等のマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)等を挙げることができる。また、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料等を用いてもよい。
【0076】
充電途中に意図せずにリチウムが負極部材に析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量は、正極材料の放電容量よりも大きいことが好ましい。即ち、リチウムを吸蔵・放出可能である負極材料の電気化学当量は、正極材料の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。尚、負極部材に析出するリチウムとは、例えば、電極反応物質がリチウムである場合にはリチウム金属である。
【0077】
正極リード部は、スポット溶接又は超音波溶接に基づき、正極集電体に取り付けることができる。正極リード部は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的及び化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくともよい。正極リード部の材料として、例えば、アルミニウム(Al)やニッケル(Ni)等を挙げることができる。負極リード部は、スポット溶接又は超音波溶接に基づき、負極集電体に取り付けることができる。負極リード部は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的及び化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくともよい。負極リード部の材料として、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等を挙げることができる。正極リード部や負極リード部は、正極集電体や負極集電体から正極集電体や負極集電体の一部が突出した突出部から構成することもできる。
【0078】
セパレータは、正極部材と負極部材とを隔離して、正極部材と負極部材の接触に起因する電流の短絡を防止しながら、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、芳香族ポリアミドといった合成樹脂から成る多孔質膜;セラミック等の多孔質膜;ガラス繊維(例えば、ガラスフィルターを含む);液晶ポリエステル繊維や芳香族ポリアミド繊維、セルロース系繊維から成る不織布、セラミック製の不織布等から構成されているが、中でも、ポリプロピレン、ポリエチレンの多孔質フィルムが好ましい。あるいは又、セパレータを2種類以上の多孔質膜が積層された積層膜から構成することもできるし、無機物層が塗布されたセパレータや、無機物含有セパレータとすることもできる。中でも、ポリオレフィン系樹脂から成る多孔質膜は短絡防止効果に優れ、且つ、シャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。ポリエチレン樹脂は、100゜C以上、160゜C以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、且つ、電気化学的安定性にも優れているので、セパレータを構成する材料として特に好ましい。他にも、化学的安定性を備えた樹脂を、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合又はブレンド化した材料を用いることができる。あるいは、多孔質膜は、例えば、ポリプロピレン樹脂層と、ポリエチレン樹脂層と、ポリプロピレン樹脂層とを順次に積層した3層以上の構造を有していてもよい。セパレータの厚さは、5μm以上、50μm以下であることが好ましく、7μm以上、30μm以下であることがより好ましい。セパレータは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下すると共に、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、セパレータの機械的強度が低下する。
【0079】
また、セパレータは、基材である多孔質膜の片面又は両面に樹脂層が設けられた構造を有していてもよい。樹脂層として、無機物が担持された多孔性のマトリックス樹脂層を挙げることができる。このような構造を採用することで耐酸化性を得ることができ、セパレータの劣化を抑制することができる。マトリックス樹脂層を構成する材料として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を挙げることができ、また、これらの共重合体を用いることも可能である。無機物として、金属、半導体、又は、これらの酸化物、窒化物を挙げることができる。例えば、金属としてアルミニウム(Al)、チタン(Ti)等、半導体としてケイ素(Si)、ホウ素(B)等を挙げることができる。また、無機物は、実質的に導電性が無く、熱容量の大きいものが好ましい。熱容量が大きいと、電流発熱時のヒートシンクとして有用であり、電池の熱暴走を一層効果的に抑制することが可能となる。このような無機物として、アルミナ(Al23)、ベーマイト(アルミナの一水和物)、タルク、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、二酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素等の酸化物又は窒化物を挙げることができる。無機物の粒径として、1nm乃至10μmを挙げることができる。1nmより小さいと入手が困難であり、また、入手できたとしてもコスト的に見合わない。10μmより大きいと電極間距離が大きくなり、限られたスペースで活物質充填量が十分得られず、電池容量が低くなる。無機物は、基材としての多孔質膜に含まれていてもよい。樹脂層は、例えば、マトリックス樹脂、溶媒及び無機物から成るスラリーを基材(多孔質膜)上に塗布し、マトリックス樹脂の貧溶媒、且つ、溶媒の親溶媒浴中を通過させて相分離させ、その後、乾燥させることで得ることができる。
【0080】
セパレータの突き刺し強度として、100gf乃至1kgf、好ましくは100gf乃至480gfを挙げることができる。突き刺し強度が低いと短絡が発生する虞があり、高いとイオン伝導性が低下する虞がある。セパレータの透気度として、30秒/100cc乃至1000秒/100cc、好ましくは30秒/100cc乃至680秒/100ccを挙げることができる。透気度が低すぎると短絡が発生する虞があり、高すぎるとイオン伝導性が低下する虞がある。
【0081】
リチウムイオン二次電池において使用に適した非水系電解液を構成するリチウム塩として、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiTaF6、LiNbF6、LiSiF6、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiC49SO3、Li(FSO22N、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li(CF3SO23C、LiBF3(C25)、LiB(C242、LiB(C654、LiPF3(C253、1/2Li21212、Li2SiF6、LiCl、LiBr、LiI、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレートを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0082】
また、有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)といった環状炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレン及び炭酸プロピレンの内の一方を用いることが好ましく、あるいは又、両方を混合して用いることが一層好ましく、これによって、サイクル特性の向上を図ることができる。また、溶媒として、高いイオン伝導性を得るといった観点から、これらの環状炭酸エステルと、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピル等の鎖状の炭酸エステルとを混合して用いることもできる。あるいは又、溶媒に、2,4-ジフルオロアニソールや炭酸ビニレンが含まれていてもよい。2,4-ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができる。よって、これらを混合して用いれば、放電容量及びサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0083】
あるいは又、有機溶媒として、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、プロピルメチルカーボネート(PMC)、プロピルエチルカーボネート(PEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)といった鎖状炭酸エステル;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、1,3-ジオキソラン(DOL)、4-メチル-1,3-ジオキソラン(4-MeDOL)といった環状エーテル;1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)といった鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)といった環状エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酪酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルといった鎖状エステルを挙げることができる。あるいは又、有機溶媒として、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリジノン(NMP)、N-メチルオキサゾリジノン(NMO)、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリメチルホスフェート(TMP)、ニトロメタン(NM)、ニトロエタン(NE)、スルホラン(SL)、メチルスルホラン、アセトニトリル(AN)、アニソール、プロピオニトリル、グルタロニトリル(GLN)、アジポニトリル(ADN)、メトキシアセトニトリル(MAN)、3-メトキシプロピオニトリル(MPN)、ジエチルエーテル、炭酸ブチレン、3-メトキシプロピロニトリル、N,N-ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、リン酸トリメチルを挙げることができる。あるいは又、イオン液体を用いることもできる。イオン液体として、公知のものを用いることができ、必要に応じて選択すればよい。
【0084】
非水系電解液及び保持用高分子化合物によって電解質層を構成することもできる。非水系電解液は、例えば、保持用高分子化合物によって保持されている。このような形態における電解質層は、ゲル状電解質あるいは固体状電解質であり、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、非水系電解液の漏液が防止される。電解質は、液系電解質とすることもできるし、ゲル状電解質あるいは固体状電解質とすることもできる。ゲル状電解質では、電解液の真空注入プロセスが必要とされず、連続塗工プロセスを採用することができるため、大面積のリチウムイオン電池を製造する際に生産性の点で優位である。
【0085】
保持用高分子化合物として、具体的には、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、塩化ビニルを例示することができる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、保持用高分子化合物は共重合体であってもよい。共重合体として、具体的には、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を例示することができるが、中でも、電気化学的な安定性といった観点から、単独重合体としてポリフッ化ビニリデンが好ましく、共重合体としてポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好ましい。また、フィラーとして、Al23、SiO2、TiO2、BN(窒化ホウ等の耐熱性の高い化合物を含んでいてもよい。
【0086】
以下、円筒型のリチウムイオン二次電池から成るリチウムイオン二次電池を説明する。円筒型のリチウムイオン二次電池の模式的な断面図を図5に示す。また、リチウムイオン二次電池を構成する電極構造体の長手方向に沿った模式的な一部断面図を図6に示す。ここで、図6は、正極リード部及び負極リード部が配されていない部分の模式的な一部断面図であり、図面の簡素化のために電極構造体を平坦に示すが、実際には、電極構造体は捲回されているので、湾曲している。
【0087】
リチウムイオン二次電池にあっては、ほぼ中空円柱状の電極構造体収納部材101の内部に、電極構造体111及び一対の絶縁板102,103が収納されている。電極構造体111は、例えば、セパレータ116を介して正極部材112と負極部材114とを積層して電極構造体を得た後、電極構造体を捲回することで作製することができる。
【0088】
電極構造体収納部材(電池缶)101は、一端部が閉鎖され、他端部が開放された中空構造を有しており、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)等から作製されている。電極構造体収納部材101の表面にはニッケル(Ni)等がメッキされていてもよい。一対の絶縁板102,103は、電極構造体111を挟むと共に、電極構造体111の捲回周面に対して垂直に延在するように配置されている。電極構造体収納部材101の開放端部には、電池蓋104、安全弁機構105及び熱感抵抗素子(PTC素子、Positive Temperature Coefficient 素子)106がガスケット107を介してかしめられており、これによって、電極構造体収納部材101は密閉されている。電池蓋104は、例えば、電極構造体収納部材101と同様の材料から作製されている。安全弁機構105及び熱感抵抗素子106は、電池蓋104の内側に設けられており、安全弁機構105は、熱感抵抗素子106を介して電池蓋104と電気的に接続されている。安全弁機構105にあっては、内部短絡や、外部からの加熱等に起因して内圧が一定以上になると、ディスク板105Aが反転する。そして、これによって、電池蓋104と電極構造体111との電気的接続が切断される。大電流に起因する異常発熱を防止するために、熱感抵抗素子106の抵抗は温度の上昇に応じて増加する。ガスケット107は、例えば、絶縁性材料から作製されている。ガスケット107の表面にはアスファルト等が塗布されていてもよい。
【0089】
電極構造体111の捲回中心には、センターピン108が挿入されている。但し、センターピン108は、捲回中心に挿入されていなくともよい。正極部材112には、アルミニウム等の導電性材料から作製された正極リード部113が接続されている。具体的には、正極リード部113は正極集電体112Aに取り付けられている。負極部材114には、銅等の導電性材料から作製された負極リード部115が接続されている。具体的には、負極リード部115は負極集電体114Aに取り付けられている。負極リード部115は、電極構造体収納部材101に溶接されており、電極構造体収納部材101と電気的に接続されている。正極リード部113は、安全弁機構105に溶接されていると共に、電池蓋104と電気的に接続されている。尚、図5に示した例では、負極リード部115は1箇所(捲回された電極構造体の最外周部)であるが、2箇所(捲回された電極構造体の最外周部及び最内周部)に設けられている場合もある。
【0090】
電極構造体111は、正極集電体112A上に正極材層112Bが形成された正極部材112と、負極集電体114A上に負極合剤層114Bが形成された負極部材114とが、セパレータ116を介して積層されて成る。正極リード部113を取り付ける正極集電体112Aの領域には、正極合剤層112Bは形成されていないし、負極リード部115を取り付ける負極集電体114Aの領域には、負極合剤層114Bは形成されていない。
【0091】
以下、リチウムイオン二次電池の仕様を以下の表に例示する。
【0092】
正極集電体112A 厚さ20μmのアルミニウム箔
正極合剤層112B 片面当たり厚さ50μm
正極リード部113 厚さ100μmのアルミニウム(Al)箔
負極集電体114A 厚さ20μmの銅箔
負極合剤層114B 片面当たり厚さ50μm
負極リード部115 厚さ100μmのニッケル(Ni)箔
【0093】
正極部材112を、以下の方法に基づき作製することができる。即ち、先ず、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを混合した後、混合物を空気中において焼成(900゜C×5時間)して、リチウム含有複合酸化物(LiCoO2)を得る。この場合、混合比をモル比で、例えば、Li2CO3:CoO3=0.5:1とする。そして、正極活物質(LixCoO2)91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛、グラファイト)6質量部とを混合して、正極合剤とする。そして、正極合剤を有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)と混合して、ペースト状の正極合剤スラリーとする。次いで、コーティング装置を用いて帯状の正極集電体112A(基材に相当し、厚さ20μmのアルミニウム箔から成る)の両面に正極合剤スラリーを塗布した後、正極合剤スラリーを乾燥させて、実施例1~実施例3において説明した積層構造体(正極合剤層112B)を形成する。そして、実施例1~実施例3において説明した方法、実施例1~実施例3において説明したロールプレス機を用いて積層構造体の第1層及び第2層(正極合剤層112B)をプレス(加圧、圧縮)する。
【0094】
負極部材114を作製する場合、先ず、負極活物質(黒鉛(グラファイト)、あるいは、黒鉛とシリコンとの混合材料)97質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部とを混合して、負極合剤とする。黒鉛の平均粒径d50を20μmとする。あるいは又、負極結着剤として、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体のアクリル変性体1.5質量部と、カルボキシメチルセルロース1.5質量部との混合物を用いる。次いで、負極合剤を有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)と混合して、ペースト状の負極合剤スラリーとする。そして、コーティング装置を用いて帯状の負極集電体114Aの両面に負極合剤スラリーを塗布した後、負極合剤スラリーを乾燥させて、負極材層114Bを形成する。そして、ロールプレス機を用いて負極材層114Bをプレス(加圧、圧縮)する。
【0095】
セパレータ116は、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムから成る。また、以下の表に示す組成を有する非水系の電解液が、電極構造体111に含浸されている。尚、非水系電解液の溶媒とは、液状の材料だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0096】
有機溶媒 :EC/PC 質量比で1/1
非水系電解液を構成するリチウム塩:LiPF6 1.0モル/有機溶媒1kg
その他の添加剤 :炭酸ビニレン(VC) 1質量%
【0097】
有機溶媒 :EC/DMC 質量比で3/5
非水系電解液を構成するリチウム塩:LiPF6 1.0モル/有機溶媒1kg
【0098】
有機溶媒 :EC/DMC/FEC
質量比で2.7/6.3/1.0
非水系電解液を構成するリチウム塩:LiPF6 1.0モル/有機溶媒1kg
【0099】
あるいは又、非水系電解液を調製する場合、第1化合物、第2化合物、第3化合物、及び、他の材料を混合、撹拌する。第1化合物として、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム(LiFSI)又はビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiTFSI)を用いる。また、第2化合物として、非酸素含有モノニトリル化合物であるアセトニトリル(AN)、プロピオニトリル(PN)若しくはブチロニトリル(BN)、又は、酸素含有モノニトリル化合物であるメトキシアセトニトリル(MAN)を用いる。更には、第3化合物として、不飽和環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)、炭酸ビニルエチレン(VEC)若しくは炭酸メチレンエチレン(MEC)、又は、ハロゲン化炭酸エステルである4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)若しくは炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)、又は、ポリニトリル化合物であるスクシノニトリル(SN)を用いる。更には、他の材料として、環状炭酸エステルである炭酸エチレン(EC)、鎖状炭酸エステルである炭酸ジメチル(DMC)、電解質塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を用いる。但し、電解液は、このような組成に限定するものではない。
【0100】
リチウムイオン二次電池は、例えば、以下の手順に基づき製造することができる。
【0101】
まず、上述したとおり、正極集電体112Aに正極材層112Bを形成し、負極集電体114Aに負極材層114Bを形成する。
【0102】
その後、溶接法等を用いて、正極集電体112Aに正極リード部113を取り付ける。また、溶接法等を用いて、負極集電体114Aに負極リード部115を取り付ける。次に、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムから成るセパレータ116を介して正極部材112と負極部材114とを積層し、捲回して、(より具体的には、正極部材112/セパレータ116/負極部材114/セパレータ116の電極構造体を捲回して)、電極構造体111を作製した後、最外周部に保護テープ(図示せず)を貼り付ける。その後、電極構造体111の中心にセンターピン108を挿入する。次いで、一対の絶縁板102,103で電極構造体111を挟みながら、電極構造体111を電極構造体収納部材(電池缶)101の内部に収納する。この場合、溶接法等を用いて、正極リード部113の先端部を安全弁機構105に取り付けると共に、負極リード部115の先端部を電極構造体収納部材101に取り付ける。その後、減圧方式に基づき有機電解液あるいは非水系電解液を注入して、有機電解液あるいは非水系電解液をセパレータ116に含浸させる。次いで、ガスケット107を介して電極構造体収納部材101の開口端部に電池蓋104、安全弁機構105及び熱感抵抗素子106をかしめる。
【0103】
以下、ラミネート型のリチウムイオン二次電池から成るリチウムイオン二次電池を説明する。リチウムイオン二次電池は平板型のラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池から成り、正極部材、セパレータ及び負極部材が捲回されている。二次電池の模式的な分解斜視図を図7及び図8Aに示し、図7及び図8Aに示す電極構造体の矢印A-Aに沿った模式的な拡大断面図(YZ平面に沿った模式的な拡大断面図)を図8Bに示す。更には、図8Bに示す電極構造体の一部を拡大した模式的な一部断面図(XY平面に沿った模式的な一部断面図)は、図6に示したと同様である。
【0104】
当該二次電池にあっては、ラミネートフィルムから成る外装部材120の内部に、電極構造体111が収納されている。電極構造体111は、セパレータ116及び電解質層118を介して正極部材112と負極部材114とを積層した後、この積層構造体を捲回することで作製することができる。正極部材112には正極リード部113が取り付けられており、負極部材114には負極リード部115が取り付けられている。電極構造体111の最外周部は、保護テープ119によって保護されている。
【0105】
正極リード部113及び負極リード部115は、外装部材120の内部から外部に向かって同一方向に突出している。正極リード部113は、アルミニウム等の導電性材料から形成されている。負極リード部115は、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性材料から形成されている。これらの導電性材料は、例えば、薄板状又は網目状である。
【0106】
外装部材120は、図7に示す矢印Rの方向に折り畳み可能な1枚のフィルムであり、外装部材120の一部には、電極構造体111を収納するための窪み(エンボス)が設けられている。外装部材120は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。リチウムイオン二次電池の製造工程では、融着層同士が電極構造体111を介して対向するように外装部材120を折り畳んだ後、融着層の外周縁部同士を融着する。但し、外装部材120は、2枚のラミネートフィルムが接着剤等を介して貼り合わされたものでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムから成る。金属層は、例えば、アルミニウム箔等から成る。表面保護層は、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等から成る。中でも、外装部材120は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。但し、外装部材120は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレン等の高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。具体的には、ナイロンフィルム(厚さ30μm)と、アルミニウム箔(厚さ40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)とが外側からこの順に積層された耐湿性のアルミラミネートフィルム(総厚100μm)から成る。
【0107】
外気の侵入を防止するために、外装部材120と正極リード部113との間、及び、外装部材120と負極リード部115との間には、密着フィルム121が挿入されている。密着フィルム121は、正極リード部113及び負極リード部115に対して密着性を有する材料、例えば、ポリオレフィン樹脂等、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から成る。
【0108】
図8Bに示すように、正極部材112は、正極集電体112Aの両面に正極合剤層112Bを有している。また、負極部材114は、負極集電体114Aの両面に負極合剤層114Bを有している。
【0109】
電解質層は、非水系電解液及び保持用高分子化合物を含んでおり、非水系電解液は、保持用高分子化合物によって保持されている構成とすることもできる。このような電解質層は、ゲル状電解質であり、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、非水系電解液の漏液が防止される。電解質層は、更に、添加剤等の他の材料を含んでいてもよい。
【0110】
尚、ゲル状の電解質である電解質層において、非水系電解液の溶媒とは、液状の材料だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、高分子化合物も溶媒に含まれる。ゲル状の電解質層に代えて、非水系電解液をそのまま用いてもよい。この場合、非水系電解液が電極構造体に含浸される。
【0111】
具体的には、電解質層を形成する場合、先ず、非水系電解液を調製する。そして、非水系電解液と、保持用高分子化合物と、有機溶剤(炭酸ジメチル)とを混合して、ゾル状の前駆体溶液を調製する。保持用高分子化合物として、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの共重合体(ヘキサフルオロプロピレンの共重合量=6.9質量%)を用いる。次いで、正極部材及び負極部材に前駆体溶液を塗布した後、前駆体溶液を乾燥させて、ゲル状の電解質層を形成する。
【0112】
ゲル状の電解質層を備えたリチウムイオン二次電池は、例えば、以下の3種類の手順に基づき製造することができる。
【0113】
第1の手順にあっては、先ず、正極集電体112Aの両面に正極合剤層112Bを形成し、負極集電体114Aの両面に負極合剤層114Bを形成する。一方、非水系電解液、保持用高分子化合物及び有機溶剤を混合して、ゾル状の前駆体溶液を調製する。そして、正極部材112及び負極部材114に前駆体溶液を塗布した後、前駆体溶液を乾燥させて、ゲル状の電解質層を形成する。その後、溶接法等を用いて、正極集電体112Aに正極リード部113を取り付け、負極集電体114Aに負極リード部115を取り付ける。次に、微孔性プリプロピレンフィルムから成るセパレータ116を介して正極部材112と負極部材114とを積層し、捲回して、電極構造体111を作製した後、最外周部に保護テープ119を貼り付ける。その後、電極構造体111を挟むように外装部材120を折り畳んだ後、熱融着法等を用いて外装部材120の外周縁部同士を接着させて、外装部材120の内部に電極構造体111を封入する。尚、正極リード部113及び負極リード部115と外装部材120との間に密着フィルム(酸変性プロピレンフィルム)121を挿入しておく。
【0114】
あるいは又、第2の手順にあっては、先ず、正極部材112及び負極部材114を作製する。そして、正極部材112に正極リード部113を取り付け、負極部材114に負極リード部115を取り付ける。その後、セパレータ116を介して正極部材112と負極部材114とを積層し、捲回して、電極構造体111の前駆体である捲回体を作製した後、捲回体の最外周部に保護テープ119を貼り付ける。次いで、捲回体を挟むように外装部材120を折り畳んだ後、熱融着法等を用いて外装部材120の内の一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着し、袋状の外装部材120の内部に捲回体を収納する。一方、非水系電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを混合して、電解質用組成物を調製する。そして、袋状の外装部材120の内部に電解質用組成物を注入した後、熱融着法等を用いて外装部材120を密封する。その後、モノマーを熱重合させて、高分子化合物を形成する。これによって、ゲル状の電解質層が形成される。
【0115】
あるいは又、第3の手順にあっては、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ116を用いることを除き、第2の手順と同様にして、捲回体を作製して袋状の外装部材120の内部に収納する。セパレータ116に塗布される高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体又は多元共重合体)等である。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体等である。フッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種類又は2種類以上の高分子化合物を用いてもよい。その後、非水系電解液を調製して外装部材120の内部に注入した後、熱融着法等を用いて外装部材120の開口部を密封する。次いで、外装部材120に荷重を加えながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ116を正極部材112及び負極部材114に密着させる。これによって、非水系電解液が高分子化合物に含浸すると共に、高分子化合物がゲル化し、電解質層が形成される。
【0116】
第3の手順では、第1の手順よりもリチウムイオン二次電池の膨れが抑制される。また、第3の手順では、第2の手順と比較して、溶媒及び高分子化合物の原料であるモノマー等が電解質層中に殆ど残存しないため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。そのため、正極部材112、負極部材114及びセパレータ116と電解質層とが十分に密着する。
【0117】
あるいは又、負極活物質(ケイ素)と負極結着剤の前駆体(ポリアミック酸)とを混合して、負極合剤とすることもできる。この場合、混合比を乾燥質量比でケイ素:ポリアミック酸=80:20とする。ケイ素の平均粒径d50を1μmとする。ポリアミック酸の溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン及びN,N-ジメチルアセトアミドを用いる。また、圧縮成型の後、真空雰囲気中において負極合剤スラリーを、100℃×12時間といった条件で加熱する。これによって、負極結着剤であるポリイミドが形成される。
【0118】
以下、本発明の適用例について説明する。
【0119】
上記の電極を有する電池(具体的には、リチウムイオン二次電池)を、駆動用・作動用の電源又は電力蓄積用の電力貯蔵源として利用可能な機械、機器、器具、装置、システム(複数の機器等の集合体)に使用されるリチウムイオン二次電池に対して、特に限定されることなく、適用することができる。電源として使用されるリチウムイオン二次電池は、主電源(優先的に使用される電源)であってもよいし、補助電源(主電源に代えて、又は、主電源から切り換えて使用される電源)であってもよい。リチウムイオン二次電池を補助電源として使用する場合、主電源はリチウムイオン二次電池に限られない。
【0120】
リチウムイオン二次電池の用途として、具体的には、ビデオカメラやカムコーダ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、テレビジョン受像機、各種表示装置、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、音楽プレーヤ、携帯用ラジオ、電子ブックや電子新聞等の電子ペーパー、PDAを含む携帯情報端末といった各種電子機器、電気機器(携帯用電子機器を含む);玩具;電気シェーバ等の携帯用生活器具;室内灯等の照明器具;ペースメーカや補聴器等の医療用電子機器;メモリカード等の記憶用装置;着脱可能な電源としてパーソナルコンピュータ等に用いられる電池パック;電動ドリルや電動鋸等の電動工具;非常時等に備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステム等の電力貯蔵システムやホームエネルギーサーバ(家庭用蓄電装置)、電力供給システム;蓄電ユニットやバックアップ電源;電動自動車、電動バイク、電動自転車、セグウェイ(登録商標)等の電動車両;航空機や船舶の電力駆動力変換装置(具体的には、例えば、動力用モータ)の駆動を例示することができるが、これらの用途に限定するものではない。
【0121】
中でも、本発明におけるリチウムイオン二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電力供給システム、電動工具、電子機器、電気機器等に適用されることが有効である。優れた電池特性が要求されるため、本発明におけるリチウムイオン二次電池を用いることで、有効に性能向上を図ることができる。電池パックは、リチウムイオン二次電池を用いた電源であり、所謂組電池等である。電動車両は、リチウムイオン二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車等)であってもよい。電力貯蔵システム(電力供給システム)は、リチウムイオン二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システム(電力供給システム)では、電力貯蔵源であるリチウムイオン二次電池に電力が蓄積されているため、電力を利用して家庭用の電気製品等が使用可能となる。電動工具は、リチウムイオン二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリル等)が可動する工具である。電子機器や電気機器は、リチウムイオン二次電池を作動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
【0122】
以下、リチウムイオン二次電池の幾つかの適用例について具体的に説明する。尚、以下で説明する各適用例の構成は、あくまで一例であり、構成は適宜変更可能である。
【0123】
電池パックは、1つのリチウムイオン二次電池を用いた簡易型の電池パック(所謂ソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器等に搭載される。あるいは又、例えば、2並列3直列となるように接続された6つのリチウムイオン二次電池から構成された組電池を備えている。尚、リチウムイオン二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。
【0124】
単電池を用いた電池パックを分解した模式的な斜視図を図9に示す。電池パックは、1つのリチウムイオン二次電池を用いた簡易型の電池パック(所謂ソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器等に搭載される。電池パックは、例えば、実施例5において説明したリチウムイオン二次電池から成る電源131、及び、電源131に接続された回路基板133を備えている。電源131には、正極リード部113及び負極リード部115が取り付けられている。
【0125】
電源131の両側面には、一対の粘着テープ135が貼り付けられている。回路基板133には、保護回路(PCM:Protection Circuit Module)が設けられている。回路基板133は、タブ132Aを介して正極リード部113に接続され、タブ132Bを介して負極リード部115に接続されている。また、回路基板133には、外部接続用のコネクタ付きリード線134が接続されている。回路基板133が電源131に接続された状態において、回路基板133は、ラベル136及び絶縁シート137によって上下から保護されている。ラベル136を貼り付けることで、回路基板133及び絶縁シート137は固定される。回路基板133は、図示しない制御部、スイッチ部、PTC、及び、温度検出部を備えている。電源131は、図示しない正極端子及び負極端子を介して外部と接続可能であり、電源131は、正極端子及び負極端子を介して充放電される。温度検出部は、温度検出端子(所謂、T端子)を介して温度を検出可能である。
【0126】
次に、電動車両の一例であるハイブリッド自動車といった電動車両の構成を表すブロック図を図10Aに示す。電動車両は、例えば、金属製の筐体200の内部に、制御部201、各種センサ202、電源203、エンジン211、発電機212、インバータ213,214、駆動用のモータ215、差動装置216、トランスミッション217及びクラッチ218を備えている。その他、電動車両は、例えば、差動装置216やトランスミッション217に接続された前輪駆動軸221、前輪222、後輪駆動軸223、後輪224を備えている。
【0127】
電動車両は、例えば、エンジン211又はモータ215のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン211は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジン等である。エンジン211を動力源とする場合、エンジン211の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置216、トランスミッション217及びクラッチ218を介して前輪222又は後輪224に伝達される。エンジン211の回転力は発電機212にも伝達され、回転力を利用して発電機212が交流電力を発生させ、交流電力はインバータ214を介して直流電力に変換され、電源203に蓄積される。一方、変換部であるモータ215を動力源とする場合、電源203から供給された電力(直流電力)がインバータ213を介して交流電力に変換され、交流電力を利用してモータ215を駆動する。モータ215によって電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置216、トランスミッション217及びクラッチ218を介して前輪222又は後輪224に伝達される。
【0128】
図示しない制動機構を介して電動車両が減速すると、減速時の抵抗力がモータ215に回転力として伝達され、その回転力を利用してモータ215が交流電力を発生させるようにしてもよい。交流電力はインバータ213を介して直流電力に変換され、直流回生電力は電源203に蓄積される。
【0129】
制御部201は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPU等を備えている。電源203は、実施例4や実施例5において説明した1又は2以上のリチウムイオン二次電池(図示せず)を備えている。電源203は、外部電源と接続され、外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積する構成とすることもできる。各種センサ202は、例えば、エンジン211の回転数を制御すると共に、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。各種センサ202は、例えば、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等を備えている。
【0130】
尚、電動車両がハイブリッド自動車である場合について説明したが、電動車両は、エンジン211を用いずに電源203及びモータ215だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0131】
次に、電力貯蔵システム(電力供給システム)の構成を表すブロック図を図10Bに示す。電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅及び商業用ビル等の家屋230の内部に、制御部231、電源232、スマートメータ233、及び、パワーハブ234を備えている。
【0132】
電源232は、例えば、家屋230の内部に設置された電気機器(電子機器)235に接続されていると共に、家屋230の外部に停車している電動車両237に接続可能である。また、電源232は、例えば、家屋230に設置された自家発電機236にパワーハブ234を介して接続されていると共に、スマートメータ233及びパワーハブ234を介して外部の集中型電力系統238に接続可能である。電気機器(電子機器)235は、例えば、1又は2以上の家電製品を含んでいる。家電製品として、例えば、冷蔵庫、エアコンディショナー、テレビジョン受像機、給湯器等を挙げることができる。自家発電機236は、例えば、太陽光発電機や風力発電機等から構成されている。電動車両237として、例えば、電動自動車、ハイブリッド自動車、電動オートバイ、電動自転車、セグウェイ(登録商標)等を挙げることができる。集中型電力系統238として、商用電源、発電装置、送電網、スマートグリッド(次世代送電網)を挙げることができるし、また、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所、風力発電所等を挙げることもできるし、集中型電力系統238に備えられた発電装置として、種々の太陽電池、燃料電池、風力発電装置、マイクロ水力発電装置、地熱発電装置等を例示することができるが、これらに限定するものではない。
【0133】
制御部231は、電力貯蔵システム全体の動作(電源232の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPU等を備えている。電源232は、実施例4や実施例5において説明した1又は2以上のリチウムイオン二次電池(図示せず)を備えている。スマートメータ233は、例えば、電力需要側の家屋230に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能である。そして、スマートメータ233は、例えば、外部と通信しながら、家屋230における需要・供給のバランスを制御することで、効率的で安定したエネルギー供給が可能となる。
【0134】
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統238からスマートメータ233及びパワーハブ234を介して電源232に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機236からパワーハブ234を介して電源232に電力が蓄積される。電源232に蓄積された電力は、制御部231の指示に応じて電気機器(電子機器)235及び電動車両237に供給されるため、電気機器(電子機器)235の作動が可能になると共に、電動車両237が充電可能になる。即ち、電力貯蔵システムは、電源232を用いて、家屋230内における電力の蓄積及び供給を可能にするシステムである。
【0135】
電源232に蓄積された電力は、任意に利用可能である。そのため、例えば、電気料金が安価な深夜に集中型電力系統238から電源232に電力を蓄積しておき、電源232に蓄積しておいた電力を電気料金が高い日中に用いることができる。
【0136】
以上に説明した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)毎に設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)毎に設置されていてもよい。
【0137】
次に、電動工具の構成を表すブロック図を図10Cに示す。電動工具は、例えば、電動ドリルであり、プラスチック材料等から作製された工具本体240の内部に、制御部241及び電源242を備えている。工具本体240には、例えば、可動部であるドリル部243が回動可能に取り付けられている。制御部241は、電動工具全体の動作(電源242の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPU等を備えている。電源242は、実施例4や実施例5において説明した1又は2以上のリチウムイオン二次電池(図示せず)を備えている。制御部241は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、電源242からドリル部243に電力を供給する。
【0138】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではなく、種々の変形が可能である。実施例において説明した積層構造体の構成、構造、ロールプレス装置の構成、構造、積層構造体の製造方法は例示であり、適宜、変更することができる。実施例においては、積層構造体の第1A端部及び第2A端部側からプレスロールに積層構造体が侵入する例を説明したが、積層構造体の第1B端部及び第2B端部側からプレスロールに積層構造体が侵入する形態を採用してもよい。実施例1~実施例3において説明した積層構造体を有する正極部材あるいは負極部材(電極部材)と、実施例1~実施例3において説明した正極部材あるいは負極部材以外の構成、構造を有する正極部材あるいは負極部材(電極部材)とを組み合わせて、電極構造体とすることもできる。電極構造体は、捲回された状態の他、スタックされた状態であってもよい。
【0139】
本発明における二次電池は、ノート型パーソナルコンピュータ、着脱可能な電源としてパーソナルコンピュータ等に用いられる電池パック、各種表示装置、PDA(Personal Digital Assistant、携帯情報端末)を含む携帯情報端末、携帯電話機、スマートフォン、コードレス電話の親機や子機、ビデオムービー(ビデオカメラやカムコーダ)、デジタルスチルカメラ、電子書籍(電子ブック)や電子新聞等の電子ペーパー、電子辞書、音楽プレイヤー、携帯音楽プレイヤー、ラジオ、携帯用ラジオ、ヘッドホン、ヘッドホンステレオ、ゲーム機、ウェアラブル機器(例えば、スマートウォッチ、リストバンド、スマートアイグラス、医療機器、ヘルスケア製品)、ナビゲーションシステム、メモリカード、心臓ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコンディショナー、テレビジョン受像機、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗浄器、洗濯機、乾燥機、室内灯等を含む照明機器、各種電気機器(携帯用電子機器を含む)、玩具、医療機器、ロボット、IoT機器やIoT端末、ロードコンディショナー、信号機、鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等の駆動用電源又は補助用電源として使用することができる。また、住宅をはじめとする建築物又は発電設備用の電力貯蔵用電源等に搭載し、あるいは、これらに電力を供給するために使用することができる。電気自動車において、電力を供給することにより電力を駆動力に変換する変換装置は、一般的にはモータである。車両制御に関する情報処理を行う制御装置(制御部)として、二次電池の残量に関する情報に基づき、二次電池残量表示を行う制御装置等が含まれる。また、二次電池を、所謂スマートグリッドにおける蓄電装置において用いることもできる。このような蓄電装置は、電力を供給するだけでなく、他の電力源から電力の供給を受けることにより蓄電することができる。他の電力源として、例えば、火力発電、原子力発電、水力発電、太陽電池、風力発電、地熱発電、燃料電池(バイオ燃料電池を含む)等を用いることができる。
【0140】
二次電池、及び、二次電池に関する制御を行う制御手段(制御部)を有する電池パックにおける二次電池には、本発明の電極が用いられる形態とすることができる。また、二次電池から電力の供給を受ける電子機器における二次電池には、本発明の電極が用いられる形態とすることができる。
【0141】
二次電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置、及び、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置(制御部)を有する電動車両における二次電池には、本発明の電極が用いられる形態とすることができる。この電動車両において、変換装置は、典型的には、二次電池から電力の供給を受けてモータを駆動させ、駆動力を発生させる。モータの駆動には、回生エネルギーを利用することもできる。また、制御装置は、例えば、二次電池の電池残量に基づいて車両制御に関する情報処理を行う。この電動車両には、例えば、電気自動車、電動バイク、電動自転車、鉄道車両等の他、所謂ハイブリッド車が含まれる。
【0142】
二次電池を、所謂スマートグリッドにおける蓄電装置において用いることもできる。このような蓄電装置は、電力を供給するだけでなく、他の電力源から電力の供給を受けることにより蓄電することができる。この蓄電装置における二次電池には、本発明の電極が用いられる形態とすることができる。他の電力源としては、例えば、火力発電、原子力発電、水力発電、太陽電池、風力発電、地熱発電、燃料電池(バイオ燃料電池を含む)等を用いることができる。
【0143】
二次電池から電力の供給を受け、及び/又は、電力源から二次電池に電力を供給するように構成された電力貯蔵システム(あるいは電力供給システム)における二次電池には、本発明の電極が用いられる形態とすることができる。この電力貯蔵システムは、およそ電力を使用するものである限り、どのような電力貯蔵システムであってもよく、単なる電力装置も含む。この電力貯蔵システムは、例えば、スマートグリッド、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)、車両等を含み、蓄電も可能である。
【0144】
二次電池を有し、電力が供給される電子機器が接続されるように構成された電力貯蔵用電源における二次電池には、本発明の電極が用いられる形態とすることができる。この電力貯蔵用電源の用途は問わず、基本的にはどのような電力貯蔵システム、電力供給システム又は電力装置にも用いることができるが、例えば、スマートグリッドに用いることができる。
【実施例
【0145】
以下、本発明の電池用電極の製造方法および当該製造方法により得られる電池用電極について説明する。
【0146】
(比較例)
下記の工程を経て、電池用電極100’の製造方法(従来)を実施した。
【0147】
まず、塗工装置を用いて、集電体10’としての金属箔の一方の主面に電極材を間欠的に塗工すると共に他方の主面に電極材を間欠的に塗工した。この際、金属箔の一方の主面に供される電極材の間欠領域と、金属箔の他方の主面に供される電極材の間欠領域とを互いにずれるように供した。以上により、電極材層20’、30’が集電体10’の両面に塗工される両面塗工領域と、当該両面塗工領域と相互に隣り合う電極材層20’が集電体10’の片面に塗工される片面塗工領域とを備える電極100’の前駆体を形成することができた。
【0148】
次いで、形成した電池用電極100’の前駆体に含まれる電極材層の密度を高める観点から、1対の対向するプレスロール40’の間に連続して電池用電極100’の前駆体を一方向に移動させながら、プレスロール40’にて当該前駆体を加圧した(図1上段および図4A図4E参照)。所定時間経過後電池用電極100’が冷却されることで、最終的に電池用電極100’を得た。
【0149】
なお、電池用電極100’を得るに際して、下記項目に関する設定値を以下のとおりとした。
一対のプレスロール40’の半径:0.375m(0.25m~0.50m)
集電体(金属箔)10’の厚さ:6μm(4μm~20μm)
電極材層20’の厚さ:90μm(50μm~125μm)
電極材層30’の厚さ:90μm

正極
面積密度 30mg/cm~50mg/cm
体積密度 3.9g/cm~4.3g/cm
プレス時の線圧 10kN/cm~40kN/cm

負極
面積密度 10mg/cm~30mg/cm
体積密度 3.9g/cm~4.3g/cm
プレス時の線圧 6kN/cm~30kN/cm
【0150】
ここで、集電体10’をダンベル型に打ち抜き後、室温(23℃)にて、チャック間50mm、引張速度1mm/分、インストロン社の万能引張試験装置にて引張試験を行い、得られる荷重-伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算した。得られた電池用電極100’の構成要素である集電体10’のヤング率は74Gpaであった。つまり、集電体10’の剛性は相対的に高い状態であった。そのため、境界部分70’に位置する片面塗工領域内の集電体10’の上側に電極材層20’が位置しており、その電極材層20’の自重が作用するとしても、境界部分70’に位置する熱処理に付された片面塗工領域内の集電体10’は、下方方向へと湾曲する程度は小さかった。
【0151】
そのため、一対のプレスロール40’を用いて電極100’の前駆体を加圧する際にて、当該境界部分70’に位置する片面塗工領域内の集電体10’とプレスロール40’が接触可能な範囲は少なかった。その結果、相互に対向する一対のプレスロールによって、当該境界部分に位置する片面塗工領域の集電体と電極材層とを加圧することが容易ではなかった。従って、当該境界部分70’に位置する片面塗工領域の電極材層20’の低体積密度領域23’の範囲は相対的に広く、約0.8mmあった。具体的には、当該低体積密度領域23’(幅:約0.8mm)では、境界部分70’に位置する電極材層20’の体積密度(A)の境界部分70’以外の部分に位置する電極材層20’の体積密度(B)に対する比率(A/B)が、0.9を下回っていた(図3参照)。
【0152】
(実施例1)
下記の工程を経て、電池用電極100の製造方法を実施した。
【0153】
まず、塗工装置を用いて、集電体10としての金属箔の一方の主面に電極材を間欠的に塗工すると共に他方の主面に電極材を間欠的に塗工した。この際、金属箔の一方の主面に供される電極材の間欠領域と、金属箔の他方の主面に供される電極材の間欠領域とを互いにずれるように供した。以上により、電極材層20、30が集電体10の両面に塗工される両面塗工領域と、当該両面塗工領域と相互に隣り合う電極材層20が集電体10の片面に塗工される片面塗工領域とを備える電極100の前駆体を形成することができた。
【0154】
実施例1では、上記比較例と異なり電極体100の前駆体形成後、当該前駆体の加圧前に、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置する集電体10の熱処理を、高周波誘導加熱装置80を用いて実施した(熱処理温度:200度)。かかる熱処理により、境界部分70に位置する集電体10の局所部分は、熱エネルギーが当該部分に供されることに起因して軟化した。当該集電体の軟化部分のヤング率は66Gpaであった。つまり、境界部分70に位置する集電体10の剛性は相対的に低い状態であった。そのため、境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10の上側に電極材層20が位置しており、その電極材層20の自重が作用することで、境界部分70に位置する熱処理に付された片面塗工領域内の集電体10は、下方方向へと湾曲する程度が比較例と比べて大きくなった。
【0155】
かかる状態で、境界部分70に位置する集電体の熱処理実施後、電池用電極100の前駆体に含まれる電極材層の密度を高める観点から、1対の対向するプレスロール40の間に連続して電池用電極100の前駆体を一方向に移動させながら、プレスロール40にて当該前駆体を加圧した(図1下段および図2参照)。所定時間経過後電池用電極100が冷却されることで、最終的に電池用電極100を得た。
【0156】
なお、電池用電極100を得るに際しての設定値は上記の比較例で記載した内容と同じである。従って、記載の重複を回避するために説明を省略する。
【0157】
上述のように、境界部分70に位置する熱処理に付された片面塗工領域内の集電体10は、下方方向へと湾曲する程度が比較例と比べて大きくなった。そのため、一対のプレスロール40を用いて電極100の前駆体の加圧後において、比較例と比べて、当該境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10とプレスロール40が接触可能な範囲が大きくなった。その結果、比較例と比べて、相互に対向する一対のプレスロールによって、当該境界部分に位置する片面塗工領域の集電体と電極材層とを加圧することが容易となった。従って、比較例と比べて、当該境界部分70に位置する片面塗工領域の電極材層20の低体積密度領域23の範囲は狭くなり、約0.5mmあった。具体的には、当該低体積密度領域23(幅:約0.5mm)では、境界部分70に位置する電極材層20の体積密度(A)の境界部分70以外の部分に位置する電極材層20の体積密度(B)に対する比率(A/B)が、0.9を下回っていた(図3参照)。以上の事からも、実施例1では、比較例と比べて低体積密度領域の範囲を狭くすることができた。そして、最終的に得られた電池用電極100の構成要素である集電体10では、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置する集電体10のヤング率が、境界部分70以外の部分に位置する集電体10のヤング率と比べて10%分程減じられていた。
【0158】
(実施例2)
下記の工程を経て、電池用電極100の製造方法を実施した。
【0159】
まず、実施例1と同様に電極材層20、30が集電体10の両面に塗工される両面塗工領域と、当該両面塗工領域と相互に隣り合う電極材層20が集電体10の片面に塗工される片面塗工領域とを備える電極100の前駆体を形成した。
【0160】
実施例2では、上記実施例1と異なり電極100の前駆体形成後、当該前駆体の加圧前に、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置する集電体10の熱処理を高周波誘導加熱装置80を用いてより大きな熱エネルギーを供することで実施した(熱処理温度:>200度)。かかる熱処理により、実施例1と比べて境界部分70に位置する集電体10の局所部分は、熱エネルギーが当該部分に供されることに起因してより軟化した。当該集電体の軟化部分のヤング率は33Gpaであった。つまり、実施例1と比べて、境界部分70に位置する集電体10の剛性はより低い状態であった。そのため、境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10の上側に電極材層20が位置しており、その電極材層20の自重が作用することで、境界部分70に位置する熱処理に付された片面塗工領域内の集電体10は、下方方向へと湾曲する程度が実施例1と比べて大きくなった。
【0161】
次いで、境界部分70に位置する集電体の熱処理実施後、1対のプレスロール40にて当該電極100の前駆体を加圧した(図1下段および図2参照)。所定時間経過後電池用電極100が冷却されることで、最終的に電池用電極100を得た。
【0162】
なお、電池用電極100を得るに際しての設定値は上記の比較例で記載した内容と同じである。従って、記載の重複を回避するために説明を省略する。
【0163】
上述のように、境界部分70に位置する熱処理に付された片面塗工領域内の集電体10は、下方方向へと湾曲する程度が実施例1と比べて大きくなった。そのため、一対のプレスロール40を用いて電極100の前駆体の加圧後、実施例1と比べて、当該境界部分70に位置する片面塗工領域内の集電体10とプレスロール40が接触可能な範囲がより大きくなった。その結果、実施例1と比べて、相互に対向する一対のプレスロールによって、当該境界部分に位置する片面塗工領域の集電体と電極材層とを加圧することがより容易となった。従って、実施例1と比べて、当該境界部分70に位置する片面塗工領域の電極材層20の低体積密度領域23の範囲はより狭くなり、約0.3mmあった。具体的には、当該低体積密度領域23(幅:約0.3mm)では、境界部分70に位置する電極材層20の体積密度(A)の境界部分70以外の部分に位置する電極材層20の体積密度(B)に対する比率(A/B)が、0.9を下回っていた(図3参照)。以上の事からも、実施例2では、実施例1と比べて低体積密度領域の範囲をより狭くすることができた。そして、最終的に得られた電池用電極100の構成要素である集電体10では、両面塗工領域と片面塗工領域との境界部分70に位置する集電体10のヤング率が、境界部分70以外の部分に位置する集電体10のヤング率と比べて50%分以上減じられていた。
【関連出願の相互参照】
【0164】
本出願は、日本国特許出願第2018-111371号(出願日:2018年6月11日、発明の名称:「電池用電極およびその製造方法」)に基づくパリ条約上の優先権を主張する。当該出願に開示された内容は全て、この引用により、本明細書に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0165】
10・・・集電体(金属箔)、20・・・電極材層、23・・・低体積密度領域、30・・・電極材層、40・・・一対のプレスロール、101・・・電極構造体収納部材(電池缶)、102,103・・・絶縁板、104・・・電池蓋、105・・・安全弁機構、105A・・・ディスク板、106・・・熱感抵抗素子(PTC素子、Positive Temperature Coefficient 素子)、107・・・ガスケット、108・・・センターピン、111・・・電極構造体、112・・・正極、112A・・・正極集電体、112B・・・正極材層、113・・・正極リード部、114・・・負極部材、114A・・・負極集電体、114B・・・負極材層、115・・・負極リード部、116・・・セパレータ、118・・・電解質層、119・・・保護テープ、120・・・外装部材、121・・・密着フィルム、131・・・電源、132A,132B・・・タブ、133・・・回路基板、134・・・コネクタ付きリード線、135・・・粘着テープ、136・・・ラベル、137・・・絶縁シート、200・・・筐体、201・・・制御部、202・・・各種センサ、203・・・電源、211・・・エンジン、212・・・発電機、213,214・・・インバータ、215・・・モータ、216・・・差動装置、217・・・トランスミッション、218・・・クラッチ、221・・・前輪駆動軸、222・・・前輪、223・・・後輪駆動軸、224・・・後輪、230・・・家屋、231・・・制御部、232・・・電源、233・・・スマートメータ、234・・・パワーハブ、235・・・電気機器(電子機器)、236・・・自家発電機、237・・・電動車両、238・・・集中型電力系統、240・・・工具本体、241・・・制御部、242・・・電源、243・・・ドリル部
図1
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